IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社積木製作の特許一覧

特開2024-62402建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム
<>
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図1
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図2
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図3
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図4
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図5A
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図5B
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図6
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図7
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図8
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図9
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図10
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図11
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図12
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図13
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図14
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図15
  • 特開-建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062402
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240430BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240430BHJP
【FI】
G01B11/24
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180053
(22)【出願日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022170174
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515107236
【氏名又は名称】株式会社積木製作
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敬行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一生
(72)【発明者】
【氏名】塩▲崎▼ 和美
【テーマコード(参考)】
2F065
5B050
【Fターム(参考)】
2F065AA51
2F065BB05
2F065CC14
2F065FF12
2F065FF31
2F065GG04
2F065GG08
2F065HH04
2F065LL61
2F065MM16
2F065MM26
2F065MM28
2F065QQ23
2F065QQ25
2F065RR05
2F065SS02
2F065SS13
2F065UU05
5B050BA09
5B050DA01
5B050EA07
5B050EA19
5B050EA27
5B050EA28
5B050FA02
5B050FA17
(57)【要約】
【課題】奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することを可能とする。
【解決手段】建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる判定結果出力部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる判定結果出力部
を有する建築確認検査支援システム。
【請求項2】
視点位置または向きの少なくともいずれか一方についての指示を取得する指示取得部を有し、
前記判定結果出力部は、
前記設計モデルと前記計測モデルとが重ね合わせられ、前記判定結果に応じた表示態様で表示される判定結果データを、前記指示に基づいて、視点位置または向きの少なくともいずれか一方に従って見た場合に相当する画像を出力する
請求項1に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項3】
建築物の複数の計測点に対して光を照射し、前記光が前記建築物に存在する物体から反射された反射光を受光し、前記反射光に基づいて前記複数の計測点における前記物体との間の距離を表す点群データを生成する計測装置から前記点群データを取得する点群データ取得部と、
前記取得された点群データに基づいて前記計測モデルを生成する計測モデル生成部
を有する請求項2に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項4】
設計モデルは、BIM(Building Information Modeling)データに基づいて生成される前記建築物を表す三次元モデルであり、
前記判定結果出力部は、前記BIMデータに基づいて生成された設計モデルと、前記点群データから生成された点群モデルとを用いて判定された判定結果データに基づく画像を出力する請求項3に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項5】
設計モデルは、前記設計データに応じて定まる法規制空間を表す三次元モデルである法規制空間モデルであり、
前記判定結果出力部は、前記法規制空間モデルと、前記点群データから生成された点群モデルとを用いて判定された判定結果データに基づく画像を出力する請求項3に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項6】
前記判定結果出力部は、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項7】
前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が検出された検出結果を取得する姿勢取得部を有し、
前記判定結果出力部は、前記姿勢取得部によって取得された姿勢に基づく視線方向から見た三次元画像を生成し、前記視線方向から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項6に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項8】
前記三次元画像が配置される三次元空間における視点位置を指定する操作入力を受け付ける視点位置取得部を有し、
前記判定結果出力部は、前記視点位置取得部によって取得された視点から見た三次元画像を生成し、前記視点から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項7に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項9】
前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が検出された検出結果を取得する姿勢取得部を有し、
前記判定結果出力部は、前記視点位置取得部によって取得された視点から、前記姿勢取得部によって取得された姿勢に基づく視線方向を見た場合の三次元画像を生成し、前記視線方向から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項8に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項10】
建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測あるいは検知した結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成する画像生成部と、
前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる画像出力部と、
を有する建築確認検査支援システム。
【請求項11】
前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が検出された検出結果を取得する姿勢取得部を有し、
前記画像生成部は、前記姿勢取得部によって取得された姿勢に基づく視線方向から見た三次元画像を生成し、
前記画像出力部は、前記視線方向から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項10に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項12】
前記三次元画像が配置される三次元空間における視点位置を指定する操作入力を受け付ける視点位置取得部を有し、
前記画像生成部は、前記視点位置取得部によって取得された視点から見た三次元画像を生成し、
前記画像出力部は、前記視点から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項11に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項13】
前記ヘッドマウントディスプレイの姿勢が検出された検出結果を取得する姿勢取得部を有し、
前記画像生成部は、前記視点位置取得部によって取得された視点から、前記姿勢取得部によって取得された姿勢に基づく視線方向を見た場合の三次元画像を生成し、
前記画像出力部は、前記視線方向から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させる
請求項12に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項14】
設計モデルは、BIM(Building Information Modeling)データに基づいて生成される前記建築物を表す三次元モデル、または、前記設計データに応じて定まる法規制空間を表す三次元モデルである
請求項10から請求項13のうちいずれか1項に記載の建築確認検査支援システム。
【請求項15】
判定部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定し、
判定結果出力部が、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる
建築確認検査方法。
【請求項16】
画像生成部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成し、
画像出力部が、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる
建築確認検査方法。
【請求項17】
判定部が、現実の建築物と前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルとが一致しているか否かを判定し、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定し、
判定結果出力部が、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項18】
画像生成部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成し、
画像出力部が、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる
ことをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を建てる際に建築確認申請を行う必要がある。建築確認申請とは、建築基準法に基づく申請行為である。具体的には、申請に必要な設計図書を指定された審査機関に提出し、建築物が建築基準法に適合している旨の確認を受ける行為である。申請に必要な設計図書は、申請用の一般図、地盤面算定図、求積図、及び申請書類などである。一般図は、各階の平面図、立面図、断面図などである。特許文献1には、建築基準法に適合しているか否かの判定結果を、判定のプロセスと共に、申請者側に通知する技術が開示されている。
一方、建築確認申請とは別に、実際に建築された建築物が、設計図書に記載された設計通りに施工されているか否かを検査する確認検査がある。確認検査では、部屋の大きさ、窓の大きさ、非常照明の位置、扉の位置等の検査項目が多数ある。これを一つ一つ確認するためには、設計図面を見ながら、実際の建築物と比較しながら確認しなければならず、時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-162175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確認検査を行うにあたり、設計図書の一部としてBIM(Building Information Modeling)データを用いることが考えられる。例えば、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いて、設計データの一例であるBIMデータに基づいて3次元画像を生成し、確認検査を行う対象の建築物を撮影したリアルタイムの撮影画像に、当該3次元画像を重ね合わせて表示することで、設計データと実際の建築物との関係を画像上において確認することが考えられる。
しかしながら、確認検査において、撮影画像に設計データを重ね合わせた場合には、設計データと実際の建築物とについて平面上における位置あるいは目に見える範囲が一致しているか否かを確認することが可能であるが、奥行き方向における位置が一致しているか否かについては、判断することが難しい。設計データと実際の建築物とについて奥行き方向における位置が一致しているか否かを確認するためには、確認対象の部材に対して回り込んで撮影することで、確認することが可能であるが、建築物のレイアウト等によっては回り込むための通路や足場がない場合もあり、このような場合には確認することができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することが可能な建築確認検査支援システム、建築確認検査方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる判定結果出力部を有する建築確認検査支援システムである。
また、本発明の一態様は、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成する画像生成部と、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる画像出力部と、を有する建築確認検査支援システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、判定部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定し、判定結果出力部が、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させる建築確認検査方法である。
また、本発明の一態様は、画像生成部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成し、画像出力部が、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる建築確認検査方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、判定部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定し、判定結果出力部が、前記判定部の判定結果に基づいて、一致している部分と一致していない部分とを異なる表示態様で表示させることをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
また、本発明の一態様は、画像生成部が、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、前記建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、前記設計モデルと前記計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成し、画像出力部が、前記生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させることをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施形態による建築確認検査支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
図2】計測装置Lを用いて建築物のある室について測定を行う場合の例を示す図である。
図3】BIMデータ記憶部3021に記憶されるデータの一例を示す図である。
図4】判定結果記憶部3022に記憶されるデータの一例を示す図である。
図5A】建築確認検査支援装置30の動作を説明するフローチャートである。
図5B】建築確認検査支援装置30の動作を説明するフローチャートである。
図6】端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。
図7】端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。
図8】端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。
図9】端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。
図10】端末装置の表示画面に表示される画像の参考例を示す図である。
図11】他の実施形態における建築確認検査支援システムSaの構成を示す概略ブロック図である。
図12】建築確認検査支援装置30aの動作を説明するフローチャートである。
図13】ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。
図14】ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。
図15】ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。
図16】ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による建築確認検査支援システムについて図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による建築確認検査支援システムSの構成を示す概略ブロック図である。
建築確認検査支援システムSは、端末装置10及び端末装置11と、建築確認検査支援装置30と、計測装置Lが、ネットワークNWを介して通信可能に接続される。
端末装置10、端末装置11は、コンピュータである。端末装置10、端末装置11は、タブレット端末であってもよい。
端末装置10は、例えば、確認検査を行う対象の建築物に立ち入り現地の状況を確認する現地担当者によって現地において利用される。この場合、端末装置10がタブレット端末である場合には、現地担当者が建築物の内部において、検査対象の各場所を巡回しながら利用することが可能となる点において好ましい。
端末装置11は、端末装置10が存在する場所とは異なる場所において利用される端末装置であり、例えば、指定確認検査機関に設置され、指定確認検査機関の検査担当者によって利用される。
建築確認検査支援装置30は、サーバ装置である。建築確認検査支援装置30は、クラウドサーバであってもよい。
【0012】
建築確認検査支援システムSの各装置についてさらに説明する。
計測装置Lは、建築物の複数の計測点に対して光を照射し、光が前記建築物に存在する物体から反射された反射光を受光し、反射光に基づいて複数の計測点における物体との間の距離を表す点群データを生成する。計測装置Lは、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)である。LiDARは、パルス状のレーザ光を周囲に照射し、その反射光が受光されるまでの時間に基づいて距離を計測することにより周囲の3次元の形状を示す点群データを生成することができる。
【0013】
計測装置Lは、確認検査を行う対象の建築物について測定を行う。測定を行うタイミングは、建築物の施工が完了した後であって、確認検査を行う前のタイミングであることが好ましい。ここでは、建築物のうち、計測装置Lによって計測された領域については、その測定の後に改造等が行われていなければ、測定結果が、確認検査を受ける対象の建築物の建物の形状を表している(一致している)といえる。
【0014】
図2は、計測装置Lを用いて建築物のある室について測定を行う場合の例を示す図である。計測装置Lは、測定を行う位置において、周囲360°を対象として測定を行うことで、周囲360°を対象とした点群データを得る。計測位置は、例えば、位置P1と、位置P2のように、1つの室(測定対象領域)において、異なる複数の位置である。このように、1つの室において異なる複数の位置において測定を行うことで、例えば、柱や梁などがあるために、1つの位置から点群データを収集することができない領域(計測装置Lから見て裏側となる部分)があったとしても、別の位置から点群データを得ることができる。そして、これらの点群データが示す建築物の形状が、他の点群データが示す建築物の形状と重なる部分を手がかりとして、座標上において組み合わせるようにして合成することによって、測定対象領域の全体を表す点群データを得ることが可能となる。
計測装置Lによる測定は、建築物のうち、建築確認検査支援装置30を用いて確認検査に応じた判定を行う対象の領域を測定できればよく、建築物全体を判定対象とする場合には、建築物を全体的に測定するように、多数の位置において測定を行えばよい。
【0015】
この例においては、計測装置Lは、ネットワークNWを介して建築確認検査支援装置30に1台のみ接続されているが、複数台の計測装置Lが建築確認検査支援装置30に接続されてもよい。また、計測装置Lは、建築確認検査支援装置30に接続される場合について説明するが、端末装置10の外部に接続され、端末装置10を介して点群データを建築確認検査支援装置30に送信するようにしてもよいし、計測装置Lが端末装置10の内部に設けられるようししてもよい。
【0016】
端末装置10は、通信部101、記憶部102、入力部103、表示部104、撮像部105、制御部106を有する。
通信部101は、ネットワークNWを介して建築確認検査支援装置30と通信を行う機能と、計測装置Lと通信を行う機能とを有する。記憶部102は、各種データを記憶する。入力部103は、ユーザ(例えば、現場担当者)からの操作入力を受け付ける。表示部104は、液晶パネル等であり、各種データを表示する。入力部103と表示部104とをタッチパネルとして一体的に構成するようにしてもよい。撮像部105は、周囲の環境を撮像する。制御部106は、種々の機能を有し、端末装置10における各部を制御する。例えば、制御部106は、計測装置Lから点群データを取得し、当該点群データを建築確認検査支援装置30に送信する。
【0017】
端末装置11は、設置場所や利用者が端末装置10と異なるが、機能としては端末装置10と同様であるため、その説明を省略する。なお、この場合、端末装置11は、端末装置10における撮像部を有していなくてもよい。
【0018】
建築確認検査支援装置30は、通信部301、記憶部302、BIMモデル生成部303、点群データ取得部304、点群モデル生成部305、法規制空間モデル生成部307、判定部308、判定結果出力部309、制御部310を有する。
【0019】
通信部301は、端末装置10と端末装置11とに対して、ネットワークNWを介して通信をする。通信部301は、視点位置または向きの少なくともいずれか一方について指定する指示を端末装置から取得する指示取得機能を有する。
【0020】
記憶部302は、各種データを記憶する。記憶部302は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。この記憶部302は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
【0021】
記憶部302は、BIMデータ記憶部3021、判定結果記憶部3022、点群データ記憶部3023を有する。
BIMデータ記憶部3021は、確認検査を行う対象の建築物のBIMデータを記憶する。
図3は、BIMデータ記憶部3021に記憶されるデータの一例を示す図である。BIMデータ記憶部3021は、建築物IDとBIMデータとを対応づけて記憶する。建築物IDは、建築物を識別する識別情報である。BIMデータは、建築物についての建物形状、空間配置関係、建物部材の数量・寸法・型番や特性、建物要素のプロパティなどのデータを含むことができる設計データである。BIMデータ記憶部3021に記憶されるBIMデータは、確認申請図書として用いられることが可能なデータであり、指定の検査機関における審査業務にも用いられることが可能である。従って、このBIMデータ記憶部3021に記憶されたBIMデータに沿って建築物が建てられている場合には、設計通りに建築されたことが把握できる。
【0022】
判定結果記憶部3022は、判定部308によって判定された結果を記憶する。判定部308の判定処理については後述する。
図4は、判定結果記憶部3022に記憶されるデータの一例を示す図である。判定結果記憶部3022は、建築物IDと判定結果データとを対応付けて記憶する。
判定結果データは、設計モデルと計測モデルとが一致しているか否かを示すデータである。より具体的に、判定結果データは、設計モデルと計測モデルとにおいて、3次元モデルの形状が一致している箇所と一致していない箇所を示すデータである。例えば、この判定結果データを参照することで、設計モデルが表す窓と計測モデルが表す窓とについて、寸法が一致しているか否か、設置されている位置が一致しているか否か等を3次元モデル上において比較することができる。そのため、建築物が設計通りに施工されたか否かについて、直感的に、かつ、簡単に把握することができる。
【0023】
点群データ記憶部3023は、建築物毎の点群データを記憶する。点群データは、例えば、計測装置Lから送信され、受信された計測結果である。点群データ記憶部3023は、建築物IDと点群データとが対応づけされたデータを記憶する。なお、点群データ記憶部3023は、この他に、建築物毎の点群モデル等を建築物IDに対応付けて記憶するようにしてもよい。
【0024】
BIMモデル生成部303は、BIMデータ記憶部3021に記憶されたBIMデータに基づいて、建築物の形状を表す3次元モデルであるBIMモデルを生成する。BIMモデルを用いることにより、設計上における建築物の3次元形状を特定することができる。
【0025】
点群データ取得部304は、計測装置Lにおいて計測された点群データであって、端末装置10によってネットワークNWを介して送信され、通信部301によって受信された点群データを取得する。
【0026】
点群モデル生成部305は、点群データ取得部304によって取得された点群データに基づいて、3次元モデルである計測モデルを生成する。計測モデルを用いることにより、実際の建築物の3次元形状を特定することができる。
【0027】
法規制空間モデル生成部307は、規制された空間を表す3次元モデルである法規制空間モデルを生成する。法規制空間は、例えば、建築物に対して避雷設備が設置されることによって発生する保護範囲(避雷保護範囲)を表す空間である。建築物に設置される避雷設備は、BIMデータにおいて定義されている。法規制空間モデル生成部307は、BIMデータのうち避雷設備を表すBIMデータを用いて、新JIS(Japanese Industrial Standards)において定められた回転球体法に基づいて、避雷保護範囲を表す3次元モデルを生成する。このような避雷保護範囲を表す3次元モデルは、既存の演算方法を適用するようにしてもよい。
ここでは、法規制空間モデルは、避雷保護範囲である場合を一例として説明するが、規制された空間と比較することができれば、避雷保護範囲とは異なる規制空間と比較するようにしてもよい。
例えば、建築物に隣接する土地との境界を示す杭を表す3次元モデルを法規制空間モデルとして生成し、建築物が建築された位置が、設計図書と一致しているかの確認をするようにしてもよい。
また、斜線制限に応じた法規制空間モデルを生成し、点群データと比較することで、実際の建築物が斜線制限によって定められる建築可能な空間を越えていないかを確認するようにすることもできる。
また、排煙有効開口に応じた法規制空間モデルを生成し、点群データと比較することで、実際の建築物が、排煙有効開口に適合するか否かを確認できるようにしてもよい。また、非常照明照度が確保できる範囲を法規制空間モデルとして生成し、判定する対象の室に限定して、照度を満たす範囲と、照度が不足する範囲を自動で生成し、確認できるようにしてもよい。
【0028】
判定部308は、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが一致しているか否かを判定する。より具体的に、判定部308は、この判定処理を行うことで、設計モデルと計測モデルとの3次元モデルの形状の差分を抽出することができる。
判定部308は、点群モデルと設計データに基づいて生成される3次元モデル(例えばBIMモデル)とが一致しているか否かを判定する場合、点群モデルとBIMモデルとの3次元形状の差分(距離)が基準値以上であるか否かを判定し、基準値以上である場合には一致しないと判定し、基準値未満である場合には一致すると判定するようにしてもよい。また、この基準値は、端末装置10または端末装置11から基準値の入力を受け付けることで、任意の値に設定されるようにしてもよい。
判定部308において用いられる設計モデルは、例えばBIM(Building Information Modeling)データに基づいて生成される三次元モデルであって、建築物の形状を表す三次元モデルであってもよい。
【0029】
また、判定部308において用いられる設計モデルは、設計データに応じて定まる法規制空間を表す三次元モデルである法規制空間モデルを用いるようにしてもよい。法規制空間モデルは、例えば、避雷保護範囲を示す3次元モデル(法規制空間モデル)であってもよい。
判定部308によって設計モデルと計測モデルとが一致しているか否かを判定することによって、実際に建築された建築物を計測することによって得られた建築物の3次元形状と、設計上における建築物の3次元形状とを比較することができるため、実際の建築物が設計通りとなっているか否かを把握することが可能となる。
【0030】
判定結果出力部309は、判定部308の判定結果に基づいて、3次元モデルにおいて一致している部分と一致していない部分と異なる表示態様で表示させるためのデータを生成する。異なる表示態様としては、色、模様、差分箇所を点滅させる等であってもよい。判定結果出力部309によって生成されたデータについて、任意の視点から見た場合の画像を生成することで、一致箇所と差分がある箇所について自由視点から確認することができる。
また、一致箇所と一致していない箇所を判定結果出力部309によって異なる表示態様で表示することによって、表示態様の相違を手がかりにし、設計上における建築物の形状(位置、寸法等)と、実際に建築された建築物の形状と一致している箇所と差分がある箇所について、視覚によって直感的に把握することができる。これにより、設計モデルと計測モデルとが整合しているか否かを容易に確認することができる。
【0031】
また、判定結果出力部309は、設計モデルと計測モデルとが重ね合わせられ、判定結果に応じた表示態様で表示される判定結果データを、端末装置10または端末装置11からの指示に基づいて、視点位置または向きの少なくともいずれか一方に従って見た場合に相当する画像を出力する。端末装置から指定される視点の位置や視認する向きに従って見た場合の判定結果データ(3次元モデル)を見た場合の画像によって確認することができる。これにより、実際の建築物では立ち入ることができない位置や、立ち入ることができたとしても実際に確認したい位置まで移動しなくても、自由視点による、設計モデルと計測モデルとの整合確認を行うことができる。例えば、屋上の外周側から建物を見る場合の視点、建築物の上空から見下ろした場合の視点等から見た場合についても判定結果を表示画面上において確認することができる。
【0032】
判定結果出力部309は、BIMデータに基づいて生成された設計モデルと、点群データから生成された点群モデルとを用いて判定された判定結果データに基づく画像を出力する。BIMデータに基づいて生成された設計モデルと点群モデルとを比較することで、建築物の設計上における3次元形状と、実際の建築物を測定することで得られる、建築物の形状を表す3次元形状とを比較することができるため、実際の建築物の形状が、設計された形状と整合するか否かを確認することができる。
【0033】
判定結果出力部309は、法規制空間モデルと、点群データから生成された点群モデルとを用いて判定された判定結果データに基づく画像を出力する。法規制空間モデルと点群モデルとを比較することで、建築物の設計内容に応じた法規制空間と、実際の建築物を測定することで得られる、建築物の形状を表す3次元形状との対応関係を把握することができるため、法規制空間と実際の建築物の形状とが整合するか否かを確認することができる。
なお、上述した判定結果記憶部3022は、判定部308の判定結果を記憶するようにしたが、判定結果の代わりに判定結果出力部309の判定結果データを記憶するようにしてもよいし、判定部308の判定結果と、判定結果出力部309の判定結果データの両方を記憶するようにしてもよい。判定結果記憶部3022に判定結果出力部309の判定結果データを記憶しておく場合には、この判定結果データを読み出して端末装置10(または端末装置11)に送信することができるため、異なる表示態様によって表示させるためのデータ生成処理を予め実行しておくことができ、確認検査に相当する確認業務を行う段階において実行しなくてすむため、表示する際における処理時間が長引いてしまうことを回避することができる。
【0034】
制御部310は、建築確認検査支援装置30における各部を制御する。
また、制御部310は、管理者が利用する端末装置からの操作入力に基づいて、BIMデータに基づく設計モデルと、点群データに基づく点群モデルとについて、三次元空間上に配置される位置を合わせるための位置合わせをする。位置合わせは、設計モデルと点群モデルとを重ね合わせた状態において、設計モデルに合うように点群モデルを移動させることで、位置合わせを行う。位置合わせでは、X軸方向(縦軸方向)、Y軸方向(横軸方向)、Z軸方向(高さ方向)、縮尺、回転角等が調整される。例えば、設計モデルの基準となる箇所と、点群モデルの基準となる箇所とが重なるように位置合わせが行われる。法規制空間モデルは、設計モデルに基づいて、当該設定モデルに対する相対位置が定まる。そのため、設計モデルと点群モデルとの位置合わせが行われると、点群モデルと法規制空間モデルとの位置合わせも行われることになる。
位置合わせを行う場合に用いられる端末装置は、端末装置10または端末装置11のいずれであってもよいし、端末装置10と端末装置11とは異なる端末装置を用いるようにしてもよい。
【0035】
建築確認検査支援装置30において、通信部301、BIMモデル生成部303、点群データ取得部304、点群モデル生成部305、法規制空間モデル生成部307、判定部308、判定結果出力部309、制御部310は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0036】
次に、上述した建築確認検査支援システムSの動作について説明する。
図5Aは、建築確認検査支援装置30の動作を説明するフローチャートである。
建築確認検査支援装置30の点群データ取得部304は、計測装置Lから送信される、確認検査を行う対象の建築物を対象として測定することで生成された点群データを取得する(ステップS101)。
点群モデル生成部305は、取得された点群データを基に、点群モデルを生成する。ここでは、建築物の測定対象領域において、異なる位置において得られた点群データを組み合わせることで、1つの点群データを生成し、生成された点群データを基に3次元モデルである点群モデルを生成する(ステップS102)。
点群モデル生成部305は、生成された点群モデルを建築物IDに対応付けて記憶部302に記憶してもよい。
【0037】
次に建築確認検査支援装置30においてBIMモデル生成部303は、BIMデータ記憶部3021から、確認検査を行う対象の建築物のBIMデータを読み出し、読み出したBIMデータに基づいて、3次元モデルであるBIMモデルを生成する(ステップS103)。
【0038】
法規制空間モデル生成部307は、BIMデータに基づいて、法規制空間モデルを生成する(ステップS104)。例えば、法規制空間モデル生成部307は、BIMデータに含まれる避雷設備の位置や形状に基づいて、避雷保護範囲を示す3次元モデルを生成する。
法規制空間モデル生成部307は、生成された避雷保護範囲を示す3次元モデルを建築物IDに対応付けて記憶部302に記憶してもよい。
【0039】
次に、建築確認検査支援装置30の制御部は、端末装置10または端末装置11から、確認検査を行うための判定要求があったか否か判定する(ステップS105)。
判定要求を受信指定していない場合(ステップS105-NO)、制御部106は、一定のウエイト時間が経過した後、再度ステップS105を実行する。一方、判定要求を受信した場合(ステップS105-YES)、制御部106は、判定要求とともに端末装置から送信される建築物IDを端末装置から取得する。建築物IDを取得することで、いずれの建築物を対象とした判定要求であるかを識別することができる。
【0040】
制御部106は、建築物IDを判定部308に引き渡し、判定要求をする。判定部308は、引き渡された建築物IDに応じた点群モデルとBIMモデルとの3次元形状を比較し、一致しているか否かを判定する(ステップS106)。そして判定部308は、点群モデルとBIMモデルとの3次元形状において、一致している箇所と相違している箇所(差分がある箇所)とを判定結果として判定結果出力部309に出力する。
【0041】
判定結果出力部309は、判定部308から判定結果を得ると、この判定結果に基づいて、3次元モデルにおいて一致している部分と一致していない部分と異なる表示態様で表示させるためのデータを生成する(ステップS107)。
【0042】
判定結果出力部309は、端末装置から送信される、視点位置及び方向の指定を受け付け、指定された視点位置及び方向から判定結果データが示す3次元モデルを見た場合に相当する画像を生成し、判定要求元の端末装置に送信することで表示させる(ステップS108)。これにより、端末装置の表示画面に、設計モデルと点群モデルとの比較結果が表示される。
【0043】
ここでは、建築物のうち、計測装置Lによって計測された領域については、その測定結果(点群データ)が、確認検査を受ける対象の建築物の建物の形状を表している(一致している)といえる。その上で、点群データに基づく点群モデルと、BIMモデルとが一致するか否かを確認することで、実際の建築物が、BIMモデルが示す設計データ通りに施工されているか否かを確認することができる。
【0044】
図5Bは、建築確認検査支援装置30の動作の別の例を説明するフローチャートである。
この図において、建築確認検査支援装置30は、ステップS101、ステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS106、ステップS107、ステップS108については、図5Aと同様の処理であるので、説明を省略し、相違する点について説明する。
ステップS102の後、端末装置10の撮像部105は、現物の撮像を行う。この撮像は、静止画であってもよいし、動画であってもよいし、ライブビューであってもよい。現物は、確認検査を行う対象の建築物である。ここでは、建築物の外観や室・部屋の内周側が撮像される(ステップS102A)。
建築確認検査支援装置30は、撮像部105によって撮像された撮像データを端末装置10から受信する。建築確認検査支援装置30の判定部308は、ステップS102において生成された点群モデルと、撮像部105によって撮像された撮像データとが一致しているか否かを比較する(ステップS102B)。この比較は、現物が撮像された撮像データに対して、当該現物を撮像した時の端末装置10の現在位置と撮影方向を端末装置10において検出し、この検出結果に基づいて、現在位置と撮影方向に基づいて点群モデルを見た場合の画像を生成し、撮像部105から得られる撮像データに重ね合わせることで、比較するようにしてもよい。この撮像部105から得られる撮像データと点群モデルとを重ね合わせる処理はAR技術を用いてもよい。
【0045】
次に、判定部308は、点群モデルと現物画像とが整合しているか否かの判定を行う(ステップS102C)。判定部308は、AR画像において、現物の形状と点群データとの形状が一致する場合には整合すると判定し、一致しない場合には整合しない、と判定してもよい。この場合、判定結果出力部309は、判定部308の判定結果に基づいて、整合する箇所と整合しない箇所とを異なる表示態様で表示させる。異なる表示態様としては、色、模様、差分箇所を点滅させる等であってもよい。
なお、判定部308は、現物画像に対して点群モデルに基づくAR画像を重ね合わせて表示し、「整合していますか?」のメッセージを表示部104に表示し、入力部103から「整合する」または「YES」等の肯定的な回答が入力された場合に整合すると判定してもよく、入力部103から「整合しない」または「NO」等の否定的な回答が入力された場合に整合しない、と判定してもよい。
端末装置10の制御部106は、整合している場合に処理をステップS103に進め(ステップS102C-YES)、整合していない場合に処理をステップS101に進める(ステップS102C-NO)。整合していない場合には、計測装置Lによる計測のし直しを促すメッセージを表示するようにしてもよい。
【0046】
次に、ステップS103、ステップS104、ステップS106、ステップS107、ステップS108、について実行された後、端末装置10の制御部106は、確認申請と同一であることの確認判定をする(ステップS105A)。制御部106は、確認申請と同一である場合には、処理を終了し(ステップS105A-YES)、確認申請と異なる場合には、処理をステップS101に進める。ここで、制御部310は、ステップS108の処理を実行した際、「同じでしょうか?」のメッセージを表示部104に表示し、入力部103から「同一である」または「YES」等の肯定的な回答が入力された場合に同一であると判定してもよく、入力部103から「同一ではない」または「NO」等の否定的な回答が入力された場合に同一ではない、と判定させるようにしてもよい。
【0047】
図5Bの処理によれば、確認検査は、現物(施工状況)と確認申請されたBIMデータとが整合していることを確認する検査である。上述の実施形態においては、(1)現物と点群データの整合確認、(2)点群データと確認申請のBIMデータとの整合確認、の2段階の手続きを行い、その結果、法に基づく現物(施工状況)と確認申請のBIMデータの整合確認(確認検査)としている。点群データは、実測から3Dデータ生成までに日数が必要な場合がある。そこで、「データの原本性」を担保するため、現物と点群データの比較確認を実施している。
なお、図5Aの処理においても、実際の建物と計測モデルとの一致をいずれかのタイミングで実施しておくようにしてもよい。
【0048】
図6は、端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。この図では、判定結果出力部309から出力された画像であって、判定対象の屋上を上方から見た場合における、BIMデータに基づく設計モデルと点群モデルとの比較結果を示す。
ここでは、設計モデルと点群モデルとにおいて、一致している箇所と相違している箇所とが異なる表示態様で表示されている。例えば、一致している箇所は、青色で表示され、一致していない箇所は、赤色で表示するようにしてもよい。
塔屋600については、設計モデルと点群モデルとが一致していることを表す表示対象で表示されている。そのため、塔屋については、設計通りの位置・形状で建築されていることが把握できる。
【0049】
手すり601、ダクト602については、設計モデルと点群モデルとが一致していないことを表す表示対象で表示されている。この手すり601は、塔屋600の近傍に設置されるものであり、ダクト602は塔屋に対して設置されるものであり、確認検査における法的な規制を直接受けるものではない。そのため、設計データに対する差分があったとしても、確認検査においては問題ないことが確認できる。
通常では屋上の上空側から実際の建築物が設計通りであるかを確認することが困難であるが、この表示画面の例では、3次元モデルを用いることで、上空から見た場合を確認することができる。
【0050】
図7は、端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。この図では、図6に示す表示画面において、視点位置を人の視線の高さ程度に変更した場合に判定結果出力部309から出力された比較結果を示す。この視点位置や方向の変更は、端末装置10の利用者が端末装置の入力部103からに任意の位置や方向を指定することで、制御部106が、指定された視点位置や方向を示すデータを建築確認検査支援装置30に送信することで、変更をすることができる。
【0051】
ここでは、視点位置を人の視線の高さ程度に変更した場合に、塔屋600、手すり601、ダクト602等の施工状況を確認することができる。
塔屋600については、設計モデルと点群モデルとが一致していることを表す表示対象で表示されている。そのため、図6に示す視点位置とは異なる視点位置から観察したとしても、塔屋については、設計通りに建築されていることが把握できる。
手すり601、ダクト602については、設計モデルと点群モデルとが一致していないことを表す表示対象で表示されているが、図6と同様に、確認検査においては問題ないことが確認できる。
ここでは、例えば、人の視線の高さ程度であったとしても、通路がない、足場がない等の位置においても、3次元モデルを用いることで観察することができる。そのため、実際に確認検査を行うことが可能な場所ではない位置からであっても、施工状況について確認することができる。
【0052】
また、この図7では、手すり601のうち、塔屋600の奥側に位置する部分については、塔屋600の上に手すり601が重なるような表示ではなく、塔屋600の奥側に位置するように表示される。そのため、塔屋600と手すり601の奥行き方向における位置関係が、実際の建築物における位置関係に沿って表示される。すなわち、ここでは、手すり601のうち、塔屋600の裏側にある部分については、塔屋600が手すり601よりも手前側に表示される。そのため、奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することが可能となる。
【0053】
図8は、端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。この図では、判定結果出力部309から出力された画像であって、判定対象の屋上を上方から見た場合における、BIMデータに基づいて定まる法規制空間モデルと点群モデルとの比較結果を示す。ここでは、法規制空間モデルである避雷保護範囲の外部に視点位置がある場合について図示されている。
塔屋600については、避雷設備によって保護される避雷保護範囲が法規制空間モデル700として生成され画面上に表示される。ここでは、法規制空間モデルと点群モデルとの対応関係に応じて異なる表示態様で表示されている。すなわち、塔屋600の全体が、視点位置からみて、避雷保護範囲を示すモデルの奥側に位置するように、塔屋600の画像の上に重なるように避雷保護範囲を示すモデルが表示されている。そのため、塔屋600については、法規制空間の範囲に収まっていることが確認できる。
【0054】
通常では屋上の上空側から、保護すべき建築物が避雷保護範囲に収まっているか否かを確認することが困難であるが、この表示画面の例では、法規制空間を3次元モデルによって表し、点群モデルに対して座標上において重ね合わせ、視点位置を建築物の上空に設定することで、上空から見た場合を確認することができる。そのため、従来では行うことができなかった視点位置から観察した場合における確認検査に相当する確認を行うことができる。
仮に、法規制空間モデル700の手前側に塔屋600の一部が露出する部分がある場合は、避雷保護範囲を示すモデルの色にかかわらず、塔屋600の一部の色がそのまま表示される。これにより、露出している部分は、露出していない部分とは異なる表示態様(色)によって表示される。これにより、その露出している塔屋の一部については、法規制空間に収まっていないことを簡単に把握することができる。
【0055】
図9は、端末装置の表示画面に表示される画像の一例を示す図である。この図では、図8に示す表示画面において、視点位置を人の視線の高さ程度に変更した場合における、BIMデータに基づいて定まる法規制空間モデルと点群モデルとの比較結果を示す。ここでは、避雷保護範囲の内側に視点位置がある場合について図示されている。
塔屋600については、避雷設備によって保護される避雷保護範囲が法規制空間モデル700として生成され画面上に表示される。視点位置からみて、塔屋600の高さ方向における半分程度から下については、避雷保護範囲を示すモデルの色ではなく、塔屋600を示す色そのものによって表示されている。そのため、避雷保護範囲の内側に位置していることを確認することができるため、法規制空間の範囲に収まっていることを確認できる。塔屋600の上側については、この図に示す視点位置からみて避雷保護範囲の外部にあるかのように見えるが、視点位置を塔屋600に回り込むように位置に変更しつつ確認することで、避雷保護範囲に入っているか否かを塔屋600の全周に亘って確認することができる。
このように、法規制空間についても、建築物が基準を満たしているか否かについて画像を基に判断することができる。
【0056】
図10は、端末装置の表示画面に表示される画像の参考例を示す図である。この参考例では、本実施形態のように点群モデルを用いるのではなく、一般的な2次元カメラによって撮影された画像に対し、法規制空間を重ねて表示した場合を示す図である。
一般的な2次元カメラは、奥行き方向における情報は取得しておらず、縦方向と横方向の2次元の情報を取得している。そのため、建築物を撮像した場合には、建築物の形状を把握することができるが奥行き方向については把握することができない。そのため、例えば、AR技術を用いて、現在撮影されている画像に対して、現在位置と撮影方向に応じて避雷保護範囲を表示したとしても、図10に示すように、塔屋と避雷保護範囲とが重なって表示されるが、塔屋が避雷保護範囲内に収まっているか、避雷保護範囲の外に露出している部分があるのかを判断することができない。
【0057】
以上説明した実施形態において、建築確認検査支援装置30は、点群データ取得部304と、点群モデル生成部305とを有する場合について説明したが、これらの機能を建築確認検査支援装置30ではなく他のサーバ装置やコンピュータ等に搭載し、建築確認検査支援装置30が、生成された点群モデルを得るようにしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態において、建築確認検査支援装置30が、判定部308、判定結果出力部309を有する場合について説明したが、建築確認検査支援装置30ではなく、端末装置10(または端末装置11)に、判定部308と判定結果出力部309の機能を搭載するようにしてもよい。例えば、端末装置10は、BIMデータ記憶部3021からBIMデータを取得し、この得られたBIMデータからBIMモデルを生成する。また、端末装置10は、点群モデル生成部305によって生成された点群モデルを建築確認検査支援装置30から取得する。そして、端末装置10に搭載される判定部308の機能によって、BIMデータと点群モデルとが一致するか否かを判定し、端末装置10に搭載される判定結果出力部309の機能によって、端末装置10の表示画面に判定結果に応じた画像を表示するようにしてもよい。
ここで、端末装置10または端末装置11が判定部308と判定結果出力部309の機能を有する場合であっても、BIMデータについては、建築確認検査支援装置30から取得するようにしたので、端末装置10や端末装置11のように、異なる端末装置において同じ建築物について判定を行う場合であっても、同じBIMデータを基に判定することができるため、同じ判定結果を得ることができる。すなわち、BIMデータが建築確認検査支援装置30から別のコンピュータ等にコピーされた場合には、BIMデータが加工される可能性があるため、そのような加工されたBIMデータを用いた判定が行われないようにすることができる。
【0059】
次に、他の実施形態について説明する。
図11は、他の実施形態における建築確認検査支援システムSaの構成を示す概略ブロック図である。図11において、図1における建築確認検査支援システムSと相違する部分は、端末装置11としてヘッドマウントディスプレイ11a及び入力装置11bが用いられている点、建築確認検査支援装置30が建築確認検査支援装置30aである点において異なる。
【0060】
ヘッドマウンドディスプレイ11aと入力装置11bは、1人の利用者によって利用される。すなわち、1人の利用者の頭部にヘッドマウントディスプレイが装着され、この利用者の手に入力装置11bが保持される。ここで利用者は、例えば、建築物の確認検査を行う検査担当者、確認検査に立ち会う担当者、仮想三次元空間内において建物の内部を案内する案内担当者等のうちいずれであってもよい。
この図11では、ヘッドマウントディスプレイ11aと入力装置11bの1組の端末ユニットが1人の利用者によって利用される場合について説明するが、端末ユニットを複数組用意し、それぞれ異なる利用者によって利用されるようにしてもよい。この場合、いずれのヘッドマウントディスプレイと入力装置とが組であるかについては、ヘッドマウントディスプレイに割り当てられた識別番号と、入力装置に割り当てられた識別番号の対応関係を組み毎に予め建築確認検査支援装置30aの記憶部302に記憶されており、建築確認検査支援装置30aは、この記憶された組データを参照することで、組み合わせを識別できるようになっている。
【0061】
ヘッドマウントディスプレイ11aは、加速度センサ及びジャイロセンサを有する。ヘッドマウントディスプレイ11aは、加速度センサの検出値とジャイロセンサの検出値を、所定周期で建築確認検査支援装置30aに無線によってネットワークNWを介して送信する。
また、ヘッドマウントディスプレイ11aは、記憶部を有しており、建築確認検査支援装置30aから送信される各種データを無線によってネットワークNWを介して受信して記憶する。また、この記憶部は、予め各種データを記憶していてもよい。
ヘッドマウントディスプレイ11aは、表示装置を有しており、ヘッドマウントディスプレイ11aが利用者に装着された場合に当該利用者の眼前に位置するように配置される表示装置を有する。表示装置は、各種画像を表示する。この表示装置は、両眼立体視用の三次元画像を表示するようにしてもよいし、単眼立体視用の三次元画像を表示するようにしてもよい。これにより、各種検査を行う対象の建築物について、臨場感を高めることができる。
【0062】
入力装置20は、操作ボタンを有する。操作ボタンは、入力装置20が利用者の手によって把持された状態において、親指や人差し指等の指からの操作入力を受け付ける。入力装置11bは、例えば、三次元空間における視点位置を指定する操作入力を受け付ける。操作ボタンは、押下可能であり、操作ボタンが押されたか否かに応じた操作内容を検出する。また、入力装置20は、上下方向、左右方向をアナログ量によって入力可能な操作スティックを有していてもよい。
入力装置20は、利用者によって操作ボタン、操作スティック等から入力された操作内容を検出し、検出結果を建築確認検査支援装置30aに無線によってネットワークNWを介して送信する。
【0063】
建築確認検査支援装置30aは、建築確認検査支援装置30が有する機能の他に、さらに、操作データ取得部311と、画像生成部312と、画像出力部313とを有する。
操作データ取得部311は、加速度センサの検出値とジャイロセンサの検出値をヘッドマウントディスプレイ11aから取得する。また、操作データ取得部311は、入力装置11bに対して入力された操作内容を入力装置11bから取得する。
【0064】
操作データ取得部311は、姿勢取得部311aと、視点位置取得部311bを有する。
姿勢取得部311aは、ヘッドマウントディスプレイ11aの姿勢が検出された検出結果をヘッドマウントディスプレイ11aからネットワークNWを介して通信部301によって受信し、取得する。
視点位置取得部311bは、三次元空間における視点位置を指定する操作入力を受け付ける。視点位置取得部311bは、操作入力を受け付ける場合、例えば、入力装置11bに対して利用者によって操作入力された操作内容を、入力装置11bからネットワークNWを介して通信部301によって受信し、取得する。
【0065】
画像生成部312は、建築物の設計データに基づいて生成される三次元モデルである設計モデルと、建築物を計測した計測結果に基づいて生成される三次元モデルである計測モデルとが仮想三次元空間に配置される三次元画像であり、設計モデルと計測モデルとが一致しているか否かを把握可能な三次元画像を生成する。仮想三次元空間は、メタバースとも呼ばれる場合がある。画像生成部312は、生成された仮想三次元空間に対してさらに、仮想三次元空間における利用者の視点位置に応じた位置に対して、利用者のアバター画像を表示させる。
設計モデルは、BIM(Building Information Modeling)データに基づいて生成される建築物を表す三次元モデル、または、設計データに応じて定まる法規制空間を表す三次元モデルであってもよい。
【0066】
画像生成部312は、上述の三次元画像を生成する場合、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向から見た三次元画像を生成することもできる。
また、画像生成部312は、上述の三次元画像を生成する場合、視点位置取得部311bによって取得された視点から見た三次元画像を生成することもできる。
また、画像生成部312は、上述の三次元画像を生成する場合、視点位置取得部311bによって取得された視点から、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向を見た三次元画像を生成することもできる。
画像生成部312は、生成した三次元画像を建築物毎に記憶部302に記憶しておき、ヘッドマウントディスプレイ11a(または入力装置11b)から送信される表示要求に基づいて、制御部310が、記憶部302に記憶された三次元画像を読み出し、要求元のヘッドマウントディスプレイ11aに送信するようにしてもよい。ここでは、ヘッドマウントディスプレイ11a(または入力装置11b)からの表示要求を受信した時点において、画像生成部312が三次元画像を生成してもよいし、画像生成部312が事前に三次元画像を生成して記憶部302に記憶しておき、ヘッドマウントディスプレイ11a(または入力装置11b)からの表示要求に応じて、記憶部302から読み出し、ヘッドマウントディスプレイ11aに送信するようにしてもよい
【0067】
画像出力部313は、画像生成部312によって生成された三次元画像を利用者の頭部に装着されるヘッドマウントディスプレイに表示させる。
画像出力部313は、三次元画像を表示させるにあたり、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向を検出し、検出された視線方向から見た三次元画像をヘッドマウントディスプレイ11aに表示させる。
また、画像出力部313は、視点位置取得部311bによって取得された視点から見た三次元画像をヘッドマウントディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0068】
図12は、建築確認検査支援装置30aの動作を説明するフローチャートである。
この図において、建築確認検査支援装置30aは、ステップS101、ステップS102、ステップS102A、ステップS102B、ステップS102C、ステップS103、ステップS104については、図5Bと同様の処理であるので、説明を省略し、相違する点について説明する。
ステップS104の後、画像生成部312は、設計モデルと計測モデルとが仮想三次元空間に配置された三次元画像を生成する(ステップS110)。ここで用いられる設計モデルは、BIMデータに基づいて生成された建築物を表す三次元モデルと、法規制空間を表す三次元モデルとのうち少なくともいずれか一方であればよい。例えば、画像生成部312は、BIMデータに基づいて生成された建築物を表す三次元モデルと、法規制空間を表す三次元モデルとの両方と、BIMデータに基づいて生成された建築物を表す三次元モデルとを三次元空間に配置した三次元画像を生成する。
設計モデルと計測モデルとが仮想三次元空間に配置されると、管理者は、管理者の端末装置を用いて、設計モデルと計測モデルとの位置合わせを行うようにしてもよい。ここでは、設計モデルと点群モデルとの位置合わせが行われると、点群モデルと法規制空間モデルとの位置合わせも行われることになる。
【0069】
次に、建築確認検査支援装置30aの操作データ取得部311は、ヘッドマウントディスプレイ11aと入力装置11bとのうち少なくともいずれか一方から入力される操作内容に応じた操作データを取得する(ステップS111)。
この操作データは、姿勢取得部311aによって取得されるヘッドマウントディスプレイ11aの姿勢が検出された検出結果、または、入力装置11bに入力される操作内容が検出された検出結果のうち少なくともいずれか一方であればよい。例えば、利用者の頭部の姿勢が変化(例えば、右を向く、左を向く、下を向く、上を向く等)したが、入力装置11bには何も操作入力がされていない場合には、操作データ取得部311は、ヘッドマウントディスプレイ11aの姿勢が検出された検出結果をヘッドマウントディスプレイ11aから取得する。ここでは、頭部の姿勢の変化を操作入力としてみなすこともできる。
また、頭部の姿勢が変化せず、入力装置11bに対して操作入力がされた場合には、操作データ取得部311は、入力装置11bに対する操作入力が検出された検出結果を入力装置11bから取得する。入力装置11bに対する操作入力の内容としては、例えば、視点位置を高さ方向において、高い位置へ変更する指示、低い位置へ変更する指示、視点位置を水平方向のいずれかの方向(前方、後方、右方向、左方向等)へ移動させる指示等であってもよい。
また、利用者の頭部の姿勢が変化し、かつ、入力装置11b対して操作入力がなされた場合、操作データ取得部311は、ヘッドマウントディスプレイ11aの姿勢が検出された検出結果と、入力装置11bに対する操作入力が検出された検出結果との両方を取得する。
【0070】
操作データが取得されると、画像生成部312は、視点位置取得部311bによって取得された視点から、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向を見た三次元画像を生成する(ステップS112)。
画像出力部313は、画像生成部312によって生成された三次元画像を表す画像データをヘッドマウントディスプレイ11aに送信する(ステップS113)。ヘッドマウントディスプレイ11aは、建築確認検査支援装置30aの画像出力部313から得られる三次元画像を表す画像データを受信し、受信した画像データを表示する。これにより、利用者は、自身が指定する視点位置から見た画像であって、自身の頭部の姿勢に応じた視線方向の三次元画像を視認することができる。
【0071】
次に、制御部310は、操作データをヘッドマウントディスプレイ11aまたは入力装置11bから受信したか否かを判定する(ステップS114)。操作データを受信している場合(ステップS114-YES)、制御部310は、処理をステップS110に移行する。これにより操作データ取得部311は、受信された操作データを取得する。
一方、制御部310は、操作データを一定時間受信していない場合(ステップS114-NO)、確認申請と同一であることの確認判定をする(ステップS115)。制御部106は、確認申請と同一である場合には、処理を終了し(ステップS115-YES)、確認申請と異なる場合には、処理をステップS101に進める。ここで、制御部310は、ステップS114において「NO」と判定された場合に、「同じでしょうか?」のメッセージと、「YES」、「NO」等の選択肢の画像をヘッドマウントディスプレイ11aの表示装置に表示させ、入力装置11bから「YES」等の肯定的な回答が入力された場合に同一であると判定してもよく、入力部103から「NO」等の否定的な回答が入力された場合に同一ではない、と判定するようにしてもよい。
【0072】
図13は、ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。
図13は、仮想三次元空間において、BIMデータに応じた三次元画像に対して点群データに応じた三次元画像が重ねられた三次元画像の一例を示す。
図13では、設計モデルに応じた三次元モデルと計測データに応じた三次元モデルとが重ね合わされた画像が表示される。そのため、設計モデルに応じた三次元モデルと計測データに応じた三次元モデルとが一致している箇所については、重なった状態で表示されるが、一致していない箇所については、重なっている部分と重なっていない部分が存在する。これにより、重なっていない部分は、一致している箇所に比べて、色が異なる状態で表示される。例えば、BIMデータによって規定された窓の大きさよりも、点群データによって表された窓の大きさの方が小さい場合には、設計上では開口しているにもかかわらず壁が存在する部分があるため、その壁が存在する部分(例えば符号133)については、開口している部分が計測された箇所比べて、表示態様(例えば色)が異なる。
【0073】
また、図13では、操作用アイコン(符号130、符号131)が表示されるとともに、フロア図(符号132)が表示される。これらの操作アイコン、フロア図については、表示と非表示を切り替えられるようになっていてもよい。また、これらの操作アイコン、フロア図については、利用者の頭部の姿勢や視点位置が変更された場合であっても、表示画面上において配置された位置は変更されない。
【0074】
また、この画面には、確認検査を行う担当者のアバターが表示される(符号134)。確認検査を行う担当者の他に、立ち合いをする担当者等がいる場合には、確認検査を行う担当者のアバターとは別のアバター(符号135)が表示される。1つの仮想三次元空間に複数の利用者が利用する場合には、それぞれの担当者に応じて異なるアバターが、視点位置に応じて配置されるため、他の担当者がどの位置において確認検査を行っているかを把握することができる。また、アバターがいずれの方向を向いているかに基づいて、担当者の視線方向を確認することができる。
また、利用者の頭部の姿勢や視点位置が変更された場合には、仮想三次元空間において、その変更後の頭部の姿勢、視点位置に応じた画像が表示されるため、視点位置を自由に変更することができ、また、頭部の姿勢に応じて視線方向を簡単に変更することができるため、任意の視点位置や任意の視線方向に変更したとしても、新たな位置合わせ等をすることなく、円滑に確認検査を行うことができる。
これにより、検査担当者は、ヘッドマウントディスプレイ11aを装着し、仮想三次元空間として表示された画像を見ることで、点群データに基づく三次画像とBIMデータに基づく三次元画像を比較することで、確認検査を行うことができる。ここでは、仮想三次元空間(メタバース)において、三次元画像を任意の視点と視線方向から建築物や点群データ、法規制空間等を見ることができるため、現場にいるかのような臨場感や没入感を得ることができる。
【0075】
図14は、ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。図14は、仮想三次元空間において、BIMデータに応じた三次元画像に対して、点群データに応じた三次元画像が重ねられるとともに、法規制空間モデルに応じた三次元画像(符号140)が重ねられた三次元画像の一例を示す。
ここでは、BIMデータに応じた三次元画像において天井から下方に80cmまでの範囲について、排煙に有効な開口部を把握可能な法規制空間モデルとして三次元画像(符号140)が表示される。そして、開口部(例えば窓)を表すBIMデータに基づく三次元画像と点群データに基づく三次元画像とが重なっており、かつ、この開口部が、排煙に有効な開口部を把握可能な法規制空間モデルの領域内にある場合には、自然排煙の有効な開口部に該当する部分(符号141)であることが視覚化されるため、確認検査を簡単に行うことができる。
また、法規制空間モデルのうち、このような自然排煙の有効な開口部に該当する部分(符号141)については、他の部分とは異なる表示態様(例えば異なる色)で表示するようにしてもよい。これにより、いずれの部分が自然排煙の有効な開口部に該当する部分であるかを直感的に把握することができる。
【0076】
このような法規制空間モデルについては、入力装置11bからの操作入力に基づいて、表示させるか非表示とさせるかについて切り替えられるようにしてもよい。これにより、例えば、床、壁、天井、開口部について、法規制空間モデルが表示された状態と非表示とされた状態とを見比べながら、位置や大きさの関係を確認するようにしてもよい。また、BIMモデルに応じた三次元画像と、点群データに基づく三次元画像とについて表示と非表示を切り替えられるようにし、いずれか一方を非表示にするようにしてもよい。
また、この図において、自然排煙の有効な開口部を表す法規制空間モデルを元に確認検査を行う場合について説明したが、室が居室と非居室のいずれであるか、室において自然排煙、機械排煙、排煙免除(法的性能項目)等についての法規制空間モデルを表示し、確認検査を行うようにしてもよい。
【0077】
図14では、法規制空間モデルが排煙に有効な開口部を示すモデルである場合について示しているが、法規制空間を表すことができれば、自然排煙の有効な開口部とは異なる法規制空間を表すモデルについて表示するようにしてもよい。
図15は、ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。図15は、仮想三次元空間において、BIMデータに応じた三次元画像に対して、点群データに応じた三次元画像が重ねられるとともに、法規制空間モデルに応じた三次元画像が重ねられた三次元画像の一例を示す。ここでは、法規制空間モデルとして、延焼のおそれがある部分(符号150)と、道路斜線範囲・隣地斜線範囲(符号151)を表す三次元画像が表示される。
このような延焼のおそれがある部分(符号150)と、道路斜線範囲・隣地斜線範囲(符号151)のそれぞれについて、入力装置11bからの操作入力に基づいて、表示させるか非表示とさせるかを切り替えられるようにしてもよい。これにより、例えば、BIMモデルに応じた三次元画像と、点群データに基づく三次元画像を表示させた状態において、法規制空間モデルが表示された状態と非表示の状態とを見比べながら、位置や大きさの関係を確認するようにしてもよい。また、BIMモデルに応じた三次元画像と、点群データに基づく三次元画像とについて表示と非表示を切り替えられるようにし、いずれか一方を非表示にするようにしてもよい。
【0078】
また、ここでは、入力装置11bから入力される指示に基づいて、利用者が確認検査を行う視点位置を、床面、地面等の人間が立つことができる位置から高さ方向に離れた空中のいずれかの位置であって、水平方向における任意の位置を指定することができる。そのため、通常では立ち入ることができない位置や、立ち入ることができたとしても実際に確認したい位置まで移動しなくても、自由視点による、設計モデルと計測モデルとの整合確認、法規制空間モデルとの整合確認を行うことができる。例えば、建築物の上空から見下ろした場合の視点等から見た場合についても判定結果を表示画面上において確認することができる。例えば、建築物をカメラによって撮像した画像に対して点群データを重畳させるようなVR画像によって確認検査を行う場合では、カメラによって撮影をする人が地上または床面上であって、立ち入ることができる範囲から撮像された画像に基づく検査を行うことにとどまるが、上述の実施形態では、高さ方向のいずれかの位置や、建築物において立ち入ることが難しい位置からみた場合の確認検査が可能となる。
また、利用者の視点位置に応じた位置に、利用者のアバター(符号152)が表示されるため、利用者がどのような位置から確認検査を行っているかを確認することができる。また、視点位置や視線方向を変更できるだけでなく、入力装置11bからの入力操作に基づいて、ズームアップ、ズームアウト等も行うことができる。例えば、ズームアップをすることで、法規制区間モデルと、点群データに基づく三次元画像の対応関係を、確認したい箇所に近づいた状態で表示させることができるため、例えば、点群データに基づく三次元画像が、法規制区間モデルの範囲内に収まってるか否か等を拡大した状態で確認することができる。
また、他の利用者のアバターも表示されるため、他の利用者がどの視点位置であっていずれの視線方向から確認検査を行っているかを把握することも可能である。
【0079】
図16は、ヘッドマウントディスプレイ11aに表示される画像の一例を示す図である。図16は、仮想三次元空間において、BIMデータに応じた三次元画像に対して、点群データに応じた三次元画像(符号160)が重ねられるとともに、法規制空間モデルの一例である、避雷保護範囲(符号161)が重ねられた三次元画像の一例を示す。
この図において、視点位置は、確認検査の対象である建築物の外部であって、建築物の高さよりも高い位置に視点位置から、建築物を見下ろすようにした場合の三次元画像が表示されている。そして、避雷保護範囲(符号161)の中に建築物が収まっているか否かを確認することで、法規制空間に収まっているか否かに基づく確認検査を行うことができる。
【0080】
また、利用者の視点位置に応じた位置にアバターが表示されるが、建築物よりも高い位置であって、建築物からある程度離れた位置から見た場合であっても、その位置から確認検査を行うことができる。これにより、通常では立ち入ることができない位置からであっても、確認検査を行うことができる。
また、ここでは、1つの仮想三次元空間において、第1のアバター(符号162)と、第2のアバター(符号163)とが表示されており、複数の利用者が確認検査をしている場合について示されている。そして、第1のアバター(符号162)に対応する利用者と、第2のアバター(符号163)に対応する利用者は、チャット機能を用いてチャット画面に表示されるメッセージをやり取りすることができる。これにより、複数の利用者がそれぞれ異なる遠隔地にいる場合であっても、1つの建築物について、チャット機能によりメッセージのやり取りをし、検査箇所の確認や、検査の進捗状況等を確認しながら確認検査を進めることもできる。
メッセージは、入力装置11bから文字入力をし、メッセージ送信ボタンを押すことで、自分が装着するヘッドマウントディスプレイ11aと、他の利用者が利用するヘッドマウントディスプレイ11aのそれぞれのチャット画面にメッセージが表示される。
このようなチャット機能は、制御部310がチャット機能のプログラムを実行することで実現するようにしてもよい。
【0081】
以上説明した実施形態では、画像生成部312が三次元画像を生成し、画像出力部313から画像データを出力するようにしたが、判定結果出力部309aが、判定結果データを、仮想三次元空間に合成することで、ヘッドマウントディスプレイ11aに表示させるようにしてもよい。これにより、利用者は、ヘッドマウントディスプレイ11aを介して、判定結果データについて画像を通じて確認することができる。
【0082】
また、例えば、判定結果出力部309aは、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向から見た三次元画像を生成し、視線方向から見た三次元画像を前記ヘッドマウントディスプレイに表示させるようにしてもよい。
また、判定結果出力部309aは、視点位置取得部311bによって取得された視点から見た三次元画像を生成し、視点から見た三次元画像をヘッドマウントディスプレイに表示させるようにしてもよい。
また、判定結果出力部309aは、視点位置取得部311bによって取得された視点から、姿勢取得部311aによって取得された姿勢に基づく視線方向を見た場合の三次元画像を生成し、視線方向から見た三次元画像をヘッドマウントディスプレイに表示させる。
ここでは、設計モデルと点群モデルとの形状の対応関係について把握することができる画像を出力する機能については、少なくとも画像生成部306b、判定結果出力部309aのいずれが有していてもよい。
【0083】
以上説明した実施形態によれば、仮想三次元空間において、設計データに基づく三次元画像と、点群データに基づく三次元画像とを重ねて表示するようにしたので、奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することが可能となる。
ここで、従来において、確認検査を行う手法の一つとして、確認検査を行う対象の建築物の室外または室内において建築物をカメラによって撮像し、撮像画像に対して、BIMデータに基づく三次元画像を合成した合成画像を確認することで、確認検査を行う手法(AR技術を用いた手法)がある。
このようなARを用いた手法では、現実の画像をBIMデータに基づく三次元画像を重畳させるための位置合わせをする必要がある。
【0084】
このような位置合わせは、事前に現地に設置されたマーカーをカメラで読み取り、マーカーの位置に基づいて、BIMデータに基づく三次元画像と、カメラによって撮像された実物の建築物の画像との表示位置を合わせる。しかし、このAR技術を用いた手法では、例えば、建築物内において撮影範囲を変えることで別の箇所の確認検査を行おうとすると、カメラを移動させる必要があり、カメラの位置を移動したとしても、BIMモデルに応じた三次元画像の位置はそのままであるため(追従していない)、BIMモデルの三次元画像が表示された位置とカメラ画像との位置ズレが生じる。そのため、カメラの撮像範囲を移動する度に、現地に設置されたマーカーを手掛かりにしてカメラ画像と、BIMデータに基づく三次元画像との位置合わせを再度行う必要があり、手間がかかる。
【0085】
また、このようなマーカーは、確認検査を行う可能性がある位置に予め設置しておく必要があり、また、確認検査が終了した場合には、マーカーを撤去する必要がある。
【0086】
また、現地の画像は、現地にいる撮影担当者がカメラの位置や撮像方向を変えることで撮影されている。そのため、建築物とは遠隔地にいる検査者(確認検査を行う担当者)が、確認検査を行う対象の箇所を変更する場合(1つの部屋において出入口側の確認検査が終了し、窓側の確認検査を行いたい場合、別の部屋について確認検査をする場合等)、撮影画面を変更する必要がある。すなわち、確認検査を行うことできる範囲は、撮影担当者がカメラによって撮像している範囲に限られてしまう。この場合、検査者は、現地の撮影担当者に対して、どのような範囲を撮像するかの指示をし、撮像範囲を変更してもらう必要がある。そのため、遠隔地にいる検査者は、自分の意志で自由に視点を移動することが出来ないため、不便である。
また、建築物のある箇所をカメラで撮像して確認検査を行うことに並行して、同じ建築物の異なる箇所を確認検査をする場合には、別の撮影担当者が別のカメラを準備して撮像する必要がある。そのため、1つの建築物の異なる複数の箇所を並行して確認検査を行おうとすると、複数の箇所のそれぞれに、撮影担当者とカメラとを配置する必要があり、必要な人手と機材が増大してしまう。
【0087】
これに対し、上述した他の実施形態によれば、設計データに基づく三次元画像と、計データに基づく三次元画像とを仮想三次元空間において重ねた三次元画像を生成するようにしたので、視点や視線方向の変更があったとしても、マーカーを用いた位置合わせをする必要がなく、また、視点や視線方向を変更する場合であっても、撮影担当者に対してカメラの撮影位置や撮影方向を変更してもらう必要がない。
よって、上述した他の実施形態によれば、奥行き方向においても、設計データと実際の建築物との対応関係を確認することについても可能であり、また、確認検査を行う対象の箇所を変更するための移動時の手間がかからず、遠隔地にいる複数の検査者が自由視点で臨場感のある目視確認が可能となる。
また、視点位置または視線方向を変更したとしても、現地の撮影担当者が移動することに伴う位置合わせをする必要がないため、カメラの移動に伴う位置合わせの手間が無くなり、遠隔地の検査者が設計データと計測データとが合成された三次元画像を仮想三次元空間内において自由に見て回ることができ、確認検査等の各種検査をすることが可能となる。
【0088】
また、上述した実施形態では、建築確認検査支援システムS、建築確認検査支援システムSaを、確認検査を行う場合に用いる場合について説明したが、建築物の各種検査または確認を行う場合であっても、適用することができる。例えば、確認検査の他には品質検査、中間検査、完了検査等を行う場合に用いることができる。
品質検査は、建築物の品質を確保するために、建築物の施工期間において日常的に行われる検査であり、設計者や、施工者がそれぞれ独自に行う場合がある。例えば、点群データを定期的、あるいは検査を行うタイミングに応じて計測することが取得し、その時点において、設計通りに施工が進んでいるかを確認することができる。
中間検査は、建築確認と完了検査の間に実施される検査であり、工事完了時において壁の内側等に隠蔽され見えなくなってしまうような箇所を検査するものである。このような中間検査において、壁の内側に位置する柱が設計どおり施工されているか否か等について、仮想三次元空間において確認することも可能となる。
完了検査は、工事が完了してから所定期間内に行われる検査である。工事が完了した後であっても、その時点の点群データを計測しておくことで、仮想三次元空間を用いて検査を行うことができる。
また、建築確認検査支援システムS、建築確認検査支援システムSaを用いた各種検査または確認を行う場合としては、「工事監理者が工事項目ごとに実施する設計図書との照合・確認する業務」、「施工管理技士が行う建物が設計図・仕様書どおりの品質を達成できるよう管理する品質管理」、「建築主や関係者間の合意形成」等を行う場合においても用いることができる。
【0089】
なお、上述した実施形態において、位置合わせを行う場合、点群データに基づく点群モデルとBIMデータに基づく設計モデルとの整合を確認する際に、第1段階として、現物(建築物)と点群モデルとについて、現物に付されたマーカーを用いて位置合わせして重ね合わせることで、検査時点の現物と検査時点以前に撮影した点群が一致していること(対応関係にあること)を確認することができる。そして、第2段階として、点群モデルとBIMデータに基づく設計モデルとの整合を確認する。
ここで、第1段階の現物と点群モデルとの位置合わせを行う際には、すでに点群モデルとBIMデータの位置合わせが終了した状態で行われる。
これにより、現物と点群モデルとが整合する場合には、点群モデルとBIMデータに基づく設計モデルとの整合が、現物とBIMデータに基づく設計モデルとの整合に相当すると判断することができる。
現物(施工状況)と確認申請されたBIMデータに基づく設計モデルとが整合していることの確認は、マーカーとカメラ画像との位置合わせを行う、AR検査を用いた手法を適用することができる。そして、上述の第1段階の確認を完了させた上で、現物(施工状況)と確認申請されたBIMデータに基づく設計モデルとが整合していれば、検査合格として判断することが可能である。
【0090】
また、以上説明した実施形態において、建築物の3次元形状を計測する計測装置Lとして、LiDARを用いる場合について説明したが、建築物の三次元形状を計測することができるのであれば、LiDAR以外の計測装置を用いるようにしてもよい。例えば、計測装置Lとしては、360°映像を計測する計測装置(例えば、フォトグラメトリー)、その他の各種センサによるセンシングデータを用いるようにしてもよい。
【0091】
上述した実施形態における建築確認検査支援装置30、端末装置10、端末装置11をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0092】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10,11…端末装置,11a…ヘッドマウントディスプレイ11a,11b…入力装置,30…建築確認検査支援装置,30a…建築確認検査支援装置,101…通信部,102…記憶部,103…入力部,104…表示部,105…撮像部,106…制御部,301…通信部,302…記憶部,303…BIMモデル生成部,304…点群データ取得部,305…点群モデル生成部,307…法規制空間モデル生成部,308…判定部,309…判定結果出力部,310…制御部,311…操作データ取得部,311a…姿勢取得部,311b…視点位置取得部,312…画像生成部,313…画像出力部,3021…BIMデータ記憶部,3022…判定結果記憶部,3023…点群データ記憶部,S…建築確認検査支援システム,Sa…建築確認検査支援システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16