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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062416
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】糸加工システム及び作業ロボット
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/22 20060101AFI20240430BHJP
   B65H 49/20 20060101ALI20240430BHJP
【FI】
B65H57/22
B65H49/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182426
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2022170223
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】橋本 欣三
(72)【発明者】
【氏名】山本 真人
【テーマコード(参考)】
3F109
3F110
【Fターム(参考)】
3F109BA00
3F109CB01
3F109CB11
3F109CB15
3F110AA03
3F110BA00
3F110CA03
3F110DB04
(57)【要約】
【課題】給糸パッケージからの糸の解舒を安定して円滑に行う。
【解決手段】延伸仮撚加工機1は、POYである糸3が巻かれた給糸パッケージ5をセット可能なペグ12と、ペグ12にセットされた給糸パッケージ5の糸3を加工して巻取パッケージが形成される加工ポジション35と、ペグ12にセットされた給糸パッケージ5から解舒された糸3が形成するバルーンの下流側端部で糸3を加工ポジション35に向けて案内する糸ガイド13と、を備える。給糸台車50は、延伸仮撚加工機1に対して作業を行う作業ロボットである。給糸台車50は、給糸パッケージ5からの糸3の解舒が進行するに伴って、給糸パッケージ5及び糸ガイド13のうち少なくとも何れかを移動させて、糸解舒中の給糸パッケージ5と糸ガイド13との距離を減少させる給糸パッケージ位置調整装置57を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能な給糸保持部と、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される加工ポジションと、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する糸ガイドと、を備える糸加工機に対して作業を行う作業ロボットであって、
前記給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるバルーン調整装置を含むことを特徴とする作業ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の作業ロボットであって、
前記バルーン調整装置は、コントローラの制御により、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させることを特徴とする作業ロボット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業ロボットであって、
前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられており、
前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能とする走行装置及び/又は昇降装置を有することを特徴とする作業ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載の作業ロボットであって、
前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行うパッケージ供給装置を有し、前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能とすることを特徴とする作業ロボット。
【請求項5】
糸加工機と、当該糸加工機に対して作業を行う作業ロボットと、を備えた糸加工システムであって、
前記糸加工機は、合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能な給糸保持部と、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される加工ポジションと、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する糸ガイドと、を有し、
前記作業ロボットは、前記給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるバルーン調整装置を含むことを特徴とする糸加工システム。
【請求項6】
請求項5に記載の糸加工システムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるように前記バルーン調整装置を制御することを特徴とする糸加工システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の糸加工システムであって、
前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられており、
前記作業ロボットは、前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にする走行装置及び/又は昇降装置を有することを特徴とする糸加工システム。
【請求項8】
請求項7に記載の糸加工システムであって、
前記作業ロボットは、前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行うパッケージ供給装置を有し、前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にすることを特徴とする糸加工システム。
【請求項9】
請求項5から8までの何れか一項に記載の糸加工システムであって、
前記作業ロボットの前記バルーン調整装置は、前記糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを段階的に移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を段階的に減少させることを実行することを特徴とする糸加工システム。
【請求項10】
糸加工機と、当該糸加工機に対して作業を行う作業ロボットと、を備えた糸加工システムであって、
前記糸加工機は、合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能な給糸保持部と、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される加工ポジションと、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する糸ガイドと、を有し、前記給糸保持部が前記加工ポジションに対して1対設けられ、かつ、前記1対の給糸保持部に対して共通の1つの前記糸ガイドが設けられ、更に、前記1対の給糸保持部のそれぞれにセットされた2つの給糸パッケージのうち、いずれの給糸パッケージから糸が解舒されているかを検知する糸解舒中給糸パッケージ検知装置が設けられており、
前記作業ロボットは、前記糸解舒中給糸パッケージ検知装置によって糸が解舒されていると検知された糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、当該給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるバルーン調整装置を含むことを特徴とする糸加工システム。
【請求項11】
請求項10に記載の糸加工システムであって、
コントローラを備え、
前記コントローラは、前記糸解舒中給糸パッケージ検知装置の検知結果に基づいて、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるように前記バルーン調整装置を制御することを特徴とする糸加工システム。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の糸加工システムであって、
前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられており、
前記作業ロボットは、前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にする走行装置及び/又は昇降装置を有することを特徴とする糸加工システム。
【請求項13】
請求項12に記載の糸加工システムであって、
前記作業ロボットは、前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行うパッケージ供給装置を有し、前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にすることを特徴とする糸加工システム。
【請求項14】
請求項11から13までの何れか一項に記載の糸加工システムであって、
前記作業ロボットの前記バルーン調整装置は、前記糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを段階的に移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を段階的に減少させることを実行することを特徴とする糸加工システム。
【請求項15】
請求項5から14までの何れか一項に記載の糸加工システムであって、
前記給糸保持部の少なくとも前記給糸パッケージのセット部分が前記糸ガイドに対して接近及び離間可能に構成されていることを特徴とする糸加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸加工システム、及び、糸加工機を対象として作業を行う作業ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、糸加工機の一種である延伸仮撚加工機を開示する。
【0003】
特許文献1の延伸仮撚加工機は、仮撚装置と、クリールと、を備える。クリールは、給糸パッケージを装着可能なペグを備える。延伸仮撚加工機とは別に、クリールに沿って走行可能な給糸台車が設けられている。給糸台車は、ペグから空の給糸パッケージを抜き出し、新しい給糸パッケージをペグに挿入することができる。延伸仮撚加工機において、ペグに挿入された給糸パッケージから糸が繰り出され、この糸に対して、仮撚装置により仮撚加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-32377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給糸パッケージから解舒された糸は、その回転と遠心力によって、給糸パッケージのすぐ下流側にバルーンを形成する。バルーンが形成される位置は、給糸パッケージと、給糸パッケージよりもすぐ下流側にある糸ガイドと、の間である。
【0006】
糸の繰出しが進行して給糸パッケージの径が徐々に小さくなると、それに応じて、バルーンの形状が変化する。バルーンの形状が安定しない場合、給糸パッケージからの糸の解舒の円滑さが損なわれる場合がある。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、給糸パッケージからの糸の解舒が進行しても、給糸パッケージからの糸の解舒を円滑に行うことにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の作業ロボットが提供される。即ち、この作業ロボットは、糸加工機に対して作業を行う作業ロボットである。前記糸加工機は、給糸保持部と、加工ポジションと、糸ガイドと、を備える。前記給糸保持部は、合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能である。前記加工ポジションでは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される。前記糸ガイドは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する。前記作業ロボットは、前記給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるバルーン調整装置を含む。
【0010】
これにより、給糸パッケージから糸が解舒される際に形成されるバルーンの形状を制御できるので、糸の解舒を円滑に行うことができる。
【0011】
前記の作業ロボットにおいては、前記バルーン調整装置は、コントローラの制御により、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させることが好ましい。
【0012】
これにより、コントローラがバルーン調整装置を制御することによりバルーンの形状を制御することができる。
【0013】
前記の作業ロボットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられている。前記作業ロボットは、前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能とする走行装置及び/又は昇降装置を有する。
【0014】
これにより、作業ロボットがバルーン調整装置を用いて複数の給糸保持部に対して作業を行うことができるので、構成の共通化によってコストを低減できる。
【0015】
前記の作業ロボットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業ロボットは、前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行うパッケージ供給装置を有する。前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能とする。
【0016】
これにより、糸加工機に給糸パッケージを供給する作業ロボットがバルーン調整作業も行うので、構成の共通化によってコストを削減できる。
【0017】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸加工システムが提供される。即ち、この糸加工システムは、糸加工機と、当該糸加工機に対して作業を行う作業ロボットと、を備える。前記糸加工機は、給糸保持部と、加工ポジションと、糸ガイドと、を有する。前記給糸保持部は、合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能である。前記加工ポジションでは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される。前記糸ガイドは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する。前記作業ロボットは、バルーン調整装置を含む。前記バルーン調整装置は、前記給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させる。
【0018】
これにより、給糸パッケージから糸が解舒される際に形成されるバルーンの形状を制御できるので、糸の解舒を円滑に行うことができる。
【0019】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸加工システムは、コントローラを備える。前記コントローラは、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるように前記バルーン調整装置を制御する。
【0020】
これにより、コントローラがバルーン調整装置を制御することによりバルーンの形状を制御することができる。
【0021】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられている。前記作業ロボットは、前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能とする走行装置及び/又は昇降装置を有する。
【0022】
これにより、バルーン調整装置を用いて複数の給糸保持部に対して作業を行うことができるので、構成の共通化によってコストを低減できる。
【0023】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業ロボットは、前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行うパッケージ供給装置を有する。前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にする。
【0024】
これにより、糸加工機に給糸パッケージを供給する作業ロボットがバルーン調整作業も行うので、構成の共通化によってコストを削減できる。
【0025】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業ロボットの前記バルーン調整装置は、前記糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを段階的に移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を段階的に減少させることを実行する。
【0026】
これにより、糸解舒中の給糸パッケージと糸ガイドとの距離調整を、時間間隔をあけて行うことができる。従って、作業ロボットが距離調整作業と距離調整作業の間に他の作業をすることができるので、効率的な活用を実現することができる。
【0027】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の糸加工システムが提供される。即ち、この糸加工システムは、糸加工機と、作業ロボットと、を備える。前記作業ロボットは、当該糸加工機に対して作業を行う。前記糸加工機は、給糸保持部と、加工ポジションと、糸ガイドと、を有する。前記給糸保持部は、合成繊維糸が巻かれた給糸パッケージをセット可能である。前記加工ポジションでは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージの糸を加工して巻取パッケージが形成される。前記糸ガイドは、前記給糸保持部にセットされた給糸パッケージから解舒された糸が形成するバルーンの下流側端部で糸を前記加工ポジションに向けて案内する。前記給糸保持部が前記加工ポジションに対して1対設けられ、かつ、前記1対の給糸保持部に対して共通の1つの前記糸ガイドが設けられる。前記糸加工機には、糸解舒中給糸パッケージ検知装置が設けられている。前記糸解舒中給糸パッケージ検知装置は、前記1対の給糸保持部のそれぞれにセットされた2つの給糸パッケージのうち、いずれの給糸パッケージから糸が解舒されているかを検知する。前記作業ロボットは、バルーン調整装置を含む。前記バルーン調整装置は、前記糸解舒中給糸パッケージ検知装置によって糸が解舒されていると検知された糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを移動させて、当該給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させる。
【0028】
これにより、給糸パッケージから糸が解舒される際に形成されるバルーンの形状を制御できるので、糸の解舒を円滑に行うことができる。糸が解舒されている給糸パッケージと、待機側の給糸パッケージと、を適宜切り替えることで、糸加工機への糸供給の連続性を確保できる。2つの給糸パッケージのうち糸が解舒される給糸パッケージを検出して、当該給糸パッケージにおいて形成されるバルーンの形状を適切に制御することができる。
【0029】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸加工システムは、コントローラを備える。前記コントローラは、前記糸解舒中給糸パッケージ検知装置の検知結果に基づいて、前記給糸パッケージからの糸の解舒の進行に伴って前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を減少させるように前記バルーン調整装置を制御する。
【0030】
これにより、コントローラがバルーン調整装置を制御することによりバルーンの形状を制御することができる。
【0031】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸加工機において、前記加工ポジションが複数設けられ、かつ、前記給糸保持部及び前記糸ガイドが前記複数の加工ポジションに対応してそれぞれ複数設けられている。前記作業ロボットは、前記バルーン調整装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にする走行装置及び/又は昇降装置を有する。
【0032】
これにより、バルーン調整装置を用いて複数の給糸保持部に対して作業を行うことができるので、構成の共通化によってコストを低減できる。
【0033】
前記の糸加工システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記作業ロボットは、パッケージ供給装置を有する。前記パッケージ供給装置は、前記複数の給糸保持部のそれぞれに対し前記給糸パッケージをセットする作業を行う。前記走行装置及び/又は前記昇降装置は、前記バルーン調整装置とともに前記パッケージ供給装置を前記複数の給糸保持部の位置に移動可能にする。
【0034】
これにより、糸加工機に給糸パッケージを供給する作業ロボットがバルーン調整作業も行うので、構成の共通化によってコストを削減できる。
【0035】
前記の糸加工システムにおいては、以下のように構成することが好ましい。即ち、前記作業ロボットの前記バルーン調整装置は、前記糸解舒中の給糸パッケージからの糸の解舒が進行するに伴って、前記糸解舒中の給糸パッケージ及び前記糸ガイドのうち少なくとも何れかを段階的に移動させて、前記糸解舒中の給糸パッケージと前記糸ガイドとの距離を段階的に減少させることを実行する。
【0036】
これにより、糸解舒中の給糸パッケージと糸ガイドとの距離調整を、時間間隔をあけて行うことができる。従って、作業ロボットが距離調整作業と距離調整作業の間に他の作業をすることができるので、効率的な活用を実現することができる。
【0037】
前記の糸加工システムにおいては、前記給糸保持部の少なくとも前記給糸パッケージのセット部分が糸ガイドに対して接近及び離間可能に構成されていることが好ましい。
【0038】
これにより、給糸パッケージを円滑に移動させることができる。従って、糸解舒中の給糸パッケージと糸ガイドとの距離調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係る仮撚加工システムの全体的な構成を示す側面図。
図2】給糸台車がストッカから給糸パッケージを取り出す様子を示す側面図。
図3】給糸台車がペグから空ボビンを外す様子を示す側面図。
図4】給糸台車が給糸パッケージをペグに掛ける様子を示す側面図。
図5】給糸台車が給糸パッケージのペグへのセットを完了した様子を示す側面図。
図6】給糸パッケージの径が減少した場合に、給糸台車が給糸パッケージを押して糸ガイドに近づける様子を示す側面図。
図7】押出装置の構成を示す斜視図。
図8】糸の経路に沿って展開した延伸仮撚加工機を示す模式図。
図9】2つの給糸パッケージのうち、いずれの給糸パッケージから糸が解舒されているかを検知する構成の変形例を示す模式図。
図10】押出装置によって給糸パッケージを押す様子を詳細に示す拡大斜視図。
図11】給糸パッケージを移動させる構成の変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る仮撚加工システム100の全体的な構成を示す側面図である。
【0041】
図1に示す仮撚加工システム(「糸加工システム」の一例)100は、延伸仮撚加工機1と、給糸台車(「作業ロボット」の一例)50と、搬出台車90と、コントローラ40と、を備える。延伸仮撚加工機1は、糸加工機の一種である。糸加工機としては、他に例えばエア加工機がある。延伸仮撚加工機1は、糸の一種(合成繊維糸の一種)であるPOYと呼ばれる半延伸糸(部分配向糸)に対して延伸及び仮撚加工を行うことにより、DTYと呼ばれる延伸仮撚加工糸を生産することができる。POYは、Partially Oriented Yarnの略称である。DTYは、Draw Textured Yarnの略称である。
【0042】
延伸仮撚加工機1は、クリール11と、本体部31と、を備える。本体部31は、複数の加工ポジション(「錘」とも呼ばれる)35を備える。それぞれの加工ポジション35は、第1フィードローラ21と、第2フィードローラ22と、第3フィードローラ23と、仮撚装置25と、第1ヒータ26と、第2ヒータ27と、ワインダ28と、を有する。延伸仮撚加工機1において、本体部31を構成する複数の加工ポジション35は、ワインダ28の箇所を除き、並列配置されている。ワインダ28は、複数の加工ポジション35の複数のワインダ28が3段×m列(mは、所定の整数)に並べて配置されている。
【0043】
クリール11は、複数のペグ(給糸保持部)12を備える。給糸台車50側から見たときに、ペグ12は4段×n列(nは、所定の整数)のマトリクス状に並べて配置されている。それぞれのペグ12には、給糸パッケージ5をセットすることができる。給糸パッケージ5は、POYを芯管に巻いたものである。給糸パッケージ5は、図示しない紡糸巻取機の紡糸機においてPOYが作られ、当該紡糸巻取機の巻取機においてPOYが芯管に巻かれることで形成される。クリール11の多数のペグ12は、加工ポジション35毎に2つずつに分けられる。
【0044】
図7には、ある1つの加工ポジション35に対応する2つのペグが示されている。図7に示すように、ペグ12は2つ1組で設けられている。同一の組に属する2つのペグは、水平方向で隣接するように配置されている。同一の組に属して1対となった2つのペグは、1つの加工ポジション35に対応して設けられている。一方のペグ12に装着されている給糸パッケージ5から糸3が1つの加工ポジション35に向けて解舒されている間、他方のペグ12に装着されている給糸パッケージ5は待機している。糸3が解舒されている側の給糸パッケージ5の糸終端部は、待機側の給糸パッケージ5の糸始端部と結合される。従って、2つの給糸パッケージ5のうち1つから全ての糸3が解舒されると、自動的に残りの給糸パッケージ5から糸が解舒される。同一組の2つの給糸パッケージ5のうち、糸が解舒されている側の給糸パッケージ5を糸解舒中給糸パッケージ5といい、残りの側の給糸パッケージ5を待機給糸パッケージ5という。
【0045】
給糸台車50は、クリール11の各ペグ12の位置に移動可能に構成され、全ての糸が解舒されて芯管状態となっている給糸パッケージ5(この状態を「空のボビン」という。)をペグ12から取り外し、新しい給糸パッケージ5をペグ12にセットする作業を行う。空のボビンは、給糸台車50によって延伸仮撚加工機1の機外に搬出され、新しい給糸パッケージ5は、給糸台車50によって延伸仮撚加工機1の機外から搬入される。
【0046】
2つのペグ12よりも糸走行方向の下流側において、糸ガイド13が設けられている。糸ガイド13は、同一の組に属する2つのペグ12に対して1つ配置されている。2つのペグ12は何れも、その先端が糸ガイド13を向くように配置される。従って、2つのペグ12の向きは平行ではない。2つの給糸パッケージ5の何れから糸3が解舒される場合でも、糸3は共通の糸ガイド13を通過する。
【0047】
糸ガイド13は、給糸パッケージ5から解舒された糸3が最初に通過する案内部材である。従って、糸3は、給糸パッケージ5と糸ガイド13の間でバルーンを形成する。糸ガイド13は、バルーンの下流側端部に位置する。
【0048】
以下、1つの糸ガイド13と1対のペグ12からなる給糸のための構成を、給糸ポジション9と呼ぶことがある。1つの給糸ポジション9は1つの加工ポジション35に対応している。クリール11には、加工ポジション35と等しい数の給糸ポジション9が配置されている。
【0049】
図8で示すように、糸ガイド13には、糸解舒検知センサ(「糸解舒中給糸パッケージ検知装置」の一例)16が設けられている。糸解舒検知センサ16は、同一の組に属する2つのペグ12にそれぞれ1つずつ装着された2つの給糸パッケージ5のうち、いずれの給糸パッケージ5から糸が解舒されているかを検知することができる。糸解舒検知センサ16は、前述のコントローラ40に電気的に接続されている。図8においては、図面の簡潔さのため、1対のペグ12は平行に描かれている。後述の図9においても同様である。
【0050】
糸解舒検知センサ16は、第1検知部17と、第2検知部18と、を有する。第1検知部17は、同一の組に属する2つのペグ12にそれぞれ装着された2つの給糸パッケージ5のうちの一方の給糸パッケージ5から、糸3が解舒されているか否かを検知可能に構成されている。第2検知部18は、上述の2つの給糸パッケージ5のうちの他方の給糸パッケージ5から糸3が解舒されているか否かを検知可能に構成されている。第1検知部17及び第2検知部18は、例えば、それぞれが糸3を光学的に検知する光学センサである。糸解舒検知センサ16のより詳細については、例えば特許第5873105号公報を参照されたい。第1検知部17及び第2検知部18は、光学センサに代わるものとして、例えば、接触式のセンサであっても良い。コントローラ40は、センサ16の検知結果に基づいて、2つの給糸パッケージ5のうちの一方から他方へ糸の解舒が切り替わったことを知ることができ、それにより、一方が空になったことを知ることができる。コントローラ40が行う制御の詳細は後述する。
【0051】
同一の組に属する2つのペグ12にそれぞれ1つずつ装着された2つの給糸パッケージ5のうち、いずれの給糸パッケージ5から糸が解舒されているかを検知する方法としては、上記の他に以下の方法がある。
【0052】
図9には、同一組の2つの給糸パッケージ5の糸終端部と糸始端部との結合部Kを検知する結合部検知センサ19を備える変形例が示されている。結合部検知センサ19は、前述のコントローラ40に電気的に接続されている。この結合部検知センサ19が結合部Kの存在を検知することで、いずれの給糸パッケージ5から糸が解舒されているかを検知することができる。具体的には、一方の給糸パッケージ5から他方の給糸パッケージ5に糸3の解舒が切り替わる際に結合部Kがセンサ19から外れる。コントローラ40は、結合部検知センサ19に基づいて、糸が解舒される給糸パッケージ5が切り替わったか否かを判断することができる。
【0053】
また、同一組の2つの給糸パッケージ5のそれぞれの径を直接測定するセンサにて各給糸パッケージ5の径の変化を確認することで、いずれの給糸パッケージ5から糸が解舒されているかを検知することができる。その他、カメラにて同一組の2つの給糸パッケージ5を撮影し、その画像を解析することによっても可能である。
【0054】
ペグ12のそれぞれに対応して、上下方向に細長いペグ軸14がクリール11に設けられている。それぞれのペグ軸14は、上下方向の軸を中心として回転可能にクリール11に支持されている。図1に示すように、ペグ12より上方の位置で、ペグ軸14には回転入力部材15が設けられている。回転入力部材15は、棒状の部材を放射状に並べた構成となっている。回転入力部材15が回転すると、ペグ軸14を介してペグ12が旋回する。これにより、ペグ12を、その先端が糸ガイド13を向く姿勢と、給糸台車50側を向く姿勢と、の間で切り替えることができる。
【0055】
図1に示すように、糸ガイド13から下流側に送られた糸3は、第1フィードローラ21を通過する。第1フィードローラ21と第2フィードローラ22の間で、延伸のための適宜の張力が糸3に付与される。第1フィードローラ21と第2フィードローラ22との間のうち下流側に、仮撚装置25が配置されている。仮撚装置25が糸3に撚りを加えることで、第1フィードローラ21と仮撚装置25との間の糸3は加撚状態となる。
【0056】
第1フィードローラ21と仮撚装置25の間に、熱固定のための第1ヒータ26が設けられている。糸3は、第1ヒータ26によって、延伸可能な温度まで加熱される。
【0057】
仮撚装置25から下流側に送られた糸3は、第2フィードローラ22を通過する。第2フィードローラ22と第3フィードローラ23との間で、糸3が弛緩される。
【0058】
第2フィードローラ22と第3フィードローラ23の間に、熱固定のための第2ヒータ27が設けられる。糸3は、第2ヒータ27によって、弛緩されながら再び加熱される。
【0059】
第3フィードローラ23を通過した糸3は、ワインダ28に送られる。ワインダ28は、供給された糸3を芯管に巻いて、DTYのパッケージ(「巻取パッケージ」と呼ぶ)6を形成する。満巻になった巻取パッケージ6は、図示しない玉揚装置によってワインダ28から取り外され、搬出台車90に移動する。巻取パッケージ6は、搬出台車90によって延伸仮撚加工機1の機外に搬出される。搬出台車90は、例えば天井走行台車として構成することができる。
【0060】
次に、給糸台車50について説明する。給糸台車50は、延伸仮撚加工機1との関係では機外の作業ロボットに相当する。給糸台車50は、延伸仮撚加工機1のクリール11に対して、給糸パッケージ5のセット作業等を外部から行う。
【0061】
給糸台車50は、走行部材51(「走行装置」の一部)と、昇降部材52(「昇降装置」の一部)と、ペグ旋回装置53と、旋回ヘッド54と、給糸パッケージセット装置55(「パッケージ供給装置」の一部)と、空ボビン回収装置56と、給糸パッケージ位置調整装置57(「バルーン調整装置」の一例)と、を備える。
【0062】
走行部材51は、ベース部材61と、柱部材62と、を備える。
【0063】
ベース部材61は、地面に設置されたレール63の長手方向に沿って移動可能に設けられている。レール63の長手方向は、クリール11において1組のペグ12が水平に並ぶ方向と平行に向けられている。
【0064】
柱部材62は、上下方向に延びる細長い部材である。柱部材62は、ベース部材61から上方に突出するように配置されている。
【0065】
昇降部材52は、柱部材62の長手方向に沿って昇降可能に設けられている。昇降部材52に、ペグ旋回装置53と、後述の旋回ヘッド54と、が配置される。
【0066】
給糸台車50には、図示しない複数のアクチュエータが設けられている。これにより、走行部材51をレール63に沿って水平方向に移動させ、また、昇降部材52を上下方向に移動させることができる。
【0067】
昇降部材52の上部には、ペグ旋回装置53が取り付けられている。ペグ旋回装置53は、回転入力部材15に噛み合った状態で回転可能な噛合いヘッド64を備える。
【0068】
噛合いヘッド64は、回転ディスクを備える。回転ディスクの下面には、上下方向に細長い複数のピンが設けられている。ピンは、回転ディスクの円周方向に等間隔で並べて配置されている。回転ディスクを回転させるために、ペグ旋回装置53には、図示しないアクチュエータが設けられている。ピンが回転入力部材15の棒状の部材の間に入っている状態で回転ディスクを回転させると、回転入力部材15を回転させることができる。この結果、ペグ軸14を回転させて、ペグ12の向きを変更することができる。
【0069】
ペグ旋回装置53は、図略のアクチュエータを備える。このアクチュエータは、噛合いヘッド64を、クリール11のペグ軸14に近づく方向及び離れる方向に移動させることができる。従って、必要なときだけ噛合いヘッド64を回転入力部材15に噛み合わせることができる。
【0070】
ペグ旋回装置53の下面から突出するように、支軸65が設けられている。旋回ヘッド54は、ペグ旋回装置53から支軸65を介して吊り下げられるように配置されている。
【0071】
給糸台車50は、図略のアクチュエータを備える。このアクチュエータにより、支軸65を中心として旋回ヘッド54を旋回させることができる。
【0072】
旋回ヘッド54に、給糸パッケージセット装置55と、空ボビン回収装置56と、給糸パッケージ位置調整装置57と、が取り付けられている。
【0073】
給糸パッケージセット装置55は、スライド移動可能な受渡しペグ68を備える。この受渡しペグ68には、クリール11のペグ12にセットするための給糸パッケージ5を掛けて保持することができる。受渡しペグ68を長手方向に移動させるために、給糸パッケージセット装置55に図略のアクチュエータが設けられている。
【0074】
給糸台車50の走行経路に隣接するように、ストッカ66が設けられている。ストッカ66は、複数の給糸パッケージ5を保管することができる。ストッカ66は、給糸台車50の走行経路を挟んでクリール11と反対側に設けられている。しかし、ストッカ66はクリール11と同じ側に設けられても良い。
【0075】
旋回ヘッド54を旋回させることにより、給糸パッケージセット装置55の向きを、受渡しペグ68がストッカ66を向く状態と、受渡しペグ68がクリール11を向く状態と、の間で変更することができる。
【0076】
空ボビン回収装置56は、スライド可能な引込部材69を備える。この引込部材69は直線状に細長く形成されている。平面視で、引込部材69の長手方向は、受渡しペグ68の長手方向と90°異なっている。引込部材69の先端には、上方を向くように曲げられた引掛部が形成される。
【0077】
コントローラ40は、演算装置、記憶装置等を備える公知のコンピュータとして構成される。コントローラ40は、延伸仮撚加工機1と給糸台車50と搬出台車90とを管理及び/又は制御する。なお、コントローラ40は、延伸仮撚加工機1用と給糸台車50用と搬出台車90用とに分けて設けられていても良い。コントローラ40には、延伸仮撚加工機1の給糸ポジション9毎に設けられた糸解舒検知センサからの信号が入力される。これにより、コントローラ40は、各給糸ポジション9の同一組の2つのペグのうち、いずれのペグ12に装着された給糸パッケージ5が解舒中の給糸パッケージであるか、及び、いずれか一方から他方の給糸パッケージ5に糸の解舒が切り替わったことを、把握することができる。また、コントローラ40は、いずれか一方から他方の給糸パッケージ5に糸の解舒が切り替わったことを知ることにより、いずれか一方の給糸パッケージ5が空になった(糸が無くなった)ことを把握することができる。更に、コントローラ40は、糸の解舒が切り替わったことと、初期の満巻の給糸パッケージ5の径及び全糸長と、糸解舒速度と、糸解舒の切り替わりからの経過時間とから、糸解舒中の給糸パッケージ5の径を把握することができる。即ち、コントローラ40は、糸解舒中の給糸パッケージ5の径を把握する糸解舒中給糸パッケージ径把握手段を備えている。なお、この実施例において、糸解舒中給糸パッケージ径把握手段は、糸解舒中の給糸パッケージ5の径を満巻の給糸パッケージ5から空になるまでの大径、中径、小径の3段階で把握するようにしている。大径、中径、小径の大きさは、適宜設定される。以上に示したコントローラ40の把握事項は、全ての給糸ポジション9(言い換えれば、加工ポジション35)において可能となっている。
【0078】
給糸台車50は、コントローラ40の指令に従い動作する。給糸台車50に備えられた給糸パッケージ位置調整装置57も、同様にコントローラ40の指令に従い動作する。コントローラ40は、ある給糸ポジション9において、糸解舒中の給糸パッケージ5が空となった場合に、当該給糸ポジション9に向かうように給糸台車50に指令する。また、コントローラ40は、ある給糸ポジション9において、糸解舒中の給糸パッケージ5が大径から中径に変わったとき、又は、中径から小径に変わったときに、当該給糸ポジション9に向かうように給糸台車50に指令する。複数の給糸ポジション9において、ほぼ同時期に、糸解舒中の給糸パッケージ5が空となること、糸解舒中の給糸パッケージ5が大径から中径に変わること、又は、中径から小径に変わることが生じる場合があるが、このような場合には、予め設定された優先順位に従って、給糸台車50は、優先順位の高い給糸ポジション9に移動するようになっている。
【0079】
糸解舒中の給糸パッケージ5が大径から中径に変わった給糸ポジション9、又は、中径から小径に変わった給糸ポジション9に向かった給糸台車50は、当該給糸ポジション9において、給糸パッケージ位置調整装置57により、糸解舒中の給糸パッケージ5を糸ガイド13に所定距離近づける。
【0080】
次に、クリール11のあるペグ12に掛けられた糸解舒中の給糸パッケージ5から糸3が全て解舒された場合の給糸台車50の動作について説明する。
【0081】
図2に示すように、ある給糸ポジション9において糸解舒中の給糸パッケージ5から糸3が全て解舒されて空ボビン5aとなった場合、最初に、給糸台車50はストッカ66まで走行して停止する。ある給糸ポジション9において、糸解舒中の給糸パッケージ5から糸3が全て解舒されて空ボビン5aとなったことは、前記したようにコントローラ40にて把握できる。この状態で、給糸台車50は旋回ヘッド54を回転させる。これにより、給糸パッケージセット装置55の受渡しペグ68がストッカ66を向く状態とすることができる。この状態で、受渡しペグ68が、ストッカ66に保持されている満巻の給糸パッケージ5に近づくように移動し、当該給糸パッケージ5をストッカ66から取り出す。これにより、ストッカ66に保管されていた給糸パッケージ5を受渡しペグ68に掛けることができる。給糸パッケージ5が掛けられた状態で、受渡しペグ68はストッカ66から離れる方向に移動する。
【0082】
次に、コントローラ40から指令を受けて、給糸台車50は、レール63に沿って走行するとともに、必要に応じて昇降部材52を上下方向に移動させる。給糸台車50は、空ボビンが発生した給糸ポジション9のペグ12の付近に昇降部材52が位置する状態で静止する。
【0083】
昇降部材52の移動とほぼ同時に、給糸台車50は旋回ヘッド54を旋回させ、空ボビン回収装置56の向きを、引込部材69がクリール11を向く状態となるように変更する。その後、空ボビン回収装置56は、引込部材69をクリール11へ近づくように移動させる。この結果、引込部材69の引掛部がペグ12の根元部付近に近接した状態となる。この状態でペグ旋回装置53が噛合いヘッド64を回転入力部材15に噛み合わせて回転させることにより、図3に示すように、空ボビン5aが掛かった状態のペグ12を旋回させ、給糸台車50側を向く状態とすることができる。これに伴って、ペグ12に保持された空ボビン5aは、引込部材69の引掛部よりも給糸台車50に近い側に位置する。
【0084】
続いて、空ボビン回収装置56は、引込部材69をクリール11から離れるように移動させる。この結果、引込部材69の引掛部が空ボビン5aを押すので、空ボビン5aをペグ12から抜き取ることができる。引込みによってペグ12から外れた空ボビン5aは、旋回ヘッド54に取り付けられた受け皿67に落下する。
【0085】
空ボビン回収装置56の動作完了後、給糸台車50は旋回ヘッド54を回転させる。これにより、給糸パッケージセット装置55の向きを、受渡しペグ68がクリール11を向く状態とすることができる。給糸パッケージセット装置55は、図4に示すように、満巻の給糸パッケージ5が掛けられた受渡しペグ68を、クリール11に近づく向きに移動させる。これにより、給糸パッケージ5をペグ12に掛けることができる。その後、給糸パッケージセット装置55は、受渡しペグ68を、クリール11から離れる向きに移動させる。これにより、受渡しペグ68から給糸パッケージ5が外れる。
【0086】
この状態で、ペグ旋回装置53が噛合いヘッド64を回転入力部材15に噛み合わせて回転させる。これにより、図5に示すように、給糸パッケージ5が掛かった状態のペグ12を、糸ガイド13側を向くように旋回させることができる。
【0087】
以上で空ボビン5aから満巻の給糸パッケージ5への交換作業が完了する。その後、給糸台車50は、ペグ旋回装置53の噛合いヘッド64を退避させた後、受け皿67に回収した空ボビン5aを別の場所へ搬送するために走行する。ペグ12に今回セットした満巻の給糸パッケージ5の糸始端部は、糸3が解舒されている側の給糸パッケージ5の糸終端部と、適宜の方法で結合される。
【0088】
次に、給糸台車50が備える給糸パッケージ位置調整装置57について詳細に説明する。
【0089】
給糸パッケージ位置調整装置57は、図6に示すように、スライド移動可能な押出装置70を備える。押出装置70は、ペグ12に掛けられた給糸パッケージ5をクリール11の外部から押すことにより、ペグ12の長手方向に沿って、給糸パッケージ5を糸ガイド13に近づけることができる。
【0090】
押出装置70は、図7に示すように、スライドベース71と、案内プレート72と、モータ73と、押圧部材74と、ラックピニオン機構75と、を備える。
【0091】
スライドベース71は、細長い板状の部材である。スライドベース71は、旋回ヘッド54から突出するように配置されている。スライドベース71が向く方向は、給糸パッケージセット装置55において受渡しペグ68が向く方向と平行である。
【0092】
旋回ヘッド54には、レール81が設けられている。スライドベース71は、レール81に沿ってスライド移動可能である。レール81の長手方向は、スライドベース71の長手方向に対して平行である。
【0093】
スライドベース71を移動させるために、旋回ヘッド54には、アクチュエータとしてのシリンダ82が取り付けられている。作動流体を供給してシリンダ82を駆動することにより、スライドベース71を、その先端がペグ軸14に近接した位置と、ペグ軸14から退避した位置と、の間で移動させることができる。アクチュエータとしてはシリンダに限定されず、例えば電動モータを用いることができる。
【0094】
案内プレート72は、スライドベース71の先端部に固定されている。案内プレート72は、スライドベース71と一体的に移動する。案内プレート72には、押圧部材74の移動方向を案内するレール83が固定されている。
【0095】
モータ73は、押圧部材74を駆動することができる。モータ73のハウジングは、案内プレート72に固定されている。モータ73の出力軸にはピニオンが固定されている。
【0096】
押圧部材74は、L字状の部材である。押圧部材74は、レール83の長手方向に沿ってスライド移動可能である。押圧部材74の移動方向は、平面視でスライドベース71の移動方向に対して傾斜している。押圧部材74の移動方向は、ペグ12の長手方向と実質的に平行である。押圧部材74の移動方向は、糸ガイド13へ近づく方向と言い換えることもできる。
【0097】
押圧部材74の基部には、レール83と平行な直線状に歯が並べて配置されたラックが形成されている。このラックは、モータ73の出力軸に固定されたピニオンとともに、ラックピニオン機構75を構成する。
【0098】
押圧部材74の先端部は、L字状に折り曲げられている。この折り曲げられた部分は、ペグ12に掛けられた給糸パッケージ5の芯管のうち、糸ガイド13から遠い側の端面に接触することができる。押圧部材74が芯管に接触する位置は、ペグ12より低くなっている。
【0099】
コントローラ40は、前記したように、新しい給糸パッケージ5の径及び全糸長、糸解舒速度等に基づいて、新しい給糸パッケージ5をセットしてから解舒された糸3の累計長さを推定計測し、この累計長さに基づいて、解舒中の給糸パッケージ5の径の大きさを推定する。解舒中の給糸パッケージ5の径を適宜のセンサで計測するようにし、計測結果をコントローラ40に送るようにしても良い。給糸パッケージ5の径の推定値が所定値未満になると、コントローラ40は給糸台車50に位置調整要求信号を送信する。
【0100】
位置調整要求信号を受信した給糸台車50は、信号に基づいて特定された給糸ポジション9の、解舒中の給糸パッケージ5に対応する位置で、給糸パッケージ位置調整装置57の押出装置70を動作させる。具体的に説明すると、押出装置70はシリンダ82を駆動して、スライドベース71をクリール11へ進出させる。これにより、スライドベース71の先端に配置されている押圧部材74が、ペグ12の根元部に近接する。次に、押出装置70はモータ73を駆動し、ラックピニオン機構75によって、押圧部材74を必要な距離だけ移動させる。これにより、押圧部材74の先端部が芯管を押すので、給糸パッケージ5をペグ12に対して滑らせるように、長手方向に沿って移動させることができる。この結果、糸ガイド13と給糸パッケージ5の間の距離が減少するので、糸ガイド13と給糸パッケージ5の間のバルーンが安定して形成されるようになる。
【0101】
給糸パッケージ5の移動が完了すると、押出装置70は、モータ73を上記と逆向きに駆動する。この結果、押圧部材74が給糸パッケージ5から離れる向きに移動する。押圧部材74が元の位置に戻った後、押出装置70はシリンダ82を駆動して、スライドベース71をクリール11に対して退避させる。
【0102】
一般的に、延伸仮撚加工機1のクリール11には多数の給糸パッケージ5がセットされ、多数の糸3が同時並行的に解舒される。本実施形態においては、1台の給糸台車50が、この多数の給糸パッケージ5の位置を調整する。対象となる給糸パッケージ5の数が多い場合は、それぞれの給糸パッケージ5をキメ細かく移動させることは難しい。しかし、大まかな段階的にであっても給糸パッケージ5を移動させることができれば、給糸パッケージ5からの糸3の解舒がより円滑になり、また、解舒される糸3の張力が安定することが期待できる。
【0103】
図示しないが、給糸パッケージ位置調整装置57は、押出装置70の向きを変更する反転装置を備える。反転装置は、スライドベース71の長手方向と平行な軸を中心として、押出装置70を180°回転させることができる。図10に示すように、同一の組に属する2つのペグ12は、その向きが互いに異なる。図10には、押出装置70が反転した様子が鎖線で示されている。反転装置が押出装置70の向きを必要に応じて反転することで、2つの給糸パッケージ5のうち何れから糸3が解舒される場合でも、給糸パッケージ5をペグ12に沿って移動させ、バルーンの制御を実現することができる。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態の給糸台車50は、延伸仮撚加工機1に対して作業を行う機外の作業ロボットである。延伸仮撚加工機1は、ペグ12と、加工ポジション35と、糸ガイド13と、を備える。ペグ12には、POYである糸3が巻かれた給糸パッケージ5をセット可能である。加工ポジション35では、ペグ12にセットされた給糸パッケージ5の糸3を加工して巻取パッケージ6が形成される。糸ガイド13は、ペグ12にセットされた給糸パッケージ5から解舒された糸3が形成するバルーンの下流側端部で糸3を案内する。給糸台車50は、給糸パッケージ位置調整装置57を含む。給糸パッケージ位置調整装置57は、給糸パッケージ5からの糸3の解舒が進行するに伴って、給糸パッケージ5及び糸ガイド13のうち少なくとも何れかを移動させて、糸解舒中の給糸パッケージ5と糸ガイド13との距離を減少させる。
【0105】
これにより、給糸パッケージ5から糸3が解舒される際に形成されるバルーンの形状を制御できるので、糸3の解舒を円滑に行うことができる。機外のロボットである給糸台車50がバルーン制御のための作業を行うので、延伸仮撚加工機1の構成を大幅に変更する必要がない。従って、既存の延伸仮撚加工機1への適用も容易である。
【0106】
本実施形態の仮撚加工システム100は、コントローラ40を備える。給糸台車50において、給糸パッケージ位置調整装置57は、コントローラ40の制御により、給糸パッケージ5からの糸3の解舒が進行するに伴って糸解舒中の給糸パッケージ5と糸ガイド13との距離を減少させる。
【0107】
これにより、コントローラ40が給糸パッケージ位置調整装置57を制御することによりバルーンの形状を制御することができる。
【0108】
本実施形態の延伸仮撚加工機1において、加工ポジション35が複数設けられ、かつ、ペグ12及び糸ガイド13が複数の加工ポジション35に対応してそれぞれ複数設けられている。給糸台車50は、給糸パッケージ位置調整装置57を複数のペグ12の位置に移動可能とする走行部材51及び昇降部材52を有する。
【0109】
これにより、給糸台車50が給糸パッケージ位置調整装置57を用いて複数のペグ12に対して作業を行うことができるので、構成の共通化によってコストを低減できる。
【0110】
給糸台車50とは異なるロボットが、上述のバルーン調整作業を行うように構成することもできる。このロボットは、延伸仮撚加工機1に対して機外のロボットに相当し、バルーン調整作業だけを行う。ロボットの構成は任意であるが、例えば自走式のアームロボットとして構成することができる。ロボットは、アームの先端で給糸パッケージ5の端面を押すことにより、給糸パッケージ5を移動させることができる。
【0111】
この構成では、ロボットの制御を簡素化することができる。
【0112】
本実施形態において、給糸台車50は、給糸パッケージセット装置55を備える。給糸パッケージセット装置55は、複数のペグ12のそれぞれに対し給糸パッケージ5をセットする作業を行う。走行部材51及び昇降部材52は、給糸パッケージ位置調整装置57とともに給糸パッケージセット装置55を複数のペグ12の位置に移動可能とする。
【0113】
これにより、延伸仮撚加工機1に給糸パッケージ5を供給する給糸台車50がバルーン調整作業も行うので、構成の共通化によってコストを削減できる。
【0114】
本実施形態の延伸仮撚加工機1において、2つのペグ12に対して1つの糸ガイド13が共通で用いられる。給糸台車50は、2つのペグ12にセットされたそれぞれの給糸パッケージ5を移動させることが可能である。
【0115】
これにより、糸3が解舒されている給糸パッケージ5と、待機側の給糸パッケージ5と、を適宜切り替えることで、延伸仮撚加工機1への糸供給の連続性を確保できる。2つの給糸パッケージ5のうち何れから糸3が解舒される場合であっても、バルーンの形状を制御して、糸3の円滑な解舒を実現できる。
【0116】
本実施形態の給糸台車50において、ペグ12に対する給糸パッケージ5の位置は、ペグ12の長手方向で変更可能である。バルーン調整作業において、給糸台車50は給糸パッケージ5に力を加えて給糸パッケージ5をペグ12に対して移動させる。
【0117】
これにより、簡素な構成で、給糸パッケージ5を保持しつつバルーンの形状を制御することができる。
【0118】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図11は、変形例を示す斜視図である。本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0119】
図11に示す変形例においては、ペグ12xがペグ軸14に対して、ペグ12xの長手方向(言い換えれば、糸ガイド13に接近及び離間する方向)にスライド可能に構成されている。1つの給糸パッケージ5を掛けるために、2つのペグ12xが、適宜の間隔をあけて平行に配置されている。それぞれのペグ12xは、給糸パッケージ5を支持する部分からペグ軸14を挟んで反対側まで延長されている。ペグ12xにおいて給糸パッケージ5を支持する部分と反対側の端部には、伝達部材84が固定されている。伝達部材84は板状に形成されている。押出装置70の押圧部材74は、伝達部材84に接触することができる。
【0120】
本変形例では、押出装置70の押圧部材74は、給糸パッケージ5を直接押す代わりに、伝達部材84を押す。この結果、ペグ12xは、給糸パッケージ5のセット部分を含む全体が移動する。従って、給糸パッケージ5を、ペグ12xとともに、糸ガイド13に近づく向きにスライド移動させることができる。ペグ12xのうち、給糸パッケージ5がセットされる一部だけがスライド移動しても良い。
【0121】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0122】
クリール11は、2つのペグ12,12xに対して1つの糸ガイド13を備える構成に限定されず、1つのペグ12に対して1つの糸ガイド13を備える構成とすることができる。図11の変形例においても同様である。
【0123】
クリール11において糸ガイド13が位置変更可能に設けられても良い。例えば、給糸台車50が糸ガイド13に力を加えて、糸ガイド13を給糸パッケージ5に近づく向きに移動させる構成とすることができる。例えば、押出装置70の代わりに、引込部材69に似た部材を用いて糸ガイド13を給糸台車50側へ引き込む装置(「バルーン調整装置」の一例)を設けることが考えられる。給糸パッケージ5の径の減少に伴って、給糸パッケージ5と糸ガイド13の両方を移動させる構成とすることもできる。ただし、糸ガイド13の位置を変更する場合は、解舒中の給糸パッケージ5が一方の給糸パッケージ5から他方の給糸パッケージ5に切り替わったときに、糸ガイド13の位置を初期の位置に戻す(糸ガイド13を給糸パッケージ5から遠ざける向きに移動させる)必要がある。
【0124】
給糸パッケージ5の径は、解舒された糸3の長さに基づいて推定する代わりに、適宜のセンサを用いて実際に検出しても良い。
【0125】
給糸台車50は、クリール11に対して複数台設けても良い。
【0126】
前述の実施例及び変形例においては、給糸台車50に給糸パッケージ位置調整装置57を備えるようにしていたが、給糸パッケージ位置調整装置57を給糸台車50と切り離して構成しても良い。即ち、給糸パッケージ位置調整装置57を有する作業ロボット(本発明の「作業ロボット」)と、給糸パッケージ位置調整装置57を有しない給糸台車50としての作業ロボットをそれぞれ設けるようにしても良い。この場合において、各作業ロボットの一方又は両方を複数設けるようにしても良い。
【0127】
給糸パッケージ位置調整装置57を有する作業ロボット、即ち、バルーン調整装置を有する作業ロボットは、給糸台車50と同様に移動可能となっていても良く、固定して設けられていても良い。固定して設ける場合は、給糸ポジション9毎に対応して設けるか、複数の給糸ポジション9毎に対応して設けるようにする。給糸ポジション9毎に対応して設ける場合には、1組のペグ12に対して1つの作業ロボットを設けるようにしても良いし、1組のペグ12のそれぞれのペグ12に対して1つずつ作業ロボットを設けるようにしても良い。複数の給糸ポジション9毎に対応して設けるようにする場合には、例えば、バルーン調整装置を昇降可能として、クリール11の上下方向に配置された複数の給糸ポジション9のペグ12の各位置に移動できるようにすれば良い。
【0128】
仮撚機の構成は、図1の延伸仮撚加工機1に限定されず、様々に変更することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 延伸仮撚加工機(仮撚機、糸加工機)
3 糸
5 給糸パッケージ
11 クリール
12,12x ペグ(給糸保持部)
13 糸ガイド
50 給糸台車(ロボット)
図1
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図11