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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062420
(43)【公開日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ガス吸着システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/32 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B01D53/32
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017196
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2024504676の分割
【原出願日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022033831
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和希
(57)【要約】
【課題】効率的に所定のガスを分離・回収することができるガス吸着システムおよびガス吸着システムの運転方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるガス吸着システムは、所定のガスを吸着および放出するように構成される電気化学素子を含むガス吸着部を、複数備える。複数のガス吸着部は、所定のガスが供給される第1吸着部と、第1吸着部を通過したガスが供給される第2吸着部とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吸着システムの運転方法であって、
前記ガス吸着システムは、所定のガスを吸着および放出するように構成される電気化学素子を含むガス吸着部を、複数備え、
複数の前記ガス吸着部は、
前記所定のガスが供給される第1吸着部と、
前記第1吸着部を通過したガスが供給される第2吸着部と、
前記第2吸着部を通過したガスが供給される第3吸着部と、を含み、
前記ガス吸着システムの運転方法は、
前記第1吸着部に前記所定のガスを供給するとともに、前記第1吸着部を通過したガスを前記第2吸着部に供給して、前記第1吸着部および前記第2吸着部に前記所定のガスを吸着させる第1吸着工程と、
前記第1吸着部に対する前記所定のガスの供給を停止するとともに、前記第2吸着部に前記所定のガスを供給し、前記第2吸着部を通過したガスを前記第3吸着部に供給して、前記第2吸着部および前記第3吸着部に前記所定のガスを吸着させる第2吸着工程と、を含む、ガス吸着システムの運転方法。
【請求項2】
前記第1吸着工程の終了後かつ前記第2吸着工程の終了前に、前記第1吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第1吸着部から放出させる第1放出工程と、
前記第2吸着部に対する前記所定のガスの供給を停止するとともに、前記第3吸着部に前記所定のガスを供給して、前記第3吸着部を通過したガスを前記第1吸着部に供給し、前記第1吸着部および前記第3吸着部に前記所定のガスを吸着させる第3吸着工程と、
をさらに含む、請求項1に記載のガス吸着システムの運転方法。
【請求項3】
前記第1吸着工程、前記第2吸着工程および前記第3吸着工程を順に繰り返し、
前記第2吸着工程の終了後かつ前記第3吸着工程の終了前に、前記第2吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第2吸着部から放出させる第2放出工程と、
前記第3吸着工程の終了後、かつ、繰り返された第1吸着工程の終了前に、前記第3吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第3吸着部から放出させる第3放出工程と、
をさらに含む、請求項2に記載のガス吸着システムの運転方法。
【請求項4】
前記電気化学素子は、
第1の活物質を含む機能電極と、
第2の活物質を含むカウンター電極と、を備える、
請求項1から3のいずれかに記載のガス吸着システム。
【請求項5】
前記所定のガスは、二酸化炭素であり、
前記第1の活物質は、アントラキノンを含み、
前記第2の活物質は、ポリビニルフェロセンを含む、
請求項4に記載のガス吸着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸着システムおよびガス吸着システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス混合物から所定のガスを分離・回収する技術の開発が継続的に進められている。特に近年、地球温暖化を軽減するために二酸化炭素(CO)排出量を抑制する必要があり、ガス混合物から二酸化炭素を分離・回収する取り組みがなされている。そのような取り組みの代表例として、二酸化炭素回収・利用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CCUS)サイクルが知られている。ここで、二酸化炭素の回収に関しては、例えば、化学吸着法、物理吸着法、深冷分離法、膜分離法、電気化学的回収方法が知られている。しかし、現在、これらの技術はいずれも、二酸化炭素の回収能力が不十分であり、二酸化炭素の効率的な回収には限度があり、実用化に向けて種々の検討課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-533470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる目的は、効率的に所定のガスを分離・回収することができるガス吸着システムおよびガス吸着システムの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態によるガス吸着システムは、所定のガスを吸着および放出するように構成される電気化学素子を含むガス吸着部を、複数備える。複数の前記ガス吸着部は、前記所定のガスが供給される第1吸着部と、前記第1吸着部を通過したガスが供給される第2吸着部と、を含む。
[2]上記[1]に記載のガス吸着システムにおいて、前記電気化学素子は、第1の活物質を含む機能電極と、第2の活物質を含むカウンター電極と、を備えている。
[3]上記[2]に記載のガス吸着システムにおいて、前記所定のガスは、二酸化炭素であってもよく、前記第1の活物質は、アントラキノンを含んでいてもよく、前記第2の活物質は、ポリビニルフェロセンを含んでいてもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載のガス吸着システムにおいて、複数の前記ガス吸着部は、前記第2吸着部を通過したガスが供給される第3吸着部をさらに含んでいてもよい。
[5]本発明の実施形態によるガス吸着システムの運転方法は、上記したガス吸着システムの運転方法であって、前記第1吸着部に前記所定のガスを供給するとともに、前記第1吸着部を通過したガスを前記第2吸着部に供給して、前記第1吸着部および前記第2吸着部に前記所定のガスを吸着させる第1吸着工程と、前記第1吸着部に対する前記所定のガスの供給を停止するとともに、前記第2吸着部に前記所定のガスを供給し、前記第2吸着部を通過したガスを前記第3吸着部に供給して、前記第2吸着部および前記第3吸着部に前記所定のガスを吸着させる第2吸着工程と、を含む。
[6]上記[5]に記載のガス吸着システムの運転方法は、前記第1吸着工程の終了後かつ前記第2吸着工程の終了前に、前記第1吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第1吸着部から放出させる第1放出工程と、前記第2吸着部に対する前記所定のガスの供給を停止するとともに、前記第3吸着部に前記所定のガスを供給して、前記第3吸着部を通過したガスを前記第1吸着部に供給し、前記第1吸着部および前記第3吸着部に前記所定のガスを吸着させる第3吸着工程と、をさらに含んでいてもよい。
[7]上記[6]に記載のガス吸着システムの運転方法は、前記第1吸着工程、前記第2吸着工程および前記第3吸着工程を順に繰り返し、前記第2吸着工程の終了後かつ前記第3吸着工程の終了前に、前記第2吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第2吸着部から放出させる第2放出工程と、前記第3吸着工程の終了後、かつ、繰り返された第1吸着工程の終了前に、前記第3吸着部に吸着した前記所定のガスを、前記第3吸着部から放出させる第3放出工程とをさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、効率的に所定のガスを分離・回収することができるガス吸着システムおよびガス吸着システムの運転方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの概略構成図である。
図2図1のガス吸着システムが備える電気化学素子の概略斜視図である。
図3図2の電気化学素子のセルが延びる方向に平行な方向の概略断面図である。
図4図2および図3の電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。
図5】本発明の別の実施形態に係る電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態に係る電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態に係る電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。
図8】本発明のさらに別の実施形態に係る電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。
図9】本発明の1つの実施形態のガス吸着システムの運転方法を説明する工程フロー図である。
図10図9の第1吸着工程を説明する工程フロー図である。
図11図9の第2吸着工程を説明する工程フロー図である。
図12図9の第3吸着工程を説明する工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.ガス吸着システムの全体構成
本発明の実施形態によるガス吸着システムは、電気化学的プロセスにより所定のガス(例えば、二酸化炭素)を吸着および放出するように構成される電気化学素子を用いて、ガス混合物から所定のガス(例えば、二酸化炭素)を分離・回収するものである。
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの概略構成図である。図示例のガス吸着システム110は、ガス吸着部の一例としての吸着塔11を複数備える。
吸着塔11は、所定のガス(例えば、二酸化炭素)を吸着および放出するように構成される電気化学素子を含む。複数の吸着塔11は、第1吸着部の一例としての第1吸着塔11aと、第2吸着部の一例としての第2吸着塔11bとを含む。第1吸着塔11aには、所定のガス(例えば、二酸化炭素)が供給される。第2吸着塔11bは、第1吸着塔11aを通過したガスが供給される。このような構成によれば、所定のガスを第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bに順に吸着させることができ、所定のガスが第1吸着塔11aからスリップしても、第1吸着塔11aからスリップした所定のガスを第2吸着塔11bに吸着させることができる。例えば、1つの吸着塔11によってガス混合物から所定のガスを分離・回収する場合、吸着塔11のガス吸着領域におけるガス混合物の通過方向の下流端部に所定のガスの吸着に必要な距離(助走区間)を設けて、吸着塔11から所定のガスがスリップすることを抑制する必要がある。助走区間は、通常の吸着工程では、所定のガスの吸着に利用されないマージン領域である。これに対して、上記のような構成であれば、所定のガスが第1吸着塔11aからスリップしても、第2吸着塔11bが所定のガスを吸着できるので、第1吸着塔11aのガス吸着領域における助走区間を短くでき、第1吸着塔11aのガス吸着容量を効率的に利用できる。また、第1吸着塔11aのガス吸着領域に助走区間を設けることなく、第1吸着塔11aのガス吸着容量を全て使い切ることもできる。その結果、ガス混合物から所定のガスを効率的に分離・回収することができ、かつ、所定のガスがガス吸着システム110からスリップすることを抑制でき得る。例えば、工場や火力発電所の排ガスは10%程度の二酸化炭素を含むところ、そのような排ガスと同様の構成のガス混合物を、本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムにより、吸着塔11を通過したガス混合物における二酸化炭素濃度を0.1%以下まで低減することができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態においては、複数の吸着塔11は、第3吸着部の一例としての第3吸着塔11cをさらに含む。すなわち、複数の吸着塔11は、第1吸着塔11aと、第2吸着塔11bと、第3吸着塔11cとからなってもよい。第3吸着塔11cには、第2吸着塔11bを通過したガスが供給される。このような構成によれば、第1吸着塔11aによる所定のガスの吸着が終了した後、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cを用いて所定のガスを吸着させることができる。また、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cにおける所定のガスの吸着時において、第1吸着塔11aから所定のガスを放出させ得る。
【0012】
本発明の1つの実施形態においては、ガス吸着システム110は、複数の吸着塔11に加えて、ガス供給部21と、排気部31と、ガス回収部41と、第1接続部61と、第2接続部71と、第3接続部81と、制御部51とを備える。このような構成によれば、所定のガス(例えば、二酸化炭素)をガス混合物から円滑に分離・回収でき、かつ、吸着塔11に吸着された所定のガスを、吸着塔11から円滑に放出させることができる。
【0013】
以下、ガス吸着システムの構成要素について具体的に説明する。
【0014】
B.吸着塔
本発明の1つの実施形態においては、複数の吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)は、互いに同じ構成を有してもよく、互いに異なる構成を有してもよい。複数の吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)は、好ましくは、互いに同じ構成を有する。複数の吸着塔11が互いに同じ構成を有すると、設備コストの低減を図り得る。吸着塔11は、複数の電気化学素子と、複数の電気化学素子を収容する反応容器と、を含む。
【0015】
B-1.電気化学素子
図2は、図1のガス吸着システムが備える電気化学素子の概略斜視図であり;図3は、図2の電気化学素子のセルが延びる方向に平行な方向の概略断面図であり;図4は、図2および図3の電気化学素子のセルが延びる方向に直交する方向の要部拡大概略断面図である。図示例の電気化学素子100は、機能電極50と、カウンター電極60とを備える。
【0016】
B-1-1.機能電極
機能電極は、第1の活物質を含み、所定のガス(例えば、二酸化炭素)を回収および放出するよう構成されている。第1の活物質としては、代表的には、アントラキノンが挙げられる。アントラキノンは、後述する電気化学反応により、二酸化炭素を回収(捕捉、吸着)および放出することができる。アントラキノンは、ポリアントラキノン(すなわち、重合体)であってもよい。ポリアントラキノンとしては、例えば、下記式(I)で表されるポリ(1,4-アントラキノン)、ポリ(1,5-アントラキノン)、ポリ(1,8-アントラキノン)、ポリ(2,6-アントラキノン)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
【化1】
【0017】
第1の活物質は、所定のガス(例えば、二酸化炭素)を回収および放出(特に、回収)することができる限りにおいて、アントラキノン以外の任意の適切な物質を用いることができる。このような物質としては、例えば、テトラクロロヒドロキノン(TCHQ)、ヒドロキノン(HQ)、ジメトキシベンゾキノン(DMBQ)、ナフトキノン(NQ)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ジヒドロキシベンゾキノン(DHBQ)、およびこれらのポリマーが挙げられる。
【0018】
機能電極は、基質をさらに含んでいてもよい。ここで「基質」とは、電極(層)を賦形し、その形状を維持する成分をいう。さらに、基質は、第1の活物質を担持し得る。基質は、代表的には導電性である。基質としては、例えば、炭素質材料が挙げられる。炭素質材料としては、例えば、カーボンナノチューブ(例えば、単壁カーボンナノチューブ、多壁カーボンナノチューブ)、カーボンブラック、KetjenBlack、カーボンブラックSuper P、またはグラフェンが挙げられる。基質としてこのような炭素質材料を用いることにより、電子移動を容易に行うことができるので、第1の活物質の酸化還元反応を良好に行うことができる。例えば第1の活物質としてアントラキノンまたはポリアントラキノンを用いる場合、基質の平均細孔径は、好ましくは2nm~50nmであり、より好ましくは2nm~20nmであり、さらに好ましくは3nm~10nmである。平均細孔径が小さすぎると、第1の活物質を内部に担持することができない場合がある。平均細孔径が大きすぎると、機能電極作動中に第1の活物質が脱落する場合がある。基質の平均細孔径は、第1の活物質に応じて変化し得る。例えば第1の活物質としてナフトキノンを用いる場合には、平均細孔径は、上記の2/3程度のサイズが好ましい。なお、平均細孔径は、例えば窒素ガス吸着法におけるBJH解析を用いて算出することができる。
【0019】
機能電極における第1の活物質の含有量は、機能電極の全体質量に対して、例えば10質量%~70質量%であり得、また例えば20質量%~50質量%であり得る。第1の活物質の含有量がこのような範囲であれば、良好なガス回収・放出性能を実現することができる。
【0020】
B-1-2.カウンター電極
カウンター電極は、第1の活物質の還元の電子源として機能することができ、かつ、第1の活物質の酸化の際の電子の受け手として機能することができる。すなわち、カウンター電極は、機能電極が良好に機能するための補助的な役割を果たす。カウンター電極は、第2の活物質を含む。第2の活物質としては、機能電極との間で電子の授受が良好に機能し得る限りにおいて任意の適切な物質が用いられ得る。第2の活物質としては、例えば、ポリビニルフェロセン、ポリ(3-(4-フルオロフェニル))チオフェン等が挙げられる。カウンター電極は、最も高電位となるためガス混合物中の酸素による酸化耐性が求められる。酸化耐性が得られるならば炭素材を用いて第2の活物質としてもよい。
【0021】
カウンター電極は、基質をさらに含んでいてもよい。基質については、機能電極に関して上記B-1-1項で説明したとおりである。1つの実施形態においては、第2の活物質は、基質に分散されている。第2の活物質が基質に分散されていることにより、電極内での優れた電子伝導性を実現できる。
【0022】
カウンター電極は、イオン性液体をさらに含んでいてもよい。カウンター電極がイオン性液体を含むことにより、カウンター電極を立体的に機能させることができ、電子の授受の容量を増大させることができる。イオン性液体としては、目的、電気化学素子の構成等に応じて任意の適切なイオン性液体を用いることができる。イオン性液体は、代表的には、アニオン成分とカチオン成分とを含み得る。イオン性液体のアニオン成分としては、例えば、ハロゲン化物、硫酸、スルホン酸、炭酸、重炭酸、リン酸、硝酸、硝酸、酢酸、PF 、BF 、トリフレート、ノナフレート、ビス(トリフリル)アミド、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロブタン酸、ハロアルミネート、トリアゾリド、アミノ酸誘導体(例えば窒素上のプロトンが除去されているプロリン)が挙げられる。イオン性液体のカチオン成分としては、例えば、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、スルホニウム、チアゾリウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、トリアゾリウム、ピラゾリウム、オキサゾリウム、グアナジニウム、ジアルキルモルホリニウムが挙げられる。イオン性液体は、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩([Bmim][BF)であり得る。分離・回収するガス種が二酸化炭素である場合は、電位窓の関係から水が電気分解する場合があるので、非水系イオン性液体を用いることが好ましい。
【0023】
カウンター電極における第2の活物質の含有量は、カウンター電極の全体質量に対して、例えば10質量%~90質量%であり得、また例えば30質量%~70質量%であり得る。第2の活物質の含有量がこのような範囲であれば、電解液(イオン性液体)の使用量を低減できるとともに、カウンター電極内の第2の活物質を有効的に活用することができる。
【0024】
カウンター電極にイオン性液体が含有される場合、その含有量は、カウンター電極の全体質量に対して、例えば10質量%~90質量%であり得、また例えば30質量%~70質量%であり得る。イオン性液体の含有量がこのような範囲であれば、長期間にわたって電解液(イオン性液体)を機能電極に供給し続けることができる。
【0025】
B-1-3.支持体
本発明の1つの実施形態においては、機能電極50およびカウンター電極60は、支持体80に支持される。支持体80は、外周壁10と;外周壁10の内側に配設され、第1端面20aから第2端面20bまで延びる複数のセル30、30、・・・を規定する隔壁40と;を有する。
【0026】
複数のセル30、30、・・・は、第1のセル30aと第2のセル30bとを有する。第1のセル30aを規定する隔壁40の表面には、第1の活物質を含む機能電極50が形成されている。このような構成であれば、十分な強度を確保しながら所定流量のガス混合物(実質的には、分離・回収すべきガス)と機能電極との接触面積を非常に大きくすることができる。その結果、きわめて高効率で所定のガス(例えば、二酸化炭素)を分離・回収することができる。さらに、小規模設備で効率的に所定のガス(例えば、二酸化炭素)を分離・回収することが可能となり、かつ、当該ガスの分離・回収に必要とされるエネルギーを大幅に削減することができる。このように、本発明の1つの実施形態によれば、電気化学素子の基本構造として上記のようないわゆるハニカム構造を採用することにより、省エネルギーおよび小規模設備で効率的にガスを分離・回収することができる。
【0027】
第1のセル30aのセルが延びる方向に直交する方向の断面における中央部(すなわち、機能電極50が形成されていない部分)には、ガス流路70が形成されている。機能電極50は、図示例のように隔壁40の全面に(すなわち、ガス流路70を包囲するようにして)形成されてもよく、隔壁の表面の一部に形成されてもよい。ガスの分離・回収効率を考慮すると、機能電極50は隔壁40の全面に形成されていることが好ましい。
【0028】
機能電極50の厚みは、例えば20μm~300μmであり得、また例えば100μm~200μmであり得る。機能電極の厚みがこのような範囲であれば、良好なガス回収・放出性能を維持しつつ、所望のガス流路を確保することができる。
【0029】
機能電極50は、例えば、第1の活物質と基質と結着用バインダーとを含む機能電極形成材料を隔壁表面に乾式減圧塗布および熱処理することにより形成され得る。
【0030】
第2のセル30bの内部には、第2の活物質を含むカウンター電極60が配置されている。第2のセル30bは、代表的には、カウンター電極60で充填されている。第2のセル30bがカウンター電極で充填されることにより、長期間にわたって電解液(イオン性液体)を機能電極に供給し続けることができる。
【0031】
カウンター電極60は、例えば、第2の活物質と基質と好ましくはイオン性液体と必要に応じて溶媒または分散媒とを含むカウンター電極形成材料をセル内に配置することにより(代表的には、セルを充填することにより)形成され得る。
【0032】
第1のセル30aおよび第2のセル30bの配列パターンは、本発明の実施形態による効果が得られる限りにおいて、目的に応じて適切に設定され得る。図2図4に示す例においては、第1のセル30aおよび第2のセル30bは交互に(すなわち、市松パターンで)配列されている。このような構成であれば、カウンター電極を良好に機能させることができるので、機能電極における電気化学反応を良好に行うことができる。また、カウンター電極が機能し得る数(割合)を確保し得る限りにおいて、複数のセル30、30、・・・における第2のセル30bの割合を減らしてもよい。すなわち、第1のセル30a(実質的には、機能電極50およびガス流路70)の割合を増やしてもよい。例えば、図5図8に示す例においては、第2のセル30bは、互いに隣接しないように配列されている。この場合、第1のセル30aは、互いに隣接するように配列されていてもよい。ここで、「互いに隣接しない」とは、2つのセルが、それぞれのセルを規定する隔壁の各辺も頂点も共有しないことをいう。このような構成であれば、所定流量のガス混合物(実質的には、分離・回収すべきガス)と機能電極との接触面積をさらに大きくすることができ、その結果、ガスの分離・回収性能をさらに増大させることができる。この場合、第1のセル30aは、代表的には、少なくとも1つの第2のセル30bと隔壁40を共有し得る。例えば、第2のセル30bは、図5図8のそれぞれに示すように配列されてもよい。
【0033】
セル30、30、・・・は、セルの延びる方向に直交する方向において、任意の適切な断面形状を有する。図2図6に示す例においては、セルを規定する隔壁40が互いに直交し、外周壁10と接する部分を除いて四角形(図示例では正方形)の断面形状を有するセルが規定される。1つの実施形態においては、セルの断面形状は、同一形状の四角形(例えば、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形)である。セルの断面形状は、正方形以外に、円形、楕円形、三角形、五角形、六角形以上の多角形などの形状としてもよい。例えば、図7および図8に示す例において、セルの断面形状は、六角形である。このような構成であれば、機能電極およびカウンター電極の形成が容易であり、かつ、ガスを流したときの圧力損失が小さく、分離・回収性能が優れるという利点がある。
【0034】
セルの延びる方向に直交する方向におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル30、30、・・・の数)は、目的に応じて適切に設定され得る。セル密度は、例えば4セル/cm~320セル/cmであり得る。セル密度がこのような範囲であれば、所定流量のガス混合物(実質的には、分離・回収すべきガス)と機能電極との接触面積を非常に大きくすることができる。その結果、きわめて高効率で所定のガス(例えば、二酸化炭素)を分離・回収することができる。例えば、機能電極とカウンター電極とをセパレーターを介して対向させた平板状のガス分離素子の実装密度が0.2m/L程度であるのに対し、上記のような構成であれば2m/L程度(約10倍)の実装密度を確保することができる。その結果、小規模設備で効率的に所定のガス(例えば、二酸化炭素)を分離・回収することが可能となり、かつ、当該ガスの分離・回収に必要とされるエネルギーを大幅に削減することができる。さらに、このような実装密度を確保することにより、大気中からの二酸化炭素の分離・回収(Direct Air Capture:DAC)が可能となり得る。
【0035】
支持体80(外周壁10および隔壁40)は、代表的には、絶縁性セラミックスを含む多孔体で構成されている。絶縁性セラミックスは、代表的には、コージェライト、アルミナあるいは炭化珪素および珪素(以下、炭化珪素-珪素複合材と称する場合がある)を含有する。セラミックスは、コージェライト、アルミナ、炭化珪素および珪素を合計で例えば90質量%以上、また例えば95質量%以上含有する。このような構成であれば、外周壁および隔壁の400℃における体積抵抗率を十分に高くすることができ、電子伝導性に起因するリーク電流を抑えることができる。したがって、機能電極50およびカウンター電極60の全体にわたって所望の電気化学反応のみを良好に行うことができる。セラミックスには、炭化珪素-珪素複合材以外の物質が含まれていてもよい。このような物質としては、例えばストロンチウムが挙げられる。
【0036】
炭化珪素-珪素複合材は、代表的には、骨材としての炭化珪素粒子と、炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素と、を含む。炭化珪素-珪素複合材は、例えば、複数の炭化珪素粒子が炭化珪素粒子間に細孔(空隙部)を形成するようにして珪素により結合されている。すなわち、炭化珪素-珪素複合材を含む隔壁40および外周壁10は、例えば多孔体であり得る。
【0037】
炭化珪素-珪素複合材における珪素の含有比率は、好ましくは10質量%~40質量%であり、より好ましくは15質量%~35質量%である。珪素の含有比率が小さすぎると、外周壁および隔壁の強度が不十分となる場合がある。珪素の含有比率が大きすぎると、外周壁および隔壁の焼成時に形状を保持できない場合がある。
【0038】
炭化珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは3μm~50μmであり、より好ましくは3μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~35μmである。炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であれば、外周壁および隔壁の体積抵抗率を上記のような適切な範囲とすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が大きすぎると、外周壁および隔壁を成形する際に、成形用の口金に原料が詰まってしまう場合がある。炭化珪素粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0039】
支持体80(外周壁10および隔壁40)の平均細孔径は、好ましくは2μm~20μmであり、より好ましくは10μm~20μmである。外周壁および隔壁の平均細孔径がこのような範囲であれば、イオン性液体を良好に含浸させることができる。平均細孔径が大きすぎると、カウンター電極または機能電極中の炭素質材料が隔壁内部に流出する場合があり、その結果、内部短絡が発生する場合がある。平均細孔径は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0040】
支持体80(外周壁10および隔壁40)の気孔率は、好ましくは15%~60%であり、より好ましくは30%~45%である。気孔率が小さすぎると、外周壁および隔壁の焼成時の変形が大きくなってしまう場合がある。気孔率が大きすぎると、外周壁および隔壁の強度が不十分となる場合がある。気孔率は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0041】
隔壁40の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁40の厚みは、例えば50μm~1.0mmであり、また例えば70μm~600μmであり得る。隔壁の厚みがこのような範囲であれば、電気化学素子の機械的強度を十分なものとすることができ、かつ、開口面積(断面におけるセルの総面積)を十分なものとすることができ、ガスの分離・回収効率を顕著に向上させることができる。
【0042】
隔壁40の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁40の密度は、例えば0.5g/cm~5.0g/cmであり得る。隔壁の密度がこのような範囲であれば、電気化学素子を軽量化することができ、かつ、機械的強度を十分なものとすることができる。密度は、例えばアルキメデス法により測定され得る。
【0043】
外周壁10の厚みは、本発明の1つの実施形態においては、隔壁40の厚みより大きい。このような構成であれば、外力による外周壁の破壊、割れ、クラック等を抑制することができる。外周壁10の厚みは、例えば0.1mm~5mmであり、また例えば0.3mm~2mmであり得る。
【0044】
本発明の1つの実施形態において、隔壁40および外周壁10の空隙部には、イオン性液体が含浸されている。このような構成であれば、隔壁および外周壁(特に、隔壁)が、機能電極とカウンター電極との間のセパレーターとして良好に機能し得る。さらに、イオン性液体が含浸されることにより、電子伝導性を抑え、所望の電気化学反応のみを効率的に行うことができる。1つの実施形態においては、機能電極に含まれるイオン性液体は、外周壁および隔壁(特に、隔壁)に含まれるイオン性液体と同一である。このような構成であれば、電気化学素子の製造が簡便・容易であり、機能電極の電気化学反応に対する悪影響が防止され得る。
【0045】
電気化学素子の形状は目的に応じて適切に設計され得る。図示例の電気化学素子100は円柱状(セルの延びる方向に直交する方向の断面形状が円形)であるが、電気化学素子は、断面形状が例えば楕円形または多角形(例えば、四角形、五角形、六角形、八角形)の柱状であってもよい。電気化学素子の長さは、目的に応じて適切に設定され得る。電気化学素子の長さは、例えば5mm~500mmであり得る。電気化学素子の直径は、目的に応じて適切に設定され得る。電気化学素子の直径は、例えば20mm~500mmであり得る。なお、電気化学素子の断面形状が円形でない場合には、電気化学素子の断面形状(例えば、多角形)に内接する最大内接円の直径を電気化学素子の直径とすることができる。電気化学素子のアスペクト比(直径:長さ)は、例えば1:12以下であり、また例えば1:5以下であり、また例えば1:1以下である。アスペクト比がこのような範囲であれば、集電抵抗を適切な範囲とすることができる。
【0046】
上記では、便宜上、1つの電気化学素子100を図示して、電気化学素子100の構成を説明したが、本発明の1つの実施形態において、吸着塔11の反応容器には、複数の電気化学素子100が収容されている。吸着塔11において複数の電気化学素子100が配置されている領域が、ガス吸着領域である。反応容器に収容される複数の電気化学素子100は、ガス流路70が互いに通じるように、セルの延びる方向に並んでいてもよい。また、セルの延びる方向に並ぶ複数の電気化学素子100の列は、セルの延びる方向と直交する方向に複数配置されていてもよい。また、反応容器に収容される電気化学素子100は、セルの延びる方向が鉛直方向と平行となるように配置されてもよい。
【0047】
図示しないが、本発明の1つの実施形態において、電気化学素子100が備える機能電極50およびカウンター電極60は、電源装置に電気的に接続されている。電源装置は、機能電極50に対して電圧を印加し得る。電源装置は、定電圧電源と、機能電極50に印加する電圧の極性を反転させ得る極性反転回路とを備える。
【0048】
なお、上記した本発明の1つの実施形態では、電気化学素子100は、複数のセル30を有する支持体80を備え、支持体80が機能電極50およびカウンター電極60を支持するが、電気化学素子は、これに限定されない。例えば、電気化学素子は、機能電極とカウンター電極とをセパレーターを介して対向させた平板状のガス分離素子を、ガス分離素子の厚み方向と平行な方向に互いに間隔を空けて複数備えてもよい。ガス分離素子は、厚み方向からみて、所定方向に長手の四角形状を有してもよい。そのような電気化学素子として、例えば、特表2018-533470号公報に記載される電気化学セルが挙げられる。ガス分離素子を有する複数の電気化学素子が吸着塔11の反応容器に収容される場合、複数の電気化学素子は、互いに隣り合うガス分離素子の間の空間が通じるように、ガス分離素子の長手方向に並んでいてもよい。また、ガス分離素子の長手方向に並ぶ複数の電気化学素子の列は、ガス分離素子の長手方向と交差する方向に複数配置されていてもよい。
【0049】
B-1-4.電気化学反応
電気化学素子100の動作の概要について説明する。例えば、分離・回収すべきガスが二酸化炭素であり、機能電極50の第1の活物質がアントラキノンを含み、カウンター電極60の第2の活物質がポリビニルフェロセンを含む場合について説明する。機能電極50のアントラキノンは、充電モード(機能電極が負極)において、吸着電圧として正電圧が印加されると還元され得る。
【0050】
ここで、電気化学素子のガス流路70に二酸化炭素を含むガス混合物を流すと、機能電極50の還元状態のアントラキノンと二酸化炭素との間で以下の反応(1)が起こり、二酸化炭素がアントラキノンに捕捉される。このようにして、二酸化炭素を回収することができる。
【化2】
【0051】
このとき、カウンター電極60のポリビニルフェロセンは酸化され得る。すなわち、ポリビニルフェロセンは、充電モードにおいて、アントラキノンの還元の電子源として機能することができる。
【0052】
また、機能電極50のアントラキノンは、放電モード(機能電極が正極)において、放出電圧として、吸着電圧と逆極性の負電圧が印加されると酸化され得る。
【0053】
ここで、機能電極50において二酸化炭素を捕捉したアントラキノンが酸化されると、以下の反応(2)が起こり、アントラキノンに捕捉されていた二酸化炭素は、アントラキノンとの結合が解かれる。このようにして、二酸化炭素を機能電極50からガス流路70に放出することができる。
【化3】
【0054】
このとき、カウンター電極60のポリビニルフェロセンは還元され得る。すなわち、ポリビニルフェロセンは、放電モードにおいて、アントラキノンの酸化の際の電子の受け手として機能することができる。
【0055】
以上のように、機能電極(および必然的にカウンター電極)の極性を入れ替えることにより、電気化学素子(実質的には、機能電極)は、二酸化炭素を回収(捕捉、吸着)および放出することができる。特に、充電モードにおける還元状態のアントラキノンを利用することにより、ガス混合物から二酸化炭素を分離・回収(捕捉)することができる。このようにして、電気化学素子100は、二酸化炭素を回収することができる。
【0056】
C.ガス供給部
図1に示すように、ガス供給部21は、吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)に所定のガス(例えば、二酸化炭素)を含むガス混合物(例えば、排ガス)を供給し得る。本発明の1つの実施形態において、ガス供給部21は、ガス供給ライン21aと、第1供給バルブ21bと、第2供給バルブ21cと、第3供給バルブ21dと、ブロワ21eとを備える。
【0057】
ガス供給ライン21aは、所定のガスを含むガス混合物が通過可能な配管である。ガス供給ライン21aにおけるガス混合物の通過方向の下流端部は、複数の吸着塔11に対応して分岐し、各吸着塔11に接続されている。本発明の1つの実施形態において、分岐したガス供給ライン21aの下流端部は、吸着塔11の下端部に接続されている。図示しないが、ガス供給ライン21aの上流端部は、所定のガスを含むガス混合物が発生する施設(例えば、工場、火力発電所)に接続されている。
【0058】
第1供給バルブ21b、第2供給バルブ21cおよび第3供給バルブ21dのそれぞれは、ガス供給ライン21aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第1供給バルブ21bは、第1吸着塔11aに接続されるガス供給ライン21aの分岐部分に設けられている。第2供給バルブ21cは、第2吸着塔11bに接続されるガス供給ライン21aの分岐部分に設けられている。第3供給バルブ21dは、第3吸着塔11cに接続されるガス供給ライン21aの分岐部分に設けられている。
【0059】
ブロワ21eは、ガス供給ライン21aを通るガス混合物を吸着塔11に向けて送出可能である。ブロワ21eは、ガス供給ライン21aに設けられている。ブロワ21eは、ガス供給ライン21aにおけるガス混合物の通過方向において、ガス供給ライン21aの分岐部分よりも上流側に位置する。
【0060】
D.排気部
排気部31は、吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)を通過して所定のガス(例えば、二酸化炭素)が除去されたガス混合物を、吸着塔11から排出し得る。本発明の1つの実施形態において、排気部31は、排気ライン31aと、第1排気バルブ31bと、第2排気バルブ31cと、第3排気バルブ31dとを備える。
【0061】
排気ライン31aは、所定のガスが除去されたガス混合物が通過可能な配管である。排気ライン31aにおけるガス混合物の通過方向の上流端部は、複数の吸着塔11に対応して分岐し、各吸着塔11に接続されている。本発明の1つの実施形態において、分岐した排気ライン31aの上流端部は、吸着塔11の上端部に接続されている。図示しないが、排気ライン31aの下流端部は、大気に開放されている。
【0062】
第1排気バルブ31b、第2排気バルブ31cおよび第3排気バルブ31dのそれぞれは、排気ライン31aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第1排気バルブ31bは、第1吸着塔11aに接続される排気ライン31aの分岐部分に設けられている。第2排気バルブ31cは、第2吸着塔11bに接続される排気ライン31aの分岐部分に設けられている。第3排気バルブ31dは、第3吸着塔11cに接続される排気ライン31aの分岐部分に設けられている。
【0063】
E.ガス回収部
ガス回収部41は、吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)に一旦吸着されたのち、吸着塔11(第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11c)から放出される所定のガス(例えば、二酸化炭素)を回収し得る。本発明の1つの実施形態において、ガス回収部41は、ガス回収ライン41aと、第1回収バルブ41bと、第2回収バルブ41cと、第3回収バルブ41dと、ポンプ41eとを備える。
【0064】
ガス回収ライン41aは、所定のガスが通過可能な配管である。ガス回収ライン41aにおける所定のガスの通過方向の上流端部は、複数の吸着塔11に対応して分岐し、各吸着塔11に接続されている。本発明の1つの実施形態において、分岐したガス回収ライン41aの上流端部は、吸着塔11の下端部に接続されている。図示しないが、ガス回収ライン41aの下流端部は、所定のガスの貯蔵設備に接続されている。
【0065】
第1回収バルブ41b、第2回収バルブ41cおよび第3回収バルブ41dのそれぞれは、ガス回収ライン41aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第1回収バルブ41bは、第1吸着塔11aに接続されるガス回収ライン41aの分岐部分に設けられている。第2回収バルブ41cは、第2吸着塔11bに接続されるガス回収ライン41aの分岐部分に設けられている。第3回収バルブ41dは、第3吸着塔11cに接続されるガス回収ライン41aの分岐部分に設けられている。
【0066】
ポンプ41eは、ガス回収ライン41aを通る所定のガスを貯蔵設備に向けて送ることができる。ポンプ41eは、例えば、真空ポンプである。ポンプ41eは、ガス回収ライン41aに設けられている。ポンプ41eは、ガス回収ライン41aにおける所定のガスの通過方向において、ガス回収ライン41aの分岐部分よりも下流側に位置する。
【0067】
F.第1接続部
第1接続部61は、第1吸着塔11aを通過したガス混合物(第1吸着塔通過ガス)を第2吸着塔11bに供給可能である。本発明の1つの実施形態において、第1接続部61は、第1接続ライン61aと、第1接続バルブ61bとを備える。
【0068】
第1接続ライン61aは、第1吸着塔11aを通過したガス混合物が通過可能な配管である。第1接続ライン61aは、第1吸着塔11aと第2吸着塔11bとを接続している。本発明の1つの実施形態において、第1接続ライン61aにおける第1吸着塔通過ガスの通過方向の上流端部は、第1吸着塔11aの上端部に接続されている。第1接続ライン61aにおける第1吸着塔通過ガスの通過方向の下流端部は、第2吸着塔11bの下端部に接続されている。
【0069】
第1接続バルブ61bは、第1接続ライン61aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第1接続バルブ61bは、第1接続ライン61aに設けられている。
【0070】
G.第2接続部
第2接続部71は、第2吸着塔11bを通過したガス混合物(第2吸着塔通過ガス)を第3吸着塔11cに供給可能である。本発明の1つの実施形態において、第2接続部71は、第2接続ライン71aと、第2接続バルブ71bとを備える。
【0071】
第2接続ライン71aは、第2吸着塔11bを通過したガス混合物が通過可能な配管である。第2接続ライン71aは、第2吸着塔11bと第3吸着塔11cとを接続している。本発明の1つの実施形態において、第2接続ライン71aにおける第2吸着塔通過ガスの通過方向の上流端部は、第2吸着塔11bの上端部に接続されている。第2接続ライン71aにおける第2吸着塔通過ガスの通過方向の下流端部は、第3吸着塔11cの下端部に接続されている。
【0072】
第2接続バルブ71bは、第2接続ライン71aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第2接続バルブ71bは、第2接続ライン71aに設けられている。
【0073】
H.第3接続部
第3接続部81は、第3吸着塔11cを通過したガス混合物(第3吸着塔通過ガス)を第1吸着塔11aに供給可能である。本発明の1つの実施形態において、第3接続部81は、第3接続ライン81aと、第3接続バルブ81bとを備える。
【0074】
第3接続ライン81aは、第3吸着塔11cを通過したガス混合物が通過可能な配管である。第3接続ライン81aは、第3吸着塔11cと第1吸着塔11aとを接続している。本発明の1つの実施形態において、第3接続ライン81aにおける第3吸着塔通過ガスの通過方向の上流端部は、第3吸着塔11cの上端部に接続されている。第3接続ライン81aにおける第3吸着塔通過ガスの通過方向の下流端部は、第1吸着塔11aの下端部に接続されている。
【0075】
第3接続バルブ81bは、第3接続ライン81aを開閉可能であり、例えば、電磁弁である。第3接続バルブ81bは、第3接続ライン81aに設けられている。
【0076】
I.制御部
制御部51は、ガス吸着システム110の動作を制御可能である。制御部51は、例えば、中央処理装置(CPU)、ROMおよびRAMなどを備える。本発明の1つの実施形態において、制御部51は、第1供給バルブ21bと、第2供給バルブ21cと、第3供給バルブ21dと、第1排気バルブ31bと、第2排気バルブ31cと、第3排気バルブ31dと、第1回収バルブ41bと、第2回収バルブ41cと、第3回収バルブ41dと、第1接続バルブ61bと、第2接続バルブ71bと、第3接続バルブ81bと、ブロワ21eと、ポンプ41eとに電気的に接続されている。また、図示しないが、制御部51は、機能電極50およびカウンター電極60に接続される電源装置に電気的に接続されている。
【0077】
以下、ガス吸着システムの運転方法について説明する。
【0078】
J.ガス吸着システムの運転方法
本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの運転方法は、上記したガス吸着システム110の運転方法である。図9は、本発明の1つの実施形態のガス吸着システムの運転方法を説明する工程フロー図である。
【0079】
本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの運転方法は、第1吸着塔11aに所定のガス(例えば、二酸化炭素)を供給するとともに、第1吸着塔11aを通過したガスを第2吸着塔11bに供給して、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bに所定のガスを吸着させる第1吸着工程(S1)と;第1吸着塔11aに対する所定のガスの供給を停止するとともに、第2吸着塔11bに所定のガスを供給し、第2吸着塔11bを通過したガスを第3吸着塔11cに供給して、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cに所定のガスを吸着させる第2吸着工程(S2)と;を含む。このような方法によれば、第1吸着工程において、所定のガスを第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bに順に吸着させることができ、所定のガスが第1吸着塔11aからスリップしても、第1吸着塔11aからスリップした所定のガスを第2吸着塔11bに吸着させることができる。また、第2吸着工程では、第1吸着塔11aに代えて第3吸着塔11cを用い、所定のガスを第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cに順に吸着させることができる。そのため、所定のガスが第2吸着塔11bからスリップしても、第2吸着塔11bからスリップした所定のガスを第3吸着塔11cに吸着させることができる。その結果、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bのそれぞれのガス吸着領域における助走区間を短くすることができ、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bのそれぞれのガス吸着容量を効率的に利用できる。また、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bのそれぞれのガス吸着領域に助走区間を設けることなく、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bのガス吸着容量を全て使い切ることもできる。その結果、ガス混合物から所定のガスを効率的に分離・回収することができる。なお、ガス吸着システム110が3つ以上の吸着塔11を備える場合、所定のガスを含むガス混合物を、3つ以上の吸着塔11に順に通過させて、3つ以上の吸着塔11で吸着工程を実施することもできるが、上記した方法のように、2つの吸着塔11で吸着工程を実施することが、圧力損失の観点から好ましい。
【0080】
また、本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの運転方法は、第1吸着工程の終了後かつ第2吸着工程の終了前に、第1吸着塔11aに吸着した所定のガスを、第1吸着塔11aから放出させる第1放出工程と;第2吸着塔11bに対する所定のガスの供給を停止するとともに、第3吸着塔11cに所定のガスを供給して、第3吸着塔11cを通過したガスを第1吸着塔11aに供給し、第1吸着塔11aおよび第3吸着塔11cに所定のガスを吸着させる第3吸着工程(S3)と;をさらに含む。このような方法によれば、第1吸着工程の終了後かつ第2吸着工程の終了前に、第1吸着塔11aに吸着した所定のガスを、第1吸着塔11aから放出させる。そのため、第3吸着工程において、第1吸着塔11aを利用でき、所定のガスを第3吸着塔11cおよび第1吸着塔11aに順に吸着させることができる。その結果、所定のガスが第3吸着塔11cからスリップしても、第3吸着塔11cからスリップした所定のガスを第1吸着塔11aに吸着させることができる。そのため、第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cのそれぞれのガス吸着領域における助走区間を短くすることができ、第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cのそれぞれのガス吸着容量を効率的に利用できる。また、第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cのそれぞれのガス吸着領域に助走区間を設けることなく、第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cのガス吸着容量を全て使い切ることもできる。その結果、ガス混合物から所定のガスを効率的に分離・回収することができる。
【0081】
また、本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの運転方法は、第1吸着工程(S1)、第2吸着工程(S2)および第3吸着工程(S3)を順に繰り返し、第2吸着工程の終了後かつ第3吸着工程の終了前に、第2吸着塔11bに吸着した所定のガスを、第2吸着塔11bから放出させる第2放出工程と:第3吸着工程の終了後、かつ、繰り返された第1吸着工程の終了前に、第3吸着塔11cに吸着した所定のガスを、第3吸着塔11cから放出させる第3放出工程と;をさらに含む。このような方法によれば、第1吸着塔11a、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cによって、第1吸着工程(S1)、第2吸着工程(S2)および第3吸着工程(S3)を円滑に繰り返すことができ、ガス混合物から所定のガスを効率よく分離・回収できる。
【0082】
本発明の1つの実施形態によるガス吸着システムの運転方法では、まず、第1吸着工程(S1)が実施される。図10は、図9の第1吸着工程を説明する工程フロー図である。
【0083】
第1吸着工程では、第1吸着塔11aに所定のガスを含むガス混合物(例えば、排ガス)が供給される。より詳しくは、第1吸着塔11aが備える機能電極50、および、第2吸着塔11bが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が開始された後、第1吸着塔11aに対する所定のガスを含むガス混合物(例えば、排ガス)の供給が開始される(S1-1)。
【0084】
制御部51は、図示しない電源装置を制御して、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を開始する。本発明の1つの実施形態において、第1吸着塔11aの機能電極50に対する吸着電圧と、第2吸着塔11bの機能電極50に対する吸着電圧とは同じであり、その吸着電圧は、例えば、1.6V~2.0Vである。第1吸着塔11aの機能電極50に対する吸着電圧と、第2吸着塔11bの機能電極50に対する吸着電圧とは異なっていてもよい。
【0085】
次いで、制御部51は、第1供給バルブ21bと、第1接続バルブ61bと、第2排気バルブ31cとを開状態とし、それ以外のバルブを閉状態として、ブロワ21eを駆動させる。ブロワ21eが駆動すると、所定のガスを含むガス混合物(例えば、排ガス)がガス供給ライン21aを通って第1吸着塔11aに供給される。第1吸着塔11aに供給されたガス混合物は、第1吸着塔11aを通過して、第1接続ライン61aに排出される。ガス混合物が第1吸着塔11aを通過するときに、ガス混合物に含まれる所定のガスの少なくとも一部は、第1吸着塔11aが備える機能電極50に吸着される。第1吸着塔11aを通過したガス混合物(第1吸着塔通過ガス)は、第1接続ライン61aを通って第2吸着塔11bに供給される。第2吸着塔11bに供給されたガス混合物は、第2吸着塔11bを通過して、排気ライン31aに排出される。ガス混合物が第2吸着塔11bを通過するときに、ガス混合物に含まれる所定のガスは、第2吸着塔11bが備える機能電極50に吸着される。
【0086】
次いで、第1吸着塔では吸着ガスが取り切れずに第2吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*2が、予め設定されたしきい電流I以上となるまで、第1吸着塔11aに対するガス混合物の供給が維持されるとともに、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が継続される(S1―2のno)。
【0087】
第2吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*2がしきい電流I以上となると(S1―2のYes)、第1吸着塔11aに対するガス混合物の供給が停止される(S1―3)。
第1吸着塔11aにおいてガス混合物に含まれる吸着ガス(例えば二酸化炭素)のすべてが、第1吸着塔11aの機能電極50に吸着されている場合、第2吸着塔11bでは、吸着ガスが供給されないために、第1の活物質と吸着ガスとの反応(例えば上記式(1))が生じない。この場合、第2吸着塔の電気化学素子には電流が流れていない。一方、第1吸着塔11aで吸着ガス(例えば二酸化炭素)が取り切れずにスリップすると、第2吸着塔11bに吸着ガスが供給され、上記反応が生じて電気化学素子に電流が流れる。そのため、第2吸着塔11bの電気化学素子に流れる電流値I*2に基づいて、第1吸着塔11aに対するガス混合物の供給停止のタイミングが判断され得る。
これによって、第1吸着工程が終了する。
【0088】
本発明の1つの実施形態においては、第1吸着工程(S1)に続いて第2吸着工程(S2)が連続して実施される。図11は、図9の第2吸着工程を説明する工程フロー図である。第2吸着工程では、第1吸着塔11aに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止されるとともに、第2吸着塔11bにガス混合物(例えば、排ガス)が供給される。より詳しくは、第3吸着塔11cが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が開始された後、第1吸着塔11aに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止されるとともに(S1-3)、第2吸着塔11bに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が開始される(S2-1)。
【0089】
制御部51は、図示しない電源装置を制御して、第3吸着塔11cが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を開始し、第2吸着塔11bが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を維持する。また、制御部51は、図示しない電源装置を制御して、第1吸着塔11aが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を停止する。本発明の1つの実施形態において、第3吸着塔11cの機能電極50に対する吸着電圧は、第2吸着塔11bの機能電極50に対する吸着電圧と同じである。第2吸着塔11bの機能電極50に対する吸着電圧と、第3吸着塔11cの機能電極50に対する吸着電圧とは異なっていてもよい。
【0090】
次いで、制御部51は、第1供給バルブ21bと、第1接続バルブ61bと、第2排気バルブ31cとを閉状態とし、第2供給バルブ21cと、第2接続バルブ71bと、第3排気バルブ31dとを開状態とする。ブロワ21eは、第2吸着工程においても継続して駆動される。すると、所定のガスを含むガス混合物(例えば、排ガス)は、第1吸着塔11aに供給されることなく、ガス供給ライン21aを通って第2吸着塔11bに供給される。第2吸着塔11bに供給されたガス混合物は、第2吸着塔11bを通過して、第2接続ライン71aに排出される。第2吸着塔11bを通過したガス混合物(第2吸着塔通過ガス)は、第2接続ライン71aを通って第3吸着塔11cに供給される。第3吸着塔11cに供給されたガス混合物は、第3吸着塔11cを通過して、排気ライン31aに排出される。ガス混合物に含まれる所定のガスは、第2吸着塔11bを通過するとき、および、第3吸着塔11cを通過するときに、機能電極50に吸着される。
【0091】
次いで、第2吸着塔では吸着ガスが取り切れずに第3吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*3が、予め設定されたしきい電流I以上となるまで、第2吸着塔11bに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が維持されるとともに、第2吸着塔11bおよび第3吸着塔11cが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が継続される(S2―2のno)。
【0092】
第3吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*3がしきい電流I以上となると(S2―2のYes)、第2吸着塔11bに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止される(S2―3)。これによって、第2吸着工程が終了する。
【0093】
また、本発明の1つの実施形態においては、第1吸着工程の終了後かつ第2吸着工程の終了前に、第1放出工程が実施される。第1放出工程では、第1吸着塔11aに吸着した所定のガス(例えば、二酸化炭素)を、第1吸着塔11aから放出させる。より詳しくは、制御部51は、第1回収バルブ41bを開状態にするとともに、図示しない電源装置を制御して、第1吸着塔11aが備える機能電極50に、吸着電圧と逆極性の放出電圧を印加する。これによって、機能電極50に捕捉されている所定のガス(例えば、二酸化炭素)が、機能電極50から放出され得る。また、制御部51は、ポンプ41eを駆動させる。すると、機能電極50から放出された所定のガス(例えば、二酸化炭素)は、ガス回収ライン41aを通って、図示しない貯蔵設備に送られる。その後、制御部51は、ポンプ41eの駆動を停止する。
【0094】
また、本発明の1つの実施形態においては、第2吸着工程(S2)に続いて第3吸着工程(S3)が連続して実施される。図12は、図9の第3吸着工程を説明する工程フロー図である。第3吸着工程では、第2吸着塔11bに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止されるとともに、第3吸着塔11cにガス混合物(例えば、排ガス)が供給される。より詳しくは、第1吸着塔11aが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が開始された後、第2吸着塔11bに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止されるとともに(S2-3)、第3吸着塔11cに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が開始される(S3-1)。
【0095】
制御部51は、図示しない電源装置を制御して、第1吸着塔11aが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を開始するとともに、第3吸着塔11cが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を維持する。また、制御部51は、図示しない電源装置を制御して、第2吸着塔11bが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加を停止する。本発明の1つの実施形態において、第1吸着塔11aの機能電極50に対する吸着電圧は、第3吸着塔11cの機能電極50に対する吸着電圧と同じである。第1吸着塔11aの機能電極50に対する吸着電圧と、第3吸着塔11cの機能電極50に対する吸着電圧とは異なっていてもよい。
【0096】
次いで、制御部51は、第2供給バルブ21cと、第2接続バルブ71bと、第3排気バルブ31dとを閉状態とし、第3供給バルブ21dと、第3接続バルブ81bと、第1排気バルブ31bとを開状態とする。ブロワ21eは、第3吸着工程においても継続して駆動される。すると、所定のガスを含むガス混合物(例えば、排ガス)は、第1吸着塔11aおよび第2吸着塔11bに供給されることなく、ガス供給ライン21aを通って第3吸着塔11cに供給される。第3吸着塔11cに供給されたガス混合物は、第3吸着塔11cを通過して、第3接続ライン81aに排出される。第3吸着塔11cを通過したガス混合物(第3吸着塔通過ガス)は、第3接続ライン81aを通って第1吸着塔11aに供給される。第1吸着塔11aに供給されたガス混合物は、第1吸着塔11aを通過して、排気ライン31aに排出される。ガス混合物に含まれる所定のガスは、第3吸着塔11cを通過するとき、および、第1吸着塔11aを通過するときに、機能電極50に吸着される。
【0097】
次いで、第3吸着塔では吸着ガスが取り切れずに第1吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*1が、予め設定されたしきい電流I以上となるまで、第3吸着塔11cに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が維持されるとともに、第1吸着塔11aおよび第3吸着塔11cが備える機能電極50に対する吸着電圧の印加が継続される(S3―2のno)。
【0098】
第1吸着塔の電気化学素子に流れる電流値I*1がしきい電流I以上となると(S3―2のYes)、第3吸着塔11cに対するガス混合物(例えば、排ガス)の供給が停止される(S3―3)。これによって、第3吸着工程が終了する。なお、第1吸着工程、第2吸着工程および第3吸着工程におけるしきい電流Iは、互いに同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0099】
また、本発明の1つの実施形態においては、第2吸着工程の終了後かつ第3吸着工程の終了前に、第2放出工程が実施される。第2放出工程においては、第2吸着塔11bに吸着した所定のガス(例えば、二酸化炭素)を、第2吸着塔11bから放出させる。より詳しくは、制御部51は、第1回収バルブ41bを閉状態にするとともに、第2回収バルブ41cを開状態にし、図示しない電源装置を制御して第2吸着塔11bが備える機能電極50に放出電圧を印加する。これによって、第2吸着塔11bの機能電極50に捕捉されている所定のガス(例えば、二酸化炭素)が、機能電極50から放出され得る。機能電極50から放出された所定のガス(例えば、二酸化炭素)は、上記した第1放出工程と同様にして、図示しない貯蔵設備に送られる。
【0100】
本発明の1つの実施形態においては、第1吸着工程(S1)、第2吸着工程(S2)および第3吸着工程(S3)は、制御部51に停止信号が入力されるまで、順に繰り返される(S4のno)。この場合、第3吸着工程の終了後、かつ、繰り返された第1吸着工程の終了前に、第3放出工程が実施される。第3放出工程においては、第3吸着塔11cに吸着した所定のガス(例えば、二酸化炭素)を、第3吸着塔11cから放出させる。より詳しくは、制御部51は、第2回収バルブ41cを閉状態にするとともに、第3回収バルブ41dを開状態にし、図示しない電源装置を制御して第3吸着塔11cが備える機能電極50に放出電圧を印加する。これによって、第3吸着塔11cの機能電極50に捕捉されている所定のガス(例えば、二酸化炭素)が、機能電極50から放出され得る。機能電極50から放出された所定のガス(例えば、二酸化炭素)は、上記した第1放出工程と同様にして、図示しない貯蔵設備に送られる。
【0101】
その後、制御部51に停止信号が入力されると(S4のyes)、制御部51は、機能電極50に対する電圧の印加を停止するとともに、ブロワ21eの駆動を停止する。これによって、ガス吸着システム110の運転が停止される。なお、上記した本発明の1つの実施形態では、制御部51に対する停止信号の入力有無の判断(S4)が、第3吸着工程(S3)の後に実施されているが、制御部51に対する停止信号の入力有無(S4)は、第1吸着工程(S1)と第2吸着工程(S2)との間で判断してもよく、第2吸着工程(S2)および第3吸着工程(S3)の間で判断してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の実施形態によるガス吸着システムおよびガス吸着システムの運転方法は、ガス混合物からの所定ガスの分離・回収に好適に用いられ得、特に、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)サイクルに好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0103】
11 吸着塔
11a 第1吸着塔
11b 第2吸着塔
11c 第3吸着塔
50 機能電極
60 カウンター電極
100 電気化学素子
110 ガス吸着システム
図1
図2
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図5
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