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特開2024-62423情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062423
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20240501BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079559
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】521079020
【氏名又は名称】コタエル・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】▲漆▼間 良成
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】会社への貢献度に応じた報酬を従業員等に与えることができる手段を提供することである。
【解決手段】新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ手段と、前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、前記応答受付手段で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者と異なる委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶手段と、を有する、ことを特徴とする。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ手段と、
前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、
前記応答受付手段で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者と異なる委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶手段と、を有する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ手段と、
前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、
前記応答受付手段で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶手段と、を有し、
前記第1の信託情報は、前記第1の信託の受益者を指定する第1の受益者指定権者の情報を含み、
前記第2の信託情報は、前記第2の信託の受益者を指定する第2の受益者指定権者であって、前記第1の受益者指定権者とは異なる受益者指定権者の情報を含む、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託情報に含まれる、前記第1の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を読み出す読出手段を有し、
前記第2の記憶手段は、前記第2の信託情報に含まれる、前記第2の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を、前記読出手段で読み出した帳簿価格から簿価引継ぎして記憶する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託情報に含まれる、前記第1の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を読み出す読出手段を有し、
前記第2の記憶手段は、前記第2の信託情報に含まれる、前記第2の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を、前記読出手段で読み出した帳簿価格から簿価引継ぎして記憶する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶工程と、
前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ工程と、
前記問合せ工程による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付工程と、
前記応答受付工程で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者と異なる委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶工程と、を有する、
ことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項6】
新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶工程と、
前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ工程と、
前記問合せ工程による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付工程と、
前記応答受付工程で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶工程と、を有し、
前記第1の信託情報は、前記第1の信託の受益者を指定する第1の受益者指定権者の情報を含み、
前記第2の信託情報は、前記第2の信託の受益者を指定する第2の受益者指定権者であって、前記第1の受益者指定権者とは異なる受益者指定権者の情報を含む、
ことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置が備える各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会社の役員や従業員あるいは関係者(以下「従業員等」という)に、自社株式を行使価格で購入する権利を付与するストックオプション(「新株予約権」という)が知られている。新株予約権は、自社株式の株価が行使価格を超えて上昇するほど利益が大きくなるため、新株予約権を与えられた従業員等は株価上昇に向けて会社価値を上昇させる努力を行う。
【0003】
特許文献1では、新株予約権を与えられた従業員等が行使価格の資金を用意できないために新株予約権の権利行使をすることができないことへの対策として、証券会社が従業員等に資金を融資することを開示している。これによれば、資金不足により権利行使ができなかった従業員等が融資を受けることで、権利行使の促進を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-56095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、誰に新株予約権を与えるかは、新株予約権の発行時に決めるものであった。また、新株予約権の行使価格は、従業員等に新株予約権を与えたときの株価に応じて定まるため、株価が安いときに与えられた従業員等と、株価が上昇してから与えられた従業員等とでは、新株予約権の価値が異なる。しかしながら、株価が上昇してから新株予約権を与えられた従業員等の方が会社への貢献度が高い場合もあり、この場合、実際の会社への貢献度等が反映されないことから新株予約権の利用において改善の余地があった。
【0006】
ところで、従来は、新株予約権を発行する際には付与対象者と当該付与対象者に付与する新株予約権の個数を確定しなければならなかったところ、このように将来的に価値を生む新株予約権を、実際の貢献度合い等を見ない状況で従業員等に付与すると、場合によって従業員等の勤労意欲が失われてしまったり、経営陣が期待するほどの貢献が見られなかったりといった弊害も見られたが、最近では一旦、信託の受託者に新株予約権を信託し、会社への貢献度等を見たうえで従業員等に事後的に交付する、いわゆる「信託型ストックオプション」というスキームが台頭してきている。
【0007】
信託型ストックオプションにおいては、当初の信託の受益者指定日において、信託財産となっている新株予約権の全部について、受益者指定がなされない場合には、新株予約権を引き継ぐ別の信託(以下「引継信託」という。)を設定し、当初の信託の受益者として引継信託を指定することにより、新株予約権を受益者が確定しない形で、引き継いでいくことが可能となる。
【0008】
現状、引継信託の設定は、当初の信託の委託者、発行会社及び受託者との間で、契約書を締結する方法又は受託者が所定の信託要項及び約款を交付して委託者及び発行会社から申込書の提出を受ける方法で行われる。
【0009】
この引継信託の設定は、例えば半年ごとの受益者指定日ごとに行っており、受託者や、当初の信託の委託者及び発行会社にとって大きな負担となる。また、引継信託の設定手続が何らかの事由で遅延した場合、受益者指定をする引継信託が存在しないため、新株予約権を簿価引継で引き継いでいくことができないというリスクがある。
【0010】
また、従来は新株予約権の発行会社が受益者指定を行うのみであったが、発行会社内での恣意的な分配を抑制することを考えた場合や、社外協力者たる企業の中で特に発行会社の業績向上に貢献した者を選別して新株予約権を交付するような場合には、発行会社による受益者指定の方法に改善の余地があった。
【0011】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、信託を活用した新株予約権の管理の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、情報処理装置であって、新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ手段と、前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、前記応答受付手段で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者と異なる委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶手段と、を有する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、当初の信託の委託者及び発行会社の契約締結に係る負担や受益者指定権の行使に係る負担を軽減し、より安定的に引継信託の設定を継続させる手段を提供できるとともに、受益者指定権の行使をより柔軟に実施する手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係る新株予約権管理システムの動作の概略を説明するブロック図である。
図2】本発明の実施例1に係る新株予約権管理システム50の概略構成を示すブロック図である。
図3図2に示した各情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図4図2に示した情報処理装置16aの記憶部103に記憶される信託情報の一例を示す図である。
図5】新株予約権管理システム50による処理を示すフローチャートである。
図6】仮の付与対象者を指定する例の処理を示すフローチャートである。
図7】実施例2に係る新株予約権管理システム50による処理を示すフローチャートである。
図8】評価期間における人事評価を従業員等の貢献度等を測定する指標とし、従業員等の職位及び評価に応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。
図9】従業員等の採用時のインセンティブに応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。
図10】従業員等の定性評価に応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。
図11】従業員等の勤務期間に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。
図12】従業員等の職位に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。
図13】従業員等の評価に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例1に係る新株予約権管理システムの動作の概略を説明するブロック図である。まず、図1を参照して、本実施例における新株予約権の管理に関するスキームについて説明する。
なお、本実施例では、新株予約権の管理について説明するが、本発明は他の権利にも適用することができる。例えば、本発明は、権利行使価格で株式を取得できる権利であるコールオプションの管理を行うコールオプション管理システムにも適用することができる。新株予約権は、現在の権利行使価額で株式を発行会社から取得できる権利であるが、コールオプションは、発行会社というよりは株主から権利行使価格で株式を取得できる権利であり、請求できる相手方が異なる。コールオプションの場合、大株主(通常はオーナー経営者)が、自分の持っている株式を将来的に貢献した者に渡すためにコールオプションを信託する(コールオプションを信託することもあれば、金銭を信託して、自分が設定したコールオプションを受託者に取得させるために、自分に対して払い込ませることもある)というスキームになる。また、本発明は、暗号資産の管理を行う暗号資産管理システムにも適用することができる。暗号資産は、発行者が発行し、一般的により高い流動性を持つことにより、より高い価値を持つことになるため、インフルエンサーや協力者(発行する法人の役職員等を含む。)に配布し、また、暗号資産交換所においてより多くの取引を行われるようにするニーズがある。暗号資産の場合、発行者又は暗号資産を多く持つ者が、自分の持っている暗号資産を将来的に貢献した者に渡すために信託する(暗号資産を信託することもあれば、金銭その他の資産を信託して、受託者をして委託者又はその他の第三者から暗号資産を取得させることもある)というスキームになる。さらに、本発明は、投資ファンドの基礎となる合同会社や組合、信託の持分の管理を行うファンド持分管理システムに適用することができる。ファンド持分は、通常投資ファンドを組成した無限責任組合員や有限責任組合員などにより保有されるが、例えばこの持分の全部又は一部を、将来的に社員や投資先へ派遣するプロ経営者に渡すことができるようにすることで、社員・プロ経営者などの投資ファンドの投資先の企業価値向上に向けたコミットメントを高めるニーズがある。ファンド持分の場合、ファンド持分を保有する者が、自分の持っているファンド持分を将来的に貢献した者に渡すために信託する(ファンド持分を信託することもあれば、金銭その他の資産を信託して、受託者をしてファンド持分を取得させることもある)というスキームになる。
【0017】
発行会社10は、本実施例の新株予約権管理システムで対象とする新株予約権を発行する会社である。委託者11は、例えば、発行会社10の経営者や株主である。なお、発行会社10が拠出を行ってもよい。従来の新株予約権では、発行時に行使価格、付与対象者及びその付与対象者に付与する数を定めるが、本実施例では、信託型の新株予約権(時価発行新株予約権信託(登録商標))を対象としている。信託型の新株予約権では、発行時には行使価格(又はその算式)を定めるが、新株予約権自体を一旦信託における受託者に固定数の新株予約権を付与するものの、役職員等を具体的に付与対象者と定めず、あるいはその付与対象者に付与する数を定めない。委託者11により受益者指定権者と定められた者(発行会社10である場合もあれば委託者11である場合もその他の者である場合もある)は、その後、会社への貢献度等に応じて、付与対象者及びその付与対象者に付与する数を定めることができる。
【0018】
委託者11は、第1の受託者12に金銭を信託する(第1の信託)。本実施例では、委託者11は第1の受託者12に金銭の信託を行う。この信託の設定時には、信託による財産の移転が伴うため、法律で定められている場合、予め定められた税率で課税される。なお、委託者11は、新株予約権及び現金を第1の受託者12に信託し、当該現金で納税するようにしてもよい。
【0019】
続いて、第1の受託者12は、信託された金銭を、新株予約権の代金として発行会社10に払い込む。発行会社10は、払い込まれた代金に応じた分だけ、現在の株価に応じて計算された取得価格の新株予約権を第1の受託者12に対して付与する。
【0020】
その後、第1の受託者12は、信託の受益者指定事由の発生まで、信託された新株予約権の管理を継続する。信託の受益者指定事由の例としては、信託の設定時に未上場であった発行会社10が上場したこと、又は、所定期間が経過したこと、などが挙げられる。なお、第1の受託者12は、委託者11から拠出された現金を使って新株予約権の権利行使を行い、株式に変えるようにしてもよい。また、新株予約権又はコールオプションではなく、株式を信託し、あるいは金銭を信託し、受託者12に株式を取得させてもよい。さらに、暗号資産を信託し、あるいは金銭その他の資産を信託し、受託者12に暗号資産を取得させても良い。
【0021】
本実施例では、第1の信託において受益者指定事由が発生するに先立ち、放棄されるものを除いたすべての新株予約権について受益者として具体的な付与対象者を指定する旨の応答を得られなかった場合であって、事後的にさらに受益者として具体的な付与対象者を指定したい旨の意向を有する場合、委託者11又は異なる委託者は金銭の拠出などにより新たな信託を組成する(第2の信託)。また、第1の信託において受益者指定事由が発生するに先立ち、具体的な付与対象者を条件付きで指定する旨の応答が得られた場合、委託者11又は異なる委託者は、金銭の拠出などにより新たな信託を組成する(第3の信託)。第1の信託の委託者と第2の信託又は第3の信託の委託者とが異なっていてもよい。第1の信託の受託者(第1の受託者)12と第2の信託の受託者(第2の受託者)15と第3の信託の受託者(第3の受託者)18が異なっていてもよい。また、第2の信託と第3の信託はそれぞれ単一の信託であっても、複数の信託であってもよい。事後的にさらに受益者として具体的な付与対象者を指定したい旨の意向があることを見越して、当該意向を確認する前に第2の信託又は第3の信託を予め組成しておいても良い。そして、第1の信託において受益者指定事由が発生した場合に、委託者11により受益者指定権者と定められた者(受益者指定権者14)は、第2の受託者15及び/又は第3の受託者18を第1の信託の受益者として指定し、第2の受託者15及び/又は第3の受託者18に対して新株予約権を引き継ぐことができる。このように、第1の信託の受益者指定事由が発生した時点において、第2の受託者15に対して新株予約権を引き継ぐことで、第1の信託における受益者指定事由の発生後も、第2の信託における受益者指定事由が発生するまでの間、具体的な付与対象者(受益者)を定めないでおくことができる。これにより、第1の信託で受益者を指定した後に会社に貢献した従業員等にも、第1の信託の設定時と同じ行使価格の新株予約権を付与することができ、会社への貢献度等に応じた個数の新株予約権を従業員等に与えることができる。また、このように、第1の信託の受益者指定事由が発生した時点において、第3の受託者18に対して新株予約権を引き継ぐことで、第1の信託における受益者指定事由の発生後も、具体的な付与対象者(受益者)を定めつつ、条件の成就・不成就を確認したうえでその付与対象者に新株予約権を与えることができる。なお、法律で定められている場合、第1の信託における受益者指定事由が発生した時点での信託財産は、その時点の帳簿価格により、指定された数量につき、第2の信託又は第3の信託の信託財産として引き継ぐこと(簿価引継ぎ)ができることがある。
(1)第1の信託において受益者指定事由が発生したときに、受益者指定権者14は、第1の受託者12に信託している新株予約権のすべてについて、放棄してもよい。また、具体的な付与対象者及びその付与対象者に付与する数を決定し、その決定した付与対象者に新株予約権を付与してもよい。受益者13は、付与対象者であって、新株予約権を付与された者である。
(2)また、第1の信託において受益者指定事由が発生したときに、受益者指定権者14は、第1の受託者12に信託している新株予約権のうちの所定数について、具体的な付与対象者及びその付与対象者に付与する数を決定し、その決定した付与対象者に新株予約権を付与してもよい。受益者指定権者14は、第1の受託者12に信託している新株予約権のうちの、具体的な付与対象者に付与しない残りの分については、第2の受託者15を受益者として指定してもよい。
(3)また、第1の信託において受益者指定事由が発生したときに、受益者指定権者14は、第1の受託者12に信託している新株予約権のすべてについて、第2の受託者15を受益者として指定してもよい。
(4)また、第1の信託において受益者指定事由が発生したときに、受益者指定権者14は、第1の受託者12に信託している新株予約権のすべてについて、(1)乃至(3)の方法により受益者を指定する代わりに、具体的な付与対象者を仮に決定した上で、その者のために設定された信託における受託者(第3の受託者18)を受益者として指定してもよい。この場合、当該付与対象者が当該付与対象者のために設定された信託(第3の信託)における受益者19として確定する条件を予め定め、条件が成立した場合には、仮に決定されていた付与対象者が受益者指定事由の発生を待たずして確定的な受益者19となるようにし、新株予約権を与えてもよい。また、この条件が成立しなかった場合には、その時点で存続する他の信託における受託者を含む他の受益者に新株予約権を与えるようにしてもよい。確定条件が不成立の場合、第3の信託における受益者指定権者14が改めて受益者を指定するものであっても良い。確定条件が不成立の場合、第3の受託者に信託された新株予約権は委託者11又は発行会社10に返還されるようにしてもよい。
図1では、図示を省略しているが、第3の信託において条件の成就により受益者19が受益者として確定した場合も、受益者13と同様に、発行会社10に対して新株予約権の権利行使をして株式を取得でき、株式市場20において株式を売却することができる。第1の受託者、第2の受託者及び第3の受託者は、新株予約権を管理している期間中に、新株予約権の権利行使を行うことで、受益者13及び受益者19に対して株式を与えてもよい。
【0022】
受益者指定権者14は、第2の信託において受益者指定事由が発生した場合も、あるいは第3の信託において条件不成就であった場合又は第3の信託において受益者指定事由が発生した場合も、第1の信託において受益者指定事由が発生した場合と同様に、次の受託者又は同一の受託者を受益者として指定してもよい。法律で定められている場合、第1の受託者12と第2の受託者15又は第3の受託者18とは別の者でなければならない場合がある。また、法律で定められている場合、所定の資格を有する者であれば、第1の受託者12と第2の受託者15及び第3の受託者18とは同一の者であってもよい場合がある。第1の受託者12、第2の受託者15及び第3の受託者は、自然人であってもよいし、法人であってもよい。また、第1の信託における受益者指定権者と第2の信託における受益者指定権者と第3の信託における受益者指定権者とは、別の者であってもよいし、同一の者であってもよい。第1の信託における受益者指定権者と第2の信託における受益者指定権者と第3の信託における受益者指定権者は、自然人であってもよいし、法人であってもよい。
【0023】
新株予約権を保有する受託者(第1の受託者12、第2の受託者15及び第3の受託者18を含む)並びに受益者(受益者13と受益者19を含む)は、新株予約権の権利行使を行うことにより、すなわち、行使価格を発行会社10に払い込むことにより、発行会社10の株式を取得する場合がある。なお、第1の受託者12が新株予約権の権利行使を行って株式を取得し、この取得した株式を受益者13(第2の受託者15、第3の受託者18を含む)に交付するようにしてもよい。また、新株予約権を保有する受託者(第1の受託者12、第2の受託者15及び第3の受託者18を含む)並びに受益者(受益者13と受益者19を含む)は、取得した株式を株式市場20で売却することができる。この場合、株式を売却した受託者(第1の受託者12、第2の受託者15及び第3の受託者18を含む)は、売却による取得した金銭を受益者(受益者13と受益者19を含む)に引き渡してもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係る新株予約権管理システム50の概略構成を示すブロック図である。本実施例の新株予約権管理システム50は、情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18aをネットワーク17で互いに接続して構成される。新株予約権管理システム50は、新株予約権の信託についての管理を行う。新株予約権管理システム50は、図1を参照して説明したスキームを実現する。
【0025】
情報処理装置10aは、発行会社10の担当者が操作する情報処理装置である。情報処理装置11aは、委託者11が操作する情報処理装置である。情報処理装置12aは、第1の受託者12が操作する情報処理装置である。情報処理装置13aは、受益者13が操作する情報処理装置である。情報処理装置14aは、受益者指定権者14が操作する情報処理装置である。受益者指定権者は、第1の信託、第2の信託及び第3の信託といった信託毎に異なる者であってもよいし、同じ者であってもよい。ここでは、これらの受益者指定権者を受益者指定権者14で代表させている。情報処理装置15aは、第2の受託者15が操作する情報処理装置である。情報処理装置16aは、新株予約権管理システム50の運用を行う運用会社の担当者が操作する情報処理装置である。情報処理装置18aは、第3の受託者18が操作する情報処理装置である。ネットワーク17は、例えばインターネットが用いられ、有線、無線を問わず、また、既知の如何なるネットワークも用いることができる。新株予約権管理システム50は、情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18aの少なくともいずれかを有しない構成であってもよい場合がある。新株予約権管理システム50は、情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18a以外の情報処理装置を有してもよい。
【0026】
図3は、図2に示した各情報処理装置の構成を示すブロック図である。図3では、図2に示した情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18aの構成を、情報処理装置100の構成として示す。情報処理装置100は、情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18aの少なくとも一つである。情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a、16a及び18aのそれぞれは、すべて同じ構成であってもよいし、情報処理装置ごとに、他の情報処理装置と異なる構成を有するものであってもよい。
【0027】
情報処理装置100は、各種の処理を行う処理部102と、操作者に対する入出力を行う入出力部101と、各種のデータを記憶する記憶部103と、ネットワーク17を介した通信を行う通信部104と、を有して構成される。情報処理装置100は、コンピュータである。情報処理装置100は、如何なるコンピュータであってもよい。情報処理装置100は、一般にパソコンと呼ばれる装置であってもよく、スーパーコンピュータと呼ばれる装置であってもよい。また、情報処理装置100は、スマートフォンやタブレットと呼ばれる装置であってもよい。処理部102は、CPUやMPUと呼ばれる演算装置である。処理部102は、記憶部103に記憶されたプログラムを実行する。処理部102は、情報処理に係る各種データを記憶部103に記憶する。情報処理装置100が情報を登録するということは、処理部102がその情報を記憶部103に記憶することに相当する。記憶部103は、RAMやROM、さらに磁気的記憶装置、光学的記憶装置など、既知の如何なる記憶装置であってもよい。入出力部101は、キーボード、マウス、ディスプレイといった入出力装置である。処理部102は、入出力部101を介して操作者から入力された情報に応じて情報処理を実行する。また、処理部102は、通信部104を介して入力された情報に応じて情報処理を実行する。
【0028】
図4は、図2に示した情報処理装置16aの記憶部103に記憶される信託情報の一例を示す図である。本実施例では、信託情報は、新株予約権管理システム50の運用を行う運用会社の担当者が操作する情報処理装置16aに記憶される。信託情報は、他の情報処理装置に記憶されるものであってもよい。
【0029】
新株予約権管理システム50では、受益者が決定した状態の新株予約権の信託について管理することもできる。信託情報に含まれる信託IDは、各信託を特定可能なIDであって、各信託に対してユニークに割り当てられる。信託情報に含まれる委託者IDは、その信託の委託者を特定可能なIDである。信託情報に含まれる受託者IDは、その信託の受託者を特定可能なIDである。信託情報に含まれる発行会社IDは、その信託の新株予約権を発行する発行会社を特定可能なIDである。信託情報に含まれる行使価格は、その信託の新株予約権の行使価格である。信託情報に含まれる受益者指定事由は、その信託の受益者を指定するイベント又は期日である。信託情報に含まれる帳簿価格は、その信託の受託者が新株予約権の付与を受ける際に払い込んだ新株予約権の払込価額又はその信託の受託者が新株予約権の信託を受ける際の新株予約権の時価などである。信託情報に含まれる新株予約権回号は、その信託の信託財産となっている新株予約権の回号である。信託情報に含まれる新株予約権の個数は、その信託の信託財産となっている新株予約権の個数である。信託情報に含まれる受益者情報は、その信託の新株予約権の受益者についての情報である。受益者情報に含まれる受益者IDは、その受益者を特定可能なIDである。受益者情報に含まれる新株予約権の個数は、その受益者に付与された新株予約権の個数である。また、新株予約権の個数は、受益者が確定していない場合には、その信託IDで信託された新株予約権の個数である。
図4の信託IDが「1」のレコードは、受益者指定事由が発生したときに信託された新株予約権のすべてについて同時かつ一括で受益者を指定する信託(以下「一括交付型信託」という)のレコードである。通常、信託された新株予約権は受益者指定事由が発生するまでは受益者が存在しない。この場合は、受益者不特定タイプの信託である。
図4の信託IDが「2」のレコードは、新株予約権が信託され、受益者指定事由が発生した後に再度信託されることを繰り返す信託(以下「多重型信託」という)のレコードである。多重型信託も受益者指定事由が一定期日で連鎖する特性を除けば、当初は一括交付型信託と内容は異ならない。この場合は、受益者不特定タイプの信託である。
図4の信託IDが「2-1」のレコードは、多重型信託のレコードであって、受益者指定事由発生後の確定した受益者についてのレコードである。このレコードでは、多重型信託で受益者指定事由が到来したパターンであり、受益者が決まっていて信託が終了していないパターンを示している。
図4の信託IDが「2-2」のレコードは、多重型信託のレコードであって、受益者指定事由が発生した信託から新株予約権を引き継いだ第2の信託についてのレコードである。このレコードでは、第1の信託から、発行会社ID、行使価格、帳簿価格、及び新株予約権の回号を引き継ぐ。新株予約権の個数は、引き継ぐ個数を登録する。
信託情報において、受益者を確定せずに仮に付与者を決定した場合には、受益者の欄に仮のものとして登録されることになるが、受益者としてはあくまでも受託者を登録し、それを第3の信託としてそちらに移行させ、そちらの受益者を付与対象者にしたうえで、受益者確定の条件と期限を登録する。
【0030】
以下、本実施例の新株予約権管理システム50の動作について説明する。図5は、新株予約権管理システム50による処理を示すフローチャートである。新株予約権管理システム50による処理は、図2に示した情報処理装置10a、11a、12a、13a、14a、15a及び16aで分散して実行してもよい。また、例えば、情報処理装置16a以外の情報処理装置は、情報の入出力端末装置として用いて、情報処理装置16aで情報処理及び情報の記憶を行うようにしてもよい。本実施例では、情報処理装置16aは、情報処理及び情報の記憶を行い、他の情報処理装置に対してネットワーク17を介して情報入出力のユーザインターフェースを提供する。
【0031】
情報処理装置16aは、信託情報に含まれる各IDを予め発行し、それぞれを登録しておく。図5のステップS501において、情報処理装置16aは、信託の発生に応じて第1の信託情報として図4の信託情報の各情報を登録する。このとき、信託情報のうち受益者情報については、未定の場合には例えば「なし」としておく。情報処理装置16aは、その後、受益者情報が決定した時点で登録する。情報処理装置16aは、信託が継続している間、信託の手数料又は費用を算出し、委託者11又は発行会社10に対して請求する処理を実行してもよい。
【0032】
ステップS502において、情報処理装置16aは、当該信託についての受益者指定事由について判定する。受益者指定事由の例としては、信託の設定時に未上場であった発行会社10が上場したこと、又は、所定期間が経過したこと、などが挙げられる。ステップS502で、情報処理装置16aは、当該信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前であるかを判定する。受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前であるかは、委託者11、発行会社10の担当者又は受託者16の担当者が新株予約権管理システム50に入力するようにしてもよいし、例えば情報処理装置16aが信託期間の経過を自動で判定するようにしてもよい。情報処理装置16aは、受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前でない場合は、そのまま信託を継続する。情報処理装置16aは、受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前である場合は、ステップS503に進む。
【0033】
ステップS503において、情報処理装置16aは、当該信託について、受益者を全部又は一部指定するかを問い合わせる。この処理は、言い換えれば、第1の信託の信託情報に係る新株予約権の信託を継続するかを問い合わせることに相当する。
【0034】
ステップS503の問い合わせは、例えば、委託者11(例えば委託者11が操作する情報処理装置11a)に対して問い合わせる。委託者11により受益者指定権者として定められた者(受益者指定権者14)が委託者11以外の場合にはその者に対して問い合わせる。例えば、受益者指定権者14が発行会社10の場合には、発行会社10(例えば発行会社10の担当者が操作する情報処理装置10a)に対して問い合わせる。この場合、発行会社10は自社又はその子会社・関連会社(以下「自社グループ」という)に対する貢献度等を判定して従業員等に新株予約権を交付するように受益者を指定することになる。なお、従業員等には、自社の役職員だけでなく、自社グループの役職員及び顧問若しくは業務委託先等の外部協力者も含まれる。ステップS503の問い合わせを受けた受益者指定権者は、新株予約権の全部又は一部について受益者を指定するか否かについて応答する。受益者指定権者は、受益者を全部指定する場合には、指定する受益者を情報処理装置11a又は受益者指定権者が操作する情報処理装置に入力し、これを受けた情報処理装置16aは、当該信託の信託情報に含まれる受益者情報に予約として登録する(ステップS504)。なお、法人課税信託は、受益者を同時に一括して指定しなければならない。従って、受益者指定事由が発生する前に予約登録なり、第2の信託の設定なりを済ませてしまい、受益者指定事由が発生した時点で第2の受託者も含めて受益者が同時に一括して確定することになる。ステップS503の問い合わせを受けた受益者指定権者14が、全部の新株予約権について情報処理装置11a又は情報処理装置14aに入力することにより、受益者を予約登録しない場合には、その旨を識別した情報処理装置16aは、委託者11又は受益者指定権者14に通知することにより、受益者指定事由が発生するまでの間、委託者11又は異なる委託者をして第2の信託を設定させ、当該第2の信託における受託者をもって受益者と指定させることができる(ステップS503でNO、S506でYES、S507、S508、S509)。この場合、受益者指定権者14は、情報処理装置11a又は情報処理装置14aに第2の信託の受託者を受益者として入力し、これを受けた情報処理装置16aは、当該信託の信託情報に含まれる受益者情報に予約として登録する(ステップS504)。信託に係る新株予約権のうち、全部の受益者を指定してもよいし、全部の受益者を指定しなくてもよいし、一部の受益者を指定して残りの受益者を指定しなくてもよい。また、受益者指定権者は、情報処理装置11a又は情報処理装置14aにより、受益者指定事由が発生するまでの間、情報処理装置16aに予約として登録された受益者情報を変更してもよいし、受益者を追加してもよい。なお、ステップS503では、信託されている新株予約権のうち、放棄する分については、「全部」の対象から外して処理を行うものであってもよい。
ステップS503では、情報処理装置16aは、まず、受益者指定権者14に対して、受益者指定を依頼する処理を実行する。この依頼する処理は、例えばメールなどで依頼を送信する処理である。ステップS503では、情報処理装置16aは、この依頼に応じて、受益者指定権者14が受益者を全部指定するかを判定する。
受益者指定権者14が受益者を全部指定する場合には、情報処理装置16aは、ステップS504に進む。全部指定しない場合には、情報処理装置16aは、ステップS506に進む。
ステップS506では、情報処理装置16aは、第2の信託に引き継ぐかを問い合わせる。この問い合わせに対し、受益者指定権者が第2の信託に引き継ぐと応答した場合には、ステップS507に進む。この問い合わせに対し、受益者指定権者が第2の信託に引き継がないと応答した場合には、ステップS503に戻り、受益者指定事由が発生するまでの間、受益者全部指定(S503でYES)か第2の信託への引継ぎ(S506でYES)となることを待つ。受益者指定事由が発生しても、受益者全部指定も第2の信託への引継ぎもされなかった場合は、信託されていた新株予約権のうち受益者が指定されていない分は放棄されることになる。
ステップS507では、情報処理装置16aは、別途、金銭等を信託するなどにより、第2の信託の設定の手続きを進める。例えば、情報処理装置11a又は情報処理装置14aにおいて、委託者11又は受益者指定権者14が確定ボタンを押すと、これを受けた情報処理装置16aは、第2の信託の契約締結に必要なプロセスを進める処理を実行する。例えば、電子署名により信託契約を締結する処理や、金銭の受託者への拠出を促す通知を出力する処理を実行する。
情報処理装置16aは、信託情報に予約登録された受益者を、受益者指定事由が発生した時点で最終的な受益者であるとして受託者に対して通知し、もって、受益者が確定する。
【0035】
ステップS503の応答が受益者を指定するものであった場合には、ステップS505において、情報処理装置16aは、受益者指定事由の発生に伴い、指定された受益者に対して新株予約権を付与する。この処理は、具体的には、情報処理装置16aは、受益者指定事由の発生に伴い、受託者12に対して受益者13(ステップS504で登録した受益者)に新株予約権の付与を行うように通知することにより予約登録されていた受益者を受益者として確定する。なお、受益者指定事由には、受益者指定するにあたっての委員会での決議などのプロセスを含むものとする。続いて、情報処理装置16aは、例えば、信託情報に対し、今回受益者指定された分の新株予約権についての信託について、信託が終了したことを登録する。なお、受益者が指定された後も、新株予約権を付与せずに信託を継続してもよい。
【0036】
なお、本質的に受益者指定は信託契約ごとに1回きりなので、受益者として指定しない場合には後で第2の信託の受益者を指定する、という段取りはできないが、予約的なものとして整理すれば、受益者指定事由の到来前の処理として整理し、受益者指定事由の発生で同時かつ一括で受益者を確定するという取扱いは可能である。また、第2の信託の受託者も含めて受益者を指定しないまま、受益者指定事由が到来した場合には、即時に発行会社へ通知を行い、新株予約権を放棄する処理になる。
ステップS507に続くステップS508では、情報処理装置16aは、当該信託の信託情報から帳簿価格を読み出す。続いて、ステップS509において、情報処理装置16aは、当該信託について、第2の信託情報として図4の信託情報の各情報を登録する。第2の信託の信託情報に対しては、新たな信託IDが付与される。情報処理装置16aは、第2の信託の信託情報の帳簿価格として、ステップS508で読み出した帳簿価格を用いる。第2の信託の受託者は、第1の信託から受益者として信託財産である新株予約権の引継ぎをすることができる。ステップS509では、情報処理装置16aは、例えば、信託情報に対し、今回受益者指定されなかった分の新株予約権のうち、放棄されなかった部分についての信託について、第2の信託への引継ぎがされ、第1の信託が終了したことを登録する。
【0037】
なお、受益者の指定においては、付与対象者を仮に決定した上で、その者のために設定された信託における受託者を受益者として指定してもよい。いきなり受益者として確定してしまうと、その後に、その受益者が発行会社10に対して十分な貢献がなく、委託者11としては不満な場合がある。そこで、ここで説明する例では、まず付与対象者を仮に決定し、その後、例えばその者が十分な貢献をした場合(確定条件が成立した場合)に、仮の付与対象者を受益者として確定する。
以下、図6を参照して、仮の付与対象者を指定する例の処理について説明する。
【0038】
ステップS601は、例えば、図5のS503で、付与対象者を仮に決定した上で、その者のために設定された信託における受託者を受益者として指定した場合に実行される処理である。この場合、情報処理装置16aは、当該信託の信託情報において付与対象者として仮決めされた者とその者のために設定された信託の受託者を登録する。この場合、当該受託者には、新たな信託IDが付与される。情報処理装置16aは、新たな信託情報の帳簿価格として、ステップS506で読み出した第1の信託における帳簿価格を用いる。かかる信託の受託者は、第1の信託から信託財産である新株予約権の引継ぎをすることができる。ステップS507では、情報処理装置16aは、例えば、信託情報に対し、今回付与対象者を仮に決定された部分の信託について、新たな信託の受託者に対する引継ぎがされ、第1の信託が終了したことを登録する。当該受託者が受益者として指定された場合、仮に決定された付与対象者への新株予約権の引渡しは行わず、ステップS602において情報処理装置16aは、確定条件が成立したか否かを判定する。確定条件は、例えば、付与対象者として仮に決定された者が発行会社10に対して所定の貢献を実行した場合に条件成立とする。この確定条件が成立したか否かは、委託者11又は発行会社10が入力するようにすればよい。また、当該受託者又は受益者指定権者14が委託者11又は発行会社10などから聴取した結果を入力しても良い。
【0039】
ステップS602で確定条件が成立した場合には、付与対象者として仮に決定された者をその者のために設定された信託における受益者として確定する。ステップS603において、情報処理装置16aは、当該信託の信託情報において仮に決定された付与対象者を確定した受益者として登録する。また、情報処理装置16aは、確定した受益者に対して新株予約権を付与する。すなわち、情報処理装置16aは、当該付与対象者のために設定された信託における受託者(受託者12である場合もあればその他の受託者の場合であっても良い。)に対して受益者13(確定した受益者)に新株予約権の付与を行うように通知する。
【0040】
ステップS602で確定条件が成立しなかった場合には、仮に決定された付与対象者を受益者に該当しないことが確定した者として、あらかじめ信託契約に定められた他の受益者(他の信託における受託者である場合もあればその他の者であっても良い。)が受益者となる。受益者指定権者(受益者指定権者14である場合もあればその他の受益者指定権者であっても良い。)が改めて受益者を指定する場合であっても良い。ステップS604において、情報処理装置16aは、当該信託の信託情報において仮の付与対象者を削除し、上記の新たな受益者を受益者として登録する、また、情報処理装置16aは、新株予約権を付与する。すなわち、情報処理装置16aは、受託者12に対して受益者13(確定した受益者)に新株予約権の付与を行うように通知する。
【0041】
なお、新株予約権管理システム50において、第1の信託において付与対象者を仮に決定するということを、当該付与対象者のために設定された信託における受託者を受益者として指定することとすることができる。この場合、確定条件が成立したときには、仮の付与対象者を受益者として確定する。確定条件が成立しなかったときには、仮に決定された付与対象者のために設定された信託から第1の信託(又は第2の信託のように付与対象者が仮に決定されていない受益者の特定されない信託などの他の信託)に新株予約権を戻すことができる。すなわち、この場合には、新株予約権は他の受託者に信託財産として引き継がれる。
【0042】
上述の実施例では、受益者を全部指定しない場合に、第2の信託を組成し、その第2の信託に、受益者指定を行わなかった且つ放棄されなかった新株予約権の情報を流し込む点を、主に開示した。本発明は、更に、例えば、情報処理装置16aにより以下の処理を実行することができる。
(1)全部の新株予約権につき受益者指定権が行使されないときに第2の信託の組成を促す処理(契約締結プロセスに移行)。
(2)(契約締結プロセスが完了し)第2の信託の組成が完了した場合に、
・第2の信託の受託者を、第1の信託の受益者として指定する旨の予約登録を実行する処理、
・第1の信託の受益者を指定しない場合で、新株予約権の放棄を希望しない場合には自動的に第2の信託の受託者を第1の信託の受益者として指定する予約登録をする旨のリクエストを受け付ける処理、及び、受益者指定事由が発生した時点で、それを受益者指定通知とみなし、受益者指定事由が発生した新株予約権のうちの第2の信託への引継ぎ対象の新株予約権については情報を引き継ぐ処理。
(3)受益者指定の内容に従って、譲渡承認請求や信託財産状況報告書を、自動的に委託者や発行会社に送信する処理。
【0043】
また、本発明は、更に、例えば、情報処理装置16aにより以下の処理を実行することができる。例えば、付与対象者の仮決めに関し、受益者指定において「条件付きで配る」ということを選択(予約登録)すると、
(1)自動的に第3の信託(専用信託口座創設のための信託)の作成を促す処理、
(2)この信託が組成されたあとは、受益者指定事由の到来をもって、受益者指定通知が発行会社から受託者へ行われたものとみなす処理、
(3)当該受益者指定の内容に従って、譲渡承認請求や信託財産状況報告書を自動的に委託者や発行会社に送付する処理。
【0044】
また、上述した実施例の新株予約権管理システム50によれば、
受益者指定権者は、操作する情報処理装置によって、
(1)誰を無条件に受益者にするか、
(2)誰を条件付きの受益者にするか(=第3の信託を組成するか)、
(3)受益者を全員指定せずに第2の信託に移すか、
(4)放棄するか、
を選択することができる。
そして、(2)の第3の信託については、一人ずつ1信託を作らなければならないので、信託の組成数が激増する原因となるが、新株予約権管理システム50は、
・自動的に第1の信託の信託情報を引き継ぐ手段を有する、
・予約登録を期限到来により受益者指定通知とみなして権利移転を行う手段を有する、
・人ごとに組成される第3の信託ごとに税務申告や信託財産状況報告書を自動で作成する手段を有する。
従って、本発明によれば、手作業ではできないくらいにおびただしい数の信託の処理をスムーズに実現できる、という効果を奏する。
【0045】
なお、本発明による新株予約権管理システムは以下の構成を有する。
(1)受益者指定事由の接近に伴い、委託者又は受益者指定権者が操作する情報処理装置に対し、受益者指定を促すメール等を送信する手段、
(2)第1の信託の信託情報から、第2の信託及び第3の信託の信託情報に情報を引き継ぐ手段(例えば帳簿価格の引継ぎ)、
(3)受益者指定に伴い、全受益者を無条件で指定する場合以外に、
(i)(放棄)
(ii)第2の信託の組成による新たな受託者への引継ぎ、
(iii)第3の信託の組成による条件付き付与対象者のための新たな受託者への引継ぎ、のいずれかを委託者又は受益者指定権者が選択可能なように、委託者又は受益者指定権者が操作する情報処理装置に問い合わせる手段、及び、その応答を受け付ける手段、
(4)第2の信託及び第3の信託の組成に必要な手続きの案内を、第2の信託及び第3の信託を組成するタイミングで、委託者又は受益者指定権者が操作する情報処理装置に送信する手段、
(5)第2の信託及び第3の信託の組成が出来たら、最終的にその第2、第3の信託の受託者を受益者指定可能とする手段、
(6)新たな信託の組成に伴って必要になる信託財産状況報告書・税務申告書などの必要書類を、信託情報等に基づいて生成する手段、
【0046】
本発明によれば、特定の受益者を指定すること以外に、第2の信託への引継ぎ(付与対象者決めない)、及び第3の信託(付与対象者仮決め・確定条件付き)への引継ぎを選択することができ、委託者及び受益者指定権者の選択の自由度を高めることができるという効果を奏する。
また本発明によれば、委託者及び受益者指定権者の受益者指定の状況に応じて、次の信託の準備(案内、書類生成等)を自動化し、受益者指定権者による受益者指定(予約登録)の後に、受益者指定事由が発生すると自動的に受益者が指定され、財産が引き継がれ、必要書類が準備されるという効果を奏し、時短効果、コスト削減効果を有する。
【0047】
(1)なお、本発明は、新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するかを問い合わせる問合せ手段と、前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、前記応答受付手段で受け付けた応答が全受益者を指定するものでなかった場合、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものが前記委託者から第2の受託者に信託されたことに関する情報である第2の信託情報を記憶する第2の記憶手段と、を有する、ことを特徴とする。これにより、第1の信託が終了した後も第2の信託として継続することができ、会社への貢献度等に応じた数量の新株予約権を従業員等に与えることができる。
また、本発明は、新株予約権が委託者から第1の受託者に信託されたことに関する情報である第1の信託情報を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の信託情報が示す信託の受益者指定事由の発生に先立つ一定期間前に全部又は一部の新株予約権について受益者を指定するか(あるいは放棄を行うか)を問い合わせる問合せ手段と、前記問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける応答受付手段と、前記応答受付手段で受け付けた応答が放棄されるものを除いた全ての新株予約権について受益者を指定するものでなかった場合、予め第1の信託の受益者指定事由よりも後に受益者指定事由の発生を迎える第2の信託又は第3の信託を設定することを可能とする第1の情報処理手段と、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち受益者が指定されなかったものについて、前記第1の情報処理手段により設定された第2の信託における受託者(第2の受託者)又は第3の信託における受託者(第3の受託者)を受益者として指定することを可能とする第2の情報処理手段と、第2の受託者又は第3の受託者を受益者として指定した場合、第1の信託の信託財産となっている新株予約権を第2の信託又は第3の信託における信託財産として引き継いだことに関する情報である第2の信託情報又は第3の信託情報を記憶する第2の記憶手段又は第3の記憶手段と、を有する、ものであってもよい。
また、本発明は、すべての新株予約権について受益者を指定した場合に、その新株予約権の名義を受託者から受益者名義に変更する手段を備えてもよい。
また、第2の信託又は第3の信託の受託者を、第1の信託の受益者として指定するのは、第2の信託又は第3の信託の組成後である。
【0048】
(2)また、本発明は、前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託情報に含まれる、前記第1の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を読み出す第1の読出手段を有し、前記第2の記憶手段は、前記第2の信託情報に含まれる、前記第2の信託情報に係る新株予約権の帳簿価格を、前記第1の読出手段で読み出した帳簿価格をそのまま引継いで記憶する、ことを特徴とする。これにより、第2の信託を第1の信託と同じ帳簿価格で設定することができ、第1の信託が終了した後も第2の信託として継続することができ、会社への貢献度等に応じた数量の新株予約権を段階的に従業員等に与えることができる。
【0049】
(3)また、本発明は、前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託情報に含まれる、前記新株予約権の信託の受益者についての情報である受益者情報を読み出す第2の読出手段と、前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託情報に含まれる、前記受益者指定事由を読み出す第3の読出手段と、前記第3の読出手段で読み出した受益者指定事由が発生するに先立つ一定期間に、前記第2の読出手段で読み出した、前記受益者情報に含まれる受益者IDで特定される受益者に対して新株予約権を付与するかを問い合わせる第2の問合せ手段と、前記第2の問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける第2の応答受付手段と、前記第2の応答受付手段で受け付けた応答が新株予約権を付与するものであった受益者に対し、新株予約権を付与する付与手段と、をさらに有し、前記第2の記憶手段は、前記第1の信託情報に係る新株予約権のうち、前記付与手段で付与した新株予約権以外の新株予約権について信託を継続するものとして前記第2の信託情報を記憶する、ことを特徴とする。これにより、第1の信託に係る新株予約権を、第1の信託で信託を終了する分と、第2の信託で信託を継続する分とに分類することができ、柔軟性を持って、会社への貢献度等に応じた数量の新株予約権を従業員等に与えることができる。
【0050】
(4)また、本発明は、前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託の信託情報に含まれる、前記新株予約権の信託の受益者についての情報である受益者情報を読み出す第2の読出手段と、前記第1の記憶手段に記憶された、前記第1の信託の信託情報に含まれる、前記受益者指定事由を読み出す第3の読出手段と、前記第3の読出手段で読み出した受益者指定事由が発生するに先立つ一定期間に、前記第2の読出手段で読み出した、前記受益者情報に含まれる受益者IDで特定される受益者に対して新株予約権を付与するかを問い合わせる第2の問合せ手段と、前記第2の問合せ手段による問い合わせに対する応答を受け付ける第2の応答受付手段と、前記第2の応答受付手段で受け付けた応答が新株予約権を付与するものであった受益者に対し、新株予約権を付与する付与手段と、をさらに有し、前記第2の記憶手段は、前記第1の信託の信託情報に係る新株予約権のうち、前記付与手段で付与した新株予約権以外の新株予約権について付与対象者を仮に決定し、受益者が確定するための条件を合わせて記憶する記憶手段と、付与対象者を仮に決定した場合において、当該付与対象者のために設定された信託における受託者を受益者として指定することで信託を継続するものとして前記第2の信託の信託情報を記憶する、ことを特徴とする。これにより、第1の信託に係る新株予約権を、第1の信託で信託を終了する分と、第2の信託で信託を継続する分とに分類することができるほか、付与対象者を仮に決定した上でその者の会社への貢献度等に応じて最終的に新株予約権を与えるかどうかを決定することができるようになり、さらに柔軟性を持って、会社への貢献度等に応じた数量の新株予約権を従業員等に与えることができる。
【実施例0051】
次に本発明の実施例2に係る新株予約権管理システムの動作について説明する。実施例2は、以下に説明する点以外は、実施例1と同様である。実施例1と同じ点についての説明は省略する。実施例1では、発行会社10は自社での貢献度等を判定して従業員等に新株予約権を交付するように受益者を指定するとしたが、本実施例では、この受益者指定の手法の具体例について開示する。実施例2においては、ポイント制を採用し、従業員等が付与されたポイント数に応じて、その従業員等に新株予約権を交付するか否か、また交付する場合における新株予約権の交付数を決定する。
【0052】
以下、実施例2の新株予約権管理システム50の動作について説明する。図7は、実施例2に係る新株予約権管理システム50による処理を示すフローチャートである。図7において、図5の処理と同じ処理については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0053】
S501の処理に続くステップS701において、情報処理装置16aは、ステップS501で登録した第1の信託に対するポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルを生成する。ポイント付与基準テーブルは、従業員等に付与するポイント数の基準となるテーブルである。補正率テーブルは、ポイント付与基準テーブルで算出されたポイントに乗じる補正率の基準となるテーブルである。ポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルは、操作者が基準及びポイント数並びに補正率を直接入力し、これを受けた情報処理装置16aが入力通りに生成してもよい。ポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルは、情報処理装置16aが自動生成してもよい。情報処理装置16aがポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルを自動生成する場合、情報処理装置16aはあらかじめ定めた受益者指定権者が貢献度を測定するための指標及び補正率に係る質問事項を提示し、それに対する回答や貢献度を測定するための指標及び補正率のデータ入力(要望事項)を受けることで、ポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルを生成する。具体的には、情報処理装置16aは、委託者や発行会社による回答(要望事項)の入力を受け、要望に応じたポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルを自動生成する。要望事項は、例えば、貢献度等を測定する指標及び補正率としてどのような指標を選択するか、選択した指標及び補正率におけるポイント数に対する重みづけが挙げられる。貢献度等を測定する指標及び補正率としては、例えば、従業員等の評価期間における人事評価、従業員等の貢献期待度を示す一定の行動、採用時における採用予定の職位、勤務期間、評価期間における従業員等に対する表彰、従業員等の給与、発行会社におけるイベント、従業員等のライフイベント、事業計画の達成度、プロジェクトの達成度などが挙げられる。ポイント付与基準テーブルの例を、図8図9及び図10に示す。また、補正率テーブルの例を、図11図12及び図13に示す。
【0054】
図8は、評価期間における人事評価を従業員等の貢献度等を測定する指標とし、従業員等の職位及び評価に応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。評価は、業務上の成績等の評価である。評価は、Aが最も高い評価であり、Bがその次に高い評価であり、Cがその次に高い評価であり、Dが最も低い評価である。図8のポイント付与基準テーブルによれば、例えば、ある従業員等の職位が部長であり且つ評価がBの場合、その従業員等には10ポイントが付与される。
【0055】
図9は、従業員等の採用時のインセンティブに応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。図9のポイント付与基準テーブルによれば、例えば、ある従業員等の採用時の職位が部長である場合、10人までの枠に入った場合にはその従業員等に50ポイントが付与される。
【0056】
図10は、従業員等の定性評価に応じてポイントを決定するためのポイント付与基準テーブルの一例を示す図である。図10のポイント付与基準テーブルによれば、例えば、ある従業員等が卓越した新商品開発をしたと認められた場合、その従業員等に500ポイントが付与される。
【0057】
図11は、従業員等の勤務期間に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。図11の補正率テーブルによれば、例えば、ある従業員等の勤務期間が2年以上3年未満の場合、その従業員等のポイントに対する補正率は80%であり、基準が100ポイントであれば補正されて80ポイントになる。
【0058】
図12は、従業員等の職位に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。図11の補正率テーブルによれば、例えば、ある従業員等の職位が取締役の場合、その従業員等のポイントに対する補正率は150%であり、基準が100ポイントであれば補正されて150ポイントになる。
【0059】
図13は、従業員等の評価に応じた補正を行うための補正率テーブルの一例を示す図である。評価は、業務上の成績等の評価である。評価は、Sが最も高い評価であり、Aがその次に高い評価であり、Bがその次に高い評価であり、Cがその次に高い評価であり、Dが最も低い評価である。図11の補正率テーブルによれば、例えば、ある従業員等の評価がDの場合、その従業員等のポイントに対する補正率は0%であり、基準が100ポイントであれば補正されて0ポイントになる。
【0060】
情報処理装置16aは、図8図9及び図10のポイント付与基準テーブルのそれぞれを単独で用いて従業員等に対するポイント付与を行ってもよいし、組み合わせて用いてもよいし、これら以外のポイント付与基準テーブルを用いてもよい。情報処理装置16aは、図11図12及び図13の補正率テーブルのそれぞれを単独で用いて従業員等に対するポイントを補正してもよいし、組み合わせて用いてもよいし、これら以外の補正率テーブルを用いてもよい。情報処理装置16aは、図8図9及び図10に示したポイント付与基準テーブルで算出されたポイントを従業員等に付与してもよい。また、ポイント付与基準テーブルで算出されたポイント数に、図11図12及び図13に示した補正率テーブルによる補正率を乗じたポイントを従業員等に付与してもよい。
【0061】
図7の説明に戻り、ステップS702において、情報処理装置16aは、受益候補者の登録を行う。情報処理装置16aは、受益候補者の従業員等について、氏名、住所等の操作者による入力を受け付け、受益候補者情報として例えば記憶部103に登録する。情報処理装置16aは、受益候補者情報を用いて、その受益候補者が反社会的勢力に属する人物か否かの反社チェックを行うようにしてもよい。
【0062】
ステップS703において、情報処理装置16aは、受益候補者のポイント管理を行う。具体的には、ステップS701で生成したポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルに基づいて、ステップS702で登録した受益候補者に対してポイントの付与を実行する。ポイントの付与は、受益候補者ごとに、付与されたポイント数を例えば記憶部103に登録することで行う。また、ステップS703において、情報処理装置16aは、受益候補者が退職等により受益者となる資格を失った場合には、その受益候補者に付与されていたポイント数をゼロクリアする処理を実行してもよい。また、ステップS703において、情報処理装置16aは、例えば人事に関する人事データの入力を受け付け、人事データに受益候補者に対する成績不良、素行不良などの不良記録がある場合は、その受益候補者に付与されていたポイント数を減ずる処理を実行してもよい。
【0063】
本実施例では、情報処理装置16aは、上述のようにして受益候補者にポイントを付与し、例えばステップS504等で受益者の登録を行う際には、各受益候補者に付与されているポイントに応じてその受益候補者に付与する新株予約権の数を決定する。情報処理装置16aは、各受益候補者に付与する新株予約権の数を決定したならば、その決定した数を例えば記憶部103に登録する。情報処理装置16aは、例えば、ある一定ポイントごとに新株予約権を一つ付与するとしてもよい。また例えば、情報処理装置16aは、全受益候補者に付与されているポイント総数に対するその受益候補者に付与されているポイント数の割合と、新株予約権の総数に対するその受益候補者に付与する新株予約権の数の割合とが同じ割合になるように、その受益候補者に付与する新株予約権の数を決定してもよい。
【0064】
情報処理装置16aは、各受益候補者に付与する新株予約権の数を決定したならば、新株予約権を付与されることとなった受益候補者を受益者として認識する。情報処理装置16aは、各受益者について、新株予約権の名義書換の書類や、税務関連の書類を作成する処理を実行してもよい。
【0065】
また、情報処理装置16aは、ポイントの付与について客観的な運用の観点を記載した社内規程(以下「交付ガイドライン」という)を作成する。具体的には、情報処理装置16aは、例えば、委託者や発行会社による回答(要望事項)の入力を受け、それを記載し、またポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルの内容及び運用に関して記載し、さらにポイント喪失項目・減点項目を記載することで、交付ガイドラインを自動で作成する。情報処理装置16aは、貢献度を測定する指標、補正率に応じて、交付ガイドラインの文例のデータを蓄積しておき、選択した指標、補正率に応じて、文例を組み合わせ、自動生成されたポイント付与テーブル及び補正率テーブルを入れ込むことにより、交付ガイドラインを自動作成していくことができる。すなわち、情報処理装置16aは、ポイント付与基準テーブル及び補正率テーブルに基づいて交付ガイドラインを作成する。
【実施例0066】
次に本発明の実施例3に係る新株予約権管理システムの動作について説明する。実施例3は、以下に説明する点以外は、実施例1及び実施例2と同様である。実施例1及び実施例2と同じ点についての説明は省略する。
【0067】
実施例1では、第1の信託の委託者や受益者指定権者は、第2の信託や第3の信託と異なっていてもよいものの、原則としてそのまま委託者や受益者指定権者を継続する前提であって、システム上で異なる委託者や受益者指定権者に自由に変更できるようにすること自体が実現する利便性には注目するものではなかったこれに対して、本実施例では、第1の信託、第2の信託、第3の信託及びそれ以降の引き継ぐ信託のそれぞれにおいて、当初信託又は引継信託の委託者又は受益者指定権者が、次に新株予約権等を引き継ぐ先である引継信託の委託者又は受益者指定権者を指定する。
【0068】
本実施例では、図5のステップS509又は図7のステップS509において、情報処理装置16aは、第2の信託情報についての委託者や受益者指定権者を登録する。すなわち、情報処理装置16aは、第2の信託情報についての委託者や受益者指定権者を記憶部103に記憶する。ステップS509における委託者や受益者指定権者の登録においては、今までの委託者や受益者指定権者のままで登録してもよいし、今までと異なる委託者や受益者指定権者を登録してもよい。
【0069】
また、図5のステップS509又は図7のステップS509において、情報処理装置16aは、新株予約権の一部だけを第2の信託に移管し、その部分だけについて別の委託者又は受益者指定権者を変更、登録できるようにしてもよい。
【0070】
本実施例によれば、当初信託(第1の信託)又は引継信託(第2の信託以降の信託)の委託者又は受益者指定権者がずっとこれらの役割を果たさなければならない状況を解消できるとともに、安定的に委託者又は受益者指定権者となることができるものにこれらの立場をあたかも代行させるような形を採ることができるため、引継信託が組成されないリスクを回避することができる。
【0071】
このとき、情報処理装置16aは、現在の委託者又は受益者指定権者から変更する場合には、新たな委託者又は受益者指定権者についての情報を操作者に問い合わせ、操作者による入力に基づいて、新たな委託者又は受益者指定権者の登録を行う。
【0072】
また、情報処理装置16aは、引き継ぐ信託において、現在の信託の委託者又は受益者指定権者から変更しないという設定を受け付けることができるようにしてもよい。変更しないという設定がされた場合には、情報処理装置16aは、新たな委託者又は受益者指定権者についての情報を操作者に問い合わせる処理を実行しないようにしてもよい。これにより、委託者又は受益者指定権者を変更しない意向がある際に、余計な問い合わせが発生しないようにして煩雑さを回避することができる。
【0073】
また、情報処理装置16aは、引き継ぐ信託において、現在の信託の委託者又は受益者指定権者から変更しないという設定において、変更するという設定がされた場合には、変更前の委託者に対して、その後の引継信託についての信託情報を提供してもよい。この信託情報の提供は、直接電子メールに記載して行ってもよいし、情報が閲覧可能なURLを提供するものであってもよい。
【0074】
また、情報処理装置16aは、例えば当初委託者が次回以降の委託者をさらに変更することを希望する場合には、新たな委託者として、当初委託者自らを含め、別の委託者を指定し登録することができるようにしてもよい。これにより、変更後の委託者又は受益者指定権者が、不適切な者にならないように変更前の委託者が監督することも可能であり、また、元の委託者又は受益者指定権者に戻すこともできるようになる。
【0075】
また、情報処理装置16aは、例えば委託者に他の受益者指定権者を指定する意向がない場合には、次回以降の受益者指定権者をすべて現在の受益者指定権者又は別途定めた受益者指定権者が務めることとして、委託者と受託者の間の信託契約のみを締結する処理を実行し、受益者指定権者との間では契約を締結する処理を省略してもよい。これにより、受益者指定権者は、委託者と受託者との間で随時組成される信託につき、受益者指定権を行使するときのみ受託者に対して受益者指定権を行使すればよく、それ以外のときは自動的に次の引継信託に引き継がれるような処理を行うことができるようになり、手続の負担が軽減される。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。これらの実施例及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10 発行会社
11 委託者
12 第1の受託者
13 受益者
14 受益者指定権者
15 第2の受託者
18 第3の受託者
19 受益者
20 株式市場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13