(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062429
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ブローアウトパネルの強制開放システム
(51)【国際特許分類】
G21C 9/008 20060101AFI20240501BHJP
E06B 5/12 20060101ALI20240501BHJP
E06B 7/16 20060101ALI20240501BHJP
E06B 7/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G21C9/008
E06B5/12
E06B7/16 Z
E06B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170237
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 映介
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】入澤 啓
(72)【発明者】
【氏名】大久保 享一
(72)【発明者】
【氏名】押谷 敏和
(72)【発明者】
【氏名】菊川 浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛生
(72)【発明者】
【氏名】杉田 大河
【テーマコード(参考)】
2E036
2G002
【Fターム(参考)】
2E036AA02
2E036BA01
2E036HB38
2G002CA01
2G002EA03
(57)【要約】
【課題】ブローアウトパネルを移動させる際に電動機が過負荷にならないようにする。
【解決手段】強制開放システム100は、建屋(原子炉建屋11)の開口部13に設置されたブローアウトパネル16と、建屋の外壁12に沿って移動する遮蔽体(遮蔽扉14)と、遮蔽体の閉止時の閉止位置よりも外側の退避位置にブローアウトパネルを移動させる強制開放機構20と、ブローアウトパネルが閉止位置よりも外部に移動したことを検出する検出部(巻取り端リミットスイッチ52b)と、強制開放機構の電動機(電動ウインチ21)の動作を制御する制御部50と、を備える。制御部は、電動機の作動時間を制限しながら、電動機のトルクを上限値荷重以下に制御した状態で、退避位置にブローアウトパネルを移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋の開口部に設置されたブローアウトパネルと、
前記建屋の外壁に沿って移動する遮蔽体と、
前記遮蔽体の閉止時の閉止位置よりも外部に前記ブローアウトパネルを移動させる強制開放機構と、
前記ブローアウトパネルが前記閉止位置よりも外側の退避位置に移動したことを検出する検出部と、
前記強制開放機構の電動機の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電動機の作動時間を制限しながら、前記電動機の牽引荷重を上限値荷重以下にトルク制御した状態で、前記退避位置に前記ブローアウトパネルを移動させる
ことを特徴とするブローアウトパネルの強制開放システム。
【請求項2】
請求項1に記載のブローアウトパネルの強制開放システムにおいて、
前記上限値荷重は、前記強制開放機構の定格荷重以上という条件、及び、巻取り先の機器の限界荷重以下という条件を満たす
ことを特徴とするブローアウトパネルの強制開放システム。
【請求項3】
請求項1に記載のブローアウトパネルの強制開放システムにおいて、
前記制御部は、前記ブローアウトパネルを前記遮蔽体の移動を阻害しない位置に誘導して当該位置で拘束するように、前記強制開放機構を動作させる
ことを特徴とするブローアウトパネルの強制開放システム。
【請求項4】
請求項1に記載のブローアウトパネルの強制開放システムにおいて、
前記制御部は、前記強制開放機構に前記ブローアウトパネルを拘束させるのに必要な時間以上という条件、及び、前記遮蔽体が閉止完了となる時間以下という条件を満たすように、前記電動機の作動制限時間を設定する
ことを特徴とするブローアウトパネルの強制開放システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローアウトパネルの強制開放システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既設の原子力発電所では、原子炉建屋内で何らかの要因で発生した圧力を建屋外に逃がすためのブローアウトパネルが設置されている。近年、ブローアウトパネルを開放して所定の退避位置に移動させるために、ブローアウトパネルをワイヤロープ等に接続して電動ウインチなどの電動機により牽引することで、ブローアウトパネルを強制的に開放する強制開放機構(例えば、特許文献1参照)の設置が進められている。特許文献1に開示された従来技術は、電動ウインチ(電動機)でワイヤロープを巻取る際に、一定の巻取り量に到達したときに巻取り端リミットスイッチがONになることで電動ウインチの巻取りを停止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来技術は、以下に説明するように、ブローアウトパネルを移動させる際に電動機が過負荷になることがある、という課題がある。
【0005】
例えば、ブローアウトパネルは、開放時に振り子状態になることがある。この場合に、ワイヤロープが不規則な挙動を起こして電動ウインチのドラム溝を超えてしまい、その状態でワイヤロープが巻取られることで乱巻き事象が発生する可能性がある。仮に乱巻き事象が発生すると、巻取り長さが乱れるため、巻取り端リミットスイッチがONにならない可能性がある。その結果、電動ウインチが必要以上にワイヤロープを巻取ることで、電動ウインチが過負荷運転状態となることが懸念される。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、ブローアウトパネルを移動させる際に電動機が過負荷にならないようにするブローアウトパネルの強制開放システムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、ブローアウトパネルの強制開放システムであって、建屋の開口部に設置されたブローアウトパネルと、前記建屋の外壁に沿って移動する遮蔽体と、前記遮蔽体の閉止時の閉止位置よりも外側の退避位置に前記ブローアウトパネルを移動させる強制開放機構と、前記ブローアウトパネルが前記閉止位置よりも外部に移動したことを検出する検出部と、前記強制開放機構の電動機の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電動機の作動時間を制限しながら、前記電動機の牽引荷重を上限値荷重以下にトルク制御した状態で、前記退避位置に前記ブローアウトパネルを移動させる構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブローアウトパネルを移動させる際に電動機が過負荷運転状態にならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るブローアウトパネルの強制開放システムの構成図である。
【
図2】ブローアウトパネルの強制開放システムにおける制御部の概略構成図である。
【
図3】強制開放機構のトルク設定値の説明図である。
【
図4】強制開放システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、巻取り端リミットスイッチがONにならなかった場合においても、ブローアウトパネルを比較的安定して所定の退避位置に移動させる強制開放システムを提供することも意図している。また、本発明は、ワイヤロープや巻取り先の機器に過度な負担がかかることを抑制する強制開放システムを提供することも意図している。
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
<強制開放システムの構成>
以下、
図1を参照して、本実施形態に係るブローアウトパネルの強制開放システム100の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るブローアウトパネルの強制開放システム100の構成図である。
【0013】
図1に示すように、原子炉建屋11の外壁12には、外部に開いた開口部13が設けられている。開口部13には、留め具となるクリップ(図示せず)によって、
図1の破線で示すブローアウトパネル16が留められている。ブローアウトパネル16は、常時は開口部13を閉止している。そして、原子炉建屋11の内圧が上昇した時に、その圧力によってクリップが外れて、ブローアウトパネル16が開き、原子炉建屋11内の圧力や水素が開放される。
【0014】
また、原子炉建屋11の外壁12の外側には、遮蔽扉14と閉止装置15とが設けられている。遮蔽扉14は、原子炉建屋11内の空間を閉鎖するための遮蔽体であり、外壁12に沿ってスライド移動する構成になっている。閉止装置15は、ブローアウトパネル16が開いて開放された開口部13を、遮蔽扉14をスライド移動させて遮蔽扉14で閉止する装置である。
【0015】
ブローアウトパネル16の外壁側の比較的上側の位置と下端付近の位置には、連結部材19が設けられている。ブローアウトパネル16の比較的上側の位置に設けられた連結部材19には、チェーン17が取り付けられている。チェーン17は、原子炉建屋11の外側に設けられた支持部材18の先端に取り付けられている。ブローアウトパネル16の下端付近の位置に設けられた連結部材19には、ワイヤロープ22が取り付けられている。ワイヤロープ22は、後記する電動ウインチ21のドラム21aに取り付けられている。電動ウインチ21は、後記する強制開放機構20の電動機である。なお、ブローアウトパネル16とチェーン17と支持部材18と連結部材19は、ブローアウトパネル16の巻取り先の機器30を構成する。
【0016】
ブローアウトパネル16が開くような事象が発生したときは、開いたブローアウトパネル16は中途半端な位置でとどまる場合が多い。そこで、強制開放システム100は、強制開放機構20の電動ウインチ21を駆動することにより、ワイヤロープ22によってブローアウトパネル16を牽引する。これにより、ブローアウトパネル16は、強制的に開放されて、
図1の実線で示す位置に移動する。この際、ブローアウトパネル16は、チェーン17を介して原子炉建屋11の外側に設けられた支持部材18の先端に吊り下げられる。巻取り端リミットスイッチ52bは、ワイヤロープ22の巻取り完了を検出する。
【0017】
ワイヤロープ22は、電動ウインチ21のドラム21aに巻取られる構成になっている。強制開放システム100は、巻取り端リミットスイッチ52bによりワイヤロープ22の一定の巻取り量を検知する構成になっている。巻取り端リミットスイッチ52bは、強制開放機構20の動作によりブローアウトパネル16を遮蔽扉14が通過する位置(遮蔽体の閉止時の閉止位置)よりも外側の退避位置に移動したことを検出する検出部として機能するものである。巻取り端リミットスイッチ52bとしては、電動ウインチ21のドラム21aの回転角度を検出する回転センサなどを用いることができる。巻取り端リミットスイッチ52bは、ドラム21aの巻取り角度θに基づいてワイヤロープ22の巻取り量を検知する。ドラム21aの巻取り角度θは、巻取り端リミットスイッチ52bで検出された電動ウインチ21のドラム21aの回転角度に基づいて算出される。強制開放システム100は、ドラム21aの巻取り角度θが予め設定した角度に到達したときに、巻取り端リミットスイッチ52bがONになることで、電動ウインチ21の巻取りを停止する。
【0018】
乱巻き事象が発生したときは、ワイヤロープ22は巻取り端リミットスイッチ52bの設定位置以上に巻取れられてしまい、ブローアウトパネル16が所定の退避位置からずれた位置で停止するとともに、強制開放機構20及び巻取り先の機器30に過大な負荷がかかる可能性がある。このことから、強制開放機構20の電動ウインチ21は、
図4のフローチャートに沿って動作する。動作の詳細については後記の<強制開放システムの動作>の章で説明する。基本は巻取り端リミットスイッチ52bの信号をインターロックとして強制開放機構20が自動停止する流れとなるが、巻取り端リミットスイッチ52bが乱巻き事象等により検知されなかった場合、インバータ51aに
図3に示すトルク設定値を設定するとともに、渋滞監視タイマ52aに巻取り時間を設定する。これにより、トルク設定値で巻取りを維持し、渋滞監視タイマ52aで設定された巻取り時間をインターロックとして電動ウインチ21が自動停止する。渋滞監視タイマ52aは、強制開放機構20が起動したタイミングで時間の測定を開始し、設定した時間で強制開放機構20を停止するものである。トルク設定値の詳細については後記の<トルク設定値の概要>の章で説明する。
【0019】
図2は、強制開放システム100の制御部50の概略構成図である。
図2に示すように、強制開放システム100の制御部50は、現場盤51と、監視操作盤52とを有している。現場盤51は、電動ウインチ21を直接的に制御する装置である。監視操作盤52は、現場盤51に指示を与える装置である。現場盤51には、電動ウインチ21をトルク制御するためのインバータ51aが設けられている。また、監視操作盤52には、ワイヤロープ22の巻取り動作の渋滞を監視するための渋滞監視タイマ52aと、ワイヤロープ22の一定の巻取り量を検知する巻取り端リミットスイッチ52bとが設けられている。
【0020】
<トルク設定値の概要>
図3は、強制開放機構20のトルク設定値の説明図である。
図3に示す例では、値が小さい物から順番に、ブローアウトパネル16の開放に必要な荷重、強制開放機構20の定格荷重、巻取り先の機器30の限界荷重、電動機(電動ウインチ21)の過負荷時の最大値荷重とが示されている。
図3に示すように、トルク設定値は、ブローアウトパネル16の開放に必要な荷重を設定下限値荷重とし、巻取り先の機器30の限界荷重を設定上限値荷重として、トルク制御の誤差を考慮した値とする。さらに好ましくは、トルク設定値の上限値荷重(トルク上限値荷重)は、強制開放機構20の定格荷重以上という条件、及び、巻取り先の機器30の限界荷重以下という条件を満たす値とするとよい。トルク上限値荷重は、電動機(電動ウインチ21)の過負荷時の最大値荷重に応じて設定される。なお、本実施形態では、強制開放機構20は、トルク設定値の上限値荷重に対して-誤差Minから+誤差Maxまでの誤差範囲で運用するものとして説明する。
【0021】
<強制開放システムの動作>
図4は、強制開放システム100の動作を示すフローチャートである。ここでは、ブローアウトパネル16が開いたときに、運転員が監視操作盤52を操作して強制開放機構20を作動させる場合を想定して説明する。しかしながら、強制開放システム100は、ブローアウトパネル16が開いたときに、運転員が監視操作盤52を操作することなく、制御部50が強制開放機構20を作動させる構成にしてもよい。
【0022】
原子力発電所では、何らかの要因で原子炉建屋11の内圧が上昇した時に、その圧力によって開口部13にブローアウトパネル16を留めているクリップ(図示せず)が外れて、ブローアウトパネル16が開き、原子炉建屋11内の圧力や水素が開放される。その際に、運転員が監視操作盤52を操作して強制開放機構20を作動させる。
【0023】
このとき、
図4に示すように、強制開放システム100の制御部50は、監視操作盤52による運転員の操作を受け付ける(ステップS110)。すると、制御部50は、渋滞監視タイマ52aを起動して、強制開放機構20の電動ウインチ21(電動機)の作動時間を制限するための制限時間を設定する(ステップS120)。
【0024】
「制限時間」は、強制開放機構20の起動から停止までの上限時間である。「制限時間」は、監視操作盤52で予め設定することができる。ここでは、「制限時間」は、巻取り端リミットスイッチ52bがON状態になると予定される時間(ON予定時間)に対して任意の時間(数分程度)を付加した時間になっているものとして説明する。「ON予定時間」は、電動ウインチ21が初期設定負荷でワイヤロープ22の一定の巻取り量を巻取るための時間(ブローアウトパネル16を所定の位置に移動させるのに必要な時間)であり、電動ウインチ21によるワイヤロープ22の巻取り速度に応じて定まる。「ON予定時間」は、監視操作盤52で予め設定することができる。ここでは、「ON予定時間」が((ワイヤロープ22の一定の巻取り量)/(電動ウインチ21によるワイヤロープ22の巻取り速度)+(動作許容時間α))であるものとして説明する。ここで、「ワイヤロープ22の一定の巻取り量」とは、ブローアウトパネル16を所定の退避位置に移動させるための巻取り量を意味している。また、「所定の退避位置」とは、遮蔽扉14の閉止時の閉止位置よりも外側の位置を意味している。退避位置は、遮蔽扉14がスライド移動する際に、ブローアウトパネル16が遮蔽扉14の移動を阻害しない位置になっている。また、「動作許容時間α」は、数分程度の、任意に設定できる時間である。
【0025】
次に、制御部50は、強制開放機構20を起動する(ステップS130)。このとき、強制開放機構20の電動ウインチ21は、初期設定負荷でワイヤロープ22を牽引する。初期設定負荷は、トルク上限値荷重(
図3参照)よりも大きな値になっている。
【0026】
次に、制御部50は、ON予定時間内に巻取り端リミットスイッチ52bがONになったか否かを判定する(ステップS140)。
【0027】
ステップS140で、ON予定時間内に巻取り端リミットスイッチ52bがONになっていないと判定された場合(“No”の場合)に、ブローアウトパネル16が振り子状態となり、ワイヤロープ22が不規則な挙動を起こしている可能性がある。この状態が比較的長時間継続すると、ワイヤロープ22が電動ウインチ21のドラム21aの溝(ドラム溝)を超えてしまい、その状態でワイヤロープを巻取ると、乱巻き事象が発生する。そのため、この場合に、乱巻き事象が発生しないように、制御部50は、渋滞監視タイマ52aによって測定される制限時間内でのインバータ51aによるトルク制御を開始する(ステップS150)。トルク制御では、強制開放システム100は、インバータ51aで電動ウインチ21の牽引荷重を、前記した初期設定負荷よりも小さなトルク上限値荷重以下にトルク制御した状態で、ワイヤロープ22を牽引して、ブローアウトパネル16を移動させる。
【0028】
ステップS150の後、巻取り端リミットスイッチ52bがONになった場合、又は、渋滞監視タイマ52aによる測定で制限時間を経過したと判断された場合に、制御部50は、渋滞監視タイマ52aを停止する(ステップS160)。
【0029】
ステップS140で、ON予定時間内に巻取り端リミットスイッチ52bがONになったと判定された場合(“Yes”の場合)、又は、ステップS160の後に、制御部50は、強制開放機構20を停止する(ステップS170)。これにより、一連の処理が終了する。
【0030】
なお、仮に、ステップS170において、ワイヤロープ22が電動ウインチ21のドラム溝を超えた状態で、強制開放機構20が停止した場合、運転員が監視操作盤52を操作して電動ウインチ21のドラム21aを逆方向に回転させてワイヤロープ22を電動ウインチ21のドラム溝内に戻す。この後、運転員は監視操作盤52を操作して電動ウインチ21のドラム21aを正方向に回転させてワイヤロープ22を牽引させ、ブローアウトパネル16を所定の位置に移動させる。
【0031】
<強制開放システムの主な特徴>
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る強制開放システム100は、原子炉建屋11の開口部13に設置されたブローアウトパネル16と、原子炉建屋11の外壁12に沿って移動する遮蔽扉14(遮蔽体)と、遮蔽扉14の閉止時の閉止位置よりも外部にブローアウトパネル16を移動させる強制開放機構20と、ブローアウトパネル16が閉止位置よりも外側の退避位置に移動したことを検出する巻取り端リミットスイッチ52b(検出部)と、強制開放機構20の電動ウインチ21(電動機)の動作を制御する制御部50と、を備える。制御部50は、渋滞監視タイマ52aで電動ウインチ21の作動時間を制限しながら、インバータ51aで電動ウインチ21の牽引荷重を上限値荷重以下にトルク制御した状態で、退避位置にブローアウトパネル16を移動させる。
【0032】
このような本実施形態に係る強制開放システム100は、渋滞監視タイマ52aで電動ウインチ21の作動時間を制限しながら、インバータ51aで電動ウインチ21の牽引荷重をトルク上限値荷重以下にトルク制御した状態で、強制開放機構20にブローアウトパネル16を移動させる。その際に、仮に、
図4のステップS130からステップS150の間でブローアウトパネル16が振り子状態となり、ワイヤロープ22が電動ウインチ21のドラム溝を超えてしまうことがあったとしても、電動ウインチ21の牽引荷重がトルク上限値荷重以下にトルク制御されるため、しかも、電動ウインチ21の作動時間が制限時間内に制限されるため、強制開放システム100は、電動ウインチ21が必要以上にワイヤロープ22を巻取ることを抑制することができる。これにより、ワイヤロープや巻取り先の機器に過度な負担がかかることを抑制することができる。そのため、ブローアウトパネル16を移動させる際に電動機(電動ウインチ21)が過負荷運転状態にならないようにすることができる。また、ON予定時間内に巻取り端リミットスイッチがONにならなかった場合においても、制限時間が経過するまではワイヤロープ22を牽引して、ブローアウトパネル16を移動させるため、ブローアウトパネル16を比較的安定して所定の退避位置に移動させることができる。
【0033】
(2)
図3に示すように、上限値荷重は、強制開放機構20の定格荷重以上という条件、及び、巻取り先の機器30の限界荷重以下という条件を満たすとよい。
【0034】
このような本実施形態に係る強制開放システム100は、乱巻き事象が発生した場合においても、ブローアウトパネル16を比較的安定して所定の退避位置に移動させることができる。
【0035】
(3)制御部50は、ブローアウトパネル16を遮蔽扉14の移動を阻害しない位置に誘導してその位置で拘束するように、強制開放機構20を動作させるとよい。
【0036】
このような本実施形態に係る強制開放システム100は、乱巻き事象が発生した場合においても、ブローアウトパネル16を比較的安定して所定の退避位置に移動させて、ワイヤロープ22や巻取り先の機器に過度な負担がかかることを抑制できる。
【0037】
(4)制御部50は、強制開放機構20にブローアウトパネル16を拘束させるのに必要な時間以上という条件、及び、遮蔽扉14が閉止完了となる時間以下という条件を満たすように、電動ウインチ21の作動制限時間を設定するとよい。
【0038】
このような本実施形態に係る強制開放システム100は、乱巻き事象が発生した場合においても、強制開放機構20の電動ウインチ21(電動機)がワイヤロープ22を必要以上に巻取ることで生じる過負荷運転状態の発生を低減することができる。
【0039】
以上の通り、本実施形態に係る強制開放システム100によれば、ブローアウトパネル16を移動させる際に電動機(電動ウインチ21)が過負荷にならないようにすることができる。
【0040】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
11 原子炉建屋(建屋)
12 外壁
13 開口部
14 遮蔽扉(遮蔽体)
15 閉止装置
16 ブローアウトパネル
17 チェーン
18 支持部材
19 連結部材
20 強制開放機構
21 電動ウインチ(電動機)
21a ドラム
22 ワイヤロープ
30 機器
50 制御部
51 現場盤
51a インバータ
52 監視操作盤
52a 渋滞監視タイマ
52b 巻取り端リミットスイッチ(検出部)
100 強制開放システム
θ 巻取り角度