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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062465
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240501BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240501BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/22 ZAB
B60H1/32 624F
B60H1/32 624Z
F25B1/00 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170299
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 瑞季
(72)【発明者】
【氏名】黄 雲生
(72)【発明者】
【氏名】間島 裕大
(72)【発明者】
【氏名】張 洪銘
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211CA16
3L211CA20
3L211DA27
3L211GA24
(57)【要約】
【課題】吸熱暖房運転とホットガス暖房運転を切り替える冷媒回路を備えた車両用空調装置において、中間的な運転モードを設けることで、冷媒が外部熱交換部に滞留するのを抑止し、十分に暖房能力を確保する。
【解決手段】車両用空調装置は、冷媒回路及び空調ユニットを制御する制御装置を備え、冷媒回路は、ホットガスバイパスを有し、制御装置は、外部熱交換部において冷媒に吸熱させず、圧縮機で圧縮した冷媒の一部を室内熱交換部で放熱させて車室内を暖房するホットガス暖房運転と、外部熱交換部にて冷媒に吸熱させる吸熱暖房運転とを実行可能であり、ホットガス暖房運転中に、外部熱交換部での熱交換を抑止した状態で、外部熱交換部に冷媒を通過させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換部、及び、外部熱交換部を含む冷媒回路と、
前記室内熱交換部を内部に配置した空調ユニットと、
前記冷媒回路及び前記空調ユニットを制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、
前記冷媒回路は、前記圧縮機で圧縮した冷媒の少なくとも一部を、前記室内熱交換部及び前記外部熱交換部を経由することなく減圧して前記圧縮機に戻すホットガスバイパスを有し、
前記制御装置は、
前記外部熱交換部において冷媒に吸熱させず、前記圧縮機で圧縮した冷媒の一部を前記室内熱交換部で放熱させて車室内を暖房するホットガス暖房運転と、前記外部熱交換部にて冷媒に吸熱させる吸熱暖房運転とを実行可能であり、
前記ホットガス暖房運転中に、前記外部熱交換部での熱交換を抑止した状態で、前記外部熱交換部に冷媒を通過させる、車両用空調装置。
【請求項2】
前記冷媒回路は、前記室内熱交換部から流出した冷媒が前記外部熱交換部を迂回するバイパス流路と、
前記バイパス流路と前記外部熱交換器に冷媒を流す冷媒流路とを切替える流路切替手段と、を有し、
前記ホットガス暖房運転中に、前記流路切替手段により前記バイパス流路を閉止して、前記外部熱交換部に冷媒を流す、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記外部熱交換部に設けられたグリルシャッタを閉じることで、前記外部熱交換部の熱交換を抑止する、請求項1又は請求項2記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の燃焼系の熱源を持たない電動車両(EV:Electric Vehicle)や燃焼系の熱源の熱量が少ない車両用の空調装置として、ヒートポンプ(冷媒回路)を熱源とする空調装置が知られている。
【0003】
ヒートポンプを利用した空調装置は、暖房運転時には、外部熱交換器を吸熱器として機能させ、外気から暖房熱源を得ている。このため、外気温が極低温になると、外気からの吸熱が難しくなり、暖房能力が大きく低下することになる。これに対して、例えばPTCヒータ等の電気式加熱器を用いて熱源を確保すると、バッテリの消費量が大きくなって、電動車両等の場合には航続可能距離への悪影響が懸念されると共に、PTCヒータの装備で空調装置の製造コストが嵩むことになる。
【0004】
冷媒回路の圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を利用するホットガス暖房は、吸熱を行わない暖房方式であり、極低温環境下で有効な暖房として期待されている。このホットガス暖房は、車両用空調装置の室内熱交換器を放熱器(室内コンデンサ)として機能させ、これに圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を直接流入させ、放熱器から出た冷媒は、減圧した後、外部熱交換器を経由させることなく、アキュムレータを介して圧縮機に戻す(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-196017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホットガス暖房を行うことができる車両用空調装置は、ホットガス暖房を行う冷媒流路と通常の吸熱暖房を行う冷媒流路を切り替えることで、外気等での吸熱ができない状況下ではホットガス暖房を行い、外気等で吸熱が可能な状況下では吸熱暖房を行う。
【0007】
ホットガス暖房運転時には、外部熱交換器に冷媒を流さない冷媒流路の切り替えが行われることになるが、ホットガス暖房運転中の冷媒流路は、高圧側の冷媒流路は勿論のこと減圧後の低圧側の冷媒流路においても、外部熱交換器の出口側冷媒流路より冷媒圧力が高くなるので、吸熱暖房時に外部熱交換器内を流れていた冷媒が流れ出る冷媒流路が存在しなくなる状況が生じ得る。
【0008】
ホットガス暖房運転中に外部熱交換器に流れていた冷媒がそこに滞留してしまうと、ホットガス暖房運転で使用する冷媒の量が減少してしまう現象が生じる。このような現象が生じると、ホットガス暖房運転中に圧縮機に吸入される冷媒流量を高めることができなくなり、冷媒圧力を必要な値に上げることができなくなるので、十分な暖房能力を得ることができなくなる問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、吸熱暖房運転とホットガス暖房運転を切り替える冷媒回路を備えた車両用空調装置において、冷媒が外部熱交換器に滞留するのを抑止し、十分に暖房能力を確保すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
圧縮機、室内熱交換部、及び、外部熱交換部を含む冷媒回路と、前記室内熱交換部を内部に配置した空調ユニットと、前記冷媒回路及び前記空調ユニットを制御する制御装置と、を備えた車両用空調装置において、前記冷媒回路は、前記圧縮機で圧縮した冷媒の少なくとも一部を、前記室内熱交換部及び前記外部熱交換部を経由することなく減圧して前記圧縮機に戻すホットガスバイパスを有し、前記制御装置は、前記外部熱交換部において冷媒に吸熱させず、前記圧縮機で圧縮した冷媒の一部を前記室内熱交換部で放熱させて車室内を暖房するホットガス暖房運転と、前記外部熱交換部にて冷媒に吸熱させる吸熱暖房運転とを実行可能であり、前記ホットガス暖房運転中に、前記外部熱交換部での熱交換を抑止した状態で、前記外部熱交換部に冷媒を通過させる、車両用空調装置。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明は、前述した特徴を有することで、吸熱暖房運転とホットガス暖房運転を切り替える冷媒回路を備えた車両用空調装置において、冷媒が外部熱交換器に滞留するのを抑止し、十分に暖房能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置のシステム構成例を示した説明図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の制御装置を示した説明図。
図3】本発明の実施形態に係る車両用空調装置のホットガス暖房運転における冷媒回路の動作を示した説明図。
図4】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の吸熱暖房運転における冷媒回路の動作を示した説明図。
図5】ホットガス暖房運転における冷媒滞留抑止運転の冷媒回路の動作を示した説明図。
図6】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の基本動作フローを示した説明図。
図7】冷媒滞留抑止運転を行う場合の動作フローを示した説明図。
図8】車両用空調装置を備える電動車両(EV)における制御装置の構成例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。なお、図中の冷媒回路10における太線は、冷媒が流れている冷媒流路を示し、太線のうち黒の太線は高圧冷媒の流れ、グレーの太線は減圧後の低圧冷媒の流れを示している。また、冷媒回路10における破線は、冷媒が流れていない冷媒流路を示している。
【0014】
[システム構成]
図1に、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の構成例を示す。ここに示す構成例は一例であり、具体的な構成に特に限定されるものでは無い。
【0015】
車両用空調装置1は、冷媒回路10と空調ユニット20を備えている。冷媒回路10は、圧縮機2と、空調ユニット20の内部に設けられる室内熱交換器21,22と、車室外に設けられる外部熱交換器11を含み、これらが冷媒流路に沿って配備されている。室内熱交換器21,22は、空調ユニット20内を流れる空気と冷媒が熱交換するために設けられ、外部熱交換器11は、車室外にて外気と冷媒が熱交換するために設けられる。
【0016】
冷媒回路10の圧縮機2は、冷媒を圧縮して循環させる。圧縮機2にて圧縮された冷媒は、適宜選択される冷媒流路において、例えば膨張弁である、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4を経由することで必要な圧力に減圧される。冷媒回路10には、冷媒流路を切り替えるための流路切替弁12,13が設けられ、また、冷媒の流通方向を規制するための逆止弁14,15が必要に応じて設けられている。そして、冷媒回路10における圧縮機2の直ぐ上流側には、液状冷媒を回収して冷媒を気液分離するアキュムレータ16が設けられている。
【0017】
空調ユニット20は、前述したように、室内熱交換器21,22を内部に備えており、送風機23によって室内又は室外から導入された空気が、室内熱交換器21,22を選択的に通過して室内に吹き出される。空調ユニット20には、エアダンパ24が設けられている。図示のようなエアダンパ24の全開時には、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器21,22の両方を通過して室内に吹き出され、エアダンパ24の全閉時には、送風機23によって導入された空気は、室内熱交換器22のみを通過して室内に吹き出される。空調ユニット20に設けられるもう一つのエアダンパ25は、送風機23に導入する空気を室内外で切り替えるものであり、室外に繋がる空気導入口25Aと室内に繋がる空気導入口25Bを選択的に閉止する。
【0018】
なお、前述した外部熱交換器11及び室内熱交換器21,22では、冷媒と空気とが直接熱交換する例について説明したが、冷媒と熱交換した熱媒体を介して冷媒と空気とが間接的に熱交換してもよい。すなわち、熱媒体を介して空気の熱を冷媒に吸熱させたり、熱媒体を介して冷媒の熱を空気に放熱したりする構成としてもよい。
【0019】
また、車両用空調装置1は、必要に応じて、熱媒体回路30を備える。熱媒体回路30は、循環ポンプ31にて熱媒体を循環させ、ヒータ(ECH:Electric Coolant Heater)32にて熱媒体を加熱したり、温調対象熱交換器33にてバッテリ等の温調対象物の廃熱回収等を行ったりする。また、冷媒回路10と熱媒体回路30には、冷媒が流れる流路34Aと熱媒体が流れる流路34Bにて冷媒と熱媒体との熱交換を行う冷媒熱媒体熱交換器34が設けられている。
【0020】
[制御装置]
車両用空調装置1は、図2に示す制御装置100を備える。制御装置100は、各種の入力信号(空調指示信号や充電機接続信号など)とセンサ部40からの検出信号に基づいて、前述した、冷媒回路10と空調ユニット20、必要に応じて、熱媒体回路30を制御する。
【0021】
制御装置100に検出信号を入力するセンサ部40は、例えば、外気温度や外気湿度等の外気状態を検出する外気センサ41、圧縮機2の消費電力(消費エネルギー)を検出するため圧縮機電流センサ42、冷媒の状態を検出する冷媒温度センサ43と冷媒圧力センサ44、車室内の乗員の有無を検出する乗員センサ45、空調ユニット20の送風温度を検出する送風温度センサ46などを備えている。これらのセンサは、一例である。センサ部40は、制御装置100が各種制御を行う際に必要な情報を検出する各種のセンサが備えられている。
【0022】
制御装置100の制御対象は、冷媒回路10においては、圧縮機2、第1減圧部V1、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4、グリルシャッタ17などであり、空調ユニット20においては、送風機23、エアダンパ24,25などであり、熱媒体回路30においては、循環ポンプ31などである。また、制御装置100は、制御装置100の処理結果に従って、車両用空調装置1又は車両が備える報知装置(例えば、インジケータやモニタ等の表示装置やオーディオ機器などの音声発生装置)3を制御する。
【0023】
[ホットガス暖房運転]
ホットガス暖房運転は、外部熱交換器11において冷媒に吸熱させず、圧縮機2で圧縮した冷媒の一部又は全部を室内熱交換器21で放熱させて車室内を暖房する。
【0024】
図3にて、ホットガス暖房運転(準備運転を含む)における冷媒回路10の動作を説明する。この動作では、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒の一部は、室内熱交換器21と流路切替弁12を通り、第3減圧部V3にて減圧されて低圧冷媒になり、冷媒熱媒体熱交換器34を通り、アキュムレータ16にて気液分離がなされて、圧縮機2に戻る。この際、冷媒回路10では、第1減圧部V1を全閉にすることで、外部熱交換器11には冷媒を流さない。また、第4減圧部V4を全閉にして、室内熱交換器22には冷媒を流さない。
【0025】
冷媒回路10は、圧縮機2で圧縮した冷媒の少なくとも一部を、室内熱交換器21及び外部熱交換器11を経由することなく減圧して圧縮機2に戻すホットガスバイパス10Vを有する。ホットガスバイパス10Vでは、圧縮機2の直ぐ下流の分岐点P1で高温高圧の冷媒の一部を分岐し、第2減圧部V2(ホットガス弁)で減圧して、アキュムレータ16の直ぐ上流側の合流点P2で、第3減圧部V3で減圧された低圧冷媒に合流させる。
【0026】
このようなホットガスバイパス10Vを設けることで、室内熱交換器21での放熱で凝縮した液冷媒に、ホットガスバイパス10Vを経由したガス冷媒を混合させて、ガスリッチの冷媒にしてから圧縮機2に戻すことができるようになる。また、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を増やすことで、室内熱交換器21での放熱量を抑制することができ、第2減圧部V2(ホットガス弁)の開閉で、ホットガスバイパス10Vを流れる冷媒流量を調整することで、冷媒回路10の放熱量と圧縮機2への入熱量のバランスを維持させることができる。
【0027】
ホットガス暖房運転時の冷媒の流れは、室内熱交換器21を経由する流路では、第3減圧部V3で減圧されるので、それより上流側は高圧冷媒になり、それより下流側は低圧冷媒になる。この際、低圧側流路における冷媒熱媒体熱交換器34では熱交換がなされないことが、暖房能力を維持する上で重要になる。そして、空調ユニット20においては、送風機23にて導入された空気が、室内熱交換器21での放熱で加熱されて、車室内に吹き出される。
【0028】
[準備運転]
ホットガス暖房運転の始動時に行われる準備運転は、冷媒が所定の状態になるまで、室内熱交換器21における放熱をさせず又は抑制させて、冷媒回路10にて冷媒を循環させる。一つの方法では、空調ユニット20の送風機23を停止又は抑制した状態で、前述したホットガス暖房運転での冷媒回路10の動作を実行する。また、別の方法では、空調ユニット20の送風機23を動作させた状態で、エアダンパ24を全閉にして、室内熱交換器21に風が流れないようにして、前述したホットガス暖房運転での冷媒回路10の動作を実行する。
【0029】
前者の方法では、空調ユニット20からの風が止まる又は抑制されるので、乗員に対しては、後述するように、準備運転実行中の報知を行う必要がある。これに対して、後者の方法では、一先ず、空調ユニット20から室内熱交換器21を通過しない風が流れるので、この風の風量を乗員が調整できるようにすることで、乗員に対する違和感が解消される。
【0030】
[吸熱暖房運転]
図4にて、吸熱暖房運転における冷媒回路10の動作を説明する。吸熱暖房運転時の冷媒回路10では、第2減圧部V2、第3減圧部V3、第4減圧部V4、流路切替弁12は、全て全閉になる。
【0031】
吸熱暖房運転では、圧縮機2から吐出された高温高圧冷媒は、空調ユニット20内の室内熱交換器21を通過し、第1減圧部V1にて減圧され、低圧冷媒が外部熱交換器11を通過し、流路切替弁13、逆止弁14、アキュムレータ16を経由して、圧縮機2に戻される。この際、圧縮機2から出た高圧冷媒は、室内熱交換器21にて凝縮・放熱し、第1減圧部V1で減圧され低圧冷媒になり、外部熱交換器11にて吸熱・蒸発して、圧縮機2に戻る。そして、空調ユニット20においては、送風機23にて導入された空気が、室内熱交換器21での放熱で加熱されて、車室内に吹き出される。
【0032】
[冷媒滞留抑止暖房運転]
図5は、外部熱交換器11での冷媒の滞留を抑止したホットガス暖房運転における冷媒回路10の動作を示している。この動作では、図3に示したホットガス暖房運転の冷媒回路10において、流路切替弁12を閉止し、第1減圧部V1を全開にすることで、室内熱交換器21を通過した高温高圧の冷媒を外部熱交換器11に流す。この際、外部熱交換器11は、放熱を抑止した状態になっている。図示の例では、外部熱交換器11の前に設置されたグリルシャッタ17を閉じて、外部熱交換器11に風が通らないようにすることで放熱を抑止している。
【0033】
これによると、外部熱交換器11は、実質的には単なる冷媒流路になるので、冷媒回路10の放熱箇所を室内熱交換器21に限定して、吸熱を行わない、ホットガス暖房運転を行うことができる。そして、このホットガス暖房運転中に外部熱交換器11に冷媒を流すので、その間に冷媒が外部熱交換器11に滞留することを抑止することができる。これにより、その後、外部熱交換器11から吸熱を行う吸熱暖房運転に移行する際に、円滑な移行が可能になる。
【0034】
[基本動作]
制御装置100による車両用空調装置1の基本動作を、図6にて説明する。車両用空調装置1を動作開始すると、空調指示信号の信号待ち状態になり(ステップS01)、ここで暖房指示が入力されると(ステップS01:YES)、次ステップS02に移行し、暖房指示以外の指示(例えば、冷房指示)が入力されると(ステップS01:NO)、指示に応じた他空調制御に移行する(ステップS01A)。
【0035】
次ステップS02では、ホットガス暖房運転を行うか否かの判断を行う。ホットガス暖房運転は、主には吸熱暖房を行うことができない状況で行われるので、例えば、外気センサ41によって極低温状況が検出された場合など、ホットガス暖房運転を行うべきと判断される場合は(ステップS02:YES)、次ステップS03に移行する。ステップS02にてホットガス暖房運転を行わないと判断した場合は(ステップS02:NO)、前述した吸気暖房運転を行う(ステップS11)。
【0036】
ステップS03では、冷媒回路10における冷媒の状態や始動前の暖房運転の状況等から、冷媒回路10における外部熱交換器11や冷媒熱媒体熱交換器34などに凝縮した冷媒が溜まっているか否かを判断し、冷媒が溜まっていて冷媒回収が必要であると判断される場合は(ステップS03:YES)、冷媒回収処理を行う(ステップS04)。また、ステップS03にて、冷媒回収が必要無いと判断した場合は(ステップS03:NO)、冷媒回収処理(ステップS04)はスキップする。なお、暖房終了後のステップS09,S10にて、冷媒回収処理を行っている場合には、ここでのステップS03,S04を省略することができる。
【0037】
ステップS05では、ホットガス暖房運転の始動時に行われる前述した準備運転が行われる。準備運転では、前述したホットガス暖房運転における冷媒回路10の動作を、冷媒回路10からの放熱がない又は抑制された状態で行い、循環する冷媒を高圧状態にして、冷媒にエネルギーを蓄積させる。この準備運転(ステップS05)においては、前述したように、空調ユニット20の送風機23は停止させる。
【0038】
そして、ステップS06にて、ホットガス暖房運転を行うのに適する冷媒状態になったと判断されるまで、準備運転(ステップS05)は継続されるが(ステップS06:NO)、その間、車室内の乗員に対しては、空調ユニット20からの風が吹き出されないことに対して、機器故障の不安感や不快感を持たれないように、ホットガス暖房運転の準備運転が実行されていることを報知する処理を行う(ステップS06A)。
【0039】
ここでの乗員に対する報知(乗員報知:ステップS06A)では、制御装置100から報知装置3への出力で行われ、前述した準備運転が実行中であることを、乗員に報知する。一例としては、インジケータやモニタなど、車両が備える表示装置に、点滅或いはモニタ表示などで表示させる。他の例としては、車両が備えるスピーカから音声又は所定の報知音を発するなどして、前述した準備運転が実行中であることを、乗員に報知する。これにより、現状の風が吹き出されない状況が機器の故障などでは無く、正常なホットガス暖房運転の準備運転であることを乗員に認識させることができる。
【0040】
冷媒圧力の検出結果や圧縮機2の消費電力の検出結果などで、準備運転において冷媒に十分なエネルギーが蓄積されたことが確認されると、準備運転完了の判断がなされ(ステップS06:YES)、送風を伴うホットガス暖房運転が実行される(ステップS07)。
【0041】
ホットガス暖房運転は、暖房終了指示が入力されるまで実行され(ステップS08:NO)、暖房終了指示が入力されると(ステップS08:YES)、ステップS03,S04と同様に、冷媒回収の必要性判断(ステップS09)と必要な場合の冷媒回収処理(ステップS10)を行い、空調動作を終了する。なお、次回空調動作時にステップS03,S04を実行する場合には、ステップS09,S10を省略することができる。
【0042】
ステップS11で吸熱暖房運転が行われた場合には、その後の暖房終了指示まで運転継続され(ステップS12:NO)、暖房終了指示が出されると(ステップS12:YES)、冷媒回収の必要性判断(ステップS09)と必要な場合の冷媒回収処理(ステップS10)を行い、空調動作を終了する。
【0043】
[冷媒滞留抑止暖房運転利用の動作例]
前述した冷媒滞留抑止暖房運転を利用する場合は、図6に示した基本動作にて、冷媒回収処理を省略して、図7に示した動作例を実行することができる。なお、図7においては、図6と同じステップは同一符号を付して重複説明を省略する。
【0044】
この動作例によると、ホットガス暖房運転(ステップS07)の動作中に、ステップS07Aにて、流路切替弁12を閉止し、第1減圧部V1を全開にして、更に、グリルシャッタ17を閉じた状態にすることで、冷媒滞留抑止暖房運転を実行する。この冷媒滞留抑止暖房運転は、外部熱交換器11が放熱を抑止した冷媒流路として利用されることで、ホットガス暖房運転を行っている。これによると、ホットガス暖房運転中に、外部熱交換器11に冷媒を流すころで、外部熱交換器11における冷媒の滞留を抑止しているので、その後に、外部熱交換器11にて外気吸熱を行う吸熱暖房運転に移行する際に、円滑な移行が可能になる。
【0045】
[電動車両(EV)における制御装置の構成]
車両用空調装置1が備える制御装置100は、図8に示すように、電動車両(EV)の制御を行う各種ECU(Electronic Control Unit)に車載ネットワークLを介して接続された一つのECUとして構成される。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、入出力I/F(Interface)104、車内通信I/F(Interface)105などを備え、各ハードウェアは、バス106を介して相互に接続されている。
【0046】
CPU101は、ROM102に記憶されている各種プログラムを実行することにより、制御装置100の制御を実行する。ROM102は、不揮発性メモリである。例えば、ROM102は、CPU101により実行されるプログラム、CPU101がプログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM103は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の主記憶装置である。例えば、RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際に利用する作業領域として機能する。入出力I/F104は、EVに設置される各種センサやモニタに接続され、CPU101にデータを入力すると共に、CPU101が演算処理したデータを出力する。車内通信I/F105は、車載ネットワークLに接続されることで、EVに設定された他のECUとのデータ送受信を制御する。
【0047】
制御装置100は、入出力I/F104や車内通信I/F105を介して、周辺の環境情報関するデータ或いはEVの運転状況に関するデータが入力されることで、CPU101が実行するプログラムによって、前述した車両用空調装置1の制御を実行する。
【0048】
EVには、バッテリBが搭載されている。バッテリBには、バッテリプラグBPに充電機のプラグPSを接続することで充電が行われ、バッテリBを介して車両用空調装置1への給電が行われる。バッテリプラグBPにプラグPSが接続されている状態は、充電機接続信号として、車載ネットワークLを介して制御装置100に送信される。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:車両用空調装置,2:圧縮機,3:報知装置(表示装置),
10:冷媒回路,10V:ホットガスバイパス,11:外部熱交換器,
12,13:流路切替弁,14,15:逆止弁,16:アキュムレータ,
17:グリルシャッタ,
20:空調ユニット,21,22:室内熱交換器,23:送風機,
30:熱媒体回路,31:循環ポンプ,32:ヒータ,
33:温調対象熱交換器,34:冷媒熱媒体熱交換器,
24,25:エアダンパ,25A,25B:空気導入口,
40:センサ部,41:外気センサ,42:圧縮機電流センサ,
43:冷媒温度センサ,44:冷媒圧力センサ,45:乗員センサ,
46:送風温度センサ,
100:制御装置,
V1:第1減圧部,V2:第2減圧部,V3:第4減圧部,V3:第4減圧部
図1
図2
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図5
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図7
図8