(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062487
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】静電容量センサを用いた検出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240501BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G06F3/041 534
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170334
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洸大
(57)【要約】
【課題】複数の静電容量センサを用いて別々の検出動作を行う際にこれらの間で及ぼす影響を低減するとともに、検出感度の低下を防止することができる静電容量センサを用いた検出装置を提供すること。
【解決手段】入力装置100は、指示体の接触位置あるいは接近位置を検出するタッチパネル110、スライダセンサ112、検出信号発生部120、122、信号測定部130、132、XY位置検出部140、X位置検出部150と、タッチパネル110とスライダセンサ112のいずれか一方で指示体の接触位置あるいは接近位置を検出したときに、他方による検出動作を制限する検出判定部142、検出動作制限部160とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示体の接触位置あるいは接近位置を検出する第1の静電容量センサと、
前記指示体の接触位置あるいは接近位置を検出する第2の静電容量センサと、
前記第1および第2の静電容量センサのいずれか一方で前記指示体の接触位置あるいは接近位置を検出したときに、前記第1および第2の静電容量センサのいずれか他方の検出動作を制限する検出動作制限手段と、
を備えることを特徴とする静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項2】
前記第1および第2の静電容量センサのそれぞれは、所定の検出信号を検出対象領域に対応する電極に入力することにより、この接触対象領域に対する前記指示体の接触あるいは接近を検出しており、
前記検出動作制限手段は、前記検出信号の入力を制限することにより、検出動作を制限することを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項3】
前記検出動作制限手段は、前記検出信号の入力を停止あるいは入力頻度を低減することにより、検出動作を制限することを特徴とする請求項2に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項4】
前記検出動作制限手段は、前記第1および第2の静電容量センサのいずれか一方で前記指示体の接触位置あるいは接近位置を検出したときであって、この検出した位置が、前記第1および第2の静電容量センサのいずれか他方に近い所定範囲にある場合にこの他方の検出動作を制限し、前記所定範囲よりも遠い場合にこの他方の検出動作の制限を行わないことを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項5】
前記検出信号は、所定周期で繰り返し入力される信号であり、
前記検出動作制限手段は、前記検出信号を繰り返し入力する周期を長くすることにより、検出動作を制限することを特徴とする請求項2に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項6】
前記検出信号は、所定周期で繰り返し入力される信号であり、
前記検出動作制限手段は、前記検出信号を入力する繰り返し回数を少なくすることにより、検出動作を制限することを特徴とする請求項2に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【請求項7】
前記第1および第2の静電容量センサのいずれか他方は、検出方式が異なる複数の検出動作を行うことにより、前記指示体の位置検出を行っており、
前記検出動作制限手段は、前記複数の検出動作の一部を停止することにより、検出動作を制限することを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサを用いた検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の静電容量センサを用いて指等の接触位置や接近位置を検出する静電容量センサを用いた検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の検出対象領域のそれぞれに対応して複数の静電容量センサを用いて利用者の指等の接触位置や接近位置を検出するようにした製品が知られている。
【0003】
図8は、車両に搭載されたヘッドユニットを示す図である。
図8に示すヘッドユニット200には、前面に設けられた表示画面に重なるようにその前面に対応して設けられた静電容量方式のタッチパネル210と、その下部に設けられた静電容量式のスライダセンサ220が備わっている。タッチパネル210は、利用者が表示画面上の特定箇所を指等で指し示したり指等を近づけたときにその接触位置や接近位置を検出するために用いられる。また、スライダセンサ220は、表示画面の下部に設けられた操作面に描かれた各種ボタン等に対する接触位置を検出するために用いられる。
【0004】
このような2種類の静電容量センサ(タッチパネル210とスライダセンサ220)を同時に動作させると、一方のセンサの検出動作に用いられるスキャン信号が他方のセンサの検出動作に影響を及ぼす場合があり、一方のセンサの検出精度が悪化するという課題があった。
【0005】
一方、従来から複数の部分領域を有する作動部を備え、これら複数の部分領域のそれぞれに対応する入力情報検出回路で検出されるセンサ信号が、他の入力情報検出回路から出力されるドライブ信号の影響を受けないように各入力情報検出回路を制御するようにした検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、
図8に示した構成に特許文献1に開示された検出装置の手法を組み合わせることが考えられる。具体的には、上述した特許文献1に開示された検出装置の複数の部分領域に、
図8に示したタッチパネル210とスライダセンサ220を対応させることにより、一方のセンサの検出動作に用いられるスキャン信号が他方のセンサの検出動作に影響を及ぼすことを回避することができる。
【0008】
しかし、このような組み合わせでは、タッチパネル210の検出動作とスライダセンサ220の検出動作とを時分割で行うことになるため、タッチパネル210とスライダセンサ220を組み合わせた全体の検出感度が低下するという問題が新たに生じる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、複数の静電容量センサを用いて別々の検出動作を行う際にこれらの間で及ぼす影響を低減するとともに、検出感度の低下を防止することができる静電容量センサを用いた検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の静電容量センサを用いた検出装置は、指示体の接触位置あるいは接近位置を検出する第1の静電容量センサと、指示体の接触位置あるいは接近位置を検出する第2の静電容量センサと、第1および第2の静電容量センサのいずれか一方で指示体の接触位置あるいは接近位置を検出したときに、第1および第2の静電容量センサのいずれか他方の検出動作を制限する検出動作制限手段とを備えている。
【0011】
第1および第2の静電容量センサのいずれか一方に指示体が接近してこの指示体の検出動作を開始したときに、他方の検出動作を制限しているため、他方の静電容量センサから一方の静電容量センサに及ぼす影響を低減することができ、一方の静電容量センサの検出感度を高めることが可能となる。
【0012】
また、上述した第1および第2の静電容量センサのそれぞれは、所定の検出信号を検出対象領域に対応する電極に入力することにより、この接触対象領域に対する指示体の接触あるいは接近を検出しており、検出動作制限手段は、検出信号の入力を制限することにより、検出動作を制限することが望ましい。第1および第2の静電容量センサのいずれか一方における検出動作では、他方における検出動作において入力される検出信号がその入力タイミングに合わせてノイズとなるため、このノイズの原因となる検出信号の入力自体を制限することにより、他方の静電容量センサから一方の静電容量センサに及ぼす影響を確実に低減することができる。
【0013】
また、上述した検出動作制限手段は、検出信号の入力を停止あるいは入力頻度を低減することにより、検出動作を制限することが望ましい。これにより、検出信号のパワーを確実に減らしてノイズの発生を抑えることが可能となる。
【0014】
また、上述した検出動作制限手段は、第1および第2の静電容量センサのいずれか一方で指示体の接触位置あるいは接近位置を検出したときであって、この検出した位置が、第1および第2の静電容量センサのいずれか他方に近い所定範囲にある場合にこの他方の検出動作を制限し、所定範囲よりも遠い場合にこの他方の検出動作の制限を行わないことが望ましい。第1の静電容量センサと第2の静電容量センサとが互いに接近している場合(検出位置が所定範囲に含まれる場合)に、他方の静電容量センサから一方の静電容量センサに及ぼす影響が大きくなるため、この所定範囲よりも遠い範囲については検出動作の制限を行わなくても高い検出感度を維持することが可能となる。
【0015】
また、上述した検出信号は、所定周期で繰り返し入力される信号であり、検出動作制限手段は、検出信号を繰り返し入力する周期を長くすることにより、検出動作を制限することが望ましい。あるいは、上述した検出信号は、所定周期で繰り返し入力される信号であり、検出動作制限手段は、検出信号を入力する繰り返し回数を少なくすることにより、検出動作を制限することが望ましい。このようにして検出信号のパワーを確実に減らすことにより、ノイズの発生を確実に抑えることが可能となる。
【0016】
また、上述した第1および第2の静電容量センサのいずれか他方は、検出方式が異なる複数の検出動作を行うことにより、指示体の位置検出を行っており、検出動作制限手段は、複数の検出動作の一部を停止することにより、検出動作を制限することが望ましい。一方の静電容量センサが複数の検出方式に対応している場合に、一部の検出方式の検出動作を制限して他の静電容量センサに及ぼす影響を低減するとともに、残りの検出方式の検出動作については制限なく実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の入力装置の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の入力装置の動作手順を示す流れ図である。
【
図3】変形例1の検出動作の制限範囲を示す説明図である。
【
図4】変形例1の入力装置の動作手順を示す流れ図である。
【
図5】変形例2のスライダセンサに入力する検出信号を示す図である。
【
図6】変形例3のタッチパネルの部分的な構成を示す図である。
【
図7】
図6に示した電極を有するタッチパネルに入力される検出信号の一例を示す図である。
【
図8】車両に搭載されたヘッドユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の「静電容量センサを用いた検出装置」を適用した一実施形態の入力装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、一実施形態の入力装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の入力装置100は、タッチパネル110、スライダセンサ112、検出信号発生部120、122、信号測定部130、132、XY位置検出部140、検出判定部142、X位置検出部150、検出動作制限部160を備えている。
【0020】
タッチパネル110は、LCD(液晶表示装置)などで構成された表示部200の表示面に重ねて配置されており、指示体のXY位置(水平方向および垂直方向の位置)を静電容量方式で検出するために用いられる整列して配置された複数本の透明電極を有する。指示体としては、例えば利用者の指先を想定している。
【0021】
スライダセンサ112は、入力装置100の筐体の表面であって、タッチパネル110の下部に配置されており、複数の検出電極のいずれかに接触した指示体の位置(水平方向の位置)を静電容量方式で検出する。例えば、このスライダセンサ112の表面には、操作対象となる各種のボタンが印刷によって描かれており、これらのボタンが利用者の指等で指し示される。なお、スライダセンサ112を透明電極等の透明部材で構成する場合には、これらのボタンを入力装置100の筐体の表面に描くようにしてもよい。
【0022】
検出信号発生部120は、タッチパネル110を用いた位置検出動作に必要な検出信号を発生する。この検出信号は、位置検出の際にタッチパネル110の各透明電極に入力されるスキャン信号であり、検知方式に応じた内容の信号が、検知に必要な透明電極に入力される。例えば、Mutual cap方式を用いて指示体の接触位置を検出するためには、水平方向に延在する複数の透明電極に入力されるスキャン信号が用いられる。また、Self cap方式を用いてホバー操作時の指示体の接近位置を検出するためには、水平方向に延在する複数の透明電極と、垂直方向に延在する複数の透明電極のそれぞれに入力されるスキャン信号が用いられる。
【0023】
検出信号発生部122は、スライダセンサ112を用いた位置検出動作に必要な検出信号を発生する。この検出信号は、位置検出の際にスライダセンサ112の各検出電極に入力されるスキャン信号である。
【0024】
なお、上述したスキャン信号は、タッチパネル110やスライダセンサ112に含まれる各電極の静電容量の変化を検出するためのものであり、パルス状あるいは正弦波形状の波形を有するスキャン信号をこれらの電極に入力することにより、指示体の接近の有無に応じたこれらの電極の静電容量の変化を検出することが可能となる。また、検知方式に応じてスキャン信号の内容が変わってくるが、本発明では、電圧変動を伴うスキャン信号を用いることによって検出動作への影響に着目しているため、検知方法自体はどのようなものを採用してもよい。
【0025】
信号測定部130は、検出信号発生部120からタッチパネル110に対して検出信号が入力されたときに、検出対象となる透明電極等から出力される電流あるいは透明電極等に現れる電圧を測定する。
【0026】
信号測定部132は、検出信号発生部122からスライダセンサ112に対して検出信号が入力されたときに、検出対象となる電極等から出力される電流あるいは透明電極等に現れる電圧を測定する。
【0027】
XY位置検出部140は、信号測定部130によって測定された信号の電流値(あるいは電圧値)変化に基づいて、静電容量値の変化が最も大きい位置を、タッチパネル110上における指示体のX位置およびY位置として検出する。
【0028】
検出判定部142は、XY位置検出部140による位置検出の有無(指示体の接触あるいは接近の有無)を判定する。
【0029】
X位置検出部150は、信号測定部132によって測定された信号の電流値(あるいは電圧値)変化に基づいて、静電容量値の変化が最も大きい位置を、スライダセンサ112上における指示体のX位置として検出する。
【0030】
検出動作制限部160は、検出判定部142によって位置検出ありの判定がなされたとき(指示体がタッチパネル110に接触あるいは接近したとき)に、検出信号発生部122に指示を送って、検出信号の発生およびスライダセンサ112に対する入力を中断することにより、スライダセンサ112の検出動作を制限(停止)する。
【0031】
上述したタッチパネル110、スライダセンサ112、検出信号発生部120、122、信号測定部130、132、XY位置検出部140が第1および第2の静電容量センサに、検出判定部142、検出動作制限部160が検出動作制限手段にそれぞれ対応する。
【0032】
本実施形態の入力装置100は、タッチパネル110による位置検出動作中は、スライダセンサ112による位置検出動作を中断し、この位置検出動作に必要な検出信号(スキャン信号)をスライダセンサ112に入力しないようにしており、次に、その動作を説明する。
【0033】
図2は、本実施形態の入力装置100の動作手順を示す流れ図である。なお、この流れ図は、タッチパネル110を用いた位置検出動作時にスライダセンサ112を用いた位置検出動作を一時的に中断する手順に着目したものであって、タッチパネル110やスライダセンサ112を用いて検出した位置に対応する各種の処理内容は省略されている。
【0034】
入力装置100の電源が投入されると、タッチパネル110を用いた位置検出動作(ステップ100)とスライダセンサ112を用いた位置検出動作(ステップ102)を開始する。このような2種類の検出動作と並行して、検出判定部142は、タッチパネル110による位置検出が行われたか否かを判定する(ステップ104)。なお、タッチパネル110による位置検出は、タッチパネル110が重ねられた表示部200に表示されて位置検出が必要な一部の画像領域のみを対象にしてもよいし、このような画像領域に限定されるタッチパネル110の全範囲を対象にしてもよい。位置検出が行われない場合(利用者の指等がタッチパネル110に接触あるいは接近していない場合)には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。
【0035】
また、位置検出が行われた場合にはステップ104の判定において肯定判断が行われる。次に、検出動作制限部160は、検出信号発生部122に停止指示を送って、検出信号発生部122からスライダセンサ112に対する検出信号の入力を停止させる。これにより、スライダセンサ112による検出動作が停止する(ステップ106)。
【0036】
次に、検出判定部142は、タッチパネル110による位置検出が終了したか否かを判定する(ステップ108)。この判定時間を行う時間は、タッチパネル110による検出対象となる利用者の操作が、1つの操作対象領域に対して行う場合の他に、複数の走査対象領域に対して順番に行う場合(例えば、キーボードの各文字を入力する場合や、階層化されたメニュー画面を順に辿っていく場合など)があることを考慮して、ある程度長い所定時間(例えば数秒間)が判定時間として設定されている。所定時間が経過するまでは否定判断が行われ、ステップ104に戻って位置検出判定が繰り返される。
【0037】
また、最後の操作(位置検出)から所定時間が経過すると、ステップ108の判定において肯定判断が行われる。次に、検出動作制限部160は、検出信号発生部122に再開指示を送って、検出信号発生部122からスライダセンサ112に対する検出信号の入力を再開させる。これにより、スライダセンサ112による検出動作が再開される(ステップ110)。その後、ステップ104に戻って位置検出判定が繰り返される。
【0038】
このように、本実施形態の入力装置100では、タッチパネル110に指示体(利用者の指)が接近してこの指示体の検出動作を開始したときに、スライダセンサ112の検出動作を制限(停止)しているため、スライダセンサ112からタッチパネル110に及ぼす影響を低減することができ、タッチパネル110を用いた位置検出の感度を高めることが可能となる。
【0039】
このスライダセンサ112は、所定の検出信号(スキャン信号)を検出対象領域に対応する電極に入力することにより、この接触対象領域に対する指示体の接触等を検出しており、検出動作制限部160は、この検出信号の入力を制限することにより、検出動作を制限している。このようにしてスライダセンサ112に入力される検出信号は、その入力タイミングに合わせてタッチパネル110における検出動作においてノイズとなるため、このノイズの原因となる検出信号の入力自体を制限することにより、タッチパネル110を用いた検出動作に及ぼす影響を確実に低減することができる。
【0040】
特に、検出動作制限部160は、検出信号の入力を停止あるいは入力頻度を低減することにより、検出動作を制限しており、これにより、検出信号のパワーを確実に減らしてノイズの発生を抑えることが可能となる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。
【0042】
(変形例1)
上述した実施形態では、タッチパネル110の全範囲を対象に指示体の接触等を検出したときにスライダセンサ112の検出動作を制限したが、スライダセンサ112に入力する検出信号が、タッチパネル110の検出動作に与える影響は、スライダセンサ112に近いほど大きく、遠くなるほど小さくなるため、影響が大きい範囲を指示体が接触等した場合に限ってスライダセンサ112の検出動作を制限するようにしてもよい。
【0043】
図3は、変形例1の検出動作の制限範囲を示す説明図である。
図3に示すように、タッチパネル110の検出領域は、スライダセンサ112に近い特定領域110aと、特定領域110aに隣接してスライダセンサ112から遠いその他領域110bとに分けることができる。そして、利用者の指等の指示体が特定領域110aに接触(あるいは接近)した場合に限って、タッチパネル110による検出動作を制限する。
【0044】
図4は、変形例1の入力装置100の動作手順を示す流れ図である。
図4に示す動作手順は、
図2に示した動作手順に対して、ステップ104をステップ104Aに、ステップ108をステップ108Aにそれぞれ置き換えた点が異なっている。
【0045】
ステップ104Aでは、検出判定部142は、タッチパネル110の特定領域110aにおける位置検出が行われたか否かを判定する。特定領域110aにおいて位置検出が行われた場合にはステップ104Aの判定において肯定判断が行われ、ステップ106の動作に移行する。
【0046】
また、ステップ108Aでは、検出判定部142は、タッチパネル110の特定領域110aにおける位置検出が終了したか否かを判定する。特定領域110aにおける検出動作が終了してから所定時間が経過するまでは否定判断が行われる。
【0047】
このように、タッチパネル110とスライダセンサ112とが互いに接近している場合(検出位置が所定範囲(特定領域110a)に含まれる場合)に、スライダセンサ112からタッチパネル110の検出動作に及ぼす影響が大きくなるため、この特徴領域110aよりも遠いその他領域110bについてはスライダセンサ112の検出動作の制限を行わなくても高い検出感度を維持することが可能となる。
【0048】
(変形例2)
上述した実施形態では、スライダセンサ112の検出動作を制限する場合の具体例として、スライダセンサ112に対する検出信号(スキャン信号)の入力を停止するようにしたが、この入力する検出信号の信号強度(パワー)を低減するようにしてもよい。
【0049】
図5は、変形例2のスライダセンサ112に入力する検出信号を示す図である。
図5(A)には、検出動作を制限しない場合の検出信号の一例であって、スライダセンサ112の検出動作を制限しない場合にスライダセンサ112に入力される検出信号が示されている。具体的には、制限なし時の検出信号は、1.06msの間に15kHz周期のパルスが16個出力され、その後、5msの時間をあけた後、同様の動作が繰り返される。このようなパルスの入力に応じてスライダセンサ112の各部の静電容量変化が監視される。
【0050】
図5(B)には、出力するパルス数を減少させるようにした検出信号が示されている。具体的には、この検出動作制限時の検出信号は、0.533msの間に15kHz周期のパルスが8個出力され、その後、5msの時間をあけた後、同様の動作が繰り返される。このように間欠的に入力されるパルスの数(繰り返し回数)を減らすことにより、検出信号のパワーを確実に減らし、タッチパネル110におけるノイズの発生を確実に抑えることが可能となる。
【0051】
図5(C)には、出力するパルスの周期(繰り返し出力する間隔)を長くした検出信号が示されている。具体的には、この検出動作制限時の検出信号は、1.06msの間に15kHz周期のパルスが16個出力され、その後、11.05msの時間をあけた後、同様の動作が繰り返される。このように間欠的に入力されるパルス群の間隔を長くすることにより、検出信号のパワーを確実に減らし、タッチパネル110におけるノイズの発生を確実に抑えることが可能となる。
【0052】
(変形例3)
上述した実施形態では、タッチパネル110を用いた検出動作時にスライダセンサ112を用いた検出動作を制限するようにしたが、反対に、スライダセンサ112を用いた検出動作時にタッチパネル110を用いた検出動作を制限するようにしてもよい。この場合には、タッチパネル110を用いた検出動作の制限は、上述したように検出動作全体を停止させる場合や検出信号のパルス数を減らしたり繰り返し出力するパルス群の間隔を長くする場合などが考えられるが、タッチパネル110を用いてMutual cap方式の位置検出とSelf cap方式の位置検出を並行して行うような場合(検出方式が異なる複数の検出動作を行う場合)には、いずれか一方の検出動作を停止することによって検知動作全体の制限を行うようにしてもよい。
【0053】
図6は、変形例3のタッチパネル110の部分的な構成を示す図であり、位置検出に用いられる電極が示されている。タッチパネル110では、複数の透明電極110xと複数の透明電極110yとが同一面内で互いに直交するとともに、これらの透明電極110x、110yに対向するグランド層110gが設けられている。
【0054】
図7は、
図6に示した電極を有するタッチパネル110に入力される検出信号の一例を示す図である。
図7に示す検出信号には、Self cap方式の検出動作を行うために用いられる複数のパルスからなる第1のパルス群P1と、Mutual cap方式の検出動作を行うために用いられる複数のパルスからなる第2のパルス群P2とが1サイクル内に含まれており、検出動作が制限されない場合にはこのサイクルが繰り返される。
【0055】
上述した第1のパルス群P1は、例えば、
図6に示す透明電極110x、110yのそれぞれの一方端に入力され、それぞれの他方端に現れる電圧(あるいは電流)を検出することにより、Self cap方式の検出動作が行われる。タッチパネル110に指示体が接近すると、指示体に近い透明電極110x、110yとグランド層100gとの間の静電容量が変化して、検出される電圧等が変化するため、この変化の様子を観察することにより、ホバー操作を行う非接触の指示体の位置を検出することができる。
【0056】
また、上述した第2のパルス群P2は、例えば、
図6に示す複数の透明電極110yのそれぞれに順番に入力され、この入力タイミングに合わせて複数の透明電極110xのそれぞれに現れる電圧(あるいは電流)を検出することにより、Mutual cap方式の検出動作が行われる。指示体が接触する位置で交差する透明電極110x、110y間の静電容量が変化して、検出される電圧等が変化するため、この変化の様子を観察することにより、タッチパネル110上で指示体が接触する位置を検出することができる。
【0057】
一般には、第1のパルス群P1が入力される時間よりも第2のパルス群P2が入力される時間の方が長いため、スライダセンサ112による位置検出がされた旨の判定が行われたときに、第2のパルス群P2の入力を停止してタッチパネル110を用いた検出動作を制限することにより、タッチパネル110に入力される検出信号によるスライダセンサ112に与える影響を低減することができる。また、この場合でも、第1のパルス群P1の入力を継続しているため、ホバー操作時の指示体の検出動作を維持することが可能となる。
【0058】
なお、反対に第2のパルス群P2の入力を継続し、第1のパルス群P1の入力を停止するようにして、タッチパネル110の検出動作を制限するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、タッチパネル110とスライダセンサ112を組み合わせた場合を説明したが、組み合わせる静電容量センサの種類はこの組み合わせに限定されない。静電容量センサであれば、検出信号(スキャン信号)を入力して静電容量の変化を監視することで指示体の接触、接近位置を検出するため、任意の組み合わせについて本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
上述したように、本発明によれば、第1および第2の静電容量センサのいずれか一方に指示体が接近してこの指示体の検出動作を開始したときに、他方の検出動作を制限しているため、他方の静電容量センサから一方の静電容量センサに及ぼす影響を低減することができ、一方の静電容量センサの検出感度を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
100 入力装置
110 タッチパネル
112 スライダセンサ
120、122 検出信号発生部
130、132 信号測定部
140 XY位置検出部
142 検出判定部
150 X位置検出部
160 検出動作制限部
200 表示部