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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006249
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アクチュエータ及び関節運動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20240110BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F15B15/10 Z
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106962
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】下岡 綜
(72)【発明者】
【氏名】五福 明夫
【テーマコード(参考)】
3H081
4C046
【Fターム(参考)】
3H081AA14
3H081HH10
4C046AA09
4C046AA10
4C046AA35
4C046AA46
4C046BB09
4C046CC12
4C046DD03
4C046DD39
(57)【要約】
【課題】様々な用途に適用可能なアクチュエータ、及び患者に対する他動運動の負担を軽減することが可能な関節運動装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータ1は、固定部材10及び固定部材10に対して動作可能な可動部材11を備える。アクチュエータ1は、固定部材10に一端側が取り付けられ、可動部材11に他端側が取り付けられた可撓性を有する管状部材12を備え、管状部材12は、つづら折りに折り畳まれており、折り畳まれた一側の折り端の束は、第1拘束具17で拘束されており、他側の折り端の束は、第2拘束具18で拘束されており、第1拘束具17の方が、第2拘束具18より、伸縮性があり、内部への流体の供給及び排出が可能である。関節運動装置JEは、アクチュエータ1を用いて構成され、人体を保持する保持具(第1保持具21、第2保持具22)を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材及び前記固定部材に対して動作可能な可動部材を備えるアクチュエータであって、
前記固定部材に一端側が取り付けられ、前記可動部材に他端側が取り付けられた可撓性を有する管状部材を備え、
前記管状部材は、
つづら折りに折り畳まれており、
折り畳まれた一側の折り端の束は、第1拘束具で拘束されており、
他側の折り端の束は、第2拘束具で拘束されており、
前記第1拘束具の方が、前記第2拘束具より、伸縮性があり、
内部への流体の供給及び排出が可能である
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータであって、
前記管状部材は、
内部へ流体を供給することにより、膨らむことで、前記第2拘束具が伸張して、前記他側の折り端の束が広がり、
内部から流体を排出することにより、扁平状になる
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータであって、
前記第1拘束具は、伸縮性を有する紐状体であり、
前記第2拘束具は、紐状体である
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータであって、
前記管状部材は、
流体を供給する供給口が複数形成されている
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のアクチュエータを備え、
前記アクチュエータが備える前記可動部材は、
人体を保持する保持具が取り付けられている
ことを特徴とする関節運動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の関節運動装置であって、
前記保持具は、下肢を保持可能である
ことを特徴とする関節運動装置。
【請求項7】
請求項5に記載の関節運動装置であって、
前記アクチュエータを複数備える
ことを特徴とする関節運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材及び固定部材に対して動作可能な可動部材を備えるアクチュエータ、及びそのようなアクチュエータを備える関節運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経障害、事故等の原因により足首の関節に障害が生じた患者に対し、理学療法士等の専門家がリハビリテーション等の施術を行っている。足首の施術として、専門家は、足先と踵とを固定し、足首の姿勢を変化させることにより、足首に他動運動を与え、足首の拘縮を予防している。ただし、専門家による施術は、人為的な負担、時間による制約等の問題があるため、機械によるリハビリテーションが実施されることもある。
【0003】
例えば、特許文献1には、下腿ホルダを備える基部と、足ホルダを備える揺動部と、基部に対して揺動部を回動可能に軸支する回動軸と、基部に一端が連結され他端が揺動部に連結される屈曲及び伸縮自在なベローズとを備える足関節運動支援装置が記載されている。特許文献1に記載された足関節運動支援装置は、ベローズへの動作流体の供給及びベローズからの動作流体の排出を行うことで、足関節の背屈・底屈運動を支援する。
【0004】
また、特許文献1に開示の足関節運動支援装置以外にも、回転運動を往復運動に変換する機構を電動駆動することにより、他動運動を行うための装置が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-019846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の足関節運動支援装置は、椅子等に座って使用することを前提とした装置であり、例えば、寝たきり状態の患者に使用する場合、離床した後、端座位又は椅座位になる必要があるため、介助者への負担が大きくなるという問題がある。
【0007】
また、電動駆動により回転運動を往復運動に変換する機構を用いた装置では、強制力が強過ぎて、患者に必要以上の負担をかける場合があるという問題がある。
【0008】
本願は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、関節運動装置に適用した場合、姿勢を問わず、また患者に対する負担を軽減することが可能なアクチュエータの開示を主たる目的とする。尤も、本願開示のアクチュエータは、関節運動装置に限らず、様々な用途に適用可能なアクチュエータとして提供されることを目的とする。また、本願は、本願に開示のアクチュエータを用いた関節運動装置の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本願開示のアクチュエータは、固定部材及び前記固定部材に対して動作可能な可動部材を備えるアクチュエータであって、前記固定部材に一端側が取り付けられ、前記可動部材に他端側が取り付けられた可撓性を有する管状部材を備え、前記管状部材は、つづら折りに折り畳まれており、折り畳まれた一側の折り端の束は、第1拘束具で拘束されており、他側の折り端の束は、第2拘束具で拘束されており、前記第1拘束具の方が、前記第2拘束具より、伸縮性があり、内部への流体の供給及び排出が可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本願開示のアクチュエータにおいて、前記管状部材は、内部へ流体を供給することにより、膨らむことで、前記第2拘束具が伸張して、前記他側の折り端の束が広がり、内部から流体を排出することにより、扁平状になることを特徴とする。
【0011】
また、本願開示のアクチュエータにおいて、前記第1拘束具は、伸縮性を有する紐状体であり、前記第2拘束具は、紐状体であることを特徴とする。
【0012】
また、本願開示のアクチュエータにおいて、前記管状部材は、流体を供給する供給口が複数形成されていることを特徴とする。
【0013】
更に、本願開示の関節運動装置は、前記アクチュエータが備える前記可動部材は、人体を保持する保持具が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本願開示の関節運動装置において、前記保持具は、下肢を保持可能であることを特徴とする。
【0015】
また、本願開示の関節運動装置において、前記アクチュエータを複数備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願開示のアクチュエータ及び関節運動装置は、可撓性を有する管状部材に流体を供給及び排出することで、可動部材を動作させる。これにより、本願開示のアクチュエータは、例えば、関節運動装置に適用した場合、様々な姿勢での使用が可能であり、また、流体を用いるため、患者に対する負担を軽減することが可能である等、優れた効果を奏する。尤も、本願開示のアクチュエータは、関節運動装置に限らず、様々な装置を動作させるアクチュエータとしての提供が可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本願開示の関節運動装置の一例を示す概略外観図である。
図2】本願開示の関節運動装置の一例を示す概略外観図である。
図3】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図4】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図5】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図6】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図7】本願開示のアクチュエータが備える第1拘束具による管状部材の拘束の一例を模式的に示す側面図である。
図8】本願開示のアクチュエータが備える第1拘束具による管状部材の拘束を模式的に示す正面図である。
図9】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図10】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図11】本願開示のアクチュエータの外観の一例を示す概略外観図である。
図12】本願開示のアクチュエータが備える管状部材の内圧と可動部材の角度との関係の一例を示すグラフである。
図13】本願開示の関節運動装置の一例を示す概略外観図である。
図14】本願開示の関節運動装置の一例を示す概略外観図である。
図15】本願開示の関節運動装置の一例を示す概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳述する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術範囲を限定する性格のものではない。
【0019】
<適用例>
本願開示のアクチュエータは、例えば、足首の関節の他動運動等のリハビリテーション用の関節運動装置として用いられる。具体的には、関節運動装置は、板状の可動部材を備え、可動部材により足裏を保持し、可動部材を動作させることにより、足首から先端にかけての部位を底屈及び背屈の繰り返し運動をさせる他動運動に用いられる。以下では、図面を参照しながら、図面に記載されたリハビリテーション用の関節運動装置JEを例示して説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1及び図2は、本願開示の関節運動装置JEの一例を示す概略外観図である。図1及び図2は、患者の足に関節運動装置JEを取り付けて他動運動をしている状態を側方から示す外観図である。図1は、底屈状態を示しており、図2は、背屈状態を示している。関節運動装置JEは、アクチュエータ1と、アクチュエータ1が取り付けられる板状の基板2とを備えている。アクチュエータ1は、板状の固定部材10及び可動部材11、並びに管状部材12を有している。基板2には、側面視で略台形の枠状をなす調整台20が取り付けられており、調整台20により高さ及び角度が調整された状態でアクチュエータ1が取り付けられている。調整台20の上面は、略水平に配置された基板2に対して角度を付けた面となっており、アクチュエータ1の固定部材10の下面が固定されている。アクチュエータ1の可動部材11の上面には、患者の足の甲及び爪先を保持する第1保持具21が取り付けられている。基板2には、患者の足首を保持する第2保持具22が取り付けられている。第1保持具21及び第2保持具22は、面ファスナー、ベルト等の部材を用いて構成される。
【0021】
関節運動装置JEは、図1に示す状態から、アクチュエータ1が備える管状部材12の内部に空気等の流体を供給することにより、管状部材12が膨らみ、固定部材10に対して可動部材11が動作し、図2に示す状態に遷移する。図1に示す状態から図2に示す状態に遷移することにより、アクチュエータ1は、爪先側の固定部材10及び可動部材11の間隔が広がり、固定部材10に対する可動部材11の角度が大きくなる。図1に示す例では、垂直方向に対する患者の足裏の角度θ1が35°であるのに対し、図2に示す例では、角度θ2が-8°になっており、43°の角度で揺動している。関節運動装置JEは、図2に示す状態から、管状部材12の内部から流体を排出させることにより、管状部材12が扁平状に折り畳まれ、固定部材10に対して可動部材11が動作し、図1に示す状態に遷移する。管状部材12に対する流体の供給及び排出を繰り返すことにより、固定部材10に対して可動部材11が往復揺動運動を行うので、患者の足首の他動運動を行うことが可能となる。
【0022】
本願開示の関節運動装置JEは、アクチュエータ1を管状部材12に供給及び排出する流体で動作させるため、患者の足首の他動運動に適用した場合、足首への強制力が大きくなり過ぎることを防止する。従って、本願開示の関節運動装置JEは、患者に必要以上の負担をかけることを防止するなど、優れた効果を奏する。
【0023】
本願開示の関節運動装置JEが備えるアクチュエータ1の構造及び動作について説明する。図3乃至図6は、本願開示のアクチュエータ1の外観の一例を示す概略外観図である。以降では説明の便宜上、アクチュエータ1の方向については、固定部材10が取り付けられている方向を下方、可動部材11が取り付けられている方向を上方、そして可動部材11及び固定部材10の間隔が広がる方向の端部(図1及び図2の爪先側)を前方と定義する。なお、これらの方向は説明の便宜上の定義であり、アクチュエータ1及び関節運動装置JEの取付方向及び設置方向を限定するものではない。図3は、アクチュエータ1を斜め上方からの視点で示す概略斜視図であり、図4は、側方からの視点で示す概略側面図であり、図5は、前方からの視点で示す概略前面図であり、そして図6は、上方からの視点で示す概略平面図である。図3乃至図6は、いずれもアクチュエータ1から流体が排出された状態を示しており、固定部材10及び可動部材11は、略平行な配置となっている。
【0024】
アクチュエータ1が備える固定部材10及び可動部材11は、扁平な板状をなし、平面視で両長辺に切欠が形成された長方形状に形成されている。固定部材10及び可動部材11は、例えば、硬質、かつ軽量で、耐久性が高いポリアセタール樹脂(POM:polyacetal)等の材料を用いて形成される。
【0025】
アクチュエータ1が備える管状部材12は、可撓性を有する中空の長尺部材であり、例えば、ポリ塩化ビニル繊維強化ホースを用いて形成される。管状部材12は、つづら折りに折り畳まれており、一端側が固定部材10の上面に取り付けられ、他端側が可動部材11の下面に取り付けられている。管状部材12の一端側の先端は、第1封止具13にて封止された状態で固定部材10に取り付けられている。管状部材12の他端側の先端は、第2封止具14にて封止された状態で可動部材11に取り付けられている。管状部材12の一端側で固定部材10に取り付けられた折り返し部分近傍は、第1固定具15にて固定部材10に取り付けられている。第1固定具15は、管状部材12の内部を流体が通るように、管状部材12の内部空間を潰さない程度の隙間を開けた状態で、管状部材12を固定部材10に固定している。管状部材12の他端側で可動部材11に取り付けられた折り返し部分近傍は、第2固定具16にて可動部材11に取り付けられている。第2固定具16は、管状部材12の内部を流体が通るように、管状部材12の内部空間を潰さない程度の隙間を開けた状態で、管状部材12の可動部材11に固定している。
【0026】
折り畳まれた管状部材12の下部において、一端側の先端近傍には、流体の供給を受ける第1供給口120が開設されており、第1供給口120には流体を供給する供給管121が取り付けられている。管状部材12の下部には、管状部材12内の流体を分岐させる分岐口122が開設されている。更に、管状部材12の上部近傍には、流体の供給を受ける第2供給口123が開設されており、第2供給口123と分岐口122との間は分岐管124にて繋がれている。図示しないエアコンプレッサ等の流体供給装置から、供給管121を介して空気等の流体が第1供給口120から管状部材12の内部に供給された場合、管状部材12は、第1供給口120から内部へ供給される流体が、下部から充填されることにより膨らむ。第1供給口120から管状部材12の内部に供給された流体の一部は、分岐口122から分岐管124を介して第2供給口123へ送られる。流体が第2供給口123から管状部材12の内部に供給された場合、管状部材12は、第2供給口123から内部へ供給される流体が、上部からも充填されることにより膨らむ。管状部材12に開設される供給口は、第1供給口120のみの1つであってもよいが、異なる位置に複数開設することにより、流体の供給に要する時間を短縮することができる。本願で例示するアクチュエータ1は、分岐口122及び第2供給口123を左右に開設し、それぞれを分岐管124で繋いだ形態となっている。なお、管状部材12は、分岐口122を設けず、第1供給口120及び第2供給口123のそれぞれに対して、流体供給装置から流体を供給するようにしてもよい。流体の供給のために開設された第1供給口120及び第2供給口123は、流体を排出する排出口としても用いられる。
【0027】
管状部材12は、つづら折りに折り畳まれており、折り畳まれた前方(一端)の折り端の束は、第1拘束具17で拘束されており、折り畳まれた後方(他端)の折り端の束は、第2拘束具18で拘束されている。
【0028】
図7は、本願開示のアクチュエータ1が備える第1拘束具17による管状部材12の拘束の一例を模式的に示す側面図である。図8は、本願開示のアクチュエータ1が備える第1拘束具17による管状部材12の拘束を模式的に示す正面図である。第1拘束具17による拘束状態を模式的に示した図7及び図8を用いて第1拘束具17、及び第1拘束具17による管状部材12の拘束について説明する。
【0029】
第1拘束具17は、伸縮性を有する紐状体であり、例えば、シリコーンゴムを用いて形成されている。図7及び図8に例示するアクチュエータ1は、第1拘束具17として、第1紐17aから第6紐17fまでの6本の紐状体が、2本を一組として用いられている。第1紐17a及び第2紐17bは、前方の束を構成する各折り端の折り返し部分の内側を通り、かつ相隣る折り返し端を渡すように通っている。第1紐17a及び第2紐17bは、折り返し部分の内側を通る際に、二重螺旋状になり互いに捻りながら交差している。第1紐17a及び第2紐17bの後方に第3紐17c及び第4紐17dが通されている。第3紐17c及び第4紐17dは、各折り端の折り返し部分の内側を通り、かつ相隣る折り返し端を渡すように通っており、折り返し部分の内側を通る際に、二重螺旋状になり互いに捻りながら交差している。第3紐17c及び第4紐17dの後方に若干の間隔を開けて第5紐17e及び第6紐17fが通されている。第5紐17e及び第6紐17fは、各折り端の折り返し部分の外側を通り、かつ相隣る折り返し端の間を通っており、折り返し端の間を通る際に、二重螺旋状になり互いに捻りながら交差している。
【0030】
第1拘束具17は、管状部材12の前方の折り端の束がバラバラにならないように拘束しているが、管状部材12内部の流体の往き来を妨げることはない。第1拘束具17は、管状部材12内部に流体が供給され、管状部材12が膨らんだ場合、管状部材12の膨らみに応じて伸張するが、折り端の束が広がりながらも、バラバラにならないように拘束する。また、管状部材12内部から流体が排出された場合、第1拘束具17は、張力により縮む。
【0031】
図3乃至図5の概略外観図に戻り、第2拘束具18は、伸縮性がない紐状体である。第2拘束具18も第1拘束具17と同様に、例えば、6本の紐状体が2本一組として用いられる。一組の紐状体は、後方の束を構成する各折り端の折り返し部分の内側を通り、かつ相隣る折り返し端を渡すように通っており、折り返し部分の内側を通る際に、二重螺旋状になり互いに捻りながら交差している。また、他の一組の紐状体は、各折り端の折り返し部分の外側を通り、かつ相隣る折り返し端の間を通っており、折り返し端の間を通る際に、二重螺旋状になり互いに捻りながら交差している。
【0032】
第2拘束具18は、管状部材12の後方の折り端の束がバラバラにならないように拘束しているが、管状部材12内部の流体の往き来を妨げることはない。第2拘束具18は、管状部材12が膨らんだ場合であっても伸張することはなく、後方の折り端の束が広がらないように拘束する。第2拘束具18として、若干の伸縮性を有する紐状体を用いることも可能であるが、その場合であっても、第1拘束具17の方が、第2拘束具18より伸張性を有するように構成される。
【0033】
次に、本願開示のアクチュエータ1の動作について説明する。図9乃至図11は、本願開示のアクチュエータ1の外観の一例を示す概略外観図である。図9乃至図11は、アクチュエータ1を側方からの視点で示す概略側面図である。図9は、流体が排出された状態のアクチュエータ1を例示している。図10は、図9に例示した状態のアクチュエータ1に、流体を供給した状態を示しており、図11は、図10から更に流体を供給した状態を示している。
【0034】
図9に例示するように、流体が排出された状態のアクチュエータ1は、管状部材12が略扁平な状態でつづら折りに折り畳まれており、固定部材10及び可動部材11は、略平行な配置となっている。図9に例示する状態から、空気等の流体を第1供給口120から管状部材12内へ供給することにより、管状部材12は、略扁平な状態から膨らみ始める。管状部材12が膨らむことにより、可動部材11が上方へ押圧されて、固定部材10と可動部材11との間隔が広がる。管状部材12の折り端の束を拘束する第1拘束具17は、伸縮性を有するため、管状部材12の膨らみに応じて伸張するが、第2拘束具18は、伸縮性がないため、第2拘束具18に拘束された各折り端の間隔は維持された状態となる。従って、図10に例示するように、アクチュエータ1は、折り畳まれた管状部材12の一端側の各折り端の間隔が広くなり、全体として略扇状に広がる。図10に例示する状態から更に流体を供給することにより、図11に例示するように、アクチュエータ1の一端側の各折り端の間隔は更に広がり、全体として扇が広がった状態となる。図9に例示する状態から、図10、更に図11への遷移に応じて、水平面に略平行に載置された固定部材10に対する可動部材11は、傾斜角度が大きくなる。
【0035】
アクチュエータ1の管状部材12から流体を排出した場合、逆の動作となり、図11に例示する状態から、図10に例示する状態に、更に図9に例示する状態へと遷移する。また、固定部材10に対する可動部材11の傾斜角度は小さくなり、図7に例示する状態で略平行となる。
【0036】
図12は、本願開示のアクチュエータ1が備える管状部材12の内圧と可動部材11の角度との関係の一例を示すグラフである。図12は、横軸に管状部材12の内圧をとり、縦軸に可動部材11の角度をとって、その関係を示している。グラフ中、「●」は、流体を供給する際の関係を示し、「■」は、流体を排出する際の関係を示している。可動部材11の角度は、固定部材10に対する可動部材11の角度を示している。図12に例示するように、管状部材12の内圧と、可動部材11の角度との間には、一定の関係があり、管状部材12の内圧、即ち、管状部材12への流体の供給量を調整することにより、可動部材11の角度を制御することができる。
【0037】
<第2実施形態>
上述したアクチュエータ1を用いた関節運動装置JEは、様々な形態に展開することが可能である。第2実施形態は、例えば、ベッド、椅子等の高い位置に座った姿勢の患者が、関節運動装置JEを使用する形態である。
【0038】
図13及び図14は、本願開示の関節運動装置JEの一例を示す概略外観図である。図13及び図14は、患者の足に関節運動装置JEを取り付けて他動運動をしている状態を側方から示す外観図である。図13は、底屈状態を示しており、図14は、背屈状態を示している。第2実施形態に係る関節運動装置JEは、基板2に対してアクチュエータ1の固定部材10の下面が固定されている。アクチュエータ1の可動部材11の上面には、患者の足の甲及び爪先を保持する第1保持具21が取り付けられている。基板2には、側面視で略台形の枠状をなす調整台20が取り付けられている。第2実施形態に係る関節運動装置JEは、足首から下腿の下部を調整台20で支持している。患者の足首近傍は、調整台20の斜面にて支持されており、第3保持具23により調整台20上に保持されている。第1保持具21及び第3保持具23は、面ファスナー、ベルト等の部材を用いて構成される。
【0039】
関節運動装置JEは、図13に示す状態から、アクチュエータ1が備える管状部材12の内部に空気等の流体を供給することにより、管状部材12が膨らみ、固定部材10に対して可動部材11が動作し、図14に示す状態に遷移する。また、関節運動装置JEは、図14に示す状態から、管状部材12の内部から流体を排出させることにより、管状部材12が扁平状に折り畳まれ、固定部材10に対して可動部材11が動作し、図13に示す状態に遷移する。管状部材12に対する流体の供給及び排出を繰り返すことにより、固定部材10に対して可動部材11が往復揺動運動を行うので、座った姿勢の患者の足首の他動運動を行うことが可能となる。
【0040】
以上のように、本願開示の関節運動装置JEは、アクチュエータ1の取付方を適宜変更することができるので、患者の姿勢に応じた構成とすることが可能である等、優れた効果を奏する。
【0041】
<第3実施形態>
第3実施形態は、複数のアクチュエータ1を用いて関節運動装置JEを構成する形態である。図15は、本願開示の関節運動装置JEの一例を示す概略外観図である。図15に例示する関節運動装置JEは、第1アクチュエータ1A及び第2アクチュエータ1Bの2台のアクチュエータ1を並べた構成となっている。
【0042】
第1アクチュエータ1Aは、固定部材10A、可動部材11A及び管状部材12Aを備えている。第1アクチュエータ1Aの管状部材12Aには、第1供給口120A、分岐口122A及び第2供給口123Aが形成され、供給管121A及び分岐管124Aが取り付けられている。第2アクチュエータ1Bは、固定部材10B、可動部材11B及び管状部材12Bを備えている。第2アクチュエータ1Bの管状部材12Bには、第1供給口120B、分岐口122B及び第2供給口123Bが形成され、供給管121B及び分岐管124Bが取り付けられている。基板2には、調整台20が取り付けられており、調整台20の上面には、第1アクチュエータ1Aの固定部材10A及び第2アクチュエータ1Bの固定部材10Bが並べて取り付けられている。第1アクチュエータ1Aの可動部材11Aの上面及び第2アクチュエータ1Bの可動部材11Bの上面には、両方の上面を渡す板状の渡し板24が取り付けられている。渡し板24には、患者の足の甲及び爪先を保持する第1保持具21が取り付けられている。
【0043】
関節運動装置JEが備える第1アクチュエータ1A及び第2アクチュエータ1Bは、流体の供給及び排出をそれぞれ個別に制御することができる。したがって、第3実施形態に係る関節運動装置JEは、左右で角度を付けた動作、足首を捻る動作等の様々な動作の他動運動に適用することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0044】
以上のように、本願開示のアクチュエータ1は、流体の供給及び排出により動作する。従って、例えば、他動運動用の関節運動装置JEに適用した場合、流動性のある流体で動作を行わせるので、強制力が強くなり過ぎることがなく、患者に対する負担を軽減することが可能である等、優れた効果を奏する。特に、圧力により体積が変動する気体を流体として用いた関節運動装置JEは、強制力が強くなり過ぎること抑止し易いので、患者に対する負担を軽減する効果が大きくなる。しかも、本願開示の関節運動装置JEは、装置を大型化させることなく構成することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0045】
また、本願開示のアクチュエータ1は、流体を供給する供給口を複数形成することにより、流体の供給に要する時間を短縮することができるので、様々な制御を行うことが可能である等、優れた効果を奏する。
【0046】
更に、本願開示の関節運動装置JEは、アクチュエータ1の取付方を適宜変更することができるので、患者の姿勢に応じた構成とすることが可能である等、優れた効果を奏する。例えば、本願開示の関節運動装置JEは、寝たきり状態の患者に使用する場合であっても、アクチュエータ1の取付方を変更することにより、患者にとって楽な姿勢で他動運動を行うことが可能となる。従って、例えば、寝たきり状態の患者が、離床して、端座位又は椅座位になる必要がないので、本願開示の関節運動装置JEは、患者への負担を軽減することが可能であり、更には、介護者への負担を軽減することも可能となる。
【0047】
更に、本願開示の関節運動装置JEは、複数のアクチュエータ1を用いることにより、角度を付けた他動運動、捻りを加えた他動運動等の様々な運動に適用することが可能である等、優れた効果を奏する。
【0048】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形及び変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0049】
例えば、前記実施形態では、流体として空気を用いる形態を示したが、本発明はこれに限らず、空気以外の気体、水、油等の液体等の様々な流体を用いる形態に展開することが可能である。
【0050】
また、例えば、前記実施形態では、第1拘束具17、第2拘束具18等の拘束具として紐状体を用いる形態を示したが、本発明はこれに限らず、管状部材12の折り端の束を纏めることができれば、様々な部材を用いることが可能である。例えば、伸縮性が求められる第1拘束具17には、ゴム、伸縮性のテープ等、様々な部材を用いることが可能である。また、第2拘束具18は、金属製、硬質樹脂等の硬質材料を用いた留具等の様々な部材を用いることが可能である。
【0051】
更に、例えば、前記実施形態では、足首の他動運動に用いる形態を示したが、本発明はこれに限らず、肩、肘、手首等の様々な関節の他動運動に適用することが可能である。
【0052】
更に、例えば、前記実施形態では、アクチュエータ1を関節運動装置JEに適用する形態を示したが、本発明のアクチュエータ1は、これに限らず、様々な装置の動作部に適用することが可能である。具体的には、本願開示のアクチュエータ1は、車両のジャッキアップ装置、寝具の部分的な高さの調整装置等、様々な装置の動作部として適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
JE 関節運動装置
1 アクチュエータ
1A 第1アクチュエータ
1B 第2アクチュエータ
10 固定部材
11 可動部材
12 管状部材
120 第1供給口
121 供給管
122 分岐口
123 第2供給口
124 分岐管
17 第1拘束具
18 第2拘束具
2 基板
20 調整台
21 第1保持具
22 第2保持具
23 第3保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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