(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062494
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20240501BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170347
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 勝
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA23
5H126AA28
5H126BB06
5H126EE11
5H126FF07
(57)【要約】
【課題】製造コストを削減できる燃料電池を提供する。
【解決手段】発電セルが複数積層されたセル群20と、セル群20の積層方向外側に配置されるターミナル30と、ターミナル30の積層方向外側に配置され、長孔41b・43b(バイパス流路)を有すると共に発電に寄与しないバイパスセル40(非発電セル)と、を具備し、バイパスセル40(非発電セル)は、3層シート構造を有した第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43(第一のシート)を積層方向に貫通する長孔41b・43b(貫通孔)を有し、バイパス流路は、長孔41b・43b(貫通孔)の積層方向両側を、第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43(第一のシート)に対して積層方向両側に接着された被接着部品(ターミナルプレート33・第一平板プレート42・第二平板プレート44)で塞ぐことにより形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体と当該膜電極接合体を挟持する一対のセパレータとを備えた発電セルが所定の積層方向に複数積層されたセル群と、
前記セル群の前記積層方向外側に配置され、前記発電セルで発電された電力を取り出すためのターミナルと、
前記ターミナルの前記積層方向外側に配置され、外部から発電用ガスが供給される第一の流路と外部へと発電用ガスが排出される第二の流路とを連通するバイパス流路を有すると共に発電に寄与しない非発電セルと、
を具備し、
前記非発電セルは、
コア層及び当該コア層の両面に設けられた接着層を含む3層シート構造を有した第一のシートを有すると共に前記第一のシートを前記積層方向に貫通する貫通孔を有し、
前記バイパス流路は、
前記貫通孔の前記積層方向両側を、前記第一のシートに対して前記積層方向両側に接着された被接着部品で塞ぐことにより形成されている、
燃料電池。
【請求項2】
前記ターミナル及び前記非発電セルは、互いに一体的に形成されている、
請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記被接着部品は、前記ターミナルの構成部品のうち前記積層方向外側の構成部品を含む、
請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記ターミナルは、前記3層シート構造を有する第二のシートを含み、
前記ターミナル及び前記非発電セルは、
前記第一のシート及び前記第二のシートを含む前記ターミナル及び前記非発電セルの構成部品がそれぞれ非固定の状態において、当該それぞれの構成部品を互いに圧着させることにより形成されている、
請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記ターミナル及び前記非発電セルは、前記セル群の前記積層方向両外側において同一構造のものが配置される、
請求項1に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、複数積層された発電セルと、前記複数の発電セルの積層方向外側に配置され、前記発電セルで発電された電力を取り出すための集電板と、酸化ガスが流れるように構成されると共に発電に寄与しない非発電セルと、を具備する燃料電池が開示されている。
【0004】
ここで、特許文献1に記載の燃料電池において非発電セルは、複数の発電セルと集電板との間に配置されるため、電気が流れるように導電性部材を具備する。また非発電セルでは、当該非発電セルの内部に発電用ガスが流れるように、前記導電性部材がガス拡散層を有した多孔質な部材により構成される。また非発電セルは、特許文献1に記載されるように、比較的煩雑な製造工程により製造される。
【0005】
このように、前記非発電セルは比較的高価な部品(導電性部材)が用いられると共に比較的煩雑な製造工程により製造されるため、燃料電池の製造コストが高くなる点で不利である。また仮に非発電セルに導電性を付与する表面処理を行う場合、表面処理のコストがかかるため、やはり燃料電池の製造コストは高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、製造コストを削減できる燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、膜電極接合体と当該膜電極接合体を挟持する一対のセパレータとを備えた発電セルが所定の積層方向に複数積層されたセル群と、前記セル群の前記積層方向外側に配置され、前記発電セルで発電された電力を取り出すためのターミナルと、前記ターミナルの前記積層方向外側に配置され、外部から発電用ガスが供給される第一の流路と外部へと発電用ガスが排出される第二の流路とを連通するバイパス流路を有すると共に発電に寄与しない非発電セルと、を具備し、前記非発電セルは、コア層及び当該コア層の両面に設けられた接着層を含む3層シート構造を有した第一のシートを有すると共に前記第一のシートを前記積層方向に貫通する貫通孔を有し、前記バイパス流路は、前記貫通孔の前記積層方向両側を、前記第一のシートに対して前記積層方向両側に接着された被接着部品で塞ぐことにより形成されているものである。
【0010】
請求項2においては、前記ターミナル及び前記非発電セルは、互いに一体的に形成されているものである。
【0011】
請求項3においては、前記被接着部品は、前記ターミナルの構成部品のうち前記積層方向外側の構成部品を含むものである。
【0012】
請求項4においては、前記ターミナルは、前記3層シート構造を有する第二のシートを含み、前記ターミナル及び前記非発電セルは、前記第一のシート及び前記第二のシートを含む前記ターミナル及び前記非発電セルの構成部品がそれぞれ非固定の状態において、当該それぞれの構成部品を互いに圧着させることにより形成されているものである。
【0013】
請求項5においては、前記ターミナル及び前記非発電セルは、前記セル群の前記積層方向両外側において同一構造のものが配置されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明においては、製造コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池スタックの側面模式図。
【
図2】(a)ターミナル及びバイパスセルを示す斜視図。(b)ターミナル及びバイパスセルを示す側面図。
【
図3】ターミナル及びバイパスセルを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明する。
【0018】
まず、
図1を用いて、本発明に係る燃料電池の一実施形態に係る燃料電池スタック1の概略構成について説明する。
【0019】
燃料電池スタック1は、燃料電池の最小単位である発電セル(燃料電池セル)を積層させ、互いに結合したものであり、電気化学反応により発電を行うものである。燃料電池スタック1は、例えば車両に搭載されたモータ等を駆動させる電源として用いられる。燃料電池スタック1としては、例えば高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)等を採用可能である。燃料電池スタック1は、主としてスタックケース10、セル群20、ターミナル30、バイパスセル40、スタックマニホールド50及びプレッシャプレート60を具備する。
【0020】
スタックケース10は、後述するセル群20(積層された発電セル)等を収容するものである。スタックケース10の形状は特に限定されるものではないが、後述するセル群20等を収容可能な形状(例えば、中空の箱状や、枠状等)に形成される。スタックケース10の一端部(本実施形態では、前端部)は開放され、後述するスタックマニホールド50によって閉塞される。
【0021】
セル群20は、発電セルを所定の積層方向(本実施形態では、前後方向)に沿って積層して形成されるものである。発電セル(単セル)は、固体高分子膜(電解質膜)の両面に電極板が接合された膜電極接合体を、発電用ガスや冷却媒体の流路が形成された一対のセパレータ(カソード側セパレータ及びアノード側セパレータ)で挟むことにより形成される。セル群20は、スタックケース10に収容される。
【0022】
またセル群20には、後述するスタックマニホールド50の流路と連通し、流体が流れる供給用及び排出用の流路(不図示)が形成される。セル群20では、前記供給用の流路を介して導入される発電用ガス(例えば水素及び空気)により電気化学反応(発電)が行われる。またセル群20では、前記供給用の流路を介して導入される冷却媒体(例えば冷却水)により冷却が行われる。なおセル群20に導入された水素ガスや空気、水は、排出用の流路を介して外部へ排出される。
【0023】
ターミナル30は、セル群20で発電された電力を外部へ取り出すためのものである。ターミナル30は、前後方向においてセル群20の両外側にそれぞれ配置される。ターミナル30は、セル群20と共にスタックケース10に収容される。なおターミナル30の構成についての詳細な説明は後述する。
【0024】
バイパスセル40は、例えば結露水のような不純物が、セル群20へ流入するのを抑制するためのものである。バイパスセル40は、発電セルとは異なり、発電に寄与しないセル(非発電セル)として構成される。バイパスセル40は、前後方向においてターミナル30の両外側にそれぞれ配置される。バイパスセル40は、セル群20等と共にスタックケース10に収容される。なおバイパスセル40の構成についての詳細な説明は後述する。
【0025】
スタックマニホールド50は、セル群20に供給される流体(発電用ガスや冷却媒体)が流通可能な流路が形成された部材である。スタックマニホールド50は、例えばアルミダイカストにより形成される。スタックマニホールド50は、前後方向一側(前側)において、スタックケース10の開口を閉塞するように配置され、当該スタックケース10に固定される。スタックマニホールド50は、バイパスセル40に前方から当接される。
【0026】
プレッシャプレート60は、スタックケース10に収容された各種部品を、前後方向に圧縮するものである。プレッシャプレート60は、例えばアルミダイカストにより形成される。プレッシャプレート60は、バイパスセル40に後方から当接される。プレッシャプレート60は、例えばスタックケース10に設けられたボルト等(不図示)によって前方に向かって押し付けられる。これによってプレッシャプレート60とスタックマニホールド50との間に配置される各種部品は、前後方向に互いに圧縮された状態で保持される。
【0027】
上述の如く、本実施形態に係る燃料電池スタック1においては、セル群20の前後方向両外側にターミナル30及びバイパスセル40が設けられると共に、当該バイパスセル40が当該ターミナル30よりも前後方向外側に位置するように配置される。
【0028】
以下では、
図2から
図5を用いて、ターミナル30及びバイパスセル40の構成について詳細に説明する。
【0029】
なお上述の如くターミナル30及びバイパスセル40は、前後方向の両外側にそれぞれ配置されるが、当該両外側におけるターミナル30及びバイパスセル40の構成は、前後方向に反転して配置される点が異なり、他の点は略同一である。そのため以下では、後側(プレッシャプレート60側)のターミナル30及びバイパスセル40の構成について説明し、他方(スタックマニホールド50側)の構成についての説明は省略するものとする。
【0030】
図2から
図5等に示すように、ターミナル30は、互いに接合された複数の矩形状の部材を具備する。具体的には、ターミナル30は、複数の(本実施形態においては、3つの)矩形状の部材として、セパレータ31、枠プレート32及びターミナルプレート33を具備する。
【0031】
セパレータ31は、セル群20を構成するセパレータと同一のものである。すなわち、セパレータ31は、カソード側セパレータ又はアノード側セパレータにより構成される。セパレータ31は、ターミナル30を構成する3つの矩形状の部材のうち最も前後方向内側に配置される。セパレータ31は、鉄鋼板、ステンレス鋼材及びアルミニウム板等の金属板により構成される。セパレータ31の幅方向(左右方向)両外側部には、それぞれ3つの貫通孔31aが形成される。
【0032】
枠プレート32は、3層シート構造を有するシート(平板状の部材)である。枠プレート32は、中央に開口部32bが設けられた枠状に形成される。枠プレート32は、ターミナル30を構成する3つの矩形状の部材のうち前後方向中央部(セパレータ31とターミナルプレート33との間)に配置される。枠プレート32の左右方向両外側部には、セパレータ31と同様に、それぞれ3つの貫通孔32aが形成される。枠プレート32は、絶縁性を有するように形成される。
【0033】
ここで、3層シート構造とは、コア層及び当該コア層の両面に設けられた接着層を含む構造である。コア層の素材としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタラート(PET)等の熱可塑性の合成樹脂を採用できる。また接着層の素材としては、例えばポリプロピレン(PP)やエポキシ樹脂を用いた接着剤を採用できる。
【0034】
ターミナルプレート33は、電力を外部へ取り出すための端子33b(
図1参照)が設けられた平板状の部材である。なお便宜上、
図1以外の図面においては、端子33bの図示を省略する。ターミナルプレート33は、ターミナル30を構成する3つの矩形状の部材のうち最も前後方向外側(すなわち、最もバイパスセル40側)に配置される。ターミナルプレート33は、ステンレス鋼材及びアルミニウム板等の金属板により構成される。ターミナルプレート33は、枠プレート32の開口部32bを介してセパレータ31と当接される。ターミナルプレート33の左右方向両外側部には、セパレータ31及び枠プレート32と同様に、それぞれ3つの貫通孔33aが形成される。
【0035】
上述の如く構成されたターミナル30は、後述するように、バイパスセル40と一体的に形成される。
【0036】
図2、
図3及び
図5に示すように、バイパスセル40は、互いに接合された複数の矩形状の部材を具備する。具体的には、バイパスセル40は、複数の(本実施形態においては4つの)矩形状の部材として、第一バイパスプレート41、第一平板プレート42、第二バイパスプレート43及び第二平板プレート44を具備する。
【0037】
第一バイパスプレート41は、枠プレート32と同様の3層シート構造を有するシート(平板状の部材)である。第一バイパスプレート41は、バイパスセル40を構成する4つの矩形状の部材のうち最も内側(すなわち、最もターミナル30側)に配置される。すなわち、第一バイパスプレート41は、ターミナル30のターミナルプレート33と互いに対向して当接するように配置される。第一バイパスプレート41の左右方向両外側部には、それぞれ3つの貫通孔41aが形成される。また第一バイパスプレート41においては、前後方向に貫通すると共に、前後方向視で傾斜状に形成された長孔41bが設けられる。長孔41bは、左側の最上部の貫通孔41aと右側の最下部の貫通孔41aとを結ぶように形成される。
【0038】
第一平板プレート42は、ステンレス鋼材及びアルミニウム板等の金属板により構成された平板状の部材である。第一平板プレート42は、前後方向において第一バイパスプレート41の外側に配置される。第一平板プレート42の左右方向両外側部には、それぞれ3つの貫通孔42aが形成される。
【0039】
第二バイパスプレート43は、枠プレート32及び第一バイパスプレート41と同様の3層シート構造を有するシート(平板状の部材)である。第二バイパスプレート43は、前後方向において第一平板プレート42の外側に配置される。第二バイパスプレート43の左右方向両外側部には、それぞれ3つの貫通孔43aが形成される。また第二バイパスプレート43においては、前後方向に貫通すると共に、前後方向視で傾斜状に形成された長孔43bが設けられる。長孔43bは、左側の最下部の貫通孔43aと右側の最上部の貫通孔43aとを結ぶように形成される。
【0040】
第二平板プレート44は、ステンレス鋼材及びアルミニウム板等の金属板により構成された平板状の部材である。第二平板プレート44は、前後方向において第二バイパスプレート43の外側(バイパスセル40を構成する4つの矩形状の部材のうち最も外側、すなわち最もプレッシャプレート60側)に配置される。第二平板プレート44の左右方向両外側部には、それぞれ3つの貫通孔44aが形成される。
【0041】
上述の如く構成されたバイパスセル40は、ターミナル30と一体的に形成される。以下では、ターミナル30及びバイパスセル40を互いに一体的に形成する工程について説明する。
【0042】
まずターミナル30を構成する3つの部材(セパレータ31、枠プレート32及びターミナルプレート33)及びバイパスセル40を構成する4つの部材(第一バイパスプレート41、第一平板プレート42、第二バイパスプレート43及び第二平板プレート44)が準備される。ここで、準備された各部材は、それぞれ貫通孔や長孔がプレス加工等により事前に形成されている。
【0043】
そして、準備された各部材が、所定の金型等により隣接する部材同士が当接して挟持された状態で加熱される。こうして、熱圧着により、ターミナル30を構成する3つの部材が、3層シート構造を有する枠プレート32の接着層に接着することにより互いに接合される。また同時に、バイパスセル40を構成する4つの部材が、3層シート構造を有する第一バイパスプレート41及び第二バイパスプレート43の接着層に接着することにより互いに接合される。
【0044】
また同時に、バイパスセル40を構成する第一バイパスプレート41の接着層が、ターミナル30を構成するターミナルプレート33の後面に接着することにより、ターミナル30及びバイパスセル40が互いに一体的に接合される。
【0045】
このように、本実施形態に係るターミナル30及びバイパスセル40においては、それぞれ別々に(複数回)行われる熱圧着ではなく、一回の熱圧着により、互いに一体的に形成される。これにより製造工程数を削減できるため、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。また、ターミナル30及びバイパスセル40が一体的に形成されることにより、組み付け点数の削減を図ることができ、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0046】
また一体的に形成されたターミナル30及びバイパスセル40では、複数の矩形状の部材の貫通孔(貫通孔31a・32a・33a・41a・42a・43a・44a)が前後方向に互いに重複して配置されることにより、当該前後方向に沿って延びる1つの貫通孔(以下では「貫通孔45」と称する、
図2参照)が形成される。
【0047】
貫通孔45は、ターミナル30及びバイパスセル40の左右方向両外側部(左側及び右側)に、3つずつ形成される。左側及び右側の3つの貫通孔45は、スタックマニホールド50に形成された流路と連通される。
【0048】
こうして、例えば右側の3つの貫通孔45は、セル群20において外部からの発電用ガス等が供給される供給用の流路(不図示)を介して、スタックマニホールド50から供給された水素ガスや空気、冷却水が流通される。また例えば左側の3つの貫通孔45は、セル群20において発電用ガス等が外部へと排出される排出用の流路(不図示)を介して、スタックマニホールド50へと排出される水素ガスや空気、冷却水が流通される。
【0049】
またバイパスセル40においては、第一バイパスプレート41が、ターミナル30のターミナルプレート33と、バイパスセル40の第一平板プレート42と、の間において、それぞれのプレートと接着された状態で介在される。こうして、第一バイパスプレート41の長孔41bは、前後方向両側の開口がターミナルプレート33及び第一平板プレート42により閉塞されると共に各プレート間の隙間がシールされ、左側の最上部の貫通孔41aと右側の最下部の貫通孔41aとを結ぶ(例えば水素ガスの)バイパス流路として形成される。
【0050】
またバイパスセル40においては、第二バイパスプレート43が、第一平板プレート42と第二平板プレート44との間において、それぞれのプレートと接着された状態で介在される。こうして、第二バイパスプレート43の長孔43bは、前後方向両側の開口が第一平板プレート42及び第二平板プレート44により閉塞されると共に各プレート間の隙間がシールされ、左側の最下部の貫通孔43aと右側の最上部の貫通孔43aとを結ぶ(例えば、空気の)バイパス流路として形成される。
【0051】
こうして、バイパスセル40においては、バイパス流路(長孔41b・43b)を有するため、例えば前記供給用の流路において生じた結露水のような不純物を、当該バイパス流路を介して前記排出流路へと流すことができるため、当該不純物がセル群20へと流入するのを抑制できる。これによれば、セル群20の発電性能の低下を抑制できる。また例えばガスケットを用いることなく、バイパス流路(長孔41b・43b)のシールを行うことができるため、製造コストを低減できる。
【0052】
ここで、従来の燃料電池のように非発電セル(バイパスセル40)が、複数の発電セルとターミナル(集電板)との間に配置される場合、非発電セルは、電気が流れるように例えば導電性部材を具備する。また非発電セルは、当該非発電セルの内部に発電用ガスが流れるように、前記導電性部材がガス拡散層を有した多孔質な部材により構成される。このように、従来の燃料電池においては、非発電セルに比較的高価な部品(導電性部材)が用いられると共に比較的煩雑な製造工程により製造されるため、製造コストが高くなる。また仮に非発電セルに導電性を付与する表面処理を行う場合、表面処理のコストがかかるため、製造コストが高くなる。
【0053】
これに対して、本実施形態に係るターミナル30及びバイパスセル40においては、比較的簡易な構成によりバイパス流路(長孔41b・43b)が形成される。またバイパスセル40はターミナル30よりも前後方向外側に配置されるため、当該バイパスセル40の積層方向に亘って電気を流す必要がない。すなわち、バイパスセル40においては、例えば従来の燃料電池の非発電セルのように導電性部材を設ける必要が無く、また導電性を付与するような表面処理を行う必要がないため、燃料電池スタック1の製造コストを低減できる。
【0054】
以上の如く、本実施形態に係る燃料電池スタック1は、
膜電極接合体と当該膜電極接合体を挟持する一対のセパレータとを備えた発電セルが所定の積層方向に複数積層されたセル群20と、
前記セル群20の前記積層方向外側に配置され、前記発電セルで発電された電力を取り出すためのターミナル30と、
前記ターミナル30の前記積層方向外側に配置され、外部から発電用ガスが供給される第一の流路と外部へと発電用ガスが排出される第二の流路とを連通する長孔41b・43b(バイパス流路)を有すると共に発電に寄与しないバイパスセル40(非発電セル)と、
を具備し、
前記バイパスセル40(非発電セル)は、
コア層及び当該コア層の両面に設けられた接着層を含む3層シート構造を有した第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43(第一のシート)を有すると共に前記第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43(第一のシート)を前記積層方向に貫通する長孔41b・43b(貫通孔)を有し、
前記バイパス流路は、
前記長孔41b・43b(貫通孔)の前記積層方向両側を、前記第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43(第一のシート)に対して前記積層方向両側に接着された被接着部品(ターミナルプレート33・第一平板プレート42・第二平板プレート44)で塞ぐことにより形成されているものである。
【0055】
このような構成により、バイパスセル40が比較的高価な部品(例えば、GDLのような部品)を用いることなく比較的簡易な製造工程により製造され、さらには例えば導電性を付与するような表面処理を行う必要がないため、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0056】
また、本実施形態に係る燃料電池スタック1において、
前記ターミナル30及び前記バイパスセル40(非発電セル)は、互いに一体的に形成されているものである。
【0057】
このような構成により、組み付け点数の削減を図ることができ、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0058】
また、本実施形態に係る燃料電池スタック1において、
前記被接着部品は、前記ターミナル30のターミナルプレート33(構成部品のうち前記積層方向外側の構成部品)を含むものである。
【0059】
このような構成により、バイパス流路を、ターミナル30のターミナルプレート33(すなわち、バイパスセル40の構成部品以外の部品)を用いて形成できるため、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0060】
また、本実施形態に係る燃料電池スタック1において、
前記ターミナル30は、前記3層シート構造を有する第一バイパスプレート41(第二のシート)を含み、
前記ターミナル30及び前記バイパスセル40(非発電セル)は、
前記第二バイパスプレート43(第一のシート)及び前記第一バイパスプレート41(第二のシート)を含む前記ターミナル30及び前記バイパスセル40(非発電セル)の構成部品がそれぞれ非固定の状態において、当該それぞれの構成部品を互いに圧着させることにより形成されているものである。
【0061】
このような構成により、ターミナル30及びバイパスセル40を、それぞれ別々に行われる熱圧着ではなく、同時に行われる熱圧着により、互いに一体的に形成できる。すなわち工程数を削減できるため、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0062】
また、本実施形態に係る燃料電池スタック1において、
前記ターミナル30及び前記バイパスセル40(非発電セル)は、前記セル群20の前記積層方向両外側において同一構造のものが配置される。
【0063】
このような構成により、部品の共通化を図ることができ、燃料電池スタック1の製造コストを削減できる。
【0064】
なお、本実施形態に係る燃料電池スタック1は、本発明に係る燃料電池の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るバイパスセル40は、本発明に係る非発電セルの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一バイパスプレート41・第二バイパスプレート43は、本発明に係る第一のシートの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一バイパスプレート41は、本発明に係る第二のシートの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る長孔41b・43bは、本発明に係るバイパス流路の実施の一形態である。
【0065】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、本実施形態で例示した各部の形状等は特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。具体的には、スタックケース10、セル群20、ターミナル30、バイパスセル40、スタックマニホールド50及びプレッシャプレート60の形状や構成は限定するものではなく、任意に変更することができる。
【0067】
また本実施形態では、ターミナル30に隣接する部材(エンドプレート)としてスタックマニホールド50及びプレッシャプレート60を例示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、スタックマニホールド50に代えて、流体の流路が形成されていない単純な板状部材(エンドプレート)をターミナル30に隣接するように配置することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 燃料電池スタック
20 セル群
30 ターミナル
40 バイパスセル
41 第一バイパスプレート
41b 長孔
43 第二バイパスプレート
43b 長孔