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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062500
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240501BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/9789
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170359
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 玲央
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD352
4C083BB02
4C083BB04
4C083CC11
4C083DD23
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】
長期にわたり安定性が良好なパール光沢を呈する皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記(A)~(E)を含有し、パール光沢を呈することを特徴とする皮膚外用剤。
(A)モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリル
(B)親水性ノニオン界面活性剤
(C)クインスシードエキスをエキス純分として0.03~2質量%
(D)多価アルコール
(E)水
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)を含有し、パール光沢を呈することを特徴とする皮膚外用剤。
(A)モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリル
(B)親水性ノニオン界面活性剤
(C)クインスシードエキスをエキス純分として0.03~2質量%
(D)多価アルコール
(E)水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期にわたり安定性が良好なパール光沢を呈する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、市場には多種多様な皮膚外用剤があふれ、消費者の選択肢の幅がひろがったことにより、皮膚外用剤にはより高い付加価値が求められるようになってきている。特に、保湿効果など皮膚外用剤の持つ基本的な機能性の高さに加えて、使用感の良さや外観の審美性など、より高い満足感を得られる価値が求められる傾向にある。
特に外観の審美性については、消費者に与えるインパクトが大きく、他の皮膚外用剤との差別化を容易に図れることから多くの検討がなされている。
パール光沢を付与する技術として、主にメイクアップ化粧料にパール顔料等を配合することが知られている(特許文献1)。また、パール顔料や魚鱗箔等を用いずに、セラミド等を配合して化粧料にパール光沢を付与する技術(特許文献2)や有彩色のパール光沢を有する化粧料(特許文献3)等が開発されているが、沈殿など長期安定性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-134197号公報
【特許文献2】特開2006-248925号公報
【特許文献3】特開2018-043974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期にわたり安定性が良好なパール光沢を呈する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
下記(A)~(E)を含有する皮膚外用剤。
(A)モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリル
(B)親水性ノニオン界面活性剤
(C)クインスシードエキスをエキス純分として0.03~2質量%
(D)多価アルコール
(E)水
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用剤は、長期にわたり安定性が良好なパール光沢を呈するという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
[モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリル]
ステアリン酸グリセリルは、ステアリン酸を主成分とする脂肪酸とグリセリンのエステル化合物であり、その起源やエステル化方法により、フリーの脂肪酸、モノエステル、ジエステル、トリエステルの含有比率が異なる。本発明においては通常の皮膚外用剤に配合し得るステアリン酸グリセリルであれば特に限定されないが、そのモノエステル含有率は70%以上のものを使用する。モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリルは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。モノエステル含有率が高いほど輝度の高いパール光沢を有する皮膚外用剤を得ることができる。
市販品としては、サンソフト8004-C(太陽化学社製)、EMALEX GMS-B(日本エマルジョン社製)等が挙げられる。
【0009】
本発明の皮膚外用剤においてモノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリルは、皮膚外用剤全量に対して0.02~3質量%配合することが好ましく、さらに0.02~1質量%配合することが好ましい。
【0010】
[親水性ノニオン界面活性剤]
親水性ノニオン界面活性剤としては、通常皮膚外用剤に配合し得るものであれば特に限定されず、1種を単独で若しくは2種以上を併用して用いることができる。かかる親水性ノニオン界面活性剤として例えば、ショ糖脂肪酸エステル類、グリセリンモノ脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンヒマシ油類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン変性シリコーン類、ポリグリセリン変性シリコーン類、ポリエーテル変性シリコーン類等が挙げられる。これらの中でもポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類から選択される1種又は2種以上を配合することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の皮膚外用剤に配合する親水性ノニオン界面活性剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステル類から選択される1種又は2種以上を必須に配合することが好ましく、例えばイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14)、イソステアリン酸ポリグリセリル-4(HLB値:8)、イソステアリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:11)、オレイン酸ポリグリセリル-10(HLB値:13)、オレイン酸ポリグリセリル-4(HLB値:9)、オレイン酸ポリグリセリル-6(HLB値:12)、カプリル酸ポリグリセリル-2(HLB値:8)、カプリル酸ポリグリセリル-6(HLB値:10)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:11)、ジオレイン酸ポリグリセリル-10(HLB値:12)、ジカプリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:10)、ジステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:12)、ステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14)、セスキカプリル酸ポリグリセリル-2(HLB値:8)、トリステアリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:8)、ミリスチン酸ポリグリセリル-10(HLB値:15)、ラウリン酸ポリグリセリル-4(HLB値:10)、ラウリン酸ポリグリセリル-6(HLB値:14)、ラウリン酸ポリグリセリル-10(HLB値:14.8)等が挙げられる。この中でも、ラウリン酸ポリグリセリル-10を用いることが好ましい。ここで、HLB(親水性-親油性バランス;Hydrophile-Lypophile Balance)値は、一般にノニオン界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により求めることができる。
【0012】
本発明の皮膚外用剤において親水性ノニオン界面活性剤は、皮膚外用剤全量に対して0.02~3質量%配合することが好ましく、さらに0.02~1質量%配合することが好ましい。
【0013】
[クインスシードエキス]
クインスシードエキスは、マルメロ(Pyrus cydonia)の種子抽出物であり、通常の皮膚外用剤に配合し得るものであれば特に限定されない。
【0014】
上記植物の抽出物を調製する際には、生の植物をそのまま、若しくは乾燥させて用いる。細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが抽出効率の観点から好ましい。抽出溶媒としては、水、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル,酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、生理食塩水,リン酸緩衝液,リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。中でも、水を用いることが好ましい。
【0015】
上記溶媒による抽出物は、そのままでも用いることができるが、濃縮、乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いはそれらの皮膚生理機能向上作用を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行ったり、カラムクロマトグラフィーによる分画処理を行った後に用いてもよい。また、抽出物を酸、アルカリ、酵素などを用いて加水分解したものを用いてもよい。また保存のため、精製処理の後凍結乾燥し、用時に溶媒に溶解して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~30倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温または還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0016】
本発明の皮膚外用剤におけるクインスシードエキスの配合量は、エキス純分として皮膚外用剤全量に対して0.03~2質量%が好ましく、0.05~2質量%がさらに好ましい。皮膚外用剤全量に対して0.03質量%未満の配合量であると十分な効果を得られない。また、2質量%を超えて配合すると、曵糸性が高くなりすぎ、使用感が損なわれる場合がある。
【0017】
[多価アルコール]
多価アルコールは、通常皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されない。具体的な多価アルコールとしては、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール(BG)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(イソプレングリコール)、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリン等のほか、スクロース、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、グリコシルトレハロース等の糖類が挙げられる。これらの中でもグリセリン、1,3-ブタンジオールから選択される1種又は2種を配合することが好ましい。
【0018】
本発明の皮膚外用剤における多価アルコールの配合量は皮膚外用剤全量に対して、5~50質量%が好ましい。
【0019】
[水]
本発明に用いられる水は、通常皮膚外用剤に使用される精製水の他、海洋深層水、温泉水、ローズ水やラベンダー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤における水の配合量は特に限定されないが、30~90質量%が好ましい。
【0021】
本発明の皮膚外用剤には、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、必須成分以外の油剤や、水性成分、水溶性増粘剤、粉体、タンパク質,ムコ多糖,コラーゲン,エラスチン等の保湿剤、α-トコフェロール,アスコルビン酸等の酸化防止剤、ビタミン類,消炎剤,生薬等の美容成分、パラオキシ安息香酸エステル,フェノキシエタノール等の防腐剤、香料、色材等を適宜含有することができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、特に限定されず、水系、乳化型等いずれの剤型でもよいが、外観的特徴から、特に水性化粧料として有用である。
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例0024】
まず、調製した皮膚外用剤の評価方法を説明する。
【0025】
[安定性]
調製した実施例及び比較例にかかるパール光沢を呈する皮膚外用剤を40℃の恒温槽で6か月間保管した後、それぞれのサンプルの経時変化を目視評価した。良好なものを「○」、沈殿や分離が認められ、良好でないものを「×」とした。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示したとおり、モノエステルを70%以上含有するステアリン酸グリセリル、親水性ノニオン界面活性剤、多価アルコールおよび水を含有するパール光沢を呈する皮膚外用剤にクインスシードエキスをエキス純分として0.03~2質量%配合することにより、長期にわたり安定性が良好なパール光沢を呈する皮膚外用剤を得ることができた。一方、クインスシードエキスが0.03質量%未満の比較例1~3では沈殿が見られた。