(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062505
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240501BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240501BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240501BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240501BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20240501BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B29C64/118
B33Y30/00
B29C64/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170371
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】渡部 学
(72)【発明者】
【氏名】大村 眞
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP05
4F213AR06
4F213AR11
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL62
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる三次元造形装置を提供すること。
【解決手段】ステージと、結晶性樹脂を含む第1材料と非結晶性樹脂を含む第2材料とを選択的に造形材料としてステージの上方へ吐出する吐出部と、ステージと吐出部とを相対移動させる移動部と、制御部とを備え、制御部は、造形材料として第1材料を用いて複数のスライス層を積層させる場合、第1積層処理を行い、造形材料として第2材料を用いて複数のスライス層を積層させる場合、第2積層処理を行い、第1積層処理は、第1スライス層形成処理と、第1吐出停止処理と、第1温度検出処理と、第2スライス層形成処理を含み、第2積層処理は、第3スライス層形成処理と、第2吐出停止処理と、第1判定処理と、第4スライス層形成処理を含む、三次元造形装置。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスライス層を予め決められた形状の三次元造形物として積層させる三次元造形装置であって、
ステージと、
結晶性樹脂を含む第1材料と、非結晶性樹脂を含む第2材料とを選択的に造形材料として前記ステージの上方へ吐出する吐出部と、
前記ステージと前記吐出部とを相対移動させる移動部と、
前記吐出部と前記移動部とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記造形材料として前記第2材料を用いずに前記第1材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、前記造形材料として前記第1材料を用いずに前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行い、
前記第1積層処理は、
前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第1スライス層形成処理と、
前記第1スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第1吐出停止処理と、
前記第1吐出停止処理が終わった後、前記n-1番目のスライス層の測定領域の温度を温度検出部に検出させる第1温度検出処理と、
前記第1温度検出処理において前記温度検出部により検出された温度が予め決められた閾値以下である場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第2スライス層形成処理と、
を含み、
前記第2積層処理は、
前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第3スライス層形成処理と、
前記第3スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第2吐出停止処理と、
前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する第1判定処理と、
前記第1判定処理において前記第1タイミングから前記待機時間が経過したと判定した場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第4スライス層形成処理と、
を含み、
nは、2以上の整数である、
三次元造形装置。
【請求項2】
前記三次元造形物の形状が第1形状である場合において、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第4スライス層形成処理が開始されるまでの時間は、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第2スライス層形成処理が開始されるまでの時間よりも短い、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記造形材料を固体の状態で貯留し、前記造形材料を識別する識別情報を有する材料貯留部を更に備え、
前記制御部は、前記材料貯留部が有する前記識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報により識別される前記造形材料が結晶性樹脂を含むか否かを判定する、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記第1材料の融点以下の温度であり、且つ、前記第1材料の再結晶化温度以上の温度である、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記閾値は、前記第1材料の再結晶化温度よりも前記第1材料の融点に近い温度である、
請求項4に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
前記複数のスライス層のそれぞれは、造形体に含まれる造形領域と、支持体に含まれる支持領域とのうちのいずれか一方又は両方を含み、
前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記複数のスライス層のうち前記造形領域を含む1以上の第1スライス層の積層について、第3積層処理を行い、
前記第3積層処理は、
前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第1スライス層のうちm-1番目の第1スライス層を前記ステージの上方に積層させる第5スライス層形成処理と、
前記第5スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第3吐出停止処理と、
前記第3吐出停止処理が終わった後、前記m-1番目の第1スライス層の測定領域の温度を前記温度検出部に検出させる第2温度検出処理と、
前記第2温度検出処理において前記温度検出部により検出された温度が前記閾値以下である場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第1スライス層のうちm番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第6スライス層形成処理と、
を含み、
mは、2以上の整数であり、
前記1以上の第1スライス層それぞれの測定領域は、前記造形領域に含まれている、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記複数のスライス層のうち前記造形領域を含まない1以上の第2スライス層の積層について、第4積層処理を行い、
前記第4積層処理は、
前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第2スライス層のうちl-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第7スライス層形成処理と、
前記第7スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第4吐出停止処理と、
前記第4吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止に応じた第2タイミングから前記待機時間が経過したか否かを判定する第2判定処理と、
前記第2判定処理において前記第2タイミングから前記待機時間が経過したと判定した場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第2スライス層のうちl番目の第2スライス層を前記ステージの上方に積層させる第8スライス層形成処理と、
を含み、
lは、2以上の整数である、
請求項6に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
前記複数のスライス層のそれぞれは、造形体に含まれる造形領域と、支持体に含まれる支持領域とのうちのいずれか一方又は両方を含み、
前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記第1積層処理を行う、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数のスライス層の積層が終了するまでに要する残り時間として予測される終了予測時間を算出する終了予測時間算出処理を行い、
前記終了予測時間算出処理は、
前記第1積層処理の実行中において、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止が行われる毎に、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第2スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第1計時時間として計時する第1計時処理と、
前記第1積層処理の実行中において、前記第1計時処理による計時が行われる毎に、現在までに前記第1計時処理によって計時された1以上の第1計時時間に基づいて、前記終了予測時間として第1終了予測時間を算出し、算出した前記第1終了予測時間を示す第1終了予測時間情報を記憶部に記憶させる第1終了時刻記憶処理と、
前記第2積層処理の実行中において、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止が行われる毎に、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第4スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第2計時時間として計時する第2計時処理と、
前記第2積層処理の実行中において、前記第2計時処理による計時が行われる毎に、現在までに前記第2計時処理によって計時された1以上の第2計時時間に基づいて、前記終了予測時間として第2終了予測時間を算出し、算出した前記第2終了予測時間を示す第2終了予測時間情報を前記記憶部に記憶させる第2終了時刻記憶処理と、
を含む、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項10】
前記第2積層処理は、前記n-1番目のスライス層の形状に応じた時間を前記待機時間として特定する待機時間特定処理を含む、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部を溶融した造形材料を積層して三次元造形物を造形する三次元造形装置についての研究、開発が行われている。
【0003】
これに関し、三次元造形装置であって、ステージと、溶融した材料をステージに向かって吐出する吐出部と、ステージと吐出部との相対的な位置を変更する位置変更部と、ステージに吐出された材料の温度を調整する温度調整部と、ステージに吐出された材料の温度を計測する温度センサーと、材料の温度と材料の粘度との関係を表す第1関係データが記憶された記憶部と、吐出部と位置変更部と温度調整部とを制御することによって、ステージ上に第1造形物と第2造形物とを形成する制御部と、を備え、制御部は、吐出部から材料を吐出することによって、第1造形物を造形する第1制御と、温度センサーによって計測される第1造形物の温度と第1関係データとに基づいて算出される第1造形物の粘度が予め定められた粘度以下になるように、温度センサーによって第1造形物の温度を計測しつつ温度調整部の出力を調整する第2制御と、吐出部から材料を吐出することによって、第2造形物のうちの第1部分を形成する第3制御と、第2制御において調整された出力で温度調整部によって第1部分の温度を調整しつつ吐出部から材料を吐出することによって、第2造形物のうちの第1部分に隣り合う部分である第2部分を形成する第4制御と、を実行する、三次元造形装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成により、特許文献1に記載された三次元造形装置は、造形物間の密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、造形物の上に造形物を重ねた場合において造形物が変形してしまうことを抑制することができる。しかしながら、造形物の温度の低下速度は、吐出部から吐出される材料の種類と、三次元造形物の形状とのそれぞれに応じて決まる。このため、当該三次元造形装置では、造形物として吐出される材料の種類と、造形する三次元造形物の形状とに応じて、無制限にサイクルタイムが増大してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、複数のスライス層を予め決められた形状の三次元造形物として積層させる三次元造形装置であって、ステージと、結晶性樹脂を含む第1材料と、非結晶性樹脂を含む第2材料とを選択的に造形材料として前記ステージの上方へ吐出する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対移動させる移動部と、前記吐出部と前記移動部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記造形材料として前記第2材料を用いずに前記第1材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、前記造形材料として前記第1材料を用いずに前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行い、前記第1積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第1スライス層形成処理と、前記第1スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第1吐出停止処理と、前記第1吐出停止処理が終わった後、前記n-1番目のスライス層の測定領域の温度を温度検出部に検出させる第1温度検出処理と、前記第1温度検出処理において前記温度検出部により検出された温度が予め決められた閾値以下である場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第2スライス層形成処理と、を含み、前記第2積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第3スライス層形成処理と、前記第3スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第2吐出停止処理と、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する第1判定処理と、前記第1判定処理において前記第1タイミングから前記待機時間が経過したと判定した場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第4スライス層形成処理と、を含み、nは、2以上の整数である、三次元造形装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】n番目のスライス層Lnに予め決められた測定領域の一例を示す図である。
【
図3】制御装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置60の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】制御装置60が造形制御を行う処理の流れの一例を示す図である。
【
図6】
図5に示したステップS160において実行される第1積層処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】
図5に示したステップS180において実行される第2積層処理の流れの一例を示す図である。
【
図8】
図5に示したステップS210において実行される混成積層処理の流れの一例を示す図である。
【
図9】
図8に示したステップS213において実行される第3積層処理の流れの一例を示す図である。
【
図10】
図8に示したステップS214において実行される第4積層処理の流れの一例を示す図である。
【
図11】制御装置60が行う終了予測時間算出処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
<三次元造形装置の概要>
まず、実施形態に係る三次元造形装置の概要について説明する。
【0010】
実施形態に係る三次元造形装置は、複数のスライス層を予め決められた形状の三次元造形物として積層させる。三次元造形装置は、ステージと、吐出部と、移動部と、制御部を備える。吐出部は、結晶性樹脂を含む第1材料と、非結晶性樹脂を含む第2材料とのそれぞれを選択的に造形材料としてステージの上方へ吐出する。移動部は、ステージと吐出部とを相対移動させる。制御部は、吐出部と移動部とを制御する。そして、制御部は、造形材料として第2材料を用いずに第1材料を用いて複数のスライス層を三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、造形材料として第1材料を用いずに第2材料を用いて複数のスライス層を三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行う。ここで、第1積層処理は、第1スライス層形成処理と、第1と出停止処理と、第1温度検出処理と、第2スライス層形成処理を含む。第1スライス層形成処理は、吐出部及び移動部を制御し、複数のスライス層のうちn-1番目のスライス層をステージの上方に積層させる処理である。第1吐出停止処理は、第1スライス層形成処理が終わった後、造形材料の吐出を吐出部に停止させる処理である。第1温度検出処理は、第1吐出停止処理が終わった後、n-1番目のスライス層の測定領域の温度を検出部に検出させる処理である。第2スライス層形成処理は、第1温度検出処理において検出部により検出された温度が予め決められた閾値以下である場合、吐出部及び移動部を制御し、複数のスライス層のうちn番目のスライス層をステージの上方に積層させる処理である。第2積層処理は、第3スライス層形成処理と、第2吐出停止処理と、第1判定処理と、第4スライス層形成処理を含む。第3スライス層形成処理は、吐出部及び移動部を制御し、n-1番目のスライス層をステージの上方に積層させる処理である。第2と出停止処理は、第3スライス層形成処理が終わった後、造形材料の吐出を吐出部に停止させる処理である。第1判定処理は、第2吐出停止処理による吐出部からの造形材料の吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する処理である。第4スライス層形成処理は、第1判定処理において第1タイミングから待機時間が経過したと判定した場合、吐出部及び移動部を制御し、n番目のスライス層をステージの上方に積層させる処理である。なお、nは、2以上の整数である。これにより、三次元造形装置は、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0011】
以下では、実施形態に係る三次元造形装置の構成と、当該三次元造形装置が備える制御装置の構成と、当該制御装置が行う処理とについて詳しく説明する。
【0012】
<三次元造形装置の構成>
以下、実施形態に係る三次元造形装置の構成について、三次元造形装置1を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、三次元造形装置1の構成の一例を示す図である。
【0014】
ここで、三次元座標系TCは、三次元座標系TCが描かれた図における方向を示す三次元直交座標系である。以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるX軸を、単にX軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるY軸を、単にY軸と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、三次元座標系TCにおけるZ軸を、単にZ軸と称して説明する。また、以下では、一例として、Z軸の負方向が重力方向と一致している場合について説明する。このため、以下では、説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し、Z軸の負方向を下方向又は単に下と称して説明する。
【0015】
三次元造形装置1は、ノズルNzを有する吐出部10と、三次元造形物が造形される造形面21を有するステージ20と、移動部30と、加熱部40と、温度検出部50と、制御装置60と、データ生成装置70を備える。なお、三次元造形装置1において、制御装置60は、データ生成装置70と一体に構成されてもよい。また、三次元造形装置1は、データ生成装置70を備えない構成であってもよい。この場合、データ生成装置70は、三次元造形装置1の制御装置60へ外部から通信可能に接続される。また、三次元造形装置1は、制御装置60とデータ生成装置70とを備えない構成であってもよい。この場合、制御装置60は、三次元造形装置1へ外部から通信可能に接続される。また、この場合、データ生成装置70は、制御装置60へ外部から通信可能に接続される。
【0016】
三次元造形装置1は、ステージ20の造形面21上に向かって吐出部10から図示しない造形材料Xを吐出させつつ、吐出部10とステージ20との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置1は、N個のスライス層Lを積層させて1個の予め決められた形状の三次元造形物を造形する。ここで、Nは、1以上の整数であれば、如何なる整数であってもよい。この場合、N個のスライス層Lのうち下から数えて1番目のスライス層Lは、造形面21上に積層される。また、造形面21上に積層されるN個のスライス層Lのそれぞれは、造形面21と平行な造形パスに沿って吐出された造形材料Xのことである。また、造形パスは、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。すなわち、三次元造形装置1は、N個のスライス層Lのうちのn番目のスライス層Lの造形パスに沿って造形材料Xを吐出部10によって吐出し、n番目のスライス層Lをn-1番目のスライス層Lの上に積層させる。なお、nは、1以上N以下のいずれかの整数である。また、N個のスライス層Lのそれぞれは、単一の層によって構成されてもよく、積層された複数の層によって構成されてもよい。ここで、あるスライス層Lの造形パスには、当該スライス層Lの輪郭に沿ったノズルNzの走査経路であるアウトライン経路と、当該アウトライン経路に囲まれた領域内におけるノズルNzの走査経路であるインフィル経路とが含まれている。すなわち、あるスライス層Lは、当該スライス層Lのアウトライン経路に沿って吐出された造形材料Xと、当該スライス層Lのインフィル経路に沿って吐出された造形材料Xとによって構成される。
【0017】
また、三次元造形装置1は、特性が互いに異なる第1材料と第2材料との2種類の材料をノズルNzから造形材料Xとして選択的に吐出することができる。これにより、三次元造形装置1は、これら2種類の材料のうちの少なくとも一方によって造形された三次元造形物を造形することができる。ここで、第1材料は、結晶性樹脂を含む材料のことである。また、第2材料は、非結晶性樹脂を含む材料のことである。以下では、一例として、結晶性樹脂が、POM(Polyoxymethylene)である場合について説明する。なお、結晶性樹脂は、POMに代えて、PA12(ポリアミド12)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PSU(ポリスルホン)、PA66(ポリアミド66)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PSF(ポリサルホン)、PA6(ポリアミド6)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の他の種類の結晶性樹脂であってもよい。また、以下では、一例として、非結晶性樹脂が、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)である場合について説明する。なお、非結晶性樹脂は、ABSに代えて、他の種類の非結晶性樹脂であってもよい。
【0018】
三次元造形装置1は、このような三次元造形物の造形を行う造形制御を、三次元造形用データに基づいて行う。ここで、三次元造形装置1は、受け付けた操作に応じて、三次元造形用データを生成する。三次元造形用データは、N個のスライス層Lを予め決められた形状の三次元造形物として三次元造形装置1に積層させるためのデータである。三次元造形装置1には、当該形状を示す形状データが記憶されている。形状データは、例えば、当該形状を示すデータであれば、如何なるデータであってもよく、例えば、STL(Stereolithography)データである。三次元造形装置1は、受け付けた操作と、形状データとに基づいて、形状データが示す形状を有する仮想的な造形体と、造形体を支持するために造形体に付加される仮想的な支持体とのうち、少なくとも造形体を含む仮想的なオブジェクトを示すオブジェクトデータを生成する。造形体は、積層されるN個のスライス層Lが有する部分のうち、1個の三次元造形物としてN個のスライス層Lから切り離される部分のことである。また、支持体は、積層されたN個のスライス層Lが有する部分のうち、造形体を支持する部分のことである。
【0019】
オブジェクトデータを生成した後、三次元造形装置1は、生成したオブジェクトデータを記憶する。オブジェクトデータを記憶した後、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、オブジェクトをN個のスライス層VLに仮想的にスライスする。このように三次元造形装置1によりオブジェクトが仮想的にスライスされたN個のスライス層VLのそれぞれは、前述のN個のスライス層Lのそれぞれに対応する。そこで、以下では、説明の便宜上、これらN個のスライス層VLのうちn番目のスライス層VLを、スライス層VLnと称し、前述のN個のスライス層Lのうちn番目のスライス層Lを、スライス層Lnと称して説明する。この場合、例えば、1番目のスライス層VL1は、1番目のスライス層L1に対応する。ここで、スライス条件情報は、三次元造形装置1が記憶したオブジェクトデータが示すオブジェクトをN個のスライス層VLに仮想的にスライスするためのスライス条件を示す情報のことである。スライス条件情報には、N個のスライス層VLの数を示す情報、N個のスライス層VLのそれぞれの厚みを示す情報等の情報が、スライス条件を示す情報として含まれている。
【0020】
オブジェクトを仮想的にスライスした後、三次元造形装置1は、造形パス生成条件情報に基づいて、スライスしたN個のスライス層VLのそれぞれ毎に、スライス層VLの造形パスを生成する。造形パスは、前述した通り、造形材料Xを吐出しながら移動するノズルNzのステージ20に対する走査経路のことである。このため、n番目のスライス層VLnの造形パスに沿って吐出された造形材料Xが、スライス層VLnに対応する現実のスライス層Lnのことである。
【0021】
ここで、n番目のスライス層VLnは、オブジェクトに含まれる造形体と支持体とのうちの少なくとも一方がスライスされたスライス層のうちの1つである。このため、n番目のスライス層VLnには、造形体がスライスされた部分と、支持体がスライスされた部分とのうちの少なくとも一方が含まれている。n番目のスライス層VLnに含まれる部分のうち造形体がスライスされた部分は、換言すると、n番目のスライス層VLnに含まれる領域のうち造形体に含まれる造形領域のことである。また、n番目のスライス層VLnに含まれる部分のうち支持体がスライスされた部分は、換言すると、n番目のスライス層VLnに含まれる領域のうち支持体に含まれる支持領域のことである。すなわち、n番目のスライス層VLnは、造形体領域の層と、支持体領域の層とのうちの少なくとも一方を含んでいる。そして、造形領域の層は、第1ソリッド層、造形層の2種類に分類される。第1ソリッド層は、造形体のソリッド層のことである。造形体は、第1ソリッド層と、第1ソリッド層と第1ソリッド層との間に積層される造形層とによって構成される。すなわち、造形体は、第1ソリッド層と、造形層とを積層させることによって造形される。また、支持領域の層は、第2ソリッド層、支持層、ラフト層の3種類に分類される。第2ソリッド層は、支持体のソリッド層のことである。ラフト層は、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のそれぞれが積層される土台となる層のことである。支持体は、第2ソリッド層と、第2ソリッド層と第2ソリッド層との間に積層される支持層と、ラフト層とによって構成される。すなわち、支持体は、第2ソリッド層と、支持層と、ラフト層とを積層させることによって造形される。例えば、ある造形体の形状がオーバーハングを有する形状である場合、当該造形体が有する部分のうちオーバーハングの部分は、このような支持体により支持される。以上のことから、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層によって分類される。例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層のみを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、第1ソリッド層である。また、例えば、n番目のスライス層VLnが第1ソリッド層と第2ソリッド層とを含んでいる場合、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち造形体がスライスされた層の種類と、n番目のスライス層VLnに含まれる層のうち支持体がスライスされた層の種類との組み合わせ、すなわち、第1ソリッド層と第2ソリッド層との組み合わせによって表される。そして、n番目のスライス層VLnの種類は、n番目のスライス層Lnの種類でもある。このため、三次元造形装置1は、スライス条件情報に基づいて、n番目のスライス層VLnの種類を特定することができるとともに、スライス層Lnの種類を特定することができる。なお、以下では、説明の便宜上、N個のスライス層VLのうち造形領域を含み、且つ、支持領域を含まない1以上のスライス層VLのことを、造形体スライス層と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、N個のスライス層VLのうち造形領域を含み、且つ、支持領域を含む1以上のスライス層VLのことを、混成スライス層と称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、N個のスライス層VLのうち造形領域を含まず、且つ、支持領域を含む1以上のスライス層VLのそれぞれを、支持体スライス層と称して説明する。ただし、N個のスライス層VLには、支持体スライス層が含まれていてもよく、支持体スライス層が含まれていなくてもよい。
【0022】
N個のスライス層VLそれぞれの造形パスを生成した後、三次元造形装置1は、生成したN個のスライス層VLそれぞれの造形パスを示す造形パス情報を含む三次元造形用データを生成する。ここで、造形パス生成条件情報は、N個のスライス層VLそれぞれの造形パスを生成するための造形パス生成条件を示す情報のことである。造形パス生成条件情報には、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの形状を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの幅を示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスの厚みを示す情報、N個のスライス層VLそれぞれの種類毎の造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合におけるノズルNzの移動速度を示す情報、ノズルNzから吐出する造形材料Xの種類を示す情報等の情報が含まれている。また、ある造形パスを示す造形パス情報には、当該造形パスの幅を示す情報、当該造形パスの厚みを示す情報、当該造形パスに沿って造形材料Xを吐出する場合のノズルNzの移動速度を示す情報等の他の情報が含まれている。
【0023】
なお、三次元造形装置1では、前述のスライス条件情報には、N個のスライス層VLのうちのn-1番目のスライス層VLn-1の種類を示すn-1番目スライス層種類情報と、N個のスライス層VLのうちn-1番目のスライス層VLn-1の上に積層されるn番目のスライス層VLnの種類を示すn番目スライス層種類情報とが含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0024】
ここで、N個のスライス層Lのうちのラフト層のスライス層Lは、他の層のスライス層Lの土台として造形面21と、他の層との間に形成される層であり、造形材料Xによって塗り潰された層のことである。当該他の層は、N個のスライス層Lのうちラフト層の上に積層される個々のスライス層Lのことであり、具体的には、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部のスライス層Lのことである。当該他の層は、造形面21と接するように造形面21上に積層された場合、造形面21から剥がれ難くなることがある。また、当該他の層は、当該場合、精度よく定着させることができないことがある。また、当該他の層には、当該場合、残存応力が残ってしまうことがある。これらの問題を解決するために当該他の層と造形面21との間に積層される層が、ラフト層のスライス層Lである。また、ソリッド層、造形層、支持層それぞれのスライス層Lは、予め決められた外形状の輪郭に沿って吐出された造形材料Xであるアウトラインと、アウトラインによって囲まれた領域内に吐出される造形材料Xであるインフィルとによって形成される。換言すると、ソリッド層、造形層、支持層それぞれのスライス層Lは、前述のアウトライン経路に沿って吐出される造形材料Xであるアウトラインと、前述のインフィル経路に沿って吐出される造形材料Xであるインフィルとによって形成される。そして、ソリッド層のスライス層Lは、ソリッド層のスライス層Lのアウトラインによって囲まれた領域内が、インフィルによって略隙間無く塗り潰された層のことである。換言すると、ソリッド層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%の層のことである。なお、第1ソリッド層のスライス層Lは、造形体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことである。また、第2ソリッド層のスライス層Lは、支持体の表面を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。一方、造形層のスライス層Lは、造形層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、造形層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、造形層のスライス層Lは、造形体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。また、支持層のスライス層Lは、支持層のアウトラインによって囲まれた領域内にインフィルが含まれ、当該領域内にインフィルが充填されていない領域が存在する層のことである。換言すると、支持層のスライス層Lは、当該領域内におけるインフィルの充填率が100%未満の層のことである。また、支持層のスライス層Lnは、支持体の内部を形成する造形材料Xを含む1個以上の層のことであると換言することもできる。
【0025】
三次元造形装置1は、以上のようにして生成した三次元造形用データに基づいて、三次元造形物を造形する造形制御を行う。また、三次元造形装置1は、造形制御において造形面21上にN個のスライス層Lを積層させる場合、ラフト層、第1ソリッド層、造形層、第2ソリッド層、支持層のうちの一部又は全部によって表される種類のスライス層Lとして、N個のスライス層Lのそれぞれを吐出部10によって造形面21上に吐出し、N個のスライス層Lを積層させて1個の三次元造形物を造形する。
【0026】
ここで、三次元造形装置1と異なる三次元造形装置X1は、ステージの上方にスライス層が積層される毎に、積層されたスライス層の温度を検出し、検出した温度が予め決められた閾値以下となるまで待機することがある。これは、先に積層されたスライス層の上に次のスライス層を積層させた場合における層間密着性の低下の抑制と、当該場合において、先に積層されたスライス層が変形し、三次元造形物の造形精度が低下してしまうことを抑制することとを実現するための処理である。しかしながら、スライス層の温度の低下速度は、スライス層として吐出される材料の種類と、造形する三次元造形物の形状とのそれぞれに応じて決まる。このため、三次元造形装置X1では、スライス層として吐出される材料の種類と、三次元造形物の形状とに応じて、無制限にサイクルタイムが増大してしまう場合があった。
【0027】
そこで、三次元造形装置1は、三次元造形物を造形する造形制御において、造形材料Xとして第2材料を用いずに第1材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、造形材料Xとして第1材料を用いずに第2材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行う。ここで、第1積層処理は、第1スライス層形成処理と、第1吐出停止処理と、第1温度検出処理と、第2スライス層形成処理を含む。第1スライス層形成処理は、吐出部10及び移動部30を制御し、N個のスライス層のうちn-1番目のスライス層をステージ20の上方に積層させる処理である。第1吐出停止処理は、第1スライス層形成処理が終わった後、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる処理である。第1温度検出処理は、第1吐出停止処理が終わった後、n-1番目のスライス層の測定領域の温度を温度検出部50に検出させる処理である。また、第2スライス層形成処理は、第1温度検出処理において温度検出部50により検出された温度が予め決められた閾値TH以下である場合、吐出部10及び移動部30を制御し、n番目のスライス層Lをステージ20の上方に積層させる処理である。また、第2積層処理は、第3スライス層形成処理と、第2吐出停止処理と、第1判定処理と、第4スライス層形成処理を含む。第3スライス層形成処理は、吐出部10及び移動部30を制御し、N個のスライス層のうちn-1番目のスライス層Lをステージ20の上方に積層させる処理である。第2吐出停止処理は、第3スライス層形成処理が終わった後、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる処理である。第1判定処理は、第2吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する処理である。また、第4スライス層形成処理は、第1判定処理において第1タイミングから待機時間が経過したと判定した場合、吐出部10及び移動部30を制御し、N個のスライス層のうちn番目のスライス層をステージ20の上方に積層させる処理である。これにより、三次元造形装置1は、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0028】
吐出部10は、第1材料と第2材料とのそれぞれを選択的に造形材料Xとして造形面21上に吐出する吐出装置である。吐出部10は、ノズルNzとして、第1ノズルと第2ノズルとの2つのノズルを備える。そして、吐出部10は、このようなノズルNzとともに、1種類以上の材料を溶融させて第1材料とする第1材料溶融部と、1種類以上の材料を溶融させて第2材料とする第2材料溶融部と、第1材料供給部と、第2材料供給部を有する。ここで、吐出部10において、第1材料供給部と第1材料溶融部との間は、第1供給路によって接続される。また、吐出部10において、第2材料供給部と第2材料溶融部との間は、第2供給路によって接続される。また、第1材料溶融部と第1ノズルとの間は、第1連通孔によって接続される。第1ノズルは、第1連通孔を通って第1材料溶融部から供給される第1材料を造形材料Xとして先端から吐出する。また、第2材料溶融部と第2ノズルとの間は、第2連通孔によって接続される。第2ノズルは、第2連通孔を通って第2材料溶融部から供給される第2材料を造形材料Xとして先端から吐出する。なお、吐出部10は、第1ノズルと第2ノズルとの2つのノズルをノズルNzとして備える構成に代えて、単一のノズルをノズルNzとして備える構成であってもよい。この場合、吐出部10は、ノズルNz、第1材料溶融部、第2材料溶融部、第1材料供給部、第2材料供給部のそれぞれとともに、材料供給切替部を有する。材料供給切替部は、連通孔を介してノズルNzへ造形材料Xとして供給する材料を、第1材料溶融部から供給される第1材料と、第2材料溶融部から供給される第2材料とのいずれかに切り替える。ここで、この場合、吐出部10において、第2材料供給部と第2材料溶融部との間は、第2供給路によって接続される。また、第1材料溶融部と材料供給切替部との間は、第3供給路によって接続される。また、第2材料溶融部と材料供給切替部との間は、第4供給路によって接続される。また、材料供給切替部とノズルNzとの間は、連通孔によって接続される。なお、ノズルNzは、連通孔を通って材料供給切替部から供給される造形材料Xを先端から吐出する。
【0029】
ここで、三次元造形装置1は、n-1番目のスライス層Ln-1の上にn番目のスライス層Lnを積層する場合、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を変更することにより、n-1番目のスライス層Ln-1の上面に吐出する造形材料Xの幅と、n-1番目のスライス層Ln-1の上面に吐出する造形材料Xの厚みとの少なくとも一方を変化させる。ただし、三次元造形装置1によりn番目のスライス層Lnの上面に吐出される造形材料Xの幅の最大値は、ノズルNzの先端の外径である。これは、n-1番目のスライス層Ln-1の上面とノズルNzの先端との距離を、ノズルNzの先端の内径よりも短くすると、ノズルNzの先端から吐出される造形材料Xが、ノズルNzの先端によって押し潰されながらn-1番目の造形層の上面に吐出されることになるからである。
【0030】
第1材料供給部には、第1材料となる材料として、ペレット、粉末等の状態の1種類以上の材料が収容される。以下では、一例として、第1材料供給部に収容される材料が、ペレット状の結晶性樹脂を含む場合について説明する。第1材料供給部は、例えば、ホッパーによって構成される。第1材料供給部に収容された材料は、第1材料供給部の下方に設けられた第1供給路を介して、第1材料溶融部に供給される。なお、第1材料供給部は、第1材料貯留部として、三次元造形装置1と脱着可能な構成であってもよい。例えば、このような第1材料貯留部は、第1材料貯留部に貯留された材料により生成される造形材料Xを識別する第1識別情報を有する。この場合、三次元造形装置1は、第1材料貯留部が有する第1識別情報を読み取る第1読取部を備える。これにより、三次元造形装置1は、第1読取部が読み取った第1識別情報により識別される造形材料Xが結晶性樹脂を含むか否かを判別することができる。ここで、第1識別情報は、バーコード、二次元バーコード等の符号化されたコードであってもよく、当該造形材料Xを識別可能な他の種類の情報であってもよい。
【0031】
第2材料供給部には、第2材料となる材料として、ペレット、粉末等の状態の1種類以上の材料が収容される。以下では、一例として、第2材料供給部に収容される材料が、ペレット状の非結晶性樹脂を含む場合について説明する。第2材料供給部は、例えば、ホッパーによって構成される。第2材料供給部に収容された材料は、第2材料供給部の下方に設けられた第2供給路を介して、第2材料溶融部に供給される。なお、第2材料供給部は、第2材料貯留部として、三次元造形装置1と脱着可能な構成であってもよい。例えば、このような第2材料貯留部は、第2材料貯留部に貯留された材料により生成される造形材料Xを識別する第2識別情報を有する。この場合、三次元造形装置1は、第2材料貯留部が有する第2識別情報を読み取る第2読取部を備える。これにより、三次元造形装置1は、第2読取部が読み取った第2識別情報により識別される造形材料Xが結晶性樹脂を含むか否かを判別することができる。ここで、第2識別情報は、バーコード、二次元バーコード等の符号化されたコードであってもよく、当該造形材料Xを識別可能な他の種類の情報であってもよい。
【0032】
第1材料溶融部は、スクリューケースと、スクリューケース内に収容されたフラットスクリューと、フラットスクリューを駆動させる駆動モーターと、スクリューケース内においてフラットスクリューよりも下方に固定されたバレルを備える。
【0033】
フラットスクリューは、扁平な円柱形状を有し、円柱の外周から円柱の中心軸に向かう渦状の溝部が円柱の底面に形成されたスクリューである。
【0034】
バレルには、第3供給路が設けられている。また、バレルには、ヒーターが内蔵されている。ヒーターの温度は、制御装置60によって制御される。
【0035】
回転しているフラットスクリューと、バレルとの間に供給された材料は、フラットスクリューの回転と、バレルに内蔵されたヒーターによる加熱とによって、少なくとも一部が溶融されて、流動性を有するペースト状の第1材料となる。ペースト状の第1材料は、フラットスクリューの回転によって、バレルに設けられた第1連通孔を介して第1ノズルに供給される。そして、第1ノズルに供給された第1材料は、造形材料Xとして第1ノズルの先端からステージ20に向かって吐出される。
【0036】
第2材料溶融部は、第1材料溶融部の構成と同様の構成を有する。このため、以下では、第2材料溶融部についての詳細な説明を省略する。第2材料溶融部においてペースト状にされた第2材料は、フラットスクリューの回転によって、バレルに設けられた第2連通孔を介して第2ノズルに供給される。そして、第2ノズルに供給された第2材料は、造形材料Xとして第2ノズルの先端からステージ20に向かって吐出される。
【0037】
なお、吐出部10は、このような構成に代えて、FDM(Fused Deposition Modeling)方式により第1材料と第2材料とを選択的に造形材料Xとして吐出可能な構成であってもよい。この場合、吐出部10は、ノズルNzに代えて、例えば、第1材料のフィラメントを溶融する第1溶融部と、第1溶融部により溶融されたフィラメントを吐出する第1エクストルーダーと、第2材料のフィラメントを溶融する第2溶融部と、第2溶融部により溶融されたフィラメントを吐出する第2エクストルーダーを備える。
【0038】
移動部30は、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。より具体的には、移動部30は、吐出部10とステージ20とのいずれか一方又は両方を移動させることにより、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる。以下では、一例として、移動部30が、ステージ20を移動させることにより、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させる場合について説明する。例えば、移動部30は、吐出部10をZ軸に沿って移動させる第1移動機構部31と、ステージ20を吐出部10に対してX軸及びY軸に沿って移動させる第2移動機構部32を備えている。本実施形態では、
図1に示した第1移動機構部31は、吐出部10をZ軸に沿って移動させる昇降装置によって構成され、吐出部10をZ軸に沿って移動させるためのモーターを有している。
図1に示した第2移動機構部32は、ステージ20をX軸及びY軸に沿って移動させる水平搬送装置によって構成され、ステージ20をX軸に沿って移動させるためのモーター、及び、ステージ20をY軸に沿って移動させるためのモーターを有している。第1移動機構部31及び第2移動機構部32は、制御装置60により制御される。なお、移動部30は、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させることに加えて、後述する温度検出部50とステージ20との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。この場合、移動部30は、吐出部10のノズルNzと温度検出部50との相対的な位置を変化させない構成であってもよく、吐出部10のノズルNzと温度検出部50との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。
図1に示した例では、温度検出部50は、吐出部10に設けられている。このため、当該例では、移動部30は、吐出部10のノズルNzとステージ20との相対的な位置を変化させることに加えて、後述する温度検出部50とステージ20との相対的な位置を変化させる。そして、当該例では、移動部30は、吐出部10のノズルNzと温度検出部50との相対的な位置を変化させない。
【0039】
加熱部40は、吐出部10により吐出された造形材料Xを含む対象領域を加熱する。ここで、対象領域は、造形面21上の領域のうち、1個の三次元造形物として造形面21上にN個のスライス層Lが積層された場合におけるN個のスライス層Lの全体を含む領域のことである。加熱部40は、対象領域を加熱可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。
図1に示した例では、加熱部40は、ステージ20の上面、すなわち、造形面21と対向する面を有し、対象領域を加熱する平板形状のパネルヒーターである。この場合、加熱部40は、平板形状の加熱部40が有する下面と、造形面21との間に挟まれた領域を対象領域として加熱する。なお、加熱部40は、制御装置60により制御される。また、
図1に示した例では、加熱部40には、前述のノズルNzが挿通される貫通孔が設けられている。このため、加熱部40は、ノズルNzの周囲に設けられており、ノズルNzとともに動く。なお、加熱部40は、パネルヒーターに代えて、温風を送り込むチャンバー方式のヒーターであってもよく、カートリッジヒーターであってもよく、対象領域内を加熱可能な他の如何なる種類のヒーターであってもよい。また、三次元造形装置1は、加熱部40を備えない構成であってもよい。
【0040】
温度検出部50は、造形面21上に積層されるスライス層Lの上面内の領域のうち予め決められた測定領域の温度を検出する温度センサーである。すなわち、温度検出部50は、n番目のスライス層Lnが造形面21上に積層された場合、n番目のスライス層Lnにおいて予め決められた測定領域の温度を検出する。温度検出部50は、当該場合において、当該測定領域の温度を検出可能な温度センサーであれば、如何なる温度センサーであってもよい。ここで、N個のスライス層Lのそれぞれには、予め決められた測定領域が含まれている。
図2は、n番目のスライス層Lnに予め決められた測定領域の一例を示す図である。
図2においてn番目のスライス層Ln上に示されている領域R1は、前述の造形領域の一例を示す。また、
図2においてn番目のスライス層Ln上に示されている領域R2は、前述の支持領域の一例を示す。そして、
図2に示した領域MRは、測定領域の一例を示す。
図2に示したように、測定領域は、造形領域に含まれる領域として決められる。n番目のスライス層Lnの測定領域は、n番目のスライス層Lnに含まれる領域のうち、n番目のスライス層Lnの平均的な温度と近い温度となり易い領域であれば、如何なる領域であってもよい。また、
図2に示した例では、測定領域の形状は、矩形状であるが、円形状、楕円形状等の他の形状であってもよい。また、N個のスライス層Lそれぞれの測定領域の輪郭は、N個のスライス層Lが造形面21上に積層された場合においてN個のスライス層Lを上から下に向かって見ると、造形誤差等によるずれを除いて略重なっている構成であってもよい。また、N個のスライス層Lのうちの一部又は全部の測定領域それぞれの輪郭は、N個のスライス層Lが造形面21上に積層された場合においてN個のスライス層Lを上から下に向かって見ると、重なっていない構成であってもよい。以下では、一例として、N個のスライス層Lそれぞれの測定領域の輪郭が、N個のスライス層Lが造形面21上に積層された場合においてN個のスライス層Lを上から下に向かって見ると、造形誤差等によるずれを除いて略重なっている場合について説明する。この場合、三次元造形用データには、XY平面上における測定領域の位置を示す測定領域位置情報が含まれている。XY平面は、X軸とY軸とのそれぞれによって張られる仮想的な平面のことである。
【0041】
また、温度検出部50は、加熱部40とともに吐出部10に設けられている。
図1に示した例では、温度検出部50は、加熱部40の下面に設けられている。このため、当該例では、温度検出部50と吐出部10との相対的な位置は、変化しない。そして、温度検出部50は、検出した温度を示す情報を制御装置60に出力する。なお、三次元造形装置1は、温度検出部50を備えない構成であってもよい。この場合、温度検出部50は、三次元造形装置1へ外部から通信可能に接続される。また、温度検出部50は、サーモグラフィーカメラであり、ステージ20の造形面21の温度とともに、造形面21上に載置された物体の温度を検出可能な構成であってもよい。また、温度検出部50は、n番目のスライス層Lnが造形面21上に積層された場合、n番目のスライス層Lnにおいて予め決められた測定領域の温度を検出する構成に代えて、n番目のスライス層Lnにおける他の領域の温度を検出する構成であってもよい。
【0042】
制御装置60は、三次元造形装置1の全体を制御する。制御装置60は、データ生成装置70によって生成された三次元造形用データを、ネットワーク又は記録媒体を介して取得する。制御装置60は、予め記憶された三次元造形用プログラムを実行することによって、三次元造形用データに応じて吐出部10と移動部30との動作を制御する造形制御を行うことにより、三次元造形物を造形する。なお、制御装置60は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0043】
前述の造形制御は、吐出部10、移動部30についての制御のことである。より具体的には、造形制御は、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて予め決められた形状の1個の三次元造形物を造形する制御のことである。ここで、N個のスライス層Lのうちのn番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1の上に積層される。この際、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Lnの上に積層された場合、n番目のスライス層Lnの熱によりn-1番目のスライス層Ln-1の一部を溶融させる。このため、n番目のスライス層Lnは、n-1番目のスライス層Ln-1と接合される。その結果、造形面21上において、N個のスライス層Lは、1個の三次元造形物として積層される。このため、実施形態では、0番目のスライス層L0は、造形面21のことを意味する。すなわち、実施形態において、1番目のスライス層L1は、0番目のスライス層L0、すなわち、造形面21の上に積層される。
【0044】
造形制御によってn番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させる場合、制御装置60は、吐出部10、移動部30を制御し、n番目のスライス層Lnに対応するn番目のスライス層VLnの造形パスに沿った造形材料Xの吐出を吐出部10によって行う。これにより、制御装置60は、n番目のスライス層Lnをn-1番目のスライス層Ln-1の上に積層させることができる。以上のような制御を造形制御として行うことにより、制御装置60は、造形材料Xの吐出を順に行い、造形面21上にN個のスライス層Lを積層させて、1個の三次元造形物を造形する。
【0045】
また、制御装置60は、造形制御において、造形材料Xとして第2材料を用いずに第1材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、造形材料Xとして第1材料を用いずに第2材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行う。これにより、制御装置60は、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0046】
図3は、制御装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0047】
制御装置60は、プロセッサー61と、記憶部62と、入力受付部63と、通信部64と、表示部65を備える。なお、制御装置60は、前述した通り、三次元造形装置1と別体に構成された情報処理装置であってもよい。この場合、三次元造形装置1は、この情報処理装置と通信可能に接続され、この情報処理装置により制御される。
【0048】
プロセッサー61は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、プロセッサー61は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサーであってもよい。また、プロセッサー61は、複数のプロセッサーにより構成されてもよい。プロセッサー61は、記憶部62に記憶された各種のプログラム、各種の命令等を実行することにより、制御装置60が有する各種の機能を実現する。
【0049】
記憶部62は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部62は、制御装置60に内蔵されるものに代えて、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部62は、制御装置60が処理する各種のプログラム、各種の命令、各種の情報等を記憶する。例えば、記憶部62は、三次元造形用データ等を記憶する。
【0050】
入力受付部63は、表示部65に表示された画像を見ながら行われるユーザーからの操作を受け付ける。入力受付部63は、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド等を含む入力装置である。なお、入力受付部63は、表示部65と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
【0051】
通信部64は、例えば、USB等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
【0052】
表示部65は、画像を表示する。表示部65は、制御装置60が備えるディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネル等を含む表示装置である。
【0053】
図4は、制御装置60の機能構成の一例を示す図である。
【0054】
制御装置60は、記憶部62と、入力受付部63と、通信部64と、表示部65と、制御部66を備える。
【0055】
制御部66は、制御装置60の全体を制御する。制御部66は、装置制御部661を備える。制御部66が備えるこれらの機能部は、例えば、プロセッサー61が、記憶部62に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0056】
装置制御部661は、三次元造形装置1の全体を制御する。例えば、装置制御部661は、吐出部10と、移動部30と、加熱部40とのそれぞれを制御する。
【0057】
データ生成装置70は、三次元造形装置1が三次元造形物を造形するために用いる三次元造形用データを生成する装置である。データ生成装置70は、上記において説明した三次元造形装置1が三次元造形用データを生成する方法により、三次元造形用データを生成する。このため、ここでは、当該方法の説明については、省略する。また、データ生成装置70は、受け付けた操作に応じて、上記の形状データを記憶する。なお、データ生成装置70は、形状データを生成可能であってもよく、形状データを生成不可能であってもよい。データ生成装置70が形状データを生成不可能である場合、データ生成装置70は、他の装置からネットワーク又は記憶媒体を介して形状データを取得する。また、データ生成装置70は、受け付けた操作に応じて、前述のスライス条件情報、造形パス生成条件情報、測定領域位置情報を記憶する。
【0058】
データ生成装置70は、例えば、ワークステーション、デスクトップPC(Personal Computer)、ノートPC、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。より具体的には、データ生成装置70は、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。
【0059】
<制御装置が造形制御を行う処理>
以下、
図5を参照し、制御装置60が造形制御を行う処理について説明する。
図5は、制御装置60が造形制御を行う処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、
図5に示したステップS110の処理が行われるよりも前のタイミングにおいて、三次元造形用データが記憶部62に記憶されている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、造形制御を制御装置60に開始させる操作を制御装置60が受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、以下において説明するステップS120の判定結果がYESとなる場合、当該タイミングにおいて、造形領域に吐出される造形材料Xとして第1材料を用い、且つ、支持領域に吐出される造形材料Xとして第2材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として三次元造形装置1に積層させる操作を制御装置60が予め決受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、以下において説明するステップS130の判定結果がYESとなる場合、当該タイミングにおいて、造形材料Xとして第1材料を用い、且つ、造形材料Xとして第2材料を用いずにN個のスライス層Lを三次元造形物として三次元造形装置1に積層させる操作を制御装置60が予め受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、以下において説明するステップS130の判定結果がNOとなる場合、当該タイミングにおいて、造形材料Xとして第1材料を用いず、且つ、造形材料Xとして第2材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として三次元造形装置1に積層させる操作を制御装置60が予め受け付けている場合について説明する。また、以下では、一例として、当該タイミングにおいて、前述の閾値THとして設定したい所望の目標温度を示す目標温度情報を受け付けている場合について説明する。なお、制御装置60は、第1材料供給部に収容された材料の種類を示す情報を受け付けた場合、第1材料供給部に収容された材料の種類を示す情報が示す種類と、結晶性樹脂又は非結晶性樹脂のいずれかを示す情報とが対応付けられた情報に基づいて、第1材料供給部に収容された材料が結晶性樹脂と非結晶性樹脂とのいずれであるかを特定する。この場合、制御装置60の記憶部62には、第1材料供給部に収容された材料の種類を示す情報が示す種類と、結晶性樹脂又は非結晶性樹脂のいずれかを示す情報とが対応付けられた情報が予め記憶されている。そして、この情報は、テーブル形式の情報であってもよく、他の形式の情報であってもよい。また、制御装置60は、第2材料供給部に収容された材料の種類を示す情報を受け付けた場合、第2材料供給部に収容された材料の種類を示す情報が示す種類と、結晶性樹脂又は非結晶性樹脂のいずれかを示す情報とが対応付けられた情報に基づいて、第2材料供給部に収容された材料が結晶性樹脂と非結晶性樹脂とのいずれであるかを特定する。この場合、制御装置60の記憶部62には、第2材料供給部に収容された材料の種類を示す情報が示す種類と、結晶性樹脂又は非結晶性樹脂のいずれかを示す情報とが対応付けられた情報が予め記憶されている。そして、この情報は、テーブル形式の情報であってもよく、他の形式の情報であってもよい。これらにより、制御装置60は、第1材料供給部に収容された材料の種類を示す情報を受け付けることにより、造形材料Xとして第1材料と第2材料とのいずれか一方又は両方を用いるかを特定することもできる。
【0060】
造形制御を制御装置60に開始させる操作を制御装置60が受け付けた後、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データを記憶部62から読み出す(ステップS110)。
【0061】
次に、装置制御部661は、ステップS110において読み出した三次元造形用データに基づいて、N個のスライス層Lの中に、前述の混成スライス層が含まれているか否かを判定する(ステップS120)。
【0062】
次に、装置制御部661は、ステップS120において、N個のスライス層Lの中に混成スライス層が含まれていないと判定した場合(ステップS120-NO)、予め受け付けた操作に基づいて、造形材料Xとして第1材料を用いるか否かを判定する(ステップS130)。なお、装置制御部661は、第1読取部と第2読取部とを備え、前述の第1材料供給部が第1材料貯留部であり、且つ、第2材料供給部が第2材料貯留部である場合、第1材料貯留部と第2材料貯留部とのうち三次元造形装置1に取り付けられた方の材料貯留部から読み取られた識別情報に基づいて、造形材料Xとして第1材料を用いるか否かをステップS130において判定する構成であってもよい。この場合、三次元造形装置1の記憶部62には、第1読取部及び第2読取部のそれぞれにより読み取られる識別情報と、結晶性樹脂又は非結晶性樹脂のいずれかを示す情報とが対応付けられた情報が予め記憶されている。この情報は、テーブル形式の情報であってもよく、他の形式の情報であってもよい。
【0063】
装置制御部661は、ステップS130において、造形材料Xとして第1材料を用いると判定した場合(ステップS130-YES)、予め受け付けた目標温度情報が示す目標温度を、前述の閾値THとして設定する(ステップS140)。ここで、目標温度は、第1材料に含まれる結晶性樹脂の再結晶化温度Tc以上の温度、且つ、当該結晶性樹脂の融点Tm以下の温度であれば、如何なる温度であってもよい。ただし、三次元造形装置1において、目標温度を当該結晶性樹脂の融点Tmに近づけるほど、N個のスライス層L同士の層間密着性を高くすることができる。これは、n-1番目のスライス層Lの上にn番目のスライス層Lを積層させた場合、且つ、n-1番目のスライス層Lの温度が融点Tm付近の温度である場合、n番目のスライス層Lの温度によってn-1番目のスライス層Lの上面が溶解し易くなるためである。なお、例えば、この一例のように第1材料がPOMである場合、目標温度は、120℃以上140℃以下の範囲内の温度である。ここで、装置制御部661は、目標温度情報が示す目標温度を閾値THとして記憶部62に記憶させることにより、当該目標温度を閾値THとして設定する。
【0064】
次に、装置制御部661は、キャリブレーションを行う(ステップS150)。ステップS150におけるキャリブレーションは、ノズルNzとステージ20と相対的な高さについてのキャリブレーション、XY平面におけるノズルNzとステージ20との相対的な位置についてのキャリブレーション等であるが、これに加えて、他のキャリブレーションが含まれる構成であってもよい。なお、これらのキャリブレーションを行う方法については、既知であるため、本実施形態において詳細な説明を省略する。
【0065】
次に、装置制御部661は、第1積層処理を行い(ステップS160)、
図5に示したフローチャートの処理を終了する。なお、第1積層処理の詳細については、後述する。
【0066】
一方、装置制御部661は、ステップS130において、造形材料Xとして第1材料を用いないと判定した場合(ステップS130-NO)、造形材料Xとして第2材料を用いると判定し、キャリブレーションを行う(ステップS170)。なお、ステップS170の処理は、ステップS150の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、ステップS170の処理についての詳細な説明を省略する。
【0067】
次に、装置制御部661は、第2積層処理を行い(ステップS180)、
図5に示したフローチャートの処理を終了する。なお、第2積層処理の詳細については、後述する。
【0068】
一方、装置制御部661は、ステップS120において、N個のスライス層Lの中に混成スライス層が含まれていると判定した場合(ステップS120-YES)、予め受け付けた目標温度情報が示す目標温度を、前述の閾値THとして設定する(ステップS190)。なお、ステップS190の処理は、ステップS140の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、ステップS190の処理についての詳細な説明を省略する。
【0069】
次に、装置制御部661は、キャリブレーションを行う(ステップS200)。なお、ステップS200の処理は、ステップS150の処理と同様の処理である。このため、本実施形態では、ステップS200の処理についての詳細な説明を省略する。
【0070】
次に、装置制御部661は、混成積層処理を行い(ステップS210)、
図5に示したフローチャートの処理を終了する。なお、混成積層処理の詳細については、後述する。
【0071】
以上のような流れにより、制御装置60は、造形制御を行う。これにより、制御装置60は、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0072】
次に、
図6を参照し、
図5に示したステップS160において実行される第1積層処理について説明する。
図6は、
図5に示したステップS160において実行される第1積層処理の流れの一例を示す図である。
【0073】
ステップS160に遷移した後、装置制御部661は、1番目のスライス層LからN番目のスライス層Lへ順に1つずつスライス層Lを対象スライス層として選択し、選択した対象スライス層毎に、ステップS162~ステップS166の処理を繰り返し行う(ステップS161)。
図6では、ステップS161の処理を「n毎」によって示している。
【0074】
ステップS161において対象スライス層を選択した後、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データに基づいて吐出部10及び移動部30を制御し、選択した対象スライス層の積層を開始する(ステップS162)。なお、三次元造形用データに基づいて対象スライス層の積層を行う方法については、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0075】
次に、装置制御部661は、ステップS162において開始した対象スライス層の積層が終了するまで待機する(ステップS163)。なお、ステップS161~ステップS162の処理は、第1スライス層形成処理、第2スライス層形成処理それぞれの一例である。
【0076】
装置制御部661は、ステップS162において開始した対象スライス層の積層が終了したとステップS163において判定した場合(ステップS163-YES)、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる(ステップS164)。なお、ステップS164の処理は、第1吐出停止処理の一例である。また、装置制御部661は、ステップS164において造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させてから、以下において説明するステップS166の判定結果がYESとなるまでの間、吐出部10のクリーニング等のような、対象スライス層の積層と異なる動作のうち吐出部10からの造形材料Xの吐出を伴う動作を行ってもよい。
【0077】
次に、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された測定領域位置情報を参照し、対象スライス層において予め決められた測定領域の温度の検出を温度検出部50に開始させる(ステップS165)。
【0078】
次に、装置制御部661は、ステップS165において温度検出部50により検出され始めた温度が閾値TH以下となるまで待機する(ステップS166)。なお、ステップS165~ステップS166の処理は、第1温度検出処理の一例である。また、装置制御部661は、ステップS166において、例えば、パネルヒーターである加熱部40の温度を第1材料の再結晶化温度付近の温度にすることにより、対象スライス層の温度が急激に低下してしまうことを抑制する構成であってもよい。
【0079】
装置制御部661は、ステップS165において温度検出部50により検出され始めた温度が閾値TH以下であると判定した場合(ステップS166-YES)、ステップS161に遷移し、次の対象スライス層を選択する。なお、装置制御部661は、ステップS161において、対象スライス層として未選択のスライス層Lが存在しない場合、ステップS161~ステップS166の繰り返し処理を終了し、
図6に示したフローチャートの処理、すなわち、第1積層処理を終了する。
【0080】
以上のように、第1積層処理は、第1スライス層形成処理と、第1吐出停止処理と、第1温度検出処理と、第2スライス層形成処理を含む。これにより、三次元造形装置1は、結晶性樹脂を含む第1材料によって三次元造形物の造形を行う場合であっても、層間密着性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0081】
次に、
図7を参照し、
図5に示したステップS180において実行される第2積層処理について説明する。
図7は、
図5に示したステップS180において実行される第2積層処理の流れの一例を示す図である。
【0082】
ステップS180に遷移した後、装置制御部661は、1番目のスライス層LからN番目のスライス層Lへ順に1つずつスライス層Lを対象スライス層として選択し、選択した対象スライス層毎に、ステップS182~ステップS187の処理を繰り返し行う(ステップS181)。
図7では、ステップS181の処理を「n毎」によって示している。
【0083】
ステップS181において対象スライス層を選択した後、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データに基づいて、対象スライス層の形状に応じた時間を、待機時間として算出する(ステップS182)。ここで、ステップS182の処理について説明する。装置制御部661は、例えば、ステップS182において、三次元造形用データに含まれる造形パス情報のうち、対象スライス層の造形パスを示す造形パス情報を特定する。装置制御部661は、特定した造形パス情報に基づくコマンドデータを生成し、生成したコマンドデータに基づいて、対象スライス層の積層に要する時間を、対象スライス層の造形時間として算出する。装置制御部661は、算出した対象スライス層の造形時間と、記憶部62に予め記憶された対応情報とに基づいて、対象スライス層の形状に応じた待機時間を特定する。なお、当該コマンドデータに基づいて対象スライス層の造形時間を算出する方法は、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。ここで、対応情報は、互いに異なる複数の造形時間毎に、造形時間と、待機時間とが対応付けられた情報である。対応情報に含まれる個々の造形時間には、個々の造形時間を中心値とする所定の誤差範囲が対応付けられている。このため、装置制御部661は、ある造形時間に対応付けられた待機時間を特定する場合、当該造形時間を含む誤差範囲を有する造形時間を対応情報の中から特定し、特定した造形時間に対応付けられた待機時間を対応情報の中から特定する。なお、対応情報は、テーブル形式の情報であってもよく、他の形式の情報であってもよい。ステップS182の処理は、待機時間特定処理の一例である。
【0084】
次に、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データに基づいて吐出部10及び移動部30を制御し、選択した対象スライス層の積層を開始する(ステップS183)。なお、三次元造形用データに基づいて対象スライス層の積層を行う方法については、既知の方法であってもよく、これから開発される方法であってもよい。
【0085】
次に、装置制御部661は、ステップS183において開始した対象スライス層の積層が終了するまで待機する(ステップS184)。なお、ステップS183~ステップS184の処理は、第3スライス層形成処理、第4スライス層形成処理それぞれの一例である。
【0086】
装置制御部661は、ステップS183において開始した対象スライス層の積層が終了したとステップS184において判定した場合(ステップS184-YES)、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる(ステップS185)。なお、ステップS185の処理は、第2吐出停止処理の一例である。
【0087】
次に、装置制御部661は、ステップS185における吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止に応じたタイミングからの経過時間の計時を開始する(ステップS186)。当該タイミングは、ステップS185において吐出部10が造形材料Xの吐出を停止させたタイミングであってもよく、ステップS185において吐出部10が造形材料Xの吐出を停止させたタイミングから所定時間が経過した後のタイミングであってもよい。ただし、ステップS185における吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止に応じたタイミングが、ステップS185において吐出部10が造形材料Xの吐出を停止させたタイミングから所定時間が経過した後のタイミングであった場合、所定時間を短くするほど、サイクルタイムを短くすることができる。
【0088】
次に、装置制御部661は、ステップS186において計時され始めた経過時間が待機時間以上となるまで待機する(ステップS187)。なお、ステップS186~ステップS187の処理は、第1判定処理の一例である。また、装置制御部661は、ステップS187における待機中において、吐出部10のクリーニング等のような、対象スライス層の積層と異なる動作のうち吐出部10からの造形材料Xの吐出を伴う動作を行ってもよい。
【0089】
装置制御部661は、ステップS186において計時され始めた経過時間が待機時間以上であると判定した場合(ステップS187-YES)、ステップS181に遷移し、次の対象スライス層を選択する。なお、装置制御部661は、ステップS181において、対象スライス層として未選択のスライス層Lが存在しない場合、ステップS181~ステップS187の繰り返し処理を終了し、
図7に示したフローチャートの処理、すなわち、第2積層処理を終了する。
【0090】
なお、三次元造形装置1では、例えば、三次元造形装置1に造形させる三次元造形物の形状が所定の形状である場合において、ステップS185において吐出部10が造形材料Xの吐出を停止した時点から、次にステップS183~ステップS184の処理が開始される時点までの時間は、前述のステップS164において吐出部10が造形材料Xの吐出を停止した時点から、次にステップS162~ステップS163の処理が開始される時点までの時間よりも短くなるように待機時間が決定される。これにより、三次元造形装置1は、サイクルタイムが増大することを抑制する。これは、例えば、対応情報に含まれる待機時間を短くすることにより実現することができる。ただし、三次元造形装置1では、待機時間を短くし過ぎると、スライス層Lの積層において意図しない変形が生じ、三次元造形物の造形精度が低下してしまうことがある。このため、対応情報に含まれる待機時間は、事前の実験、シミュレーション等によって、スライス層Lの積層において意図しない変形が生じない程度に短くすることが望ましい。
【0091】
以上のように、第2積層処理は、第3スライス層形成処理と、第2吐出停止処理と、第1判定処理と、第4スライス層形成処理を含む。ここで、第2積層処理では、n-1番目のスライス層Lを積層したタイミングから、n-1番目のスライス層Lの上にn番目のスライス層Lを積層するタイミングまでの時間が、n-1番目のスライス層Lの温度によって制御される第1積層処理と異なり、n-1番目のスライス層Lの形状に応じた待機時間によって制御される。これは、再結晶化温度から融点までの範囲内の温度変化に応じた第2材料の粘度の変化が小さいために実現できることである。これにより、三次元造形装置1は、非結晶性樹脂を含む第2材料によって三次元造形物の造形を行う場合、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。すなわち、三次元造形装置1は、造形材料Xとして用いる材料が第1材料と第2材料とのいずれであるかに応じて、第1積層処理と第2積層処理とを切り替えることにより、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0092】
次に、
図8を参照し、
図5に示したステップS210において実行される混成積層処理について説明する。
図8は、
図5に示したステップS210において実行される混成積層処理の流れの一例を示す図である。
【0093】
ステップS210に遷移した後、装置制御部661は、1番目のスライス層LからN番目のスライス層Lへ順に1つずつスライス層Lを対象スライス層として選択し、選択した対象スライス層毎に、ステップS212~ステップS214の処理を繰り返し行う(ステップS211)。
図8では、ステップS181の処理を「n毎」によって示している。
【0094】
ステップS211において対象スライス層を選択した後、装置制御部661は、記憶部62に予め記憶された三次元造形用データに基づいて、対象スライス層に造形領域が含まれているか否かを判定する(ステップS212)。
【0095】
装置制御部661は、対象スライス層に造形領域が含まれていると判定した場合(ステップS212-YES)、第3積層処理を行い(ステップS213)、その後、ステップS211へ遷移し、次の対象スライス層を選択する。なお、装置制御部661は、ステップS211において、対象スライス層として未選択のスライス層Lが存在しない場合、ステップS211~ステップS214の繰り返し処理を終了し、
図8に示したフローチャートの処理、すなわち、混成積層処理を終了する。なお、第3積層処理の詳細については、後述する。
【0096】
一方、装置制御部661は、対象スライス層に造形領域が含まれていないと判定した場合(ステップS212-NO)、第4積層処理を行い(ステップS214)、その後、ステップS211へ遷移し、次の対象スライス層を選択する。なお、装置制御部661は、ステップS211において、対象スライス層として未選択のスライス層Lが存在しない場合、ステップS211~ステップS214の繰り返し処理を終了し、
図8に示したフローチャートの処理、すなわち、混成積層処理を終了する。なお、第4積層処理の詳細については、後述する。
【0097】
次に、
図9を参照し、
図8に示したステップS213において実行される第3積層処理について説明する。
図9は、
図8に示したステップS213において実行される第3積層処理の流れの一例を示す図である。
【0098】
図9に示したように、第3積層処理は、
図6に示したステップS162~ステップS166の処理を行う処理である。そして、
図9に示したステップS162~ステップS166の処理は、
図6に示したステップS162~ステップS166の処理と同様の処理である。このため、本実施形態において、
図9に示したステップS162~ステップS166の処理についての詳細な説明を省略する。
【0099】
三次元造形装置1は、混成積層処理の実行中において、対象スライス層に造形領域が含まれている場合、
図9に示したような第3積層処理を行うことにより、対象スライス層に支持領域が含まれているか否かにかかわらず、造形体の造形精度が低下してしまうことを抑制することができる。なお、三次元造形装置1は、例えば、対象スライス層に造形領域と支持領域との両方の領域が含まれている場合、支持領域よりも先に造形領域の積層を行った後、支持領域の積層を行うことにより、対象スライス層の造形精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0100】
次に、
図10を参照し、
図8に示したステップS214において実行される第4積層処理について説明する。
図10は、
図8に示したステップS214において実行される第4積層処理の流れの一例を示す図である。
【0101】
図10に示したように、第4積層処理は、
図7に示したステップS182~ステップS187の処理を行う処理である。そして、
図9に示したステップS182~ステップS187の処理は、
図7に示したステップS182~ステップS187の処理と同様の処理である。このため、本実施形態において、
図9に示したステップS182~ステップS187の処理についての詳細な説明を省略する。
【0102】
三次元造形装置1は、混成積層処理の実行中において、対象スライス層に造形領域が含まれていない場合、結晶性樹脂を含む第1材料を用いずに非結晶性樹脂を含む第2材料を用いて対象スライス層を積層するため、
図10に示したような第4積層処理を行うことにより、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0103】
なお、上記において説明した混成積層処理は、第1積層処理に代えられてもよい。
また、上記において説明した混成積層処理において、三次元造形装置1は、造形領域の積層において、第3積層処理を行い、支持領域の積層において第3積層処理を行う構成であってもよい。すなわち、三次元造形装置1は、混成積層処理において、対象スライス層に含まれる造形領域と支持領域とのいずれを積層するかに応じて、実行する処理を第3積層処理と第4積層処理との間で切り替える構成であってもよい。
また、上記において説明した制御装置60が造形制御を行う処理では、第1積層処理、第2積層処理、混成積層処理のいずれを三次元造形装置1に行わせるかを制御装置60が自動で判定していた。しかしながら、制御装置60は、制御装置60が造形制御を行う処理において、第1積層処理、第2積層処理、混成積層処理のいずれを三次元造形装置1に行わせるかを示す情報を受け付け、受け付けた情報に基づいて、第1積層処理、第2積層処理、混成積層処理のいずれかを実行する構成であってもよい。すなわち、制御装置60は、第1積層処理と第2積層処理と混成積層処理とを手動によって切り替える構成であってもよい。同様に、制御装置60は、混成積層処理において、第3積層処理、第4積層処理のいずれを三次元造形装置1に行わせるかを示す情報を受け付け、受け付けた情報に基づいて、第3積層処理、第4積層処理のいずれかを実行する構成であってもよい。すなわち、制御装置60は、第3積層処理と第4積層処理とを手動によって切り替える構成であってもよい。
【0104】
<制御装置が行う終了予測時間算出処理>
上記において説明した制御装置60は、以下において説明する終了予測時間算出処理を行う構成であってもよい。
図11は、制御装置60が行う終了予測時間算出処理の流れの一例を示す図である。終了予測時間算出処理は、上記において説明した第1積層処理、第2積層処理、混成積層処理の3つの積層処理のそれぞれの実行中に行われる処理である。以下では、説明の便宜上、これら3つの積層処理を区別する必要が無い限り、まとめて積層処理と称して説明する。終了時刻算出処理は、制御装置60が実行中の積層処理においてN個のスライス層Lの積層が終了するまでに要する残り時間として予測される時間を終了予測時間として算出する処理のことである。このため、制御装置60は、積層処理が開始される毎に、
図11に示したフローチャートの処理を繰り返し実行する。なお、制御装置60は、繰り返し実行される積層処理のうちの一部が開始される毎に、
図11に示したフローチャートの処理を繰り返し実行する構成であってもよい。
【0105】
積層処理が開始された後、装置制御部661は、造形材料Xの吐出を吐出部10が停止する毎に、ステップS320~ステップS380の処理を繰り返し実行する(ステップS310)。
【0106】
ステップS310において造形材料Xの吐出を吐出部10が停止したと判定した後、装置制御部661は、ステップS310において造形材料Xの吐出を吐出部10が停止したと判定したタイミングからの経過時間の計時を開始する(ステップS320)。
【0107】
次に、装置制御部661は、吐出部10による対象スライス層の積層が開始されるまで待機する(ステップS330)。なお、装置制御部661は、ステップS330における待機中において、吐出部10のクリーニング等のような、対象スライス層の積層と異なる動作のうち吐出部10からの造形材料Xの吐出を伴う動作において吐出部10から造形材料Xを吐出させた場合、吐出部10による対象スライス層の積層が開始されたと判定しない。これにより、三次元造形装置1は、ステップS330における待機中において、吐出部10のクリーニング等のような、対象スライス層の積層と異なる動作のうち吐出部10からの造形材料Xの吐出を伴う動作を行った場合であっても、
図11に示したフローチャートの処理によって終了予測時間を精度よく算出することができる。
【0108】
装置制御部661は、ステップS330において吐出部10による対象スライス層の積層が開始されたと判定した場合(ステップS330-YES)、ステップS320において開始した計時を終了する(ステップS340)。なお、ステップS320~ステップS340の処理は、第1計時処理、第2計時処理それぞれの一例である。
【0109】
次に、装置制御部661は、現在までに1回以上実行されたステップS320~ステップS340の処理において計時された1以上の経過時間に基づいて、終了予測時間を算出する(ステップS350)。例えば、装置制御部661は、現在までに1回以上実行されたステップS320~ステップS340の処理において計時された1以上の経過時間の平均値を算出し、算出した平均値と、ステージ20の上方に積層されていない残りのスライス層Lの数とを掛け合わせた値を、終了予測時間として算出する。なお、装置制御部661は、他の方法により終了予測時間を算出する構成であってもよい。
【0110】
次に、装置制御部661は、ステップS350において算出した終了予測時間を示す情報を、終了予測時間情報として生成する(ステップS360)。
【0111】
次に、装置制御部661は、ステップS360において生成した終了予測時間情報を、記憶部62に記憶させる(ステップS370)。
【0112】
次に、装置制御部661は、ステップS310の処理の開始のトリガーとなった積層処理が終了されたか否かを判定する(ステップS380)。なお、装置制御部661は、ステップS310の処理の開始のトリガーとなった積層処理が終了されたか否かを、如何なる方法で判定してもよい。
【0113】
装置制御部661は、ステップS310の処理の開始のトリガーとなった積層処理が終了されていないと判定した場合(ステップS380-NO)、ステップS310に遷移し、造形材料Xの吐出を吐出部10が停止するまで待機する。
【0114】
一方、装置制御部661は、ステップS310の処理の開始のトリガーとなった積層処理が終了されたと判定した場合(ステップS380-YES)、
図11に示したフローチャートの処理、すなわち、終了予測時間算出処理を終了する。
【0115】
以上のように、制御装置60は、N個のスライス層Lの積層が終了するまでに要する残り時間として予測される終了予測時間を算出する終了予測時間算出処理を行う。そして、終了予測時間算出処理は、第1計時処理と、第1終了時刻記憶処理と、第2計時処理と、第2終了時刻記憶処理を含む。第1計時処理は、第1積層処理の実行中において、第1吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止が行われる毎に、第1吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止から、第2スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第1計時時間として計時する処理である。第1終了時刻記憶処理は、第1積層処理の実行中において、第1計時処理による計時が行われる毎に、現在までに第1計時処理によって計時された1以上の第1計時時間に基づいて、終了予測時間として第1終了予測時間を算出し、算出した第1終了予測時間を示す第1終了予測時間情報を記憶部62に記憶させる処理である。第2計時処理は、第2積層処理の実行中において、第2吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止が行われる毎に、第2吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止から、第4スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第2計時時間として計時する処理である。第2終了時刻記憶処理は、第2積層処理の実行中において、第2計時処理による計時が行われる毎に、現在までに第2計時処理によって計時された1以上の第2計時時間に基づいて、終了予測時間として第2終了予測時間を算出し、算出した第2終了予測時間を示す第2終了予測時間情報を記憶部62に記憶させる処理である。これにより、制御装置60は、N個のスライス層Lの積層が終了するまでに要する残り時間を、ユーザーに精度よく通知することができる。その結果、ユーザーは、三次元造形装置1によって造形される三次元造形物の三次元造形装置1からの取り出しの準備を始める予定を、効率よく立てることができる。
【0116】
なお、上記において説明した内容は、如何様に組み合わされてもよい。
【0117】
以上のように、三次元造形装置1は、N個のスライス層Lを予め決められた形状の三次元造形物として積層させる三次元造形装置であって、ステージ20と、結晶性樹脂を含む第1材料と、非結晶性樹脂を含む第2材料とを選択的に造形材料としてステージ20の上方へ吐出する吐出部10と、ステージ20と吐出部10とを相対移動させる移動部30と、吐出部10と移動部30とを制御する制御部66と、を備え、制御部66は、造形材料Xとして第2材料を用いずに第1材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、造形材料Xとして第1材料を用いずに第2材料を用いてN個のスライス層Lを三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行い、第1積層処理は、吐出部10及び移動部30を制御し、N個のスライス層のうちn-1番目のスライス層Lをステージ20の上方に積層させる第1スライス層形成処理と、第1スライス層形成処理が終わった後、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる第1吐出停止処理と、第1吐出停止処理が終わった後、n-1番目のスライス層の測定領域の温度を温度検出部50に検出させる第1温度検出処理と、第1温度検出処理において温度検出部50により検出された温度が予め決められた閾値TH以下である場合、吐出部10及び移動部30を制御し、複数のスライス層のうちn番目のスライス層をステージ20の上方に積層させる第2スライス層形成処理と、を含み、第2積層処理は、吐出部10及び移動部30を制御し、n-1番目のスライス層をステージ20の上方に積層させる第3スライス層形成処理と、第3スライス層形成処理が終わった後、造形材料Xの吐出を吐出部10に停止させる第2吐出停止処理と、第2吐出停止処理による吐出部10からの造形材料Xの吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する第1判定処理と、第1判定処理において第1タイミングから待機時間が経過したと判定した場合、吐出部10及び移動部30を制御し、n番目のスライス層をステージ20の上方に積層させる第4スライス層形成処理と、を含む。これにより、三次元造形装置1は、層間密着性が低下してしまうことを抑制しつつ、サイクルタイムが増大してしまうことを抑制することができる。
【0118】
<付記>
[1]
複数のスライス層を予め決められた形状の三次元造形物として積層させる三次元造形装置であって、ステージと、結晶性樹脂を含む第1材料と、非結晶性樹脂を含む第2材料とを選択的に造形材料として前記ステージの上方へ吐出する吐出部と、前記ステージと前記吐出部とを相対移動させる移動部と、前記吐出部と前記移動部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記造形材料として前記第2材料を用いずに前記第1材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第1積層処理を行い、前記造形材料として前記第1材料を用いずに前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、第2積層処理を行い、前記第1積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第1スライス層形成処理と、前記第1スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第1吐出停止処理と、前記第1吐出停止処理が終わった後、前記n-1番目のスライス層の測定領域の温度を温度検出部に検出させる第1温度検出処理と、前記第1温度検出処理において前記温度検出部により検出された温度が予め決められた閾値以下である場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記複数のスライス層のうちn番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第2スライス層形成処理と、を含み、前記第2積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第3スライス層形成処理と、前記第3スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第2吐出停止処理と、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止に応じた第1タイミングから所定の待機時間が経過したか否かを判定する第1判定処理と、前記第1判定処理において前記第1タイミングから前記待機時間が経過したと判定した場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記n番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第4スライス層形成処理と、を含み、nは、2以上の整数である、三次元造形装置。
[2]
前記三次元造形物の形状が第1形状である場合において、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第4スライス層形成処理が開始されるまでの時間は、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第2スライス層形成処理が開始されるまでの時間よりも短い、[1]に記載の三次元造形装置。
[3]
前記造形材料を固体の状態で貯留し、前記造形材料を識別する識別情報を有する材料貯留部を更に備え、前記制御部は、前記材料貯留部が有する前記識別情報を読み取り、読み取った前記識別情報により識別される前記造形材料が結晶性樹脂を含むか否かを判定する、[1]又は[2]に記載の三次元造形装置。
[4]
前記閾値は、前記第1材料の融点以下の温度であり、且つ、前記第1材料の再結晶化温度以上の温度である、[1]から[3]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[5]
前記閾値は、前記第1材料の再結晶化温度よりも前記第1材料の融点に近い温度である、[4]に記載の三次元造形装置。
[6]
前記複数のスライス層のそれぞれは、造形体に含まれる造形領域と、支持体に含まれる支持領域とのうちのいずれか一方又は両方を含み、前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記複数のスライス層のうち前記造形領域を含む1以上の第1スライス層の積層について、第3積層処理を行い、前記第3積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第1スライス層のうちm-1番目の第1スライス層を前記ステージの上方に積層させる第5スライス層形成処理と、前記第5スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第3吐出停止処理と、前記第3吐出停止処理が終わった後、前記m-1番目の第1スライス層の測定領域の温度を前記温度検出部に検出させる第2温度検出処理と、前記第2温度検出処理において前記温度検出部により検出された温度が前記閾値以下である場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第1スライス層のうちm番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第6スライス層形成処理と、を含み、mは、2以上の整数であり、前記1以上の第1スライス層それぞれの測定領域は、前記造形領域に含まれている、[1]から[5]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[7]
前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記複数のスライス層のうち前記造形領域を含まない1以上の第2スライス層の積層について、第4積層処理を行い、前記第4積層処理は、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第2スライス層のうちl-1番目のスライス層を前記ステージの上方に積層させる第7スライス層形成処理と、前記第7スライス層形成処理が終わった後、前記造形材料の吐出を前記吐出部に停止させる第4吐出停止処理と、前記第4吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止に応じた第2タイミングから前記待機時間が経過したか否かを判定する第2判定処理と、前記第2判定処理において前記第2タイミングから前記待機時間が経過したと判定した場合、前記吐出部及び前記移動部を制御し、前記1以上の第2スライス層のうちl番目の第2スライス層を前記ステージの上方に積層させる第8スライス層形成処理と、を含み、lは、2以上の整数である、[6]に記載の三次元造形装置。
[8]
前記複数のスライス層のそれぞれは、造形体に含まれる造形領域と、支持体に含まれる支持領域とのうちのいずれか一方又は両方を含み、前記制御部は、前記造形領域に吐出される前記造形材料として前記第1材料を用い、且つ、前記支持領域に吐出される前記造形材料として前記第2材料を用いて前記複数のスライス層を前記三次元造形物として積層させる場合、前記第1積層処理を行う、[1]から[5]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[9]
前記制御部は、前記複数のスライス層の積層が終了するまでに要する残り時間として予測される終了予測時間を算出する終了予測時間算出処理を行い、前記終了予測時間算出処理は、前記第1積層処理の実行中において、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止が行われる毎に、前記第1吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第2スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第1計時時間として計時する第1計時処理と、前記第1積層処理の実行中において、前記第1計時処理による計時が行われる毎に、現在までに前記第1計時処理によって計時された1以上の第1計時時間に基づいて、前記終了予測時間として第1終了予測時間を算出し、算出した前記第1終了予測時間を示す第1終了予測時間情報を記憶部に記憶させる第1終了時刻記憶処理と、前記第2積層処理の実行中において、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止が行われる毎に、前記第2吐出停止処理による前記吐出部からの前記造形材料の吐出の停止から、前記第4スライス層形成処理が開始されるまでの時間を第2計時時間として計時する第2計時処理と、前記第2積層処理の実行中において、前記第2計時処理による計時が行われる毎に、現在までに前記第2計時処理によって計時された1以上の第2計時時間に基づいて、前記終了予測時間として第2終了予測時間を算出し、算出した前記第2終了予測時間を示す第2終了予測時間情報を前記記憶部に記憶させる第2終了時刻記憶処理と、を含む、[1]から[8]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
[10]
前記第2積層処理は、前記n-1番目のスライス層の形状に応じた時間を前記待機時間として特定する待機時間特定処理を含む、[1]から[9]のうちいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【0119】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0120】
また、以上に説明した装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。ここで、当該装置は、例えば、三次元造形装置1、制御装置60、データ生成装置70等である。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)-ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0121】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル又は差分プログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1、X1…三次元造形装置、10…吐出部、20…ステージ、21…造形面、30…移動部、31…第1移動機構部、32…第2移動機構部、40…加熱部、50…温度検出部、60…制御装置、61…プロセッサー、62…記憶部、63…入力受付部、64…通信部、65…表示部、66…制御部、70…データ生成装置、661…装置制御部、Nz…ノズル、TC…三次元座標系、X…造形材料