(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062533
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】吊荷作業の安全管理方法および安全管理システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20240501BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20240501BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C15/00 E
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170423
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤山 映
(72)【発明者】
【氏名】宮本 憲都
(72)【発明者】
【氏名】田淵 朝人
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204FC03
3F204FC05
3F205AA05
3F205CA03
(57)【要約】
【課題】クレーンによって吊上げられている吊体周辺の危険領域に作業者が入ることをより確実に防止して吊荷作業の安全性を向上させることができる吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムを提供する。
【解決手段】
クレーン30のブーム31の先端部31aに設置した撮影装置3により、吊体33に配置した吊体用ターゲット2の撮影画像データ20を取得する。演算装置5により、吊体用ターゲット2の画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置を検出し、その検出データに基づいて算出した撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cに、吊体33に対する警告エリアAの中心位置を一致させた状態で、撮影画像データ20に警告エリアAを重ねた管理画像データ21をモニタ6a、6bに表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブームの先端部に設置した撮影装置により前記クレーンによって吊り上げられた吊体とその周辺領域を撮影して、その前記撮影装置によって取得した撮影画像データを演算装置に入力し、前記演算装置により前記吊体に対する警告エリアを前記撮影画像データに重ねた状態でモニタに表示する吊荷作業の安全管理方法において、
前記吊体の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲットを配置して、前記撮影装置によって前記吊体用ターゲットを撮影し、
前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置により、前記吊体用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの位置、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットを配置している場合にはそれらの前記吊体用ターゲットの位置を検出し、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置を算出し、その算出した前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置に前記警告エリアの中心位置を一致させた状態で前記モニタに表示することを特徴とする吊荷作業の安全管理方法。
【請求項2】
前記吊体用ターゲットとして、前記吊体に吊体用標識を付設する請求項1に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項3】
予め設定した作業面に対する前記撮影装置の撮影高さのデータを取得し、前記演算装置により、その前記撮影高さのデータに基づいて、前記警告エリアの表示サイズを、前記撮影画像データでの前記作業面の表示サイズを基準とした大きさに調整する請求項1に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項4】
前記作業面の一箇所以上に作業面用ターゲットを設けて、前記撮影装置により前記作業面用ターゲットを撮影し、前記演算装置には、前記作業面用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された作業面用ターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置により、前記作業面用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記作業面用ターゲットの大きさ、または、前記作業面の複数箇所に前記作業面用ターゲットを設けている場合にはそれらの前記作業面用ターゲットどうしの画像離間距離を検出し、その検出データに基づいて、前記撮影高さのデータを取得する請求項3に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項5】
前記ブームの先端部に設置した測位装置によって取得した位置座標データ、または、傾斜計によって計測した前記ブームの傾斜角度に基づいて、前記撮影高さのデータを取得する請求項3に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項6】
予め設定した作業面の一箇所以上に作業面用ターゲットを設けて、前記撮影装置により前記作業面用ターゲットを撮影し、前記演算装置には、前記作業面用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された作業面用ターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置により、前記作業面用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記作業面用ターゲットの大きさ、または、前記作業面の複数箇所に前記作業面用ターゲットを設けている場合にはそれらの前記作業面用ターゲットどうしの画像離間距離を検出し、その検出データに基づいて、前記警告エリアの表示サイズを、前記撮影画像データでの前記作業面の表示サイズを基準とした大きさに調整する請求項1に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項7】
前記作業面用ターゲットとして、前記作業面に作業面用標識を付設する請求項4または6に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項8】
前記作業面用ターゲット検出モデルが、前記撮影画像データにおいて前記作業面用ターゲットとして検出した境界枠の大きさを、前記撮影画像データでの前記作業面用ターゲットの大きさとして扱う請求項4または6に記載の吊荷作業の安全管理方法。
【請求項9】
クレーンのブームの先端部に設置されていて前記クレーンによって吊り上げられた吊体とその周辺領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置と、前記演算装置に通信可能に接続されたモニタとを備えて、前記演算装置により前記吊体に対する警告エリアが前記撮影画像データに重ねた状態で前記モニタに表示される構成の吊荷作業の安全管理システムにおいて、
前記吊体の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲットを備えて、前記撮影装置により前記吊体用ターゲットが撮影され、
前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルが予め記憶されていて、前記演算装置により、前記吊体用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの位置、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットが配置されている場合にはそれらの前記吊体用ターゲットの位置が検出され、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置が算出され、その算出された前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置に前記警告エリアの中心位置が一致した状態で前記モニタに表示される構成であることを特徴とする吊荷作業の安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムに関し、さらに詳しくは、クレーンによって吊体を吊上げる吊荷作業の安全性を向上させることができる吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーンによって吊り上げられた吊体周辺の危険領域に作業者が入ることを防止する吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のクレーン作業における人物検知システムでは、クレーンのブームの先端部に設置した人物検知用カメラにより吊荷の下部を撮影するとともに、距離計によって人物検知用カメラと作業面との上下距離を計測している。そして、危険領域が人物検知用モニタに一定の大きさで表示されるように、距離計で計測した上下距離と連動して人物検知用カメラのズーム倍率を自動制御する構成にしている。
【0003】
吊荷作業ではブームを旋回させて吊体を移動させた際に、吊体が水平方向に動揺した状態となる。特許文献1に記載の人物検知システムでは、吊体が動揺している状態では、人物検知用カメラによって取得された撮影画像での吊体の中心位置は特定できない。この人物検知システムでは、吊体が動揺して、吊体の中心位置が人物検知用カメラによって取得した撮影画像データの中心からずれている場合にも、撮影画像データの中央に危険領域が表示されるだけであり、吊体の水平方向の動揺に追従した危険領域を正確に表示することはできない。それ故、吊荷作業の安全性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、クレーンによって吊体を吊上げる吊荷作業の安全性を向上させることができる吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の吊荷作業の安全管理方法は、クレーンのブームの先端部に設置した撮影装置により前記クレーンによって吊り上げられた吊体とその周辺領域を撮影して、その前記撮影装置によって取得した撮影画像データを演算装置に入力し、前記演算装置により前記吊体に対する警告エリアを前記撮影画像データに重ねた状態でモニタに表示する吊荷作業の安全管理方法において、前記吊体の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲットを配置して、前記撮影装置によって前記吊体用ターゲットを撮影し、前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルを予め記憶させておき、前記演算装置により、前記吊体用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの位置、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットを配置している場合にはそれらの前記吊体用ターゲットの位置を検出し、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置を算出し、その算出した前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置に前記警告エリアの中心位置を一致させた状態で前記モニタに表示することを特徴とする。
【0007】
本発明の吊荷作業の安全管理システムは、クレーンのブームの先端部に設置されていて前記クレーンによって吊り上げられた吊体とその周辺領域を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって取得された撮影画像データが入力される演算装置と、前記演算装置に通信可能に接続されたモニタとを備えて、前記演算装置により前記吊体に対する警告エリアが前記撮影画像データに重ねた状態で前記モニタに表示される構成の吊荷作業の安全管理システムにおいて、前記吊体の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲットを備えて、前記撮影装置により前記吊体用ターゲットが撮影され、前記演算装置には、前記吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルが予め記憶されていて、前記演算装置により、前記吊体用ターゲット検出モデルと前記撮影画像データとに基づいて、前記撮影画像データでの前記吊体用ターゲットの位置、または、前記吊体の上部または側方の複数箇所に前記吊体用ターゲットが配置されている場合にはそれらの前記吊体用ターゲットの位置が検出され、その検出データに基づいて前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置が算出され、その算出された前記撮影画像データでの前記吊体の中心位置に前記警告エリアの中心位置が一致した状態で前記モニタに表示される構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吊体の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲットを配置して、吊体用ターゲットの画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルと、吊体用ターゲットを撮影した撮影画像データとを利用することで、撮影画像データでの吊体の中心位置を算出できる。そして、その算出した撮影画像データでの吊体の中心位置に警告エリアの中心位置を一致させた状態でモニタに表示することで、吊体が水平方向に動揺している場合にも、吊体に対する警告エリアの範囲をより正確に表示することが可能になる。それ故、吊荷作業の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の吊荷作業の安全管理システムを適用したクレーンで吊荷作業を行っている状況を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の撮影装置によって取得した撮影画像データを例示する説明図である。
【
図3】
図1のモニタに表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図4】吊体が水平方向に動揺している状態での管理画像データを例示する説明図である。
【
図5】
図1の状況からクレーンのブームの傾斜角度を変更した状況を側面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5のモニタに表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図7】本発明に係る別の実施形態の吊荷作業の安全管理システムのモニタに表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図8】本発明に係るさらに別の実施形態の吊荷作業の安全管理システムのモニタに表示される管理画像データを例示する説明図である。
【
図9】本発明に係るさらに別の実施形態の吊荷作業の安全管理システムを適用したクレーンで吊荷作業を行っている状況を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の吊荷作業の安全管理方法および安全管理システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明の吊荷作業の安全管理システム1は、クレーン30によって吊体33を吊上げる吊荷作業の安全性を向上させるシステムである。この安全管理システム1は、陸上で吊荷作業を行うクレーン30に限らず、水上で吊荷作業を行うクレーン30(例えば、作業船に搭載されたクレーン30など)に適用することもできる。この実施形態では、安全管理システム1を陸上で吊荷作業を行うクレーン30に適用した場合を例示する。
【0012】
クレーン30は、傾動可能なブーム31を備えており、ブーム31の先端部31aから吊り下げられた吊ワイヤ32の下端に吊具34が設けられている。前述した吊体33は、吊具34に吊荷35を吊下げていない状態では吊具34であり、吊具34に吊荷35を吊下げている状態では、吊具34および吊荷35である。以下の説明における吊体33の中心位置Cは、吊具34に吊荷35を吊下げていない状態の場合も、吊具34に吊荷35を吊下げている状態の場合も、平面視での吊具34の中心位置Cを示している。この実施形態では、吊具34に吊荷35を吊下げている状態の場合を例示して説明する。
【0013】
図1に例示するように、安全管理システム1は、クレーン30のブーム31の先端部31aに設置された撮影装置3と、撮影装置3に通信可能に接続された演算装置5と、演算装置5に通信可能に接続されたモニタ6a、6bとを備えている。安全管理システム1は、さらに、吊体33の上部または側方の一箇所以上に配置された吊体用ターゲット2を備えている。この実施形態の安全管理システム1は、さらに、予め設定した作業面Rの一箇所以上に設けられた作業面用ターゲット4と、演算装置5に通信可能に接続された警告手段7とを有している。
【0014】
前述した作業面Rは、吊体33に対する警告エリアAの広さを設定する基準とする高さの面であり、任意に設定することができる。具体的には例えば、クレーン30によって吊体33を吊り上げているときに玉掛作業等を行う作業者40が待機する面や、吊体33を着床させる面などを作業面Rとして設定する。地面を作業面Rとすることもできるし、建造物の床面や船舶の床面を作業面Rとすることもできる。陸地や船舶に配置されている置荷の上面や、吊荷35を着床させる運搬機の荷台の上面などを作業面Rとすることもできる。安全管理システム1を水上で荷役作業を行うクレーン30に適用する場合には、水面を作業面Rとすることもできるし、水上構造体の上面を作業面Rとすることもできる。この実施形態では、地面を作業面Rとして設定した場合を例示している。この実施形態では、施工現場の地面が平坦である場合を例示しているが、例えば、起伏や溝部などがある施工現場の場合には、任意の高さ位置を作業面Rとして設定することもできる。
【0015】
撮影装置3には例えば、デジタルカメラなどが使用される。撮影装置3はクレーン30のブーム31の先端部31aに撮影方向を下向きで設置され、下方に位置する吊体33とその周辺領域(作業面R)を撮影する。撮影装置3は、吊体33の上部または側方に配置された吊体用ターゲット2と、作業面Rに設けられた作業面用ターゲット4も撮影する。
図1では、撮影装置3の撮影範囲を一点鎖線で示している。撮影装置3はクレーン30のブーム31の上下方向の傾斜角度θが変更された場合にも、撮影方向が下向きに維持される構成にする。この実施形態では、ブーム31の先端部31aに撮影装置3の撮影方向を下向きに維持する回動機構3aを設けている。この実施形態の撮影装置3は、予め設定した一定のズーム倍率で撮影する構成になっている。
【0016】
図2は、撮影装置3によって取得される撮影画像データ20を例示している。撮影装置3によって取得された撮影画像データ20は、演算装置5に逐次入力される。この実施形態では、撮影装置3によって取得された撮影画像データ20が、演算装置5に無線通信で送信される構成になっている。ブーム31の先端部31aに既設のクレーンカメラが設けられている場合には、そのクレーンカメラを撮影装置3として使用することもできる。既設のクレーンカメラとは別に撮影装置3を設けることもできる。なお、図中の撮影画像データ20では、吊ワイヤ32を省略している。
【0017】
吊体用ターゲット2は、吊体33に設ける目印である。この実施形態では、吊体用ターゲット2として、吊体33の上部の一箇所に吊体用標識2aを付設している。吊体用標識2aは、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。
【0018】
図2に例示するように、この実施形態では平面視で円形の吊体用標識2aを使用している。この吊体用標識2aは、円を十字に四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。吊体用標識2aの形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、吊体用標識2aは、四角形を十字に四分割したデザインなどにすることもできる。
【0019】
吊体用標識2aは、玉掛作業を行う作業者などが身に着けるヘルメットと識別できる色彩にすることが好ましい。吊体用標識2aの色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。吊体用標識2aの実寸の大きさ(直径の実寸法或いは縦横の実寸法)は特に限定されないが、例えば、200mm~500mm程度である。吊体用標識2aとして公知の対空標識を用いることもできる。吊体用標識2aは、磁石や粘着剤を付した板状部材やシート状部材で作製し、吊体33に対して着脱可能な構成にするとよい。
【0020】
吊具34や吊荷35に目印となる特徴的な部位や部品、模様、印字などがある場合にはその吊具34や吊荷35に元々ある目印を吊体用ターゲット2として使用することもできる。また、例えば、吊具34や吊荷35に吊体用ターゲット2として塗料で目印となる図形や文字を描くこともできる。
【0021】
この実施形態では、吊体用ターゲット2(吊体用標識2a)を平面視での吊具34の中心位置Cに配置している。後に別の実施形態で詳述するが、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置することもできる。吊体用ターゲット2は、例えば、吊具34の側方に配置することもできるし、吊荷35の上部や側方に配置することもできる。吊具34と吊荷35の両方に吊体用ターゲット2を配置することもできる。吊体33に対する吊体用ターゲット2の配置は撮影装置3によって撮影できる位置であれば特に限定されない。
【0022】
作業面用ターゲット4は、作業面Rに設ける目印である。この実施形態では、作業面用ターゲット4として、作業面Rの一箇所に作業面用標識4aを付設している。作業面用標識4aは、板状部材やシート状部材に目印となる図形や文字が付されたものである。作業面用ターゲット4は、吊体用ターゲット2と識別できるものにする。
【0023】
図2に例示するように、この実施形態では、平面視で四角形状の作業面用標識4aを使用している。この作業面用標識4aは、四角を十字に四分割した図形を有し、その図形の隣り合う区画どうしが異なる色で彩色されたデザインになっている。作業面用標識4aの形状や図形のデザイン、色彩などはこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0024】
作業面用標識4aの色彩は、玉掛作業を行う作業者40などが身に着けるヘルメットの色と識別できる色彩にすることが好ましい。作業面用標識4aの色彩は、例えば、黒色と黄色の組み合わせや、黒色と赤色の組み合わせにするとよい。作業面用標識4aは吊体用標識2aと異なる色彩にすることが好ましい。作業面用標識4aの実寸の大きさS(直径の実寸法或いは縦横の寸法)は特に限定されないが、例えば、200mm~500mm程度である。作業面用標識4aとして公知の対空標識を用いることもできる。
【0025】
作業面Rに目印となる特徴的な標示や印字などがある場合にはその作業面Rに元々ある目印を作業面用ターゲット4として使用することもできる。また、例えば、作業面Rに作業面用ターゲット4として塗料で目印となる図形や文字を描くこともできる。
【0026】
演算装置5には、コンピュータ等を用いる。この実施形態では、クレーン30の操縦室に演算装置5を配置しているが、演算装置5の配置は特に限定されず他の位置に配置することもできる。例えば、クレーン30とは別の位置に演算装置5を配置することもできる。
【0027】
演算装置5には、吊体用ターゲット2の画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルが予め記憶されている。この吊体用ターゲット検出モデルは、撮影装置3から入力された撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置を検出するためのコンピュータプログラムである。この実施形態の演算装置5には、さらに、作業面用ターゲット4の画像データを教師データとして機械学習された作業面用ターゲット検出モデルが記憶されている。この作業面用ターゲット検出モデルは、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の位置と大きさを検出するためのコンピュータプログラムである。
【0028】
演算装置5には、教師データとして、吊体用ターゲット2の多数の画像データが記憶されている。この実施形態の演算装置5にはさらに、教師データとして、作業面用ターゲット4の多数の画像データが記憶されている。吊体用ターゲット2の特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置を検出する吊体用ターゲット検出モデルを生成することが可能である。また、作業面用ターゲット4の特徴を人工知能(AI)に機械学習させることで、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の位置と大きさを検出する作業面用ターゲット検出モデルを生成することが可能である。演算装置5による機械学習の手法としては、例えば、ディープラーニングや、ニュートラルネットワーク、回帰、クラスタリング、パターンマッチングなどが例示できる。吊体用ターゲット検出モデルと作業面用ターゲット検出モデルは、同じコンピュータプログラムで構成してもよいし、別々のコンピュータプログラムで構成してもよい。
【0029】
演算装置5には、さらに、平面視での吊体33(吊具34)の中心位置Cと吊体用ターゲット2との相対的な位置関係のデータが予め記憶されている。この実施形態では、平面視での吊体33(吊具34)の中心位置Cに吊体用ターゲット2(吊体用標識2a)の中心位置を合わせて配置しているので、演算装置5には、吊体用ターゲット2の中心位置が吊体33の中心位置Cと同じ位置であることを示すデータが、吊体33の中心位置Cと吊体用ターゲット2との相対的な位置関係のデータとして記憶されている。
【0030】
演算装置5には、吊体33に対する危険領域Dと警告エリアAの条件のデータが予め入力される。警告エリアAは、吊体33の中心位置Cを中心として、吊体33に衝突する危険性がある危険領域Dよりも外側に広がる所定範囲として設定される。警告エリアAおよび危険領域Dのそれぞれの広さは、予め設定した作業面Rを基準にして設定される。警告エリアAおよび危険領域Dのそれぞれの広さや形状は、吊体33の大きさや形状に応じて適宜設定できる。この実施形態では、警告エリアAと危険領域Dをそれぞれ円形の範囲として設定しているが、例えば、多角形状や楕円状の範囲として設定することもできる。例えば、吊体33に対する距離に応じて複数段階の警告エリアAを設定することもできる。具体的には、例えば、吊体33に対して半径2mの範囲内を危険領域D、その外側の吊体33に対して半径2m~5mの範囲を第一の警告エリアA、その外側の吊体33に対して半径5m~7mの範囲を第二の警告エリアA、その外側の吊体33に対して半径7m~10mの範囲を第三の警告エリアAとして設定することもできる。警告エリアAを区分する数やそれぞれの警告エリアAの区分の範囲は施工条件に応じて適宜設定できる。
【0031】
マウスやキーボード等の入力手段を用いて演算装置5に警告エリアAおよび危険領域Dのそれぞれの形状や広さなどの条件を入力することで、警告エリアAおよび危険領域Dのそれぞれの形状や広さなどを所望の条件に設定できる構成になっている。また、入力手段を用いて、吊体33に対する距離に応じて複数段階の警告エリアAを設定することもできる。
【0032】
演算装置5には、撮影装置3によって取得された撮影画像データ20が逐次入力される。
図3に例示するように、演算装置5は、予め記憶されている吊体用ターゲット検出モデルと、撮影装置3から入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置を検出する。
【0033】
そして、演算装置5は、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置の検出データと、予め記憶されている平面視での吊体33の中心位置Cと吊体用ターゲット2との相対的な位置関係のデータとに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cを算出する。この実施形態では、撮影画像データ20において吊体用ターゲット2として検出した境界枠22(所謂、バウンディングボックス)の中心位置を、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の中心位置Cとして算出する構成になっている。図中では、吊体用ターゲット2として検出した境界枠22を破線の四角枠で示している。
【0034】
この実施形態の演算装置5は、さらに、予め記憶されている作業面用ターゲット検出モデルと撮影装置3から入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPS(直径の寸法或いは縦横の寸法)を検出する。この実施形態の作業面用ターゲット検出モデルは、撮影画像データ20において作業面用ターゲット4として検出した境界枠22の大きさを、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSとして扱う構成になっている。そして、演算装置5は、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの検出データに基づいて、予め設定した作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHのデータを取得する構成になっている。図中では、作業面用ターゲット4として検出した境界枠22を破線の四角枠で示している。
【0035】
撮影装置3により一定のズーム倍率で撮影する場合には、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHが低いほど、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSは大きくなり、撮影高さHが高いほど、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSは小さくなる。この撮影高さHの変化量と、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの変化量との比率は一定である。それ故、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSに基づいて、撮影高さHのデータを取得することが可能である。
【0036】
なお、後に別の実施形態で例示するが、撮影高さHのデータを取得する方法は、この実施形態のような作業面用ターゲット4と作業面用ターゲット検出モデルを用いる方法に限らず、他の方法で撮影高さHのデータを取得することもできる。
【0037】
演算装置5は、算出した撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cのデータと、予め設定された警告エリアAの条件のデータとに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cに警告エリアAの中心位置を一致させた状態で、撮影画像データ20に警告エリアAを重ねた管理画像データ21を逐次生成する構成になっている。即ち、
図4に例示するように、吊荷作業中に吊体33が水平方向に動揺して、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cが撮影画像データ20の中心位置からずれた場合にも、演算装置5は、警告エリアAの中心位置を、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cに一致させた管理画像データ21を生成する構成になっている。
【0038】
この実施形態の演算装置5は、さらに、取得した撮影高さHのデータに基づいて、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整する構成になっている。具体的には、
図5および
図6に例示するように、クレーン30のブーム31を傾動させて、ブーム31の上下方向の傾斜角度θが変更された場合には、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHが変化する。撮影高さHが変化すると、それに伴い、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズは変化するが、演算装置5は、撮影高さHの変化に合わせて警告エリアAの表示サイズを調整することで、警告エリアAを常に撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさで表示する管理画像データ21を生成する。
【0039】
言い換えると、演算装置5は、撮影高さHが変化した場合には、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズの変化量と同じ比率で警告エリアAの表示サイズを変化させて、管理画像データ21を生成する。つまり、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHが低くなるほど、撮影画像データ20での作業面Rや作業面用ターゲット4の表示サイズは大きくなるが、演算装置5は撮影高さHのデータに基づいて、その撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズが拡大する変化量と同じ比率で警告エリアAの表示サイズを拡大する。逆に、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHが高くなるほど、撮影画像データ20での作業面Rや作業面用ターゲット4の表示サイズは小さくなるが、演算装置5は撮影高さHのデータに基づいて、その撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズが縮小する変化量と同じ比率で警告エリアAの表示サイズを縮小する。
【0040】
この実施形態では、さらに、警告エリアAと同様に、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cを中心とする危険領域Dを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさで表示する構成になっている。図中では、警告エリアAの境界線ABを二点鎖線で示し、危険領域Dの境界線DBを一点鎖線で示している。
【0041】
管理画像データ21では、警告エリアAの境界線ABと危険領域Dの境界線DBはそれぞれ、作業面Rと識別できる色で表示することが好ましい。管理画像データ21において、警告エリアAや危険領域Dが視認し易いように、例えば、警告エリアAや危険領域Dの内側の範囲に、作業面Rと識別できる色を付す構成にすることもできる。吊体33に対する距離に応じて複数段階の警告エリアAを設定する場合には、それぞれの警告エリアAの区分毎に色を異ならせて表示する構成にすることもできる。
【0042】
演算装置5によって生成された管理画像データ21は、モニタ6a、6bに逐次表示される。この実施形態では、演算装置5が生成した管理画像データ21が、クレーン30の操縦室に設置されたモニタ6aに送信される構成になっている。また、演算装置5が生成した管理画像データ21は、吊荷作業を管理する管理者が使用する管理装置に送信され、その管理装置のモニタ6bに管理画像データ21が表示される構成になっている。演算装置5により、撮影装置3による撮影周期毎に管理画像データ21が逐次生成されることで、モニタ6a、6bには撮影装置3によって撮影されたリアルタイムの撮影画像データ20に、警告エリアAおよび危険領域Dが重ねられた管理画像データ21が表示された状態になる。
【0043】
なお、この安全管理システム1は、クレーン30の操縦室のモニタ6aまたは管理装置のモニタ6bのいずれかのみに管理画像データ21が表示される構成にすることもできる。また、この安全管理システム1は、操縦室のモニタ6aや管理装置のモニタ6b以外のモニタに管理画像データ21が表示される構成にすることもできる。
【0044】
クレーン30がブーム31を旋回させて、作業面用ターゲット4が撮影装置3の撮影範囲から外れた場合や、作業面用ターゲット4の上に吊体33が重なった場合には、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSをターゲット検出モデルで検出できない状況になる場合がある。そのような場合には、管理画像データ21に警告エリアAの大きさを正確に表示できていないことを示す通知が表示される構成になっている。
【0045】
この実施形態の演算装置5には、さらに、作業者40の画像データを教師データとして機械学習された作業者検出モデルが記憶されている。演算装置5は、作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業者40の有無と作業者40が存在する場合にはその作業者40の位置(座標)を検出し、その検出結果を撮影画像データ20に重ねて表示する構成になっている。図中では、作業者40として検出した境界枠22を破線で示している。さらに、演算装置5は、作業者40の検出データに基づいて、管理画像データ21において警告エリアA内に作業者40が存在するか否かを判定し、警告エリアA内に作業者40が存在していると判定した場合には、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する構成になっている。
【0046】
演算装置5は、例えば、作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、検出した作業者40の位置座標を算出し、その作業者40が存在する位置座標を管理画像データ21に数値で表示する構成にすることもできる。また、例えば、演算装置5は、作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、管理画像データ21において危険領域D内に存在する作業者40の人数と、警告エリアA内に存在する作業者40の人数と、警告エリアAの外側の安全なエリアに存在する作業者40の人数とをそれぞれカウントして表示する構成にすることもできる。
【0047】
警告手段7は、クレーン30の操縦者や作業面Rにいる作業者40に対して、警告を発する手段である。警告手段7としては、警報器や警告灯、携帯用端末(腕時計や携帯電話など)等が例示できる。演算装置5から送信された警告を発する指示を警告手段7が受信すると、警告手段7によって警告エリアA内に作業者40が存在することを示す警告が発生する構成になっている。この実施形態では、警告手段7として、クレーン30に警報器が設置されていて、警告として警告音が発生する構成になっている。例えば、作業者40が警告手段7として携帯用端末を携帯し、演算装置5から送信された警告を発する指示を携帯用端末が受信すると、その携帯用端末から警告音が発生する構成や携帯用端末が振動する構成にすることもできる。例えば、演算装置5により、警告エリアA内に存在する作業者40が携帯する携帯用端末のみに警告を発する指示が送信される構成にすることもできる。吊体33に対する距離に応じて複数段階の警告エリアAを設定する場合には、それぞれの警告エリアA毎に異なる警告を設定することもできる。
【0048】
次に、この安全管理システム1を使用した吊荷作業の安全管理方法を説明する。
【0049】
図4に例示するように、事前準備作業として、クレーン30のブーム31の先端部31aに撮影装置3を設置する。ブーム31の先端部31aに既設のクレーンカメラが設置されている場合には、そのクレーンカメラを撮影装置3として使用してもよい。吊体33の上部の一箇所以上に吊体用ターゲット2を配置する。この実施形態では、吊具34の上部の中央の一箇所に吊体用ターゲット2として吊体用標識2aを付設する。
【0050】
撮影高さHのデータの取得に作業面用ターゲット4を用いる場合には、作業面Rの一箇所以上に作業面用ターゲット4を設ける。この実施形態では、作業面用ターゲット4として作業面Rの一箇所に作業面用標識4aを付設する。作業面用ターゲット4は、撮影画像データ20において作業面用ターゲット4が吊体33によって隠れないように、吊体用ターゲット2から水平方向に離間した位置に配置する。
【0051】
次いで、撮影装置3により、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHを異ならせた条件で複数の撮影画像データ20を取得する。そして、演算装置5により、その撮影高さHを異ならせた複数の撮影画像データ20に基づいて、撮影高さHの変化量と、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの変化量との比率を算出し、その算出した比率のデータを演算装置5に記憶させておく。
【0052】
また、マウスやキーボード等の入力手段を用いて、演算装置5に警告エリアAおよび危険領域Dのそれぞれの形状や広さなどの条件を入力して設定する。以上により、安全管理システム1の事前準備作業は完了する。
【0053】
クレーン30により吊荷作業を行う際には、撮影装置3によって吊体33とその周辺領域を撮影することで、吊体33、吊体用ターゲット2、作業面Rおよび作業面用ターゲット4を撮影し、その撮影装置3によって取得した撮影画像データ20を演算装置5に逐次入力する。
【0054】
そして、演算装置5により、予め記憶されている吊体用ターゲット検出モデルと、撮影装置3から入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置を検出する。そして、演算装置5により、撮影画像データ20での吊体用ターゲット2の位置の検出データと、予め記憶されている平面視での吊体33の中心位置Cと吊体用ターゲット2との相対的な位置関係のデータとに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cを算出する。
【0055】
この実施形態では、さらに、演算装置5により、予め記憶されている作業面用ターゲット検出モデルと撮影装置3から入力された撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSを検出する。そして、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの検出データに基づいて、作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHのデータを取得する。
【0056】
そして、演算装置5により、算出した撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cのデータと、予め設定された警告エリアAと危険領域Dの条件のデータとに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cに警告エリアAと危険領域Dの中心位置を一致させた状態で、撮影画像データ20に警告エリアAと危険領域Dを重ねた管理画像データ21を生成する。
【0057】
この実施形態では、さらに、演算装置5により、取得した撮影高さHのデータと、予め記憶させた撮影高さHの変化量と撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの変化量との比率のデータに基づいて、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAと危険領域Dの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整する。
【0058】
そして、演算装置5によって生成した管理画像データ21を、それぞれのモニタ6a、6bに表示する。クレーン30の操縦者はモニタ6aに表示される管理画像データ21を確認しながら吊荷作業を行う。管理者は管理装置のモニタ6bに表示される管理画像データ21を確認しながらクレーン30による吊荷作業の監視を行う。
【0059】
この実施形態では、さらに、演算装置5により、予め記憶されている作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業者40の有無と作業者40が存在する場合にはその作業者40の位置を検出し、管理画像データ21において警告エリアA内に作業者40が存在するか否かを判定する。そして、演算装置5により、警告エリアA内に作業者40が存在していると判定した場合には、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する。警告手段7が、演算装置5から送信された警告を発する指示を受信すると、警告エリアA内に作業者40が存在することを示す警告が発せられる。警告エリアA内に作業者40が存在しない状態になると、演算装置5から警告手段7に対して警告を発する指示の送信は終了し、警告手段7による警告が終了する。
【0060】
このように、本発明によれば、吊体33の上部または側方の一箇所以上に吊体用ターゲット2を配置して、吊体用ターゲット2の画像データを教師データとして機械学習された吊体用ターゲット検出モデルと、吊体用ターゲット2を撮影した撮影画像データ20とを利用することで、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cを算出できる。そして、その算出した撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cに警告エリアAの中心位置を一致させた状態でモニタ6a、6bに表示することで、吊荷作業中に吊体33が水平方向に動揺した場合にも、吊体33に対する警告エリアAの範囲をより正確に表示することが可能になる。即ち、吊体33の水平方向の動揺に追従した警告エリアAを正確に表示することができる。それ故、吊荷作業の安全性を向上させることができる。
【0061】
例えば、吊体33にGNNS受信装置などの測位装置を設けることで、吊体33の位置を把握することはできるが、吊体33は着床時などに激しく振動することがあるため、吊体33に測位装置を設置すると故障するリスクや誤作動するリスクが比較的高くなる。それに対して、この安全管理システム1では、吊体33に吊体用ターゲット2を設けるだけでよいため、安全管理システム1を構成する各機器が故障するリスクや誤作動するリスクは非常に低い。
【0062】
また、一般的に、クレーン30のブーム31の先端部31aには、既設のクレーンカメラがあり、この安全管理システム1では、その既設のクレーンカメラを撮影装置3として利用することができる。吊体33に吊体用ターゲット2を設ける作業も非常に簡易に短時間で行える。この安全管理システム1は、既存のクレーン30に簡易に適用することができ、設備コストも比較的低いので、当業者にとって非常に有用である。
【0063】
吊体用ターゲット2として、吊体33の上部または側方に吊体用標識2aを付設する構成にすると、吊体33に目印となる特徴的な部位や部品、模様、印字などが無い場合にも、吊体33に簡易に吊体用ターゲット2を設けることが可能になる。
【0064】
この実施形態では、予め設定した作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHのデータを取得し、演算装置5により、その撮影高さHのデータに基づいて、警告エリアAの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整する構成にしている。このような構成にすると、吊荷作業中にクレーン30のブーム31を傾動させて作業面Rに対する撮影装置3の撮影高さHが変化した場合にも、モニタ6a、6bに表示される管理画像データ21では、警告エリアAが常に作業面Rの表示サイズを基準とした大きさで表示される。それ故、作業面Rにおける警告エリアAと作業者40との距離感や相対的な位置関係をより正確に把握することが可能になる。
【0065】
この実施形態のように、作業面用ターゲット4と演算装置5に予め記憶された作業面用ターゲット検出モデルとを用いて、撮影高さHのデータを取得する構成にすると、作業面Rに作業面用ターゲット4を設けるだけで撮影高さHのデータを取得することが可能になる。撮影高さHのデータを取得する方法としては、ブーム31の先端部31aに測位装置を設置する方法やブーム31に傾斜計を設置する方法もあるが、この作業面用ターゲット4を利用した方法では、作業面Rに作業面用ターゲット4を設けるだけでよいため、安全管理システム1の設備コストを低くするには有利になる。作業面用ターゲット4として、作業面Rに作業面用標識4aを付設する構成にすると、作業面Rに目印となる特徴的な標示や印字などが無い場合にも、作業面Rに簡易に作業面用ターゲット4を設けることが可能になる。
【0066】
演算装置5により、予め記憶された作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業者40の有無と作業者40の位置を検出して、その検出結果を撮影画像データ20に重ねて表示する構成にすると、クレーン30の操縦者や吊荷作業の管理者が、吊体33に近い位置に存在する作業者40を見落とすリスクを低減するには有利になる。また、例えば、演算装置5により、作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、検出した作業者40の位置座標を算出し、その作業者40が存在する位置座標を管理画像データ21に数値で表示する構成にすると、作業者40の位置をより正確に把握し易くなる。また、例えば、演算装置5により、作業者検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、管理画像データ21において危険領域D内に存在する作業者40の人数と、警告エリアA内に存在する作業者40の人数と、警告エリアAの外側の安全なエリアに存在する作業者40の人数とをそれぞれカウントして表示する構成にすると、管理画像データ21内に複数人の作業者40が存在する場合にも、その状況をより把握し易くなる。
【0067】
さらに、演算装置5により、管理画像データ21において警告エリアA内に作業者40が存在するか否かを判定し、警告エリアA内に作業者40が存在していると判定した場合に、警告手段7に対して警告を発する指示を送信する構成にすると、警告エリアA内に存在している作業者40やクレーン30の操縦者などに対して、警告エリアA内に作業者40が存在していることをより確実に認識させることができる。それ故、吊体33周辺の危険領域Dに作業者40が入ることを防止するにはより有利になる。
【0068】
この実施形態では、管理画像データ21に警告エリアAと危険領域Dを表示する構成にしているが、例えば、吊体33に対する距離に応じて複数段階の警告エリアAを設定すると、吊体33と作業者40との離間距離がより把握し易くなる。また、それぞれの警告エリアA毎に異なる警告を設定すると、吊体33に接近している作業者40に対して、吊体33に対する距離をより明確に認識させることができる。それ故、吊荷作業の安全性を向上させるには有利になる。
【0069】
なお、吊荷作業の安全性を向上させるには、この実施形態のように、演算装置5が、撮影画像データ20での作業者40の有無と作業者40の位置を検出する機能や、管理画像データ21において警告エリアA内に作業者40が存在するか否かを判定する機能を備えていることが好ましいが、前述したそれぞれの機能は、安全管理システム1において必須の構成ではなく、任意に備えることができる。また、管理画像データ21に危険領域Dは表示させずに、警告エリアAのみを表示させる構成にすることもできる。
【0070】
また、吊荷作業の安全性を向上させるには、この実施形態のように、警告手段7を備えていることが好ましいが、安全管理システム1において警告手段7は必須の構成ではなく、任意に設けることができる。警告手段7を備えていない場合にも、クレーン30の操縦者や吊荷作業の管理者が、モニタ6a、6bに表示される管理画像データ21を確認し、警告エリアA内に作業者40が存在することを把握した際に、その作業者40に対して、無線機(トランシーバー)等で吊体33から離れるように指示を出すことで、吊体33周辺の危険領域Dに作業者40が入ることを防止できる。
【0071】
図7に本発明に係る別の実施形態の安全管理システム1を例示する。
図7に例示するように、この実施形態では、吊荷35の側方の二箇所に吊体用ターゲット2を配置している。より具体的には、上面に吊体用標識2aが設けられていて側面に磁石が設けられている連結具を、吊荷35の側面に磁力で接着させている。また、作業面Rの二箇所に作業面用ターゲット4を設けている。この実施形態では、演算装置5による撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cの算出方法と、撮影高さHのデータの取得方法が、
図1~
図6に例示した実施形態と異なっている。その他の構成は、
図1~
図6に例示した実施形態の安全管理システム1と同じである。
【0072】
この実施形態の演算装置5では、予め記憶されている吊体用ターゲット検出モデルと撮影装置3から入力される撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの吊体用ターゲット2の位置を検出し、その検出データに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置を算出する構成になっている。より詳しくは、この実施形態では、二箇所に配置している吊体用ターゲット2の中心どうしを結ぶ線分の中点を、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cとして算出する構成になっている。言い換えると、それぞれの吊体用ターゲット2は、吊体用ターゲット2の中心どうしを結ぶ線分の中点が、平面視での吊体33の中心位置Cに位置するように配置されている。
【0073】
このように、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置した場合にも、演算装置5に、平面視での吊体33の中心位置Cとそれぞれの吊体用ターゲット2との相対的な位置関係のデータを記憶させておくことで、撮影画像データ20でのそれぞれの吊体用ターゲット2の位置の検出データに基づいて、撮影画像データ20での吊体33の中心位置Cを算出することが可能である。この構成にした場合にも、
図1~
図6に例示した実施形態の安全管理システム1と同様の効果を奏することができる。吊体33(吊具34)の中心位置Cに吊体用ターゲット2を設け難い場合には、この実施形態のように、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を設ける構成にするとよい。
【0074】
この実施形態の演算装置5では、作業面用ターゲット検出モデルと撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを検出し、その検出データに基づいて、撮影高さHのデータを取得する構成になっている。撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSの変化量と撮影高さHの変化量との関係と同様に、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDの変化量と撮影高さHの変化量との比率は一定である。それ故、同様に、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDに基づいて、撮影高さHのデータを取得することが可能である。この構成にした場合にも、
図1~
図6に例示した実施形態の安全管理システム1と同様の効果を奏することができる。
【0075】
図1~
図6に例示した実施形態のように、演算装置5によって、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSを検出する構成にした場合には、作業面用ターゲット4を作業面Rの一箇所のみに設けた場合にも、撮影高さHのデータを取得できるというメリットがある。一方で、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSを精度よく検出するには、作業面用ターゲット4をある程度大きくする必要がある。
【0076】
それに対して、この実施形態のように、演算装置5によって、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを検出する構成にすると、作業面Rの複数箇所に作業面用ターゲット4を設ける必要はあるが、それぞれの作業面用ターゲット4のサイズを比較的小さくした場合にも、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを比較的精度よく検出できる。撮影高さHは比較的距離が遠く、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSは比較的小さくなる。そのため、この実施形態のように、作業面Rの複数箇所に作業面用ターゲット4を設ける構成にすると、撮影高さHを精度よく検出するには有利になる。
【0077】
吊体33の側方に吊体用ターゲット2を配置する構造はこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、吊具34の底面に接合した連結具を吊具34の側方に突出した構造にして、その連結具の吊具34の側方に突出した部位に吊体用ターゲット2を配置することもできる。
【0078】
図8に本発明に係る安全管理システム1のさらに別の実施形態を例示する。
図8に例示するように、この実施形態の安全管理システム1では、作業面Rの三箇所以上に作業面用ターゲット4を設けている。この実施形態では、吊体33の一箇所に吊体用ターゲット2を配置している。その他の構成は
図7に例示した実施形態の安全管理システム1と同じである。
【0079】
この実施形態のように、作業面Rの三箇所以上に作業面用ターゲット4を設ける場合には、それぞれの作業面用ターゲット4の形状や図形、色彩などを異ならせるとよい。演算装置5には、それぞれの作業面用ターゲット4の画像データを教師データとして機械学習された作業面用ターゲット検出モデルを予め記憶しておく。そして、演算装置5は、撮影画像データ20と作業面用ターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの作業面用ターゲット4を別々の作業面用ターゲット4として識別して検出し、それぞれの作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを検出する。そして、それぞれの作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDの検出データに基づいて撮影高さHをそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にする。このような構成にすることで、撮影高さHを精度よく把握するにはより有利になる。
【0080】
作業面Rの三箇所以上に作業面用ターゲット4を設けると、クレーン30がブーム31を旋回させて、いずれかの作業面用ターゲット4が撮影装置3の撮影範囲から外れた場合や、いずれかの作業面用ターゲット4の上に吊体33が重なった場合にも、二箇所以上の作業面用ターゲット4が撮影画像データ20に含まれていれば、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを検出することが可能になる。それ故、作業面Rの三箇所以上に作業面用ターゲット4を設けることで、クレーン30の作業範囲が広い場合にも対応することが可能になる。
【0081】
図7に例示した実施形態や
図8に例示した実施形態のように、作業面Rの複数箇所に作業面用ターゲット4を設ける場合には、演算装置5が、撮影画像データ20と作業面用ターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの作業面用ターゲット4の大きさPSを検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの作業面用ターゲット4の大きさPSの検出データに基づいて、撮影高さHをそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。
【0082】
また、例えば、演算装置5が、撮影画像データ20と作業面用ターゲット検出モデルとに基づいて、撮影画像データ20でのそれぞれの作業面用ターゲット4の大きさPSと作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを両方検出する構成にすることもできる。そして、それぞれの検出データに基づいて撮影高さHをそれぞれ算出し、それぞれの算出値の平均値を出力する構成にすることもできる。このような構成にすると、撮影高さHを精度よく把握するにはより一層有利になる。
【0083】
図9に本発明に係るさらに別の実施形態の安全管理システム1を例示する。この実施形態では、ブーム31の先端部31aに測位装置9を設置している。また、ブーム31に傾斜計8を設置している。作業面Rには作業面用ターゲット4は設けていない。その他の構成は
図1~
図6に例示した実施形態の安全管理システム1と同じである。
【0084】
測位装置9は位置座標データを取得する。測位装置9は、例えば、全地球測位システムから位置座標データを取得するGNSS受信装置で構成される。傾斜計8はブーム31の傾斜角度θを計測する。この実施形態では、ブーム31の先端部31aに設置した測位装置9が取得した位置座標データに基づいて撮影高さHのデータを取得する構成になっている。また、傾斜計8によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて、撮影高さHのデータを取得する構成になっている。この実施形態では、測位装置9が取得した位置座標データに基づいて算出した撮影高さHと、傾斜計8によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて算出した撮影高さHとの平均値を出力する構成にしている。例えば、測位装置9が取得した位置座標データに基づいて算出した撮影高さHと、傾斜計8によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて算出した撮影高さHのいずれかの算出値を出力する構成にすることもできる。
【0085】
この実施形態では、測位装置9と傾斜計8を両方設けているが、測位装置9または傾斜計8のいずれかを備えていれば、撮影高さHのデータを取得することが可能である。この実施形態のように、測位装置9や傾斜計8を用いて撮影高さHのデータを取得する場合にも、
図1~
図6に例示した実施形態の安全管理システム1と同様の効果を奏することができる。
【0086】
この実施形態のように、ブーム31の先端部31aに設置した測位装置9によって取得した位置座標データ、または、傾斜計8によって計測したブーム31の傾斜角度θに基づいて、撮影高さHのデータを取得する構成にすると、簡易に撮影高さHのデータを取得できる。ブーム31にかかる衝撃や振動は吊体33に比べて小さいので、ブーム31に設置した測位装置9や傾斜計8が故障するリスクや誤作動するリスクは低い。
【0087】
本発明の安全管理方法および安全管理システム1は、以下で説明するように、撮影高さHのデータを取得せずに、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整する構成にすることもできる。
【0088】
具体的には、予め設定した作業面Rの一箇所以上に作業面用ターゲット4を設けて、撮影装置3により作業面用ターゲット4を撮影する。そして、演算装置5により、予め記憶されている作業面用ターゲット検出モデルと、撮影装置3から入力される撮影画像データ20とに基づいて、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPS、または、作業面Rの複数箇所に作業面用ターゲット4を設けている場合にはそれらの作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDを検出する。そして、その検出データに基づいて、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整する構成にする。
【0089】
ブーム31を傾動させて撮影高さHが変更された場合や、撮影装置3のズーム倍率が変更された場合に、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSや作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDは、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズと同じ比率で変化(拡大、縮小)する。それ故、撮影画像データ20での作業面用ターゲット4の大きさPSまたは作業面用ターゲット4どうしの画像離間距離PDの検出データに基づいて、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAの表示サイズを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさに調整することが可能である。
【0090】
この構成にすると、撮影装置3のズーム倍率を一定にする場合に限らず、撮影装置3のズーム倍率を変更する場合にも、撮影画像データ20に重ねて表示する警告エリアAを、撮影画像データ20での作業面Rの表示サイズを基準とした大きさで表示させることが可能になる。それ故、安全管理システム1としての利便性はより高くなる。
【0091】
なお、本発明の安全管理システム1では、上記で例示した実施形態に限らず、例えば、吊体33の上部または側方の一箇所に吊体用ターゲット2を配置して、作業面Rの複数箇所に作業面用ターゲット4を設ける構成や、吊体33の上部または側方の複数箇所に吊体用ターゲット2を配置して、作業面Rの一箇所に作業面用ターゲット4を設ける構成にすることもできる。吊体33に配置する吊体用ターゲット2の数や位置、作業面Rに設ける作業面用ターゲット4の数や配置は他にも様々な構成にすることができる。安全管理システム1を水上で荷役作業を行う作業船に搭載されたクレーン30に適用する場合には、撮影高さHのデータの取得に、例えば、作業船の上下方向の揺動を検出する揺動検出装置を利用する構成にすることもできる。また、例えば、作業者40を検出する方法と同様の方法で、撮影画像データ20での船舶の有無や船舶の位置を検出する構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0092】
1 安全管理システム
2 吊体用ターゲット
2a 吊体用標識
3 撮影装置
3a 回動機構
4 作業面用ターゲット
4a 作業面用標識
5 演算装置
6a、6b モニタ
7 警告手段
8 傾斜計
9 測位装置
20 撮影画像データ
21 管理画像データ
22 境界枠
30 クレーン
31 ブーム
31a (ブームの)先端部
32 吊ワイヤ
33 吊体
34 吊具
35 吊荷
40 作業者
C 撮影画像での吊体の中心位置
D 危険領域
DB 危険領域の境界線
A 警告エリア
AB 警告エリアの境界線
R 作業面