(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062539
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】オリフィスキャップ及び噴霧装置
(51)【国際特許分類】
B05B 1/12 20060101AFI20240501BHJP
B05B 7/06 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B05B1/12
B05B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170429
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000107767
【氏名又は名称】スプレーイングシステムスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柏 智大
(72)【発明者】
【氏名】濱浦 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033BA02
4F033BA04
4F033CA14
4F033DA01
4F033EA01
4F033KA00
4F033LA06
4F033NA01
4F033QA10
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB15X
4F033QD02
4F033QD19
4F033QE06
4F033QE14
4F033QE25
4F033QF06Y
4F033QF07Y
4F033QF08X
(57)【要約】
【課題】液体の噴霧方向を柔軟に変更する。
【解決手段】
一態様に係るオリフィスキャップは、入口と出口との間で軸線方向に延在する流路を画成する筒状の本体部を備え、本体部は、第1分割片と該1分割片とは異なる形状を有する第2分割片とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成され、複数の分割片の各々は、1セットの分割片群のうち、選択された複数の分割片以外の他の分割片と個別に交換可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧状の液体を含む空気の流れを制御するオリフィスキャップであって、
入口と出口との間で軸線方向に延在する流路を画成する筒状の本体部を備え、
前記本体部は、第1分割片と該1分割片とは異なる形状を有する第2分割片とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成され、
前記複数の分割片の各々は、前記1セットの分割片群のうち、選択された前記複数の分割片以外の他の分割片と個別に交換可能である、オリフィスキャップ。
【請求項2】
前記本体部は、1以上の前記第1分割片と、1以上の前記第2分割片とが前記周方向に連結されて構成されている、請求項1に記載のオリフィスキャップ。
【請求項3】
前記第1分割片は、基部と、該基部よりも前記出口側に配置され、前記出口に向かうにつれて前記本体部の径方向の内側へ向かうように傾斜する第1縮小部とを含み、
前記第2分割片は、基部と、該基部よりも前記出口側に配置された気流偏向部とを含み、
前記気流偏向部は、前記出口に向かうにつれて前記本体部の径方向の内側へ向かうように傾斜する第2縮小部と、前記第2縮小部よりも前記出口側に配置され、前記出口に向かうにつれて前記本体部の径方向の外側へ向かうように傾斜する拡大部とを含む、請求項1又は2に記載のオリフィスキャップ。
【請求項4】
軸線方向に延在する筒状体と、
前記筒状体の内部空間に空気流を供給する送風器と、
前記空気流に霧状の液体を供給する噴霧ノズルと、
前記筒状体に脱着可能に取り付けられ、前記空気流を制御するオリフィスキャップと、
を備え、
オリフィスキャップは、入口と出口との間で軸線方向に延在し、前記筒状体の内部空間に連通する流路を画成する筒状の本体部を備え、
前記本体部は、第1分割片と該1分割片とは異なる形状を有する第2分割片とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成され、
前記複数の分割片の各々は、前記1セットの分割片群のうち、選択された前記複数の分割片以外の他の分割片と個別に交換可能である、噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オリフィスキャップ及び噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、霧状の液体を含む空気流を噴射して対象空間を加湿する加湿装置が知られている。例えば、特許文献1及び2には、噴霧ノズルから噴射される霧状の水を旋回気流に混合して旋回加湿気流を生成し、当該旋回加湿気流を対象空間に向けて噴射する加湿装置について記載されている。
【0003】
特許文献3には、気液混合の流体を噴射するノズルチップを回転自在に保持する首振りアダプタを備える加湿装置について記載されている。特許文献4には、ノズルに連結されるノズルコネクターと、加湿器本体に連結されるボディコネクターと、ノズルコネクターとボディコネクターとを連結するアジャスタブルホールとを備える加湿装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4402188号公報
【特許文献2】特許第4105815号公報
【特許文献3】特許第4287164号公報
【特許文献4】特許第4906912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加湿される対象空間には、局所的に液体を噴霧すべきでない領域が存在することがある。例えば、対象空間に構造物や電子機器等の障害物が存在する場合には、これらの障害物に液体が噴霧されないように液体の噴霧方向を調整することが望ましい。特許文献1~4の加湿装置では、加湿器本体又はノズルの向きを変えることで液体の噴霧方向を変更することは可能であるが、他の構造物との干渉等、設置位置での制約によっては加湿器本体又はノズルの向きを変更することが困難な場合がある。
【0006】
そこで本開示は、液体の噴霧方向を柔軟に変更することができるオリフィスキャップ及び噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、霧状の液体を含む空気の流れを制御するオリフィスキャップが提供される。このオリフィスキャップは、入口と出口との間で軸線方向に延在する流路を画成する筒状の本体部を備え、本体部は、第1分割片と該1分割片とは異なる形状を有する第2分割片とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成され、複数の分割片の各々は、1セットの分割片群のうち、選択された複数の分割片以外の他の分割片と個別に交換可能である。
【0008】
上記態様では、オリフィスキャップは、第1分割片と第2分割片22とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成される。液体の噴射方向は、選択された複数の分割片の組み合わせによって変化する。このオリフィスキャップでは、複数の分割片の各々を第1分割片21と第2分割片22との間で交換可能であるので、複数の分割片の組み合わせに応じて液体の噴射方向を柔軟に変更することができる。
【0009】
一態様では、本体部は、1以上の第1分割片と、1以上の第2分割片とが周方向に連結されて構成されていてもよい。この態様では、互いに異なる形状する第1分割片と第2分割片とが周方向に結合されているので、液体の噴射方向を偏向させることができる。
【0010】
一態様では、第1分割片は、基部と、該基部よりも出口側に配置され、出口に向かうにつれて本体部の径方向の内側へ向かうように傾斜する第1縮小部とを含み、第2分割片は、基部と、該基部よりも出口側に配置された気流偏向部とを含み、気流偏向部は、出口に向かうにつれて本体部の径方向の内側へ向かうように傾斜する第2縮小部と、第2縮小部よりも出口側に配置され、出口に向かうにつれて本体部の径方向の外側へ向かうように傾斜する拡大部とを含んでいてもよい。第1分割片に沿って流れる空気は、第1縮小部で収束され直進性が向上する。一方、気流偏向部は第2縮小部と拡大部との間で表面形状が急激に変化するため、第2分割片に沿って流れる空気は、気流偏向部において剥離を起こす。この空気の剥離によって、気流偏向部の付近には局所的に圧力の低下した領域が形成される。したがって、この圧力の低下した領域へ向かう力が空気流に作用することになり、液体の噴射方向が第2分割片22の設置方向に偏向される。すなわち、第2分割片22の設置位置に応じてオリフィスキャップからの液体の噴射方向が変化する。
【0011】
一態様に係る噴霧装置は、軸線方向に延在する筒状体と、筒状体の内部空間に空気流を供給する送風器と、空気流に霧状の液体を供給する噴霧ノズルと、筒状体に脱着可能に取り付けられ、空気流を制御するオリフィスキャップと、を備え、オリフィスキャップは、入口と出口との間で軸線方向に延在し、筒状体の内部空間に連通する流路を画成する筒状の本体部を備え、本体部は、第1分割片と該1分割片とは異なる形状を有する第2分割片とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片が周方向に連結されて構成され、複数の分割片の各々は、1セットの分割片群のうち、選択された複数の分割片以外の他の分割片と個別に交換可能である。
【0012】
上記態様に係る噴霧装置では、複数の分割片の組み合わせに応じて液体の噴射方向を柔軟に変更することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、液体の噴霧方向を柔軟に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る噴霧装置を部分的に破断して示す斜視図である。
【
図2】噴霧装置の主要部品を分解して示す図である。
【
図3】(a)はオリフィスキャップの正面図であり、(b)はオリフィスキャップの複数の分割片を分離して示す正面図である。
【
図4】(a)は第1分割片の斜視図であり、(b)は第1分割片の断面図である。
【
図5】(a)は第2分割片の斜視図であり、(b)は第2分割片の断面図である。
【
図6】(a)及び(b)はオリフィスキャップの正面図である。
【
図7】(a)及び(b)は複数の分割片の連結構造を示す斜視図である。
【
図8】
図3(a)のA-A線に沿ったオリフィスキャップの断面図である。
【
図9】(a)は上方から見たミストの分布であり、(b)は側方から見たミストの分布である。
【
図10】
図6(a)のB-B線に沿ったオリフィスキャップの断面図である。
【
図11】(a)は上方から見たミストの分布であり、(b)は側方から見たミストの分布である。
【
図12】(a)は上方から見たミストの分布であり、(b)は側方から見たミストの分布である。
【
図13】(a)~(i)は、複数の分割片の組み合わせの例を示す正面図である。
【
図14】(a)~(g)は、複数の分割片の組み合わせの例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
本明細書中の「上流」又は「下流」との語は、空気の流れ方向を基準としたものである。また、「上側」、「下側」、「右側」又は「左側」との語は、後述するオリフィスキャップ5を出口5b側から見たときの方向を基準としたものである。
【0017】
図1は、一実施形態に係る噴霧装置1を部分的に破断して示す斜視図である。
図2は、噴霧装置1の主要部品を分解して示す図である。噴霧装置1は、霧状の液体(以下、「ミスト」と称することがある)を対象空間に噴霧して当該対象空間を加湿するための装置である。対象空間は、例えば部屋、廊下又は工場等の内部空間である。対象空間には、局所的に液体を噴霧すべきでない領域が存在することがある。例えば、対象空間に構造物や電子機器等の障害物が存在する場合には、これらの障害物に液体が噴霧されないように液体の噴霧方向を調整することが望ましい。噴霧装置1は、ミストの噴霧方向を柔軟に変更する機能を有する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、噴霧装置1は、筒状体2、噴霧ノズル3、送風器4及びオリフィスキャップ5を備えている。筒状体2は、円筒形状を有する金属部品であり、軸線AXに沿う方向(以下、「軸線方向」と称することがある)に延在する。筒状体2の中心軸線は、軸線AXに一致している。筒状体2は、軸線方向の一方側に配置された上流端2aと、軸線方向の他方側に配置された下流端2bとを有する。筒状体2の内径は、上流端2aから下流端2bに向けて徐々に縮小している。筒状体2の外周面には、複数の開口2cが形成されている。複数の開口2cは、周方向に互いに間隔を空けて上流端2aの近傍に形成されている。
【0019】
噴霧ノズル3は、霧状の液体を噴射する一流体ノズルである。なお、噴霧ノズル3は、液体と気体を混合して噴射する二流体ノズルであってもよい。噴霧ノズル3は、筒状体2又はオリフィスキャップ5の内部に配置される。噴霧ノズル3には、液管7が接続されている。液管7は、ポンプの圧力によって外部タンクに貯留された液体を噴霧ノズル3に供給する。液管7から噴霧ノズル3に供給される液体は、例えば水である。
【0020】
噴霧装置1は、スタビライザ6を備えていてもよい。スタビライザ6は、噴霧ノズル3の外周を囲む筒部6aと、筒部6aから径方向外側に延出する複数の羽根部6bとを含む。すなわち、複数の羽根部6bは、筒状体2の内部空間2sで軸線AXに対して放射状に延在する。後述する送風器4としてファンを使用する場合には、筒状体2の内部空間2sには、軸線AX周りに回転しながら進行する螺旋状の気流が形成される。スタビライザ6は、空気流の回転を抑制し、空気流の直進性を改善することでミストの飛翔距離を向上させる。
【0021】
送風器4は、噴霧ノズル3の上流側に配置され、筒状体2の内部空間2sに空気流を供給する。送風器4は、例えばファン又はブロアである。ファンは、例えば電動モータの駆動により回転して、内部空間2sに空気の流れを発生させる。ブロアは、例えばコンプレッサからの圧縮空気を供給する。送風器4は、カバー8を介して筒状体2の上流端2aに固定される。カバー8には、フィンガーガード9が取り付けられていてもよい。送風器4から空気が供給されることで、筒状体2の内部空間2sに下流に向かう空気流が発生する。噴霧ノズル3から噴射されたミストは、内部空間2sを流れる空気流に混合され、下流に搬送される。
【0022】
オリフィスキャップ5は、例えば樹脂製の筒体であり、筒状体2の下流側に配置されている。一実施形態では、オリフィスキャップ5には、径方向の内側に突出する複数の爪が形成され、複数の爪が筒状体2の複数の開口2cに嵌合することでオリフィスキャップ5が筒状体2に脱着可能に取り付けられる。オリフィスキャップ5は、ミストの噴射方向を制御する機能を有する。
【0023】
図3(a)は、下流側から見たオリフィスキャップ5の正面図である。
図3(a)に示すように、オリフィスキャップ5は、筒状の本体部10Aを備える。本体部10Aは、入口5aと出口5bとの間で軸線方向に延在する流路5sを画成する(
図2参照)。流路5sは、筒状体2の内部空間2sに連通する空間である。出口5bは、噴霧装置1の噴射口として機能する。一実施形態では、入口5aの面積に対する出口5bの面積の比は、0.32以上2.05以下の範囲内に設定されていてもよい。本体部10Aには、当該本体部10の厚み方向に突出する複数のフランジ部11が形成されていている。本体部10Aは、複数の分割片20が周方向に連結されて構成されている。
【0024】
図3(b)は、本体部10Aの複数の分割片20を分離して示す図である。
図3(b)に示すように、本体部10Aは4つの分割片20が周方向に連結されて構成されている。これら4つの分割片20は、互いに脱着可能である。
【0025】
複数の分割片20は、希望するミストの噴射パターンに応じて、複数の第1分割片21及び複数の第2分割片22を含む1セットの分割片群から選択される。例えば、1セットの分割片群は4つの第1分割片21及び4つの第2分割片22を含み、これら1セットの分割片群から4つの分割片20が選択され、周方向に連結されることでオリフィスキャップ5の本体部が形成される。なお、分割片20は、第1分割片21及び第2分割片22の総称である。
【0026】
図4(a)は例示的な第1分割片21の斜視図であり、
図4(b)は軸線AXを含む平面に沿った第1分割片21の断面図である。なお、
図4(a)では、複数のフランジ部11を省略して第1分割片21を図示している。
【0027】
図4(b)に示すように、第1分割片21は、基部31と、当該基部31から下流側(オリフィスキャップ5の出口5b側)に向けて延びる縮小部(第1縮小部)32とを含む。基部31及び縮小部32は、流路5sを画成するオリフィスキャップ5の内壁面である。
【0028】
基部31は、軸線AXに実質的に平行に延在する。例えば基部31には、筒状体2の複数の開口2cに嵌合する爪が形成される。なお、基部31は、下流側に向かうにつれて径方向に徐々に縮小する形状を有していてもよい。縮小部32は、基部31の下流側に配置され、下流側に向かうにつれて径方向に縮小するように傾斜している。
【0029】
図5(a)は例示的な第2分割片22の斜視図であり、
図5(b)は軸線AXを含む平面に沿った第2分割片22の断面図である。なお、
図5(a)では、複数のフランジ部11を省略して第2分割片22を図示している。
【0030】
図4(a)及び
図5(a)に示すように、第1分割片21及び第2分割片22は、互いに異なる形状を有している。
図5(b)に示すように、第2分割片22は、基部41と、当該基部41から下流側(オリフィスキャップ5の出口5b側)に向けて延びる気流偏向部42とを含む。基部41及び気流偏向部42は、流路5sを画成するオリフィスキャップ5の内壁面である。
【0031】
第2分割片22の基部41は、第1分割片21の基部31と実質的に同一の形状を有している。気流偏向部42は、基部41に接続された縮小部(第2縮小部)43と、縮小部43の下流側に配置された拡大部44とを含む。縮小部43は、基部31の下流側に配置され、下流側に向かうにつれて径方向に縮小するように傾斜している。拡大部44は、縮小部43の下流側に配置され、下流側に向かうにつれて径方向に拡大するように傾斜している。
【0032】
図3(a)に示す本体部10Aは、1セットの分割片群から4つの第1分割片21を選択し、これら4つの第1分割片21を周方向に連結して構成されている。オリフィスキャップ5は、1以上の第1分割片21と、1以上の第2分割片22とを周方向に連結して構成することも可能である。例えば、
図6(a)に示す本体部10Bは、1セットの分割片群から3つの第1分割片21と1つの第2分割片22とを選択し、3つの第1分割片21をオリフィスキャップ5の上側、右側及び左側に配置し、1つの第2分割片22をオリフィスキャップ5の下側に配置して構成されている。また、
図6(b)に示す本体部10Cは、1セットの分割片群から2つの第1分割片21と2つの第2分割片22とを選択し、2つの第1分割片21をオリフィスキャップ5の上側及び下側に配置し、2つの第2分割片22をオリフィスキャップ5の右側及び左側に配置して構成されている。
【0033】
上述のように、複数の第1分割片21と複数の第2分割片とを含む1セットの分割片群から任意の4つの分割片20を組み合わせてオリフィスキャップ5が構成される。4つの分割片20の組み合わせを変更することで、オリフィスキャップ5の形状が変化し、ミストの噴霧方向を制御することが可能となる。
【0034】
図7(a)及び
図7(b)は、例示的な複数の分割片20の連結構造を示す斜視図である。
図7(a)に示すように、分割片20の周方向の一端側のフランジ部11には、オリフィスキャップ5の周方向に突出する複数の突起20aが形成されている。分割片20の周方向の他端側のフランジ部11には、複数の突起20aが嵌合される複数の凹部20bが形成されている。複数の突起20aが複数の突起20aに嵌合されることにより、複数の分割片20が周方向に脱着可能に連結される。なお、フランジ部11には、1又は複数のネジ穴が形成され、当該1又は複数のネジ穴にボルトが挿入されることで、複数の分割片20が周方向に連結されてもよい。
【0035】
次に、オリフィスキャップ5による気流の制御について説明する。
図8は、
図3(a)のA-A線に沿った本体部10Aの断面図である。
図8に図示される矢印は、空気の流れ方向を示している。上述したように、オリフィスキャップ5の本体部10Aは、4つの第1分割片21によって構成されている。本体部10Aは、複数の分割片20の全てが第1分割片21によって構成されているので、本体部10Aは周方向に一様な形状を有している。したがって、オリフィスキャップ5の出口5bから噴出されるミストの分布は、軸線AX周りの周方向において実質的に均一となる。
【0036】
ところで、管体を流れる空気の圧力と流速との間には負の相関が存在し、空気の流速が増加するにつれて空気の圧力は低下する。オリフィスキャップ5の流路5sを流れる空気の流速が速すぎると、オリフィスキャップ5の出口5b付近で空気の剥離が発生し、オリフィスキャップ5の出口5b周辺の領域R1で空気流の圧力が低下する。領域R1の圧力が大気圧よりも低くなると、対象空間TAと領域R1との差圧によって、オリフィスキャップ5の出口5bから噴射されたミストが出口5b側に押し戻され、ミストを遠方に噴射することの妨げとなる。
【0037】
これに対し、
図8に示すオリフィスキャップ5では、複数の第1分割片21の縮小部32により、オリフィスキャップ5の出口5bの近傍で流路5sの径が急激に縮小される。出口5b付近で流路5sが急激に絞られると、領域R1における空気流の圧力が上昇する。領域R1における空気流の圧力は、軸線AXに対する縮小部32の傾斜角度αと、軸線方向における縮小部32の長さL1とに依存する。軸線AXを含む断面視において、軸線AXに対する縮小部32の傾斜角度αは、軸線AXに対する基部31の傾斜角度よりも大きい。例えば、縮小部32の傾斜角度αは、1°以上60°以下であってもよい。また、筒状体2の下流端2bの外径をDとしたときに、軸線方向における縮小部32の長さL1は、0.001D以上0.6D以下であってもよい。
【0038】
縮小部32の傾斜角度α及び長さL1を調整することにより、領域R1の圧力を大気圧よりも高めることも可能である。領域R1の圧力が大気圧よりも高くなると、対象空間TAと領域R1との差圧によって出口5bから噴射されたミストに対象空間TAに向けて押す力が作用するので、ミストを遠方まで運搬することが可能となる。また、本体部10Aを有するオリフィスキャップ5では、縮小部32において本体部10Aの径が絞られることで、出口5b付近で空気の剥離が生じにくくなる。これにより、空気流の拡散が抑制され、空気流の直進性を高めることが可能となる。
【0039】
図9(a)は、4つの第1分割片21を有する本体部10Aを有するオリフィスキャップ5を取り付けた噴霧装置1を作動させたときに、噴霧装置1から噴射されるミストMの分布をコンピュータシミュレーションで解析した結果を表している。
図9(a)は、上方から見たミストMの分布であり、
図9(b)は、側方から見たミストMの分布である。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、本体部10Aを有するオリフィスキャップ5を用いた場合には、上下方向及び左右方向に収束された高い直進性を有する噴射パターンで噴霧装置1からミストMが噴射される。
【0040】
図10は、
図6(a)のB-B線に沿った本体部10Bの断面図である。上述したように、オリフィスキャップ5の本体部10Bは、3つの第1分割片21と1つの第2分割片22によって構成されている。本体部10Bでは、上側、右側及び左側に第1分割片21が配置され、下側に第2分割片22が配置されているので、本体部10Bは周方向において部分的に異なる形状を有している。
【0041】
上述したように、本体部10Bのうち第1分割片21が配置された流路5sの上側、右側及び左側では、空気流は、第1分割片21の基部31及び縮小部32に沿って流れる。流路5sの径は第1分割片21の縮小部32によりオリフィスキャップ5の出口5b付近で急激に縮小されるので、空気流の圧力は領域R1において上昇する。
【0042】
一方、本体部10Bのうち第2分割片22が配置された流路5sの下側では、空気流は、第2分割片22の基部31及び気流偏向部42に沿って流れる。気流偏向部42は、出口5bに向かうにつれて本体部10Bの径方向の内側へ向かうように傾斜する縮小部43と、出口5bに向かうにつれて本体部10Bの径方向の外側へ向かうように傾斜する拡大部44とを有する。気流偏向部42がこのような表面形状を有することで、気流偏向部42に沿って流れる空気流は、縮小部43と拡大部44との境界付近で剥離を起こす。この空気流の剥離によって、拡大部44の表面付近には局所的に圧力が低下した領域R2が形成される。
【0043】
なお、領域R2での空気の圧力は、軸線AXに対する縮小部43の傾斜角度βと、軸線AXに対する拡大部44の傾斜角度γと、軸線方向における縮小部43の長さL2に対する軸線方向における拡大部44の長さL3の比とに依存する。一実施形態では、縮小部43の傾斜角度βは縮小部32の傾斜角度αと等しく、長さL2と長さL3の和は長さL1に等しい。拡大部44の傾斜角度γは、1°以上60°以下であってもよい。また、縮小部43の長さL2に対する拡大部44の長さL3の比は、0.05以上15以下であってもよい。筒状体2の下流端2bの外径をDとしたときに、拡大部44の長さL3は、0.02D以上0.58D以下であってもよい。
【0044】
領域R2の圧力は領域R1の圧力よりも低いので、領域R1と領域R2との差圧によって、噴霧装置1から噴射されたミストには領域R1から領域R2に向かう力が作用する。すなわち、噴霧装置1から噴射されたミストは、第2分割片22が設置方向に引き寄せられることとなり、噴霧装置1からのミストの噴射方向が下方に偏向される。
【0045】
図11(a)及び
図11(b)は、上側、右側及び左側に第1分割片21が配置され、下側に第2分割片22が配置された本体部10Bを有するオリフィスキャップ5を取り付けた噴霧装置1を作動させたときに、噴霧装置1から噴射されるミストMの分布をコンピュータシミュレーションで解析した結果を表している。
図11(a)は、上方から見たミストMの分布であり、
図11(b)は、側方から見たミストMの分布である。
図11(a)及び
図11(b)に示すように、本体部10Bを有するオリフィスキャップ5を用いた場合には、左右方向に収束し、下方に偏向した噴射パターンでミストMが噴射される。
【0046】
図12(a)及び
図12(b)は、上側及び下側に第1分割片21が配置され、右側及び左側に第2分割片22が配置された本体部10Cを有するオリフィスキャップ5を取り付けた噴霧装置1を作動させたときに、噴霧装置1から噴射されるミストMの分布をコンピュータシミュレーションで解析した結果を表している。
図12(a)は、上方から見たミストMの分布であり、
図12(b)は、側方から見たミストMの分布である。
図12(a)及び
図12(b)に示すように、本体部10Cを有するオリフィスキャップ5を用いた場合には、上下方向に収束し、左右方向に広がるように偏向する噴射パターンで噴霧装置1からミストMが噴射される。
【0047】
以上説明したように、上記実施形態に係るオリフィスキャップ5は、第1分割片21と当該第1分割片21とは異なる形状を有する第2分割片22とを含む1セットの分割片群から選択された複数の分割片20が周方向に連結されて構成される。オリフィスキャップ5が装着された噴霧装置1のミストの噴射方向は、複数の分割片20の組み合わせによって変化する。具体的には、ミストの噴射方向は、第2分割片22を設置した方向に偏向される。オリフィスキャップ5の各分割片20は、第1分割片21と第2分割片22との間で個別に交換可能である。例えば、オリフィスキャップ5が4つの第1分割片21によって構成されている場合には、4つの第1分割片21の各々を1セットの分割片群のうち選択された複数の分割片20以外の第2分割片22に交換することができる。したがって、複数の分割片20の組み合わせに応じてミストの噴射方向を柔軟に変更することができる。
【0048】
図13(a)~
図13(i)、及び、
図14(a)~
図14(g)は、複数の分割片の組み合わせの例を示している。これらの図に示す矢印は、ミストの偏向方向を示している。
図13(a)~
図13(i)、及び、
図14(a)~
図14(g)に示すように、オリフィスキャップ5が、4つの分割片20を連結して構成されて場合には、16パターンの組み合わせを実現することができる。第1分割片21と第2分割片22との組み合わせを変えることで、これらの組み合わせの中から所望の噴射方向を選択することができる。
【0049】
以上、種々の実施形態に係る噴霧装置1及びオリフィスキャップ5について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0050】
例えば、上述したオリフィスキャップ5の本体部10は、4つの分割片20を連結して構成されているが、本体部10を構成する分割片の数は限定されない。本体部10の分割数は、2、3又は5以上であってもよい。1セットの分割片群は、第1分割片21及び第2分割片22とは異なる形状を有する第3分割片を更に含み、オリフィスキャップ5の各分割片20は、第3分割片と交換可能であってもよい。多数の異なる形状を有する分割片を組み合わせてオリフィスキャップ5が構成されることで、ミストの噴射方向をより柔軟に変更することができる。
【0051】
また、オリフィスキャップ5は、周方向に45°傾けて筒状体2に取り付けられてもよい。すなわち、4つの分割片20は、右上、右下、左下及び左上にそれぞれ配置されていてもよい。オリフィスキャップ5を45°傾けて配置することで、ミストの噴射方向を斜め方向に偏向させることができる。
【0052】
なお、上述した種々の実施形態は、矛盾の生じない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…噴霧装置、2…筒状体、2s…内部空間、3…噴霧ノズル、4…送風器、5…オリフィスキャップ、5a…入口、5b…出口、5s…流路、10,10A,10B,10C…本体部、20…分割片、21…第1分割片、22…第2分割片、31,41…基部、32…縮小部(第1縮小部)、42…気流偏向部、43…縮小部(第2縮小部)、44…拡大部。