(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006254
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多孔質シリカ材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20240110BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240110BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20240110BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C01B33/12 Z
B01J20/30
B01J20/10 A
B01J20/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106973
(22)【出願日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】バラゴパル エヌ. ナイル
(72)【発明者】
【氏名】増田 暁司
(72)【発明者】
【氏名】福井 隆光
【テーマコード(参考)】
4G066
4G072
【Fターム(参考)】
4G066AA13D
4G066AA22A
4G066AA22B
4G066AA52D
4G066AB05D
4G066AB06D
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA24
4G066BA26
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA03
4G066FA03
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4G066FA21
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4G066FA33
4G066FA34
4G066FA35
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4G066FA38
4G072AA25
4G072BB05
4G072BB15
4G072DD01
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH14
4G072JJ22
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4G072MM01
4G072RR07
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT06
4G072TT08
4G072TT30
4G072UU11
(57)【要約】
【課題】多孔質シリカ材料の原材料としてのシリカ粒子の多孔度およびBET比表面積の低下を抑制しつつ、平均細孔径を大きくすることができる技術の提供。
【解決手段】この製造方法は、平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料を製造する方法である。この製造方法は、平均細孔径Xよりも小さい平均細孔径Yを有する多孔質なシリカ粒子を用意すること;上記シリカ粒子に、水に可溶な有機溶媒を供給すること;上記有機溶媒を供給されたシリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置すること;および、上記シリカ粒子を上記アルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持すること;を包含する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料を製造する方法であって、
前記平均細孔径Xよりも小さい平均細孔径Yを有する多孔質なシリカ粒子を用意すること;
前記用意された前記シリカ粒子に、水に可溶な有機溶媒を供給すること;
前記有機溶媒を供給された前記シリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置すること;および、
前記シリカ粒子を前記アルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持すること;
を包含する、製造方法。
【請求項2】
前記所定期間は、1時間以上250時間以下に設定される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ性水溶液中での前記シリカ粒子の保持は、5℃以上65℃以下の温度域で実施される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ性水溶液中での前記シリカ粒子の保持が実施される温度において、前記アルカリ性水溶液の蒸気圧が1バール以下である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性水溶液では、アンモニア濃度が10質量%以上30質量%以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記保持後の前記シリカ粒子を回収することと、
前記回収後、水または酸性水溶液を用いて前記シリカ粒子を洗浄することと、
前記洗浄後、前記シリカ粒子を乾燥させることと、
をさらに包含する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルカリ性水溶液は、さらに水酸化ナトリウムを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記平均細孔径Xは、5nm以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記平均細孔径Yは、0.3nm以上15nm以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記シリカ粒子における水酸基密度は、0.4(OH個数/nm2)以上12(OH個数/nm2)以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔質シリカ材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化ガスとなることから、排出量の大幅な削減が迫られている。そこで、火力発電所や工場、自動車等から排出される排気ガスからCO2を選択的に分離、回収する材料や技術の開発が求められている。CO2を選択的に吸収する材料として、例えば、特許文献1および非特許文献1では、多孔質シリカ材料にCO2吸収能を有するアミノ基を導入した化学吸収材料が提案されている。多孔質シリカ材料は、高い表面積を持ち、断熱性にも優れているため、アミノ基を担持する担体として好適に用いることができる。
【0003】
多孔質シリカ材料の製造に関して、特許文献2では、ケイ酸アルカリ水溶液を中和することにより得たシリカヒドロゲルを、スーパーヒートスチームによって100~1000℃の温度で乾燥させ、シリカキセロゲルとする方法が提案されている。かかる方法によると、高純度で化学的に安定した球状シリカゲルが製造できると記載されている。
【0004】
また、特許文献3では、多孔質シリカゲルの細孔物性の調節方法が開示されている。この調節方法では、30~3500nmの大細孔径を有する多孔質シリカゲル原体を、フッ化水素水溶液またはアルカリ水溶液に接触させている。この方法では、水溶液中のフッ化水素またはアルカリ成分と多孔質シリカゲル原体との質量比が、特定の範囲内に定められている。かかる方法によると、多孔質シリカゲル原体の細孔径、細孔容積、および比表面積を所定範囲内で増加させるように調整することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-113337号公報
【特許文献2】特開昭64-33012号公報
【特許文献3】特開2007-238426号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Separation and Purification Technology,Vol.181 (2017),P192-200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、シリカ材料にアルカリ性水溶液を接触させると、該シリカ材料が溶出し得る。このため、多孔質なシリカ材料に対してアルカリ性水溶液を接触させる場合、シリカ材料の細孔内の表面にアルカリ性水溶液が接触し、シリカ材料の細孔径を大きくすることができると考えられる(特許文献3参照)。一方で、アルカリ性水溶液との接触によって、シリカ材料の細孔径を所望の大きさにすることができても、アルカリ性水溶液がシリカ材料を溶出しすぎてしまい、多孔度およびBET比表面積が低下しすぎることがある。この点に関して、改善の余地がまだまだあった。
【0008】
そこで、本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造対象である多孔質シリカ材料の原材料としてのシリカ粒子の多孔度およびBET比表面積の低下を抑制しつつ、平均細孔径を大きくすることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで開示される製造方法は、平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料を製造する方法である。この製造方法は、上記平均細孔径Xよりも小さい平均細孔径Yを有する多孔質なシリカ粒子を用意すること;上記用意された上記シリカ粒子に、水に可溶な有機溶媒を供給すること;上記有機溶媒を供給された上記シリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置すること;および、上記シリカ粒子を上記アルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持すること;を包含する。
【0010】
かかる構成の製造方法では、シリカ粒子に有機溶媒を供給することで、有機溶媒と該シリカ粒子の表面細孔の内表面とを接触させることができる。続くアルカリ性水溶液中での保持によって、シリカ粒子の細孔を拡げることができる。このとき、上述のように接触した有機溶媒によって、アルカリ性水溶液中でシリカ粒子に割れが生じるのを抑制することができる。このため、この方法を実施することで、製造対象である多孔質シリカ材料の原材料としてのシリカ粒子の多孔度およびBET比表面積の低下を抑制しつつ、平均細孔径を大きくすることができる。
【0011】
この製造方法の好ましい一態様では、上記所定期間は、1時間以上250時間以下に設定される。かかる期間の保持を行うことによって、シリカ粒子の平均細孔径を大きくする効果をよりよく実現することができる。
【0012】
この製造方法の好ましい他の一態様では、上記アルカリ性水溶液中での上記シリカ粒子の保持は、5℃以上65℃以下の温度域で実施される。上記保持をかかる温度域で実施することによって、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0013】
好ましくは、上記アルカリ性水溶液中での上記シリカ粒子の保持が実施される温度において、上記アルカリ性水溶液の蒸気圧が1バール以下である。かかる構成によると、シリカ粒子とアルカリ性水溶液中のアルカリ成分とを適切に反応させることができる。
【0014】
この製造方法の好ましい他の一態様では、上記アルカリ性水溶液では、アンモニア濃度が10質量%以上30質量%以下である。かかる構成によると、ここで開示される技術の効果をよりよく実現することができる。
【0015】
好ましい他の一態様では、この製造方法は、上記保持後の上記シリカ粒子を回収することと、上記回収後、水または酸性水溶液を用いて上記シリカ粒子を洗浄することと、上記洗浄後、上記シリカ粒子を乾燥させることと、をさらに包含する。かかる構成によると、粉末状の多孔質シリカ材料を製造することができる。
【0016】
この製造方法の他の一態様では、上記アルカリ性水溶液は、さらに水酸化ナトリウムを含む。かかる構成によると、シリカ粒子の平均細孔径を大きくする効果をよりよく実現することができる。
【0017】
この製造方法の好ましい他の一態様では、上記平均細孔径Xは、5nm以上である。かかる構成の製造方法は、平均細孔径が5nm以上の多孔質シリカ材料の製造に好ましく用いられ得る。
【0018】
この製造方法の好ましい他の一態様では、上記平均細孔径Yは、0.3nm以上15nm以下である。平均細孔径Yが上記範囲にあるシリカ粒子は、この製造方法の原料として好ましく用いられ得る。
【0019】
この製造方法の好ましい他の一態様では、上記シリカ粒子における水酸基密度は、0.4(OH個数/nm2)以上12(OH個数/nm2)以下である。水酸基密度を上記範囲に設定することで、アルカリ性水溶液中のアルカリ成分との反応性を好ましいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【
図3】
図3は、例1および例13の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図4】
図4は、例2および例14の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図5】
図5は、例3の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図6】
図6は、例4の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図7】
図7は、例5の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図8】
図8は、例6の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図9】
図9は、例7の多孔質シリカ材料の写真である。
【
図15】
図15は、例3~例6、および例13の窒素ガスの吸着/脱着等温線と細孔径との解析結果である。
【
図16】
図16は、例3~例6、および例13の窒素ガスの吸着/脱着等温線と細孔径との解析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ここで開示される技術の実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを超えてB未満」、「Aを超えてB以下」、および「A以上B未満」をも意味するものとする。
【0022】
ここで開示される製造方法は、平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料を製造する方法である。この方法は、
平均細孔径Xよりも小さい平均細孔径Yを有する多孔質なシリカ粒子を用意すること;
用意されたシリカ粒子に、水に可溶な有機溶媒を供給すること;
有機溶媒を供給されたシリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置すること;および、
シリカ粒子をアルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持すること;
を包含する。この製造方法を実施することで、多孔質なシリカ粒子の平均細孔径Yを大きくし、平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料(例えば、多孔質シリカ粒子)を得ることができる。ここで、平均細孔径Yを有する多孔質シリカ粒子は、この製造方法の原材料(starting material)である。なお、以下の説明において、原材料たる多孔質シリカ粒子を「シリカ粒子S」とも称し、この製造方法の製造対象(product)たる多孔質シリカ粒子を「シリカ粒子P」とも称する。
【0023】
この方法では、シリカ粒子Sに水に可溶な有機溶媒を供給することで、シリカ粒子Sの表面を有機溶媒でコートすることができる。このとき、シリカ粒子Sの表面細孔の内表面も有機溶媒でコートされ得る。続くアルカリ性水溶液中での保持によって、シリカ粒子の細孔が拡げられる。例えば、シリカ粒子Sを直接水やアルカリ溶液中に配置すると、シリカ粒子Sに割れが生じる虞がある。ここで、この方法では、アルカリ性水溶液中に配置するのに先立って、シリカ粒子Sを有機溶媒と接触させることによって、続くアルカリ性水溶液中の保持において、シリカ粒子Sに割れが生じるのを抑制することができる。このため、この方法を実施することで、シリカ粒子Sの多孔度およびBET比表面積が減少するのを抑制しつつ、平均細孔径を大きくすることができる。
【0024】
まず、ここで開示される製造方法の製造対象たる多孔質シリカ材料について説明する。多孔質シリカ材料は、例えば、複数の多孔質シリカ粒子(シリカ粒子P)を含む、粉末状材料であり得る。全体を100重量%としたときに、かかる粉末材料は、例えば80重量%以上のシリカ粒子Pを含み、好ましくは85重量%以上のシリカ粒子Pを含み、より好ましくは90重量%以上のシリカ粒子Pを含み、さらに好ましくは95重量%以上のシリカ粒子Pを含み、特に好ましくは98重量%以上あるいは99重量%以上のシリカ粒子Pを含み得る。かかる粉末材料は、シリカ粒子P以外の成分(例えば製造工程中で生じた不可避的不純物等)を含み得る。
【0025】
シリカ粒子Pは、主成分としてシリカ(SiO2)を含む。乾燥状態におけるシリカ粒子Pにおけるシリカの含有量は、例えば80質量%以上であり、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%に近いほど好ましい。シリカ粒子Pは、シリカ以外の成分を含んでもよく、例えば、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ホウ素(B)等の元素を含み得る。
【0026】
本明細書において、「乾燥状態における多孔質シリカ材料」の用語は、多孔質シリカ材料の各種パラメータを測定する際に、多孔質シリカ材料に含まれる多孔質シリカ粒子(シリカ粒子P)の内部に溶媒を意図的に含有させている状態と異なることを示すために用いられている。また、本明細書において、「乾燥状態」とは、例えば、多孔質シリカ材料、シリカ粒子P、またはシリカ粒子Sが実質的に乾燥している状態(乾燥させても重量が減少しない状態)をいう。ただし、例えば、多孔質シリカ材料全体、シリカ粒子P、またはシリカ粒子Sの重量のうち、3重量%以下の溶媒が残存している状態は、乾燥状態として許容される。
【0027】
シリカ粒子Pは、複数の細孔を有している。シリカ粒子Pは、例えば、ミクロ孔およびメソ孔を有し得る。「ミクロ孔」とは、IUPAC分類に基づき、細孔径が2nm未満の範囲の細孔を意味する。「メソ孔」とは、IUPAC分類に基づき、細孔径が2nm以上50nm未満の範囲の細孔を意味する。細孔径は、乾燥状態におけるシリカ粒子Pに対し、市販の細孔径分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」)を用いて、BJH法に基づくガス吸着法による細孔径分布を測定することによって、算出することができる。以下、特に断りのない限り、細孔径分布は乾燥状態におけるシリカ粒子Pを測定した場合のことを指す。
【0028】
シリカ粒子Pの平均細孔径Xは、特に限定されない。シリカ粒子Xの平均細孔径は、例えば5nm以上であり得る。平均細孔径Xは、例えば、5nmより大きくてもよく、7nm以上でもよく、9nm以上でもよく、10nm以上でもよい。平均細孔径Xが大きいほど、導入できるアミノ基の量を大きくすることができる。かかる観点から、平均細孔径Xは、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、22nm以上がさらに好ましく、24nm以上が特に好ましい。特に限定するものではないが、平均細孔径は、例えば60nm以下であり、55nm以下であってもよく、50nm以下であってもよく、45nm以下であってもよく、40nm以下であってもよい。
【0029】
なお、本明細書において、「平均細孔径」とは、窒素ガスを用いたガス吸着法により得られる吸脱着等温線の脱着側の等温線(窒素ガス脱着等温線)を基に、BJH法によって計算される細孔径分布において、細孔径が小さい側からの累積が50%である細孔径(D50)をいう。
【0030】
シリカ粒子Pの平均粒子径は、例えば1mm以上であり、1.5mm以上であってもよく、2mm以上であってもよい。平均粒子径が小さすぎる場合には、運搬時等にシリカ粒子P同士が接触することによる摩擦が大きくなりすぎるため、シリカ粒子Pが割れやすくなる虞がある。また、シリカ粒子Pの平均粒子径は、例えば10mm以下であり、5mm以下であってもよく、4mm以下であってもよい。シリカ粒子Pは多孔質であるため、平均粒子径が大きすぎる場合には、シリカ粒子P同士の衝突等によって割れやすくなる虞がある。
【0031】
なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、光学顕微鏡観察に基づいて測定された円相当径の算術平均値をいう。ここで、円相当径とは、顕微鏡観察画像で観察されるシリカ粒子の最も長い径である長径と、該長径と直角に交わる線のうち最も長い径である短径とで形成される楕円の面積と同じ面積を有する円の直径をいう。本明細書において、シリカ粒子の平均粒子径は、ランダムに選択した200個のシリカ粒子の円相当径における算術平均値をいう。
【0032】
シリカ粒子Pの多孔度は、例えば0.4cc/g以上であり、0.5cc/g以上が好ましく、0.6cc/g以上がより好ましく、0.65cc/g以上がさらに好ましく、0.70cc/g以上が特に好ましい。多孔度が0.4cc/gよりも小さくなると、アミノ基の導入効率が低下して、CO2の吸収効率が低下し得る。また、多孔度は、例えば2cc/g以下であり、1.9cc/g以下が好ましく、1.8cc/g以下がより好ましく、さらに好ましくは1.7cc/g以下がさらに好ましく、特に好ましくは1.6cc/g以下である。多孔度が2cc/gよりも大きくなると、シリカ粒子Pの強度が低下しすぎる虞がある。
【0033】
なお、本明細書において、「多孔度」とは、乾燥状態のシリカ粒子1gあたりの、窒素ガス脱着等温線を基にBJH法によって計算される全細孔容積をいう。多孔度は、市販の測定装置(例えばマイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」)を用いて測定することができる。単位「cc/g」は、「mL/g」および「cm3/g」と同義である。
【0034】
シリカ粒子Pのミクロ多孔度は、例えば0.30cc/g以下であり、0.25cc/g以下が好ましく、0.20cc/g以下がより好ましい。ミクロ多孔度が0.30cc/gよりも大きくなると、アミノ基の導入効率が低下して、CO2の吸収効率が低下し得る。
【0035】
ミクロ多孔度は、例えば、細孔径が2nm未満の細孔の容積である。本明細書では、ミクロ多孔度は、乾燥状態のシリカ粒子1gあたりの、窒素ガス脱着等温線における相対圧P/P0が0.1のときの窒素ガスの吸着量から計算された値が採用されている。ミクロ多孔度は、市販の測定装置(例えばマイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」)を用いて測定することができる。
【0036】
シリカ粒子PのBET比表面積は、例えば、50m2/g以上であり、80m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、120m2/g以上がさらに好ましく、150m2/g以上が特に好ましい。BET比表面積がかかる範囲にあることで、アミノ基の導入面積を増大させることで、CO2との接触面積を増大させ、CO2吸収効率を向上させることができる。シリカ粒子PのBET比表面積は、特に限定するものではないが、例えば1000m2/g以下であり、800m2/g以下が好ましく、600m2/g以下がより好ましく、400m2/g以下がさらに好ましい。
【0037】
なお、本明細書において、「BET比表面積」とは、乾燥状態におけるシリカ粒子に対し、窒素ガス吸着法によって測定された表面積をBET法で解析した値をいう。BET比表面積は、市販の測定装置(例えばマイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」)を用いて測定することができる。
【0038】
図1および
図2は、一実施形態に係る製造方法のフロー図である。
図1では、ここで開示される製造方法の概略が示されている。
図2では、
図1よりも詳細に、この実施形態における製造方法のフローが説明されている。
図2には、
図1の各工程に付されたS1~S7の符号が付されている。
【0039】
図1および
図2に示されているように、ここで開示される製造方法は、例えば、用意工程S1と、供給工程S2と、配置工程S3と、保持工程S4と、回収工程S5と、洗浄工程S6と、乾燥工程S7と、を包含し得る。
【0040】
用意工程S1では、例えば、シリカ粒子Sを用意する。シリカ粒子Sは、複数の細孔を有している。シリカ粒子Sは、例えば、ミクロ孔およびメソ孔を有し得る。シリカ粒子Sの平均細孔径Yは、例えば0.3nm以上であり得る。平均細孔径Yは、特に限定するものではないが、例えば、0.5nm以上でもよく、0.8nm以上でもよく、1nm以上でもよく、2nm以上でもよく、3nm以上でもよく、4nm以上でもよい。また、平均細孔径は、例えば、15nm以下であり、10nm以下であってもよく、5nm未満であってもよい。平均細孔径Yが上記範囲にあるシリカ粒子Sは、この製造方法の原料として好ましく用いられ得る。
【0041】
シリカ粒子Sの平均粒子径は、シリカ粒子Pについて所望の平均粒子径を実現できる大きさであれば、特に限定されない。シリカ粒子Sの平均粒子径は、例えば1mm以上であり、1.5mm以上であってもよく、2mm以上であってもよい。また、平均粒子径は、例えば10mm以下であり、5mm以下であってもよく、4mm以下であってもよい。
【0042】
シリカ粒子Sの多孔度は、シリカ粒子Pについて所望の多孔度を実現できる大きさであれば、特に限定されない。シリカ粒子Sの多孔度は、例えば0.5cc/g以上であり、0.6cc/g以上が好ましく、0.65cc/g以上がより好ましく、0.70cc/g以上がさらに好ましい。また、多孔度は、例えば2cc/g以下であり、1.9cc/g以下が好ましく、1.8cc/g以下がより好ましく、1.7cc/g以下がさらに好ましく、特に好ましくは1.6cc/g以下である。
【0043】
シリカ粒子Sのミクロ多孔度は、シリカ粒子Pについて所望のミクロ多孔度を実現できる大きさであれば、特に限定されない。シリカ粒子Sのミクロ多孔度は、例えば0.05cc/g以上であり、0.06cc/g以上が好ましく、0.07cc/g以上がより好ましく、0.075cc/g以上がさらに好ましい。また、ミクロ多孔度は、例えば0.25cc/g以下であり得る。
【0044】
シリカ粒子SのBET比表面積は、シリカ粒子Pについて所望のBET比表面積を実現できる大きさであれば、特に限定されない。シリカ粒子SのBET比表面積は、200m2/g以上であり、250m2/g以上が好ましく、300m2/g以上がより好ましく、350m2/g以上がさらに好ましく、400m2/g以上が特に好ましい。また、BET比表面積は、例えば1000m2/g以下であり、800m2/g以下が好ましく、600m2/g以下がより好ましい。
【0045】
特に限定するものではないが、シリカ粒子Sにおける水酸基密度は、例えば0.4(OH個数/nm2)以上であるとよい。水酸基密度が大きくなると、シリカ粒子Sとアンモニアとの反応効率が高まり得る。このため、後述する配置工程S3で用いられるアルカリ性水溶液中のアンモニア濃度を小さくすることができる。かかる観点から、水酸基密度は、1.0(OH個数/nm2)以上が好ましく、2.0(OH個数/nm2)以上がより好ましく、4.0(OH個数/nm2)以上がさらに好ましい。一方で、水酸基密度が大きすぎると、シリカ粒子Sが化学的に不安定になる虞がある。かかる観点から、水酸基密度は、例えば12(OH個数/nm2)以下であり、11(OH個数/nm2)以下が好ましく、10(OH個数/nm2)以下がより好ましく、9.0(OH個数/nm2)以下がさらに好ましい。水酸基密度を調整する方法は、特に限定されない。例えば、シリカ粒子Sを熱処理することによって、水酸基密度を小さくすることができる。また、酸性水溶液で洗浄すること(後述)によって、水酸基密度を大きくすることができる。
【0046】
なお、本明細書において、「水酸基密度」とは、乾燥状態のシリカ粒子の1nm2当たりの水酸基の個数をいう。水酸基密度は、後述の試験例に記載のとおり、市販の測定装置を用いて測定することができる。シリカ粒子Sの水酸基密度としては、かかる測定値およびメーカー等の公称値が採用され得る。
【0047】
供給工程S2では、例えば、シリカ粒子Sに、水に可溶な有機溶媒を供給する。この工程を実施することで、シリカ粒子Sの細孔内に有機溶媒を導入することができる。有機溶媒がシリカ粒子Sの細孔内表面を保護し、後述のアルカリ性水溶液によってシリカ粒子Sの表面が溶出するのを抑制することができる。このため、本工程を実施することで、シリカ粒子Sの多孔度、ミクロ多孔度、およびBET比表面積の低下を抑制することができる。
【0048】
シリカ粒子Sに有機溶媒を供給する方法は、特に限定されない。一例として、シリカ粒子Sを、有機溶媒中に浸漬することが挙げられる。この場合、例えば、シリカ粒子S1gに対して、1g~5g(好ましくは1g~3g、より好ましくは1g~2g)の有機溶媒を用いるとよい。浸漬期間は、例えば1分以上であってもよく、2分以上であってもよく、また、例えば2時間以下であってもよく、1時間以下であってもよい。浸漬の温度条件は、有機溶媒が揮発しない程度であれば、特に限定されず、例えば5℃~40℃(好ましくは25℃~30℃)に設定されるとよい。浸漬の圧力条件は、浸漬を実施する温度において、有機溶媒が揮発しない程度であれば、特に限定されず、例えば大気圧に設定されるとよい。本工程では、シリカ粒子Sをアルカリ性水溶液B中に静置してもよい。あるいは、有機溶媒の導入効率を高める観点から、反応容器内にシリカ粒子Sと有機溶媒とを投入し、市販の振盪機、攪拌機等を用いて、シリカ粒子Sを有機溶媒中で分散状態としてもよい。この場合において、上記浸漬期間中、反応容器は開放されていてもよく、密閉されていてもよい。なお、有機溶媒の供給方法の他の例としては、ノズル等から噴出される有機溶媒をシリカ粒子Sに吹き付けることによって、有機溶媒を供給することが挙げられる。この場合における諸条件は、上述の条件を参照にしつつ、適宜設定され得る。
【0049】
有機溶媒の種類は、水に可溶であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、例えば、炭素数が3以下の低級アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノール);アセトン等のケトン;等が挙げられる。エタノールおよびアセトンが好ましく用いられ得る。なお、有機溶媒は、1種単独であってもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0050】
配置工程S3では、例えば、供給工程S2で有機溶媒を供給されたシリカ粒子Sを、アルカリ性水溶液中に配置する。この工程を実施することで、アルカリ成分とシリカ粒子Sとを反応させて、シリカ粒子Sの細孔を大きくすることができる。このため、本工程を実施することで、シリカ粒子Sの平均細孔径を大きくすることができる。
【0051】
配置方法は、特に限定するものではないが、上記浸漬期間経過後に、供給工程S2でシリカ粒子Sと有機溶媒とが投入された反応容器に、アルカリ性水溶液を投入することが挙げられる。この場合において、以下、説明の便宜上、反応容器に投入する前のアルカリ性水溶液を「アルカリ性水溶液A」、反応容器に投入した後のアルカリ性水溶液(すなわち、反応容器内の液性成分)を「アルカリ性水溶液B」とも称する。
【0052】
アルカリ性水溶液Aは、アンモニアを含む。アルカリ性水溶液Aは、アンモニア水溶液であることが好ましい。アルカリ性水溶液Aのアンモニア濃度は、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度が所望の濃度となるように適宜設定され得る。アルカリ性水溶液Aとして、例えば、アンモニア濃度が概ね5重量%以上のアンモニア水溶液が用いられ得る。アルカリ性水溶液Aのアンモニア濃度は、例えば15重量%以上であり、20重量%以上が好ましく、22重量%以上がより好ましく、24重量%以上がさらに好ましい。特に限定するものではないが、アルカリ性水溶液Aのアンモニア濃度は、例えば40重量%以下であり、取り扱い性の観点から、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0053】
アルカリ性水溶液Aの量は、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度が所望の濃度となるように適宜設定され得る。例えば、シリカ粒子S1gに対するアルカリ性水溶液Aの量は、例えば1g以上であり、2g以上が好ましく、また、例えば15g以下とするとよく、10g以下が好ましい。
【0054】
アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度は、例えば、5重量%以上であり得る。アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度が高くなるほど、シリカ粒子Sの細孔を大きくすることができ、延いては、シリカ粒子Pの平均細孔径をより大きなものとすることができる。かかる観点から、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度は、6重量%以上が好ましく、8重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、12重量%以上が特に好ましい。一方で、取り扱い性の観点から、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度は、30重量%以下が好ましく、29重量%以下がより好ましい。上述の濃度範囲に設定されたアルカリ性水溶液Bにシリカ粒子Sを配置することで、シリカ粒子Sの多孔度および比表面積の低下を抑制しつつ、シリカ粒子Sの平均細孔径を大きくすることができる。好ましい一態様では、アルカリ性水溶液Bでは、アンモニア濃度が10質量%以上25質量%以下である。なお、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度は、アルカリ性水溶液Bの液性成分全体を100重量%としたときのアンモニアの含有割合(重量%)である。
【0055】
アルカリ性水溶液Bは、供給工程S2で供給された有機溶媒を含み得る。有機溶媒を含むことで、シリカ粒子Sの表面の溶出を抑制することができ、延いては、シリカ粒子Sの多孔度および比表面積の低下を抑制することができる。アルカリ性水溶液Bにおける有機溶媒の濃度は、特に限定されず、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度、後述する保持工程S4の諸条件等に応じて適宜設定され得る。アルカリ性水溶液Bにおける有機溶媒の濃度は、概ね5重量%~50重量%に設定され得る。なお、アルカリ性水溶液Bにおける有機溶媒の濃度は、アルカリ性水溶液Bの液性成分全体を100重量%としたときの有機溶媒の含有割合(重量%)である。
【0056】
保持工程S4では、例えば、シリカ粒子Sをアルカリ性水溶液B中に配置した状態で、所定時間保持(エージング)する。この工程では、シリカ粒子Sとアルカリ成分(ここではアンモニア)との反応を進行させる。以下の説明において、配置工程S3と保持工程S4とを合わせて「アルカリ処理」とも称する。上記所定期間(アルカリ処理の期間)は、温度条件、圧力条件、アルカリ性水溶液Bにおけるアルカリ成分(ここでは、アンモニア)の濃度等によって適宜設定され得る。保持期間は、例えば1時間以上であり得る。保持の期間が長くなるほど、シリカ粒子Sの平均細孔径を大きくすることができ、延いては、シリカ粒子Pの平均細孔径をより大きなものとすることができる。かかる観点から、保持の期間は、例えば5時間以上であり、10時間以上であってもよく、20時間以上であってもよく、50時間以上であってもよく、90時間以上であってもよく、100時間以上であってもよく、150時間以上であってもよく、200時間以上であってもよい。一方で、保持の期間が長すぎると、シリカ粒子Sの多孔度、ミクロ多孔度、BET比表面積等が低下しすぎる傾向にある。かかる観点から、保持の期間は、概ね300時間以下に設定されるとよく、例えば250時間以下が好ましい。
【0057】
温度条件は、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニアおよび有機溶媒が揮発しない程度であり、かつ、アルカリ性水溶液Bにおける水分が蒸発しない程度であれば、特に限定されない。温度条件は、保持の期間、圧力条件、アルカリ性水溶液Bにおけるアンモニア濃度等によって適宜設定され得る。アルカリ性水溶液B中でのシリカ粒子の保持は、例えば5℃以上65℃以下の温度域で実施され得る。
【0058】
圧力条件は、保持工程S4を実施する温度において、アルカリ性水溶液Bからアンモニアが揮発しないように設定されればよく、特に限定されない。例えば、アルカリ性水溶液B中でのシリカ粒子Sの保持が実施される温度において、アルカリ性水溶液Bの蒸気圧が1バール以下であることが好ましい。このように圧力条件を設定することによって、シリカ粒子Sとアルカリ性水溶液中のアルカリ成分(例えば、アンモニア)とを、該アルカリ成分を揮発させずに、適切に反応させることができる。圧力条件は、例えば大気圧または大気圧以下の圧力に設定されるとよい。
【0059】
特に限定するものではないが、反応容器を所望の温度条件および所望の圧力条件に設定された恒温槽内等に配置して、保持工程S4を実施するとよい。また、特に限定するものではないが、本工程では、シリカ粒子Sをアルカリ性水溶液B中に静置してもよい。あるいは、アルカリ成分とシリカ粒子Sとの反応を促進する観点から、市販の振盪機、攪拌機等を用いて、シリカ粒子Sをアルカリ性水溶液中で分散状態としてもよい。保持の期間中、反応容器は開放されていてもよく、密閉されていてもよい。
【0060】
なお、アルカリ性水溶液Aがアンモニア水溶液である場合について配置工程S3および保持工程S4を説明したが、これに限定されない。アルカリ性水溶液Aは、アンモニア水溶液と、その他のアルカリ性水溶液との混合水溶液であってもよい。その他のアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。この場合において、アルカリ性水溶液Bは、アンモニアの他に水酸化ナトリウムを含み得る。アルカリ性水溶液Bが適度な濃度に調整された水酸化ナトリウムを含むことによって、シリカ粒子Sの平均細孔径を大きくする効果をよりよく実現することができる。かかる観点から、アルカリ性水溶液Bにおける水酸化ナトリウムの濃度は、例えば0.005重量%以上であり、0.01重量%以上が好ましく、0.03重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましい。一方で、アルカリ性水溶液Bにおける水酸化ナトリウムの濃度が大きすぎると、シリカ粒子Sの表面を溶出させてしまい、シリカ粒子Sの多孔度、ミクロ多孔度、BET比表面積を低下させすぎる傾向がある。かかる観点から、アルカリ性水溶液Bにおける水酸化ナトリウムの濃度は、0.1重量%以下が好ましく、0.075重量%以下がより好ましい。
【0061】
回収工程S5では、例えば、アルカリ性水溶液B中で保持された後(保持工程S4後)のシリカ粒子Sを回収する。特に限定するものではないが、例えば、保持工程S4後のシリカ粒子Sを、遠心分離によって、アルカリ性水溶液Bから回収するとよい。
【0062】
洗浄工程S6では、例えば、回収工程S5の後、シリカ粒子Sを、水または酸性水溶液と、有機溶媒と、で洗浄する。この工程では、例えば、まず、シリカ粒子Sを水(例えば脱イオン水)または酸性水溶液(例えば0.5M~1.5M硫酸、好ましくは1M硫酸)で1回又は複数回(好ましくは4回以上)洗浄し、アルカリ性水溶液B中の成分、アルカリ性水溶液Bに含まれ得る種々のイオン(例えばNaイオン)等を除去する。その後、有機溶媒によって1回または複数回(好ましくは4回以上)洗浄し、シリカ粒子Sの細孔内の水等を除去する。有機溶媒としては、例えば、炭素数が3以下の低級アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、および2-プロパノール);エチレングリコール;アセトン等のケトン;等、水に可溶な有機溶媒が挙げられる。
【0063】
乾燥工程S7では、例えば、洗浄後、シリカ粒子Sを乾燥させる。シリカ粒子Sを乾燥させる方法は、この種の技術で用いられる従来公知の方法を特に制限なく採用することができる。シリカ粒子Sを急速に乾燥させると割れが生じ易いため、例えば、1週間~2週間かけて徐々に乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、例えば20℃~60℃(例えば50℃程度)であるとよく、例えば、湿度制御されたオーブン内で乾燥させることが好ましい。湿度は、25%~70%程度とするとよい。なお、乾燥は周囲条件(ambient conditions)であってもよい。
【0064】
上記のとおり、
図1および
図2に示された各工程を含む製造方法を実施することによって、シリカ粒子Sの多孔度等が低下するのを抑制しつつ、細孔径を大きくし、シリカ粒子Pを製造することができる。
【0065】
以上、
図1および
図2に示されたフロー図に従って、ここで開示される製造方法の実施形態を説明した。しかし、これに限定されない。例えば、ここで開示される製造方法は、
図1および
図2に示されている工程S1~工程S7以外の工程を包含してもよい。例えば、用意工程S1と供給工程S2との間に、必要に応じて、シリカ粒子Sに水酸基を導入する水酸基導入工程を包含してもよい。水酸基導入工程では、例えば、シリカ粒子Sを酸性水溶液で洗浄するとよい。酸性溶液を用いた洗浄の方法は、特に限定されない。酸性水溶液としては、例えば、硫酸、硝酸等を用いることが好ましい。特に限定するものではないが、水酸基導入工程と供給工程S2との間には、シリカ粒子Sを有機溶媒で洗浄することが好ましい。
【0066】
また、例えば、この製造方法は、必要に応じて、供給工程S2と配置工程S3との間に、有機溶媒を除去する除去工程を包含してもよい。この場合において、配置工程S3では、有機溶媒が除去されたシリカ粒子Sをアルカリ性水溶液中に投入することによって配置してもよい。
【0067】
また、例えば、この製造方法は、必要に応じて、洗浄工程S6の後、または乾燥工程S7の後に、シリカ粒子の細孔にアミノ化合物を導入するアミノ化合物導入工程を包含してもよい。シリカ粒子Pの細孔にアミノ化合物を導入することによって、シリカ粒子PにCO2吸収能を付与することができる。この場合、シリカ粒子Pは、CO2吸収能を有するアミンを担持する担体として用いられ得る。なお、シリカ粒子の細孔にアミノ化合物を導入する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの説明を省略する。
【0068】
なお、ここで開示される技術は、以下の項目1~項目10に記載の製造方法を包含する。
【0069】
[項目1]
平均細孔径Xを有する多孔質シリカ材料を製造する方法であって、
前記平均細孔径Xよりも小さい平均細孔径Yを有する多孔質なシリカ粒子を用意すること;
前記用意された前記シリカ粒子に、水に可溶な有機溶媒を供給すること;
前記有機溶媒を供給された前記シリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置すること;および、
前記シリカ粒子を前記アルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持すること;
を包含する、製造方法。
【0070】
[項目2]
前記所定期間は、1時間以上250時間以下に設定される、項目1に記載の製造方法。
【0071】
[項目3]
前記アルカリ性水溶液中での前記シリカ粒子の保持は、5℃以上65℃以下の温度域で実施される、項目1または2に記載の製造方法。
【0072】
[項目4]
前記アルカリ性水溶液中での前記シリカ粒子の保持が実施される温度において、前記アルカリ性水溶液の蒸気圧が1バール以下である、項目3に記載の製造方法。
【0073】
[項目5]
前記アルカリ性水溶液では、アンモニア濃度が10質量%以上30質量%以下である、項目1~4のいずれか一つに記載の製造方法。
【0074】
[項目6]
前記保持後の前記シリカ粒子を回収することと、
前記回収後、水または酸性水溶液を用いて前記シリカ粒子を洗浄することと、
前記洗浄後、前記シリカ粒子を乾燥させることと、
をさらに包含する、項目1~5のいずれか一つに記載の製造方法。
【0075】
[項目7]
前記アルカリ性水溶液は、さらに水酸化ナトリウムを含む、項目1~6のいずれか一つに記載の製造方法。
【0076】
[項目8]
前記平均細孔径Xは、5nm以上である、項目1~7のいずれか一つに記載の製造方法。
【0077】
[項目9]
前記平均細孔径Yは、0.3nm以上15nm以下である、項目1~8のいずれか一つに記載の製造方法。
【0078】
[項目10]
前記シリカ粒子における水酸基密度は、0.4(OH個数/nm2)以上12(OH個数/nm2)以下である、項目1~9のいずれか一つに記載の製造方法。
【0079】
次に、ここで開示される技術に関する試験例を説明する。なお、以下に示す試験例は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は重量基準である。
【0080】
<原材料>
多孔質シリカ粉末の原材料として、シリカ粒子A(平均粒子径:2mm)(富士シリシア化学製のフジシリカゲルB型球状)と、シリカ粒子B(平均粒子径:3mm)(テクノスナカタ製のシリカゲルB型)とを用意した。なお、平均粒子径は、メーカーの公称値である。
【0081】
-水酸基密度の測定-
シリカ粒子Aの水酸基密度(OH個数/nm2)と、とシリカ粒子Bの水酸基密度(OH個数/nm2)とを、リガク社製の熱機械分析装置「Thermo plus EVO2TMA8311」を用いて測定した。測定サンプルとして、一粒のシリカ粒子Aまたは一粒のシリカ粒子Bを用いた。流速25ml/minのN2ガス中にサンプル粒子を置き、室温から1000℃まで、昇温速度10℃/minで該サンプル粒子を加熱し、当該サンプル粒子の重量を測定した。120℃から1000℃までの重量低下分を、水酸基密度の算出に用いた。かかる重量低下分100%を、シロキサン結合の形成によるH2Oの減少分とみなした。かかるH2Oの減少分から、サンプル粒子の単位重量(g)当たりの水酸基の量を算出した。この算出値と、BET法に基づく表面積(m2/g)とを用いて、水酸基密度(OH個数/nm2)を算出した。シリカ粒子Aの水酸基密度は、4.97(OH個数/nm2)であった。シリカ粒子Bの水酸基密度は、4.70(OH個数/nm2)であった。
【0082】
[例1]
まず、1gの原材料としてのシリカ粒子Aと、2gの有機溶媒としてのアセトンと、を反応容器内に投入して、混合した。その後、25℃の大気圧下で1分間~2分間静置した。
【0083】
上記混合物に、8gの水と、10gのアルカリ性水溶液Aとしての25%アンモニア水溶液を加えた。ここで得られた混合物におけるアンモニア濃度は、12.5%であった。かかる混合物における各成分の混合比(シリカ粒子:有機溶媒:水:アルカリ性水溶液A)は、1:2:8:10であった。かかる混合比は、混合時の各成分の重量比である(以下同じ)。
【0084】
次いで、25℃の大気圧下で143時間、混合物を保持した。なお、25℃における、かかる混合物(アルカリ性水溶液B)の蒸気圧は0.16バールであった。その後、シリカ粒子Aを回収した。回収後のシリカ粒子Aを、水を用いて複数回洗浄した。洗浄後、シリカ粒子Aを50℃で3時間乾燥させた。このようにして、本例の多孔質シリカ材料を作製した。
【0085】
[例2]
原材料としてシリカ粒子Bを用いたこと以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。
【0086】
[例3~6]
シリカ粒子と有機溶媒とを混合して得た混合物に、アルカリ性水溶液Aとして25%アンモニア水溶液を加えた。このときの各成分の混合比(シリカ粒子:有機溶媒:水:アルカリ性水溶液A)を、表1の「混合比*2」欄に示すものとした。10℃未満の温度の大気圧下で236時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、各例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、各例におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の「NH3蒸気圧(bar)」欄に示すとおりである。
【0087】
[例7]
有機溶媒として、エタノール(工業グレード)を使用した。60℃の大気圧下で5時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、60℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の「NH3蒸気圧(bar)」欄に示すとおりである。
【0088】
[例8]
有機溶媒として、エタノール(工業グレード)を使用した。60℃の大気圧下で20時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、60℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の「NH3蒸気圧(bar)」欄に示すとおりである。
【0089】
[例9]
40℃の大気圧下で90時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、40℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の「NH3蒸気圧(bar)」欄に示すとおりである。
【0090】
[例10]
40℃の大気圧下で90時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例7と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、40℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の該当欄に示すとおりである。
【0091】
[例11]
有機溶媒として、エタノール(工業グレード)を使用した。アルカリ性水溶液Aとして、水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液との混合液を使用した。シリカ粒子と有機溶媒とを混合して得た混合物に、6gの水と、1gの1%水酸化ナトリウム水溶液と、7gの25%アンモニア水溶液と、を加え、アルカリ処理を実施した。このときの混合物における各成分の混合比(シリカ粒子:有機溶媒:水:アルカリ性水溶液A)は、1:2:6:8であった。40℃の大気圧下で100時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、40℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の該当欄に示すとおりである。
【0092】
[例12]
原材料として、例10で得られたシリカ粒子(多孔質シリカ材料)を用いた。本例では、シリカ粒子への有機溶媒の供給を行わなかった。シリカ粒子に、アルカリ性水溶液Aとしての9gの1%水酸化ナトリウム水溶液を加え、アルカリ処理を実施した。このときの混合物における各成分の混合比(シリカ粒子:有機溶媒:水:アルカリ性水溶液A)は、1:0:0:9であった。40℃の大気圧下で100時間のアルカリ処理を実施した。それ以外は例1と同じ材料および手順を用いて、本例の多孔質シリカ材料を作製した。
【0093】
[例13]
シリカ粒子Aそのものを本例の多孔質シリカ材料とした。
【0094】
[例14]
シリカ粒子Bそのものを本例の多孔質シリカ材料とした。
【0095】
[例15]
まず、シリカ粒子Aを、850℃の温度条件下、空気中で30分間焼成した。焼成後のシリカ粒子Aを、室温にまで冷却した後、アルカリ性水溶液Aとしての28%のアンモニア水溶液を用いて、25℃の大気圧下で165時間のアルカリ処理を実施した。このとき、シリカ粒子Aと、水と、上記アンモニア水溶液とを混合比(シリカ粒子A:水:28%のアンモニア水溶液)が1:10:10となるように混合した。かかる混合物中のアンモニア濃度は、14%であった。その後、シリカ粒子Aを回収した。回収後のシリカ粒子Aを、水を用いて複数回洗浄した。洗浄後、シリカ粒子Aを50℃で3時間乾燥させた。このようにして、本例の多孔質シリカ材料を作製した。なお、本例に関して、25℃におけるアルカリ性水溶液Bの蒸気圧は、表1の該当欄に示すとおりである。
【0096】
[例16]
まず、シリカ粒子Aを、850℃の温度条件下、空気中で30分間焼成した。焼成後のシリカ粒子Aを室温にまで冷却した。このシリカ粒子Aに対して、CEM社製のマイクロ波オートクレーブ反応装置(MARS 6(登録商標))を用いて、160℃で1.5時間の処理を実施した。処理後、シリカ粒子Aを50℃で3時間乾燥させた。このようにして、本例の多孔質シリカ材料を作製した。
【0097】
なお、例15および例16に関して、焼成後のシリカ粒子Aの水酸基密度を上述の装置および手順を用いて測定した。焼成後のシリカ粒子Aの水酸基密度は、0.43(OH個数/nm2)であった。
【0098】
各例の多孔質シリカ材料を
図3~
図14に示す。
図3は、例13の多孔質シリカ材料(左側)と例1の多孔質シリカ材料(右側)との写真である。
図4は、例14の多孔質シリカ材料(左側)と例2の多孔質シリカ材料(右側)との写真である。
図5は、例3の多孔質シリカ材料の写真である。
図6は、例4の多孔質シリカ材料の写真である。
図7は、例5の多孔質シリカ材料の写真である。
図8は、例6の多孔質シリカ材料の写真である。
図9は、例7の多孔質シリカ材料の写真である。
図10は、例8の多孔質シリカ材料の写真である。
図11は、例9の多孔質シリカ材料の写真である。
図12は、例10の多孔質シリカ材料の写真である。
図13は、例11の多孔質シリカ材料の写真である。
図14は、例12の多孔質シリカ材料の写真である。
【0099】
<ミクロ多孔度、多孔度、平均細孔径、および、BET比表面積の測定>
各例の多孔質シリカ材料について、ミクロ多孔度、多孔度、平均細孔径、および、BET比表面積を測定した。測定には、マイクロトラック・ベル社の高精度ガス/蒸気吸着量測定装置「BELSORP(登録商標) MAX」を使用した。測定のための吸着ガスとして、窒素ガスを用いた。細孔径分布(細孔径プロット)は、窒素ガスの吸着等温線または脱着等温線を基にして、BJH法により計算することで取得した。細孔径分布において、細孔径が小さい方からの累積が50%である細孔径D
50を、多孔質シリカ材料の平均細孔径とした。結果を表1の該当欄に示す。また、参考として、
図15および
図16に、例3~例6、および例13の窒素ガスの吸着/脱着等温線と細孔径との解析結果を示す。
図15では、例3~例6、および例13について、相対圧P/P0(横軸)に対する窒素ガスの積算吸着量(縦軸)の関係が示されている。Pは、吸着温度77K(-196℃)における、吸着平衡状態の窒素ガスの圧力である。P0は、同温度条件における、窒素ガスの飽和蒸気圧である。
図16は、例3~例6、および例13について、窒素ガスの脱着等温線を基にして、BJH法により計算することで取得した細孔径分布である。
図16では、横軸が細孔径であり、縦軸が微分細孔容積である。
【0100】
各例におけるミクロ多孔度変化率、多孔度変化率、BET比表面積変化率、および、平均細孔径変化率を該当欄に示す。表1の該当欄に示されている各変化率に関して、マイナス(符号あり)の数値は減少を示しており、プラス(符号なし)の数値は増加を示している。
【0101】
ミクロ多孔度変化率に関して、例1、例3~例12、例15、および例16のミクロ多孔度変化率は例13のミクロ多孔度を100%としたときの変化率であり、例2のミクロ多孔度変化率は例14のミクロ多孔度を100%としたときの変化率である。例えば、例1のミクロ多孔度変化率は、以下の式(1):
ミクロ多孔度変化率(%)
=(例1のミクロ多孔度/例13のミクロ多孔度)×100-100 (1)
を用いて算出した。
【0102】
多孔度変化率に関して、例1、例3~例12、例15、および例16の多孔度変化率は例13の多孔度を100%としたときの変化率であり、例2の多孔度変化率は例14の多孔度を100%としたときの変化率である。例えば、例1の多孔度変化率は、以下の式(2):
多孔度変化率(%)
=(例1の多孔度/例13の多孔度)×100-100 (2)
を用いて算出した。
【0103】
BET比表面積変化率に関して、例1、例3~例12、例15、および例16のBET比表面積変化率は例13のBET比表面積を100%としたときの変化率であり、例2のBET比表面積変化率は例14のBET比表面積を100%としたときの変化率である。例えば、例1のBET比表面積変化率は、以下の式(3):
BET比表面積変化率(%)
=(例1のBET比表面積/例13のBET比表面積)×100-100 (3)
を用いて算出した。
【0104】
平均細孔径変化率に関して、例1、例3~例12、例15、および例16の平均細孔径変化率は例13の平均細孔径を100%としたときの変化率であり、例2の平均細孔径変化率は例14の平均細孔径を100%としたときの変化率である。例えば、例1の平均細孔径変化率は、以下の式(4):
平均細孔径変化率(%)
=(例1の平均細孔径/例13の平均細孔径)×100-100(4)
を用いて算出した。
【0105】
なお、例15および例16に関して、焼成後であり、アルカリ性水溶液中に配置する前またはオートクレーブ処理を実施する前のシリカ粒子Aのミクロ多孔度、多孔度、平均細孔径、および、BET比表面積を上述の測定装置および手順を用いて測定した。参考として、測定値を以下に示す。例15の、焼成後、かつ、アルカリ性水溶液中に配置する前のシリカ粒子Aに関して、ミクロ多孔度は0.13cc/gであり、多孔度は0.54cc/gであり、BET比表面積は366m2/gであり、平均細孔径は5.2nmであった。例16の、焼成後、かつ、オートクレーブ処理前のシリカ粒子Aに関して、ミクロ多孔度は0.17cc/gであり、多孔度は0.62cc/gであり、BET比表面積は489m2/gであり、平均細孔径は4.4nmであった。
【0106】
【0107】
<評価>
この試験例では、シリカ粒子の平均細孔径が原材料の平均細孔径よりも大きくなった場合に「効果あり」と評価した。また、シリカ粒子の平均細孔径が大きくなるほど、効果が高いと評価した。一方で、上記方法を実施すると、シリカ粒子のミクロ多孔度、多孔度、および、BET比表面積は、原材料での各値から減少し得る。この試験例では、ミクロ多孔度変化率に関して、例13または例14から70%以内の減少であれば、許容範囲内と評価した。多孔度変化率に関して、例13または例14から30%以内の減少であれば、許容範囲内と評価した。BET比表面積変化率に関して、例13または例14から70%以内の減少であれば、許容範囲内と評価した。
【0108】
表1に示されているように、シリカ粒子Aまたはシリカ粒子Bに、水に可溶な有機溶媒を供給することと、シリカ粒子を、アンモニアを含むアルカリ性水溶液中に配置することと、シリカ粒子をアルカリ性水溶液中に配置した状態で、所定期間保持することと、を包含する製造方法を実施した例1~例11で得られた多孔質シリカ材料の平均細孔径が、原材料の平均細孔径よりも大きくなった。一方で、ミクロ多孔度、多孔度、および、BET比表面積は原料の各値から減少したが、この減少度合いは許容範囲内であった。これによって、ここで開示される製造方法を実施することで、ミクロ多孔度、多孔度、および、BET比表面積の減少を抑制しつつ、原料であるシリカ粒子の平均細孔径を大きくできることがわかった。
【0109】
また、表1および
図3~
図14に示されているように、例1~例12のシリカ粒子は、濁度が高まっている。原料としてのシリカ粒子Aおよびシリカ粒子B(
図3および
図4の左側)と比較して、濁度が高まっている。その理由は、シリカ粒子の平均細孔径が大きくなったからであると考えられる。
【0110】
また、アンモニアを含まないアルカリ性水溶液を用いた例12では、平均細孔径の増加度合いが最も大きかった一方で、ミクロ多孔度およびBET比表面積がともに80%以上減少した。この結果は、シリカ粒子が、アルカリ性水溶液に含まれた水酸化ナトリウムに溶かされたことに起因すると考えられる。これに対して、水酸化ナトリウムとアンモニアとを含むアルカリ性水溶液を用いた例11では、平均細孔径の大きさが25nm以上であり、ミクロ多孔度の減少度合いおよびBET比表面積の減少度合いがいずれも70%以下であった。このことから、アンモニアを含むアルカリ性水溶液に、適宜濃度を調節して水酸化ナトリウムを加えることで、種々の細孔パラメータの減少を抑制しつつ、平均細孔径を大きくする効果を実現できることがわかった。
【0111】
以上、ここで開示される技術を説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得る。
【符号の説明】
【0112】
S1 用意工程
S2 供給工程
S3 配置工程
S4 保持工程
S5 回収工程
S6 洗浄工程
S7 乾燥工程