(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062554
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】差圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/02 20060101AFI20240501BHJP
G01L 19/12 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01L13/02 Z
G01L19/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170458
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB05
2F055CC02
2F055EE14
2F055FF11
2F055GG32
2F055GG43
(57)【要約】
【課題】過大差圧を精度良く検出する。
【解決手段】差圧センサ10は、流体の高圧側の圧力HPを受けて変形するダイアフラム12Hと、流体の低圧側の圧力LPを受けて変形するダイアフラム12Lと、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を電気信号EH及びELにそれぞれ変換する変換回路15と、を備える。差圧センサ10は、ダイアフラム12H及び12Lを支持し、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を連動させる連動オイルOが充填された支持部材11と、電気信号EH及びELに基づいて圧力HPと圧力LPとの差圧を導出する処理回路16と、を備える。処理回路16は、電気信号ELが示すダイアフラム12Lの変形が、支持部材側11と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、圧力HPと圧力LPとの差圧が過大差圧であると判別する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の高圧側の第1圧力を受けて変形する第1ダイアフラムと、
前記流体の低圧側の第2圧力を受けて変形する第2ダイアフラムと、
前記第1ダイアフラムの変形を第1電気信号に変換し、かつ、前記第2ダイアフラムの変形を第2電気信号に変換する変換回路と、
前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとを支持する支持部材であり、前記第1ダイアフラムの変形と前記第2ダイアフラムの変形とを連動させる連動流体が充填された支持部材と、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号に基づいて前記第1圧力と前記第2圧力との差圧を導出する処理回路と、を備え、
前記処理回路は、前記第2電気信号が示す前記第2ダイアフラムの変形が、前記支持部材側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧が過大差圧であると判別する、
差圧センサ。
【請求項2】
前記変換回路は、
前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第1ノードを介して直列に接続された2つの第1歪みゲージと、
前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する、第2ノードを介して直列に接続された2つの第2歪みゲージと、を備え、
前記第1ノードから前記第1電気信号を出力し、
前記第2ノードから前記第2電気信号を出力する、
請求項1に記載の差圧センサ。
【請求項3】
前記変換回路は、
ブリッジ接続された複数の第3歪みゲージを備え、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する第1フルブリッジ回路と、
ブリッジ接続された複数の第4歪みゲージを備え、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する第2フルブリッジ回路と、を備える、
請求項1に記載の差圧センサ。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第1ダイアフラムの前記支持部材側への過大な変形を規制するストッパ面を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の差圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体の高圧側の第1圧力を受けて変形する第1ダイアフラムと、流体の低圧側の第2圧力を受けて変形する第2ダイアフラムと、を備え、第1圧力と第2圧力との差圧を導出する差圧センサが知られている(特許文献1)。
【0003】
上記の差圧が過大となった場合、第1ダイアフラムがダイアフラム室のストッパ面に当接することで、その変形が止まり、差圧が飽和状態になる。差圧が飽和状態になったことを検出することで過大差圧が検出可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、第1ダイアフラムがストッパ面に当たるのに必要な差圧よりも大きな過大差圧(例えば、前記差圧の10倍以上の差圧)が生じた場合、第1ダイアフラムがストッパ面に押し付けられて歪んでしまう。この歪みには、第1ダイアフラムが圧縮されたことによる歪みの他、第1ダイアフラムに設けられた歪みゲージの存在及び又はストッパ面の凹凸の存在による歪みも含まれ得る。このような歪みにより、監視対象の差圧は、あたかも過大差圧が発生していないような挙動を示すことがある。そして、この挙動により、実際には過大差圧が生じているにも関わらず過大差圧が検出されないことがある。
【0006】
本発明は、過大差圧を精度良く検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る差圧センサは、流体の高圧側の第1圧力を受けて変形する第1ダイアフラムと、前記流体の低圧側の第2圧力を受けて変形する第2ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの変形を第1電気信号に変換し、かつ、前記第2ダイアフラムの変形を第2電気信号に変換する変換回路と、前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとを支持する支持部材であり、前記第1ダイアフラムの変形と前記第2ダイアフラムの変形とを連動させる連動流体が充填された支持部材と、前記第1電気信号及び前記第2電気信号に基づいて前記第1圧力と前記第2圧力との差圧を導出する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記第2電気信号が示す前記第2ダイアフラムの変形が、前記支持部材側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、前記第1圧力と前記第2圧力との差圧が過大差圧であると判別する。
【0008】
一例として、前記変換回路は、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第1ノードを介して直列に接続された2つの第1歪みゲージと、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する、第2ノードを介して直列に接続された2つの第2歪みゲージと、を備え、前記第1ノードから前記第1電気信号を出力し、前記第2ノードから前記第2電気信号を出力する。
【0009】
一例として、前記変換回路は、ブリッジ接続された複数の第3歪みゲージを備え、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する第1フルブリッジ回路と、ブリッジ接続された複数の第4歪みゲージを備え、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する第2フルブリッジ回路と、を備える。
【0010】
一例として、前記支持部材は、前記第1ダイアフラムの前記支持部材側への過大な変形を規制するストッパ面を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過大差圧が精度良く検出される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る差圧センサを概略平面図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る差圧センサの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0014】
(実施形態)
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る差圧センサ10は、支持部材11と、ダイアフラム層12と、シール部材13と、導圧部材14と、変換回路15と、処理回路16と、を備える。差圧センサ10は、被測定流体(例えば、所定の配管を流れる流体)の高圧側の圧力HPと、低圧側の圧力LPとの差圧を検出するように構成されている。差圧センサ10は、例えば差圧発信機の差圧検出部として構成される。
【0015】
支持部材11は、ダイアフラム層12を支持する。支持部材11は、第1層11Aと第2層11Bとを積層した積層構造を有する。第1層11Aには、上下方向に貫通する貫通孔11Dが設けられている。第2層11Bの下面には、凹部からなるダイアフラム室11H及び11Lが設けられている。第1層11Aから第2層11Bにわたってダイアフラム室11H及び11Lを互いに連通させる連通路11Eが設けられている。貫通孔11Dと連通路11Eとは繋がっている。貫通孔11Dの上部は、シール部材13でシールされている。
【0016】
ダイアフラム層12は、第2層11Bの下面に固定されている。ダイアフラム層12は、第2層11Bのダイアフラム室11H及び11Lを覆い、これらをシールしている。ダイアフラム層12のうちダイアフラム室11Hを覆う部分をダイアフラム12Hともいう。ダイアフラム12Hは、支持部材11に支持され、圧力HPを受けて変形する。ダイアフラム層12のうちダイアフラム室11Lを覆う部分をダイアフラム12Lともいう。ダイアフラム12Lは、支持部材11に支持され、圧力LPを受けて変形する。
【0017】
ダイアフラム層12及びシール部材13によりシールされた、貫通孔11D、連通路11E、ダイアフラム室11H及び11Lには、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を連動させる連動流体としての連動オイルOが充填されている。
【0018】
導圧部材14は、ダイアフラム層12の下面に固定され、上下方向に延びた貫通孔からなる導圧路14H及び14Lを有する。導圧路14Lは、低圧側の圧力LPを、ダイアフラム12Lに導く。導圧路14Hは、高圧側の圧力HPを、ダイアフラム12Hに導く。
【0019】
この実施の形態では、高圧側の圧力HPによりダイアフラム12Hが、支持部材11側(上側)に凸に変形する(
図2の一点鎖線参照)。このダイアフラム12Hの変形は、連動オイルOを介して、ダイアフラム12Lに伝達され、ダイアフラム12Lは、支持部材11側とは反対側(下側)に凸に変形する(
図2の一点鎖線参照)。ダイアフラム12Lには、低圧側の圧力LPが加わるが、圧力HP>圧力LPの関係から、ダイアフラム12Lは、支持部材11側と反対側に凸に変形する。このように、圧力HPと圧力LPとの差である差圧の発生時は、ダイアフラム12H及び12Lが、異なる側(ここでは、上下反対方向)に凸に変形する。
【0020】
ダイアフラム室11Hの内面は、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に大きく変形したときに、このダイアフラム12Hに当接して(
図2の一点鎖線参照)、ダイアフラム12Hのそれ以上の変形を規制するストッパ面11HA(過大圧保護機構とも呼ばれる)となっている。同様に、ダイアフラム室11Lの内面もダイアフラム12Lの過大な変形を規制するストッパ面11LAとなっている。ストッパ面11HA及び11LAは、曲面形状、例えば、非球面形状に形成されている。
【0021】
変換回路15は、ダイアフラム12H及び12Lの各変形(ここでは、変形度合い及び変形方向)を、電気信号EH及びELに変換するように構成されている。処理回路16は、ダイアフラム12Hに設けられかつ直列に接続された歪みゲージS1及びS2と、ダイアフラム12Lに設けられかつ直列に接続された歪みゲージS3及びS4と、を備える。歪みゲージS1~S4のそれぞれは、例えば、n型の単結晶シリコンからなるダイアフラム層12に、p型不純物であるホウ素を導入して構成されたピエゾ抵抗素子からなる。
【0022】
歪みゲージS1及びS2の抵抗値は、ダイアフラム12Hの変形により変化する。歪みゲージS3及びS4の抵抗値は、ダイアフラム12Lの変形により変化する。歪みゲージS1及びS2の組、及び、歪みゲージS3及びS4の組の各両端には、直流電源VSからの駆動電圧Vが印加される。直流電源VSのマイナス端子は、基準電位に接続されている。
【0023】
2つの歪みゲージS1及びS2を接続しているノードN1からは、歪みゲージS1及びS2の各抵抗値により駆動電圧Vを分圧した電圧VH(基準電位を0Vとした電位VHともいう)を示す電気信号EHが出力される。電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形に応じて変化する。つまり、ダイアフラム12Hの変形は、電圧VHに変換される。この点を、以下に詳細に説明する。
【0024】
歪みゲージS1及びS2は、ダイアフラム12Hの非変形時(平坦の形状時)に同形状であり、同じ抵抗値を有する。歪みゲージS1は、ダイアフラム12Hの径方向に沿って延び、歪みゲージS2は、ダイアフラム12Hの周方向の接線方向に沿って延びている。これにより、ダイアフラム12Hが変形したとき、歪みゲージS1及びS2は、互いに異なる形状に変形し、その結果、これらの各抵抗値が、互いに異なる値に変化する。従って、電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形度合いに応じて変化する。
【0025】
さらに、歪みゲージS1及びS2は、ダイアフラム層12つまりダイアフラム12Hよりも薄く、ダイアフラム層12の上面側又は下面側の位置に偏在する。これにより、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形するかその反対側に凸に変形するかに応じて、歪みゲージS1及びS2の変形態様が異なる。このため、電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形の方向により、ダイアフラム12Hの非変形時の電圧値を基準として正負逆に変化する。ここでは、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形したときに、電圧VHが増加して駆動電圧Vに近づくように、歪みゲージS1及びS2が構成されている。ダイアフラム12Hがその反対側に凸に変形したときには、電圧VHが減少して0Vに近づくつまり電位VHが基準電位に近づく。
【0026】
2つの歪みゲージS3及びS4を接続しているノードN2からは、歪みゲージS3及びS4の各抵抗値により駆動電圧Vを分圧した電圧VL(基準電位を0Vとした電位VLともいう)を示す電気信号ELが出力される。電圧VLは、ダイアフラム12Lの変形に応じて変化する。つまり、ダイアフラム12Lの変形は、電圧VLに変換される。電圧VLの変化の原理は、電圧VHの変化と同様である。歪みゲージS3の説明は、歪みゲージS1の説明に順じ、歪みゲージS4の説明は、歪みゲージS2の説明に順じる。電圧VLは、電圧VHと同様に、ダイアフラム12Lが支持部材11側に凸に変形したときに、増加して駆動電圧Vに近づく。
【0027】
処理回路16には、ノードN1及びN2からの電気信号EH及びELが、ボンディングパッドなどからなる端子T1及びT2を介してそれぞれ入力される。処理回路16は、マイコンなどのプロセッサを含んで構成されている。
【0028】
処理回路16は、ダイアフラム12H及び12Lを異なる側(支持部材11側及びその反対側)にそれぞれ凸に変形させる差圧を、電気信号EH及びELに基づいて検出する。上述のように、電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とは同じである。従って、処理回路16は、電気信号EHが示す電圧VHと、電気信号ELが示す電圧VLとの差に基づいて差圧を検出できる。一例として、処理回路16は、電圧VHから電圧VLを減じた差を求めることで、当該差を差圧として検出する。処理回路16は、電圧VHから電圧VLを減じた値と、所定の計算式及び又はテーブルと、に基づいて、実際の差圧の値を導出することで、前記差圧を検出してもよい。
【0029】
処理回路16は、さらに、電気信号ELが示すダイアフラム12Lの変形が、支持部材11側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、圧力HPと圧力LPとの差圧が過大差圧であると判別する。処理回路16は、過大差圧であると判別したときに、その旨を差圧センサ10の外部の装置に出力する。例えば、処理回路16は、電気信号ELが示す電圧VLの値が所定の閾値よりも小さいかを判別する。処理回路16は、判別結果が肯定の場合に、圧力HPと圧力LPとの差圧が過大差圧であるとして、その旨を差圧センサ10の外部の装置に出力する。これにより、上述のような、過大差圧によってストッパ面11HAに押し付けられたダイアフラム12Hの歪みの影響による差圧の変動が無視され、過大差圧が精度良く検出される。
【0030】
また、この実施形態では、ダイアフラム12H用の、ノードN1を介して直列に接続された2つの歪みゲージS1及びS2と、ダイアフラム12L用の、ノードN2を介しての直列に接続された2つの歪みゲージS3及びS4と、の簡便な回路構成により上記差圧の導出及び過大差圧の検出を行うことができる。
【0031】
電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向と、が異なる側となるように変換回路15を構成してもよい。この場合、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて差圧を検出する。
【0032】
変換回路15は、ダイアフラム12Lが支持部材11側と反対側に凸に変形するときに電圧VLが増加するように構成されてもよい。このような場合、変換回路15は、電圧VLが所定の閾値よりも大きくなったときに、電気信号ELが示すダイアフラム12Lの変形が、支持部材11側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるとして過大差圧を検出してもよい。
【0033】
(変形例1)
本変形例に係る差圧センサ20は、変換回路15の代わりに、
図3に示すようなフルブリッジの変換回路25を有する。以下、差圧センサ20の構成を、差圧センサ10と異なる点を中心に説明する。以下で言及していない説明は、差圧センサ10の説明と同じである。
【0034】
変換回路25は、ダイアフラム12Hの変形を電気信号EHに変換するフルブリッジ回路B1と、ダイアフラム12Lの変形を電気信号ELに変換するフルブリッジ回路B2と、を備える。
【0035】
フルブリッジ回路B1は、ブリッジ接続された複数(4つ)の歪みゲージS11~S14を備える。歪みゲージS11及びS12は直列に接続され、歪みゲージS13及びS14は直列に接続されている。歪みゲージS11及びS12の組と、歪みゲージS13及びS14の組とは、並列に接続されている。歪みゲージS11及びS14は、ダイアフラム12Hの径方向に沿って延び、歪みゲージS12及びS13は、ダイアフラム12Hの周方向の接線方向に沿って延びている。フルブリッジ回路B1は、歪みゲージS11及びS12を接続しているノードN11と、歪みゲージS13及びS14を接続しているノードN12との間の電圧VHを示す電気信号EHを、端子T11及びT12を介して処理回路16に入力する。フルブリッジ回路B1つまり歪みゲージS11~S14は、ダイアフラム12Hが変形していないときに電圧VHが0Vとなるように構成されている。また、フルブリッジ回路B1は、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形するほど電圧VHが増加し、ダイアフラム12Hが支持部材11と反対側に凸に変形するほど電圧VHが減少する(負の値となる)、ように構成されている。
【0036】
フルブリッジ回路B2は、ブリッジ接続された複数(4つ)の歪みゲージS21~S24を備える。歪みゲージS21及びS22は直列に接続され、歪みゲージS23及びS24は直列に接続されている。歪みゲージS21及びS22の組と、歪みゲージS23及びS24の組とは、並列に接続されている。歪みゲージS21及びS24は、ダイアフラム12Lの径方向に沿って延び、歪みゲージS22及びS23は、ダイアフラム12Lの周方向の接線方向に沿って延びている。フルブリッジ回路B2は、歪みゲージS21及びS22を接続しているノードN21と、歪みゲージS23及びS24を接続しているノードN22との間の電圧VLを示す電気信号ELを、端子T21及びT22を介して処理回路16に入力する。フルブリッジ回路B2つまり歪みゲージS21~S24は、ダイアフラム12Lが変形していないときに電圧VHが0Vとなるように構成されている。また、フルブリッジ回路B2は、ダイアフラム12Lが支持部材11側に凸に変形するほど電圧VLが増加し、ダイアフラム12Lが支持部材11と反対側に凸に変形するほど電圧VLが減少する(負の値となる)、ように構成されている。
【0037】
処理回路16は、上記実施の形態と同様に、電気信号EH及びELに基づいて、圧力HPと圧力LPとの差圧を導出する。電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とが異なる側、つまり、一方が支持部材11側で他方がその反対側となるように変換回路16が構成される場合、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて差圧を検出する。
【0038】
処理回路16は、電気信号ELが示すダイアフラム12Lの変形が、支持部材11側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、圧力HPと圧力LPとの差圧が過大差圧であると判別するときに、電圧VLが所定の閾値よりも小さいかを判別するとよい。電圧VLを、ノードN21からの電圧VL+とノードN22からの電圧VL-との差として、処理回路16は、電位VL+が所定の閾値よりも大きいか又はVL-が所定の閾値よりも小さいかを判別することで前記の判別を行ってもよい。
【0039】
フルブリッジ回路により、回路構成が複雑化するが、電圧VH及びVLを上記実施形態よりも大きくできる。これにより、電圧VH及びVLに基づく差圧センサ20の感度が向上する。
【0040】
(変形例2)
変換回路の構成は、任意である。例えば、上記歪みゲージに加えて、又は、上記歪みゲージのうちの一部に代えて、温度補償用の歪みゲージを設けてもよい。また、一部の歪みゲージを、ダイアフラムが変形しても抵抗値が変化しない抵抗に変更してもよい。このような抵抗は、ダイアフラムの外部に設けられてもよい。歪みゲージとして、ピエゾ抵抗素子以外の素子(ロードセル等)が使用されてもよい。
【0041】
(変形例3)
上記では、電気信号が示す電圧に基づいて差圧及び過大差圧が検出されているが、ダイアフラムの変形により生じる電流の変化を示す電気信号に基づいて差圧及び過大差圧が検出されてもよい。
【0042】
(変形例4)
処理回路16は、電気信号EHが示すダイアフラム12Hの変形が、支持部材11側と反対側に凸となる変形で、かつ、所定基準よりも大きい変形度合いでの変形であるときに、圧力HPと圧力LPとの差圧が過大差圧であると判別するように構成されてもよい。このときの過大差圧は、ダイアフラム12Hに測定対象の流体の低圧側の圧力が誤って加わった場合の過大差圧となる。
【0043】
(変形例5)
差圧センサ10の構成は任意であり、例えば、処理回路16の少なくとも一部と、それ以外の部分11~15とは、別々の筐体に収容されて互いに離れた位置に配置されるものであってもよい。例えば、処理回路16を構成するプロセッサは、圧力センサ10の外部に設けられてもよい。また、処理回路16は、他の装置の一部として設けられてもよい。処理回路16は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んで構成されてもよい。差圧センサ10は、連動流体Oの温度を検出するための温度センサなどを備えてもよい。検出された温度は、連動流体Oの温度による収縮によって生じるダイアフラム12H及び12Lの変形分をキャンセルするための電圧VH、VLなどに対する補正に使用される。
【0044】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…差圧センサ、11…支持部材、11A…第1層、11B…第2層、11D…貫通孔、11E…連通路、11H…ダイアフラム室、11HA…ストッパ面、11L…ダイアフラム室、11LA…ストッパ面、12…ダイアフラム層、12H…ダイアフラム、12L…ダイアフラム、13…シール部材、14…導圧部材、14H…導圧路、14L…導圧路、15…変換回路、16…処理回路、20…差圧センサ、25…変換回路、B1…フルブリッジ回路、B2…フルブリッジ回路、HP…圧力、LP…圧力、N1…ノード、N2…ノード、N11…ノード、N12…ノード、N21…ノード、N22…ノード、O…連動オイル、S1~S4,S11~S14,S21~S24…歪みゲージ、T1…端子、T2…端子、T11…端子、T12…端子、T21…端子、T22…端子、VS…直流電源、V…駆動電圧。