(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062555
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 13/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G01L13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170459
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東條 博史
(72)【発明者】
【氏名】津嶋 鮎美
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB03
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE13
2F055FF49
2F055GG31
(57)【要約】
【課題】被測定流体の差圧及び静圧を簡便な構成により検出する。
【解決手段】差圧センサ10は、被測定流体の高圧側の圧力HPを受けて変形するダイアフラム12Hと、被測定流体の低圧側の圧力LPを受けて変形するダイアフラム12Lと、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を電気信号EH及びELにそれぞれ変換する変換回路15と、を備える。差圧センサ10は、ダイアフラム12H及び12Lを支持し、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を連動させる連動オイルOが充填された支持部材11と、電気信号EH及びELに基づいて、ダイアフラム12H及び12Lが異なる側に凸に変形する差圧と、ダイアフラム12H及び12Lがともに同じ側に凸に変形する前記流体の静圧と、を検出する処理回路16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の第1圧力を受けて変形する第1ダイアフラムと、
前記流体の第2圧力を受けて変形する第2ダイアフラムと、
前記第1ダイアフラムの変形を第1電気信号に変換し、かつ、前記第2ダイアフラムの変形を第2電気信号に変換する変換回路と、
前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとを支持する支持部材であり、前記第1ダイアフラムの変形と前記第2ダイアフラムの変形とを連動させる連動流体が充填された支持部材と、
前記第1電気信号及び前記第2電気信号に基づいて、前記第1ダイアフラム及び前記第2ダイアフラムが異なる側に凸に変形する前記第1圧力と前記第2圧力との差圧と、前記第1ダイアフラム及び前記第2ダイアフラムがともに同じ側に凸に変形する前記流体の静圧と、を検出する処理回路と、
を備える圧力センサ。
【請求項2】
前記連動流体の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記処理回路は、前記温度センサにより検出される前記連動流体の温度に基づいて前記静圧を補正する、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記処理回路は、検出した前記静圧が所定基準を超えて大きくなったときに前記連動流体の前記支持部材からのリークを検出する、
請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記処理回路は、前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2電気信号が示す第2の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、前記第1の値と前記第2の値との前記和及び差の他方に基づいて前記静圧を検出する、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記変換回路は、
前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第1ノードを介して直列に接続された2つの第1歪みゲージと、
前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する、第2ノードを介して直列に接続された2つの第2歪みゲージと、を備え、
前記第1ノードから前記第1電気信号を出力し、
前記第2ノードから前記第2電気信号を出力する、
請求項4に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記変換回路は、
ブリッジ接続された複数の歪みゲージを備え、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する第1フルブリッジ回路と、
ブリッジ接続された複数の歪みゲージを備え、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する第2フルブリッジ回路と、を備え、
前記処理回路は、前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2電気信号が示す第2の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、他方に基づいて前記静圧を検出する、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記第2電気信号は、第2-1電気信号及び第2-2電気信号を含み、
前記変換回路は、
前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第3ノードを介して直列に接続された2つの第3歪みゲージと、
前記第2ダイアフラムの変形を前記第2-1電気信号に変換する、第4ノードを介して直列に接続された2つの第4歪みゲージと、
前記第2ダイアフラムの変形を前記第2-2電気信号に変換する、第5ノードを介して直列に接続された2つの第5歪みゲージと、を備え、
前記第3ノードから前記第1電気信号を出力し、
前記第4ノードから前記第2-1電気信号を出力し、
前記第5ノードから前記第2-2電気信号を出力し、
前記2つの第4歪みゲージ及び前記2つの第5歪みゲージは、前記第2ダイアフラムの変形により、前記第2-1電気信号が示す第2-1の値と前記第2-2電気信号が示す第2-2の値とが当該第2ダイアフラムの非変形時の値から正負逆に同じ値だけ変化するように構成されており、
前記処理回路は、
前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2-1の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、
前記第1の値と前記第2-2の値との前記和及び差のいずれか前記一方に基づいて前記静圧を検出する、
請求項1に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象の流体である被測定流体の第1圧力(例えば、高圧)を受けて変形する第1ダイアフラムと、被測定流体の第2圧力(例えば、低圧)を受けて変形する第2ダイアフラムと、を備え、第1圧力と第2圧力との差圧を検出する圧力センサ(差圧センサ)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧力センサでは、被測定流体の静圧を検出できないとの不都合がある。上記圧力センサに、静圧を検出するためのダイアフラムを別途設けることも考えられるが、この場合、圧力センサの構造が複雑化する。
【0005】
本発明は、被測定流体の差圧及び静圧を簡便な構成により検出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る圧力センサは、流体の第1圧力を受けて変形する第1ダイアフラムと、前記流体の第2圧力を受けて変形する第2ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの変形を第1電気信号に変換し、かつ、前記第2ダイアフラムの変形を第2電気信号に変換する変換回路と、前記第1ダイアフラムと前記第2ダイアフラムとを支持する支持部材であり、前記第1ダイアフラムの変形と前記第2ダイアフラムの変形とを連動させる連動流体が充填された支持部材と、前記第1電気信号及び前記第2電気信号に基づいて、前記第1ダイアフラム及び前記第2ダイアフラムが異なる側に凸に変形する前記第1圧力と前記第2圧力との差圧と、前記第1ダイアフラム及び前記第2ダイアフラムがともに同じ側に凸に変形する前記流体の静圧と、を検出する処理回路と、を備える。
【0007】
一例として、上記圧力センサは、前記連動流体の温度を検出する温度センサをさらに備え、前記処理回路は、前記温度センサにより検出される前記連動流体の温度に基づいて前記静圧を補正する。
【0008】
一例として、前記処理回路は、検出した前記静圧が所定基準を超えて大きくなったときに前記連動流体の前記支持部材からのリークを検出する。
【0009】
一例として、前記処理回路は、前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2電気信号が示す第2の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、前記第1の値と前記第2の値との前記和及び差の他方に基づいて前記静圧を検出する。
【0010】
一例として、前記変換回路は、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第1ノードを介して直列に接続された2つの第1歪みゲージと、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する、第2ノードを介して直列に接続された2つの第2歪みゲージと、を備え、前記第1ノードから前記第1電気信号を出力し、前記第2ノードから前記第2電気信号を出力する。
【0011】
一例として、前記変換回路は、ブリッジ接続された複数の歪みゲージを備え、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する第1フルブリッジ回路と、ブリッジ接続された複数の歪みゲージを備え、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2電気信号に変換する第2フルブリッジ回路と、を備え、前記処理回路は、前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2電気信号が示す第2の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、他方に基づいて前記静圧を検出する。
【0012】
一例として、前記第2電気信号は、第2-1電気信号及び第2-2電気信号を含み、前記変換回路は、前記第1ダイアフラムの変形を前記第1電気信号に変換する、第3ノードを介して直列に接続された2つの第3歪みゲージと、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2-1電気信号に変換する、第4ノードを介して直列に接続された2つの第4歪みゲージと、前記第2ダイアフラムの変形を前記第2-2電気信号に変換する、第5ノードを介して直列に接続された2つの第5歪みゲージと、を備え、前記第3ノードから前記第1電気信号を出力し、前記第4ノードから前記第2-1電気信号を出力し、前記第5ノードから前記第2-2電気信号を出力し、前記2つの第4歪みゲージ及び前記2つの第5歪みゲージは、前記第2ダイアフラムの変形により、前記第2-1電気信号が示す第2-1の値と前記第2-2電気信号が示す第2-2の値とが当該第2ダイアフラムの非変形時の値から正負逆に同じ値だけ変化するように構成されており、前記処理回路は、前記第1電気信号が示す第1の値と前記第2-1の値との和及び差のいずれか一方に基づいて前記差圧を検出し、前記第1の値と前記第2-2の値との前記和及び差のいずれか前記一方に基づいて前記静圧を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被測定流体の差圧と静圧とを簡便な構成により検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る圧力センサを概略平面図である。
【
図3】
図3は、被測定流体が流れていない状態の静圧時のA-A断面図である。
【
図4】
図4は、静圧時かつ連動オイルリーク時のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る圧力センサの概略平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る圧力センサの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態)
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る圧力センサ10は、支持部材11と、ダイアフラム層12と、シール部材13と、導圧部材14と、変換回路15と、処理回路16と、を備える。圧力センサ10は、測定対象の流体である被測定流体(例えば、所定の配管を流れる流体)の高圧側の圧力HPと、低圧側の圧力LPとの差圧を検出するように構成されている。さらに、圧力センサ10は、被測定流体の静圧も検出するように構成されている。圧力センサ10は、例えば差圧発信機の差圧検出部として構成される。
【0017】
支持部材11は、ダイアフラム層12を支持する。支持部材11は、第1層11Aと第2層11Bとを積層した積層構造を有する。第1層11Aには、上下方向に貫通する貫通孔11Dが設けられている。第2層11Bの下面には、凹部からなるダイアフラム室11H及び11Lが設けられている。第1層11Aから第2層11Bにわたってダイアフラム室11H及び11Lを互いに連通させる連通路11Eが設けられている。貫通孔11Dと連通路11Eとは繋がっている。貫通孔11Dの上部は、シール部材13でシールされている。
【0018】
ダイアフラム層12は、第2層11Bの下面に固定されている。ダイアフラム層12は、第2層11Bのダイアフラム室11H及び11Lを覆い、これらをシールしている。ダイアフラム層12のうちダイアフラム室11Hを覆う部分をダイアフラム12Hともいう。ダイアフラム12Hは、支持部材11に支持され、圧力HPを受けて変形する。ダイアフラム層12のうちダイアフラム室11Lを覆う部分をダイアフラム12Lともいう。ダイアフラム12Lは、支持部材11に支持され、圧力LPを受けて変形する。
【0019】
ダイアフラム層12及びシール部材13によりシールされた、貫通孔11D、連通路11E、ダイアフラム室11H及び11Lには、ダイアフラム12H及び12Lの各変形を連動させる連動流体としての連動オイルOが充填されている。
【0020】
導圧部材14は、ダイアフラム層12の下面に固定され、上下方向に延びた貫通孔からなる導圧路14H及び14Lを有する。導圧路14Lは、低圧側の圧力LPを、ダイアフラム12Lに導く。導圧路14Hは、高圧側の圧力HPを、ダイアフラム12Hに導く。
【0021】
この実施の形態では、高圧側の圧力HPによりダイアフラム12Hが、支持部材11側(上側)に凸に変形する(
図2の一点鎖線参照)。このダイアフラム12Hの変形は、連動オイルOを介して、ダイアフラム12Lに伝達され、ダイアフラム12Lは、支持部材11側とは反対側(下側)に凸に変形する(
図2の一点鎖線参照)。ダイアフラム12Lには、低圧側の圧力LPが加わるが、圧力HP>圧力LPの関係から、ダイアフラム12Lは、支持部材11側とは反対側に凸に変形する。このように、圧力HPと圧力LPとの差である差圧の発生時は、ダイアフラム12H及び12Lが、異なる側(ここでは、上下反対方向)に凸に変形する。
【0022】
ダイアフラム12H及び12Lの両者には、被測定流体からの静圧も加わる。静圧は、ダイアフラム12H及び12Lを同じ側(ここでは、同方向である上方向)に押す。この静圧により、支持部材11側に凸に変形したダイアフラム12Hは支持部材11側にさらに変形し、支持部材11側と反対側に凸に変形したダイアフラム12Lは支持部材11側に押し戻され、その分、連動オイルOが収縮する。被測定流体が流れていないとき、つまり、圧力HP=圧力LPで差圧が発生していないとき、被測定流体からの静圧は、ダイアフラム12H及び12Lの両者を同じ側つまり支持部材11側に押す。これにより、連動オイルOが圧縮し、その圧縮分、ダイアフラム12H及び12Lが、
図3に示すように支持部材11側に凸に変形する。
【0023】
図1及び
図2に戻り、ダイアフラム室11Hの内面は、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に大きく変形したときに、このダイアフラム12Hに当接して、ダイアフラム12Hのそれ以上の変形を規制するストッパ面11HA(過大圧保護機構とも呼ばれる)となっている。同様に、ダイアフラム室11Lの内面もダイアフラム12Lの過大な変形を規制するストッパ面11LAとなっている。ストッパ面11HA及び11LAは、曲面形状、例えば、非球面形状に形成されている。
【0024】
変換回路15は、ダイアフラム12H及び12Lの各変形(ここでは、変形量及び変形方向)を、電気信号EH及びELに変換するように構成されている。処理回路16は、ダイアフラム12Hに設けられかつ直列に接続された歪みゲージS1及びS2と、ダイアフラム12Lに設けられかつ直列に接続された歪みゲージS3及びS4と、を備える。歪みゲージS1~S4のそれぞれは、例えば、n型の単結晶シリコンからなるダイアフラム層12に、p型不純物であるホウ素を導入して構成されたピエゾ抵抗素子からなる。
【0025】
歪みゲージS1及びS2の抵抗値は、ダイアフラム12Hの変形により変化する。歪みゲージS3及びS4の抵抗値は、ダイアフラム12Lの変形により変化する。歪みゲージS1及びS2の組、及び、歪みゲージS3及びS4の組の各両端には、直流電源VSからの駆動電圧Vが印加される。直流電源VSのマイナス端子は、基準電位に接続されている。
【0026】
2つの歪みゲージS1及びS2を接続しているノードN1からは、歪みゲージS1及びS2の各抵抗値により駆動電圧Vを分圧した電圧VH(基準電位を0Vとした電位VHともいう)を示す電気信号EHが出力される。電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形に応じて変化する。つまり、ダイアフラム12Hの変形は、電圧VHに変換される。この点を、以下に詳細に説明する。
【0027】
歪みゲージS1及びS2は、ダイアフラム12Hの非変形時(平坦の形状時)に同形状であり、同じ抵抗値を有する。歪みゲージS1は、ダイアフラム12Hの径方向に沿って延び、歪みゲージS2は、ダイアフラム12Hの周方向の接線方向に沿って延びている。これにより、ダイアフラム12Hが変形したとき、歪みゲージS1及びS2は、互いに異なる形状に変形し、その結果、これらの各抵抗値が、互いに異なる値に変化する。従って、電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形量に応じて変化する。
【0028】
さらに、歪みゲージS1及びS2は、ダイアフラム層12つまりダイアフラム12Hよりも薄く、ダイアフラム層12の上面側又は下面側の位置に偏在する。これにより、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形するかその反対側に凸に変形するかに応じて、歪みゲージS1及びS2の変形態様が異なる。このため、電圧VHは、ダイアフラム12Hの変形の方向により、ダイアフラム12Hの非変形時の電圧値を基準として正負逆に変化する。ここでは、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形したときに、電圧VHが増加して駆動電圧Vに近づくように、歪みゲージS1及びS2が構成されている。ダイアフラム12Hがその反対側に凸に変形したときには、電圧VHが減少して0Vに近づくつまり電位VHが基準電位に近づく。
【0029】
2つの歪みゲージS3及びS4を接続しているノードN2からは、歪みゲージS3及びS4の各抵抗値により駆動電圧Vを分圧した電圧VL(基準電位を0Vとした電位VLともいう)を示す電気信号ELが出力される。電圧VLは、ダイアフラム12Lの変形に応じて変化する。つまり、ダイアフラム12Lの変形は、電圧VLに変換される。電圧VLの変化の原理は、電圧VHの変化と同様である。歪みゲージS3の説明は、歪みゲージS1の説明に順じ、歪みゲージS4の説明は、歪みゲージS2の説明に順じる。電圧VLは、電圧VHと同様に、ダイアフラム12Lが支持部材11側に凸に変形したときに、増加して駆動電圧Vに近づく。
【0030】
処理回路16には、ノードN1及びN2からの電気信号EH及びELが、ボンディングパッドなどからなる端子T1及びT2を介してそれぞれ入力される。処理回路16は、マイコンなどのプロセッサを含んで構成されている。
【0031】
処理回路16は、ダイアフラム12H及び12Lを異なる側(支持部材11側及びその反対側)にそれぞれ凸に変形させる差圧を、電気信号EH及びELに基づいて検出する。上述のように、電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とは同じである。従って、処理回路16は、電気信号EHが示す電圧VHと、電気信号ELが示す電圧VLとの差に基づいて差圧を検出できる。一例として、処理回路16は、電圧VHから電圧VLを減じた差を求めることで、当該差を差圧として検出する。処理回路16は、電圧VHから電圧VLを減じた値と、所定の計算式及び又はテーブルと、に基づいて、実際の差圧の値を導出することで、前記差圧を検出してもよい。
【0032】
処理回路16は、さらに、ダイアフラム12H及び12Lをともに同じ側(支持部材11側)に凸に変形させる被測定流体の静圧も、電気信号EH及びELに基づいて検出する。処理回路16は、差圧とは異なり、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて静圧を検出できる。一例として、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和を求めることで、当該和を静圧として検出する。処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和の値と、所定の計算式及び又はテーブルと、に基づいて、実際の静圧の値を導出することで、前記静圧を検出してもよい。
【0033】
処理回路16は、検出した差圧及び又は静圧を圧力センサ10の外部の装置(表示装置、上位装置、端末装置など)に出力する。
【0034】
上述のように、被測定流体の静圧は、連動オイルOを圧縮させる。このような連動オイルOの圧縮は、例えば、シール部材13が破損する又は支持部材11から外れるといった事態を生じさせる。この事態により、連動オイルOは、支持部材11の外部にリークする。このリークにより、ダイアフラム12H及び12Lは、被測定流体からの静圧により支持部材11側に凸に大きく変形し、支持部材11のストッパ面11HA及び11LAにそれぞれ着底してしまう(
図4参照)。換言すると、処理回路16で検出される静圧が大きくなる。そこで、本実施形態では、処理回路16が、上記で検出した静圧を監視し、監視している静圧が所定基準を超えて大きくなったときに、連動オイルOの支持部材11からのリークを検出する。一例として、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和が所定の閾値を超えたかを監視し、超えたと判別したときに連動オイルOのリークが発生したと判別する。他の例として、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとを監視し、両者のそれぞれが予め設定された同じ又は異なる各閾値をそれぞれ超えたかを監視し、超えたと判別したときに連動オイルOのリークが発生したと判別する。処理回路16は、連動オイルOのリークを検出した場合、その旨を外部の装置に出力する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、差圧を検出するためにもともと使用されているダイアフラム12H及び12Lを用いて静圧も検出される。従って、静圧検出用のダイアフラムを別途設けることなく、簡便な構成により、差圧及び静圧が検出される。
【0036】
また、検出された静圧に基づいて連動オイルOのリークが検出可能となっているので、リーク検出専用の回路及び又は機構などを用いない簡便な構成により当該リークが検出される。また、これにより、リークの検出に必要な消費電流も低減される。
【0037】
また、この実施形態では、ダイアフラム12H用の、ノードN1を介して直列に接続された2つの歪みゲージS1及びS2と、ダイアフラム12L用の、ノードN2を介しての直列に接続された2つの歪みゲージS3及びS4と、の簡便な回路構成により上記静圧及び差圧の検出、静圧の監視、及び、リークの検出を行うことができる。
【0038】
連動オイルOは、その温度によっても収縮する。この収縮によっても、ダイアフラム12H及び12Lは変形することがある。この変形は、静圧に起因するものではないため、静圧の検出精度を低下させる。そこで、
図1に示すように、圧力センサ10は、温度センサ17をさらに備えてもよい。温度センサ17は、連動オイルOの温度を直接又は間接的に検出できる位置に設けられればよい。処理回路16は、温度センサ17が検出した温度に基づいて、上記で検出した静圧を補正してもよい。処理回路16は、補正後の静圧を、自身が検出した被測定流体の静圧として用いてもよい。つまり、処理回路16により検出される静圧は、補正後の静圧を含む。
【0039】
補正の一例として、処理回路16は、温度と補正値との関係を示す計算式又はテーブルを用いて、温度センサ17が検出した温度に応じた補正値を導出し、導出した補正値と上記で検出した静圧とを用いた演算により、補正後の静圧を導出する。他の例として、処理回路16は、温度及び補正前の静圧と補正後の静圧との関係を示す計算式又はテーブルを用いて、温度センサ17が検出した温度及び上記で検出した静圧に応じた補正後の静圧を導出してもよい。
【0040】
ダイアフラム12H及び12Lの形状は任意であるが、両者を同形状とするとよい。これにより、クロストーク(非測定流体が流れているときの静圧感度、被測定流体が流れていないときの差圧感度)が低減される。また、歪みゲージS1~S4をブリッジ回路とし、電位VH及びVLの差をブリッジ回路の出力として取得する回路を処理回路16に設けてもよい。つまり、処理回路16において、電位VH及びVLの差をアナログ回路により導出し、導出した差をアナログデジタル変換してプロセッサにより処理してもよい。
【0041】
電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向と、が異なる側となるように変換回路15を構成してもよい。この場合、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて差圧を検出し、電圧VHと電圧VLとの差に基づいて静圧を検出すればよい。
【0042】
(変形例1)
本変形例に係る圧力センサ20は、変換回路15の代わりに、
図5に示すようなフルブリッジの変換回路25を有する。以下、圧力センサ20の構成を、圧力センサ10と異なる点を中心に説明する。以下で言及していない説明は、圧力センサ10の説明と同じである。
【0043】
変換回路25は、ダイアフラム12Hの変形を電気信号EHに変換するフルブリッジ回路B1と、ダイアフラム12Lの変形を電気信号ELに変換するフルブリッジ回路B2と、を備える。
【0044】
フルブリッジ回路B1は、ブリッジ接続された複数の歪みゲージS11~S14を備える。歪みゲージS11及びS12は直列に接続され、歪みゲージS13及びS14は直列に接続されている。歪みゲージS11及びS12の組と、歪みゲージS13及びS14の組とは、並列に接続されている。歪みゲージS11及びS14は、ダイアフラム12Hの径方向に沿って延び、歪みゲージS12及びS13は、ダイアフラム12Hの周方向の接線方向に沿って延びている。フルブリッジ回路B1は、歪みゲージS11及びS12を接続しているノードN11と、歪みゲージS13及びS14を接続しているノードN12との間の電圧VHを示す電気信号EHを、端子T11及びT12を介して処理回路16に入力する。フルブリッジ回路B1つまり歪みゲージS11~S14は、ダイアフラム12Hが変形していないときに電圧VHが0Vとなるように構成されている。また、フルブリッジ回路B1は、ダイアフラム12Hが支持部材11側に凸に変形するほど電圧VHが増加し、ダイアフラム12Hが支持部材11と反対側に凸に変形するほど電圧VHが減少する(負の値となる)、ように構成されている。
【0045】
フルブリッジ回路B2は、ブリッジ接続された複数の歪みゲージS21~S24を備える。歪みゲージS21及びS22は直列に接続され、歪みゲージS23及びS24は直列に接続されている。歪みゲージS21及びS22の組と、歪みゲージS23及びS24の組とは、並列に接続されている。歪みゲージS21及びS24は、ダイアフラム12Lの径方向に沿って延び、歪みゲージS22及びS23は、ダイアフラム12Lの周方向の接線方向に沿って延びている。フルブリッジ回路B2は、歪みゲージS21及びS22を接続しているノードN21と、歪みゲージS23及びS24を接続しているノードN22との間の電圧VLを示す電気信号ELを、端子T21及びT22を介して処理回路16に入力する。フルブリッジ回路B2つまり歪みゲージS21~S24は、ダイアフラム12Lが変形していないときに電圧VHが0Vとなるように構成されている。また、フルブリッジ回路B2は、ダイアフラム12Lが支持部材11側に凸に変形するほど電圧VLが増加し、ダイアフラム12Lが支持部材11と反対側に凸に変形するほど電圧VLが減少する(負の値となる)、ように構成されている。
【0046】
処理回路16は、上記実施の形態と同様に、電気信号EH及びELに基づいて、差圧及び静圧を導出する。ここでは、電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向と、が同じ側となるように変換回路15が構成されている。従って、処理回路16は、上記実施形態と同様に、電圧VHと電圧VLとの差に基づいて差圧を検出し、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて静圧を検出する。差圧及び静圧の導出方法については、上記実施形態と同様である。
【0047】
フルブリッジ回路により、回路構成が複雑化するが、電圧VH及びVLの各絶対値を上記実施形態よりも大きくできる。これにより、圧力センサ10のセンサ感度が大きくなる。
【0048】
電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とが異なる側、つまり、一方が支持部材11側で他方がその反対側となるように変換回路25が構成されてもよい。この場合、処理回路16は、電圧VHと電圧VLとの和に基づいて差圧を検出し、電圧VHと電圧VLとの差に基づいて静圧を検出する。
【0049】
(変形例2)
本変形例に係る圧力センサ30は、変換回路25の代わりに、
図6に示すような変換回路35を有する。以下、圧力センサ30の構成を、圧力センサ10及び20と異なる点を中心に説明する。以下で言及していない説明は、圧力センサ10及び20の説明と同じである。
【0050】
変換回路35は、変換回路25から歪みゲージS13及びS14を除いた回路構成を有する。変換回路35のブリッジ回路B2は、ノードN21及びN22から電気信号ELを出力する。電気信号ELは、ノードN21から出力される電圧VL+を示す電気信号EL+と、ノードN22から出力される電圧VL-を示す電気信号EL-とを含む。電圧VL+と電圧VL-とは、ダイアフラム12Lの非変形時の値から正負逆に同じ値だけ変化する。ダイアフラム12Lが支持部材11側に凸に変形したとき、電圧VL+は増加し、電圧VL-は減少する。ダイアフラム12Lが支持部材11側と反対側に凸に変形したとき、電圧VL+は減少し、電圧VL-は増加する。このため、電圧VH+の増加及び電圧VH-の減少のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VLの増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とは、同じとなる。
【0051】
処理回路16は、上記実施の形態と同様に、電気信号EH及びELに基づいて、差圧及び静圧を導出する。ここでは、電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VL+の増加のときのダイアフラム12Lの変形方向とが同じ側であるので、処理回路16は、電圧VHと電圧VL+との差に基づいて差圧を検出することができる。また、電圧VL+と電圧VL-とがダイアフラム12Lの非変形時の値から正負逆に同じ値だけ変化するため、処理回路16は、静圧についても、電圧VHと電圧VL-との差に基づいて検出することができる。差圧及び静圧の具体的な導出方法の例については、上記実施形態と同様である。
【0052】
以上の構成によれば、差圧と静圧とを、電気信号EHが示す電圧VHと、電気信号ELが示す電圧VL+及びVL-との各差により導出できる。電圧の差は、和よりも比較的簡単な回路構成で導出できる。例えば、歪みゲージS11、S12、S21、及び、S22をブリッジ回路として構成して、電圧VHと電圧VL+との差に基づいて差圧を導出できる。歪みゲージS11、S12、S23、及び、S24をブリッジ回路として構成して、電圧VHと電圧VL-との差に基づいて差圧を導出できる。処理回路16は、上記各差をアナログ回路により検出できる。
【0053】
電圧VHの増加のときのダイアフラム12Hの変形方向と、電圧VL+の増加(及び電圧VL-の減少)のときのダイアフラム12Lの変形方向とが異なる側、つまり、一方が支持部材11側で他方がその反対側となるように変換回路35が構成されてもよい。このような場合、差圧と静圧とを、電気信号EHが示す電圧VHと、電気信号ELが示す電圧VL+及びVL-との和により導出できる。このような和は、プロセッサなど、ソフトウェア的な処理で導出されればよい(他の和についても同様)。
【0054】
変換回路35は、変換回路25から歪みゲージS13及びS14を除く代わりに、歪みゲージS23及びS24を除いた回路構成を有してもよい。この場合、電気信号VHは、ノードN11からの電圧VH+及びノードN12からの電圧VH-をそれぞれ示す電気信号VH+及びVH-を含み、電圧VH+及び電圧VLの差又は和、電圧VH-及び電圧VLの差又は和に基づいて、差圧及び静圧が検出されてもよい。
【0055】
(変形例3)
変換回路の構成は、任意である。例えば、上記歪みゲージに加えて、又は、上記歪みゲージのうちの一部に代えて、温度補償用の歪みゲージを設けてもよい。また、一部の歪みゲージを、ダイアフラムが変形しても抵抗値が変化しない抵抗に変更してもよい。このような抵抗は、ダイアフラムの外部に設けられてもよい。歪みゲージとして、ピエゾ抵抗素子以外の素子(ロードセル等)が使用されてもよい。変換回路は、ダイアフラム12H及び12Lが支持部材11側に凸に変形したときに、電圧VH及び電圧VL(又はVL+)がともに減少するように構成されてもよい。この場合の連動オイルOのリーク検出では、電圧VH及びVLの和が所定の閾値よりも小さくなったときに、静圧が所定基準を超えて大きくなったとしてリークが検出されてもよい。
【0056】
(変形例4)
上記では、電気信号が示す電圧に基づいて差圧及び静圧が導出されているが、差圧及び和の圧力は、電気信号が示す他の値、例えば、電気信号が示す、ダイアフラムの変形により変化する電流の値に基づいて導出されてもよい。
【0057】
(変形例6)
圧力センサ10の構成ないし構造は任意であり、例えば、処理回路16の少なくとも一部と、それ以外の部分11~15とは、別々の筐体に収容されて互いに離れた位置に配置されるものであってもよい。例えば、処理回路16を構成するプロセッサは、圧力センサ10の外部に設けられてもよい。処理回路16は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んで構成されてもよい。
【0058】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…圧力センサ、11…支持部材、11A…第1層、11B…第2層、11D…貫通孔、11E…連通路、11H…ダイアフラム室、11HA…ストッパ面、11L…ダイアフラム室、11LA…ストッパ面、12…ダイアフラム層、12H…ダイアフラム、12L…ダイアフラム、13…シール部材、14…導圧部材、14H…導圧路、14L…導圧路、15…変換回路、16…処理回路、17…温度センサ、20,30…圧力センサ、25,35…変換回路、B1…フルブリッジ回路、B2…フルブリッジ回路、HP…圧力、LP…圧力、N1…ノード、N2…ノード、N11…ノード、N12…ノード、N21…ノード、N22…ノード、O…連動オイル、S1~S4,S11~S14,S21~S24…歪みゲージ、T1…端子、T2…端子、T11…端子、T12…端子、T21…端子、T22…端子、VS…直流電源、V…駆動電圧。