(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062559
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/64 20060101AFI20240501BHJP
F16K 49/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F16K31/64
F16K49/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170464
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲弥
【テーマコード(参考)】
3H057
3H066
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB49
3H057CC02
3H057FC01
3H066AA01
3H066BA36
(57)【要約】
【課題】ハウジングが合成樹脂製であっても、スリーブの大型化を抑制し、温調用部材のガタツキの発生を抑制する。
【解決手段】筒状のスリーブ20eを有するハウジング1と、前記スリーブから前記ハウジング内へ挿入される加熱部又は温度感知部を有する温調用部材40と、前記温調用部材のスリーブからの抜止をするクリップ部材45と、第一の付勢部材5と、を備え、前記温調用部材の外周には、外側へ張り出すフランジ部40b1が形成され、前記スリーブには、外周に周方向に沿うように形成される溝と、一端が前記溝に開口して前記スリーブの肉厚を貫通する横孔が形成され、前記クリップ部材は、弾性変形可能で、前記溝に嵌る外篏部と、前記外篏部の両端から相対向して延び、前記横孔に挿通されて前記フランジ部を前記スリーブの先端側から押える内側凸部とを有し、前記第一の付勢部材は、前記温調用部材を前記スリーブから退出する方向へ付勢する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のスリーブを有するハウジングと、
前記スリーブから前記ハウジング内へ挿入される加熱部又は温度感知部を有する温調用部材と、
前記温調用部材の前記スリーブからの抜止をするクリップ部材と、
第一の付勢部材と、を備え、
前記温調用部材の外周には、外側へ張り出すフランジ部が形成され、
前記スリーブには、外周に周方向に沿うように形成される溝と、一端が前記溝に開口して前記スリーブの肉厚を貫通する横孔が形成され、
前記クリップ部材は、弾性変形可能で、前記溝に嵌る外篏部と、前記外篏部の両端から相対向して延び、前記横孔に挿通されて前記フランジ部を前記スリーブの先端側から押える内側凸部とを有し、
前記第一の付勢部材は、前記温調用部材を前記スリーブから退出する方向へ付勢する
ことを特徴とする温調装置。
【請求項2】
前記スリーブの内周には、環状の段差が形成され、
前記第一の付勢部材は、前記フランジ部と前記段差との間に介装される
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項3】
前記温調用部材の外周をシールする環状のシール部材を備え、
前記シール部材は、前記温調用部材と前記ハウジングとの間で径方向の両側から圧縮される
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項4】
前記第一の付勢部材は、皿ばねである
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項5】
前記第一の付勢部材は、エラストマーからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項6】
前記ハウジング内に形成される冷却液の流路と、
前記流路を開閉する弁体と、
前記冷却液の温度に応じて伸縮し、前記弁体を開閉駆動するサーモエレメントと、
前記弁体を閉じ方向へ付勢する第二の付勢部材と、を備え、
前記サーモエレメントは、温度に応じて体積変化する感温部材を内蔵する感温ケースと、一端が前記ハウジングに支持されて前記感温部材の体積変化に応じて前記感温ケースに出入りするピストンとを有し、
前記温調用部材は、前記加熱部を有し、
前記加熱部は、前記ピストンに挿入されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部又は温度感知部を有する温調用部材を備えた温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温調装置としては、例えば、エンジン(内燃機関)の冷却回路に設けられ、冷却液の温度を調節するサーモスタット装置等が知られている。そして、サーモスタット装置の中には、特許文献1に開示されるように、サーモスタット装置のハウジングに設けたスリーブに、クリップ部材を利用してプラグ等の付属部品を装着するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
付属部品が、ヒータ又は温度センサ等の通電を必要とする温調用部材である場合、温調用部材にガタツキが生じると、振動によって電気的な接続部に摩耗が生じ、接触不良(通電不良)が発生する。このため、温調用部材はハウジングにガタツキなく固定される必要がある。しかし、合成樹脂等で形成されたハウジングにクリップ部材で温調用部材を固定した場合、ハウジングがクリープ変形して温調用部材にガタツキが生じ、接触不良につながる虞がある。
【0005】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、温調用部材のガタツキの発生を抑制できる温調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る温調装置は、筒状のスリーブを有するハウジングと、前記スリーブから前記ハウジング内へ挿入される加熱部又は温度感知部を有する温調用部材と、前記温調用部材の前記スリーブからの抜止をするクリップ部材と、第一の付勢部材と、を備え、前記温調用部材の外周には、外側へ張り出すフランジ部が形成され、前記スリーブには、外周に周方向に沿うように形成される溝と、一端が前記溝に開口して前記スリーブの肉厚を貫通する横孔が形成され、前記クリップ部材は、弾性変形可能で、前記溝に嵌る外篏部と、前記外篏部の両端から相対向して延び、前記横孔に挿通されて前記フランジ部を前記スリーブの先端側から押える内側凸部とを有し、前記第一の付勢部材は、前記温調用部材を前記スリーブから退出する方向へ付勢する。
【0007】
前記構成によれば、温調用部材が第一の付勢部材によってスリーブから退出する方向へ付勢され、その退出をクリップ部材が抑制するので、クリープ変形によりスリーブの溝が開く方向へ変形したとしても、温調用部材がこれに追従してガタツキが抑制される。
【0008】
また、前記温調装置では、前記スリーブの内周に環状の段差が形成され、前記第一の付勢部材が、前記フランジ部と前記段差との間に介装されてもよい。このようにすると、第一の付勢部材を容易に配置でき、この第一の付勢部材を設けた場合であっても温調装置の大型化を抑制してコンパクトにできる。
【0009】
また、前記温調装置は、前記温調用部材の外周をシールする環状のシール部材を備え、前記シール部材は、前記温調用部材と前記ハウジングとの間で径方向の両側から圧縮されてもよい。つまり、シール部材は径方向をシールする。このようにすると、第一の付勢部材とシール部材とで温調用部材のスリーブに対する軸方向と径方向のガタツキを抑制できるので、温調用部材のガタツキをより確実に抑制できる。
【0010】
また、前記第一の付勢部材は、皿ばねであってもよい。この場合、第一の付勢部材を安価かつコンパクトにできる。
【0011】
また、前記第一の付勢部材は、エラストマーからなっていてもよい。この場合、第一の付勢部材を安価かつコンパクトにできる。さらに、第一の付勢部材が軸方向をシールするシール部材としても機能するので、前記径方向をシールするシール部材とともに温調用部材の外周をより確実にシールできる。
【0012】
また、前記温調装置は、前記ハウジング内に形成される冷却液の流路と、前記流路を開閉する弁体と、前記冷却液の温度に応じて伸縮し、前記弁体を開閉駆動するサーモエレメントと、前記弁体を閉じ方向へ付勢する第二の付勢部材と、を備え、前記サーモエレメントは、温度に応じて体積変化する感温部材を内蔵する感温ケースと、一端が前記ハウジングに支持されて前記感温部材の体積変化に応じて前記感温ケースに出入りするピストンとを有し、前記温調用部材は、前記加熱部を有し、前記加熱部は、前記ピストンに挿入されてもよい。
【0013】
前記温調装置では、温調用部材が流路内の圧力を受けないが、前述のように温調用部材を退出方向へ付勢する第一の付勢部材を設けることで、温調用部材のガタツキを抑制できる。つまり、前記温調用装置に第一の付勢部材を設けることが特に有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る温調装置によれば、温調用部材のガタツキの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は第一の実施の形態に係る温調部材であるサーモスタット装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のサーモスタット装置の組立手順を説明するための斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1のサーモスタット装置の組立手順を説明するための他の斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、第二の実施の形態に係る温調装置であるウォータアウトレットを表側から見た斜視図であり、
図9(b)は、その一部を拡大し破断して示す斜視図である。
【
図10】
図10は、エンジンの冷却回路を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る温調装置を図面に基づき説明する。
最初に、本発明の第一の実施の形態に係る温調装置について説明する。本実施の形態において、温調装置は、エンジン(内燃機関)の冷却回路に設けられるサーモスタット装置である。
図1は、サーモスタット装置10の斜視図であり、
図2は、
図1のサーモスタット装置の平面図である。
図3は、
図2のA-A矢視断面図であり、
図4は、
図2のB-B矢視断面図である。また、
図5は、
図4の一部を拡大して示す断面図であり、
図10は、エンジンの冷却回路を模式的に示した説明図である。
【0017】
図10に示すように、冷却回路50は、主通路51と、バイパス路52とを備える。主通路51は、エンジン55から流出した冷却液をラジエータ60で冷やしてエンジン55へ戻す。バイパス路52は、エンジン55から流出した冷却液をラジエータ60を介さずにエンジン55へ戻す。
サーモスタット装置10は、エンジン55の冷却液入口側に設けられる。そして、冷却液の温度が所定よりも高い場合、サーモスタット装置10は主通路51を開く。その一方、冷却液の温度が所定よりも低い場合、サーモスタット装置10は主通路51を閉じてバイパス路52を開く。
尚、バイパス路52は、冷却液の温度にかかわらず常時開いていてもよいし、主通路51が開いたときに閉じてもよい。
【0018】
図3、
図4に示すように、サーモスタット装置10は、ハウジング1と、ハウジング1内に形成される冷却液の流路4と、流路4を開閉する弁体15と、冷却液の温度に応じて伸縮し、弁体15を開閉駆動するサーモエレメント17と、弁体15を閉じ方向へ付勢するコイルスプリング16と、コイルスプリング16の一端を支持するフレーム19と、ヒータ40と、このヒータ40をハウジング1に固定するクリップ部材45と、を備える。以下、説明の便宜上、
図3に示すサーモスタット装置10の上下を単に「上」「下」という。
本実施の形態において、コイルスプリング16が第二の付勢部材、ヒータ40が温調用部材である。
【0019】
本実施の形態において、ハウジング1は、合成樹脂により形成されている。ハウジング1は、下端に開口20cが形成される略有頂筒状の本体部20と、本体部20の下端外周から外側へ張り出す一対のフランジ2,2と、本体部20の下端開口縁から下方へ相対向して延びる一対の脚21,21と、本体部20の頂部から斜め上方へ延びるラジエータ60側の接続口23と、本体部20の頂部から上方へ起立してヒータ40が固定されるスリーブ20eとを有する。
冷却液は、接続口23、本体部20の内側、及び開口20cを通過するようになっており、これらでハウジング1内の流路4が構成されている。この流路4は、主通路51に接続される。
【0020】
図1、
図2に示すように一対のフランジ2,2には、それぞれボルト孔2aが形成される。ボルト孔2aには、金属製の筒が圧入され、この筒にサーモスタット装置10を相手側部材へ固定するためのボルト(図示せず)が挿通される。このボルト孔2aよりも内側に位置する本体部20の下端開口縁には、
図3に示すように開口20cを取り囲むように環状の溝20dが形成され、この溝20dにガスケット25が装着される。
【0021】
このガスケット25は、サーモスタット装置10と相手側部材との間をシールし、サーモスタット装置10を相手側部材に取り付けた状態で、ハウジング1内を流れる冷却液が外に漏れるのを防止する。ハウジング1内(ハウジング1の内側)とは、本体部20におけるガスケット25よりも内側(内部側)である。また、ここでいう相手側部材とは、例えば、ウォーターポンプ、エンジンのウォータジャケット、又はこれらにサーモスタット装置10を取り付けるための部材等である。
このハウジング1の内側に位置する本体部20の下端開口縁の直上部内周に、環状の弁座20bが形成されており、この弁座20bに弁体15が離着座することで、流路4が開閉される。
【0022】
ハウジング1の内側に、サーモエレメント17が挿入される。サーモエレメント17は、本体部20の軸心部に、その軸心線に沿うように配置される。サーモエレメント17は、温度に応じて体積変化するワックス等の感温部材を内蔵する感温ケース30と、上端がハウジング1に支持されて感温部材の体積変化に応じて感温ケース30に出入りするピストン3とを備える。
そして、感温ケース30周囲の冷却液の温度が上昇し、内部の感温部材が膨張すると、ピストン3が感温ケース30から退出し、サーモエレメント17が伸長する。反対に、感温ケース30周囲の冷却液の温度が低下し、内部の感温部材が収縮すると、ピストン3が感温ケース30に進入し、サーモエレメント17が収縮する。このように、サーモエレメント17は、温度に応じて伸縮作動する。
【0023】
サーモエレメント17の上端に位置するピストン3の先端は、本体部20の頂部に形成された筒状のボス部20aに篏合する。このため、ハウジング1に対するピストン3の上方への移動が阻止される。よって、サーモエレメント17が伸縮作動すると、ハウジング1に対するピストン3の位置は変わらず、感温ケース30が上下に移動する。ピストン3の外周には、Oリング等のシール部材47が設けられる。このシール部材47は、ピストン3とボス部20aとの間を液密にシールする。
【0024】
感温ケース30の外周に、弁体15が固定されている。これにより、弁体15は、サーモエレメント17の伸縮に伴って感温ケース30とともに上下に移動する。そして、サーモエレメント17が伸長して弁体15が下方へ移動すると、弁体15が弁座20bから離座してこれらの間を冷却液が通過できるようになるので、流路4の連通が許容される。反対に、サーモエレメント17が収縮し、弁体15が上方へ移動して弁座20bに着座すると、流路4の連通が遮断される。このように、弁体15は、弁座20bに離着座して流路4を開閉する。
【0025】
弁体15の背面には、コイルスプリング16の上端が当接する。このコイルスプリング16は、サーモエレメント17の周りを取り囲むように配置されている。また、コイルスプリング16の下端(一端)は、フレーム19で支えられている。
【0026】
フレーム19は、ハウジング1に形成される一対の脚21,21の先端部に引っ掛かり、ハウジング1に対する下方への移動が阻止される。また、フレーム19の中心部には、貫通孔19aが形成されている。この貫通孔19aに、感温ケース30が上下動自在に挿通される。つまり、感温ケース30は、フレーム19に対して上下動可能となっている。
【0027】
コイルスプリング16は、圧縮ばねであり、弁体15とフレーム19との間に圧縮された状態で配置される。このため、弁体15は、コイルスプリング16で上方(弁座20b側)へ付勢される。この構成において、サーモエレメント17の周囲の冷却液が高温になり、サーモエレメント17が伸長すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に抗して下方へ移動して、弁座20bから離れる。その一方、サーモエレメント17の周囲の冷却液が低温になり、サーモエレメント17が収縮すると、弁体15がコイルスプリング16の付勢力に従って上方へ移動して、弁座20bに近づく。
【0028】
また、このサーモスタット装置10にあっては、ヒータ40に通電することで感温部材を温めて、能動的に弁体15を開閉駆動できる。より詳しくは、ハウジング1は、ボス部20aの直上に、筒状のスリーブ20eを有する。ヒータ40は、そのスリーブ20eにクリップ部材45で取り付けられる。
【0029】
図7に示すように、ヒータ40は、ピストン3の内側に挿通される棒状の加熱部40aと、加熱部40aの一端に接続されてスリーブ20eにクリップ止めされる取付部40bと、取付部40bから側方へ突出するコネクタ40dと、を有する。コネクタ40dには、通電用のケーブル等が接続されて、車両等の電源からヒータ40に通電可能となっている。
そして、ヒータ40に通電すると、加熱部40aが発熱する。これにより、ピストン3を介して感温ケース30内の感温部材が温められて膨張し、ピストン3が感温ケース30から押し出されて弁体15が開弁する。
【0030】
図3に示すようにスリーブ20eは、ハウジング1の本体部20の軸心線上に、本体部20の頂部から上方へ起立するように設けられている。このスリーブ20eにおいて、ハウジング1に連なる側の端(下端)がスリーブ20eの基端、この基端とは反対側の端(上端)がスリーブ20eの先端である。
図7等に示すようにスリーブ20eには、溝20fと横孔20gが形成される。溝20fは、スリーブ20eの外周に、周方向に沿って側方(スリーブ20eの軸に対して直交する方向)へ開口する。横孔20gは、スリーブ20eの肉厚を貫通し、横孔20gの一端が溝20fの内側に開口する。また、
図5に示すように、スリーブ20eの内周には、環状の段差20e1が形成されている。この段差20e1よりも先端側の内径は、基端側の内径よりも大きく、段差20e1は、スリーブ20eの先端側を向く。
溝20f及び横孔20gは、段差20e1よりもスリーブ20eの先端側に位置する。この段差20e1には、皿ばね5が積層される。この皿ばね5が、第一の付勢手段である。
【0031】
図6に示すように、皿ばね5は、スプリングワッシャであり、平面視で円形の本体部5aを有する。この本体部5aの中心軸に沿う方向を皿ばね5の軸方向、本体部5aの円周方向を皿ばね5の周方向とする。本体部5aは、周方向の一カ所で切断されて、その両端5b,5cが軸方向にずれるように捩れている。皿ばね5は、弾性を有し、両端5b,5cを近づけるように圧縮されると弾性変形し、自身の弾性で元の形状へ戻ろうとする。
【0032】
また、
図5に示すように、ヒータ40の取付部40bには、外側へ張り出すフランジ部40b1が形成されている。フランジ部40b1の外径は、皿ばね5及び段差20e1の内径よりも大きい。これにより、
図7に示すように、ヒータ40を加熱部40a側からスリーブ20e内へと差し込み、取付部40bをスリーブ20e内へ挿入していくと、フランジ部40b1と段差20e1との間で皿ばね5が圧縮されて弾性変形する。
すると、皿ばね5は、フランジ部40b1を押し上げる方向、即ち、ヒータ40をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。
【0033】
図5に示すように、ヒータ40におけるフランジ部40b1よりも下側の外周には、Oリング等のシール部材46が装着される。このシール部材46は、ヒータ40の外周をシールして、サーモスタット装置10外の水、埃等がハウジング1内に浸入するのを防止する。シール部材46は、径方向の両側から圧縮される。
【0034】
図8に示すように、ヒータ40をスリーブ20eに固定するクリップ部材45は、ステンレス等の金属製の線材からなり、平面視U字状又はC字状の外篏部45aと、この外篏部45aの両端から相対向して延びる内側凸部45b,45cとを有する。クリップ部材45は弾性を有し、内側凸部45b,45cを離間するように変形させると、自身の弾性で元の形状へ戻ろうとする。
【0035】
そして、前述のように、ヒータ40をスリーブ20eの内側に挿し込み、フランジ部41b1で皿ばね5を圧縮した状態で、クリップ部材45をスリーブ20eに装着すると、外篏部45aがスリーブ20e外周の溝20fに嵌り、内側凸部45bが横孔20gからスリーブ20e内に挿入されて、フランジ部40b1を上側(スリーブ20eの先端側)から押えるようになっている。これにより、ヒータ40がスリーブ20eから抜止され、スリーブ20eに固定される。
このようにクリップ部材45を装着した状態で、皿ばね5はフランジ部40b1と段差20e1との間で圧縮されて、ヒータ40をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。
【0036】
以上のように、本実施の形態に係るサーモスタット装置(温調装置)10は、ハウジング1と、ヒータ(温調等部材)40と、クリップ部材45と、皿ばね(第一の付勢部材)5と、を備える。ハウジング1は、筒状のスリーブ20eを有する。ヒータ40は、加熱部40aを有する。この加熱部40aは、スリーブ20eからハウジング1内へ挿入される。クリップ部材45は、ヒータ40のスリーブ20eからの抜止をする。
また、ヒータ40の外周には、外側へ張り出すフランジ部40b1が形成される。スリーブ20eには、溝20fと横孔20gが形成される。溝20fは、スリーブ20eの外周に周方向に沿うように形成される。横孔20gは、一端が溝20fに開口してスリーブ20eの肉厚を貫通する。
クリップ部材45は、弾性変形可能である。クリップ部材45は、外篏部45aと、一対の内側凸部45b,45cとを有する。外篏部45aは、スリーブ20eの溝20fに嵌る。内側凸部45b,45cは、外篏部45aの両端から相対向して延び、横孔20fにそれぞれ挿通されてフランジ部40b1をスリーブ20eの先端側から押える。皿ばね5は、ヒータ40をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。
【0037】
このように、ヒータ40は皿ばね5によってスリーブ20eから退出する方向へ付勢され、そのフランジ部40b1がクリップ部材45の内側凸部45b,45cで押えられて抜止される。これにより、例えば、ハウジング1が合成樹脂で形成されてクリープ変形によりスリーブ20eの溝20fが上下に開く方向へ多少変形したとしても、フランジ部40b1が皿ばね5で押し上げられてクリップ部材45で押さえつけられる状態が維持されるので、温調用部材であるヒータ40のガタツキを抑制できる。
つまり、通電を必要とするヒータ40等の温調用部材を利用する場合であっても、そのガタツキを抑制できるので、振動によって電気的な接続部に摩耗が生じ、接触不良(通電不良)が発生するのを防止できる。
【0038】
また、本実施の形態のサーモスタット装置10では、スリーブ20eの内周に環状の段差20e1が形成される。皿ばね5は、フランジ部40b1と段差20e1との間に介装される。このようにすると、ヒータ40等の温調用部材をスリーブ20eから退出する方向へ付勢する皿ばね5等の第一の付勢部材を容易に配置でき、その第一の付勢部材を設けた場合であっても、サーモスタット装置10等の温調装置の大型化を抑制してコンパクトにできる。しかし、付勢部材で温調用部材をスリーブ20eから退出する方向へ付勢できれば、付勢部材の配置は適宜変更できる。
【0039】
また、本実施の形態のサーモスタット装置10は、シール部材46を備える。このシール部材46は、ヒータ40の外周をシールする。シール部材46は、ヒータ40とハウジング1の間で径方向の両側から圧縮される。
ここでいう径方向は、スリーブ20eの軸心線に直交し、スリーブ20eの直径方向に沿う方向であり、スリーブ20eの軸心線に沿う方向を軸方向とする。皿ばね5は、ヒータ40をスリーブ20eから退出する方向へ付勢しており、この方向は、スリーブ20eの軸方向である。このため、皿ばね5は、ヒータ40のスリーブ20eに対する軸方向のガタツキを抑制できる。その一方、シール部材46は、径方向に圧縮されて径方向をシールするものであり、ヒータ40のスリーブ20eに対する径方向のガタツキを抑制できる。
つまり、前記構成によれば、皿ばね5とシール部材46とでヒータ40のスリーブ20eに対する軸方向と径方向のガタツキを抑制できるので、温調用部材であるヒータ40のガタツキをより確実に抑制できる。
【0040】
また、本実施の形態において、ヒータ10を退出方向へ付勢する第一の付勢部材は、皿ばね5である。このため、第一の付勢部材を安価かつコンパクトにできる。尚、本実施の形態では皿ばね5がスプリングワッシャであるが、円錐台形状の皿ばねでも、ウェーブワッシャでもよい。さらに、第一の付勢部材は、皿ばねに限られず、コイルスプリング等の皿ばね以外のばねでも、ゴム等の弾性を有するエラストマーからなるとしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、温調装置がサーモスタット装置10であって、冷却液の流路4、弁体15、サーモエレメント17、及びコイルスプリング(第二の付勢部材)16を備える。流路4は、ハウジング1内に形成される。弁体15は、流路4を開閉する。サーモエレメント17は、冷却液の温度に応じて伸縮し、弁体15を開閉駆動する。コイルスプリング16は、弁体15を閉じ方向へ付勢する。
サーモエレメント17は、感温ケース30と、ピストン3とを有する。感温ケース30は、感温部材を内蔵する。感温部材は、温度に応じて体積変化する。ピストン3の一端はハウジング1に支持される。ピストン3は、感温部材の体積変化に応じて感温ケース30に出入りする。
本実施の形態では、温調用部材がヒータ40であって、加熱部40aを有する。加熱部40aは、ピストン3に挿入されて、感温部材を加熱できるようになっている。
【0042】
このように、前記構成によれば、温調装置がサーモスタット装置10、温調用部材が加熱部40aを有するヒータ40であって、加熱部40aがピストン1に挿入されて、ヒータ40が流路内の圧力を受けない。このような構造であっても、サーモスタット装置10は、皿ばね(第一の付勢部材)5を備えているので、ヒータ40のガタツキを抑制できる。
尚、本実施の形態では、温調装置がサーモスタット装置10、温調用部材がヒータ40である。しかし、温調装置は、サーモスタット装置に限られず、適宜変更できる。また、温調用部材もヒータに限られず、例えば、温度センサ等の他の温調用部材に代えてもよい。そして、温調用部材に応じて、ハウジング1に設けるスリーブ20eの位置を変えてもよいのは勿論である。
【0043】
続いて本発明に係る第二の実施形態について説明する。本実施の形態において、温調装置は、エンジン(内燃機関)の冷却液出口に取り付けられる温度センサ付きのウォータアウトレットである。
図9(a)は、ウォータアウトレット100を表側から見た斜視図であり、
図9(b)は、ウォータアウトレット100の一部を拡大し破断して示す斜視図である。
本実施の形態において、第一の実施の形態と同一又は対応する構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
ウォータアウトレット100は、エンジンのシリンダヘッド(図示せず)に取り付けられる。
図9(a)に示すように、ウォータアウトレット100は、ハウジング101と、このハウジング101から外側へ立ち上がるように設けられる第一接続部102及び第二接続部103と、ハウジング101の縁から外周側へ張り出すフランジ104と、温度センサ108と、この温度センサ108をハウジング101に固定するクリップ部材45と、を備える。
本実施の形態において、温度センサ108が温調用部材である。
【0045】
本実施の形態において、ハウジング101、第一接続部102、第二接続部103、及びフランジ104は、合成樹脂により一体形成されて、ウォータアウトレット本体110を構成する。フランジ104には、複数のボルト孔104aが設けられている。これらボルト孔104aにボルト(図示せず)が挿通されて、ウォータアウトレット本体110がシリンダヘッドにボルト固定される。ハウジング101とシリンダヘッドとの間には、冷却液の流路Rが形成される。そして、シリンダヘッドから流出した冷却液は、その流路Rを通って第一接続部102又は第二接続部103からラジエータや、ヒータコア等の各種装置へと向かう。
【0046】
また、ウォータアウトレット100では、ハウジング101に設けたスリーブ20eに温度センサ108がクリップ部材45で取り付けられており、この温度センサ108で流路Rを流れる冷却液の温度を検知できる。
【0047】
より詳しくは、スリーブ20eはハウジング101の側部に設けられる。
図9(b)に示すように、温度センサ108は、流路Rに挿入される棒状の温度感知部109と、温度感知部109の一端に接続されてスリーブ20eにクリップ止めされる取付部108aと、取付部108aから突出するコネクタ108bと、を有する。コネクタ108bには、通電、通信用のケーブル等が接続される。
【0048】
スリーブ20eには、第一の実施形態と同様に、溝20f、横孔20g、及び段差20e1が形成されている。段差20e1には、Oリング105が積層されている。Oリング105は、ゴム等の弾性変形可能なエラストマーからなり、圧縮されると弾性変形し、自身の弾性で元の形状へ戻ろうとする。
本実施の形態において、Oリング105が第一の付勢部材である。
【0049】
また、温度センサ108の取付部108aには、外側へ張り出すフランジ部108a1が形成されている。フランジ部108a1の外径は、Oリング105及び段差20e1の内径よりも大きい。これにより、温度センサ108を温度感知部109側からスリーブ20e内へと差し込み、取付部108aをスリーブ20e内へ挿入していくと、フランジ部108a1と段差20e1との間でOリング105が圧縮されて弾性変形する。
すると、Oリング105は、フランジ部108a1を押し上げる方向、即ち、温度センサ108をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。また、Oリング105は、シール部材としても機能して、ウォータアウトレット100外の水、埃などがハウジング101内に侵入するのを防止する。
【0050】
温度センサ108の取付部108aにおけるフランジ部108a1よりもハウジング101側の外周には、Oリング等のシール部材120が装着されている。このシール部材120は、温度センサ108の外周をシールして、流路R内の冷却液がハウジング101外へ漏れるのを防止する。
【0051】
クリップ部材45は、第一の実施形態と同様に、外篏部45aと、一対の内側凸部45b,45cとを有する。そして、前述のように、温度センサ108をスリーブ20eの内側に挿し込み、フランジ部108a1でOリング105を圧縮した状態でクリップ部材45をスリーブ20eに装着すると、外篏部45aがスリーブ20e外周の溝20fに嵌り、内側凸部45b,45cが横孔20gからスリーブ20e内に挿入されて、フランジ部108aをスリーブ20eの先端側から押えるようになっている。これにより、温度センサ108がスリーブ20eから抜止され、スリーブ20eに固定される。
このようにクリップ部材45を装着した状態で、Oリング105はフランジ部108a1と段差20e1との間で圧縮されて、温度センサ108をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。
【0052】
以上のように、本実施の形態に係るウォータアウトレット(温調装置)100は、ハウジング101と、温度センサ(温調用部材)108と、クリップ部材45と、Oリング(第一の付勢部材)105と、を備える。ハウジング101は、一実施の形態と同様のスリーブ20eを有する。温度センサ108は、温度感知部109を有する。この温度感知部109は、スリーブ20eからハウジング101内へ挿入される。クリップ部材45は、第一の実施形態と同様である。
また、温度センサ108の外周には、外側へ張り出すフランジ部108a1が形成される。Oリング105は、温度センサ108をスリーブ20eから退出させる方向へ付勢する。
【0053】
このように、温度センサ108は皿ばね105によってスリーブ20eから退出する方向へ付勢され、そのフランジ部108a1がクリップ部材45の内側凸部45b,45cで押えられて抜止される。これにより、例えば、クリープ変形によりスリーブ20eの溝が開く方向へ多少変形したとしても、フランジ部108a1がOリング105で押し出されてクリップ部材45で押さえつけられる状態が維持されるので、温度センサ108のガタツキを抑制できる。
つまり、通電を必要とする温度センサ108等の温調用部材を利用する場合であっても、そのガタツキを抑制できるので、振動によって電気的な接続部に摩耗が生じ、接触不良(通電不良)が発生するのを防止できる。
【0054】
また、本実施の形態のウォータアウトレット100でも第一の実施形態と同様に、スリーブ20eの内周に環状の段差20e1が形成される。Oリング105は、フランジ部108a1と段差20e1との間に介装される。このようにすると、温度センサ108等の温調用部材をスリーブ20eから退出する方向へ付勢するOリング等の第一の付勢部材を容易に配置でき、その第一の付勢部材を設けた場合であっても、ウォータアウトレット100等の温調装置の大型化を抑制してコンパクトにできる。しかし、第一の付勢部材で温調用部材をスリーブ20eから退出する方向へ付勢できれば、第一の付勢部材の配置は適宜変更できる。
【0055】
また、本実施の形態のウォータアウトレット100は、シール部材120を備える。このシール部材120は、温度センサ108の外周をシールする。シール部材120は、温度センサ108とハウジング101との間で径方向の両側から圧縮される。
ここでいう径方向は、スリーブ20eの軸心線に直交し、スリーブ20eの直径方向に沿う方向であり、スリーブ20eの軸心線に沿う方向を軸方向とする。Oリング105は、温度センサ108をスリーブ20eから退出する方向へ付勢しており、この方向は、スリーブ20eの軸方向である。このため、Oリング105は、温度センサ108のスリーブ20eに対する軸方向のガタツキを抑制できる。その一方、シール部材120は、径方向に圧縮されて径方向をシールするものであり、温度センサ108のスリーブ20eに対する径方向のガタツキを抑制できる。
つまり、前記構成によれば、Oリング105とシール部材120とで温度センサ108のスリーブ20eに対する軸方向と径方向のガタツキを抑制できるので、温度センサ108のガタツキをより確実に抑制できる。
【0056】
また、本実施の形態において、温度センサ108を退出方向へ付勢する第一の付勢部材は、Oリング105であって、エラストマーからなる。このため第一の付勢部材を安価かつコンパクトにできる。さらに、Oリング(エラストマー)105はシール部材としても機能するので、温度センサ108の外周をOリング105とシール部材120の両方でシールでき、温度センサ108の外周をより確実にシールできる。
【0057】
より具体的には、例えば、振動等で温度センサ108がスリーブ20eの中心から径方向の一方へ大きくずれると、シール部材120の周方向の一部の圧縮量が大きく、反対側の一部の圧縮量が小さくなる。そして、シール部材120の圧縮量が小さくなった部分から液漏れが生じたとしても、Oリング150でシールできる。このように、Oリング150がシール部材120のバックアップシールとなり、同様に、シール部材120がOリング150のバックアップシールとなるので、液漏れを確実に防ぐことができる。
尚、本実施の形態では、第一の付勢部材がOリング105であり、Oリング105がエラストマーからなるが、第一の付勢部材は、パッキン等のOリング以外のエラストマーからなる部材であってもよい。さらに、第一の付勢部材は、スプリングワッシャ等のばねであってもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、温調装置がウォータアウトレット100、温調用部材が温度センサ108である。しかし、温調装置は、ウォータアウトレットに限られず、適宜変更できる。また、温調用部材も温度センサに限られず、例えば、ヒータ等の他の温調用部材に代えてもよい。そして、温調用部材に応じて、ハウジング101に設けるスリーブ20eの位置を変えてもよいのは勿論である。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ハウジング
2 フランジ
3 ピストン
5 皿ばね(第一の付勢部材)
10 サーモスタット装置(温調装置)
15 弁体
16 コイルスプリング(第二の付勢部材)
19 フレーム
19b 係合部
20 本体部
20a ボス部
20b 弁座
20c 開口
20d 溝
20e スリーブ
20f 溝
20g 横孔
21 脚
40 ヒータ(温調用部材)
40b 取付部
41 温度センサ
45 クリップ部材
45a 湾曲部
45b 内側凸部
46 シール部材
100 ウォータアウトレット(温調装置)
101 ハウジング
101a スリーブ
105 Oリング(付勢部材)
108 温度センサ(温調用部材)
109 温度感知部
R 流路