(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006256
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】既設柵渠水路の底部拡幅補修工法
(51)【国際特許分類】
E02B 5/02 20060101AFI20240110BHJP
E21D 9/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E02B5/02 Z
E21D9/06 331
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106978
(22)【出願日】2022-07-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】狭隘箇所の柵渠構造水路について、側部民地の買収等を伴わず、水路下部を拡幅し、通水流量の増加を見込むことができる既設柵渠水路の底部拡幅補修工法を提供する。
【解決手段】柵渠支柱、柵渠梁からなる既設柵渠水路13内に水圧ジャッキによる腹起し材を仮設の梁支保工14として設置し、既設柵渠水路13上に掘削用重機等の足場となる板材15を設置し、既設柵渠水路13内の現況河床高よりも下になるように掘り下げてオープンシールド機1を設置し、その内部にU型コンクリート水路部材4を敷設し、敷設作業の支障となる仮設の梁支保工14は盛替え、掘削箇所の足場となる板材15は撤去し、掘削に支障となる柵渠梁12も撤去し、オープンシールド機1をU型コンクリート水路部材4を反力体にして推進させ、オープンシールド機1が通過した既設柵渠水路13の柵渠支柱11の箇所から柵渠梁12を再度設置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柵渠支柱、柵渠梁からなる既設柵渠水路内に水圧ジャッキによる腹起し材を仮設の梁支保工として設置し、
既設柵渠水路上に掘削用重機等の足場となる板材を設置し、
施工箇所が既設水路内の現況河床高よりも下になるように掘り下げてオープンシールド機を設置し、
その内部にU型コンクリート水路部材を敷設し、
敷設作業の支障となる仮設の梁支保工は盛替え、
掘削箇所の足場となる板材は撤去し、
掘削に支障となる柵渠梁部材も撤去し、
オープンシールド機をU型コンクリート水路部材を反力体にして推進させ、
以後、切羽掘削、オープンシールド機前進、U型コンクリート水路部材の吊下
しを繰り返し、オープンシールド機が通過した既設柵渠水路の柵渠支柱箇所から、
柵渠梁を再度設置することを特徴とした既設柵渠水路の底部拡幅補修工法。
【請求項2】
オープンシールド機後方に嵩上げ部を形成し、この嵩上げ部にU型コンクリート水路部材の吊下し設備を設置する請求項1記載の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設水路の底部拡幅補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
柵渠水路とは上部が柵渠梁で柵状になっている水路である。
【0003】
家屋、民地が近接する柵渠構造の水路に対して、流水量の増加を目的とした拡幅工事を行おうとした場合に、柵渠構造物を幅方向に抱え込む形で改修を行うと、近接する民地、家屋に干渉する可能性がる。
【0004】
そこで底部を掘り下げて流量を確保する必要があるが、一般的な開削工法では、施工上、柵渠構造物の上部梁を撤去する必要があり既設水路部の安定を確保できない。あるいは既設水路内空幅内にて土留めを築造し、新たな水路構造物を築造する必要がある為、大きな流量の増加は見込めない。
【0005】
下記特許文献は既設の柵渠などの水路を取り壊すことにオープンシールド機によるオープンシールド工法を用いることで特許を取得したものである。
【特許文献1】特許第4015658号公報
【0006】
この特許文献1は、土留板や腹起こし、切梁などの支保工を必要とせず、オープンシールド機を利用して簡単な構造で土留めでき、安定した状態で前方を掘削できて安全性が向上し、掘削しながら同時に新たなコンクリート函体を布設できて作業性も向上できる既設水路の取壊し方法を提供するもので、オープンシールド機の前方に位置させて既設水路にこれと直交方向に止水パネルを配設し、オープンシールド機のフロント部の隔壁と側方土留板と前記止水パネルとで安定液注水区画を形成し、この安定液注水区画内に安定液を注水しながら掘削して既設の柵渠などの水路を取り壊すことを要旨とするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように既設水路断面、構造を維持しつつ、既設水路底盤部分を下方方向に拡幅する必要がある場合に、オープンシールド工法を用いようとすると、掘削、函体吊り下ろし作業において、既設水路柵渠上部からの作業となる為、柵渠梁が支障となり既設柵渠構造物の安定を確保できない、また、狭隘箇所における移動式クレーンの使用が不可能であるという問題があった。
【0008】
なお、前記特許文献1は既設水路の取壊し方法によるもので、既設水路底盤部分を下方方向に拡幅するものではない。
【0009】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、既設水路底盤部分を下方方向に拡幅するのにオープンシールド工法を利用でき、その結果、狭隘箇所の柵渠構造水路について、側部民地の買収等を伴わず、水路下部を拡幅し、通水流量の増加を見込むことができる既設柵渠水路の底部拡幅補修工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、柵渠支柱、柵渠梁からなる既設柵渠水路内に水圧ジャッキによる腹起し材を仮設の梁支保工として設置し、既設柵渠水路上に掘削用重機等の足場となる板材を設置し、施工箇所が既設水路内の現況河床高よりも下になるように掘り下げてオープンシールド機を設置し、その内部にU型コンクリート水路部材を敷設し、敷設作業の支障となる仮設の梁支保工は盛替え、掘削箇所の足場となる板材は撤去し、掘削に支障となる柵渠梁部材も撤去し、オープンシールド機をU型コンクリート水路部材を反力体にして推進させ、以後、切羽掘削、オープンシールド機前進、U型コンクリート水路部材の吊下しを繰り返し、オープンシールド機が通過した既設柵渠水路の柵渠支柱箇所から、柵渠梁を再度設置することを要旨とするものである。
【0011】
請求項2記載の本発明は、オープンシールド機後方に嵩上げ部を形成し、この嵩上げ部にU型コンクリート水路部材の吊下し設備を設置することを要旨とするものである。
【0012】
本発明によれば、既設水路河床高以下の高さ範囲にてオープンシールド工法を使用してU型コンクリート水路部材を設置する施工を行うもので、オープンシールド機は既設水路河床高さまでの仕様とした。
【0013】
また、既設柵渠水路上に掘削用重機等の足場となる板材を設置し、オープンシールド機後方に嵩上げ部を形成し、この嵩上げ部にU型コンクリート水路部材の吊下し設備を搭載することで、既設水路上からの切羽掘削、残土排出、U型コンクリート水路部材の吊下しなどを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法は、既設水路底盤部分を下方方向に拡幅するのにオープンシールド工法を利用でき、その結果、狭隘箇所の柵渠構造水路について、側部民地の買収等を伴わず、水路下部を拡幅し、通水流量の増加を見込むことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示すU型コンクリート水路部材据え付け時の側面図である。
【
図2】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示すU型コンクリート水路部材据え付け時の平面図である。
【
図3】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示すU型コンクリート水路部材据え付け時の断面図である。
【
図4】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示す掘削時の側面図である。
【
図5】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示す掘削時の平面図である。
【
図6】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示す掘削時の断面図である。
【
図7】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第1工程を示す縦断正面図である。
【
図8】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第2工程を示す縦断正面図である。
【
図9】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第3工程を示す縦断正面図である。
【
図10】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第4工程を示す縦断正面図である。
【
図11】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第5工程を示す縦断正面図図である。
【
図12】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第6工程を示す縦断正面図である。
【
図13】本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の第7工程を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の既設柵渠水路の底部拡幅補修工法の1実施形態を示すU型コンクリート水路部材据え付け時の側面図、
図2は同上平面図、
図3は同上断面図である。
【0017】
図7に示すように、既設柵渠水路13は柵渠支柱11と柵渠梁12からなるもので、水は締め切りで抜いてあり、河床13aは露出している。
【0018】
図8に示すように既設柵渠水路13内に水圧ジャッキによる腹起し材を仮設の梁支保工14として左右の柵渠支柱11間に設置しする。
【0019】
また、既設柵渠水路13上に掘削用重機等の足場となる板材15を設置する。この板材15には軽量覆工板が利用でき、柵渠支柱11で支承して載置すればよい。
【0020】
図9に示すように、施工箇所が既設水路内の現況河床13aの高さよりも下になるように掘り下げてオープンシールド機1を設置する。オープンシールド機1の側壁上端が現況河床13aよりも上になり、設置するU型コンクリート水路部材4の上端が河床13aに接続するようにする。
【0021】
前記オープンシールド機1は左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したU型のシールド機である。
【0022】
該オープンシールド機1は機体の前側を掘削を行うフロント部2とし、機体の後端をU型コンクリート水路部材4の吊下しを行うテール部5とし、これらフロント部2とは一体のものでもよいが、曲がりに対応する場合は機体を前後方向で複数に分割し、フロント部2としての前方の機体の後端にテール部5としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。なお、7は中折ジャッキ、6は隔壁、8はプレスバー(押角)である。
【0023】
テール部5には機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0024】
オープンシールド機1の後方テール部5に嵩上げ部9を形成し、この嵩上げ部9にU型コンクリート水路部材の吊下し設備10を設置する。U型コンクリート水路部材の吊下し設備10は楊重用の架構にホイスト等の揚重機を設置したものである。
【0025】
オープンシールド機1の内部にU型コンクリート水路部材4を敷設する。このU型コンクリート水路部材4はオープンシールド機1の後方からフォークリフト16等により運搬して、U型コンクリート水路部材の吊下し設備10によりオープンシールド機1の内に吊下して設置する。なお、敷設作業の支障となる仮設の梁支保工14は盛替える。
【0026】
図9に示すように、バックホウ17でオープンシールド機1の前方の切羽を上部から掘削し、その残土はオープンシールド機1上に配置したバケット18に積込み、U型コンクリート水路部材の吊下し設備10を利用して、バケットを後方に運搬し、フォークリフト16、キャリアダンプ等により搬出する。
【0027】
なお、掘削箇所の足場となる板材15は撤去し、掘削に支障となる柵渠梁12の部材も撤去しておく。
【0028】
既設支柱としての柵渠支柱11、柵渠梁12の変位防止は腹起し材と水圧ジャッキによる仮設支保材である梁支保工14に期待する。
【0029】
推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を伸長して、オープンシールド機1を敷設したU型コンクリート水路部材4を反力体にして前進させる。
【0030】
オープンシールド機1内でU型コンクリート水路部材4の外側にグラウト19(1次グラウト)を施し、オープンシールド機1から出たU型コンクリート水路部材4の外側にグラウト19(2次グラウト)を施す。
【0031】
以後、バックホウ17での切羽掘削、オープンシールド機1の前進、U型コンクリート水路部材4の吊下設置を繰り返し、オープンシールド機1が通過した既設柵渠水路13の柵渠支柱11の箇所から、柵渠梁12を再度設置する。
【0032】
このようにしてU型コンクリート水路部材4を既設柵渠水路13の河床13a下に敷設していくことで、既設柵渠水路の底部拡幅補修が行われる。
【符号の説明】
【0033】
1…オープンシールド機 2…フロント部
3…推進ジャッキ(シールドジャッキ)
4…U型コンクリート水路部材 5…テール部
6…隔壁 7…中折ジャッキ
8…プレスバー(押角) 9…嵩上げ部
10…U型コンクリート水路部材の吊下し設備
11…柵渠支柱 12…柵渠梁
13…既設柵渠水路 13a…河床
14…梁支保工
15…板材 16…フォークリフト
17…バックホウ 18…バケット
19…グラウト