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特開2024-62561摩耗量モニタリング装置及び当該装置を備えた車両、並びに摩耗量モニタリング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062561
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】摩耗量モニタリング装置及び当該装置を備えた車両、並びに摩耗量モニタリング方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/20 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 29/14 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60L5/20 Z
G01N29/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170467
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 将一
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕子
(72)【発明者】
【氏名】川内 章央
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健二
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】長谷 亜蘭
【テーマコード(参考)】
2G047
5H105
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC05
2G047BA05
2G047BC02
2G047BC07
2G047BC11
2G047GG28
5H105AA08
5H105AA11
5H105BA02
5H105BB01
5H105CC02
5H105CC12
5H105EE02
5H105EE04
5H105EE13
5H105EE14
5H105GG02
5H105GG14
(57)【要約】
【課題】時刻や天候に関係なく、集電部品の摩耗量を定量的に見積もることができる摩耗量モニタリング装置を提供する。
【解決手段】摩耗量モニタリング装置は、トロリ線に接触する集電部品が設置された車両の走行中に、前記集電部品の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング装置であって、前記集電部品から放出されるAE波を検出するAEセンサと、前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定する推定装置と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリ線に接触する集電部品が設置された車両の走行中に、前記集電部品の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング装置であって、
前記集電部品から放出されるAE波を検出するAEセンサと、
前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定する推定装置と、
を備えた摩耗量モニタリング装置。
【請求項2】
前記車両は、前記集電部品が取り付けられた車両本体を備え、
前記AEセンサは、前記車両本体に設置される、
請求項1に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項3】
前記車両本体は、前記車両の外表面を構成する外板を備え、
前記集電部品は、前記外板の外側に設置された碍子に支持され、
前記AEセンサは、前記外板を挟んで前記碍子の反対側に設置される、
請求項2に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項4】
前記AEセンサは、前記外板の延在方向において前記碍子の少なくとも一部と重なる位置に設置される、
請求項3に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項5】
前記突発型波形は、予め定められた振幅よりも大きな振幅を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項6】
前記推定装置は、前記推定装置で推定された前記集電部品の摩耗量を前記AE波に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項7】
前記集電部品の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令する警報装置を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項8】
前記AE波のAE累積エネルギは、前記集電部品の摩耗量に比例する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の摩耗量モニタリング装置。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載の摩耗量モニタリング装置を備えた車両。
【請求項10】
トロリ線に接触する集電部品が設置された車両の走行中に、前記集電部品の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング方法であって、
前記集電部品から放出されるAE波を検出するステップと、
前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定するステップと、
を有する摩耗量モニタリング方法。
【請求項11】
前記突発型波形は、予め定められた振幅よりも大きな振幅の波形である、
請求項10に記載の摩耗量モニタリング方法。
【請求項12】
前記摩耗量を推定するステップは、前記摩耗量を推定するステップで推定された集電部品の摩耗量を前記AE波に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する、
請求項10又は11に記載の摩耗量モニタリング方法。
【請求項13】
前記集電部品の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令するステップを有する、請求項10又は11に記載の摩耗量モニタリング方法。
【請求項14】
前記AE波のAE累積エネルギは、前記集電部品の摩耗量に比例する、請求項10又は11に記載の摩耗量モニタリング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩耗量モニタリング装置及び当該装置を備えた車両、並びに摩耗量モニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トロリ線との接触により摩耗する集電装置(パンタグラフ)の側面を撮影するカメラと、カメラによって撮影された画像データを画像処理することで、集電部品(主すり板と補助すり板)の摩耗量(厚み)を測定する装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、アコースティック・エミッション法(AE法)によってトロリ線の損傷を検査する装置が開示されている。かかる装置は、トロリ線上に一対のAEセンサを取り付ける一方、トロリ線の軸線直交方向に往復振動を加え、加振の振幅、回数等とともにAE波の変化を記録することで、トロリ線の特定の損傷箇所の疲労状態を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3353024号公報
【特許文献2】特開2006-240508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された装置では、夜間に集電部品の摩耗量を測定する場合には照明を必要とし、また、天候(雨や雪)によってカメラで撮影された画像データが不鮮明となり、測定データの精度が低下する虞がある。
【0006】
特許文献2に開示された装置は、アコースティック・エミッション法を用いるものであるが、車両の停車中にトロリ線の特定の損傷箇所の疲労状態を検出するものであり、車両の走行中にトロリ線や集電部品(主すり板と補助すり板)の摩耗量(疲労状態)を測定するものではない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、時刻や天候に関係なく、車両の走行中に集電部品の摩耗量を定量的に見積もることができる摩耗量モニタリング装置及び当該装置を備えた車両、並びに摩耗量モニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る摩耗量モニタリング装置は、
トロリ線に接触する集電部品が設置された車両の走行中に、前記集電部品の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング装置であって、
前記集電部品から放出されるAE波を検出するAEセンサと、
前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定する推定装置と、
を備える。
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る摩耗量モニタリング方法は、
トロリ線に接触する集電部品が取り付けられた車両の走行中に、前記集電部品の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング方法であって、
前記集電部品から放出されるAE波を検出するステップと、
前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定するステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態に係る摩耗量モニタリング装置及び当該装置を備えた車両、並びに摩耗量モニタリング方法によれば、AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって集電部品の摩耗量を推定することで、時刻や天候に関係なく、車両の走行中に集電部品の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の摩耗量モニタリング装置を採用可能な交通システムを概略的に示す図である。
図2図1に示した車両本体に設けられた集電装置の構成を概略的に示す図である。
図3】集電部品の摩擦量をモニタリングする摩耗量モニタリング装置を概略的に示す図である。
図4図3に示した摩耗量モニタリング装置において一対の碍子間で検出されるAE波の信号強度を示す図である。
図5図2に示した集電部品の集電時の摩耗を概略的に示す図である。
図6図1に示した車両の走行距離と車両本体に設けられた集電部品の摩耗量との関係を概略的に示す図である。
図7】摩耗の種類とAE波との関係を示す図である。
図8A】異常摩耗におけるAE信号の波形を概略的に示す図であって、突発型波形を識別する閾値を小さく設定した例を示す図である。
図8B】異常摩耗におけるAE信号の波形を概略的に示す図であって、突発型波形を識別する閾値を大きく設定した例を示す図である。
図9】集電部品の摩耗量とAE累積エネルギとの関係を示す図である。
図10】摩耗量推定部を設けた波形解析装置を示すブロック図である。
図11】集電部品の摩耗量と突発型波形の累積検知回数との関係を示す図である。
図12】摩耗量推定部と摩耗量補正部を設けた波形解析装置を示すブロック図である。
図13】本開示の変形例に係る摩耗量モニタリング装置を概略的に示す図である。
図14】集電部品の摩耗量をモニタリングする本開示の摩耗量モニタリング方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
[摩耗量モニタリング装置が適用される交通システム]
図1は、本開示の摩耗量モニタリング装置を採用可能な交通システム1を概略的に示す図である。図1に示すように、本開示の摩耗量モニタリング装置を採用可能な交通システム1は、例えば、駆動輪にゴムタイヤが採用された案内軌条式旅客輸送システム(AGT(Automated Guideway Transit))等の新交通システムであるが、これに限定されるものではなく、電車や地下鉄、路面電車等の従来の交通システムにも採用可能である。交通システム1は、コンクリート製の走行路10にガイドウェイ12,12を設け、走行輪にゴムタイヤ14が採用された車両16がガイドウェイ12に誘導されながら進むように構成される。交通システム1では、さらに走行路10の左右に壁18,18が設けられ、車両本体20の側面に設けられた案内輪22が壁18,18に設けられた案内レール24,24に誘導される。また、交通システム1では、一方の壁18にトロリ線26,26が設けられ、車両本体20に集電装置28,28が設けられる。例えば、新交通システムには直流電流を供給するものと三相の交流電流を供給するものがあり、直流電流を供給する交通システム1では壁に二本のトロリ線26,26が設けられ、車両本体20に二つの集電装置28,28が設けられるが、これに限られるものではない。尚、図1には車両本体20の側面に設けられた集電装置28,28を示したが、集電装置は、これに限られるものではなく、例えば、電車や路面電車のように屋根の上に設けられたパンタグラフタイプの集電装置であってもよい。
【0014】
[集電装置の構成]
図2は、図1に示した車両本体20に設けられた集電装置28の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、集電装置28は、トロリ線26から電気を得るための装置であって、車両16の外表面を構成する外板30の外側に設置された一対の碍子32,32と、一対の碍子32,32に支持された台座34と、台座34に立設された支柱36と、支柱36に揺動可能に支持されたアーム38と、アーム38の一端に設置された集電部品(シュー)40と、アーム38の他端と台座34との間に設けられ、集電部品40をトロリ線26に接触するように弾性復元力が作用するバネ42と、を備えている。
【0015】
[摩耗量モニタリング装置]
図3は、集電部品40の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング装置44を概略的に示す図である。集電部品40の摩耗量モニタリング装置44は、トロリ線26に接触する集電部品40(集電装置28)が設置された車両16の走行中に、集電部品40の摩耗量をモニタリングする装置である。集電部品40の摩耗量モニタリング装置44は、材料が変形又は破壊される際に内部に蓄えていた弾性エネルギを音波(「弾性波」又は「AE波」という)として放出する現象(アコースティック・エミッション(Acoustic Emission(以下「AE」という)))を利用するものである。集電部品40の摩耗量モニタリング装置44は、集電部品40から放出されるAE波を検出するAEセンサ46と、AE波に基づいて集電部品40の摩耗量を推定する推定装置48と、を備えている。
【0016】
集電部品40から放出されるAE波は、集電部品40が変形又は破壊される際に放出される弾性エネルギ(弾性波)であり、数10kHzから数MHzの周波数の波である。AEセンサ46は、AE波を検出可能なセンサであり、例えば、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電素子を内蔵する。AE波は固体を伝播するので、AEセンサ46を集電部品40に設置する必要はなく、AEセンサ46を集電装置28を構成する部品等に設置すればよい。数10kHzから数MHzの周波数の波であるAE波をAEセンサ46に伝達するために、AEセンサ46と集電部品40との間、又はAEセンサ46と集電装置28を構成する部品等との間にカプラント50(接触媒質)を塗布する必要がある。接触媒質は、例えば、接着剤やシリコングリースであるが、水や油であってもよい。
【0017】
[AEセンサの設置位置]
AEセンサ46は、上述したように集電装置28を構成する部品等に設置すればよいので、例えば、図2に示すように、アーム38の集電部品40よりも支柱側となる場所A、アーム38の支柱36よりも他端側となる場所B、台座34の集電部品側となる場所C、又は外板30を挟んで碍子32の反対側となる場所Dのいずれか一つに設置可能である。場所Dは集電部品40から離れるのでAE波の信号強度が減衰する虞があるが本開示の発明者らによって十分な信号強度が得られることが確認された。一方、場所Aは集電部品40に近くAE波の信号強度が強いが地絡の虞がある。
【0018】
図4は、図3に示した摩耗量モニタリング装置44において一対の碍子間で検出されるAE波の信号強度を示す図である。上述したように、外板30を挟んで碍子32の反対側となる場所Dは、外板30の内側であるから風雨や紫外線に曝されることもないので、AEセンサ46の設置に適していると考えられる。そこで、一対の碍子間で検出されるAE信号(AE波)の信号強度(後述するAE累積エネルギ量)を本開示の発明者らが調べると、外板30を挟んで碍子32の反対側であって、外板30の延在方向において碍子32,32の少なくとも一部と重なる位置にAEセンサ46を設置することが好ましいことがわかった。外板30の延在方向において碍子32,32の少なくとも一部と重なる位置は、集電部品側となる碍子32Aの端を0とし、碍子32Aから集電部品40と反対側となる碍子32Bの端を1.0とすると、図4に示す例では、0~0.2の位置、及び0.8から1.0の位置である。尚、集電部品側となる碍子32Aと重なる位置と集電部品40と反対側となる碍子32Bと重なる位置では信号強度が同じであるが、環境(雨)によってアーク放電が起こりやすい場合には集電部品40と反対側となる碍子32Bと少なくとも一部が重なる位置に設置することが好ましい。
【0019】
図3に示すように、推定装置48は、アンプ52及び波形解析装置54により構成される。AE信号は非常に微弱なためにアンプ52により40から100dB程度に増幅されて波形解析装置54に入力される。
【0020】
[集電部品の通電摩耗と異常摩耗]
図5は、集電部品40の集電時の摩耗を概略的に示す図である。図5に示すように、集電部品40の集電時の摩耗には(a)通電に起因する摩耗(以下「通電摩耗」という)と(b)アーク放電に起因する摩耗(以下「異常摩耗」という)があると考えられる。通電摩耗は集電部品40の接触面に存在する微細な突起の溶融によって生じる摩耗であり、トロリ線26に集電部品40が接触した状態でトロリ線26から集電部品40に電流が流れることにより生じる。異常摩耗は空気の絶縁破壊(アーク放電)によって生じる摩耗であり、トロリ線26から集電部品40が離線することでトロリ線26から集電部品40に過大エネルギが供給されることにより生じる。例えば、降雪や降霜によってトロリ線26と集電部品40との間に雪や霜が噛み込まれると、トロリ線26と集電部品40が非接触状態となり異常摩耗となる。また、例えば、降雨や結露によってトロリ線26と集電部品40との間に雨や水滴が入り込んだ場合にもトロリ線26と集電部品40が非接触状態となり異常摩耗となる。
【0021】
[車両の走行距離と集電部品の摩耗量]
図6は、車両16の走行距離と集電部品40の摩耗量との関係を概略的に示す図である。車両16の走行時には、上述した通電摩耗及び異常摩耗のほかに、トロリ線26に接触した集電部品の相対運動を妨げる力(摩擦力)に起因する摩耗(以下「機械摩耗」という)が生じる。図6に示すように、機械摩耗及び通電摩耗による摩耗量は車両16の走行距離に比例して増加し、異常摩耗はアーク放電が発生したときにだけ突発的に生じる。異常摩耗による摩耗量は一般的に機械摩耗及び通電摩耗に比べて大きく、急激に増加する。
【0022】
[摩耗の種類とAE波の関係]
図7は、摩耗の種類とAE波との関係を示す図である。機械摩耗では集電部品40の正面(接触面)にすり疵が残り、通電摩耗では集電部品40の正面にすり疵のほかに斑点疵が残る。また、異常摩耗では集電部品40の正面にあばた状の疵が残る。波形解析装置54に入力されるAE信号の波形は、機械摩耗、通電摩耗及び異常摩耗で異なり、AE信号の波形によって機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗の識別が可能である。例えば、機械摩耗におけるAE信号の周波数(以下「AE周波数」という)は0.3MHzから1.2MHzであり、通電摩耗におけるAE周波数は0.6から1.3MHzある。また、異常放電におけるAE周波数は0.9から1.7MHである。また、AE信号の電圧(以下「AE電圧」という)は、機械摩耗、通電摩耗、異常摩耗の順に高い。これにより、AE周波数及びAE電圧によって機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗の識別が可能である。また、機械摩耗及び通電摩耗におけるAE信号の波形は連続型波形で構成され、突発型波形を含まないのに対して、異常摩耗におけるAE信号の波形は連続型波形のほかに突発型波形が含まれる。
【0023】
[突発型波形のAEエネルギと検知回数]
図8A及び図8Bは、異常摩耗におけるAE信号に含まれる突発型波形を概略的に示す図である。図8A及び図8Bに示すように、AE信号に含まれる突発型波形は、立ち上がりが鋭くその後減衰する波形であり、予め定められた振幅(閾値SH)よりも大きな振幅を有する一塊のAE波である。AE計測では、AE波の積分値をエネルギ(以下「AEエネルギ」という)と称し、振幅と時間の積(面積)で示される。また、AE計測では、上述した一塊のAE波を1ヒット(検知回数1回)と数える。図8Aは突発型波形を識別する閾値SHを小さく設定した例を示す図であり、図8Aには閾値SHを超える二つの突発型波形が現れる。図8Bは突発型波形を識別する閾値SHを大きく設定した例を示す図であり、同じ波形を示すが、図8Bには閾値SHを超える一つの突発型波形が現れる。したがって、図8Aに示す例のほうが図8Bに示す例よりも突発型波形のAEエネルギが大きくなり、図8Aに示す例では検知回数が二回となるが図8Bに示す例では検知回数が一回となる。
【0024】
[集電部品の摩耗量とAE累積エネルギ]
図9は、集電部品40の摩耗量とAE累積エネルギとの関係を示す図である。図9に示すように、集電部品40の摩耗量とAE累積エネルギには相関関係があり、AE累積エネルギは集電部品40の摩耗量に比例する。換言すると、集電部品40の摩耗量はAE累積エネルギに比例する。したがって、AE累積エネルギを計測することによって集電部品40の摩耗量をモニタリングすることができる。
【0025】
上述したように、異常摩耗による摩耗量は一般的に機械摩耗及び通電摩耗に比べて大きく、急激に増大する。また、異常摩耗におけるAE信号の波形には連続型波形のほかに突発型波形が含まれ、異常摩耗におけるAE累積エネルギの大部分を突発型波形のAE累積エネルギが占める。このことから突発型波形のAE累積エネルギを計測することによって集電部品40の異常摩耗量を推定できるという原理が導き出される。
【0026】
この原理に基づいて摩擦量を推定するために、図10に示す波形解析装置54は摩耗量推定部56を有している。摩耗量推定部56では、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形のAE累積エネルギと集電部品の摩耗量の相関関係を予め求めることで、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形のAE累積エネルギによって集電部品40の摩耗量を推定する。例えば、摩耗量推定部56ではAE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギを逐次算出することによって集電部品40の摩耗量を逐次推定してもよいが、予め定められた期間ごとにAE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギを算出することによって予め定められた期間ごとに集電部品40の摩耗量を推定してもよい。また、例えば、摩耗量推定部56では予め設定した摩耗量に対応するAE累積エネルギ(閾値)を設定しておき、その閾値に達したら集電部品40の摩耗量が予め設定した摩耗量に到達したと推定してもよい。尚、このようにAE信号(AE波)に含まれる突発型波形のAE累積エネルギによって集電部品40の摩耗量を推定する場合には、AEセンサ46は、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形を検出するものであれば、AE信号(AE波)に含まれる連続型波形を検出しないものであってもよい。
【0027】
このような構成によれば、時刻や天候に関係なく、車両16の走行中に集電部品40の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0028】
[集電部品の摩耗量と突発型波形の累積検知回数]
図11は、集電部品40の摩耗量と突発型波形の累積検知回数との関係を示す図である。図11に示すように、集電部品40の摩耗量と突発型波形の累積検知回数(累積ヒット数)には相関関係があり、突発型波形の累積検知回数は集電部品40の摩耗量に比例する。換言すると、集電部品40の摩耗量は突発型波形の累積検知回数に比例する。このことから突発型波形の累積検知回数を計測することによって集電部品40の摩耗量を推定できるという原理が導き出される。
【0029】
この原理に基づいて摩耗量を推定するために、摩耗量推定部56では、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形の累積検知回数と集電部品40の摩耗量の相関関係を予め求めることで、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形の検知回数によって集電部品40の摩耗量を推定してもよい。例えば、摩耗量推定部56ではAE波に含まれる突発型波形の累積検知回数を逐次数えることによって集電部品40の摩耗量を逐次推定してもよいが、予め定められた期間ごとに集電部品40の摩耗量を推定してもよい。また、例えば、摩耗量推定部56では予め設定した摩耗量に対応する突発型波形の検知回数(閾値)を設定しておき、その閾値に達したら集電部品40の摩耗量が予め設定した摩耗量に到達したと推定してもよい。尚、このようにAE信号(AE波)に含まれる突発型波形の累積検知回数によって集電部品40の摩耗量を推定する場合には、AEセンサ46は、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形を検出するものであれば、AE信号(AE波)に含まれる連続型波形を検出しないものであってもよい。
【0030】
このような構成によっても、時刻や天候に関係なく、車両16の走行中に集電部品40の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0031】
[摩耗量の補正1]
上述したように、集電部品40の摩耗量とAE累積エネルギには相関関係があり、AE累積エネルギは集電部品40の摩耗量に比例するので、摩耗量推定部56で推定された摩耗量をAE信号(AE波)に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正してもよい。この場合には、図12に示すように、波形解析装置54に摩耗量補正部58を設け、摩耗量推定部56で推定された集電部品40の摩耗量をAE波に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する。例えば、摩耗量補正部58では、波形解析装置54に入力されたAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギを補正値とし、連続型波形のAE累積エネルギ(補正値)に対応する摩耗量を、摩耗量推定部56で推定された摩耗量に加算する。尚、補正値とする連続型波形のAE累積エネルギの計測では、連続型波形の振幅に閾値を設け、その閾値を超える連続型波形のAE累積エネルギを補正値としてもよい。また、AE信号に含まれる連続型波形には、異常摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形のほか、機械摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形、及び通電摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形がある。機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗は、AE周波数及びAE電圧によって識別可能であるから、機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗における連続型波形のAE累積エネルギをそれぞれ区別して補正値としてもよい。
【0032】
このような構成によれば、異常摩耗、機械摩耗及び通電摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギが補正値となるので、連続型波形のAE累積エネルギ(補正値)に対応する摩耗量を、摩耗量推定部56で推定された摩耗量に加算することで、異常摩耗の大部分を占める摩耗量だけでなく、異常摩耗の残りの摩耗量、機械摩耗及び通電摩耗の摩耗量を含む、集電部品40の全摩耗量を推定することができる。
【0033】
[摩耗量の補正2]
また、摩耗量推定部56で推定された摩耗量は異常摩耗の摩耗量であるから、機械摩耗及び通電摩耗による摩耗量によって補正するものとしてもよい。この場合に、機械摩耗及び通電摩耗はAE信号(AE波)以外のパラメータで補正するものとしてもよい。AE波以外のパラメータは、例えば、機械摩耗及び通電摩耗と比例関係にある車両16の走行距離であり、車両16の走行距離に対応する摩耗量を補正値とし、車両16の走行距離に対応する摩耗量(補正値)を、摩耗量推定部56で推定された摩耗量に加算してもよい。
【0034】
このように補正すれば、機械摩耗及び通電摩耗による摩耗量(補正値)を、摩耗量推定部56で推定された摩耗量に加算することで、機械摩耗及び通電摩耗の摩耗量を含む集電部品40の全摩耗量を推定することができる。
【0035】
[本開示の摩耗量モニタリング装置の変形例]
図13は、本開示の変形例に係る摩耗量モニタリング装置60を概略的に示す図である。図13に示すように、本開示の変形例に係る摩耗量モニタリング装置60は、上述した摩耗量モニタリング装置44に警報装置62を備えたものであり、警報装置62は、推定装置48(波形解析装置54)で推定された集電部品40の摩耗量が予め定められた摩耗量(閾値)を超えた場合に警報を発令する。
【0036】
AE累積エネルギの増加が急なほど摩耗が進展するので、警報装置62は、集電部品40の摩耗量増加分に対するAE累積エネルギの増加分(増加率X)に応じて警報を発令するものとしてもよい(増加率X=AE累積エネルギの増加分Δ1/集電部品の摩耗量増加分Δ2)。例えば、増加率Xが定数Aよりも大の場合(X>A)に集電部品40の交換準備の警報を発令するものとし、増加率Xが定数Bよりも大の場合(X>B)に集電部品40の交換注意の警報を発令する。また、増加率Xが定数Cよりも大の場合(X>B)に定常摩耗の警報を発令する。尚、定数A,B,Cは運転条件(集電部品40への印加電圧や集電部品の材料)によって定まる定数である。
【0037】
このような構成によれば、集電部品40が摩耗により使えなくなる前に集電部品40の交換を促すことができるので、交通システム1の安全な運行に寄与することができる。
【0038】
[AE波のAE累積エネルギと集電部品の摩耗量]
集電部品40から放出されるAE波のAE累積エネルギは、集電部品40の摩耗量に比例する。これを数式で表すと下記の数式1となる。
【0039】
【数1】
P :トロリ線に押し付ける集電部品の押付荷重
:集電部品(シュー)の塑性流動圧力
AE :単位摩耗距離あたりのAEエネルギ
【0040】
これにより、AE波のAE累積エネルギによって集電部品40の摩耗量を推定することができる。
【0041】
[摩耗量モニタリング方法]
図14は、集電部品40の摩耗量モニタリング方法を概略的に示すフローチャートである。集電部品40の摩耗量モニタリング方法は、トロリ線26に接触する集電部品40が設置された車両16の走行中に集電部品40の摩耗量をモニタリングする摩耗量モニタリング方法であって、集電部品40から放出されるAE波を検出するステップ(S1)と、AE波に基づいて集電部品の摩耗量を推定するステップ(S3)と、を有する。
【0042】
AE波を検出するステップ(S1)では、AEセンサ46が集電部品40から放出されたAE波を検出する。そして、AEセンサ46で検出されたAE波はアンプ52によって増幅されて波形解析装置54に入力され、波形解析装置54に集積される(ステップS2)。
【0043】
[摩耗量の推定1]
AE波に基づいて集電部品40の摩耗量を推定するステップ(S3)では、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形のAE累積エネルギと集電部品40の摩耗量を予め求め、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形のAE累積エネルギによって集電部品40の摩耗量を推定する。例えば、AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギを逐次算出することによって集電部品40の摩耗量を逐次推定してもよいが、予め定められた期間ごとにAE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギを算出することによって予め定められた期間ごとに集電部品40の摩耗量を推定してもよい。
【0044】
このような方法によれば、時刻や天候に関係なく、車両16の走行中に集電部品40の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0045】
[摩耗量の推定2]
また、AE波に基づいて集電部品40の摩耗量を推定するステップ(S3)では、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形の累積検知回数と集電部品40の摩耗量の相関関係を予め求め、AE信号(AE波)に含まれる突発型波形の検知回数によって集電部品40の摩耗量を推定してもよい。例えば、AE波に含まれる突発型波形の累積検知回数を逐次数えることによって集電部品40の摩耗量を逐次推定してもよいが、予め定められた期間ごとに集電部品40の摩耗量を推定してもよい。
【0046】
このような方法によっても、時刻や天候に関係なく、車両16の走行中に集電部品40の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0047】
[摩耗量の補正1]
摩耗量を推定するステップ(S3)では、推定された集電部品40の摩耗量をAE信号(AE波)に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正してもよい。この場合には、AE信号に含まれる突発型波形のAE累積エネルギによって推定された集電部品40の摩耗量をAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する。例えば、AE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギを補正値とし、連続型波形のAE累積エネルギ(補正値)に対応する摩耗量を、摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された摩耗量に加算する。尚、補正値とする連続型波形のAE累積エネルギの計測では、連続型波形の振幅に閾値を設け、その閾値を超える連続型波形のAE累積エネルギを補正値としてもよい。また、機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗は、AE周波数及びAE電圧によって識別可能であるから、機械摩耗、通電摩耗又は異常摩耗における連続型波形のAE累積エネルギをそれぞれ区別して補正値としてもよい。
【0048】
このような方法によれば、異常摩耗、機械摩耗及び通電摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギが補正値となるので、連続型波形のAE累積エネルギ(補正値)に対応する摩耗量を、摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された摩耗量に加算することで、異常摩耗の大部分を占める摩耗量だけでなく、異常摩耗の残りの摩耗量、機械摩耗及び通電摩耗の摩耗量を含む、集電部品40の全摩耗量を推定することができる。
【0049】
[摩耗量の補正2]
また、摩耗量を推定するステップ(S3)では、推定された集電部品40の摩耗量を機械摩耗及び通電摩耗による摩耗量によって補正してもよい。この場合に、機械摩耗及び通電摩耗はAE信号(AE波)以外のパラメータで補正するものとしてもよい。AE波以外のパラメータは、例えば、機械摩耗及び通電摩耗と比例関係にある車両16の走行距離であり、車両16の走行距離に対応する摩耗量を補正値とし、車両16の走行距離に対応する摩耗量(補正値)を、摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された摩耗量に加算してもよい。
【0050】
このように補正すれば、機械摩耗及び通電摩耗による摩耗量を摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された摩耗量に加算することで、機械摩耗及び通電摩耗の摩耗量を含む集電部品40の全摩耗量を推定することができる。
【0051】
[本開示の摩耗量モニタリング方法の変形例]
本開示の変形例に係る摩耗量モニタリング方法は、警報を発令するステップ(S5)を備えている。警報を発令するステップ(S5)では、集電部品40の摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された集電部品40の摩耗量が予め定められた摩耗量(閾値)を超えた場合(ステップS4:Yes)に警報を発令する。
【0052】
AE累積エネルギの増加が急なほど摩耗が進展するので、集電部品40の摩耗量増加分に対するAE累積エネルギの増加分(増加率X)に応じて警報を発令するものとしてもよい(増加率X=AE累積エネルギの増加分Δ1/集電部品の摩耗量増加分Δ2)。例えば、増加率Xが定数Aよりも大の場合(X>A)に集電部品40の交換準備の警報を発令するものとし、増加率Xが定数Bよりも大の場合(X>B)に集電部品40の交換注意の警報を発令する。また、増加率Xが定数Cよりも大の場合(X>B)に定常摩耗の警報を発令する。
【0053】
このような方法によれば、集電部品40が摩耗により使えなくなる前に交換を促すことができるので、交通システム1の安全な運行に寄与することができる。
【0054】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0055】
[1]一の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、トロリ線(26)に接触する集電部品(40)が設置された車両(16)の走行中に、前記集電部品(40)の摩耗量をモニタリングする集電部品(40)の摩耗量モニタリング装置(44)であって、前記集電部品(40)から放出されるAE波を検出するAEセンサ(46)と、前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品の摩耗量を推定する推定装置(48)と、を備える。
【0056】
このような構成によれば、時刻や天候に関係なく、車両(16)の走行中に集電部品(40)の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0057】
[2]別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[1]に記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記車両(16)は、前記集電部品(40)が取り付けられた車両本体(20)を備え、前記AEセンサ(46)は、前記車両本体(20)に設置される。
【0058】
このような構成によれば、AEセンサ(46)は集電部品(40)が取り付けられた車両本体(20)とともに移動することができる。
【0059】
[3]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[2]に記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記車両本体(20)は、前記車両(16)の外表面を構成する外板(30)を備え、前記集電部品(40)は、前記外板(30)の外側に設置された碍子(32、32)に支持され、前記AEセンサ(46)は、前記外板(30)を挟んで前記碍子(32,32)の反対側に設置される。
【0060】
このような構成によれば、AEセンサ(46)を風雨から保護することができる。
【0061】
[4]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[3]に記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記AEセンサ(46)は、前記外板(30)の延在方向において前記碍子(32,32)の少なくとも一部と重なる位置に設置される。
【0062】
このような構成によれば、AEセンサ(46)が検出するAE波の強度を確保することができる。
【0063】
[5]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[1]から[4]のいずれか一つに記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記突発型波形は、予め定められた振幅よりも大きな振幅を有する。
【0064】
このような構成によれば、突発型波形の識別を容易に行うことができる。
【0065】
[6]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[1]から[5]のいずれか一つに記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記推定装置(48)は、前記推定装置(48)で推定された前記集電部品(40)の摩耗量を前記AE波に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する。
【0066】
このような構成によれば、異常摩耗、機械摩耗及び通電摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギが補正値となるので、異常摩耗におけるAE信号に含まれる突発型波形のAE累積エネルギだけでは推定できない集電部品(40)の全摩耗量を推定することができる。
【0067】
[7]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[1]から[6]のいずれか一つに記載の集電部品(40)の摩耗量モニタリング装置(44)であって、前記集電部品(40)の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令する警報装置(62)を備える。
【0068】
このような構成によれば、警報装置(62)は集電部品(40)の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令することで、集電部品(40)の交換を促すことができる。これにより、集電部品(40)が摩耗により使えなくなる前に集電部品(40)の交換を促すことができるので、交通システム1の安全な運行に寄与することができる。
【0069】
[8]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング装置は、[1]から[7]のいずれか一つに記載の摩耗量モニタリング装置であって、前記AE波のAE累積エネルギは、前記集電部品(40)の摩耗量に比例する。
【0070】
このような構成によれば、AE波のAE累積エネルギによって集電部品(40)の摩耗量を推定することができる。
【0071】
[9]一の態様に係る車両は、[1]から[8]のいずれか一つに記載の集電部品(40)の摩耗量モニタリング装置(44)を備える。
【0072】
このような構成によれば、集電部品(40)の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0073】
[10]一の態様に係る摩耗量モニタリング方法は、トロリ線(26)に接触する集電部品(40)が設置された車両(16)の走行中に、前記集電部品(40)の摩耗量をモニタリングする集電部品(40)の摩耗量モニタリング方法であって、前記集電部品(40)から放出されるAE波を検出するステップ(S1)と、前記AE波に含まれる突発型波形のAE累積エネルギ又は累積検知回数によって前記集電部品(40)の摩耗量を推定するステップ(S3)と、を有する。
【0074】
このような方法によれば、時刻や天候に関係なく、車両(16)の走行中に集電部品(40)の摩耗量を定量的に見積もることができる。
【0075】
[11]別の態様に係る摩耗量モニタリング方法は、[10]に記載の摩耗量モニタリング方法であって、前記突発型波形は、予め定められた振幅よりも大きな振幅の波形である。
【0076】
このような方法によれば、突発型波形の識別を容易にすることができる。
【0077】
[12]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング方法は、[10]又は[11]に記載の摩耗量モニタリング方法であって、前記摩耗量を推定するステップ(S3)は、前記摩耗量を推定するステップ(S3)で推定された集電部品(40)の摩耗量を前記AE波に含まれる連続型波形のAE累積エネルギによって補正する。
【0078】
このような方法によれば、異常摩耗、機械摩耗及び通電摩耗におけるAE信号に含まれる連続型波形のAE累積エネルギが補正値となるので、異常摩耗におけるAE信号に含まれる突発型波形のAE累積エネルギだけでは推定できない集電部品(40)の全摩耗量を推定することができる。
【0079】
[13]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング方法は、[10]から[12]のいずれか一つに記載の摩耗量モニタリング方法であって、前記集電部品(40)の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令するステップ(S5)を有する。
【0080】
このような方法によれば、警報を発令するステップ(S5)は集電部品(40)の摩耗量が予め定められた摩耗量を超えた場合に警報を発令することで、集電部品(40)の交換を促すことができる。これにより、集電部品(40)が摩耗により使えなくなる前に集電部品(40)の交換を促すことができるので、交通システム1の安全な運行に寄与することができる。
【0081】
[14]さらに別の態様に係る摩耗量モニタリング方法は、[10]から[13]のいずれか一つに記載の摩耗量モニタリング方法であって、前記AE波のAE累積エネルギは、前記集電部品(40)の摩耗量に比例する。
【0082】
このような方法によれば、AE波のAE累積エネルギによって集電部品(40)の摩耗量を推定することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 交通システム
10 走行路
12 ガイドウェイ
14 ゴムタイヤ(走行輪)
16 車両
18 壁
20 車両本体
22 案内輪
24 案内レール
26 トロリ線
28 集電装置
30 外板
32,32A,32B 碍子
34 台座
36 支柱
38 アーム
40 集電部品(シュー)
42 バネ
44 摩耗量モニタリング装置
46 AEセンサ
48 推定装置
50 カップラント
52 アンプ
54 波形解析装置
56 摩耗量推定部
58 摩耗量補正部
60 摩耗量モニタリング装置(変形例)
62 警報装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14