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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062569
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】プロジェクター及び柄フィルター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240501BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240501BHJP
   F21V 13/02 20060101ALI20240501BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240501BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240501BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
F21S2/00 390
F21V13/02 200
G03B21/00 Z
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170483
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将人
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA17
2K203FA80
2K203GA36
2K203GB30
2K203GC02
2K203HA67
2K203HB25
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】低コストで製造することのできる、車両室内などで柄を投影するプロジェクター、及び、そのプロジェクターに用いられる、低コストで製造することのできる柄フィルターを提供することにある。
【解決手段】光を発する光源11と、投影用の柄を有する透明材料からなる柄プレート20と、柄プレート20の柄を拡大して投影するための投影レンズ221と、を備え、柄プレート20が柄形成面を有し、前記柄形成面が、柄プレート20の厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、プロジェクター1を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する光源と、
投影用の柄を有する透明材料からなる柄フィルターと、
前記柄フィルターの柄を拡大して投影するための投影レンズと、
を備え、
前記柄フィルターが柄形成面を有し、
前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、
プロジェクター。
【請求項2】
前記柄フィルターの前記柄形成面が、前記第1の面からなる基礎平面と、前記基礎平面に設けられた、向かい合う2つの前記第2の面を含む突起と向かい合う2つの前記第2の面を含む窪みの少なくともいずれか一方とによって構成される、
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記柄フィルターがプレート状であり、その両面に前記柄形成面を有する、
請求項1又は2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記柄フィルターが、前記柄形成面の反対側に、前記光源が発する光を集める集光レンズとして機能するレンズ部を備えた、
請求項1又は2に記載のプロジェクター。
【請求項5】
プロジェクター投影用の柄を有する、透明材料からなるプレート状の柄フィルターであって、
柄形成面を両面に有し、
前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、
柄フィルター。
【請求項6】
プロジェクター投影用の柄を有する、透明材料からなる柄フィルターであって、
柄形成面と、
前記柄形成面の反対側に設けられた、前記プロジェクターの光源が発する光を集める集光レンズとして機能するレンズ部と、
を有し、
前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、
柄フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター及び柄フィルター、特に車両室内で用いられるプロジェクター及び柄フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射された光を集光する集光レンズと、集光レンズで集光された光を部分的に通す遮光部材と、遮光部材を通過した光を投影して照射パターンを形成する投影レンズと、を備えた車両用灯具が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、照射パターンを形成するため、集光レンズで集光された光を部分的に通す照射スリットが遮光部材としてのフィルターに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-205237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具のようにフィルターに照射スリットを設けるためには、一般的に、印刷やフォトリソグラフィ等によりスリットを有する遮光層を基材の上に設けるという煩雑な工法が用いられるため、コストが掛かるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、低コストで製造することのできる、車両室内などで柄を投影するプロジェクター、及び、そのプロジェクターに用いられる、低コストで製造することのできる柄フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記のプロジェクター及び柄フィルターを提供する。
【0008】
[1]光を発する光源と、投影用の柄を有する透明材料からなる柄フィルターと、前記柄フィルターの柄を拡大して投影するための投影レンズと、を備え、前記柄フィルターが柄形成面を有し、前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、プロジェクター。
[2]前記柄フィルターの前記柄形成面が、前記第1の面からなる基礎平面と、前記基礎平面に設けられた、向かい合う2つの前記第2の面を含む突起と向かい合う2つの前記第2の面を含む窪みの少なくともいずれか一方とによって構成される、上記[1]に記載のプロジェクター。
[3]前記柄フィルターがプレート状であり、その両面に前記柄形成面を有する、上記[1]又は[2]に記載のプロジェクター。
[4]前記柄フィルターが、前記柄形成面の反対側に、前記光源が発する光を集める集光レンズとして機能するレンズ部を備えた、[1]又は[2]に記載のプロジェクター。
[5]プロジェクター投影用の柄を有する、透明材料からなるプレート状の柄フィルターであって、柄形成面を両面に有し、前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、柄フィルター。
[6]プロジェクター投影用の柄を有する、透明材料からなる柄フィルターであって、柄形成面と、前記柄形成面の反対側に設けられた、前記プロジェクターの光源が発する光を集める集光レンズとして機能するレンズ部と、を有し、前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、柄フィルター。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストで製造することのできる、車両室内などで柄を投影するプロジェクター、及び、そのプロジェクターに用いられる、低コストで製造することのできる柄フィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係るプロジェクターを異なる角度から視た斜視図である。
図2図2(a)は、本発明の実施の形態に係るプロジェクターを光取り出し側から視た側面図であり、図2(b)は、図2(a)に記載された切断線A-Aで切断されたプロジェクターの断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るプロジェクターの分解斜視図である。
図4図4(a)~(d)は、第1のレンズ部品、柄プレート、及び第2のレンズ部品を筐体の部品に組み付ける流れを示す斜視図である。
図5図5(a)は、図4(d)に示される切断線B-Bで切断された筐体の部品、第1のレンズ部品、及び第2のレンズ部品の断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る柄プレートの垂直断面図である。
図7図7は、柄プレートの光遮蔽部が、向かい合う2つの傾斜面を含む突起で構成される場合の、全反射が生じる条件を説明するための模式図である。
図8図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ角度θが90°、140°、40°である柄プレートに進入した光の光路を示す模式図である。
図9図9(a)~(e)は、それぞれ傾斜面の配置例を示す柄プレートの断面図である。
図10図10(a)~(c)は、本発明の実施の形態に係る柄プレートの変形例の垂直断面図である。
図11図11は、他の形態の柄フィルターを備えたプロジェクターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係るプロジェクター1を異なる角度から視た斜視図である。図2(a)は、プロジェクター1を光取り出し側から視た側面図であり、図2(b)は、図2(a)に記載された切断線A-Aで切断されたプロジェクター1の断面図である。図3は、プロジェクター1の分解斜視図である。
【0012】
プロジェクター1は、主に車両室内で用いられ、例えば、車両内装のサイドパネルやインストルメントパネル、ドアなどに取り付けられ、ドア、フロアマット、天井や、インストルメントパネルやドアトリムなどに含まれる加飾パネルや加飾オーナメントなどに画像を投影する。
【0013】
プロジェクター1は、光を発する光源11と、投影用の柄を有する柄プレート20と、光源11から発せられた光を集めて柄プレート20に送る集光レンズ211を含む第1のレンズ部品21と、柄プレート20の柄を拡大して投影するための投影レンズ221を含む第2のレンズ部品22とを備える。プロジェクター1において、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22は、柄プレート20を第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部に密閉するように挟み込んで固定している。
【0014】
光源11は、LEDチップなどを備えた発光素子である。光源11は、回路基板10に実装されており、回路基板10には、光源11に電力や信号を送るためのコネクター12が接続されている。
【0015】
光源11が実装された回路基板10、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20は、部品30a、30b、30cで構成される筐体30に収容される。筐体30は、投影レンズ221からの光を取り出すための開口部301と、外部機器のコネクターをコネクター12に接続するための開口部302を有する。筐体30は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂などの樹脂からなる。
【0016】
部品30aと部品30bは、部品30bの両側面に設けられた突起305を部品30aに設けられた孔304にスナップフィットさせることにより固定される。また、部品30aと部品30cは、部品30cの両側面に設けられた突起307を部品30aに設けられた孔306にスナップフィットさせることにより固定される。回路基板10は、部品30aと部品30cに挟まれて固定される。
【0017】
第1のレンズ部品21は、集光レンズ211と、1つの面が開口した箱状(例えば直方体)の形状を有する枠部212と、第1のレンズ部品21を第2のレンズ部品22及び筐体の部品30bに固定するための固定部215を有する。集光レンズ211は、枠部212の開口面に対向する面内に位置する。第1のレンズ部品21は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などの樹脂からなる。
【0018】
第2のレンズ部品22は、投影レンズ221と、1つの面が開口した箱状(例えば直方体)の形状を有する枠部222と、第2のレンズ部品22を第1のレンズ部品21及び筐体の部品30bに固定するための固定部225を有する。投影レンズ221は、枠部222の開口面に対向する面内に位置する。第2のレンズ部品22は、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの樹脂からなる。
【0019】
プロジェクター1において、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22は、枠部212の開口面と枠部222の開口面が向かい合い、枠部212の開口面の縁である端面213と枠部222の開口面の縁である端面223が全周に渡って密着した状態で固定される。これによって、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内側の柄プレート20が含まれる空間が密閉される。なお、密着性を向上させるため、端面213と端面223には磨き処理が施されていることが好ましい。
【0020】
第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22を密着させると、枠部212の内部空間の四隅から内側に張り出した部分214と枠部222の内部空間の四隅から内側に張り出した部分224とが、柄プレート20の四隅を表裏から挟み込んで固定する。
【0021】
図4(a)~(d)は、第1のレンズ部品21、柄プレート20、及び第2のレンズ部品22を筐体30の部品30bに組み付ける流れを示す斜視図である。
【0022】
まず、図4(a)、(b)に示されるように、第2のレンズ部品22を筐体30の部品30bに組み付ける。枠部222の開口面を上に向けた状態で、固定部225を筐体30の部品30bに嵌め込む。
【0023】
次に、図4(b)、(c)に示されるように、柄プレート20を第2のレンズ部品22の枠部222の開口面に嵌め込む。柄プレート20を第2のレンズ部品22の枠部222内の部分224に載せるようにして、枠部222の開口面に嵌め込む。
【0024】
次に、図4(c)、(d)に示されるように、第1のレンズ部品21を筐体の部品30bに組み付ける。枠部212の開口面を下に向けた状態で、固定部215を筐体30の部品30bに嵌め込む。このとき、第2のレンズ部品22の固定部225に設けられた突起226が、第1のレンズ部品21の固定部215に設けられた孔216に嵌め込まれる。また、固定部215が部品30bに嵌め込まれると、固定部215の両側面に設けられた突起217が部品30bに設けられた孔303にスナップフィットする。
【0025】
図5(a)は、図4(d)に示される切断線B-Bで切断された筐体30の部品30b、第1のレンズ部品21、及び第2のレンズ部品22の断面図である。
【0026】
図5(a)に示されるように、第2のレンズ部品22は、部品30bの内側の底面に設けられた突起308を上方から押し潰して弾性変形させるため、突起308から上向きの反発力を受ける。一方で、第1のレンズ部品21の突起217が孔303に引っ掛かっていることにより、第1のレンズ部品21及び第2のレンズ部品22の上方向への移動は妨げられているため、第1のレンズ部品21及び第2のレンズ部品22は部品30bに固定される。
【0027】
図5(b)は、図4(d)に示される切断線C-Cで切断された第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20の断面図である。
【0028】
図5(b)に示されるように、枠部212の開口面の縁である端面213と枠部222の開口面の縁である端面223とが密着した状態で、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22が固定され、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部の空間が密閉される。また、柄プレート20は、枠部212の内部空間の四隅から内側に張り出した部分214と枠部222の内部空間の四隅から内側に張り出した部分224に挟まれて固定される。
【0029】
プロジェクター1においては、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20が互いに密着した状態で固定されるため、第1のレンズ部品21に含まれる集光レンズ211、第2のレンズ部品22に含まれる投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置決め精度が高い。このため、集光レンズ211、投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置ずれにより投影画像が不鮮明になることを抑制できる。
【0030】
また、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部の空間が密閉されているため、柄プレート20の周囲への塵などの異物の侵入を抑えることができる。このため、投影画像への異物の映り込みを抑制できる。
【0031】
なお、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20が互いに密着した状態で固定する方法は、上述の部品30bとのスナップフィットを利用した方法に限定されず、例えば、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22とを接着剤により固定してもよい。
【0032】
図6は、柄プレート20の垂直断面図である。柄プレート20は、光源11からの光を透過する透明樹脂からなり、一方の面上に、平面205で構成される光透過部207と、平面に対して傾斜する傾斜面206で構成される光遮蔽部208を有する。
【0033】
光遮蔽部208は、傾斜面206での光の全反射を利用して、光源11からの光を遮蔽する。そのため、傾斜面206の傾斜角度は、柄プレート20に対して垂直に入射した光が全反射するような角度に設定される。このため、傾斜面206で構成される光遮蔽部208では光が透過しない。例えば、柄プレート20がポリカーボネート(屈折率1.6)からなる場合は入射角が38.7°以上であるときに全反射が生じ、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.5)からなる場合は入射角が41.8°以上であるときに全反射が生じる。
【0034】
プロジェクター1による投影画像は、光透過部207のパターンに対応するパターンを有する明度の高い領域と、光遮蔽部208のパターンに対応するパターンを有する明度の低い領域で構成される。
【0035】
柄プレート20は、板状の樹脂成形品などに微細加工を施すことに形成される。このため、金属膜の蒸着、フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成、エッチングなどの複雑な工程を要する柄プレートと比較して、柄プレート20は安価に形成することができる。
【0036】
光遮蔽部208には、傾斜面206で形成される突起が設けられている。傾斜面206で構成される突起は、例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の突起、又は3つの以上の傾斜面206によって形成される多角錐の突起である。なお、柄プレート20の成形時の転写性などにより突起の高さが制限される場合(例えば、30μm以下)は、光遮蔽部208の面積を確保するためには高さの低い複数の突起を連続して並べればよい。
【0037】
図7は、柄プレート20の光遮蔽部208が、向かい合う2つの傾斜面206を含む突起(例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の突起や、四角錐の突起)で構成される場合の、全反射が生じる条件を説明するための模式図である。ここで、柄プレート20に垂直に進入した光が最初に入射する傾斜面206(傾斜面206aとする)への入射角をθ、傾斜面206aで反射された光の次に入射する傾斜面(傾斜面206bとする)への入射角をθ、突起の頂点の断面の角度をθとする。
【0038】
柄プレート20に垂直に進入した光が傾斜面206aで全反射するためには、柄プレート20がポリカーボネートからなる場合はθが38.7°以上である必要があり、この場合、θは102.6°以下となる。また、柄プレート20がポリメチルメタクリレートからなる場合はθが41.8°以上である必要があり、この場合、θは96.4°以下となる。
【0039】
さらに、傾斜面206aで全反射した光が傾斜面206bで全反射するためには、柄プレート20がポリカーボネートからなる場合はθが38.7°以上である必要があり、この場合、θは85.8°以上となる。また、柄プレート20がポリメチルメタクリレートからなる場合はθが41.8°以上である必要があり、この場合、θは87.9°以上となる。
【0040】
したがって、柄プレート20がポリカーボネートからなる場合は、光遮蔽部208において効果的に光を遮蔽するために、突起の頂点の断面の角度θを85.8°以上、102.6°以下に設定することが好ましい。また、柄プレート20がポリメチルメタクリレートからなる場合は、光遮蔽部208において効果的に光を遮蔽するために、突起の頂点の断面の角度θを87.9°以上、96.4°以下に設定することが好ましい。
【0041】
図8(a)は、角度θが90°である柄プレート20に進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20に垂直に進入した光は、入射角45°で傾斜面206aに入射して全反射され、その後、入射角45°で傾斜面206bに入射して全反射されて、光源11側に戻る。角度θが90°である突起は、一般的な工具で形成することができるため、角度θの特に好ましい値は90°であるといえる。
【0042】
図8(b)は、角度θが140°である柄プレート20に進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20に垂直に進入した光は、入射角20°で傾斜面206aに入射して、その一部は傾斜面206aで屈折して柄プレート20を透過してしまう。
【0043】
図8(c)は、角度θが40°である柄プレート20に進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20に垂直に進入した光は、入射角70°で傾斜面206aに入射して全反射されるが、その後、入射角30°で傾斜面206bに入射して、その一部は傾斜面206bで屈折して柄プレート20を透過してしまう。
【0044】
図9(a)~(e)は、それぞれ傾斜面206の配置例を示す柄プレート20の断面図である。
【0045】
図9(a)に示される柄プレート20は、一方の面に、傾斜面206を含む突起を有する。この突起は、上述のように、向かい合う2つの傾斜面206を含む突起(例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の突起や、4つの傾斜面206によって形成される四角錐の突起)であることが好ましい。
【0046】
図9(b)に示される柄プレート20は、一方の面に、傾斜面206を含む窪みを有する。この窪みは、突起と同様に、向かい合う2つの傾斜面206を含む窪み(例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の窪みや、4つの傾斜面206によって形成される四角錐の窪み)であることが好ましい。
【0047】
図9(c)に示される柄プレート20は、一方の面に、傾斜面206を含む突起及び窪みを有する。なお、突起は窪みと比べて成形時の転写性が悪いため、先端にR(湾曲)が形成され易い。R部分では光が反射し難いため、Rの形成をなるべく抑えるためには、図9(b)に示されるように、柄プレート20が窪みのみを有することが好ましい。
【0048】
図9(a)~(c)に示される柄プレート20は、その一方の面が、平面205と傾斜面206を含む、柄を形成するための面(以下、柄形成面と呼ぶ)となっている。柄プレート20は、この柄形成面が集光レンズ211側と投影レンズ221側のどちらを向くようにプロジェクター1に取り付けられてもよい。
【0049】
図9(d)に示される柄プレート20は、両面に、傾斜面206を含む突起を有する。また、柄プレート20は、突起の代わりに、窪みを両面に有してもよい。
【0050】
図9(e)に示される柄プレート20は、両面に、突起又は窪みを有し、少なくとも一方の面では突起と窪みの両方を有する。
【0051】
図9(d)、(e)に示される柄プレート20は、その両面が柄形成面となっている。この場合、柄プレート20の平面方向の領域のうち、少なくともいずれか一方の面に傾斜面206が存在する領域が光遮蔽部208となり、いずれの面にも平面205が存在する領域が光透過部207となる。
【0052】
図9(d)、(e)に示されるように、柄プレート20の両面が柄形成面となる場合、一方の面により投影される柄と他方の面により投影される柄の結像位置が異なるため、この結像位置の違いを利用して表現の幅を広げることができる。例えば、投影面に一方の面の柄を鮮明に投影し、他方の面の柄をぼかして投影することができる。なお、柄プレート20の柄を全体的に鮮明に投影したい場合は、図9(a)~(c)に示されるように、一方の面を柄形成面とすることが好ましい。
【0053】
なお、光透過部207を構成する平面205は、より多くの光を透過させるため、光軸に対する角度は90°であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、柄プレート20に対して垂直に入射した光の反射を抑えて効率的に透過させることのできる角度に形成されればよく、例えば、光軸に対する角度が75°以上、105°以下であればよい。また、傾斜面206は、上述のように、柄プレート20に対して垂直に入射した光の透過が突起や窪みを構成する傾斜面206での全反射によって妨げられるような角度に形成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、柄プレート20に対して垂直に入射した光が突起や窪みを構成する傾斜面206で効率的に反射されて透過が効果的に抑えられる角度に形成されればよく、例えば、光軸に対する角度が30°以上、60°以下になるように形成される。また、平面205や傾斜面206の角度は一定である必要はなく、柄形成面上の場所ごとに異なっていてもよい。通常、柄プレート20は、その厚さ方向が光軸に平行になる様に設置されるため、上記の光軸に対する角度は柄プレート20の厚さ方向に対する角度と言い換えることができる。
【0054】
図10(a)~(c)は、柄プレート20の変形例の垂直断面図である。図10(a)~(c)に示されるように、柄プレート20は、平面からなる傾斜面206の代わりに、曲面からなる傾斜面を有していてもよい。
【0055】
図10(a)、(b)に示される傾斜面209aは、柄プレート20の外側に湾曲した曲面からなる傾斜面であり、傾斜面209bは、柄プレート20の内側に湾曲した曲面からなる傾斜面である。また、傾斜面を構成する曲面の形態はこれらに限定されず、例えば、図10(c)に示される傾斜面209cが有する曲面のように、断面が波形の曲面であってもよい。
【0056】
傾斜面209a、209b、209cなどの曲面からなる傾斜面においては、その曲面の光軸(柄プレート20の厚さ方向)に対する角度が75°以上、105°以下である領域を光透過部207、光軸に対する角度が30°以上、60°以下である領域を光遮蔽部208として用いることができる。また、光軸に対する角度が60°と75°の間にある領域は、プロジェクター1による投影画像において光透過部207による明度と光遮蔽部208による明度の中間の明度を表現するための領域として用いることができる。また、曲面においては光軸に対する角度が連続的に変化するため、投影画像において明るさが連続的に変化するグラデーション表現が可能である。
【0057】
また、傾斜面206と同様に、平面205の代わりに、曲面からなる面を用いてもよい。この場合も、曲面の形態は特に限定されず、その曲面の光軸(柄プレート20の厚さ方向)に対する角度が75°以上、105°以下である領域を光透過部207、光軸に対する角度が30°以上、60°以下である領域を光遮蔽部208として用いることができる。なお、当然ながら、傾斜面206に置き換えられた曲面よりも平面205に置き換えられた曲面の方が光透過部207として機能する領域の割合が大きい。
【0058】
柄プレート20は、上記の複数の形態を含むものであり、例えば、次のように定義できる。
(1)プロジェクター投影用の柄を有する、透明材料からなるプレート状の柄フィルターであって、柄形成面を少なくともいずれか一方の面に有し、前記柄形成面が、前記柄フィルターの厚さ方向に対する角度が75°以上、105°以下である光を透過させるための第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である光を遮蔽するための第2の面が、前記柄に応じて配置された面である、柄フィルター。
(2)前記柄フィルターの前記柄形成面が、前記第1の面からなる基礎平面と、前記基礎平面に設けられた、向かい合う2つの前記第2の面を含む突起と向かい合う2つの前記第2の面を含む窪みの少なくともいずれか一方とによって構成される、上記(1)に記載の柄フィルター。
例えば、図9(a)~(e)に示される柄プレート20においては、平面205と傾斜面206が、それぞれ上記(1)、(2)の第1の面と第2の面に該当する。また、図10(a)~(c)に示される傾斜面209a~209cなどの曲面からなる傾斜面は、その曲面の形状によって上記(1)、(2)の第1の面と第2の面を含み得る。
【0059】
柄プレート20は、投影用の柄を有する柄フィルターの一種であり、プレート状の柄フィルターであるが、プロジェクター1においては、柄プレート20の代わりに他の形状を有する柄フィルターを用いることもできる。
【0060】
図11は、他の形態の柄フィルターである柄フィルター50を備えたプロジェクター1の断面図である。図11の断面の位置は、図2(b)の断面の位置に対応する。
【0061】
柄フィルター50は、柄プレート20と同様に、プロジェクター投影用の柄を有する透明材料からなる柄フィルターであるが、集光レンズを備えることを特徴とする。
【0062】
柄フィルター50は、図9(a)~(c)に示される柄プレート20のような、一方の面に柄形成面を有する柄プレートと、集光レンズが一体化したような構造を有しており、柄形成面500と、柄形成面500の反対側に設けられた、光源11が発する光を集める集光レンズとして機能する集光レンズ部501とを備える。
【0063】
柄形成面500は、柄プレート20の柄形成面と同様であり、例えば、柄フィルター50の厚さ方向(柄形成面500の表面に垂直な方向)に対する角度が75°以上、105°以下である、光を透過させるための平面205などの第1の面と、前記厚さ方向に対する角度が30°以上、60°以下である、光を遮蔽するための傾斜面206などの第2の面が、柄に応じて配置された面である。
【0064】
柄フィルター50においては、柄形成面500と集光レンズ部501が一部品に含まれるため、柄形成面500と集光レンズ部501の相対的な位置ずれにより投影画像が不鮮明になることがない。
【0065】
柄フィルター50は、柄形成面500が投影レンズ221側を向き、集光レンズ部501が光源11側を向くように、プロジェクター1に取り付けられる。集光レンズ部501は、光源11に向かって突出するように湾曲している。
【0066】
柄フィルター50は、図1(b)などに示される柄プレート20を含む構成の、柄プレート20と第1のレンズ部品21の代わりに用いられる。柄フィルター50は、図11に示されるように、第1のレンズ部品21の枠部212、固定部215、孔216とそれぞれ同様の機能を有する枠部502、固定部505、孔506を有する。
【0067】
また、柄フィルター50の柄形成面500の周りの縁である端面と枠部222の開口面の縁である端面223とが密着した状態で、柄フィルター50と第2のレンズ部品22が固定され、柄フィルター50と第2のレンズ部品22の内部の柄形成面500を含む空間が密閉される。このため、柄形成面500の周囲への塵などの異物の侵入を抑えることができる。このため、投影画像への異物の映り込みを抑制できる。
【0068】
柄フィルター50も、柄プレート20と同様に、樹脂成形品などの透明材料に微細加工を施すことに形成される。このため、金属膜の蒸着、フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成、エッチングなどの複雑な工程を要する柄プレートと比較して、安価に形成することができる。
【0069】
柄プレート20や柄フィルター50などの本発明の実施の形態に係る柄フィルターの材料は、光源11が発する光を透過する性質を有する材料であればよいが、特に、ポリカーボネート、アクリルなどの射出成形可能な透明樹脂であることが好ましい。射出成形により成形することができれば、柄フィルターの製造コストをより低く抑えることができる。
【0070】
なお、図2(b)などに示される例においては、プロジェクター1において光源11が発する光の利用効率を上げるために集光レンズ211が用いられているが、集光レンズ211を用いずに光源11が発する光を直接柄プレート20や柄フィルター50などに入射させてもよい。また、光源11が発する光をミラーで反射させた後、柄プレート20や柄フィルター50などに入射させてもよい。
【0071】
(実施の形態の効果)
上記の本発明の実施の形態によれば、従来の物よりも低コストで製造することができる柄プレート20や柄フィルター50などの柄フィルターを用いることにより、車両室内などで柄を投影するプロジェクターを低コストで提供することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0073】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0074】
1 プロジェクター
11 光源
20 柄プレート
21 第1のレンズ部品
211 集光レンズ
212 枠部
22 第2のレンズ部品
221 投影レンズ
222 枠部
30 筐体
50 柄フィルター
500 柄形成面
501 集光レンズ部
図1
図2
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図5
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図11