(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062575
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電力量計の開閉器の制御方法および電力量計
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20240501BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01H9/54 A
H02H3/08 D
H01H9/54 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170494
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田川 澄人
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰亨
【テーマコード(参考)】
5G004
5G034
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004AB01
5G004BA04
5G004DC14
5G034AA14
5G034AC07
5G034AD01
(57)【要約】
【課題】接点をリフレッシュさせることができるとともに、接点が発熱したりするのを抑制できるようにする。
【解決手段】電力系統1S,2Sと負荷1L,2Lとの間に固定接点7aと可動接点7bとが設けられ、励磁コイル5により可動接点7bの固定接点7aに対する開動作と閉動作とを制御することによって、電力系統1S,2Sから負荷1L,2Lへの電力の供給と遮断とを行う電力量計1の開閉器4の制御方法であって、開閉器4の使用が所定の使用期間を経過している場合に、電力系統1S,2Sの電源電圧を電圧信号変換回路3により検出し、その検出された電源電圧の大きさに基づいて、可動接点7bが閉状態となる際の電源電圧の電圧位相を決定し、可動接点7bを閉動作させるために励磁コイル5に提供される駆動信号の出力タイミングを、決定された電源電圧の電圧位相に応じて変化させるようになっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点とが設けられ、励磁コイルにより前記可動接点の前記固定接点に対する開動作と閉動作とを制御することによって、前記電力系統から前記負荷への電力の供給と遮断とを行う電力量計の開閉器の制御方法であって、
前記開閉器の使用が、所定の使用期間を経過している場合に、前記電力系統の電源電圧を検出し、
検出された前記電源電圧の大きさに基づいて、前記可動接点が閉状態となる際の前記電源電圧の電圧位相を決定し、
前記可動接点を閉動作させるために前記励磁コイルに提供される駆動信号の出力タイミングを、決定された前記電源電圧の前記電圧位相に応じて変化させることを特徴とする電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項2】
前記可動接点は、前記励磁コイルに出力される前記駆動信号の提供時刻から所定時間が経過した接点閉時刻に応じて閉動作するものであって、
前記所定時間は、前記開閉器ごとに固有の一定値であることを特徴とする請求項1に記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項3】
前記電源電圧が第1閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値の近傍となるように制御することを特徴とする請求項2に記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項4】
前記電源電圧が第1閾値以上で、かつ、前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値とゼロクロスとの間となるように制御することを特徴とする請求項2に記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項5】
前記電源電圧が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧のゼロクロスの近傍となるように制御することを特徴とする請求項2に記載の電力量計の開閉器の制御方法。
【請求項6】
電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点とが設けられ、励磁コイルにより前記可動接点の前記固定接点に対する開動作と閉動作とを制御することによって、前記電力系統から前記負荷への電力の供給と遮断とを行う開閉器を備えた電力量計であって、
前記開閉器の使用が、所定の使用期間を経過している場合に、前記電力系統の電源電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部によって検出された前記電源電圧の大きさに基づいて、前記可動接点が閉状態となる際の前記電源電圧の電圧位相を決定する決定部と、
前記可動接点を閉動作させるために前記励磁コイルに提供される駆動信号の出力タイミングを、前記決定部によって決定された前記電源電圧の前記電圧位相に応じて変化させる制御部と、
を備えることを特徴とする電力量計。
【請求項7】
前記可動接点は、前記励磁コイルに出力される前記駆動信号の提供時刻から所定時間が経過した接点閉時刻に応じて閉動作するものであって、
前記所定時間は、前記開閉器ごとに固有の一定値であることを特徴とする請求項6に記載の電力量計。
【請求項8】
前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値の近傍となるように制御することを特徴とする請求項7に記載の電力量計。
【請求項9】
前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値以上で、かつ、前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値とゼロクロスとの間となるように制御することを特徴とする請求項7に記載の電力量計。
【請求項10】
前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧のゼロクロスの近傍となるように制御することを特徴とする請求項7に記載の電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計の開閉器の制御方法および電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
電力量計の電力系統(Source)と負荷(Load)との間に設けられる開閉器において、該開閉器に設けられた可動接点を固定接点に対して閉動作させると、可動接点と固定接点との間に電流が流れる。
【0003】
逆に、開閉器の可動接点を固定接点に対して開動作させると、可動接点と固定接点との間に流れていた電流が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2892717号公報
【特許文献2】特許第3716691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電力量計に内蔵されている開閉器は長時間の使用において、接点の表面が酸化したり、使用環境によっては硫化したりする。接点の表面の酸化や硫化は、接点の抵抗値を上昇させる傾向にあり、好ましいことではない。
【0006】
即ち、接点の抵抗値が上昇すると、電流が流れるのに伴って発熱するリスクが高くなるなど、電力量計の安全な使用を損ねる結果となる。
【0007】
本発明の課題は、接点をリフレッシュさせることができ、接点が発熱するのを抑制できる電力量計の開閉器の制御方法および電力量計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電力量計の開閉器の制御方法は、電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点とが設けられ、励磁コイルにより前記可動接点の前記固定接点に対する開動作と閉動作とを制御することによって、前記電力系統から前記負荷への電力の供給と遮断とを行う電力量計の開閉器の制御方法であって、前記開閉器の使用が、所定の使用期間を経過している場合に、前記電力系統の電源電圧を検出し、検出された前記電源電圧の大きさに基づいて、前記可動接点が閉状態となる際の前記電源電圧の電圧位相を決定し、前記可動接点を閉動作させるために前記励磁コイルに提供される駆動信号の出力タイミングを、決定された前記電源電圧の前記電圧位相に応じて変化させることを特徴とする電力量計の開閉器の制御方法。
【0009】
本発明の請求項2に係る電力量計の開閉器の制御方法は、前記可動接点は、前記励磁コイルに出力される前記駆動信号の提供時刻から所定時間が経過した接点閉時刻に応じて閉動作するものであって、前記所定時間は、前記開閉器ごとに固有の一定値であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る電力量計の開閉器の制御方法は、前記電源電圧が第1閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値の近傍となるように制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る電力量計の開閉器の制御方法は、前記電源電圧が第1閾値以上で、かつ、前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値とゼロクロスとの間となるように制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る電力量計の開閉器の制御方法は、前記電源電圧が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧のゼロクロスの近傍となるように制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6に係る電力量計は、電力系統と負荷との間に固定接点と可動接点とが設けられ、励磁コイルにより前記可動接点の前記固定接点に対する開動作と閉動作とを制御することによって、前記電力系統から前記負荷への電力の供給と遮断とを行う開閉器を備えた電力量計であって、前記開閉器の使用が、所定の使用期間を経過している場合に、前記電力系統の電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部によって検出された前記電源電圧の大きさに基づいて、前記可動接点が閉状態となる際の前記電源電圧の電圧位相を決定する決定部と、前記可動接点を閉動作させるために前記励磁コイルに提供される駆動信号の出力タイミングを、前記決定部によって決定された前記電源電圧の前記電圧位相に応じて変化させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項7に係る電力量計は、前記可動接点は、前記励磁コイルに出力される前記駆動信号の提供時刻から所定時間が経過した接点閉時刻に応じて閉動作するものであって、前記所定時間は、前記開閉器ごとに固有の一定値であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項8に係る電力量計は、前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値の近傍となるように制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項9に係る電力量計は、前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値以上で、かつ、前記第1閾値よりも大きい第2閾値未満の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧の前記ピーク値とゼロクロスとの間となるように制御することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項10に係る電力量計は、前記制御部は、前記電源電圧が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合、前記電源電圧のピーク値を検出したピーク時刻から前記駆動信号が出力されるまでの前記提供時刻を、前記接点閉時刻が前記電源電圧のゼロクロスの近傍となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1,6によれば、前記開閉器の使用が、所定の使用期間を経過している場合に、可動接点を閉動作させるために励磁コイルに提供される駆動信号の出力タイミングを、電力系統の電源電圧の大きさに基づいて決定される、可動接点が閉状態となる際の電源電圧の電圧位相に応じて変化させることができる。これにより、可動接点が閉状態となるタイミングにおいて、可動接点と固定接点との間に意図的に電源電圧の電圧位相に応じた突入電流を発生させることが可能となる。したがって、開閉器の長時間の使用などによって接点の表面に付着した酸化膜などの汚れを効率よく除去することが可能となり、開閉器の接点を容易にリフレッシュさせることができる。
【0019】
請求項2,7によれば、可動接点は、励磁コイルに出力される駆動信号の提供時刻から所定時間を経過した接点閉時刻に閉状態となるので、駆動信号の提供時刻を制御することで、可動接点が閉状態となる接点閉時刻を電源電圧の電圧位相に応じて変化させることが容易に可能となる。
【0020】
請求項3,8によれば、電源電圧が第1閾値未満の場合には、接点閉時刻が、可動接点が閉状態となる際の接点電流のピーク値の近傍となるように制御することで、開閉器の接点を効果的にリフレッシュさせることができる。
【0021】
請求項4,9によれば、電源電圧が第1閾値以上で、かつ、第1閾値よりも大きい第2閾値未満の場合には、接点閉時刻が、可動接点が閉状態となる際の電源電圧のピーク値とゼロクロスとの間となるように制御することで、開閉器の接点を効果的にリフレッシュさせることができる。
【0022】
請求項5,10によれば、電源電圧が第1閾値よりも大きい第2閾値以上の場合には、接点閉時刻が、可動接点が閉状態となる際の電源電圧のゼロクロスの近傍となるように制御することで、接点への突入電流によるダメージを抑制させることが可能となり、接点の信頼性の向上および長寿命化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力量計の構成例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電力量計における開閉器の開状態時の接点状態と電源電圧と負荷(接点)電流とを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る電力量計における開閉器の閉動作時の接点状態と電源電圧と突入電流が大きい場合の負荷電流とを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る電力量計における開閉器の閉動作時の電源電圧と突入電流がない(小さい)場合の負荷電流とを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電力量計の開閉器の接点を閉動作させる際の制御例を説明するために示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る電力量計において、接点のリフレッシュ動作として、開閉器の可動接点を閉動作させる際(電源電圧<第1閾値)の、電源電圧と駆動信号と負荷電流とを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る電力量計において、接点のリフレッシュ動作として、開閉器の可動接点を閉動作させる際(第1閾値≦電源電圧<第2閾値)の、電源電圧と駆動信号と負荷電流とを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電力量計の開閉器の可動接点を閉動作させる際(第2閾値≦電源電圧時)の、電源電圧と駆動信号と負荷電流とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る電力量計の開閉器の制御方法および電力量計について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
一実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の構成例を示すものである。電力量計1としては、例えば、定格電圧が100(105±6)Vまたは200(210±10)V、もしくは、それら以外の定格電圧で、結線方法が単相2線式、単相3線式、三相3線式、または、それ以外の結線方法に対応したスマートメーターであっても良い。
【0026】
電力量計1は、電力系統(Source側)1S,2Sの系統電圧と接点電流(負荷電流)とを検出し、検出された電圧と電流とに基づいて電力量を演算する。電力系統1S,2Sは、商用周波数(50Hzまたは60Hz)の交流電圧および交流電流を、負荷(Load側)1L,2Lに供給する。
【0027】
電力量計1は、例えば
図1に示すように、CPU(中央処理装置)2、電圧信号変換回路(電圧検出部)3、開閉器4、開閉器制御回路(制御部)6、電流センサ8、電流信号変換回路10、および、電源回路11を備えている。
【0028】
電圧信号変換回路3は、電力系統1S,2Sのアナログ信号の系統電圧をデジタルの電圧信号である電源電圧に変換する。
【0029】
CPU2は、演算部21、制御部(決定部)22、メモリ23、および、図示省略の通信部などを備える。演算部21は、電圧信号変換回路3からの電圧信号と電流センサ8から電流信号変換回路10を介して入力される電流信号とに基づいて、電力量を演算する。
【0030】
メモリ23は、後述する開閉器4の前回の開時刻TM0や経過基準時間(所定の使用期間)CTM、電源電圧の大きさを判別するための閾値(第1,第2閾値)、および、開閉器4ごとに固有の一定値とされる所定時間Δt2などを記憶する。
【0031】
ここで、前回の開時刻TM0とは、例えば接点7を最後に開動作させた際の時刻であり、経過基準時間CTMとは、後述する接点7のリフレッシュ動作を行うか否かの必要性を判断するための閾値であり、所定時間Δt2とは、開閉器4の接点7を開閉動作させるための励磁コイル5に与えられる駆動信号の、励磁コイル5に対する提供時刻から実際に接点7が閉状態になる接点閉時刻までのタイムラグである。
【0032】
制御部22は、例えば、外部より通信部を介して開閉器4の閉命令を受信した際に、メモリ23から前回の開時刻TM0を読み出し、その前回の開時刻TM0と今回の閉命令の受信時刻TM1とから、経過時間TM(=TM1-TM0)を算出する。そして、算出した経過時間TMをメモリ23内の経過基準時間CTMと比較して、電力量計1に内蔵されている開閉器4は、長時間の使用(所定の使用期間の経過)や使用環境または電源電圧により、接点7の表面の汚れ(例えば、酸化膜や硫化膜などの付着)が激しく、その汚れを除去するための、接点7のリフレッシュ動作が必要か否かを判断する。
【0033】
また、接点7のリフレッシュ動作が必要と判断した場合に、制御部22は、電圧信号変換回路3から入力される電源電圧の大きさに基づいて、接点7のリフレッシュ動作を行うための電源電圧の電圧位相を決定する。そして、決定した電源電圧の電圧位相に応じたタイミングで開閉器4の可動接点7bを閉状態にするための駆動信号の出力を要求する制御信号を、開閉器制御回路6に出力する。
【0034】
なお、メモリ23に記憶された経過基準時間CTMなどは、例えば、電力量計1の使用状況や使用環境または接点7の大きさや材質などに応じて、ユーザにより自由に設定・登録することが可能である。
【0035】
電流センサ8は、電力系統1Sと負荷1Lとの間の電線9に設けられ、可動接点7bが固定接点7aに対して閉状態とされている場合に、電力系統1Sから負荷1Lに流れる電流信号を検出する。電流センサ8としては、磁気センサや変流器(CT)、シャント抵抗などがある。
【0036】
電流信号変換回路10は、電流センサ8で検出されたアナログの電流信号をデジタルの負荷信号に変換し、CPU2に出力する。
【0037】
電源回路11は、CPU2と開閉器制御回路6とに電源を供給する。
【0038】
開閉器制御回路6は、CPU2からの制御信号に基づいて、開閉器4内の励磁コイル5を駆動するための駆動信号を出力する。開閉器制御回路6は、駆動信号の出力により励磁コイル5を駆動させ、可動接点7bが該駆動信号の提供時刻から開閉器4ごとに固有の一定値とされる所定時間Δt2を経過した後の接点閉時刻に閉動作するように制御する。
【0039】
開閉器4は、ラッチングリレーからなり、励磁コイル5と、接点7としての電力系統1Sと負荷1Lとの間に設けられた固定接点7aおよび可動接点7bと、を有し、励磁コイル5によって可動接点7bの固定接点7aに対する開または閉動作を制御することにより、電力系統1Sからの電力の負荷1Lへの供給と遮断とを行う。
【0040】
即ち、励磁コイル5に励磁電流を一方向に流すと電磁力が発生し、その電磁力により可動接点7bが固定接点7aに対して閉動作する。一方、励磁コイル5に励磁電流を一方向とは逆方向に流すと、可動接点7bが固定接点7aに対して開動作する。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の、開閉器4の開状態時の接点状態(同図(a)参照)と電源電圧波形(同図(b)参照)と負荷電流波形(同図(c)参照)とを例示するものである。
【0042】
図2(a)に示すように、接点7において、可動接点7bが固定接点7aに対して開状態とされている際は、負荷1L,2L側で電力を消費していない状態である。
【0043】
即ち、電源電圧は、
図2(b)に示すように、商用周波数の交流電圧であり、例えば、負荷1L,2L側の負荷を電球(ランプ)とすると、
図2(c)に示すように、ランプ側には負荷電流は流れない。つまり、ランプは消灯状態のままである。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の、開閉器4の閉動作時の接点状態(同図(a)参照)と電源電圧波形(同図(b)参照)と負荷電流波形(同図(c)参照)とを例示するものである。
【0045】
図3(a)に示すように、接点7において、可動接点7bが固定接点7aに対して閉状態とされると、
図3(c)に示すように、瞬時に、負荷1L,2L側のランプに負荷電流が流れる。これにより、ランプは点灯状態となる。
【0046】
この場合、
図3(b)に示すように、電源電圧がピーク値またはその近傍であるとき(例えば、時刻t10)に、可動接点7bが閉動作すると、
図3(c)に示すように、負荷1L,2Lに流れる負荷電流が大きな突入電流となる。大きな突入電流は、その後、振動しながら徐々に減衰していき(過度電流領域)、いずれかのときに安定する(負荷電流領域)。
【0047】
図4は、開閉器4において、電源電圧波形(同図(a)参照)と突入電流がない(もしくは、小さい)場合の負荷電流波形(同図(b)参照)とを例示するものである。
【0048】
即ち、
図4は、電源電圧がゼロ(電圧ゼロクロス)の時刻t11に、接点7の可動接点7bが閉動作した場合の例である。
図4の場合の方が、
図3の場合よりも突入電流が小さいので、負荷電流が安定するまでの時間も短い。
【0049】
ここで、閉動作時の突入電流は、接点7を変形させるなど、接点7にダメージを与える可能性がある。つまり、突入電流によって、接点7は、可動接点7bの閉動作のたびにダメージが蓄積され、いずれ故障に至る。
【0050】
特に、
図3(c)に示したような大きな突入電流の場合には、発生する熱量も大きいため、場合によっては、可動接点7bの1回の閉動作で接点7が溶着し、動作不能(故障)となってしまうこともある。
【0051】
また、負荷1L,2L側にも同じ電流が流れているので、大きな突入電流は、ランプにとっても良いことではなく、ランプを劣化させたりする。
【0052】
その一方で、このような突入電流によれば、例えば、固定接点7aや可動接点7bの表面に付着した酸化膜や硫化膜などの汚れを除去すること(以下、接点7のリフレッシュ動作)が可能である。このリフレッシュ動作の場合においては、突入電流が大きい方がリフレッシュ動作の効果は大きく、小さい方がリフレッシュ動作の効果は小さくなる。
【0053】
上述したように、接点7における閉動作時の突入電流は、電源電圧がゼロクロスとなるタイミング(例えば、
図4の時刻t11)において、可動接点7bを固定接点7aに対して閉動作させた場合が最も小さく、逆に、電源電圧が電圧ピークとなるタイミング(例えば、
図3の時刻t10)において、可動接点7bを固定接点7aに対して閉動作させた場合が最も大きくなる。
【0054】
しかしながら、電圧位相がピーク値のときの突入電流が最も大きく、発生する熱により接点7の表面をリフレッシュさせる効果も大きいが、接点7を変形させたり、劣化させたりすることにも繋がりやすい。
【0055】
これに対して、電圧位相がゼロの近傍のときの突入電流は小さく、発生する熱による接点7の変形や劣化は生じ難いものの、接点7の表面をリフレッシュさせる効果も小さいため、経年的な汚れにより導通不良を起こすことが懸念される。
【0056】
そこで、本実施形態においては、接点7の前回の開動作からの経過時間(または、電力量計1の使用期間)や電源電圧の大きさなどに応じて、接点閉時刻後に可動接点7bが閉状態になる際の電圧位相を制御する。即ち、電圧位相のどのタイミングで可動接点7bを閉動作させるかを、例えば、電源電圧の大きさや経過時間に応じてコントロールすることにより、接点7に負荷がかかりすぎないようにして突入電流によるダメージを最小限に抑えつつ、接点7の効果的なリフレッシュ動作を可能とする。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態に係る電力量計1において、開閉器4の接点7のリフレッシュ動作を行う際のCPU2での処理の流れについて示すものである。
【0058】
図5に示すように、まずは、CPU2のメモリ23内に、開閉器4の前回の開時刻TM0が予め記憶されている状況において(ステップSt1)、制御部22が、外部より開閉器4の閉命令を受信したとする(ステップSt2)。
【0059】
すると、制御部22において、メモリ23から読み出された前回の開時刻TM0と今回の閉命令の受信時刻TM1とから、経過時間TMの算出が行われる(ステップSt3)。
【0060】
そして、その算出した経過時間TMが、メモリ23内の経過基準時間(例えば、1か月)CTMを超えているか否かの判断(TM>CTM)が行われる(ステップSt4)。こうして、電力量計1の前回の開時刻TM0からの経過時間TMにより、開閉器4の接点7のリフレッシュ動作の必要性の有無が確認される。
【0061】
経過時間TMが経過基準時間CTMを超えている場合(ステップSt4のYES)、つまり長時間の使用などにより接点7のリフレッシュ動作を行う必要があることが確認されると、続いて、電圧信号変換回路3の出力に基づいて、電源電圧の大きさが求められる(ステップSt5,St7)。
【0062】
検出した電源電圧の大きさが第1閾値(例えば、100V)未満の場合(ステップSt5,St7が共にNO)には、制御部22によって、
図6(a),(b),(c)に示すように、電源電圧の電圧ピークの近傍(ピーク時刻t1付近)で可動接点7bが閉状態となるように、次回に開閉器制御回路6から開閉器4の励磁コイル5に出力される駆動信号の、電源電圧の電圧ピークのピーク時刻t0から提供時刻までの時間(出力タイミングΔt1)が、接点閉時刻が電源電圧の電圧ピークの近傍となるように制御される(ステップSt8)。
【0063】
ここで、
図6は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の、開閉器4の可動接点7bを閉動作させる際の、電源電圧波形(同図(a)参照)と駆動信号波形(同図(b)参照)と負荷電流波形(同図(c)参照)とを例示するものである。ここでは、接点7のリフレッシュ動作として、電源電圧が第1閾値未満の場合を例に示している。
【0064】
図6(a)に示すように、電源電圧が第1閾値未満の場合(電源電圧<100V)、電源電圧の電圧ピークの近傍(時刻t1付近)で可動接点7bが閉状態となるように、開閉器制御回路6からの駆動信号の、電源電圧の電圧ピーク(ピーク時刻t0)から提供時刻までの時間(出力タイミングΔt1)が、接点閉時刻が電源電圧の電圧ピークの近傍となるように変化される。
【0065】
この場合、可動接点7bの閉動作の際に、
図6(c)に示すように、大きな突入電流を発生させることが可能となる。つまり、電源電圧が100V未満の場合には、電圧ピークとなるピーク時刻t1に可動接点7bを閉動作させることにより、接点7において、大きな突入電流を発生させる。このように、電源電圧が小さい場合であっても、大きな突入電流を発生させることが可能となり、接点7での表面の酸化膜や硫化膜などの汚れを効果的に除去できる。
【0066】
即ち、開閉器4の接点7のリフレシッシュ動作を行う際に、電源電圧が小さい場合には、可動接点7bが閉動作する際の突入電流が大きくなるように制御することで、接点7をリフレッシュさせるための動作としては十分な効果が得られる。
【0067】
なお、出力タイミングΔt1とは、電源電圧の電圧ピークの近傍で可動接点7bが閉状態となるように、駆動信号の提供時刻からの接点閉時刻を調整するための、駆動信号の遅延時間であり、駆動信号における接点閉時刻とは、励磁コイル5に出力された駆動信号の、提供時刻から所定時間Δt2後の、可動接点7bが実際に閉動作する時間である。
【0068】
一方、
図5において、検出した電源電圧の大きさが第1閾値以上で、かつ、第1閾値よりも大きな第2閾値(例えば、200V)未満の場合(ステップSt5がNOで、ステップSt7がYES)には、制御部22によって、
図7(a),(b),(c)に示すように、電源電圧の電圧ピークと電圧ゼロクロスとの間(時刻t1+α付近)で可動接点7bが閉状態となるように、次回の開閉器制御回路6から開閉器4の励磁コイル5に出力される駆動信号の、電源電圧の電圧ピークのピーク時刻t0から提供時刻までの時間(出力タイミングΔt1)が、接点閉時刻が電源電圧の電圧ピークと電圧ゼロクロスとの間となるように制御される(ステップSt9)。
【0069】
ここで、
図7は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の、開閉器4の可動接点7bを閉動作させる際の、電源電圧波形(同図(a)参照)と駆動信号波形(同図(b)参照)と負荷電流波形(同図(c)参照)とを例示するものである。ここでは、接点7のリフレッシュ動作として、電源電圧が第1閾値以上で、かつ、第2閾値未満の場合を例に示している。
【0070】
図7(a)に示すように、電源電圧が第1閾値以上で、かつ、それよりも大きい第2閾値未満の場合(100V≦電源電圧<200v)、例えば電源電圧に応じて、電源電圧の電圧ピークと電圧ゼロクロスとの間(時刻t1+α付近)で可動接点7bが閉状態となるように、開閉器制御回路6からの駆動信号の、電源電圧の電圧ピーク(ピーク時刻t0)から提供時刻までの時間(出力タイミングΔt1)が、接点閉時刻が電源電圧の電圧ピーク値と電圧ゼロクロスとの間となるように変化される。
【0071】
この場合、可動接点7bの閉動作の際に、
図7(a)に示すように、電源電圧に応じた突入電流を発生させることが可能となる。つまり、電源電圧が100V以上で、かつ、200V未満の場合には、電源電圧が電圧ピークから電圧ゼロクロスとなるまでの時刻t1+αに可動接点7bを閉動作させることにより、接点7において、電源電圧に応じた大きさの突入電流を発生させる。このように、電源電圧に応じた突入電流を発生させることにより、接点7のダメージを抑えつつ、接点7での表面の汚れを効果的に除去できる。
【0072】
即ち、開閉器4の接点7のリフレシッシュ動作を行う際に、電源電圧に応じた大きさの突入電流を発生させるようにすることで、接点7に過大な負荷をかけることなく、接点7をリフレッシュさせるための動作としては十分な効果が得られる。
【0073】
これに対し、
図5において、検出した電源電圧の大きさが第2閾値以上の場合(ステップSt5のYES)には、制御部22によって、例えば
図8(a),(b),(c)に示すように、結果として接点7のリフレッシュ動作を行うことなしに、可動接点7bが電圧ゼロクロスの近傍で閉動作するように制御される(ステップSt6)。
【0074】
同様に、上記ステップSt4での処理において、経過時間TMが経過基準時間CTMを超えておらず、現時点ではリフレッシュ動作を行う必要がないことが確認された場合(NO)にも、上記ステップSt6での処理として、接点7のリフレッシュ動作を行うことなしに、可動接点7bが電圧ゼロクロスの近傍で閉動作するように制御される。
【0075】
ここで、
図8は、本発明の一実施形態に係る電力量計1の、開閉器4の可動接点7bを閉動作させる際の、電源電圧波形(同図(a)参照)と駆動信号波形(同図(b)参照)と負荷電流波形(同図(c)参照)とを例示するものである。ここでは、接点7のリフレッシュ動作として、電源電圧が第2閾値以上の場合(ステップSt5のYES)を例に示している。
【0076】
図8(a)に示すように、電源電圧が第2閾値以上の場合(電源電圧≧200V)、例えば、電源電圧の電圧ゼロクロスの近傍(時刻t2付近)で可動接点7bが閉状態となるように、開閉器制御回路6からの駆動信号の、電源電圧の電圧ピーク(ピーク時刻t0)から提供時刻までの時間(出力タイミングΔt1)が、接点閉時刻が電源電圧の電圧ゼロクロスの近傍となるように変化される。
【0077】
この場合、可動接点7bの閉動作の際に、
図8(a)に示すように、負荷電流に現れる突入電流を小さくする(もしくは、突入電流をなくす)ことが可能となる。つまり、電源電圧が200V以上の場合には、電圧ゼロクロスとなる時刻t2に可動接点7bを閉動作させることにより、接点7において、小さな突入電流が発生されるようにする。このように、電源電圧が大きい場合には、発生する突入電流が小さくなるように制御することによって、接点7のリフレッシュ動作はしないものの、接点7が変形するなどの突入電流による接点7のダメージを軽減できる。
【0078】
このように、開閉器4の接点7を閉動作させる際に、電源電圧が小さい場合には、大きい突入電流を利用して接点7のリフレッシュ動作を行うようにするとともに、電源電圧が大きい場合には、小さい突入電流を利用して接点7のリフレッシュ動作を行うようにしたり、場合(電源電圧)によっては、接点7のリフレッシュ動作を行わないようにすることで、閉動作時の接点7への突入電流によるダメージを抑制しつつ、適度に接点7をリフレッシュ動作させることが可能となる。
【0079】
上記したように、本実施形態に係る電力量計1は、制御部22において、開閉器4の使用が所定の使用期間を経過している場合に、電源電圧の大きさを検出し、その検出した電源電圧の大きさに応じて電源電圧の電圧位相を決定するとともに、この決定された電圧位相にしたがって、可動接点7bを閉動作させるために励磁コイル5に提供される駆動信号の出力タイミングΔt1を制御する。
【0080】
即ち、使用期間や電源電圧の大きさに応じて、可動接点7bを閉動作させるために励磁コイル5に提供される駆動信号を、電圧位相のどのタイミングで出力させるかを制御する。これにより、可動接点7bを閉動作させる際に発生する突入電流を利用しての、接点7のリフレッシュ動作が可能となる。したがって、電源電圧の大きさに応じて、接点7に対するリフレッシュ動作をより効果的に実施でき、汚れにより接点7が発熱するのを抑制することが可能となるなど、電力量計1の安全性を容易に確保できるようになる。
【0081】
特に、電源電圧が第2閾値以上の場合には、あえて接点7のリフレッシュ動作を行わないように制御することにより、突入電流による接点7へのダメージを抑制することが可能である。つまり、接点7のリフレッシュ動作を行わない場合には、閉動作時の突入電流の発生を防いで、接点7が変形したりするのを抑制するなど、接点7の信頼性の向上や長寿命化を図ることも可能である。
【0082】
なお、開閉器4の前回の開動作からの経過時間によらず、例えば、電力量計1の設置からの使用期間に応じて、接点7のリフレッシュ動作を行うか否かを決定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0083】
1 電力量計
2 CPU
3 電圧信号変換回路
4 開閉器
5 励磁コイル
6 開閉器制御回路
7 接点
7a 固定接点
7b 可動接点
8 電流センサ
9 電線
10 電流信号変換回路
11 電源回路
21 演算部
22 制御部
23 メモリ