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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062586
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】位置決め固定装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B23Q3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170523
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 卓也
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016AA03
(57)【要約】
【課題】小型化された位置決め固定装置を提供する。
【解決手段】位置決め固定装置は、第1の機構に固定された第1の部材と、第2の機構に固定された第2の部材とを備える。第1の部材は、第2の機構側へ向かって小径となる第1テーパ面を有するテーパ凸部を含む。第2の部材は、第1テーパ面と係合可能な第2テーパ面を有する環状部を含む。第1の方向に沿って第1の機構と第2の機構とを互いに近づけて第1基準面と第2基準面とを当接させるとき、テーパ凸部の内径側への弾性変形を介して第1テーパ面と第2テーパ面とを互いに密着させることにより第1の方向に直交する平面方向における第1の機構および第2の機構の相対的な位置決めが行われる。第1の部材の基準部は、第1の方向に直交する方向に沿って、テーパ凸部よりも外径側に突出する。テーパ凸部の周方向において、テーパ凸部を少なくとも部分的に分断するスリット部が形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機構と第2の機構との相対的な位置決めを行うとともに、前記第1の機構と前記第2の機構とを互いに固定することが可能な位置決め固定装置であって、
前記第1の機構に固定された第1の部材と、
前記第2の機構に固定された第2の部材とを備え、
前記第1の機構は、第1基準面と、前記第1基準面上に開口するように設けられた第1嵌合穴とを含み、
前記第2の機構は、第1の方向に沿って前記第1基準面と対向する第2基準面と、前記第2基準面上に開口するように設けられた第2嵌合穴とを含み、
前記第1の部材は、前記第1嵌合穴に圧入される筒状部と、前記第1基準面から前記第1の方向に沿って前記第2の機構側へ突出し、前記第2の機構側へ向かって小径となる第1テーパ面を有するテーパ凸部と、前記第1基準面に当接する基準部とを含み、前記筒状部、前記テーパ凸部、および前記基準部は一体形成され、
前記第2の部材は前記第2嵌合穴に圧入され、かつ、前記第2の部材は、前記第1テーパ面と係合可能な第2テーパ面を有する環状部を含み、
前記第1の部材の前記基準部は、前記第1の方向に直交する方向に沿って、前記テーパ凸部よりも外径側に突出し、
前記第1の方向に沿って前記第1の機構と前記第2の機構とを互いに近づけて前記第1基準面と前記第2基準面とを当接させるとき、前記テーパ凸部の内径側への弾性変形を介して前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とを互いに密着させることにより前記第1の方向に直交する平面方向における前記第1の機構および前記第2の機構の相対的な位置決めが行われる、位置決め固定装置。
【請求項2】
第1の機構と第2の機構との相対的な位置決めを行うとともに、前記第1の機構と前記第2の機構とを互いに固定することが可能な位置決め固定装置であって、
前記第1の機構に固定された第1の部材と、
前記第2の機構に固定された第2の部材とを備え、
前記第1の機構は、第1基準面と、前記第1基準面上に開口するように設けられた第1嵌合穴とを含み、
前記第2の機構は、第1の方向に沿って前記第1基準面と対向する第2基準面と、前記第2基準面上に開口するように設けられた第2嵌合穴とを含み、
前記第1の部材は、前記第1嵌合穴に圧入される筒状部と、前記第1基準面から前記第1の方向に沿って前記第2の機構側へ突出し、前記第2の機構側へ向かって小径となる第1テーパ面を有するテーパ凸部と、前記第1基準面に当接する基準部とを含み、前記筒状部、前記テーパ凸部、および前記基準部は一体形成され、
前記第2の部材は前記第2嵌合穴に圧入され、かつ、前記第2の部材は、前記第1テーパ面と係合可能な第2テーパ面を有する環状部を含み、
前記テーパ凸部の周方向において、前記テーパ凸部を少なくとも部分的に分断するスリット部が形成され、
前記第1の方向に沿って前記第1の機構と前記第2の機構とを互いに近づけて前記第1基準面と前記第2基準面とを当接させるとき、前記テーパ凸部の内径側への弾性変形を介して前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とを互いに密着させることにより前記第1の方向に直交する平面方向における前記第1の機構および前記第2の機構の相対的な位置決めが行われる、位置決め固定装置。
【請求項3】
前記第1の部材の前記第1テーパ面は、前記第1の方向に沿って前記第1基準面から離間して形成される、請求項1または請求項2に記載の位置決め固定装置。
【請求項4】
前記第1の部材における前記筒状部の内周に雌ねじ部が形成される、請求項1または請求項2に記載の位置決め固定装置。
【請求項5】
前記第2の部材の内周に雌ねじ部が形成され、前記雌ねじ部は、前記第1の方向において前記第2テーパ面とは異なる位置に設けられる、請求項1または請求項2に記載の位置決め固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、位置決め固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベース体の上に固定対象物(機械加工に供するワークを取り付けるワークパレット、金型等)を位置決め固定するための位置決め固定装置として、下記の特許文献1ないし特許文献6に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5627664号公報
【特許文献2】特許第5964640号公報
【特許文献3】特許第5946706号公報
【特許文献4】特許第5996306号公報
【特許文献5】独国特許発明第19826328号明細書
【特許文献6】実用新案登録第3182101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
位置決め固定装置のさらなる小型化が求められる。たとえば、特許文献1に記載の装置においては、基準部材をボルト固定するためにスペースを要する。特許文献2ないし5に記載の位置決め固定装置においては、基準部材を圧入により固定しているが、さらなる小型化を図る際には製造上の限界がある。特許文献6に記載の位置決め固定装置においては、弾性部材を設けることにより係合部の変形を促しているが、この弾性部材が小型化を阻害する場合がある。本技術の目的は、小型化された位置決め固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術に係る位置決め固定装置は、第1の機構と第2の機構との相対的な位置決めを行うとともに、第1の機構と第2の機構とを互いに固定することが可能な位置決め固定装置である。
【0006】
位置決め固定装置は、第1の機構に固定された第1の部材と、第2の機構に固定された第2の部材とを備える。第1の機構は、第1基準面と、第1基準面上に開口するように設けられた第1嵌合穴とを含む。第2の機構は、第1の方向に沿って第1基準面と対向する第2基準面と、第2基準面上に開口するように設けられた第2嵌合穴とを含む。
【0007】
第1の部材は、第1嵌合穴に圧入される筒状部と、第1基準面から第1の方向に沿って第2の機構側へ突出し、第2の機構側へ向かって小径となる第1テーパ面を有するテーパ凸部と、第1基準面に当接する基準部とを含む。筒状部、テーパ凸部、および基準部は一体形成される。
【0008】
第2の部材は第2嵌合穴に圧入され、かつ、第2の部材は、第1テーパ面と係合可能な第2テーパ面を有する環状部を含む。
【0009】
第1の方向に沿って第1の機構と第2の機構とを互いに近づけて第1基準面と第2基準面とを当接させるとき、テーパ凸部の内径側への弾性変形を介して第1テーパ面と第2テーパ面とを互いに密着させることにより第1の方向に直交する平面方向における第1の機構および第2の機構の相対的な位置決めが行われる。
【0010】
1つの実施態様では、上記位置決め固定装置において、第1の部材の基準部は、第1の方向に直交する方向に沿って、テーパ凸部よりも外径側に突出する。
【0011】
1つの実施態様では、上記位置決め固定装置において、テーパ凸部の周方向において、テーパ凸部を少なくとも部分的に分断するスリット部が形成される。
【0012】
1つの実施態様では、上記位置決め固定装置において、第1の部材の第1テーパ面は、第1の方向に沿って第1基準面から離間して形成される。
【0013】
1つの実施態様では、上記位置決め固定装置において、第1の部材における筒状部の内周に雌ねじ部が形成される。
【0014】
1つの実施態様では、上記位置決め固定装置において、第2の部材の内周に雌ねじ部が形成され、雌ねじ部は、第1の方向において第2テーパ面とは異なる位置に設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本技術によれば、小型化された位置決め固定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】位置決め固定装置の上面図である。
図2】位置決め固定装置の側断面図(図1におけるII-II断面図)である。
図3】位置決め固定装置におけるベース体の平面図(図2におけるIII-III方向からベース体を見た状態を示す平面図)である。
図4図2におけるIV部の拡大図である。
図5図4におけるV-V断面図である。
図6】基準部材の圧入工程を示す図である。
図7】環状係合部材の圧入工程を示す図である。
図8】変形例に係る位置決め固定装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0019】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0020】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0021】
図1は、位置決め固定装置の上面図であり、図2は、図1におけるII-II断面図であり、図3は、図2におけるIII-III方向からベース体10を見た状態を示す平面図である。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態に係る位置決め固定装置は、ベース体10(第1の機構)とパレット20(第2の機構)との相対的な位置決めを行うとともに、ベース体10とパレット20とを互いに固定することが可能なものである。
【0023】
パレット20は、ベース体10に固定される固定対象物である。パレット20には、たとえば、切削加工に供するワークが取り付けられる。なお、パレット20は、固定対象物の一例であって、本技術における固定対象物はこれに限定されない。たとえばパレット20に代わり金型等を固定対象物としてもよい。ベース体10は、静止物に固定されていてもよいし、回転支持機構などに支持されて可動状態となっていてもよい。また、本技術に係る位置決め固定装置をロボット(アームなど)に適用してもよい。
【0024】
ベース体10は、嵌合穴10A(第1嵌合穴)と基準面10B(第1基準面)とを有する。パレット20は、嵌合穴20A(第2嵌合穴)と基準面20B(第2基準面)とを有する。基準面10B,20Bは、Z軸方向(第1の方向)に沿って互いに対向する。嵌合穴10A,20Aは、各々、基準面10B,20B上に開口するように設けられる。
【0025】
ベース体10には、基準部材100(第1の部材)が固定されている。パレット20には、環状係合部材200(第2の部材)が固定されている。
【0026】
図4は、図2におけるIV部の拡大図である。図5は、図4におけるV-V断面図である。
【0027】
図4に示すように、基準部材100は、係合凸部110(テーパ凸部)と、嵌合筒部120(筒状部)と、基準フランジ部130(基準部)と、雌ねじ部140とを含む。係合凸部110、嵌合筒部120、および基準フランジ部130は、一体に形成されている。
【0028】
係合凸部110は、ベース体10の基準面10BからZ軸方向に沿ってパレット20側へ突出する。係合凸部110の外周面は、パレット20側(図中上側)に向かって小径となる係合テーパ面110A(第1テーパ面)を構成する。
【0029】
係合凸部110は、基準フランジ部130に対してベース体10の反対側(図中の上側)に設けられる。したがって、係合テーパ面110Aは、Z軸方向に沿ってベース体10の基準面10Bから離間して形成されている。係合凸部110とベース体10との間に基準フランジ部130が設けられることにより、基準面10Bから係合凸部110の先端までの高さHが大きくなる。この結果、係合凸部110の倒れ方向(Z軸に交差する方向)への変形が促進される。
【0030】
嵌合筒部120は、圧入当接面120Aがベース体10の嵌合穴10Aの内周面に密着するように嵌合穴10Aに圧入される。これにより、基準部材100がベース体10に固定される。嵌合穴10Aの底面と嵌合筒部120の下端面との間には、環状隙間が形成されている。なお、圧入以外の方法を用いて基準部材100を固定してもよい。
【0031】
基準フランジ部130は、ベース体10の基準面10Bに当接する当接面130Aを有する。基準フランジ部130は、Z軸方向に直交するX-Y平面方向に沿って、係合凸部110よりも外径側に突出するように形成される。一例として、係合凸部110の最外周の径D1に対する基準フランジ部130の径D2の比(D2/D1)は、たとえば1.1以上1.3以下程度である。
【0032】
雌ねじ部140は、嵌合筒部120の内周に形成される。基準部材100をベース体10から取り外すときには、雌ねじ部140に棒状の治具を螺合させ、治具を引っ張ることにより、嵌合穴10Aに圧入された嵌合筒部120が引き抜かれる。
【0033】
環状係合部材200は、環状部210と、底部220と、雌ねじ部230とを含む。環状部210および底部220は、一体に形成されている。
【0034】
環状部210は、係合テーパ面210A(第2テーパ面)および圧入当接面210Bを有する。係合テーパ面210Aは、パレット20の位置決め固定時において、係合凸部110の係合テーパ面110A(第1テーパ面)と係合可能である。
【0035】
環状係合部材200は、環状部210の圧入当接面210Bがパレット20の嵌合穴20Aの内周面に密着するように嵌合穴20Aに圧入される。環状係合部材200は、底部220の上面が嵌合穴20Aの底面に当接するまで圧入される。これにより、環状係合部材200がパレット20に固定される。なお、圧入以外の方法を用いて環状係合部材200を固定してもよい。環状係合部材200は、基準部材100と略同芯に配置される。
【0036】
雌ねじ部230は、底部220の内周に形成される。すなわち、雌ねじ部230は、Z軸方向において係合テーパ面210Aとは異なる位置に設けられる。環状係合部材200をパレット20から取り外すときには、雌ねじ部230に棒状の治具を螺合させ、治具を引っ張ることにより、嵌合穴20Aに圧入された環状部210が引き抜かれる。
【0037】
図5に示すように、基準部材100の係合凸部110の周方向において、係合凸部110を分断するスリット部110Bが形成される。スリット部110Bは、係合凸部110の高さ方向(Z軸方向)の一部に(部分的に)形成されていてもよい。図5の例では、スリット部110Bは、周方向に均等に並ぶように4つ形成されているが、スリット部110Bの数は適宜変更可能である。スリット部110Bが設けられることにより、係合凸部110の倒れ方向(Z軸に交差する方向)への変形が促進される。
【0038】
図1および図2に示すように、ベース体10とパレット20とは、4本のボルト300により固定される。ボルト300は、頭部310と、軸部320とを含む。ボルト300の頭部310はパレット20に当接し、ボルト300の軸部320はベース体10に螺着される。ボルト300に締結力を付与することにより、ベース体10およびパレット20が互いに引き寄せられる。
【0039】
ベース体10は、たとえば工作機械のテーブル等の上に固定した状態にセットされる。パレット20には、図示しないクランプ装置またはボルトにより、1個または複数のワーク(図示略)が固定される。パレット20がベース体10上に搬送され、水平方向(X-Y平面方向)と鉛直方向(Z軸方向)において互いに位置決めされ、かつ互いに固定された後、パレット20上の1個または複数のワークに対して機械加工が施される。
【0040】
一例として、ベース体10およびパレット20は、各々、略正方形または略長方形の鋼製平板部材により構成される。ベース体10の基準面10B(上面)は、パレット20を載置し、パレット20の基準面20B(下面)を着座させてパレット20を鉛直方向に位置決めするための水平な基準座面として機能する。パレット20の基準面20Bは、ベース体10の基準面10Bに面接触状に当接可能となるように形成される。基準面10B,20Bが互いに接触することにより、Z軸方向の位置決めが行われる。
【0041】
4本のボルト300のうち、2本のボルト300と略同芯に基準部材100(および環状係合部材200)が設けられる。すなわち、ボルト300は、基準部材100および環状係合部材200に挿通される。
【0042】
図3に示すように、一対の基準部材100は、ベース体10およびパレット20の対角線上において互いに離隔した位置にある。これにより、水平方向(X-Y平面方向)の位置決めが行われる。
【0043】
上述のとおり、4本のボルト300に締結力を付与したときは、Z軸方向に沿ってベース体10とパレット20とが互いに近づき、基準面10B,20Bが互いに当接する。これにより、Z軸方向におけるベース体10およびパレット20の相対的な位置決めが行われる。
【0044】
このとき、基準部材100の係合凸部110は、内径側へ弾性変形する。この弾性変形を介して係合テーパ面110A(第1テーパ面)と係合テーパ面210A(第2テーパ面)とが互いに密着する。これにより、X軸方向およびY軸方向(X-Y平面方向)におけるベース体10およびパレット20の相対的な位置決めが行われる。なお、係合テーパ面110A,210Aが単に接触している状態においては、基準面10B,20Bは互いに当接していない。この状態からさらにボルト300を締め込み、係合凸部110を弾性変形させながら、基準面10B,20Bが互いに当接するまでベース体10とパレット20とを互いに近づける。
【0045】
本実施の形態に係る位置決め固定装置においては、上述の操作により、基準面10B,20Bの当接、および係合テーパ面110A,210Aの当接による二面拘束が実現される。これにより、ベース体10とパレット20との相対的な位置決めを精度よく行うとともに、ベース体10とパレット20とを互いに固定することができる。
【0046】
4本のボルト300から締結力を除いたときは、基準面10B,20Bが互いに離間し、ベース体10からパレット20を取り外すことが可能となる。このとき、基準部材100の係合凸部110は、上記弾性変形前の形状に戻る。
【0047】
位置決め固定装置の小型化を図るとき、基準部材100および環状係合部材200の径を小さくすると、その縮小に伴って係合テーパ面110Aと係合テーパ面210Aとの接触面積も縮小する。単純に基準部材100および環状係合部材200の径を小さくする場合、係合テーパ面110Aと係合テーパ面210Aとの接触面積が縮小し、縮小前と同程度の面圧が作用したとしても、係合凸部110の内径側への弾性変形量は小さくなりやすい。この結果、位置決め固定に必要な所望の変形量が得られない場合があり得る。係合凸部110の厚みを小さくすれば弾性変形量を大きくすることが可能であるが、係合凸部110の薄肉化には製造上の制約のほか、変形量が大きくなりすぎて塑性変形し得るという問題がある。
【0048】
これに対し、本実施の形態に係る位置決め固定装置においては、係合凸部110とベース体10との間に基準フランジ部130を設けることにより、基準面10Bから係合凸部110の先端までの高さHを大きくすることができる。これにより、係合凸部110の内径側への弾性変形量を大きくすることができる。また、係合凸部110を周方向に分断するようにスリット部110Bが設けられているため、係合凸部110の内径側への弾性変形量をさらに大きくすることができる。この結果として、小型化された位置決め固定装置を得ることが可能である。
【0049】
なお、嵌合穴20Aを深く形成することにより、基準面10Bから係合凸部110の先端までの高さHの増大分を吸収することができる。本実施の形態に係る位置決め固定装置は、基準部材100および環状係合部材200を径方向(X-Y平面方向)には縮小しつつ、軸方向(Z軸方向)には大きくし、その増大分はパレット20の板厚(嵌合穴20Aの深さ)により吸収するというものである。
【0050】
図6図7は、各々、基準部材100および環状係合部材200の圧入工程を示す図である。基準部材100をベース体10に固定するときは、図6に示すように、基準フランジ部130の上面に圧入治具400を当接させ、矢印A方向に押し込むことにより、嵌合筒部120がベース体10の嵌合穴10Aに圧入される。環状係合部材200をパレット20に固定するときは、図7に示すように、環状部210の先端に圧入治具400を当接させ、矢印B方向に押し込むことにより、環状部210がパレット20の嵌合穴20Aに圧入される。
【0051】
基準部材100の圧入工程(図6)および環状係合部材200の圧入工程(図7)において、同じ圧入治具400を用いることが可能である。
【0052】
図8は、変形例に係る位置決め固定装置の側断面図である。図8に示すように、ベース体10に環状係合部材200を固定し、パレット20に基準部材100を固定してもよい。このときは、パレット20が「第1の機構」を構成し、ベース体10が「第2の機構」を構成することになる。
【0053】
また、基準フランジ部130が設けられない場合もあり得る。さらに、雌ねじ部140,230が設けられない場合もあり得る。
【0054】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
10 ベース体、10A 嵌合穴、10B 基準面、20 パレット、20A 嵌合穴、20B 基準面、100 基準部材、110 係合凸部、110A 係合テーパ面、110B スリット部、120 嵌合筒部、120A 圧入当接面、130 基準フランジ部、130A 当接面、140 雌ねじ部、200 環状係合部材、210 環状部、210A 係合テーパ面、210B 圧入当接面、220 底部、230 雌ねじ部、300 ボルト、310 頭部、320 軸部、400 圧入治具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8