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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062589
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20240501BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240501BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20240501BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240501BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240501BHJP
   B29C 64/236 20170101ALI20240501BHJP
【FI】
B29C64/124
B33Y30/00
B29C64/205
B29C64/35
B33Y40/00
B29C64/236
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170528
(22)【出願日】2022-10-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】522418923
【氏名又は名称】株式会社スリーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】堀越 秀郎
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AM13
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL72
4F213WL74
(57)【要約】
【課題】2種類の光硬化樹脂により立体造形物を生成できる光造形装置を提供する。
【解決手段】造形物支持部84の下方に設けられる第1樹脂保持部12及び第2樹脂保持部13と、を有し、第1樹脂保持部12は、シート16に張力を付与するローラ18を有し、第2樹脂保持部13は、シート16に張力を付与するローラ28を有し、プロジェクタ71は、シート16のうち張力が付与されている箇所に塗布されている光硬化樹脂に光を照射し、第1樹脂保持部12及び第2樹脂保持部13の移動方向で第1樹脂保持部12と第2樹脂保持部13との間に配置され、かつ、造形物支持部84の下方で往復移動されるクリーナユニット14が更に設けられ、クリーナユニット14は、造形物支持物84の造形プレート15Aにより支持される造形層を洗浄液により洗浄し、かつ、シート16を洗浄する、光造形装置10を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の光硬化樹脂を保持する樹脂保持部と、
前記樹脂保持部が支持する前記光硬化樹脂が塗布されるシートと、
前記シートに塗布された前記光硬化樹脂に光を照射することにより、前記光硬化樹脂を硬化させる光照射部と、
前記光硬化樹脂が硬化されて生成される造形層を支持する造形物支持部と、
を有する光造形装置であって、
前記樹脂保持部は、
前記造形物支持部の下方に設けられ、かつ、ガイドに沿って往復移動され、かつ、液体状の第1光硬化樹脂を保持する第1樹脂保持部と、
前記造形物支持部の下方に設けられ、かつ、ガイドに沿って往復移動され、かつ、前記第1光硬化樹脂とは種類が異なる液体状の第2光硬化樹脂を保持する第2樹脂保持部と、
を有し、
前記第1樹脂保持部は、前記シートに張力を付与する第1張力付与部材を有し、
前記第2樹脂保持部は、前記シートに張力を付与する第2張力付与部材を有し、
前記光照射部は、前記シートのうち前記第1張力付与部材により張力が付与されている箇所に塗布されている前記第1光硬化樹脂に光を照射し、かつ、前記シートのうち前記第2張力付与部材により張力が付与されている箇所に塗布されている前記第2光硬化樹脂に光を照射し、
前記第1樹脂保持部及び前記第2樹脂保持部の移動方向で前記第1樹脂保持部と前記第2樹脂保持部との間に配置され、かつ、前記造形物支持部の下方でガイド部に沿って往復移動される洗浄部が更に設けられ、
前記洗浄部は、
前記造形層を洗浄する洗浄液を保持する第1貯留室と、
前記シートのうち、前記第1樹脂保持部及び前記第2樹脂保持部の移動方向で前記第1樹脂保持部と前記第2樹脂保持部との間に位置する箇所を洗浄する洗浄液を保持する第2貯留室と、
を有する、光造形装置。
【請求項2】
請求項1記載の光造形装置において、
前記第2貯留室は、鉛直方向で前記第1貯留室より下に配置され、
前記第1貯留室には、前記洗浄液により前記造形層を洗浄するブラシが設けられ、
前記洗浄部は、前記第1貯留室の洗浄液を前記第2貯留室へ供給する供給管を有する、光造形装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の光造形装置において、
前記造形物支持部に支持される前記造形層に温風を吹き付ける温風部が設けられている、光造形装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の光造形装置において、
前記造形物支持部に支持される前記造形層に付着している異物を除去する異物除去具が設けられている、光造形装置。
【請求項5】
請求項4記載の光造形装置において、
前記異物除去具により除去された異物を吸引する吸引機が設けられている、光造形装置。
【請求項6】
請求項2記載の光造形装置において、
前記第2貯留室の前記洗浄液に含まれる異物を除去し、かつ、異物を除去した前記洗浄液を前記第1貯留室へ供給する濾過部が設けられている、光造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートに塗布された光硬化樹脂に光を照射して光硬化樹脂を硬化させることにより、立体造形物を生成する光造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに塗布された光硬化樹脂に光を照射して光硬化樹脂を硬化させることにより、立体造形物を生成する光造形装置の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている光造形装置は、上面に光硬化樹脂が塗布される透光性のシートと、シートの下面側から光硬化樹脂に光を照射する光源と、立体造形物(立体オブジェクト)の下端をシートの上面に向けて保持し、かつ、シートの上面に対して近接及び離間する保持部と、シートの下方に配置され、かつ、シートと平行に移動される移動部と、移動部に設けられ、かつ、光硬化樹脂を保持するタンクと、移動部に設けられ、かつ、立体造形物の下端に当接されるスキージと、スキージと一体に設けられ、かつ、タンクにより保持されている光硬化樹脂をシートの上面に塗布するノズルと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5806773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されている光造形装置は、立体造形物を1種類の光硬化樹脂により造形することに止まり、未だ改善の余地があるという課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、2種類の光硬化樹脂をシートに塗布し、かつ、それぞれの光硬化樹脂に光を照射して硬化させることにより、立体造形物を生成できる光造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、液体状の光硬化樹脂を保持する樹脂保持部と、前記樹脂保持部が支持する前記光硬化樹脂が塗布されるシートと、前記シートに塗布された前記光硬化樹脂に光を照射することにより、前記光硬化樹脂を硬化させる光照射部と、前記光硬化樹脂が硬化されて生成される造形層を支持する造形物支持部と、を有する光造形装置であって、前記樹脂保持部は、前記造形物支持部の下方に設けられ、かつ、ガイドに沿って往復移動され、かつ、液体状の第1光硬化樹脂を保持する第1樹脂保持部と、前記造形物支持部の下方に設けられ、かつ、ガイドに沿って往復移動され、かつ、前記第1光硬化樹脂とは種類が異なる液体状の第2光硬化樹脂を保持する第2樹脂保持部と、を有し、前記第1樹脂保持部は、前記シートに張力を付与する第1張力付与部材を有し、前記第2樹脂保持部は、前記シートに張力を付与する第2張力付与部材を有し、前記光照射部は、前記シートのうち前記第1張力付与部材により張力が付与されている箇所に塗布されている前記第1光硬化樹脂に光を照射し、かつ、前記シートのうち前記第2張力付与部材により張力が付与されている箇所に塗布されている前記第2光硬化樹脂に光を照射し、前記第1樹脂保持部及び前記第2樹脂保持部の移動方向で前記第1樹脂保持部と前記第2樹脂保持部との間に配置され、かつ、前記造形物支持部の下方でガイド部に沿って往復移動される洗浄部が更に設けられ、前記洗浄部は、前記造形層を洗浄する洗浄液を保持する第1貯留室と、前記シートのうち、前記第1樹脂保持部及び前記第2樹脂保持部の移動方向で前記第1樹脂保持部と前記第2樹脂保持部との間に位置する箇所を洗浄する洗浄液を保持する第2貯留室と、を有する、光造形装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の光造形装置は、2種類の光硬化樹脂をシートに塗布し、かつ、それぞれの光硬化樹脂に光を照射して硬化させることにより、立体造形物を生成できる。また、光造形装置は、光硬化樹脂が硬化して形成される造形層を洗浄できる。したがって、光造形装置は、立体造形物の成形品質の低下、及び成形精度の低下を抑制できる。さらに、光造形装置は、前工程でシートに付着した光硬化樹脂を、洗浄液でシートから除去できる。このため、次の工程でシートに他の光硬化樹脂を塗布する工程で、2種類の光硬化樹脂が混ざり合うことを抑制できる。したがって、光造形装置は、立体造形物の成形品質の低下、及び成形精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光造形装置の模式的な正面断面図である。
図2】光造形装置の模式的な平面図である。
図3】光造形装置が有するクリーナユニットの模式的な正面断面図である。
図4】光造形装置を制御する外部機器の構成を示すブロック図である。
図5】光造形装置が有するクリーナユニット及び濾過部の模式的な側面断面図である。
図6】光造形装置で行われる第1工程で、シートに塗布された樹脂層にプロジェクタ光を照射する例を示す正面断面図である。
図7】光造形装置で行われる第1工程で、造形プレートに第1造形層を形成した例を示す正面断面図である。
図8】光造形装置で行われる第1工程で、造形プレートに第1造形層を形成した後、クリーナユニットを第1位置へ移動させた例を示す正面断面図である。
図9】光造形装置で行われる第2工程で、シートに塗布された樹脂層にプロジェクタ光を照射する例を示す正面断面図である。
図10】光造形装置で行われる第2工程で、造形プレートに第2造形層を形成した例を示す正面断面図である。
図11】光造形装置で行われる第2工程で、造形プレートに第2造形層を形成した後、クリーナユニットを第2位置へ移動させた例を示す正面断面図である。
図12図12(A)は、光造形装置が有する造形プレートを上昇させる駆動機構の一例を示す正面図、図12(B)は、光造形装置が有する造形プレートを上昇させる駆動機構の一例を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(概要)
本開示の光造形装置に含まれるいくつかの実施形態が、図面を参照して説明されている。光造形装置の実施形態を説明する図において、同一部には原則として同一の符号が付されている。
【0010】
(光造形装置の構成)
図1図2及び図3に示す光造形装置10は、2本のガイドレール11、第1樹脂保持部(第1コーター)12、第2樹脂保持部(第2コーター)13、クリーナユニット14、造形物支持部84、シート16を有する。2本のガイドレール11は、略水平に、かつ、平行に配置されている。2本のガイドレール11は金属製であり、かつ、固定して設けられている。第1樹脂保持部12は、2本のガイドレール11によって支持されている。第1樹脂保持部12及び第2樹脂保持部13は、シート16に光硬化樹脂を塗布する機能を有する。
【0011】
図3のように、第1樹脂保持部12は、第1樹脂槽17及びローラ18,19,20,21,22を有する。第1樹脂槽17は、例えば金属製であり、第1樹脂槽17は、2本のガイドレール11上に載せられている。第1樹脂槽17は、2本のガイドレール11の長手方向に沿って第1の向きA1及び第2の向きA2で略水平に移動することができる。第1樹脂槽17内には、材料としての光硬化樹脂B1が液体状で保持される。光硬化樹脂B1は、光が照射されると液体から硬化して個体に変化する合成有機材料である。
【0012】
2本のローラ20,21が第1樹脂槽17内に設けられ、2本のローラ18,19が第1樹脂槽17の上部に設けられ、1本のローラ22が第1樹脂槽17の側方に設けられている。図2のように、ローラ18,20,21,19,22は、相互に平行に配置され、かつ、略水平に配置され、かつ、ガイドレール11の長手方向に対して交差する方向に沿って延ばされている。2本のローラ20,21は、鉛直方向で2本のローラ18,19より下方に配置されている。2本のローラ20,21は、鉛直方向で同じ位置に配置されている。シート16の長手方向の一部が、ローラ18,20,21,19,22の順序で掛けられており、シート16の長手方向の一部が、光硬化樹脂B1に浸漬される。全てのローラ18,19,20,21,22は、第1樹脂槽17と共に第1の向きA1及び第2の向きA2で移動される。
【0013】
シート16は、第1樹脂槽17の内部から外部C1に亘って配置されている。シート16は、ビニール等の透光性の素材から構成された部材であり、かつ、シート16は、可撓性を有する。シート16は、光硬化樹脂が塗布される要素である。2本のガイドレール11の上方に、第1シート支持部23及び第2シート支持部24が設けられている。第1シート支持部23及び第2シート支持部24は、ガイドレール11の長手方向で所定の間隔をおいて配置されている。シート16の長手方向の第1端部は、第1シート支持部23によって動かないように支持されている。
【0014】
シート16の長手方向の一部は、ローラ28,19,20,21,22に掛けられることにより、第1樹脂槽17の内部及び外部C1に亘ってレイアウトされている。第1樹脂保持部12は、ローラ18,19,20,21,22にシート16が掛けられた状態で、ガイドレール11に沿って第1の向きA1及び第2の向きA2で移動可能である。
【0015】
第1樹脂保持部12を移動及び停止させる駆動機構は、図4に示す第1モータ25機構を有する。第1モータ25は、正回転、逆回転及び停止が可能である。第1モータ25の回転力は、第1樹脂保持部12を第1の向きA1及び第2の向きA2で移動させる力に変換される。例えば、第1モータ25が正回転されると、第1樹脂保持部12が第1の向きA1で移動され、第1モータ25が逆回転されると、第1樹脂保持部12が第2の向きA2で移動される。第1モータ25が停止されると、第1樹脂保持部12が停止される。
【0016】
第2樹脂保持部13は、2本のガイドレール11によって支持されている。第2樹脂保持部13は、シート16に光硬化樹脂B2を塗布する機能を有する。第2樹脂保持部13は、第2樹脂槽26及びローラ27,28,29,30,31を有する。第2樹脂槽26は、例えば金属製であり、第2樹脂槽26は、2本のガイドレール11上に載せられている。第2樹脂槽26は、2本のガイドレール11に沿って第1の向きA1及び第2の向きで略水平に移動される。
【0017】
第2樹脂槽26内には、材料としての光硬化樹脂B2が液体状で保持される。光硬化樹脂B2は、光が照射されると液体から硬化して個体に変化する合成有機材料である。第1樹脂槽17に貯留される光硬化樹脂B1と、第2樹脂槽26に貯留される光硬化樹脂B2とを比較すると、その物性が異なる。物性は、例えば、硬化後の色、硬化後の硬度(粘度)等のうちの少なくとも1種類を含む。2本のローラ29,30が第2樹脂槽26内に設けられ、2本のローラ27,28が第2樹脂槽26の上部に設けられ、1本のローラ31が第2樹脂槽26の側方に設けられている。ローラ22,31は、鉛直方向で同じ位置に設けられている。
【0018】
2本のローラ29,30は、鉛直方向で2本のローラ27,28より下方に配置されている。図2のように、ローラ27,28,29,30,31は、相互に平行に配置され、かつ、略水平に配置され、かつ、ガイドレール11の長手方向に対して交差する方向に沿って延ばされている。2本のローラ29,30は、鉛直方向で同じ位置に配置されている。シート16の長手方向の一部が、ローラ28,30,29,27,31の順序で掛けられており、シート16の長手方向の一部が、光硬化樹脂B2に浸漬される。全てのローラ27,28,29,30,31は、第2樹脂槽26と共にガイドレール11に沿って移動される。
【0019】
シート16は、第2樹脂槽26の内部から外部C1に亘って配置されている。シート16の長手方向の第2端部は、第2シート支持部24によって動かないように支持されている。シート16の長手方向の一部は、ローラ27,28,29,30,31に掛けられることにより、第2樹脂槽26の内部及び外部C1に亘ってレイアウトされている。第2樹脂保持部13は、ローラ27,28,29,30,31にシート16が掛けられた状態で、ガイドレール11に沿って第1の向きA1及び第2の向きA2で移動される。
【0020】
第2樹脂保持部13を移動及び停止させる駆動機構は、図4に示す第2モータ32を有する。第2モータ32は、正回転、逆回転及び停止できる。第2モータ32の回転力は、第2樹脂保持部13をガイドレール11に沿って移動させる力に変換される。例えば、第2モータ32が正回転されると、第2樹脂保持部13が第1の向きA1で移動され、第2モータ32が逆回転されると、第2樹脂保持部13が第2の向きA2で移動される。第2モータ32が停止されると、第2樹脂保持部13が停止される。
【0021】
造形物支持部84は、鉛直方向で2本のガイドレール11の上方に設けられている。造形物支持部84は、昇降台15と、昇降台15の下部に取り付けられた造形プレート15Aと、を有する。造形プレート15Aは、光硬化樹脂B1,B2が硬化して生成される造形層を支持する要素である。造形プレート15Aは、昇降台15の下部へ取り付け取り外しすることができる。2本のガイドレール72が、鉛直方向に沿って設けられており、昇降台15は、2本のガイドレール72へ移動可能に取り付けられている。造形プレート15Aの下面は平坦であり、かつ、略水平である。
【0022】
昇降台15及び造形プレート15Aを、2本のガイドレール72に沿って上昇させる駆動機構は、図4及び図12(A),(B)に示すように、出力軸85を有する造形プレートモータ73と、出力軸85に固定されたギヤ86と、ギヤ86に噛み合わされたギヤ87と、ギヤ87に固定されたプーリ88と、プーリ88より下に設けられたプーリ89と、プーリ88,89に巻き掛けられたタイミングベルト90と、を有する。タイミングベルト90は、無端状、つまり、環状であり、タイミングベルト90の一部が、昇降台15のマウント93に固定されている。造形プレートモータ73は、回転及び停止できる。造形プレートモータ73の回転力が、ギヤ87、プーリ88,89及びタイミングベルト90を介して昇降台15に伝達されると、昇降台15がガイドレール72に沿って上昇される。
【0023】
また、昇降台15には、ブレーキ機構91が設けられている。ブレーキ機構91は、例えば、ガイドレール72に押し付けられるパッドを有し、昇降台15が重力で下降することを防止する。さらに、昇降台15には、ブレーキ解除ハンドル92が設けられている。作業者がブレーキ解除ハンドル92に手動で操作力を付加すると、ブレーキ機構91のパッドがガイドレール72から離間され、ブレーキ機構91のブレーキ力が解除され、昇降台15を下降させることができる。作業者がブレーキ解除ハンドル92に対する操作力を解除すると、ブレーキ機構91のパッドがガイドレール72に押し付けられ、ブレーキ機構91のブレーキ力が生じて昇降台15が停止する。
【0024】
クリーナユニット14は、造形プレート15Aに形成される造形層を洗浄する機能、余剰分の樹脂を除去する機能、シート16の洗浄する機能を有する。クリーナユニット14は、2本のガイドレール11によって支持されている。クリーナユニット14は、2本のガイドレール11の長手方向において、第1樹脂保持部12と第2樹脂保持部13との間に配置されている。クリーナユニット14は、図3のように、クリーナ槽33、ブラシ34,35、ワイパ37,38、図4に示すブラシ駆動モータ36、図5に示す濾過部83を有する。濾過部83は、濾過タンク39、ポンプ40及び濾過フィルタ65を有する。クリーナ槽33は、例えば、金属製であり、クリーナ槽33は、2本のガイドレール11の長手方向に沿って第1の向きA1及び第2の向きA2で移動され、かつ、停止される。
【0025】
クリーナユニット14を、2本のガイドレール11に沿って移動及び停止させる駆動機構構は、図4に示すクリーナユニット駆動モータ41を有する。クリーナユニット駆動モータ41は、正回転、逆回転及び停止できる。クリーナユニット駆動モータ41の回転力がクリーナ槽33に伝達されて、クリーナユニット14がガイドレール11に沿って移動される。例えば、クリーナユニット駆動モータ41が正回転されると、クリーナユニット14が第1の向きA1で移動され、クリーナユニット駆動モータ41が逆回転されると、クリーナユニット14が第2の向きA2で移動される。クリーナユニット駆動モータ41が停止されると、クリーナユニット14が停止される。
【0026】
図5のように、クリーナ槽33の内部に水平な隔壁42が設けられ、クリーナ槽33の内部が第1貯留室43と第2貯留室44とに区画されている。鉛直方向において、第2貯留室44は、第1貯留室43の下方に配置されている。鉛直方向は、重力の作用方向を意味する。なお、鉛直方向は、高さ方向または上下方向として把握してもよい。
【0027】
第1貯留室43は、濾過タンク39から供給される洗浄液を貯留する。第1貯留室43は、開口部45を有し、第1貯留室43は、開口部45を介して外部C1につながっている。2本のブラシ34,35は、造形プレート15A、及び造形プレート15Aに保持された造形層を擦るための要素である。2本のブラシ34,35は、第1貯留室43に設けられている。2本のブラシ34,35は、共に円柱形状であり、かつ、2本のブラシ34,35は、例えば、スポンジ製または合成樹脂製である。図3に示すように、ブラシ34は、支持軸46によって回転可能に支持され、ブラシ35は、支持軸47によって回転可能に支持されている。2本の支持軸46,47は、略水平に配置され、かつ、2本の支持軸46,47は平行に配置されている。
【0028】
図2のように、光造形装置10を平面視すると、2本の支持軸46,47は、2本のガイドレール11の長手方向に対して交差する方向に沿って配置されている。2本のブラシ34,35は、クリーナユニット14の移動方向に並べて配置されている。図3のように、2本のブラシ34,35の外周面のそれぞれの一部は、第1貯留室43の洗浄液D1に浸漬される。支持軸46にはギヤ48が取り付けられ、支持軸47にはギヤ49が取り付けられている。ギヤ48とギヤ49とが噛み合わされている。2本のブラシ34,35の直径は同じである。2本のブラシ34,35の外周面の一部は、開口部45から外部C1に亘って配置されている。
【0029】
ブラシ駆動モータ36は、2本のブラシ34,35を回転及び停止させるものである。ブラシ駆動モータ36は、例えば、クリーナ槽33に取り付けられており、ブラシ駆動モータ36の回転力をギヤ49に伝達するギヤ列50が設けられている。ブラシ駆動モータ36の回転力は、ギヤ列50を介してギヤ49に伝達され、ブラシ35が回転される。ギヤ49の回転力がギヤ48に伝達され、ブラシ34が回転される。ブラシ35の回転方向と、ブラシ34の回転方向とは、逆になる。
【0030】
2本のワイパ37,38が開口部45に設けられ、かつ、クリーナ槽33により支持されている。2本のワイパ37,38は、造形プレート15Aの下面、及び造形プレート15Aの下面に保持される樹脂層を清掃する要素である。2本のワイパ37,38は、例えば、合成樹脂製である。2本のワイパ37,38の先端は、上に向けて突出されている。2本のワイパ37,38は、2本のブラシ34,35の長手方向に沿って配置されたプレート材である。2本のワイパ37,38は、クリーナユニット14の移動方向に間隔をおいて配置されている。クリーナユニット14の移動方向で、2本のブラシ34,35は、2本のワイパ37,38の間に配置されている。
【0031】
図3のように、クリーナ槽33は、互いに平行な側壁51,52を有する。側壁51に吸引口53が設けられ、側壁52に吸引口54が設けられている。吸引口53,54は、造形プレート15Aから除去される余剰分の樹脂及び洗浄液を吸引する。吸引口53,54は、図4に示す吸引機55に接続されている。吸引機55は、モータにより駆動されて空気を吸引口53,54から吸引して吐出する装置である。
【0032】
第2貯留室44は、第1貯留室43から供給される洗浄液D1を貯留する。隔壁42に供給管56が設けられ、供給管56は、第1貯留室43と第2貯留室44とをつないでいる。供給管56の上端は、2本のブラシ34,35の下端よりも上に配置されている。第1貯留室43に貯留される洗浄液D1の液位が供給管56の上端より高くなると、第1貯留室43の洗浄液D1が、供給管56内を通って自重で第2貯留室44へ供給される。
【0033】
図3のように、クリーナ槽33は、側壁51を貫通する通路57を有し、側壁52を貫通する通路58を有する。通路57,58は、第2貯留室44と外部C1とをつないでいる。2つの通路57,58は、鉛直方向で同じ位置に設けられている。2つの通路57,58は、鉛直方向において、第1樹脂保持部12のローラ22の下端、及び第2樹脂保持部13のローラ31と同じ位置に設けられている。2本のローラ59,60が、第2貯留室44に設けられている。2本のローラ59,60は、直径が同じである。光造形装置10を平面視すると、2本のローラ59,60は、2つのガイドレール11の長手方向に対して交差する方向に沿って延ばされ、かつ、2本のローラ59,60は、平行に配置されている。また、2本のローラ59,60は、鉛直方向で同じ位置に配置されている。鉛直方向で、2本のガイドローラ59,60の下端は、2つの通路57,58の下端より下に位置している。
【0034】
2個のワイパ61,62が第2貯留室44に設けられ、2個のワイパ61,62は、側壁51とローラ59との間に配置されている。2個のワイパ63,64が第2貯留室44に設けられ、2個のワイパ63,64は、側壁52とローラ60との間に配置されている。シート16の長手方向における一部、具体的には、ローラ22とローラ31との間に位置する箇所は、外部C1、通路57,58、第2貯留室44に亘ってレイアウトされている。
【0035】
シート16の長手方向のうち、第2貯留室44内に位置する箇所は、2本のローラ59,60の外周面に掛けられている。シート16の長手方向の一部は、通路57とローラ59との間において、ワイパ61とワイパ62との間を通されている。シート16の長手方向の一部は、通路58とローラ60との間において、ワイパ63とワイパ64との間を通されている。シート16の長手方向の一部は、ワイパ61,62と、ワイパ63,64との間において、洗浄液D1に浸漬される。
【0036】
図5に示すように、濾過タンク39は、鉛直方向でクリーナ槽33より下に設けられている。濾過タンク39は、ブラケットによりクリーナ槽33へ取り付けられている。濾過タンク39の内部には、洗浄液D1が貯留される。図5のように、濾過フィルタ65は、濾過タンク39の内部に略水平に設けられている。このため、濾過タンク39の内部は、濾過フィルタ65により上部室66と下部室67とに区画されている。鉛直方向で上部室66は下部室67の上に位置する。
【0037】
上部室66と第2貯留室44とを接続する排液管68が設けられている。排液管68の上端は、通路57の下端より低い位置に配置され、かつ、ローラ60の下端より高い位置に配置されている。第2貯留室44の洗浄液D1の液位が、排液管68の上端より高くなると、第2貯留室44の洗浄液D1が、排液管68を通って上部室66へ自重で流れ込む。上部室66へ流れ込んだ洗浄液D1は、自重で濾過フィルタ65を通過して下部室67へ至る。濾過フィルタ65は、洗浄液D1中の異物を除去する。濾過フィルタ65は、濾過タンク39に取り付け及び取り外しできる構成を有する。
【0038】
下部室67にポンプ40が設けられている。ポンプ40は、濾過フィルタ65を通過した洗浄液D1を吸い込み口から吸い込み、かつ、吸い込んだ洗浄液D1を吐出口から吐出する。下部室67に接続された供給管69が設けられている。供給管69の上端の開口部70は、クリーナ槽33の開口部45へ向けられている。ポンプ40から吐出された洗浄液D1は、供給管69内を通って第1貯留室43へ供給される。
【0039】
図2のように、プロジェクタ71が2本のガイドレール11の間に設けられている。プロジェクタ71は、立体造形物の平面形状(断面パターン)に応じて、シート16の下面における所定位置に対して、所定タイミングで図1に示すプロジェクタ光F1、例えば、紫外線レーザを照射する。シート16の下面に照射されたプロジェクタ光F1は、シート16を厚さ方向に透過してシート16の上面に至り、シート16に塗布されている光硬化樹脂B1,B2を硬化させる。
【0040】
また、温風ユニット74が、2本のガイドレール11の上方に設けられている。温風ユニット74は、造形プレート15Aに生成される造形層を乾燥させるための機構である。図2のように、温風ユニット74は、第1樹脂保持部12、第2樹脂保持部13、クリーナユニット14の移動領域から外れた位置に設けられている。温風ユニット74は、ヒータ及び送風機を有する。ヒータの熱は、送風機で送られる空気へ伝達される。
【0041】
図4は、光造形装置10を制御する外部機器76の概略構成を示すブロック図である。外部機器76は、外部機器76は、入力ポート、出力ポート及び演算回路を有する制御部75と、造形データ生成部77と、記憶部82と、を有するコンピュータである。外部機器においては、3次元-CAD(Computer Aided Design )または3次元コンピュータグラフィックスソフトにより、立体造形物の3次元データが作成され、造形データ生成部77において、STL(Standard Triangulated Language)データに変換される。立体構造物の3次元データは、例えば、X軸、Y軸及びZ軸を含む座標系で表される。
【0042】
本実施形態では、第1樹脂保持部12及び第2樹脂保持部13において、異なる特性の光硬化樹脂B1,B2が保持される。光硬化樹脂B1,B2がシート16に塗布され、光硬化樹脂B1,B2にそれぞれプロジェクタ光が照射される。光硬化樹脂B1が硬化すると第1造形層が形成され、光硬化樹脂B2が硬化すると第2造形層が形成される。そして、第1造形層及び第2造形層が、それぞれ複数回形成されることにより、立体造形物が生成される。このため、第1造形層を1回毎に形成し、かつ、第2造形層を1回毎に形成するためのSTLデータが、別々に生成される。STLデータは、第1造形層及び第2造形層の1回毎のそれぞれの平面形状、第1造形層及び第2造形層の1回毎のそれぞれの厚さ等を含む。第1造形層及び第2造形層の1回毎のそれぞれの平面形状、例えば、X軸及びY軸に対応する。第1造形層及び第2造形層の1回毎のそれぞれの厚さは、例えば、Z軸に対応する。造形データ生成部77は、STLデータを処理して、プロジェクタ71を制御するデータを生成する。
【0043】
さらに、各種の位置検出センサ78,79,80,81が設けられている。位置検出センサ78,79,80,81としては、例えば、非接触形センサを用いることができる。位置検出センサ78は、ガイドレール11の長手方向における第1樹脂保持部12の位置を検出して信号を出力する。位置検出センサ79は、ガイドレール11の長手方向における第2樹脂保持部13の位置を検出して信号を出力する。位置検出センサ80は、ガイドレール11の長手方向におけるクリーナユニット14の位置を検出して信号を出力する。位置検出センサ81は、鉛直方向における造形プレート15Aの位置を検出して信号を出力する。
【0044】
外部機器76の制御部75は、各種の位置検出センサ78,79,80,81の信号を処理する。記憶部82には、制御部75で行われる処理、判断、制御等に用いられるプログラム、データ、情報等が記憶されている。制御部75は、位置検出センサ78,79,80,81の信号、記憶部82に記憶されているデータ、情報等に基づいて、第1モータ25、第2モータ32、クリーナユニット駆動モータ41、吸引機55、ブラシ駆動モータ36、造形プレートモータ73、温風ユニット74、ポンプ40をそれぞれ制御する信号を出力する。制御部75は、造形データ生成部77で生成されるデータに基づいて、プロジェクタ71及び造形プレートモータ73を制御する信号を出力する。
【0045】
(光造形装置の動作説明)
光造形装置10の動作例は、次の通りである。図1及び図2には、光造形装置10の初期状態の一例が示されている。光造形装置10が初期状態であると、図2に示す光造形装置10の平面視において、第1樹脂保持部12、第2樹脂保持部13及びクリーナユニット14は、造形プレート15Aの配置領域から外れた位置で停止されている。具体的には説明すると、第1樹脂保持部12は初期位置で停止され、第2樹脂保持部13は初期位置で停止されている。第1樹脂保持部12の初期位置は、第1樹脂保持部12の移動方向で第1樹脂保持部12が最も第1シート支持部23に接近した位置である。第2樹脂保持部13の初期位置は、第2樹脂保持部13の移動方向で第2樹脂保持部13が最も第2シート支持部24に接近した位置である。さらに、クリーナユニット14は、プロジェクタ71と第2樹脂保持部13との間の第1位置で停止されている。
【0046】
シート16の長手方向の一部は、第1樹脂保持部12の第1樹脂槽17内で光硬化樹脂B1に浸漬されている。また、シート16の長手方向の一部は、第2樹脂保持部13の第2樹脂槽26内で光硬化樹脂B2に浸漬されている。さらに、シート16長手方向のうち、第1樹脂保持部12と第2樹脂保持部13との間に位置する箇所は、クリーナユニット14の第2貯留室44内で洗浄液D1により洗浄される。さらにまた、ブラシ34,35のそれぞれの外周面の一部は、第1貯留室43内で洗浄液D1に浸漬される。さらに、シート16は、長手方向の両端が第1シート支持部23及び第2シート支持部24により支持され、かつ、複数のローラ18,19,20,21,22,27,28,29,30,59,60に掛けられた状態で、所定の張力が付与される。
【0047】
光造形装置10は、制御部75が外部機器76から信号を受信すると、第1工程及び第2工程を行うことができる。第1工程では、第1樹脂保持部12をガイドレール11に沿って移動させてシート16の上面に光硬化樹脂B1を塗布し、その光硬化樹脂B1をプロジェクタ光で照射して硬化させ、第1造形層を形成する。第2工程では、第2樹脂保持部13をガイドレール11に沿って移動させてシート16の上面に光硬化樹脂B2を塗布し、その光硬化樹脂B2をプロジェクタ光で照射して硬化させ、第2造形層を形成する。ここでは、便宜上、第1工程の次に第2工程を行う例を説明する。また、便宜上、第1工程で形成される第1造形層と、第2工程で形成される第2造形層とを重ねる例を説明する。
【0048】
(第1工程)
[第1樹脂保持部12による樹脂層の形成工程]
制御部75は、第1樹脂保持部12を、図1に示す初期位置から第1の向きA1で移動させ、かつ、第1樹脂保持部12を造形プレート15Aの下を通過させる。そして、制御部75は、第1樹脂保持部12を、図6に示す所定位置で停止させる。第1樹脂保持部12の所定位置は、第1樹脂保持部12の移動方向において、第1樹脂保持部12がクリーナユニット14とプロジェクタ71との間に位置することである。
【0049】
第1樹脂保持部12が初期位置から所定位置へ移動する過程で、シート16のうち、第1シート支持部23とローラ18との間に位置する箇所は、張力により略水平に保持されている。第1樹脂保持部12が初期位置から所定位置へ移動する過程で、光硬化樹脂B1がシート16に塗布されて、シート16の上面に樹脂層E1が形成される。樹脂層E1の厚さは、例えば、0.01mm乃至0.5mmの範囲内である。そして、第1樹脂保持部12の移動に伴い、樹脂層E1が造形プレート15Aの下へ至る。
【0050】
[第1樹脂保持部12により形成された樹脂層へプロジェクタ光を照射する工程]
作業者は、図12(A)に示すブレーキ解除ハンドル92に操作力を付加してブレーキ機構91のブレーキ力を解除し、かつ、昇降台15を下降させる。そして、図6のように、造形プレート15Aの下面を樹脂層E1に接触させ、ブレーキ解除ハンドル92に対する操作力を解除し、昇降台15を停止させる。さらに、制御部75は、プロジェクタ71を制御することにより、プロジェクタ71からシート16の下面に向けてプロジェクタ光F1を照射させ、かつ、プロジェクタ光F1の照射位置を移動させる。プロジェクタ71からシート16の下面におけるプロジェクタ光F1の照射位置及びプロジェクタ光F1の照射タイミングは、立体造形物の断面パターンに応じて制御される。
【0051】
プロジェクタ光F1は、シート16の下面から上面に向けて、シート16を厚さ方向に透過する。樹脂層E1のうちプロジェクタ光F1が照射された箇所が硬化する。このため、樹脂層E1のうち硬化した箇所が造形プレート15Aに付着して第1造形層が形成される。その後、制御部75は、プロジェクタ71によるプロジェクタ光F1の照射を停止させる。
【0052】
[第1造形層の洗浄工程(第1回目)、及びシートの洗浄工程]
制御部75は、第1樹脂保持部12を図6に示す所定位置から、第2の向きA2で移動させ、第1樹脂保持部12を、図7に示す初期位置で停止させる。また、制御部75は、クリーナユニット14を、第1位置から第2の向きA2で移動させ、かつ、クリーナユニット14を造形プレート15Aの下方を通過させる。その後、制御部75は、クリーナユニット14を図7に示す第2位置で停止させる。クリーナユニット14の第1位置及び第2位置は、共に造形プレート15Aの真下から外れた位置である。クリーナユニット14の第2位置は、クリーナユニット14が第1樹脂保持部12とプロジェクタ71との間に位置することである。
【0053】
制御部75は、クリーナユニット14を造形プレート15Aの下方を通過させる過程で、ブラシ駆動モータ36を駆動させる。すると、洗浄液D1が付着したブラシ34,35が回転される。したがって、造形プレート15Aの下面に付着している第1造形層G1は、ブラシ34,35の外周面によって擦られ、第1造形層G1の表面が洗浄される。さらに、クリーナユニット14が第2の向きA2で移動すると、シート16が第2貯留室44内の洗浄液D1により洗浄され、光硬化樹脂B1がシート16から除去される。また、シート16に残留している樹脂層E1が、ワイパ61,62,63,64により除去される。
【0054】
[シートの洗浄工程、吸引工程(第1回目)、及び温風吹き付け工程(第1回目)]
制御部75は、クリーナユニット14を、第2位置から第1の向きA1で移動させ、かつ、クリーナユニット14を造形プレート15Aの下方を通過させた後、制御部75は、クリーナユニット14を図8に示す第1位置で停止させる。クリーナユニット14が第1の向きA1で移動する過程で、ワイパ37,38の先端が造形プレート15Aの下面及び第1造形層G1を擦り、余剰分の樹脂、及び硬化していない樹脂等を掻き落とす(除去する)。ワイパ37,38により掻き落とされなかった樹脂及び洗浄液は、空気と共に吸引口53,54へ吸引される。
【0055】
さらに、制御部75は、クリーナユニット14を第1の向きA1で移動させる過程で、温風ユニット74を駆動させる。温風ユニット74から吐出される温風は第1造形層G1へ吹き付けられ、第1造形層G1の乾燥及び硬化が促進される。また、第1造形層G1及び造形プレート15Aの下面に付着している洗浄液が、温風により吹き飛ばされる。なお、制御部75は、クリーナユニット14を第1の向きA1で移動させる過程において、ブラシ駆動モータ36を停止させている。つまり、ブラシ34,35は、停止されている。さらに、クリーナユニット14が第1の向きA1で移動する過程で、シート16の一部はワイパ61,62,63,64により擦られ、第2貯留室44内の洗浄液にD1により洗浄される。したがって、残留している光硬化樹脂B1が、シート16から除去される。
【0056】
[造形層の吸引工程(第2回目)と温風の吹き付け工程(第2回目)、及びシートの洗浄工程]
制御部75は、クリーナユニット14を、図8に示す第1位置から第2の向きA2で移動させ、かつ、制御部75は、クリーナユニット14を図7に示す第2位置で停止させる。クリーナユニット14が第2の向きA2で移動される過程において、前述と同様の原理により、掻き落とされなかった樹脂及び洗浄液の吸引と、温風の吹き付けとが行われる。クリーナユニット14が第2の向きA2で移動すると、シート16の長手方向の一部が、第2貯留室44内の洗浄液D1により洗浄される。
【0057】
(第2工程)
[第2樹脂保持部13による樹脂層の形成工程]
第2工程では、第1樹脂保持部12により第1造形層G1に重ねて第2造形層が形成される。または、第1造形層G1以外の部分の同じ高さに、第2造形層が形成される。制御部75は、第1工程が終了した後、造形プレート15Aを鉛直方向に所定量上昇させるか同じ高さに保持するかを自動で判断し、かつ、造形プレート15Aを停止させる。造形プレート15Aの上昇量は、造形データ生成部77による造形データ作成時に決定される。次に、制御部75は、第2樹脂保持部13を、図7に示す初期位置から第2の向きA2で移動させ、かつ、第2樹脂保持部13を造形プレート15Aの下を通過させる。
【0058】
そして、制御部75は、第2樹脂保持部13を図9に示す所定位置で停止させる。第2樹脂保持部13の所定位置は、第2樹脂保持部13の移動方向で、第2樹脂保持部13がクリーナユニット14とプロジェクタ71との間に位置することである。第2樹脂保持部13が初期位置から所定位置へ移動する過程で、シート16のうち、第2シート支持部24とローラ28との間に位置する箇所は、張力により略水平に保持されている。第2樹脂保持部13が初期位置から所定位置へ移動する過程で、シート16に光硬化樹脂B2が塗布され、シート16の上面に樹脂層E2が形成される。樹脂層E2の厚さは、例えば、0.01mm乃至0.5mmの範囲内である。
【0059】
[第2樹脂保持部13により形成された樹脂層へプロジェクタ光を照射する工程]
制御部75は、プロジェクタ71を制御することにより、プロジェクタ71からシート16の下面に向けてプロジェクタ光F1を照射させ、かつ、プロジェクタ光F1の照射位置を移動させる。プロジェクタ71からシート16の下面におけるプロジェクタ光F1の照射位置及びプロジェクタ光F1の照射タイミングは、立体造形物の断面パターンに応じて制御される。
【0060】
プロジェクタ光F1はシート16を厚さ方向に透過し、樹脂層E1のうちプロジェクタ光F1が照射された箇所が硬化し、第2造形層が形成される。その後、制御部75は、プロジェクタ71によるプロジェクタ光F1の照射を停止させる。第2造形層は、第1造形層G1と同じ高さに形成される場合と、第1造形層G1とは異なる高さに形成される場合と、がある。
【0061】
[第2造形層の洗浄工程(第1回目)、及びシートの洗浄工程]
制御部75は、第2樹脂保持部13を図9の所定位置から、第2の向きA2で移動させ、第2樹脂保持部13を図10の初期位置で停止させる。また、制御部75は、クリーナユニット14を、図9の第2位置から第1の向きA1で移動させ、かつ、クリーナユニット14を造形プレート15Aの下方を通過させた後、制御部75は、クリーナユニット14を図10に示す第1位置で停止させる。
【0062】
制御部75は、クリーナユニット14を第1の向きA1で移動させる過程で、ブラシ駆動モータ36を駆動させる。すると、洗浄液D1が付着したブラシ34,35が回転される。したがって、第1造形層G1の下に固着された第2造形層G2は、ブラシ34,35の外周面によって擦られ、第2造形層G2の表面が洗浄される。さらに、クリーナユニット14が第1の向きA1で移動すると、シート16が第2貯留室44内の洗浄液D1により洗浄され、かつ、シート16がワイパ61,62,63,64により擦られる。したがって、シート16に残留している光硬化樹脂B2が除去される。
【0063】
[シートの洗浄工程、吸引工程(第1回目)及び温風の吹き付け工程(第1回目)]
制御部75は、クリーナユニット14を、図10の第1位置から第2の向きA2で移動させ、かつ、クリーナユニット14を造形プレート15Aの下を通過させた後、制御部75は、クリーナユニット14を図11に示す第1位置で停止させる。クリーナユニット14が第2の向きA2で移動する過程で、ワイパ37,38の先端が第2造形層G2を擦り、余剰分の樹脂、及び硬化していない樹脂等を掻き落とす(除去する)。ワイパ37,38により掻き落とされた樹脂は、空気と共に吸引口53,54へ吸引される。
【0064】
さらに、制御部75は、クリーナユニット14を第2の向きA2で移動させる過程で、温風ユニット74を駆動させる。温風ユニット74から吐出される温風は第2造形層G2へ吹き付けられ、第2造形層G2の乾燥及び硬化が促進される。また、第1造形層G1及び第2造形層G2、造形プレート15Aの下面に付着している洗浄液が、温風により吹き飛ばされる。なお、制御部75は、クリーナユニット14を第2の向きA2で移動させる過程において、ブラシ駆動モータ36を停止させている。つまり、ブラシ34,35は、停止されている。さらに、クリーナユニット14が第2の向きA2で移動する過程で、シート16の一部は、第2貯留室44内の洗浄液D1により洗浄される。
【0065】
[第2造形層の吸引工程(第2回目)、温風の吹き付け工程(第2回目)及びシートの洗浄工程]
制御部75は、クリーナユニット14を、図11に示す第2位置から第1の向きA1で移動させ、かつ、制御部75は、クリーナユニット14を図10に示す第1位置で停止させる。クリーナユニット14が第1の向きA1で移動される過程において、前述と同様の原理により、掻き落とされなかった樹脂及び洗浄液の吸引と、温風吹き付けとが行われる。さらに、クリーナユニット14が第1の向きA1で移動すると、シート16の長手方向の一部が、第2貯留室44内の洗浄液D1により洗浄される。
【0066】
以後、光造形装置10において第1工程と第2工程とが交互に繰り返されると、第1造形層G1と第2造形層G2とが交互に重ねられる。なお、第1工程を行う場合、予め、第1樹脂保持部12は初期位置に停止され、第2樹脂保持部13は初期位置に停止され、クリーナユニット14は、第1位置に停止される。また、第2工程を行う場合、予め、第1樹脂保持部12は初期位置に停止され、第2樹脂保持部13は初期位置に停止され、クリーナユニット14は、第2位置に停止される。
【0067】
[他の工程例]
光造形装置10は、第2工程を先に行い、第2工程の次に第1工程を行うこともできる。また、光造形装置10は、第1工程を連続して複数回繰り返すことにより、第1造形層G1同士を重ねて成形することもできる。さらに、光造形装置10は、第2工程を連続して複数回繰り返すことにより、第2造形層G2同士を重ねて成形することもできる。さらに、光造形装置10においては、第1工程と第2工程と前後して行うことにより、造形プレート15Aの下面に沿った平面方向に、第1造形層G1及び第2造形層G2を並べて形成することもできる。
【0068】
(実施形態の効果)
光造形装置10は、第1工程及び第2工程を実行すると、種類の光硬化樹脂B1,B2により立体造形物を生成することができる。また、光造形装置10は、前工程でシート16に付着した光硬化樹脂を、第2貯留室44内の洗浄液D1でシート16の表面から除去する。このため、次の工程でシート16の表面に光硬化樹脂を塗布する工程で、2種類の光硬化樹脂B1,B2がシート16の表面で混ざり合うことを抑制できる。したがって、立体造形物の成形品質の低下、及び成形精度の低下を抑制できる。
【0069】
さらに、光造形装置10は、第1造形層G1及び第2造形層G2をワイパ37,38でそれぞれ擦り、余剰分の樹脂を掻き落とすことができる。したがって、立体造形物の成形品質の低下、及び成形精度の低下を抑制できる。また、光造形装置10は、第1造形層G1及び第2造形層G2に温風を吹き付けて、第1造形層G1及び第2造形層G2の乾燥を促進できる。さらに、光造形装置10は、余剰分の樹脂、及び第1造形層G1及び第2造形層G2に付着した洗浄液を、吸引口53,54で吸引して除去できる。したがって、立体造形物の成形品質の低下、及び成形精度の低下を抑制できる。
【0070】
さらに、第1貯留室43内の洗浄液D1の液位が、供給管56の上端を超えると、第1貯留室43内の洗浄液D1は、自重で供給管56内を通って第2貯留室44へ落下する。第2貯留室44内のワイパ61,62,63,64は、シート16に残留している光硬化樹脂B1,B2を掻き落とし、かつ、第2貯留室44内の洗浄液D1は、シート16を洗浄する。第2貯留室44内の洗浄液D1の液位が、排液管68の上端より高くなると、第2貯留室44内の洗浄液D1が、自重で排液管68を通って濾過タンク39の上部室66へ落下する。
【0071】
上部室66の洗浄液D1は、自重で濾過フィルタ65を通って下部室67へ至る。濾過フィルタ65は、洗浄液D1に含まれる異物、例えば、塵埃、硬化した樹脂の余剰分、シート16から掻き落とされた光硬化樹脂B1,B2の残留分等を捕捉する。したがって、異物を除去した洗浄液D1を、濾過タンク39から供給管69を介して第1貯留室43へ供給できる。また、洗浄液D1は、第1貯留室43から第2貯留室44を介して濾過タンク39に送られる。濾過タンク39の下部室67の洗浄液D1は、ポンプ40により第1貯留室43へ送られる。つまり、洗浄液D1が、第1貯留室43、第2貯留室44及び濾過タンク39内で循環する。したがって、外部から光造形装置10へ洗浄液を補給する頻度を低減できる。
【0072】
(補足説明)
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。光造形装置10は、光造形装置の一例である。光硬化樹脂B1は、第1光硬化樹脂の一例であり、光硬化樹脂B2は、第2光硬化樹脂の一例である。第1樹脂保持部12及び第2樹脂保持部13は、樹脂保持部の一例である。プロジェクタ71は、光照射部の一例である。造形物支持部84は、造形物支持部の一例である。第1造形層G1及び第2造形層G2は、造形層の一例である。ローラ18は、第1張力付与部材の一例である。ローラ28は、第2張力付与部材の一例である。ガイドレール11は、ガイド部の一例である。クリーナユニット14は、洗浄部の一例である。第1貯留室43は、第1貯留室の一例であり、第2貯留室44は、第2貯留室の一例である。ブラシ34,35は、ブラシの一例である。温風ユニット74は、温風部の一例である。ワイパ37,38は、異物除去具の一例である。吸引機55は、吸引機の一例である。濾過部83は、濾過部の一例である。供給管56は、供給管の一例である。
【0073】
本実施形態は、図面を用いて開示されたものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1樹脂保持部、第2樹脂保持部及び洗浄部を移動可能に支持するガイド部は、第1樹脂保持部、第2樹脂保持部及び洗浄部の側方に略水平に設けられていてもよい。また、第1樹脂保持部、第2樹脂保持部及び洗浄部を移動可能に支持するガイド部は、それぞれ別々に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示は、シートに塗布された光硬化樹脂に光を照射して光硬化樹脂を硬化させることにより、立体造形物を生成する光造形装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10…光造形装置、11…ガイドレール、12…第1樹脂保持部、13…第2樹脂保持部、14…クリーナユニット、18,28…ローラ、34,35…ブラシ、37,38…ワイパ、43…第1貯留室、44…第2貯留室、55…吸引機、56…供給管、71…プロジェクタ、74…温風ユニット、83…濾過部、84…造形物支持部、B1,B2…光硬化樹脂、G1…第1造形層、G2…第2造形層
図1
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図12