(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062602
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】加熱調理方法及び加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20240501BHJP
F24C 15/16 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
F24C1/00 380J
F24C15/16 B
F24C1/00 310B
F24C1/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170557
(22)【出願日】2022-10-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年2月15日~令和4年2月18日に第22回 厨房設備機器展にて公開 令和4年3月9日~令和4年3月11日に第1回 フードテックジャパン[大阪]にて公開 令和4年6月7日~令和4年6月10日にFOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)にて公開 令和4年9月28日~令和4年9月30日にフードシステムソリューション(F-SYS)2022にて公開 令和4年10月12日~令和4年10月14日に第12回 農業Weekにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】390007456
【氏名又は名称】株式会社中西製作所
(72)【発明者】
【氏名】込山 智樹
(57)【要約】
【課題】扉部を開けたときの調理室内の温度低下を抑制する加熱調理方法及び加熱調理装置を提供する。
【解決手段】調理室の正面側に有する扉部と、調理室の壁面の一部に沿うように設け、壁面との間に間隙を形成する加熱プレートと、間隙内に位置させ、調理室内の流体と、調理室の壁面及び加熱プレートとを加熱する加熱手段と、調理物を調理室内で配置する配置手段とを備え、加熱手段により、調理室の壁面及び加熱プレートを加熱するとともに、調理室内の流体の温度を、所定の温度まで加熱し、扉部を開けて形成される調理室の開口から調理物を調理室内に配置するときに、調理室内で比較的温度の高い流体を間隙に滞留させ、調理室内へと調理物を配置して扉部を閉め、間隙に滞留させた流体及び加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した調理室内の流体を加熱し、加熱された流体により調理物を加熱調理するものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の略密閉した状態の調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理方法において、
前記調理室の壁面と、前記調理室の壁面の一部に沿うように設けた加熱プレートとの間に間隙を形成し、前記間隙内に位置させた加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱する加熱ステップと、
前記調理室の正面側に有する扉部を開けて形成される前記調理室の開口から、前記加熱ステップで加熱した流体が流動する前記調理室内へと調理物を配置して、前記扉部を閉める配置ステップと、
前記配置ステップで前記調理室内へと配置した調理物を、前記加熱ステップで加熱した流体で加熱調理する加熱調理ステップと、
前記加熱調理ステップで加熱調理した調理物を、前記扉部を開けて前記調理室の開口から取り出す取り出しステップと、
を含み、
前記配置ステップでは、
前記扉部を開けたとき、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉めた後、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱調理ステップで前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とする加熱調理方法。
【請求項2】
調理室内へと蒸気を供給する蒸気供給ステップをさらに備え、
前記蒸気供給ステップを行いつつ、前記蒸気供給ステップで調理室内へと供給した流体である蒸気を所定の温度に加熱する加熱ステップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理方法。
【請求項3】
加熱ステップでは、
蒸気供給ステップで調理室内へと供給した蒸気を、前記調理室の奥側壁面に沿って下方に流動させ、
前記奥側壁面側から、前記調理室の底面に沿うように設けた加熱プレートである下加熱プレートと、前記調理室の底面と、扉部側の一辺を前記底面側に折り返して下端の一辺を前記底面へと当接させた下折返し部と、により前記扉部側を略閉鎖して形成した下滞留部内へと蒸気を流動させて滞留させ、
前記下滞留部内に位置させた加熱手段である下加熱手段により蒸気を加熱して過熱水蒸気とする
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱調理方法。
【請求項4】
蒸気供給ステップを行いつつ、加熱調理ステップを行い、
前記蒸気供給ステップを、前記加熱調理ステップを行っている間に停止する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の加熱調理方法。
【請求項5】
直方体形状の略密閉された調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理装置において、
前記調理室の正面側に有する扉部と、
前記調理室の壁面の一部に沿うように設け、前記調理室の壁面との間に間隙を形成する加熱プレートと、
前記間隙内に位置させ、前記調理室内の流体を所定の温度に加熱するとともに、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱する加熱手段と、
載置された調理物を、前記調理室内で配置する配置手段と、
を備え、
前記加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱し、
前記扉部を開けて形成される調理室の開口から調理物を前記調理室内に配置するときに、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉め、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とする加熱調理装置。
【請求項6】
調理室内の天面に沿うように設け、前記調理室の天面との間に間隙を形成する加熱プレートである上加熱プレートと、
前記間隙内に位置させた加熱手段である上加熱手段と、を備え、
前記上加熱プレートは、扉部側の一辺を前記調理室内の天面側に折り返した上折返し部を有し、
扉部を開けて調理物を前記調理室内に配置するとき、前記上折返し部により、前記扉部を開けたときに形成される前記調理室の開口から、前記間隙に滞留させた前記調理室内で比較的温度の高い流体が大気中へと流出してしまうことを抑制する
ことを特徴とする請求項5に記載の加熱調理装置。
【請求項7】
調理室内の底面に沿うように設け、前記調理室の底面との間に間隙を形成する加熱プレートである下加熱プレートと、
前記間隙内に位置させた加熱手段である下加熱手段と、を備え、
前記下加熱プレートは、扉部側の一辺を前記調理室内の底面側に折り返した下折返し部を有し、
扉部を開けて調理物を前記調理室内に配置するとき、前記下折返し部により、前記扉部を開けたときに形成される前記調理室の開口から、前記間隙に滞留させた前記調理室内で比較的温度の高い流体が大気中へと流出してしまうことを抑制する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の加熱調理装置。
【請求項8】
調理室内の奥側に、供給口から下方に向けて前記調理室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記調理室のいずれかの壁面で、前記蒸気供給部の供給口よりも上方に位置して、前記調理室内の流体を前記調理室外へと排気する排気口と、
を備え、
前記蒸気供給部から供給する蒸気を、下加熱プレートと前記調理室内の底面との間に形成する間隙へと流動させて、下加熱手段により加熱する
ことを特徴とする請求項7に記載の加熱調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理方法及び加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バッチ式の加熱調理装置において、調理室内に供給した熱風や蒸気、過熱水蒸気等の流体により調理物を調理する際、予備的に調理室内を所定の温度に加熱した流体で満たすとともに調理室内を加熱し、扉部を開けて調理物を調理室内へと配置し、扉部を閉めて調理物の加熱調理をしていた。
【0003】
そのようなバッチ式の加熱調理装置では、調理室内に調理物を配置する際に、扉部を開けることにより形成される開口を通じて、調理室内の所定の温度に加熱された流体が大気中へと流出してしまい、調理室内には常温の大気が流入して調理室内の流体の温度、及び調理室内の温度が低下していた。
【0004】
これにより、調理物を調理室内に配置した後には調理室内の温度が低下してしまい、調理物を所定の温度の流体で加熱調理することが困難となってしまうという課題があった。
【0005】
特許文献1に記載されたものは、内部に電気ヒータを設けたバッチ式の加熱調理器である。この加熱調理器には、調理室の扉部である主扉を分割して開閉できるようにした小さな扉である小扉を設けている。そして、調理室内へと調理物を配置するときには主扉を開閉することなく、小扉を開閉することにより、調理室内の加熱された流体が大気中へと流出すること、及び調理室内に常温の大気が流入することを抑制し、調理室内の温度が低下することを抑制する加熱調理器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された加熱調理器では、小扉を開閉して調理室内へと配置することのできる調理物は、小扉を開けたときに形成される開口よりも小さな調理物である必要がある。そのため、小扉を開けたときに形成される開口よりも大きな調理物を調理室内へ配置、若しくは調理室内から取り出す場合は、結局のところ主扉を開けなくてはならず、調理室内の温度を低下させてしまうという課題は解決されていなかった。
【0008】
本願では、扉部を開けたときの、調理室内の温度低下を抑制することができる加熱調理方法及び加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る加熱調理方法は、
直方体形状の略密閉した状態の調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理方法において、
前記調理室の壁面と、前記調理室の壁面の一部に沿うように設けた加熱プレートとの間に間隙を形成し、前記間隙内に位置させた加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱する加熱ステップと、
前記調理室の正面側に有する扉部を開けて形成される前記調理室の開口から、前記加熱ステップで加熱した流体が流動する前記調理室内へと調理物を配置して、前記扉部を閉める配置ステップと、
前記配置ステップで前記調理室内へと配置した調理物を、前記加熱ステップで加熱した流体で加熱調理する加熱調理ステップと、
前記加熱調理ステップで加熱調理した調理物を、前記扉部を開けて前記調理室の開口から取り出す取り出しステップと、
を含み、
前記配置ステップでは、
前記扉部を開けたとき、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉めた後、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱調理ステップで前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る加熱調理装置は、
直方体形状の略密閉された調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理装置において、
前記調理室の正面側に有する扉部と、
前記調理室の壁面の一部に沿うように設け、前記調理室の壁面との間に間隙を形成する加熱プレートと、
前記間隙内に位置させ、前記調理室内の流体を所定の温度に加熱するとともに、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱する加熱手段と、
載置された調理物を、前記調理室内で配置する配置手段と、
を備え、
前記加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱し、
前記扉部を開けて形成される調理室の開口から調理物を前記調理室内に配置するときに、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉め、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱調理方法及び加熱調理装置によれば、扉部を開けたときの、調理室内の温度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の加熱調理装置の全体的な構成を示す図で、(a)正面側斜視図、(b)背面パネルを取り除いた状態を示す背面側から見たブロック図。
【
図2】上記加熱調理装置の全体的な構成を示す右側面側から見たブロック図。
【
図3】
図1における正面側断面図であって、(a)A-A線における正面側断面図、(b)B-B線における正面側断面図。
【
図4】上記加熱調理装置の扉部を閉めた状態で、蒸気供給ステップを開始したときの様子、及び加熱ステップを行っている様子を示す右側面側から見たブロック図。
【
図5】上記加熱調理装置の扉部を開けた状態で、配置ステップを行っている様子を示す右側面側から見たブロック図。
【
図6】上記加熱調理装置の扉部を閉めた状態で、加熱調理ステップを行っている様子を示す右側面側から見たブロック図。
【
図7】上記加熱調理装置の扉部を開けた状態で、取り出しステップを行っている様子を示す右側面側から見たブロック図。
【
図8】上記加熱調理装置を用いた加熱調理方法のステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、
直方体形状の略密閉した状態の調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理方法において、
前記調理室の壁面と、前記調理室の壁面の一部に沿うように設けた加熱プレートとの間に間隙を形成し、前記間隙内に位置させた加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱する加熱ステップと、
前記調理室の正面側に有する扉部を開けて形成される前記調理室の開口から、前記加熱ステップで加熱した流体が流動する前記調理室内へと調理物を配置して、前記扉部を閉める配置ステップと、
前記配置ステップで前記調理室内へと配置した調理物を、前記加熱ステップで加熱した流体で加熱調理する加熱調理ステップと、
前記加熱調理ステップで加熱調理した調理物を、前記扉部を開けて前記調理室の開口から取り出す取り出しステップと、
を含み、
前記配置ステップでは、
前記扉部を開けたとき、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉めた後、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱調理ステップで前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とする加熱調理方法としたものである。
【0014】
これにより、扉部を開けて調理室内へと調理物を配置するときに、調理室内の流体が大気中へと流出して調理室内に常温の大気を流入させたとしても、調理室内で比較的温度の高い流体を調理室の壁面と加熱プレートとの間に設けた間隙に滞留させて、扉部を開けることによる調理室内の温度低下を抑制することができる。
【0015】
また、調理物を調理室内に配置して扉部を閉めた後には、間隙に滞留させていた調理室内で比較的温度の高い流体と、加熱された加熱プレートと、により調理室内の流体の温度を可能な限り短い時間で所定の温度まで加熱し、調理物を所定の温度の流体で加熱調理するまでの時間を可能な限り短くすることができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、
調理室内へと蒸気を供給する蒸気供給ステップをさらに備え、
前記蒸気供給ステップを行いつつ、前記蒸気供給ステップで調理室内へと供給した流体である蒸気を所定の温度に加熱する加熱ステップを行う
ことを特徴とする加熱調理方法としたものである。
【0017】
これにより、調理室内で調理物を加熱した蒸気により加熱調理することができ、調理物に合わせた多様な加熱調理を行うことができる。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、
加熱ステップでは、
蒸気供給ステップで調理室内へと供給した蒸気を、前記調理室の奥側壁面に沿って下方に流動させ、
前記奥側壁面側から、前記調理室の底面に沿うように設けた加熱プレートである下加熱プレートと、前記調理室の底面と、扉部側の一辺を前記底面側に折り返して下端の一辺を前記底面へと当接させた下折返し部と、により前記扉部側を略閉鎖して形成した下滞留部内へと蒸気を流動させて滞留させ、
前記下滞留部内に位置させた加熱手段である下加熱手段により蒸気を加熱して過熱水蒸気とする
ことを特徴とする加熱調理方法としたものである。
【0019】
これにより、調理室内へと供給した蒸気を下滞留部内に滞留させながら安定して過熱水蒸気へと加熱することができ、加熱調理ステップでは調理物を過熱水蒸気で加熱調理することができる。
【0020】
第4の発明は、第2又は3の発明において、
蒸気供給ステップを行いつつ、加熱調理ステップを行い、
前記蒸気供給ステップを、前記加熱調理ステップを行っている間に停止する
ことを特徴とする加熱調理方法としたものである。
【0021】
これより、多様な加熱調理に対応することができる。
【0022】
第5の発明は、
直方体形状の略密閉された調理室内で、調理物を加熱調理する加熱調理装置において、
前記調理室の正面側に有する扉部と、
前記調理室の壁面の一部に沿うように設け、前記調理室の壁面との間に間隙を形成する加熱プレートと、
前記間隙内に位置させ、前記調理室内の流体を所定の温度に加熱するとともに、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱する加熱手段と、
載置された調理物を、前記調理室内で配置する配置手段と、
を備え、
前記加熱手段により、前記調理室の壁面及び前記加熱プレートを加熱するとともに、前記調理室内の流体の温度を、調理物を加熱調理する温度である所定の温度まで加熱し、
前記扉部を開けて形成される調理室の開口から調理物を前記調理室内に配置するときに、前記調理室内で比較的温度の高い流体を前記間隙に滞留させ、
前記調理室内へと調理物を配置して前記扉部を閉め、前記間隙に滞留させた流体及び前記加熱された加熱プレートにより、常温の大気の流入により温度の低下した前記調理室内の流体を加熱し、前記加熱された流体により調理物を加熱調理する
ことを特徴とする加熱調理装置としたものである。
【0023】
これにより、扉部を開けて調理室内へと調理物を配置するときに、調理室内の流体が大気中へと流出して調理室内に常温の大気を流入させたとしても、調理室内で比較的温度の高い流体を調理室の壁面と加熱プレートとの間に設けた間隙に滞留させて、扉部を開けることによる調理室内の温度低下を抑制することができる。
【0024】
また、調理物を調理室内に配置して扉部を閉めた後には、間隙に滞留させていた調理室内で比較的温度の高い流体と、加熱された加熱プレートと、により調理室内の流体の温度を可能な限り短い時間で所定の温度まで加熱し、調理物を所定の温度の流体で加熱調理するまでの時間を可能な限り短くすることができる。
【0025】
第6の発明は、第5の発明において、
調理室内の天面に沿うように設け、前記調理室の天面との間に間隙を形成する加熱プレートである上加熱プレートと、
前記間隙内に位置させた加熱手段である上加熱手段と、を備え、
前記上加熱プレートは、扉部側の一辺を前記調理室内の天面側に折り返した上折返し部を有し、
扉部を開けて調理物を前記調理室内に配置するとき、前記上折返し部により、前記扉部を開けたときに形成される前記調理室の開口から、前記間隙に滞留させた前記調理室内で比較的温度の高い流体が大気中へと流出してしまうことを抑制する
ことを特徴とする加熱調理装置としたものである。
【0026】
これにより、調理室内で比較的温度の高い流体が集まりやすい調理室内の天面付近で間隙を形成することができる。そして、扉部を開けたときに、調理室内で比較的温度の高い流体をその間隙に滞留させたままとしやすくすることができる。
【0027】
第7の発明は、第5又は6の発明において、
調理室内の底面に沿うように設け、前記調理室の底面との間に間隙を形成する加熱プレートである下加熱プレートと、
前記間隙内に位置させた加熱手段である下加熱手段と、を備え、
前記下加熱プレートは、扉部側の一辺を前記調理室内の底面側に折り返した下折返し部を有し、
扉部を開けて調理物を前記調理室内に配置するとき、前記下折返し部により、前記扉部を開けたときに形成される前記調理室の開口から、前記間隙に滞留させた前記調理室内で比較的温度の高い流体が大気中へと流出してしまうことを抑制する
ことを特徴とする加熱調理装置としたものである。
【0028】
これにより、扉部を開けたときに、調理室の底面と下加熱プレートとの間に形成する間隙に、調理室内で比較的温度の高い流体を、滞留させたままとしやすくすることができる。
【0029】
第8の発明は、第7の発明において、
調理室内の奥側に、供給口から下方に向けて前記調理室内に蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記調理室のいずれかの壁面で、前記蒸気供給部の供給口よりも上方に位置して、前記調理室内の流体を前記調理室外へと排気する排気口と、
を備え、
前記蒸気供給部から供給する蒸気を、下加熱プレートと前記調理室内の底面との間に形成する間隙へと流動させて、下加熱手段により加熱する
ことを特徴とする加熱調理装置としたものである。
【0030】
これにより、調理室内へと供給した蒸気を下加熱プレートと調理室内の底面との間に形成する間隙へと流動させて、下加熱手段により加熱することができる。そして、調理物を加熱調理するのに適した温度の蒸気とすることができる。
【0031】
また、排気口が蒸気供給部の供給口よりも上方に位置するため、供給口から供給された蒸気が調理物を加熱調理する前に調理室外へと排出されることを抑制し、調理室内へと供給した蒸気を無駄なく調理物の加熱調理に使用することができる。
【0032】
(実施形態1)
(加熱調理装置の構成)
まず、本発明の加熱調理装置1について、基本的な構成を説明する。
【0033】
図1(a)及び
図2に示すように、加熱調理装置1は、
板金により形成されたハウジング11内に直方体形状の調理室50を設け、調理室50の正面側に取手12aを把持することで開閉可能とした扉部12を有する本体部10と、
本体部10に備える機器と接続し、接続した機器の制御を制御手段21により行いつつ、表示手段22に各種情報を表示する制御部20と、
により構成される。
【0034】
(本体部)
本体部10は、
図2に示すように、
図示しない軟水器から給水配管36を通じて給水した軟水を貯水し、熱交換器34により加熱して蒸気を発生させる貯水槽30と、
貯水槽30で発生させた蒸気を、蒸気供給管41を通じて供給口42から調理室50内へと供給する蒸気供給部40と、
取手12aを把持して扉部12を開くことにより、調理物Wを載置した調理トレイ(配置手段)57を配置し、扉部12を閉めて蒸気を加熱することで生成した過熱水蒸気により調理物Wを加熱調理する調理室50と、
調理室50内の過熱水蒸気や蒸気を、排気口82から、排気管81を通じて調理室50外へと排気する排気部80と、
調理室50内で発生した水分や油等を排出口92から、排出管91を通じて排出する排出部90と、
により構成される。
【0035】
また、
図1(a)に示すハウジング11は、本体部10に着脱自在に取り付けた背面パネル11aを有する。背面パネル11aの上部には、加熱調理装置1の背面側に開口する二つの排気部パネル11bを設けており、二つの排気部パネル11b内では、排気管81の上端が大気開放されている。
【0036】
なお、
図2、
図4~
図7は、図面の見やすさを考慮して背面パネル11aの記載を省略している。
【0037】
(貯水槽)
図1(b)に示すように、加熱調理装置1の本体部10の背面側には、バルブ37を開放し、図示しない軟水器から給水配管36を通じて給水した軟水を貯水する貯水槽30を備える。
【0038】
図2に示すように、貯水槽30は、給水した軟水の水位を検知する水位センサ(センサ)33と、軟水の温度を検知する第1の温度センサ(センサ)35、貯水槽30に貯水した軟水を所定の温度、例えば60度C~100度Cに加熱する、例えばシーズヒータである熱交換器34と、バルブ39を開放することにより貯水槽30内に貯水した軟水を排水する排水管38と、を有している。
【0039】
また、貯水槽30に被さり固定された蓋31には、熱交換器34により軟水を加熱することで発生させた蒸気を、蒸気供給部40へと流動させるための開口である蒸気口32を有する。
【0040】
なお、貯水槽30に貯水する軟水は、熱交換器34により加熱して蒸発させたときに、カルシウムやマグネシウム等のスケールが貯水槽30内に残りにくい水であればよく、他の水、例えば純水等でもよい。
【0041】
(蒸気供給部)
蒸気供給部40は、貯水槽30に貯水した軟水を熱交換器34により加熱して発生させた蒸気を、蒸気口32から接続する蒸気供給管41を通じて、調理室50内の奥側に設けた供給口42から下方に向けて調理室50内へと供給する。
【0042】
(調理室)
図2及び
図3に示すように、直方体形状の調理室50は、正面側の開口50aを閉鎖する扉部12と、板金により形成された壁面である天面(壁面)51、奥側壁面(壁面)52、左側壁面(壁面)53、右側壁面(壁面)54、底面(壁面)55により囲まれている。
【0043】
そして、左側壁面53の扉部12側及び奥側壁面52側と、右側壁面54の扉部12側と奥側壁面52側とに、同じ高さ位置で計4つの断面L字状の係止手段56を設けている。最上段の係止手段56には上加熱プレート(加熱プレート)62を、最下段の係止手段56には下加熱プレート(加熱プレート)72を着脱自在に係止する。
【0044】
上加熱プレート62及び下加熱プレート72は、上面視略矩形状の調理室50の壁面52,53,54及び開口50aに沿うように設けた略矩形状の例えば金属製のプレートである。なお、調理室50が上面視で略矩形状以外の形状をしている場合は、上加熱プレート62及び下加熱プレート72は、その調理室50の壁面52,53,54及び開口50aに沿うような形状とするとよい。
【0045】
また、最上段の係止手段56と最下段の係止手段56との間に位置する係止手段56には、例えば金属製の調理トレイ57を着脱自在に係止する。なお、
図2では1つの調理トレイ57を係止手段56に係止しているが、複数枚の調理トレイ57をそれぞれの係止手段56に係止してもよい。
【0046】
また、調理室50は、天面51と上加熱プレート62との間に上加熱手段(加熱手段)61と、底面55と下加熱プレート72との間に下加熱手段(加熱手段)71と、を備える。上加熱手段61及び下加熱手段71は電気式のヒータ、例えばシーズヒータである。
【0047】
図2に示すように、調理室50内を右側面側から見ると、上加熱プレート62及び下加熱プレート72は、奥側壁面52との間に、流体が流通することのできる隙間を形成している。また、調理トレイ57と扉部12との間、及び調理トレイ57と奥側壁面52との間にも、流体が流通することのできる隙間を形成している。
【0048】
上加熱プレート62の扉部12側には、上加熱プレート62の一辺を天面51側に折り返した上折返し部(折返し部)62aを設け、上折返し部62aの上端と天面51との間には、接しない程度に隙間を設けている。そして、天面51と、上加熱プレート62及び上折返し部62aと、左側壁面53及び右側壁面54とにより、奥側壁面52側を開放し、扉部12側と左側壁面53側及び右側壁面54側とを略閉鎖した上滞留部(滞留部)60を形成する。
【0049】
下加熱プレート72の扉部12側には、下加熱プレート72の一辺を底面55側に折り返した下折返し部(折返し部)72aを設け、下折返し部72aの下端の一辺は、調理室50の底面55の扉部12側で上方に隆起した隆起部(壁面)55aに接している。そして、底面55及び隆起部55aと、下加熱プレート72及び下折返し部72aと、左側壁面53及び右側壁面54とにより、奥側壁面52側を開放し、扉部12側と左側壁面53側及び右側壁面54側とを略閉鎖した下滞留部(滞留部)70を形成する。
【0050】
なお、本実施形態でいう「略閉鎖する」とは、一方側を開放し、他方側に小さな隙間、例えば製作上の寸法誤差による微少な寸法から数ミリメートルの隙間を有した状態で袋小路となるように形成した状態を意味する。
【0051】
なお、「略閉鎖する」と記載した場合であっても、一方側を開放し、他方側には隙間を有さない状態で袋小路となるように構成してもよい。
【0052】
なお、上加熱プレート62及び下加熱プレート72の形状は、上面視略矩形状で奥側壁面52側を開放する構成で説明したが、これに限定されない。例えば、上面視で左側壁面53側及び右側壁面54側が奥側壁面52側へと延出して、奥側壁面52側が部分的に開放して流体が流通することができる隙間を形成するよう、上面視コ字形状としてもよい。なお、上加熱プレート62、下加熱プレート72のいずれか一方のみを上面視コ字形状としてもよい。
【0053】
また、調理室50内には、上加熱プレート62と蒸気供給管41の供給口42との間の高さ位置で、調理室50内の流体、例えば過熱水蒸気や蒸気等の流体の温度を検知する第2の温度センサ(センサ)58を設けている。加えて、天面51と上加熱プレート62との間に位置するように第3の温度センサ(センサ)63、底面55と下加熱プレート72との間に位置するように第4の温度センサ(センサ)73を設けている。
【0054】
なお、本実施形態では、最上段の係止手段56に上加熱プレート62、最下段の係止手段56に下加熱プレート72、最上段の係止手段56と最下段の係止手段56との間の高さ位置に位置する係止手段56に調理トレイ57を係止したが、上加熱プレート62及び下加熱プレート72と、調理トレイ57とは、異なる高さ位置の係止手段56に係止させてもよい。
【0055】
つまり、最上段よりも下方の係止手段56に上加熱プレート62を係止してもよいし、最下段よりも上方の係止手段56に下加熱プレート72を係止してもよい。また、調理トレイ57を最上段又は最下段の係止手段56に係止してもよい。これにより、調理物Wに合わせた多様な加熱調理を行うことができる。
【0056】
(排気部)
図2及び
図3(b)に示すように、排気部80は、調理室50内の過熱水蒸気や蒸気を調理室50外へと排気する排気口82を、天面51と上加熱プレート62との間の高さ位置で、奥側壁面52の左右両側壁面53,54側に有している。また、排気口82は、蒸気供給部40の供給口42よりも上方となる高さ位置に設けられている。
【0057】
排気口82は調理室50外へと続く排気管81へと通じており、排気口82より上方に向けて延出した排気管81の上端は、排気部パネル11bの内部で大気開放されている。排気部パネル11bは加熱調理装置1の背面側に開口しているため、排気管81から排気された過熱水蒸気や蒸気が加熱調理装置1の正面側に立つ作業者へと向けて流動しないようにしており、これにより作業者が安全に作業をすることができる。
【0058】
なお、排気管81は加熱調理装置1を設置する施設の排気設備へと接続するよう構成してもよい。これにより、調理室50内の過熱水蒸気や蒸気を、排気口82から加熱調理装置1を設置する施設の排気設備へと接続する排気管81を通じて調理室50外へと排気し、加熱調理装置1を配置する施設の作業環境を保全することができる。
【0059】
(排出部)
図2に示すように、排出部90は、調理室50で発生した水分や油等を、排出管91を通じて調理室50外へと排出するための排出口92を、調理室50の底面55に有する。排出管91に設けたバルブ93を開放することにより、排出口92から、排出管91を通じて調理室50内の水分や油等を調理室50外へと排出することができる。
【0060】
(制御部)
図1(a)に示すように、制御部20は、
加熱調理装置1に備える各センサからの情報の受け取り、加熱手段及び熱交換器等の運転及び停止、バルブの開閉、その他運転制御を行う制御手段21と、
各センサから受け取った情報や、制御手段21により演算した結果を表示するとともに、加熱調理の運転及び停止、加熱調理する温度である所定の温度の設定等の操作を行うタッチパネルである表示手段22と、
により構成される。
【0061】
なお、本実施形態の加熱調理装置1で調理物Wを加熱調理しないときには、調理室50内に着脱自在に係止した上加熱プレート62及び下加熱プレート72と、調理トレイ57とを調理室50内から取り外し、別途用意した給水設備により調理室50内を洗浄することができる。
【0062】
これにより、調理物Wの調理を行った際に調理室50内が汚れたとしても、調理室50内の部材を取り外して容易に清掃することができ、清潔に加熱調理装置1を使用することができる。調理室50内を洗浄した洗浄水は、排出部90のバルブ93を開放することで、調理室50の底面55に有する排出口92から、排出管91を通じて調理室50外へと排出することができる。
【0063】
(加熱調理方法)
次に、加熱調理装置1により調理物Wを加熱調理する方法について説明する。
【0064】
なお、本実施形態では「調理室内の温度低下を抑制する」という記載は、調理室50内に流動する流体の種類が変化することには関係がなく、調理室50内に流動する流体の温度が高いものから低いものに変化することを抑制する、という意味を表す。
【0065】
図8に示すように、加熱調理方法は、
給水配管36を通じて貯水槽30に軟水を貯水し、貯水した軟水を熱交換器34により加熱して発生させた蒸気を、調理室50内へと供給する蒸気供給ステップS100と、
蒸気供給ステップS100を行いつつ、調理室50内へと供給した蒸気を、上加熱手段61及び下加熱手段71で所定の温度まで加熱することにより過熱水蒸気とし、過熱水蒸気を調理室50内に略充満させる加熱ステップS200と、
蒸気供給ステップS100を行いつつ、扉部12を開けて、調理室50内へと調理物Wを配置し、扉部12を閉める配置ステップS300と、
蒸気供給ステップS100を行いつつ、配置ステップS300で調理室50内に配置した調理物Wを加熱調理する加熱調理ステップS400と、
蒸気供給ステップS100を行いつつ、扉部12を開けて、加熱調理ステップS400で加熱調理した調理物Wを、調理室50内から取り出す取り出しステップS500と、
により構成される。
【0066】
(蒸気供給ステップ)
最初に行う蒸気供給ステップS100について説明する。
【0067】
まず、
図4に示すように、調理トレイ57を調理室50内から取り外した状態で扉部12を閉め、制御手段21により給水配管36のバルブ37を開放し、黒塗り矢印で示すように、図示しない軟水器から給水配管36を通じて貯水槽30へ所定の水位となるまで軟水を貯水する。
【0068】
所定の水位となるまで軟水が貯水されると、貯水槽30の水位センサ33が軟水の水位を検知し、制御手段21へと信号を送る。そして、制御手段21はその信号を受け取ると、バルブ37を閉鎖して貯水槽30への給水を停止する。
【0069】
軟水が所定の水位まで貯水槽30に貯水された後に、制御手段21は熱交換器34を運転する。熱交換器34は貯水槽30に貯水した軟水を加熱して蒸気を発生させ、貯水槽30に被さり固定された蓋31に有する蒸気口32から、発生させた蒸気を
図4に示す白抜き矢印で示すように蒸気供給管41を通じて調理室50内へと流動させる。
【0070】
なお、制御手段21は熱交換器34を運転する際に、熱交換器34の出力を制御してもよい。これにより、調理物Wの調理方法に合わせて供給する蒸気の量を調整することができ、調理物に合わせた多様な加熱調理を行うことができる。
【0071】
図8に示すように、ここで説明した蒸気供給ステップS100は、取り出しステップS500を終えるまで継続する。その継続途中で貯水槽30に貯水した軟水の水位が所定の水位よりも下方となったときには、制御部20はバルブ37を開放して給水配管36を通じて貯水槽30へと軟水を貯水する。
【0072】
なお、
図4~
図7に示す白抜き矢印は、蒸気又は過熱水蒸気の流れを示す。
【0073】
(加熱ステップ)
次に、蒸気供給ステップS100を行いつつ開始する加熱ステップS200について説明する。
【0074】
図4に示すように、蒸気供給ステップS100を行いつつ、制御手段21により上加熱手段61及び下加熱手段71を運転する。上加熱手段61及び下加熱手段71を運転すると、調理室50内に供給された蒸気を加熱するとともに、上加熱プレート62及び下加熱プレート72と、調理室50の壁面とが加熱される。
【0075】
蒸気供給ステップS100にて蒸気口32から蒸気供給管41へと流動した蒸気は、供給口42から調理室50内へと流動する。そして、調理室50内の奥側で下方に流動し、その一部は下加熱プレート72と奥側壁面52との間の隙間を通じて、下加熱プレート72と底面55との間の間隙である下滞留部70内へと流動する。
【0076】
下滞留部70は、底面55及び隆起部55aと、下加熱プレート72及び下折返し部72aと、左側壁面53及び右側壁面54とにより、奥側壁面52側を開放し、扉部12側と左側壁面53側及び右側壁面54側とを略閉鎖した構成となっている。そして、下滞留部70内には下加熱手段71が位置しているため、下滞留部70内へと流動した蒸気を安定して加熱し、過熱水蒸気とすることができる。
【0077】
下滞留部70内で蒸気を加熱して生成した過熱水蒸気は、下加熱プレート72と、左側壁面53及び右側壁面54との間の隙間を通じて、調理室50内へと広がっていく。
【0078】
また、下滞留部70内へと流動せず、下加熱プレート72の上方を下加熱プレート72により加熱されながら正面側へと流動し、扉部12付近で上方へと流動した過熱水蒸気と、過熱水蒸気にならなかった蒸気の一部は、上加熱プレート62の下面に沿って上加熱プレート62に加熱されながら調理室50内を奥側へと流動する。
【0079】
そして、
図4で見た場合に調理室50内を右回転で流動する過熱水蒸気と、過熱水蒸気にならなかった蒸気の一部は、上加熱プレート62と奥側壁面52との隙間を流動して、調理室50の奥側壁面52の上部に有する排気口82から排気管81を通じて調理室50外へと排気される。また、他の一部は、正面側へと流動して、上加熱プレート62と天面51との間の間隙である上滞留部60内へと流動する。
【0080】
上滞留部60は、天面51と、上加熱プレート62及び上折返し部62aと、左側壁面53及び右側壁面54とにより、奥側壁面52側を開放し、扉部12側と左側壁面53側及び右側壁面54側とを略閉鎖した構成となっている。そして、上滞留部60内には上加熱手段61が位置しているため、上滞留部60内へと流動した過熱水蒸気にならなかった蒸気を安定して加熱して、過熱水蒸気とすることができる。
【0081】
上滞留部60内で過熱水蒸気にならなかった蒸気を加熱して生成した過熱水蒸気は、上加熱プレート62と、左側壁面53及び右側壁面54との間の隙間を通じて、調理室50内へと広がっていく。
【0082】
このようにして、加熱ステップS200では調理室50内を
図4で見た場合に、調理室50内へと供給された蒸気を右回転で流動させて下滞留部70に滞留させてより安定して加熱して過熱水蒸気とし、過熱水蒸気とならなかった蒸気を上滞留部60へと流動させて安定して加熱して過熱水蒸気とし、調理室50内に過熱水蒸気を略充満させることができる。また、調理室50へは継続的に蒸気が供給されているが、調理室50内の体積を超える量の過熱水蒸気及び蒸気を、排気口82から排気管81を通じて調理室50外へと排気することができる。
【0083】
供給口42から供給され調理室50内を下方へと流動する蒸気により、調理室50内の流体の流動を促し、下滞留部70及び上滞留部60へと流体を略充満させるとともに、調理室50内の流体の温度の均一化を促進することができる。
【0084】
なお、本実施形態でいう「略充満させる」とは、調理室50内を過熱水蒸気で満たし、調理室50内に存在する空気の量を5%以下とし、存在する酸素の量を1%以下とすることを意味する。これにより、調理室50内に略充満した過熱水蒸気により調理物Wを加熱調理することができ、調理物Wに含まれる油の酸化、及び調理物Wに含まれるビタミンCの破壊を抑制して、美味しく加熱調理された調理物Wを製造することができる。
【0085】
そして、第2の温度センサ58により検知する調理室50内の過熱水蒸気の温度が、調理物Wを加熱調理する温度である所定の温度、例えば100~370度Cとなるまで加熱する。なお、本実施形態でいう「所定の温度」は、あらかじめ加熱調理を行う作業者により決定された調理物Wを加熱調理する温度であるとともに、調理室50内に供給された蒸気を過熱水蒸気へと加熱することのできる温度をいう。
【0086】
第2の温度センサ58により検知する温度である調理室50内の過熱水蒸気の温度が所定の温度まで加熱されたときに、制御手段21は表示手段22に、調理室50内が調理物Wの加熱調理に適した温度、つまり所定の温度となったことを表示する。
【0087】
また、本実施形態では、調理室50内の過熱水蒸気が所定の温度まで加熱された後は、あらかじめ用意した調理物Wの加熱調理を終えるまで、制御手段21により調理室50内の温度を所定の温度にある程度の幅をもたせた温度に維持するよう、上加熱手段61および下加熱手段71の運転と停止を制御する。
【0088】
(配置ステップ)
加熱ステップS200の次に行う配置ステップS300について説明する。
【0089】
図5に示すように、扉部12を開けて調理物Wを載置した調理トレイ57を調理室50内へと入れ、調理トレイ57を係止手段56に係止した後に扉部12を閉める。
【0090】
(加熱調理ステップ)
配置ステップS300の次に行う加熱調理ステップS400について説明する。
【0091】
図6に示すように、加熱調理ステップS400では、調理室50内で調理トレイ57に載置した調理物Wを過熱水蒸気により加熱調理する。
【0092】
具体的には、上加熱手段61により加熱された上加熱プレート62の放射熱により調理物Wを上方から加熱し、下加熱手段71により加熱された下加熱プレート72の放射熱により調理トレイ57を加熱して調理物Wを下方から加熱することができる。
【0093】
さらに、調理室50内に略充満させた過熱水蒸気により、調理物Wに含まれる油の酸化、及び調理物Wに含まれるビタミンCの破壊を抑制し、さらに調理物Wに水分を与えて調理物Wの乾燥を防ぎつつ、加熱調理することができる。
【0094】
これにより、加熱調理ステップS400では、調理物Wの乾燥を防ぎつつ、調理物Wをあらゆる方向から加熱調理し、調理物Wの加熱むらを抑制して意図した加熱調理を行うことができる。
【0095】
また、加熱調理ステップS400の間も蒸気供給ステップS100を継続しているため、調理室50内には蒸気供給部40の供給口42から蒸気が供給されている。そのため、調理物Wに付着、若しくは調理室50の壁面、上加熱プレート62及び下加熱プレート72、上加熱手段61及び下加熱手段71に接触して過熱水蒸気が消費されたとしても、継続的に供給される蒸気が加熱されて過熱水蒸気となるため、調理室50内を過熱水蒸気で略充満させた状態に維持することができる。
【0096】
調理室50内で消費されず、調理室50内を流動する過熱水蒸気は、調理室50の奥側壁面52の上部に有する排気口82から、排気管81を通じて調理室50外へと排気される。
【0097】
排気口82は蒸気供給部40の供給口42よりも上方に位置しており、かつ供給口42から供給する蒸気の流動方向は下向きとなっているため、供給口42から調理室50内へと供給された蒸気がそのまま排気口82へと向かうことを抑制することができる。そして、調理室50内へと供給された蒸気を加熱して過熱水蒸気とし、無駄なく調理物Wの加熱調理に使用することができる。
【0098】
(取り出しステップ)
加熱調理ステップS400の次に行う取り出しステップS500について説明する。
【0099】
図7に示すように、扉部12を開けて調理室50内から調理物Wを載置した調理トレイ57を取り出す。以上が、本実施形態の加熱調理装置1による加熱調理方法の基本的な流れである。
【0100】
(上滞留部及び下滞留部について)
次に、上滞留部60及び下滞留部70の具体的な作用効果について記載する。
【0101】
図4に示すように、本実施形態の加熱調理装置1は、調理室50内の上部には上滞留部60を形成し、調理室50内の下部には下滞留部70を形成している。
【0102】
上滞留部60内には上加熱手段61が位置しているため、上滞留部60に滞留している過熱水蒸気は効果的に加熱され、加熱ステップS200の間は、調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気が上滞留部60内に滞留することとなる。
【0103】
また、下滞留部70内には下加熱手段71が位置しているため、下滞留部70に滞留している過熱水蒸気は効果的に加熱され、加熱ステップS200の間は、調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気が下滞留部70内に滞留することとなる。
【0104】
上滞留部60内及び下滞留部70内に、調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気が滞留している状態で次のステップである配置ステップS300に移り、
図5に示すように扉部12を開けると、調理室50の開口50aを通じて調理室50内に略充満した過熱水蒸気は調理室50外へと流出し、調理室50内には常温の大気が流入する。
【0105】
しかし、本実施形態の加熱調理装置1では、上滞留部60の正面側に上折返し部62aを設けて天面51とで扉部12側を略閉鎖し、下滞留部70の正面側に下折返し部72aを設けて隆起部55aとで接して扉部12側を略閉鎖しているため、上滞留部60及び下滞留部70内に滞留する調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気が、調理室50の開口50aを通じて調理室50外へと流出してしまうのを抑制することができる。つまり、上滞留部60及び下滞留部70内に滞留する調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気を滞留させたままとしやすくすることができる。
【0106】
これらの作用により、配置ステップS300で調理室50内に過熱水蒸気が略充満している状態で扉部12を開けたときの、調理室50内の温度低下を抑制することができる。
【0107】
扉部12を閉めた後には、継続して行われる蒸気供給ステップS100により調理室50内へと蒸気が供給されるが、上滞留部60及び下滞留部70に滞留した過熱水蒸気と、加熱された上加熱プレート62及び下加熱プレート72と、上加熱手段61及び下加熱手段71と、により調理室50内へと供給される蒸気を可能な限り短い時間で所定の温度まで加熱することができる。
【0108】
これにより、次のステップである加熱調理ステップS400では、配置ステップS300から可能な限り短い時間で、所定の温度の過熱水蒸気により調理物Wを加熱調理することが可能となる。
【0109】
なお、
図2~
図7では上加熱手段61は上加熱プレート62との間に隙間を設けており、下加熱手段71は下加熱プレート72との間に隙間を設けているよう記載しているが、上加熱手段61及び上加熱プレート62、下加熱手段71及び下加熱プレート72はそれぞれ接していてもよい。
【0110】
これにより、上加熱手段61の熱は直接上加熱プレート62へと伝わり、下加熱手段71の熱は直接下加熱プレート72へと伝わるため、加熱調理ステップS400では、上加熱プレート62及び下加熱プレート72の放射熱により、効果的に調理物Wを加熱調理することができる。
【0111】
なお、本実施形態では、上加熱プレート62の上折返し部62aの上端と天面51との間には接しない程度に隙間を設けたが、上加熱プレート62を取り外さない、若しくは上加熱プレート62の上折返し部62aが天面51を擦ったとしても問題がない等の理由があれば、隙間を設けなくともよい。
【0112】
これにより、扉部12を開けたときに、上加熱プレート62の上折返し部62aの上端と天面51との間に設けた隙間から、上滞留部60に滞留する調理室50内で比較的温度の高い過熱水蒸気が調理室50の開口50aを通じて、調理室50外へと流出するのを、より効果的に抑制することができる。
【0113】
なお、下加熱プレート72の下折返し部72aの下端と底面55の隆起部55aとの間には、接しない程度に隙間を設けてもよい。
【0114】
なお、上加熱プレート62及び下加熱プレート72の表面にセラミックコーティングやセラミック溶射を施してもよい。これにより、上加熱手段61により加熱された上加熱プレート62及び下加熱手段71により加熱された下加熱プレート72からの遠赤外線の放射率を高くすることができ、放射熱による調理物W及び調理トレイ57の加熱をより効果的に行うことができる。
【0115】
なお、調理室50内の上部に上加熱手段61及び上加熱プレート62、下部に下加熱手段71及び下加熱プレート72を備えるよう記載したが、調理室50内の左側壁面53側に左加熱手段及び左加熱プレート、右側壁面54側には右加熱手段及び右加熱プレートを備えるよう構成してもよい。
【0116】
またさらに、左加熱プレートには左加熱プレートの扉部12側の一辺を左側壁面53側へと折り返した左折返し部を、右加熱プレートには右加熱プレートの扉部12側の一辺を右側壁面54側へと折り返した右折返し部を設けてもよい。
【0117】
これにより、配置ステップS300で調理室50内に過熱水蒸気が略充満している状態で扉部12を開けたときの、調理室50内の温度低下を抑制することができる。この場合、構成によっては係止手段56を左側壁面53及び右側壁面54に取付けられない場合はあるが、係止手段56は本実施形態で例示した以外の形状でもよいし、又は下加熱手段71や、下加熱プレート72及び下加熱手段71を備えない場合は、調理トレイ57を底面55の上に載置してもよい。
【0118】
なお、本実施形態では、蒸気供給ステップS100を行いつつ開始する加熱調理ステップS400では、調理室50内の状態を過熱水蒸気を略充満させた状態として記載したが、少なくとも、調理室50内に配置した調理物Wの周囲に、過熱水蒸気を略充満させた状態とすればよく、調理室50のあらゆる箇所で過熱水蒸気を略充満させた状態としなくともよい。
【0119】
つまり、調理物Wに接触する流体に含まれる空気の量を5%以下とし、存在する酸素の量を1%以下として、調理物Wに含まれる油の酸化、及び調理物Wに含まれるビタミンCの破壊を抑制しつつ加熱調理することができればよい。
【0120】
なお、本実施形態の加熱調理装置1はバッチ式であるため、一度の加熱調理ステップS400で全ての調理物Wが調理室50内に収まりきることは少なく、複数回にわたって同一種類の調理物Wを加熱調理する、若しくは異なる種類の調理物Wごとに分けて調理室50内へと配置して加熱調理する場合が多い。
【0121】
そのため、本実施形態の加熱調理装置1による加熱調理方法では、第2の配置ステップ、第2の加熱調理ステップ、第2の取り出しステップを行ってもよい。
【0122】
第2の配置ステップは、取り出しステップS500で調理物Wを載置した調理トレイ57を調理室50内から取り出した後に行う。扉部12が開いた状態であるので、加熱調理する調理物Wを載置した調理トレイ57を調理室50内へと入れて係止手段56に係止した後に、扉部12を閉める。
【0123】
この場合も、上滞留部60及び下滞留部70の作用により、調理室50内に過熱水蒸気が略充満している状態で扉部12を開けたときの、調理室50内の温度低下を抑制することができる。
【0124】
また、第2の配置ステップで扉部12を閉めた後には、所定の温度の過熱水蒸気が調理室50内に略充満した状態を可能な限り短い時間で作り出すことができる。そして、次のステップである第2の加熱調理ステップでは、第2の配置ステップから可能な限り短い時間で、所定の温度の過熱水蒸気により調理物Wを加熱調理することができる。
【0125】
なお、第2の取り出しステップの後、さらに引き続き、第3の配置ステップ、第3の加熱調理ステップ、第3の取り出しステップ等を行ってもよい。この場合も、同様の作用効果を発揮することができる。
【0126】
なお、本実施形態においては、
図8に示すように蒸気供給ステップS100を行いながら、加熱ステップS200、配置ステップS300、加熱調理ステップS400、取り出しステップS500を行っているが、いずれのステップも順番を変更する、若しくは行うタイミングや長さを変更してもよい。
【0127】
例えば、加熱調理ステップS400を行っている間に蒸気供給ステップS100を停止してもよい。その場合、制御手段21は貯水槽30に貯水した軟水の熱交換器34による加熱を停止する、又は貯水槽30に貯水した軟水を熱交換器34により加熱することにより発生した蒸気を逃がす配管を別途設けておき、蒸気を逃がす配管のバルブを開放した後に、調理室50内へと蒸気を供給する蒸気供給管41に新たに設けたバルブを閉鎖して、発生した蒸気を調理室50内へと流動しないようにするとよい。
【0128】
これにより、調理物Wに合わせた多様な調理を行うことができる。
【0129】
また、配置ステップS300及び/又は取り出しステップS500を行っている間に蒸気供給ステップS100を停止してもよい。
【0130】
これにより、取り出しステップS500の前に調理室50内へと蒸気を供給しないようにすることで、取り出しステップS500を行う際には、調理室50の開口50aから流出する過熱水蒸気による熱が扉部12を開けた作業者へと向かうことを抑制することができ、安全に加熱調理を行うことができる。
【0131】
なお、本実施形態において、加熱ステップS200で所定の温度を例えば100度C以下として、調理室50内で蒸気を過熱水蒸気へと加熱することなく調理物Wの蒸し調理を行ってもよい。これにより、加熱調理装置1の構成の変更を行わなくとも、調理物Wに合わせた多様な調理、例えば調理物Wの蒸し調理を行うことができる。
【0132】
なお、本実施形態では調理物Wを加熱調理する流体の代表として過熱水蒸気及び蒸気を例示したが、その他にも流体として、加熱された空気である熱風や、アクアガス(登録商標)等を使用してもよい。
【0133】
調理物Wを加熱調理する流体として熱風を用いる場合は、蒸気供給ステップS100を行わなくてよい。すなわち、貯水槽30に貯水した軟水を熱交換器34により加熱しない。この場合でも、調理室50内の流体の温度を均一化するために、外気を蒸気供給部40で調理室50内へと取り込んで調理室50内の流体を流動させてもよい。そのために外気を吸い込んで調理室50内へと吐出するブロアやファン、及び吸い込んだ外気を加熱する加熱手段を、加熱調理装置1に備えるとよい。
【0134】
また、アクアガスを用いる場合は、公知の技術であるアクアガス生成装置等を貯水槽30の代わりに加熱調理装置1に組み込むとよい。
【符号の説明】
【0135】
1 加熱調理装置
10 本体部
11 ハウジング
11a 背面パネル
11b 排気部パネル
12 扉部
12a 取手
20 制御部
21 制御手段
22 表示手段
30 貯水槽
31 蓋
32 蒸気口
33 水位センサ(センサ)
34 熱交換器
35 第1の温度センサ(センサ)
36 給水配管
37 バルブ
38 排水管
39 バルブ
40 蒸気供給部
41 蒸気供給管
42 供給口
50 調理室
50a 開口
51 天面(壁面)
52 奥側壁面(壁面)
53 左側壁面(壁面)
54 右側壁面(壁面)
55 底面(壁面)
55a 隆起部(壁面)
56 係止手段
57 調理トレイ(配置手段)
58 第2の温度センサ(センサ)
60 上滞留部(滞留部)
61 上加熱手段(加熱手段)
62 上加熱プレート(加熱プレート)
62a 上折返し部(折返し部)
63 第3の温度センサ(センサ)
70 下滞留部(滞留部)
71 下加熱手段(加熱手段)
72 下加熱プレート(加熱プレート)
72a 下折返し部(折返し部)
73 第4の温度センサ(センサ)
80 排気部
81 排気管
82 排気口
90 排出部
91 排出管
92 排出口
93 バルブ
W 調理物
S100 蒸気供給ステップ
S200 加熱ステップ
S300 配置ステップ
S400 加熱調理ステップ
S500 取り出しステップ