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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062608
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】電動化コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20240501BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20240501BHJP
   A01D 69/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A01D41/12 E
A01D69/00 301
A01D69/02
A01D41/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170565
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】木下 健朗
(72)【発明者】
【氏名】上田 光瑠
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】周防 僚太
(72)【発明者】
【氏名】山田 信芳
(72)【発明者】
【氏名】板山 真
(72)【発明者】
【氏名】景浦 宏一
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
(72)【発明者】
【氏名】原 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 大輔
【テーマコード(参考)】
2B074
2B076
【Fターム(参考)】
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA03
2B074CD10
2B074CH01
2B074DA05
2B074DC02
2B074DE03
2B074DF07
2B076AA03
2B076BA04
2B076BB03
2B076CC02
2B076DA19
2B076EC23
2B076ED21
2B076ED30
(57)【要約】
【課題】本発明は、コンバインを電動化するにあたって、重量の重いバッテリーを走行車体にバランスよく搭載して柔らかい圃場を安定して走行して収穫作業が行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】走行装置1を装着した走行車体2上の原動部3を除く脱穀装置4とグレンタンク5底部側の略全面にバッテリースペース15を設け、該バッテリースペース15に多数の薄型バッテリーユニットB1、・・・を側方からスライド挿入して装着し、バッテリースペース15の側枠13L、13RにバッテリーユニットB1、・・・にエアーを吹き付けるエアーノズル12を設けた電動化コンバインとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)を装着した走行車体(2)上の原動部(3)を除く脱穀装置(4)とグレンタンク(5)底部側の略全面にバッテリースペース(15)を設け、該バッテリースペース(15)に多数の薄型バッテリーユニット(B1、・・・)を側方からスライド挿入して装着し、バッテリースペース(15)の側枠(13L、13R)にバッテリーユニット(B1、・・・)にエアーを吹き付けるエアーノズル(12)を設けた電動化コンバイン。
【請求項2】
バッテリーユニット(B1、・・・)の電力管理装置を設け、残電力が少なくなると通知すると共に走行装置(1)以外の駆動を停止して走行余力を残す制御を行う請求項1に記載の電動化コンバイン。
【請求項3】
走行装置(1)を所定時間駆動可能な取り外し可能な複数の予備バッテリー(B14~B17)をグレンタンク(5)下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の電動化コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの電力でモータを駆動して圃場の収穫作業を行う電動化コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、特開2020―120602号公報に記載の如く、クローラ走行装置を装着した走行車体にエンジンを搭載する原動部と脱穀装置とグレンタンクを搭載し、走行車体の前部には刈取装置を昇降可能に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020―120602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来コンバインの動力源であるエンジンに代えて電動モータを動力源とする電動化コンバインで、長時間の収穫作業を行えるようにするためには、多くの電力を蓄えるバッテリーが必要になるが、原動部内のスペースにエンジンに代えてバッテリーと電動モータを搭載すると、重い大容量のバッテリーが原動部に搭載されることになり走行車体の原動部側が極端に重くなって、重量バランスが悪く、柔らかい圃場では原動部側が沈み込んで安定して走行することが困難になる。
【0005】
本発明は、コンバインを電動化するにあたって、重量の重いバッテリーを走行車体にバランスよく搭載して柔らかい圃場を安定して走行して収穫作業が行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
請求項1の発明は、走行装置1を装着した走行車体2上の原動部3を除く脱穀装置4とグレンタンク5底部側の略全面にバッテリースペース15を設け、該バッテリースペース15に多数の薄型バッテリーユニットB1、・・・を側方からスライド挿入して装着し、バッテリースペース15の側枠13L、13RにバッテリーユニットB1、・・・にエアーを吹き付けるエアーノズル12を設けた電動化コンバインとする。
【0008】
請求項2の発明は、バッテリーユニットB1、・・・の電力管理装置を設け、残電力が少なくなると通知すると共に走行装置1以外の駆動を停止して走行余力を残す制御を行う請求項1に記載の電動化コンバインとする。
【0009】
請求項3の発明は、走行装置1を所定時間駆動可能な取り外し可能な複数の予備バッテリーB14~B17をグレンタンク5下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の電動化コンバインとする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明で、重量のあるバッテリーユニットB1、・・・が走行車体2上の原動部3を除くバッテリースペース15に広く敷き詰められるので、多くのバッテリーユニットB1、・・・で大電力を供給出来、走行車体2の全面が均等に重くなり走行が安定する。また、圃場面の近くにバッテリースペース15が在って塵埃や藁屑がバッテリーユニットB1、・・・に蓄積することがあっても側枠13L、13Rに設けるエアーノズル12からバッテリーユニットB1、・・・に圧縮エアーを吹き込むことで除去できる。
【0011】
請求項2の発明で、電力管理装置6でバッテリーユニットB1、・・・の電力を管理し、残電力が少なくなると通知すると共に走行装置1以外の駆動を停止するので、電力が少なくなってもコンバインが圃場内に立ち止まることなく、走行装置1を駆動して充電設備のある所まで移動できる。
【0012】
請求項3の発明で、穀粒の貯留によって重量の変動するグレンタンク5側の重量を予備バッテリーB14~B17が補って走行車体2の重量バランス変動を少なくして、コンバインの走行が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかる電動コンバインの脱穀装置とグレンタンクを除いた斜視図である。
図2】同上電動コンバインの一部斜視図である。
図3】同上電動コンバインのグレンタンクを除いたコンバインの斜視図である。
図4】同上電動コンバインのグレンタンクを除いて右後部から見た斜視図である。
図5】同上電動コンバインの原動部の背断面図である。
図6】同上電動コンバインのコネクタの取付斜視図である。
図7】同上電動コンバインのバッテリーの制御フローチャート図である。
図8】同上電動コンバインの予備バッテリーの拡大図である。
図9】田植機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、コンバインの走行車体2を示す斜視図で、左右下部にクローラからなる走行装置1を装着した走行車体2の上部右前部に原動部3を設け、この原動部3から中央に突出させた駆動モータ10の出力軸にベルト伝動によって動力を走行車体2下部に設けるミッションケース8に伝動して走行装置1を駆動するようにしている。原動部3の上には操縦席9を設け、その前部に操縦装置11を設けている。
【0016】
走行車体2の駆動モータ10の一部とミッションケース8への動力伝動部を除いて略全面にバッテリースペース15を設け、右側には薄いブロック状の右バッテリーユニットB1~B4を搭載し、走行車体2の左側には左バッテリーユニットB5~B10を搭載し、左右中央には中央バッテリーユニットB11~B13を搭載している。
【0017】
バッテリースペース15の上面はプレート状の覆い枠で覆い、左バッテリーユニットB5~B10の一部と中央バッテリーユニットB11~B13は連結して左側からバッテリースペース15に差し込み、右バッテリーユニットB1~B4は右側からバッテリースペース15に差し込み、中央バッテリーユニットB11~B13と右バッテリーユニットB1~B4の間に在るマグネット端子で中央ケーブル30に繋がり、駆動モータ10に給電する。図4に示す如く、中央ケーブル30は走行車体2の右寄り中央に配しているので、大型のコンバインでも長くすることで多くのバッテリーユニットと繋ぐことが出来る。
【0018】
バッテリースペース15の左側部開口部は左側枠13Lを着脱可能に設け、バッテリースペース15の右側部開口部は右側枠13Rを着脱可能に設け、それぞれのバッテリーユニットの間に位置してエアープラグ12を設け、このエアープラグ12にコンプレッサのエアーホースを繋ぎ、内部に圧縮エアーを吹き込んで走行車体2の前後から外部へ吹出して塵埃や藁屑を吐き出す。コンプレッサは走行車体2に搭載して構成したり、コンバインとは別にしても良い。
【0019】
右側枠13Rの側部には、グレンタンク5の下部に位置して予備バッテリーB14~B17を収納するスリット状の予備バッテリーケース7内に取り付けるようにしている。図8に示すように予備バッテリーケース7の剛性は高く、外部の衝撃から予備バッテリーB14~B17を保護することができる。
【0020】
またケースの上端面を利用して、通電部のプラス電極BC1とマイナス電極BC2が各バッテリーに配置されている。予備バッテリーは2つのハンガー型(断面L字形または断面コの字形)の電極部BC3、BC4を備えており、このハンガー部が給電用の電極となっている。プラス電極のハンガーBC3とマイナス電極のハンガーBC4を予備バッテリーケースの通電部のプラス電極BC1とマイナス電極BCに接合することで、各予備バッテリーのハンガー部から予備バッテリーケース7の電極部を通じて給電が行われる。なお予備バッテリーのハンガー部はマグネットBC5が配備され、予備バッテリーケース7に固定される。
【0021】
この予備バッテリーB14~B17は、走行車体2のバランスウエイトを兼ねて、バッテリーユニットB1、・・・が電力を完全に消失した場合に走行装置1を駆動するに使用する。例えば圃場において最終的な刈取作業を終え、作業機から穀物を機外に排出したい場合にバッテリー切れになった場合は、予備バッテリーをB14~B17装着する。穀物が機外に排出すれば、グレンタンク側が軽くなるため、予備バッテリーを装着することでバランスが良くなり、納屋まで戻る帰路で良好に走行できる。予備バッテリーは個別に装着できるため、以後の使用電力と、走行行程にあわせて装着数を変更することが可能な構成である。
【0022】
なお、各バッテリーユニットB1~B13の電力で一個の駆動モータ10を駆動し、その動力で走行装置1と脱穀装置4や刈取装置他の作業機を全て駆動するようにしたり、脱穀装置4や刈取装置他の作業機にモータを設けてそれぞれに電力を供給して駆動するようにしたりする。
【0023】
図3に示すように、走行車体2上のバッテリースペース15を設ける機枠上に、原動部3の後側で脱穀装置4の右側部にはグレンタンク5を搭載して脱穀装置4で収穫した穀粒を貯留するようにしている。
【0024】
図5は、原動部3内に設ける電源ケーブル21,22の連結を行う防水カプラー20の取付を示し、前後と左右を囲われた天板19の底面孔19aに防水カプラー20のクリップ20aを差し込んで取り付けて電源ケーブル21,22を接続する。このように囲われた空間に防水カプラー20を取り付けることで防水性を高められる。ケーブル固定具23も側板の取付孔にクリップを差し込んで固定する。
【0025】
図7は、バッテリーユニットB1、・・・の電力を管理する電力管理装置の制御フローチャート図で、収穫作業を開始し、ステップS1で電圧が作業継続に必要な所定電圧かを判定して、以上であればステップS9の作業を継続し、所定電圧以下であればステップS2で刈取装置や脱穀装置等の作業機を停止し、ステップS3でバッテリー残量を算出して残量表示を行い、ステップS4で電圧低下により予備バッテリーを作動させるかを判定し、作動させないのであればステップS10で走行を停止して作業を中断し、作動させないのであればステップS5で走行可能時間を算出表示し、ステップS6で作業機の電力供給を遮断してその表示を行い、ステップS7で充電場所へ走行を開始し、ステップS8で充電を行う。
【0026】
なお、電力管理装置に時計機能がある場合は、作業開示時の電力を記録し、作業時の使用電力平均値と使用時間に所定の安全率を見込んで電力残量を算出して予備バッテリーを作動させるタイミングを予測する方法もある。
【0027】
また、バッテリーの残電力が零表示になっても僅かに走行可能電力を残し、緊急移動を可能にすると良い。
【0028】
本発明でのバッテリーの温度上昇対応として、前述のエアーノズル12でエアーを利用した冷却も可能であるが、塵埃の発生しない田植機においては以下の対応をとることが望ましい。
図9は、田植機におけるバッテリーの冷却を示している。ポット式の型式では、ポット苗を送るためのレールに苗がつまることがあり、レール内に少量の水を流しているが、このポット用タンク21の水を利用するものである。
【0029】
苗移植装置22’に設けるポット用水タンク21’に溜めた水を機体に搭載したバッテリー20’に循環させて冷却した後に、圃場へ排出させる場合や、再度、案内レールに流す構成も対応できる。これによりバッテリーを冷却することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
B1 バッテリーユニット
1 走行装置
2 走行車体
3 原動部
4 脱穀装置
5 グレンタンク
7 予備バッテリー
12 エアーノズル
13L、13R 側枠
15 バッテリースペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9