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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062615
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】流路切替装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/076 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
F16K11/076 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170578
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸二
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA13
3H067CC32
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA32
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】多くの流路パターンに切り替えることができる流路切替え装置を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、流路切替装置1において、回転ディスク連通路60として、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の周方向に隣り合う位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための隣接ポート連通路90,170と、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の径方向に対向する位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための対向ポート連通路110,130,150と、が設けられている。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定部材と、
第2固定部材と、
前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に設けられる円板状の回転部材と、を有し、
前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートが、それぞれ複数設けられ、
前記回転部材は、前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための連通路を備え、
前記円板状の中心軸を中心にして前記回転部材を回転させて、前記連通路により連通させる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとの組み合わせを切り替えることにより、流体が流れる流路パターンを切り替える流路切替装置において、
前記連通路として、
前記回転部材の軸方向から見たときに前記回転部材の周方向に隣り合う位置に設けられる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための隣接ポート連通路と、
前記回転部材の軸方向から見たときに前記回転部材の径方向に対向する位置に設けられる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための対向ポート連通路と、
が設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項2】
請求項1の流路切替装置において、
複数の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について異なる位置に設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項3】
請求項1の流路切替装置において、
複数の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について互いに干渉しないように傾斜していること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項4】
請求項2の流路切替装置において、
前記対向ポート連通路は、前記回転部材の径方向に広がるようにして偏平形状に形成されていること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つの流路切替装置において、
前記回転部材は、複数の円板部材が積層して形成されており、
複数の前記円板部材は、それぞれ、前記連通路の一部が形成される樹脂の成形体であること、
を特徴とする流路切替装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1つの流路切替装置において、
前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートは、それぞれ、3個以上設けられ、かつ、前記回転部材の周方向について互いにオフセットされた位置に設けられ、
3個以上の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について互いに干渉しないように設けられていること、
を特徴とする流路切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体が流れる流路パターンを切り替える流路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主弁体を回転させることにより、連通させるポートを切り替える弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-49364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、主弁体の周方向に配置されるポート同士を連通させる流路パターンは、主弁体が第2の回転位置に配置されるときのみ開示されており、特許文献1に開示される弁では、切り替え可能な流路パターンが少ない。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、多くの流路パターンに切り替えることができる流路切替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、第1固定部材と、第2固定部材と、前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に設けられる円板状の回転部材と、を有し、前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートが、それぞれ複数設けられ、前記回転部材は、前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための連通路を備え、前記円板状の中心軸を中心にして前記回転部材を回転させて、前記連通路により連通させる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとの組み合わせを切り替えることにより、流体が流れる流路パターンを切り替える流路切替装置において、前記連通路として、前記回転部材の軸方向から見たときに前記回転部材の周方向に隣り合う位置に設けられる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための隣接ポート連通路と、前記回転部材の軸方向から見たときに前記回転部材の径方向に対向する位置に設けられる前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートとを連通させるための対向ポート連通路と、が設けられていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、隣接ポート連通路により形成される流路パターンの他に、対向ポート連通路により形成される流路パターンにも切り替えることができるので、切り替え可能な流路パターンを増やすことができる。そのため、多くの流路パターンに切り替えることができる。
【0008】
上記の態様においては、複数の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について異なる位置に設けられていること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、複数の対向ポート連通路を、回転部材の軸方向について互いに干渉させないようにして設けることができる。そのため、複数の対向ポート連通路を用いた流路パターンを形成することができる。
【0010】
上記の態様においては、複数の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について互いに干渉しないように傾斜していること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、複数の対向ポート連通路を用いて流路パターンを形成することができるとともに、対向ポート連通路を流れる流体を傾斜に沿って滑らかに流すことができるので流体の圧損を低減できる。
【0012】
上記の態様においては、前記対向ポート連通路は、前記回転部材の径方向に広がるようにして偏平形状に形成されていること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、対向ポート連通路の流路断面積を確保しながら、対向ポート連通路についての回転部材の軸方向の幅を小さくすることができる。そのため、対向ポート連通路を流れる流体の流量を確保しながら、流路切替装置を小型化できる。
【0014】
上記の態様においては、前記回転部材は、複数の円板部材が積層して形成されており、複数の前記円板部材は、それぞれ、前記連通路の一部が形成される樹脂の成形体であること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、回転部材にて、複雑な形状の連通路を容易に形成できる。そのため、様々な形状の連通路を形成できる。
【0016】
上記の態様においては、前記第1固定部材のポートと前記第2固定部材のポートは、それぞれ、3個以上設けられ、かつ、前記回転部材の周方向について互いにオフセットされた位置に設けられ、3個以上の前記対向ポート連通路が、前記回転部材の径方向に交差しつつ、前記回転部材の軸方向について互いに干渉しないように設けられていること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、六方弁またはそれ以上の弁(例えば、八方弁など)において、3個以上の対向ポート連通路を用いた流路パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の流路切替装置によれば、多くの流路パターンに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の流路切替装置(六方弁である場合)の外観斜視図である。
図2】本実施形態の流路切替装置の分解斜視図である(駆動部は図示を省略している)。
図3】本実施形態の流路切替装置の断面図である(駆動部は図示を省略している)。
図4】回転ディスクの上面図である。
図5】固定ディスクの上面図である。
図6】第1実施例において、回転ディスクの軸方向から見たイメージ図であって、第1の流路パターンのときの回転ディスク連通路の配置を示す図である。
図7図6における一点鎖線αの位置にて回転ディスクの径方向の外側から内側を見たときの断面図である。
図8】1層目の円板部材の上面図である。
図9】2層目の円板部材の上面図である。
図10】3層目の円板部材の上面図である。
図11】4層目の円板部材の上面図である。
図12】5層目の円板部材の上面図である。
図13】第1実施例において、回転ディスクの軸方向から見たイメージ図であって、第2の流路パターンのときの回転ディスク連通路の配置を示す図である。
図14図13における一点鎖線αの位置にて回転ディスクの径方向の外側から内側を見たときの断面図である。
図15】第1実施例において、回転ディスクの軸方向から見たイメージ図であって、第3の流路パターンのときの回転ディスク連通路の配置を示す図である。
図16図15における一点鎖線αの位置にて回転ディスクの径方向の外側から内側を見たときの断面図である。
図17】温調システムにおいて、流路切替装置を第1の流路パターンにしたときの図である。
図18】温調システムにおいて、流路切替装置を第2の流路パターンにしたときの図である。
図19】温調システムにおいて、流路切替装置を第3の流路パターンにしたときの図である。
図20】第2実施例において、回転ディスクの軸方向から見たイメージ図であって、第2の流路パターンのときの回転ディスク連通路の配置を示す図である。
図21図20における一点鎖線αの位置にて回転ディスクの径方向の外側から内側を見たときの断面図である。
図22図20のA-A断面図である。
図23図20のB-B断面図である。
図24図20のC-C断面図である。
図25】第2実施例において、対向ポート連通路を示す図である。
図26】第3実施例において、回転ディスクの軸方向から見たイメージ図であって、第2の流路パターンのときの回転ディスク連通路の配置を示す図である。
図27図26における一点鎖線αの位置にて回転ディスクの径方向の外側から内側を見たときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態の一例である流路切替装置1について説明する。
【0021】
<流路切替装置の全体の概要説明>
まず、本実施形態の流路切替装置1の全体の概要について説明する。
【0022】
図1図3に示すように、流路切替装置1は、ハウジング11と、弁体部12と、駆動部13を有する。
【0023】
ハウジング11は、流体が流入する流路である流入ポート20と、流体が流出する流路である流出ポート30と、を備えている。ここでは、流路切替装置1は、一例として六方弁であり、ハウジング11は、3個の流入ポート20と3個の流出ポート30とを備えている。そして、3個の流入ポート20として、第1流入ポート21と第2流入ポート22と第3流入ポート23とが設けられている。また、3個の流出ポート30として、第1流出ポート31と第2流出ポート32と第3流出ポート33とが設けられている。
【0024】
なお、ハウジング11は、例えば樹脂により形成されている。また、ハウジング11は本開示の「第2固定部材」の一例であり、流出ポート30(すなわち、第1流出ポート31と第2流出ポート32と第3流出ポート33)は本開示の「第2固定部材のポート」の一例である。
【0025】
弁体部12は、ハウジング11の内部に設けられている。この弁体部12は、図2図3に示すように、回転する回転ディスク40と、固定ディスク50と、を備えている。そして、回転ディスク40と固定ディスク50は、後述する回転ディスク40の円板部41や固定ディスク50の円板部51の中心軸L方向(以下、単に「軸方向」という。)に積層して配置されている。
【0026】
なお、回転ディスク40と固定ディスク50は、例えば樹脂により形成されている。また、回転ディスク40は本開示の「回転部材」の一例であり、固定ディスク50は本開示の「第1固定部材」の一例である。
【0027】
図2図4に示すように、回転ディスク40は、円板部41と回転軸部42を備えている。
【0028】
円板部41は、円板状に形成されており、固定ディスク50とハウジング11との間に設けられている。そして、円板部41は、後述する固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための回転ディスク連通路60を備えている。なお、円板部41や回転ディスク連通路60の詳細については、後述する。
【0029】
回転軸部42は、その中心軸方向について、一端側にて円板部41と接続しており、他端側にて駆動部13に接続している。この回転軸部42は、その中心軸が円板部41の中心軸Lと一致するようにして、円板部41の中央の位置に設けられている。そして、駆動部13から回転する動力を得て回転軸部42がその中心軸を中心に回転することにより、回転軸部42に接続する円板部41がその円板状の中心軸Lを中心に回転する。このようにして、回転ディスク40は、駆動部13から回転する動力を得ることにより、中心軸Lを中心に回転する。
【0030】
図2図3図5に示すように、固定ディスク50は、円板部51と円筒部52とを備えている。
【0031】
円板部51は、円板状に形成されており、軸方向に貫通する流路である固定ディスクポート70を備えている。ここでは、円板部51は、3個の固定ディスクポート70を備えている。そして、図2図5に示すように、3個の固定ディスクポート70として、第1固定ディスクポート71と第2固定ディスクポート72と第3固定ディスクポート73を備えている。なお、固定ディスクポート70(すなわち、第1固定ディスクポート71と第2固定ディスクポート72と第3固定ディスクポート73)は、本開示の「第1固定部材のポート」の一例である。
【0032】
円筒部52は、円板部51に接続しており、固定ディスクポート70を囲うようにして円板部51から軸方向に延びるようにして形成されている。ここでは、円筒部52は、3個の固定ディスクポート70のそれぞれに対応するようにして、3個形成されている。
【0033】
駆動部13は、回転ディスク40の回転軸部42に回転する動力を与えるためのモータ(不図示)を備えている。
【0034】
以上のような構成の流路切替装置1は、流入ポート20に連通する固定ディスクポート70と、回転ディスク連通路60と、流出ポート30とを連通させることで、流体が流れる流路を形成する。そして、流路切替装置1は、駆動部13により中心軸Lを中心にして回転ディスク40を回転させて、回転ディスク連通路60により連通させる固定ディスクポート70と流出ポート30との組み合わせを切り替えることにより、流体が流れる流路パターン(以下、「流路パターン」という。)を切り替える。なお、流路パターンの切り替え例については、後述する。
【0035】
なお、流路切替装置1は、六方弁に限らず、三方弁や四方弁などのその他の多方弁にすることもできる。
【0036】
また、図3に示すように、ハウジング11と回転ディスク40との間、および、回転ディスク40と固定ディスク50との間には、それぞれ、シール部材81が設けられている。シール部材81は、固定ディスクポート70と当該固定ディスクポート70に連通する回転ディスク連通路60との間に形成される流路、および、流出ポート30と当該流出ポート30に連通する回転ディスク連通路60との間に形成される流路を、外部から封止(シール)する。
【0037】
また、固定ディスク50の円板部51とハウジング11との間に、ディスク保持スプリング82が設けられている。そして、このディスク保持スプリング82の押圧力による応力が、固定ディスク50の円板部51に作用している。このようなディスク保持スプリング82は、固定ディスク50の3個の円筒部52のそれぞれに配置されるようにして、合計3個設けられている。
【0038】
また、固定ディスク50の円筒部52とハウジング11との間に、固定ディスクポート70のシール性を確保するためのリップシール83が設けられている。
【0039】
<流路パターンの切り替えに関して>
(第1実施例)
まず、第1実施例について説明する。
【0040】
図6に示すように、回転ディスク40の円板部41の軸方向から見たときに、固定ディスクポート70と流出ポート30が、それぞれ、円板部41の周方向について、交互に等間隔を空けて、互いにオフセットされた位置に複数(図6に示す例では3個)設けられている
【0041】
本実施例では、回転ディスク40の円板部41は、複数の円板部材が積層して形成されている。具体的には、図7に示すように、円板部41は、1層目の円板部材41aと、2層目の円板部材41bと、3層目の円板部材41cと、4層目の円板部材41dと、5層目の円板部材41eとが、各円板部材の軸方向に、積層して形成されている。そして、これらの5個の円板部材41a~41eは、それぞれ、樹脂の成形体であって、回転ディスク連通路60の一部が形成されている。
【0042】
図8に示すように、1層目の円板部材41aは、回転ディスク連通路60の一部として、1層目の円板部材41aをその軸方向に貫通するようにして形成される、3個の隣接ポート連通路90と、3個の連通孔100を備えている。ここで、隣接ポート連通路90は、詳しくは後述するように、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の周方向に隣り合う位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための連通路である。そして、1層目の円板部材41aは、3個の隣接ポート連通路90として、第1隣接ポート連通路91と、第2隣接ポート連通路92と、第3隣接ポート連通路93を備えている。なお、1層目の円板部材41aの下面(不図示)に、シール部材81が設けられている。
【0043】
なお、連通孔100は、後述する第1対向ポート連通路110や連通路120や第2対向ポート連通路130や連通孔140や第3対向ポート連通路150や連通孔160とともに、固定ディスクポート70と後述する隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。
【0044】
図9に示すように、2層目の円板部材41bは、回転ディスク連通路60の一部として、2層目の円板部材41bをその軸方向に貫通するようにして形成される、第1対向ポート連通路110と、5個の連通孔120を備えている。ここで、第1対向ポート連通路110は、詳しくは後述するように、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の径方向に対向する位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための連通路である。
【0045】
なお、5個の連通孔120のうち3個の連通孔120は、後述する連通孔140と連通孔160とともに、隣接ポート連通路90と後述する隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。また、残りの2個の連通孔120は、後述する第2対向ポート連通路130や第3対向ポート連通路150に連通しており、連通孔100や第2対向ポート連通路130や連通路140や第3対向ポート連通路150や連通孔160とともに、固定ディスクポート70と隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。
【0046】
図10に示すように、3層目の円板部材41cは、回転ディスク連通路60の一部として、3層目の円板部材41cをその軸方向に貫通するようにして形成される、第2対向ポート連通路130と、5個の連通孔140を備えている。ここで、第2対向ポート連通路130は、詳しくは後述するように、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の径方向に対向する位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための連通路である。
【0047】
なお、5個の連通孔140のうち3個の連通孔140は、連通孔120と連通孔160とともに、隣接ポート連通路90と隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。また、残りの2個の連通孔140は、第1対向ポート連通路110や第3対向ポート連通路150に連通しており、連通孔100や第1対向ポート連通路110や連通路120や第3対向ポート連通路150や連通孔160とともに、固定ディスクポート70と隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。
【0048】
図11に示すように、4層目の円板部材41dは、回転ディスク連通路60の一部として、4層目の円板部材41dをその軸方向に貫通するようにして形成される、第3対向ポート連通路150と、5個の連通孔160を備えている。ここで、第3対向ポート連通路150は、詳しくは後述するように、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の径方向に対向する位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための連通路である。
【0049】
なお、5個の連通孔160のうち3個の連通孔160は、連通孔120と連通孔140とともに、隣接ポート連通路90と隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。また、残りの2個の連通孔160は、第1対向ポート連通路110や第2対向ポート連通路130に連通しており、連通孔100や第1対向ポート連通路110や連通路120や第2対向ポート連通路130や連通孔140とともに、固定ディスクポート70と隣接ポート連通路170との間を連通させるための連通路である。
【0050】
図12に示すように、5層目の円板部材41eは、回転ディスク連通路60の一部として、5層目の円板部材41eをその軸方向に貫通するようにして形成される、3個の隣接ポート連通路170を備えている。ここで、隣接ポート連通路170は、詳しくは後述するように、回転ディスク40の軸方向から見たときに回転ディスク40の周方向に隣り合う位置に設けられる固定ディスクポート70と流出ポート30とを連通させるための連通路である。そして、5層目の円板部材41eは、3個の隣接ポート連通路170として、第1隣接ポート連通路171と、第2隣接ポート連通路172と、第3隣接ポート連通路173を備えている。なお、この5層目の円板部材41eの上面に、回転軸部42が接続し、また、シール部材81が設けられている。
【0051】
このようにして、本実施例では、回転ディスク40は、回転ディスク連通路60の一部として、隣接ポート連通路90と隣接ポート連通路170を、それぞれ3個備えている。
【0052】
また、回転ディスク40は、回転ディスク連通路60の一部として、隣接ポート連通路90と隣接ポート連通路170の他に、第1対向ポート連通路110と第2対向ポート連通路130と第3対向ポート連通路150(以下、「3個の対向ポート連通路110,130,150」ともいう。)を備えている。
【0053】
そして、この3個の対向ポート連通路110,130,150は、回転ディスク40の円板部41の径方向に交差しつつ、回転ディスク40の円板部41の軸方向について互いに干渉しないように設けられている。
【0054】
具体的には、3個の対向ポート連通路110,130,150が、それぞれ、回転ディスク40の径方向に交差しつつ、2層目の円板部材41bと3層目の円板部材41cと4層目の円板部材41dにて個別に形成されており、回転ディスク40の軸方向について、それぞれ異なる位置に設けられている(後述する図14参照)。
【0055】
以上のような回転ディスク40の構造のもと、本実施例では、以下のように流路パターンを切り替えることができる。なお、図6では、3個の対向ポート連通路110,130,150の形状が分かりやすいように、第1対向ポート連通路110にドットのハッチングを付している。
【0056】
まず、第1の流路パターンでは、図6図7に示すように、第1隣接ポート連通路91により、第1固定ディスクポート71と第1流出ポート31とを連通させる。詳しくは、第1隣接ポート連通路91と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第1隣接ポート連通路171とを介して、第1流入ポート21に連通する第1固定ディスクポート71と第1流出ポート31とを連通させる。
【0057】
また、第2隣接ポート連通路92により、第2固定ディスクポート72と第2流出ポート32とを連通させる。詳しくは、第2隣接ポート連通路92と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第2隣接ポート連通路172とを介して、第2流入ポート22に連通する第2固定ディスクポート72と第2流出ポート32とを連通させる。
【0058】
さらに、第3隣接ポート連通路93により、第3固定ディスクポート73と第3流出ポート33とを連通させる。詳しくは、第3隣接ポート連通路93と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第3隣接ポート連通路173とを介して、第3流入ポート23に連通する第3固定ディスクポート73と第3流出ポート33とを連通させる。
【0059】
次に、第1の流路パターンから、回転ディスク40の円板部41を反時計回りに30度回転させて切り替えた第2の流路パターンでは、図13図14に示すように、第1対向ポート連通路110により、第1固定ディスクポート71と第3流出ポート33とを連通させる。詳しくは、連通孔100と、第1対向ポート連通路110と、連通孔140と、連通孔160と、第3隣接ポート連通路173とを介して、第1流入ポート21に連通する第1固定ディスクポート71と第3流出ポート33とを連通させる。
【0060】
また、第2対向ポート連通路130により、第2固定ディスクポート72と第1流出ポート31とを連通させる。詳しくは、連通孔100と、連通孔120と、第2対向ポート連通路130と、連通孔160と、第1隣接ポート連通路171とを介して、第2流入ポート22に連通する第2固定ディスクポート72と第1流出ポート31とを連通させる。
【0061】
さらに、第3対向ポート連通路150により、第3固定ディスクポート73と第2流出ポート32とを連通させる。詳しくは、連通孔100と、連通孔120と、連通孔140と、第3対向ポート連通路150と、第2隣接ポート連通路172とを介して、第3流入ポート23に連通する第3固定ディスクポート73と第2流出ポート32とを連通させる。
【0062】
次に、第2の流路パターンから、回転ディスク40の円板部41を反時計回りに30度回転させて切り替えた第3の流路パターンでは、図15図16に示すように、第2隣接ポート連通路172により、第1固定ディスクポート71と第2流出ポート32とを連通させる。詳しくは、第2隣接ポート連通路92と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第2隣接ポート連通路172とを介して、第1流入ポート21に連通する第1固定ディスクポート71と第2流出ポート32とを連通させる。
【0063】
また、第3隣接ポート連通路173により、第2固定ディスクポート72と第3流出ポート33とを連通させる。詳しくは、第3隣接ポート連通路93と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第3隣接ポート連通路173とを介して、第2流入ポート22に連通する第2固定ディスクポート72と第3流出ポート33とを連通させる。
【0064】
さらに、第1隣接ポート連通路171により、第3固定ディスクポート73と第1流出ポート31とを連通させる。詳しくは、第1隣接ポート連通路91と、連通孔120と、連通孔140と、連通孔160と、第1隣接ポート連通路171とを介して、第3流入ポート23に連通する第3固定ディスクポート73と第1流出ポート31とを連通させる。
【0065】
このようにして流路パターンを切り替えることができる流路切替装置1を使って、以下のようにして、車両に搭載される温調システム201にて、バッテリ211とPCU212の暖機や冷却を行うことができる。
【0066】
温調システム201は、図17に示すように、流体(例えば、冷却水)が流れる流路として、第1流路221と、第2流路222と、第3流路223を有する。第1流路221には、バッテリ211とチラー231と逆止弁233が設けられている。また、第2流路222には、ラジエータ232が設けられている。さらに、第3流路223には、PCU212と逆止弁234が設けられている。そして、流路切替装置1は、第1流路221と第2流路222と第3流路223に繋がっている。
【0067】
このような構成の温調システム201において、極低温の走行開始時(暖機時)には、図17に示すように、流路切替装置1を第1の流路パターンにする。これにより、PCU212の蓄熱暖機や、PCU212の蓄熱によるバッテリ211の暖機や、PCU212の蓄熱とバッテリ211の発熱とヒータ(不図示)による車室の暖房が行われる。
【0068】
また、急速充電時(走行停止時)には、図18に示すように、流路切替装置1を第2の流路パターンにする。これにより、チラー231とラジエータ232により、バッテリ211を冷却することができる。
【0069】
さらに、通常走行時(暖機後)には、図19に示すように、流路切替装置1を第3の流路パターンにする。これにより、チラー231によりバッテリ211を冷却し、ラジエータ232によりPCU212を冷却することができる。
【0070】
本実施例では、回転ディスク連通路60として、隣接ポート連通路90,170と、対向ポート連通路110,130,150が設けられている。
【0071】
これにより、隣接ポート連通路90,170により形成される流路パターンの他に、対向ポート連通路110,130,150により形成される流路パターンにも切り替えることができるので、切り替え可能な流路パターンを増やすことができる。そのため、多くの流路パターンに切り替えることができる。
【0072】
また、3個の対向ポート連通路110,130,150が、回転ディスク40の径方向に交差しつつ、2層目の円板部材41bと3層目の円板部材41cと4層目の円板部材41dにて個別に形成されており、回転ディスク40の軸方向について異なる位置に設けられている。
【0073】
これにより、3個の対向ポート連通路110,130,150を、回転ディスク40の軸方向について互いに干渉させないようにして設けることができる。そのため、3個の対向ポート連通路110,130,150を用いた流路パターンを形成することができる。
【0074】
また、回転ディスク40は、5個の円板部材41a~41eが積層して形成されている。そして、5個の円板部材41a~41eは、それぞれ、樹脂の成形体であって、回転ディスク連通路60の一部が形成されている。
【0075】
これにより、回転ディスク40にて、複雑な形状の回転ディスク連通路60を容易に形成できる。そのため、様々な形状の回転ディスク連通路60を形成できる。
【0076】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、第1実施例と異なる点について説明し、第1実施例と共通する点の説明は省略する。
【0077】
本実施例では、図20図21に示すように、3個の対向ポート連通路110,130,150を螺旋状に形成している。そして、対向ポート連通路同士が交差する箇所は、図22図24に示すように、対向ポート連通路同士の高低差を設けておき、対向ポート連通路同士が軸方向で干渉しないようにしている。なお、図20では、3個の対向ポート連通路110,130,150の形状が分かりやすいように、第1対向ポート連通路110にドットのハッチングを付している。
【0078】
このようにして、本実施例では、3個の対向ポート連通路110,130,150が、回転ディスク40の径方向に交差しつつ、回転ディスク40の軸方向について互いに干渉しないように、図21図25に示すように、回転ディスク40の軸方向に向って傾斜している。
【0079】
これにより、3個の対向ポート連通路110,130,150を用いて流路パターンを形成することができるとともに、3個の対向ポート連通路110,130,150を流れる流体を傾斜に沿って滑らかに流すことができるので流体の圧損を低減できる。また、回転ディスク40の板厚(すなわち、軸方向の幅)を小さくすることができ、流路切替装置1を小型化できる。
【0080】
また、図25に示すように、3個の対向ポート連通路110,130,150は、その出入口にR形状部(図中「R」と表記)を備えているので、より効果的に、3個の対向ポート連通路110,130,150を流れる流体を傾斜に沿って滑らかに流すことができる。
【0081】
(第3実施例)
次に、第3実施例について説明するが、第1,2実施例と異なる点について説明し、第1,2実施例と共通する点の説明は省略する。
【0082】
本実施例では、図26図27に示すように、3個の対向ポート連通路110,130,150は、回転ディスク40の径方向に広がるようにして偏平形状に形成されている。これにより、3個の対向ポート連通路110,130,150について、その流路断面積を確保しながら、回転ディスク40の板厚を小さくすることができる。そのため、3個の対向ポート連通路110,130,150を流れる流体の流量を確保しながら、流路切替装置1を小型化できる。なお、3個の対向ポート連通路110,130,150は、連通孔120,140,160と重ならないように形成されている。また、図26では、3個の対向ポート連通路110,130,150の形状が分かりやすいように、第1対向ポート連通路110にドットのハッチングを付している。
【0083】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0084】
例えば、回転ディスク40は、隣接ポート連通路や対向ポート連通路を、複数備えていればよく、2個または4個以上備えていてもよい。また、固定ディスクポート70と流出ポート30は、それぞれ複数設けられていればよく、2個または4個以上設けられていてもよい。さらに、回転ディスク40は、複数の円板部材が積層して形成されていればよく、2個~4個や6個以上の円板部材が積層して形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 流路切替装置
11 ハウジング
12 弁体部
20 流入ポート
21 第1流入ポート
22 第2流入ポート
23 第3流入ポート
30 流出ポート
31 第1流出ポート
32 第2流出ポート
33 第3流出ポート
40 回転ディスク
41 円板部
41a 1層目の円板部材
41b 2層目の円板部材
41c 3層目の円板部材
41d 4層目の円板部材
41e 5層目の円板部材
50 固定ディスク
51 円板部
60 回転ディスク連通路
70 固定ディスクポート
71 第1固定ディスクポート
72 第2固定ディスクポート
73 第3固定ディスクポート
90 隣接ポート連通路
91 第1隣接ポート連通路
92 第2隣接ポート連通路
93 第3隣接ポート連通路
110 第1対向ポート連通路
130 第2対向ポート連通路
150 第3対向ポート連通路
170 隣接ポート連通路
171 第1隣接ポート連通路
172 第2隣接ポート連通路
173 第3隣接ポート連通路
L 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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