(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062617
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】照明システム、照明制御方法、及び照明制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/115 20200101AFI20240501BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20240501BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240501BHJP
H05B 47/11 20200101ALI20240501BHJP
【FI】
H05B47/115
H05B47/165
H05B47/16
H05B47/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170581
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 理彩
(72)【発明者】
【氏名】三河 秀人
(72)【発明者】
【氏名】柴冨 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明日香
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翼
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA01
3K273QA07
3K273QA11
3K273QA30
3K273RA03
3K273RA08
3K273RA12
3K273SA04
3K273SA05
3K273SA39
3K273SA46
3K273SA57
3K273TA03
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA45
3K273TA46
3K273TA49
3K273TA52
3K273TA54
3K273TA62
3K273TA70
3K273UA17
(57)【要約】
【課題】照明の情緒的価値を向上させる。
【解決手段】照明システム1は、照明10と、照明10の明るさを制御する制御装置50と、照明10の周囲に人又は移動体が存在することを検知する人感センサ4と、を備える。制御装置50は、照明10の明るさを、人感センサ4により人又は移動体が検知されないときには第1レベルに、人感センサ4により人又は移動体が検知されたときには第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御する。制御装置50が照明10の明るさを第1レベルから第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明と、
前記照明の明るさを制御する制御部と、
前記照明の周囲に人又は移動体が存在することを検知する検知部と、
を備え、
前記制御部は、前記照明の明るさを、前記検知部により人又は移動体が検知されないときには第1レベルに、前記検知部により人又は移動体が検知されたときには前記第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御し、
前記制御部が前記照明の明るさを前記第1レベルから前記第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である
照明システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記フェードイン期間において、下に凸な曲線に沿って前記照明の明るさを上昇させる
請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記フェードイン期間は1秒以上1.5秒以下である
請求項1に記載の照明システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部により人又は移動体が検知されなくなってから所定時間後に前記照明の明るさを前記第2レベルから前記第1レベルに戻し、
前記制御部が前記照明の明るさを前記第2レベルから前記第1レベルまで下降させるフェードアウト期間は0.5秒以上5秒未満である
請求項1に記載の照明システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記フェードイン期間において、下に凸な曲線に沿って前記照明の明るさを下降させる
請求項4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記フェードアウト期間は2秒以上4秒以下である
請求項4に記載の照明システム。
【請求項7】
前記照明は、建物の外部と内部の間の出入口、及び建物の内部の空間の出入口のうち少なくとも一方の周囲に設けられる
請求項1から6のいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項8】
前記照明は、前記出入口の下部及び下方のうち少なくとも一方に設けられる
請求項7に記載の照明システム。
【請求項9】
前記照明は、前記出入口に向かうステップの蹴込みに設けられる
請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
前記検知部は、前記照明を視認できる位置に人が存在することを検知する
請求項9に記載の照明システム。
【請求項11】
照明の周囲に人又は移動体が存在することを検知する検知部により人又は移動体が検知されないときに、照明の明るさを第1レベルに制御するステップと、
前記検知部により人又は移動体が検知されたときに、前記照明の明るさを前記第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御するステップと、
を備え、
前記照明の明るさを前記第1レベルから前記第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である
照明制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、
照明の明るさを制御する制御部
として機能させ、
前記制御部は、前記照明の明るさを、前記照明の周囲に人又は移動体が存在することを検知する検知部により人又は移動体が検知されないときには第1レベルに、前記検知部により人又は移動体が検知されたときには前記第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御し、
前記制御部が前記照明の明るさを前記第1レベルから前記第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である
照明制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などに設置されたカーポートなどの建物の外部と内部の間の出入口に設けられた照明を制御する技術として、例えば特許文献1には、移動体検出部によって移動体が検出された場合に作業誘導灯を点灯させるとともに、移動体検出部によって移動体が検出されなくなってから所定時間が経過した場合に作業誘導灯を消灯させ、作業誘導灯は、点灯動作が開始してから点灯動作が完了するまでの点灯動作時間よりも消灯動作が開始してから消灯動作が完了するまでの消灯動作時間が長いように構成されたカーポート照明システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、このような照明を、帰宅する人を光で出迎えるような、暖かみのある情緒的な演出に用いることができると考え、本発明に想到した。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、照明の情緒的価値を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の照明システムは、照明と、照明の明るさを制御する制御部と、照明の周囲に人又は移動体が存在することを検知する検知部と、を備える。制御部は、照明の明るさを、検知部により人又は移動体が検知されないときには第1レベルに、検知部により人又は移動体が検知されたときには第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御し、制御部が照明の明るさを第1レベルから第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である。
【0007】
本開示の別の態様は、照明制御方法である。この方法は、照明の周囲に人又は移動体が存在することを検知する検知部により人又は移動体が検知されないときに、照明の明るさを第1レベルに制御するステップと、検知部により人又は移動体が検知されたときに、照明の明るさを第1レベルよりも高い第2レベルになるように制御するステップと、を備える。照明の明るさを第1レベルから第2レベルまで上昇させるフェードイン期間は0.5秒以上2秒未満である。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る照明システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る照明システムによる照明の制御方法を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る制御装置の構成を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る照明制御方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】評価実験に用いた実験場の平面図を模式的に示す図である。
【
図6】フェードイン期間を1秒、1.5秒、2秒として照明の明るさを制御した場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【
図7】フェードイン期間における照明の明るさを直線状に上昇させた場合と、下に凸な曲線に沿って上昇させた場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【
図8】フェードアウト期間を2秒、3秒として照明の明るさを制御した場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【
図9】フェードアウト期間における照明の明るさを直線状に下降させた場合と、下に凸な曲線に沿って下降させた場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【
図10】人感センサがカーポートの中央付近に設けられた場合と玄関とは逆側の先端付近に設けられた場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【
図11】評価実験に用いた実験場の平面図を模式的に示す図である。
【
図12】フェードイン期間を1秒、被験者の検知位置をステップから6mの位置とした場合と、フェードイン期間を1.5秒、被験者の検知位置をステップから6mの位置とした場合と、フェードイン期間を1秒、被験者の検知位置をステップから3.5mの位置とした場合の被験者の評価を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態において、建物の外部と内部との間の出入口(玄関)や、建物の内部の空間の出入口などの周囲に設けられた照明の明るさを制御する技術について説明する。実施の形態に係る照明システムは、出入口の周囲に人又は移動体が存在することを検知すると、照明を徐々に明るくする。これにより、自宅に帰ってきた人、出入口に入ろうとする人、出入口に入ってきた人などに、照明による明るさによって出迎えられているような感覚を与えることができるので、照明の情緒的な価値を向上させることができる。また、来客や近隣を歩く人などが、突然点灯する照明に驚いたり不快感を抱いたりすることを抑制することができる。
【0011】
従来の照明の制御技術では、省エネルギーやまぶしさ感の制御という機能性の観点から段調光が採用されていた。照明を、常にその照明の最大照度で点灯させるのではなく、最大照度より暗い照度でも点灯させることにより、消費エネルギーやまぶしさを低減させることができる。しかしながら、暗さばかりを優先すれば、機能的に照明の意味がなくなってしまう。照明をどの程度暗くしても問題ないのかを判断する基準があいまいであるという課題があった。これに対して、本実施の形態では、照明の機能性を担保しつつ、さらに情緒性を追求した照明の制御技術を提案する。
【0012】
従来の照明の制御技術では、使用者の情緒的な評価は考慮されていなかった。これは、人の感性的な評価を的確に分析する技術が確立されていなかったためであると考えられる。本発明者らは、人の感性的な評価を的確に分析する技術を確立し、その分析技術を用いて、照明の制御に関する実験によって得られた被験者の感性的な評価を分析した。照明の情緒的な価値をより高めることが可能な照明の制御方法について、実験の分析結果を踏まえて説明する。
【0013】
図1は、実施の形態に係る照明システムの構成を示す。照明システム1は、建物2の外部と内部との間の出入口である玄関3の周囲に設けられた照明10a、10b、10c(以下、総称して「照明10」ともいう)と、玄関3の周囲に人又は移動体が存在することを検知する人感センサ4a、4b(以下、総称して「人感センサ4」ともいう)と、明るさを検知する照度センサ9と、照明10の明るさを制御する制御装置50と、それらを接続する通信網40とを備える。制御装置50は、照明10に内蔵されてもよいし、人感センサ4に内蔵されてもよいし、それらとは独立して設けられてもよい。
【0014】
照明10aは、カーポート5の天井の下面に設けられる。照明10bは、玄関3の下方に設けられたステップ6の蹴込みに設けられる。照明10cは、建物2の敷地の境界に設けられた塀7の上部に設けられる。照明10a及び10cは、長い管状又は棒状の形状を有し、玄関3に向かう通路8に沿うように設けられる。照明10a及び10cは、通路8に沿うように設けられた複数のスポットライトなどであってもよい。照明10bは、通路8を通って玄関3に向かう人が視認可能な位置に設けられる。照明10a、10b、10cは、制御装置50によって明るさを変化させることが可能な照明である。
【0015】
人感センサ4aは、カーポート5の天井に設けられる。人感センサ4aは、周囲数メートル程度、すなわちカーポート5の端部付近までの範囲に人又は移動体が存在することを検知する。人感センサ4aは、建物2の門扉付近に人又は移動体が存在することを検知するように設けられてもよい。人感センサ4aは、照明10aの明るさを上昇させる契機として用いられる。したがって、照明10aは、建物2に入ろうとする人がカーポート5の端部又は門扉に近づいたことを契機として明るくなり始め、歩を進めるにつれて徐々に明るくなるように制御される。これにより、通路8を通って玄関3に向かう人を光で出迎えるような情緒的な演出を提供することができる。
【0016】
人感センサ4bは、玄関3の近傍に設けられる。人感センサ4bは、周囲数メートル程度、すなわち玄関3から数メートル程度の範囲に人又は移動体が存在することを検知する。人感センサ4bは、建物2の門扉付近に人又は移動体が存在することを検知するように設けられてもよい。人感センサ4bは、人が照明10bを視認できる範囲に人又は移動体が存在することを検知するように設けられてもよい。人感センサ4bは、照明10bの明るさを上昇させる契機として用いられる。したがって、照明10bは、建物2に入ろうとする人が、照明10bを視認可能な、玄関3から数メートル程度の位置又は門扉に近づいたことを契機として明るくなり始め、歩を進めるにつれて徐々に明るくなるように制御される。これにより、建物2に入ろうとする人が、徐々に明るくなる照明10bを視認しながら玄関3に向けて歩を進められるようにすることができる。
【0017】
照明10aは、人感センサ4bにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよいし、人感センサ4a、4bとは別に設けられた人感センサにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよい。照明10bは、人感センサ4aにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよいし、人感センサ4a、4bとは別に設けられた人感センサにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよい。照明10cは、人感センサ4aにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよいし、人感センサ4bにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよいし、人感センサ4a、4bとは別に設けられた人感センサにより人又は移動体が存在することが検知されたことを契機として明るくされてもよい。すなわち、人感センサ4a、4b、その他の人感センサのいずれでも、照明10a、10b、10cの明るさを上昇させる契機として用いることができる。
【0018】
図2は、実施の形態に係る照明システムによる照明の制御方法を示す。以下、照明10aの制御方法について説明するが、照明10b、10cの制御方法も同様である。
【0019】
照明10aは、明るい昼間などには消灯される。照度センサ9により所定の照度よりも暗くなったことが検知されると、制御装置50は、照明10aを第1レベル(例えば、照明10aの最も明るいレベルの10%)の明るさで点灯させる。
【0020】
時点t1において、人感センサ4aにより人又は移動体が検知されると、制御装置50は、照明10aの明るさを徐々に上昇させる。これにより、建物2に入ろうとする人や、車で建物2に帰宅又は来訪してカーポート5に駐車しようとする人などに、暖かみのある情緒的な光の演出を提供することができる。
【0021】
制御装置50は、下に凸な曲線に沿って、第2レベル(例えば、照明10aの最も明るいレベルの100%)まで照明10aの明るさを上昇させる。人は、暗いときには明るさの変化に気づきやすく、明るいときには明るさの変化に気づきにくい。したがって、直線状、又は上に凸な曲線に沿って照明10aの明るさを上昇させると、急に明るくなったように感じさせてしまう。本実施の形態では、下に凸な曲線に沿って照明10aの明るさを上昇させることにより、照明10aが徐々に明るくなるように感じさせることができるので、暖かみのある情緒的な照明で人を出迎えているような感覚を与えることができる。
【0022】
照明10aの場合、第1レベルの照度は0~2ルクス、第2レベルの照度は10~30ルクスであってもよい。照明10bの場合、第1レベルの照度は0~1ルクス、第2レベルの照度は2~5ルクスであってもよい。
【0023】
後述する評価実験により、第1レベルの明るさから第2レベルの明るさまで徐々に上昇させるフェードイン期間s1は、0.5秒以上2秒未満である場合に、被験者の情緒的な評価が高いことが分かった。フェードイン期間s1は、0.5秒以上、0.6秒以上、0.7秒以上、0.8秒以上、0.9秒以上、1秒以上、1.1秒以上、1.2秒以上、1.3秒以上、1.4秒以上、1.5秒以上であってもよい。フェードイン期間s1は、2秒未満、1.9秒以下、1.8秒以下、1.7秒以下、1.6秒以下、1.5秒以下であってもよい。これにより、照明10の情緒的価値を向上させることができる。
【0024】
時点t3において、人が玄関3から建物2の中に入ると、人感センサ4aが人を検知しなくなる。制御装置50は、人感センサ4aが人又は移動体を検知しなくなってから所定期間(例えば30秒)経過した時点t4から、照明10aの明るさを徐々に下降させる。これにより、近隣の住人や通行者などに、暖かみのある情緒的な光の演出を提供することができる。
【0025】
制御装置50は、下に凸な曲線に沿って、第1レベルまで照明10aの明るさを徐々に下降させる。これにより、消え終わりの明るさの変化を緩やかにすることができるので、周囲に対する気遣いを感じさせることができる。
【0026】
後述する評価実験により、第2レベルの明るさから第1レベルの明るさまで徐々に下降させるフェードアウト期間s2は、0.5秒以上5秒未満である場合に、被験者の情緒的な評価が高いことが分かった。フェードアウト期間s2は、0.5秒以上、1秒以上、1.5秒以上、2秒以上、2.5秒以上であってもよい。フェードアウト期間s2は、5秒未満、4.5秒以下、4秒以下、3.5秒以下、3秒以下であってもよい。これにより、照明10の情緒的価値を向上させることができる。
【0027】
図3は、実施の形態に係る制御装置50の構成を示す。制御装置50は、通信装置51、記憶装置52、及び処理装置60を備える。制御装置50は、照明10や人感センサ4に内蔵されてもよいし、外部に独立して設けられてもよい。前者の場合、制御装置50は、マイクロプロセッサなどであってもよい。後者の場合、制御装置50は、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末であってもよいし、サーバ装置であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの装置であってもよい。
【0028】
通信装置51は、通信網40を介した他の装置との間の通信を制御する。通信装置51は、有線又は無線の任意の通信方式により通信を行ってもよい。
【0029】
記憶装置52は、制御装置50により使用されるプログラム、データなどを記憶する。記憶装置52は、半導体メモリ、ハードディスクなどであってもよい。
【0030】
処理装置60は、検知情報取得部61及び明るさ制御部62を備える。これらの構成は、ハードウエアとしては、任意の回路、コンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIなどにより実現される。これらの構成は、ソフトウエアとしては、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、又はハードウエアとソフトウエアの組合せなど、いろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0031】
検知情報取得部61は、人感センサ4、照度センサ9などのセンサにより検知された検知情報を、通信装置51を介して取得する。
【0032】
明るさ制御部62は、検知情報取得部61により取得された検知情報に基づいて、照明10の明るさを制御する。明るさ制御部62は、
図2に示した制御方法にしたがって、照明10の明るさを制御する。
【0033】
図4は、実施の形態に係る照明制御方法の手順を示すフローチャートである。明るさ制御部62は、夜間になるまで(S10のN)、照明10を点灯しない。照度センサ9により所定の明るさよりも暗くなったことが検知されると(S10のY)、明るさ制御部62は、第1レベルの明るさで照明10を点灯させる(S12)。
【0034】
明るさ制御部62は、人感センサ4により人又は移動体が検知されるまでは(S14のN)、第1レベルの明るさで照明10を点灯させる(S12)。人感センサ4により人又は移動体が検知されると(S14のY)、明るさ制御部62は、0.5秒以上2秒未満のフェードイン期間s1において、
図2に示した下に凸な曲線に沿って照明10の明るさを第2レベルの明るさまで徐々に上昇させる(S16)。
【0035】
明るさ制御部62は、人感センサ4により人又は移動体が検知されている間は(S20のY)、第2レベルの明るさで照明10を点灯させる(S18)。人感センサ4により人又は移動体が検知されなくなると(S20のN)、明るさ制御部62は、0.5秒以上5秒未満のフェードアウト期間s2において、
図2に示した下に凸な曲線に沿って照明10の明るさを第1レベルの明るさまで徐々に下降させる(S22)。
【0036】
S10に戻り、上記の手順を繰り返す。
【0037】
[評価実験]
一般的な住宅を模した実験場において照明の明るさを制御し、被験者の評価を分析した。
【0038】
[評価実験1:カーポートの照明]
図5は、評価実験に用いた実験場の平面図を模式的に示す。玄関3が設置された実験場に、5000mm×2300mmのカーポート5を設置した。カーポート5の天井の下面に、カーポート5の長辺にわたって照明10aを設置した。夜間に住民が帰宅したシーンを想定して、玄関3から6mの位置pから玄関3に向かって被験者が歩いているときに、照明10aの明るさを上昇させた。
図6~
図9に示す分析結果においては、玄関3から6mの位置pにおいて人感センサにより被験者が検知されたものとする。また、住民が自宅内に入った後に近隣住人や通行人が照明を見るシーンを想定して、被験者が位置pに留まって実験場を見ているときに、照明10aの明るさを下降させた。
【0039】
図6は、フェードイン期間s1を1秒、1.5秒、2秒として照明10aの明るさを制御した場合の被験者の評価を分析した結果を示す。フェードイン期間s1が1.5秒である場合に、安心する、迎え入れられている、と感じる被験者が最も多いことが分かった。また、フェードイン期間s1が1秒である場合に、空間の広がりを感じる、心地よい、明るさに変化がある、と感じる被験者が最も多いことが分かった。この結果を踏まえて、フェードイン期間s1は、0.5秒以上2秒未満であることが好ましく、1秒以上1.5秒以下であることがより好ましい。
【0040】
図7は、フェードイン期間s1における照明10aの明るさを直線状に上昇させた場合と、下に凸な曲線に沿って上昇させた場合の被験者の評価を分析した結果を示す。下に凸な曲線に沿って上昇させた場合の方が、情緒的である、高級である、緩やかに点灯する、明るくなり始めるまでの時間がちょうど良い、安心する、迎え入れられている、安らぎがある、センスが良い、と感じる被験者が多いことが分かった。この結果を踏まえて、照明10aの明るさは、下に凸な曲線に沿って上昇させることが好ましい。
【0041】
図8は、フェードアウト期間s2を2秒、3秒として照明10aの明るさを制御した場合の被験者の評価を分析した結果を示す。フェードアウト期間s2が3秒である場合の方が、信頼できる、情緒的である、高級である、緩やかに消える、安心する、心地よい、安らぎがある、気遣いを感じる、センスが良い、違和感がない、と感じる被験者が多いことが分かった。この結果を踏まえて、フェードアウト期間s2は、0.5秒以上5秒未満であることが好ましく、2秒以上4秒以下であることがより好ましい。
【0042】
図9は、フェードアウト期間s2における照明10aの明るさを直線状に下降させた場合と、下に凸な曲線に沿って下降させた場合の被験者の評価を分析した結果を示す。下に凸な曲線に沿って下降させた場合の方が、信頼できる、情緒的である、高級である、緩やかに消える、安心する、心地よい、安らぎがある、センスが良い、明るさに変化がある、違和感がない、消え終わりが緩やかである、と感じる被験者が多いことが分かった。この結果を踏まえて、照明10aの明るさは、下に凸な曲線に沿って下降させることが好ましい。
【0043】
図10は、人感センサがカーポートの中央付近に設けられた場合と玄関3とは逆側の先端付近に設けられた場合の被験者の評価を分析した結果を示す。人感センサがカーポート5の中央付近に設けられた場合は、玄関から6mの位置p付近で被験者が検知される。人感センサがカーポート5の先端付近に設けられた場合は、玄関3から9mの位置で被験者が検知される。人感センサがカーポート5の中央付近に設けられた場合の方が、情緒的である、高級である、緩やかに点灯する、明るくなり始めるまでの時間がちょうど良い、安心する、迎え入れられている、心地よい、安らぎがある、センスが良い、明るさに変化がある、と感じる被験者が多いことが分かった。この結果を踏まえて、人感センサ4aは、カーポート5の中央付近に設けられるのが好ましい。これにより、通行人などを検知するのを抑えつつ、情緒的価値の高い照明10aの制御を実現することができる。
【0044】
被験者の歩行速度を、不動産業界における基準である約80m/分(約1.33m/秒)とすると、5mのカーポート5を約3.8秒で通過することになる。カーポート5の中央付近に人感センサ4aが設けられる場合、位置pにおいて被験者が検知されて照明10aの明るさが徐々に上昇され、1秒後にはカーポート5の先端から約1.3m、1.5秒後には約2m、2秒後には約2.7mの位置に到達する。フェードイン期間s1を2秒以上とすると、照明10aが第2レベルの明るさで点灯される前に、カーポート5の中央付近を通過することになる。上記の評価結果から、玄関3に向かう人がカーポート5の中央手前付近を通過するときに最大照度で点灯されるように照明10aの明るさを制御するのが情緒的に好ましいことが分かった。フェードイン期間s1が短すぎると、点灯が速く機能的な印象を与え、フェードイン期間s1が長すぎると、じれったい印象を与えることが分かった。
【0045】
[評価実験2:ステップの照明]
図11は、評価実験に用いた実験場の平面図を模式的に示す。玄関3が設置された実験場に、1200mm×825mmのステップ6を設置した。ステップ6の蹴込みに照明10bを設置した。夜間に住民が帰宅したシーンを想定して、玄関3から6mの位置pから玄関3に向かって被験者が歩いているときに、照明10bの明るさを上昇させた。また、住民が自宅内に入った後に近隣住人や通行人が照明を見るシーンを想定して、被験者が位置pに留まって実験場を見ているときに、照明10bの明るさを下降させた。
【0046】
図12は、フェードイン期間s1を1秒、被験者の検知位置をステップ6から6mの位置とした場合と、フェードイン期間s1を1.5秒、被験者の検知位置をステップ6から6mの位置とした場合と、フェードイン期間s1を1秒、被験者の検知位置をステップ6から3.5mの位置とした場合の被験者の評価を分析した結果を示す。フェードイン期間s1が1.5秒、被験者の検知位置をステップ6から6mの位置とした場合に、情緒的である、緩やかに点灯する、明るくなり始めるまでの時間がちょうど良い、安心する、迎え入れられている、心地よい、安らぎがある、センスが良い、明るさに変化がない、と感じる被験者が最も多いことが分かった。この結果を踏まえて、フェードイン期間s1は、0.5秒以上2秒未満であることが好ましく、1秒以上1.5秒以下であることがより好ましい。また、照明10bから4m以上9m以下、より好ましくは5m以上7m以下離れた位置に存在する人又は移動体を検知したことを契機として照明10bの明るさを上昇させることが好ましい。
【0047】
ステップ6から3.5mの位置で被験者が検知されてから照明10bの明るさを上昇させると、照明10bに近すぎて、照明10bの明るさの変化を被験者が視認しづらい。身長が170cm(視点位置が160cm)である場合、ステップ6から6mの位置からは照明10bの96%が視認できるのに対して、ステップ6から3.5mの位置からは視認することができない。したがって、多くの人が照明10bの大部分を視認することができるようにするという観点からも、照明10bから4m以上9m以下、より好ましくは5m以上7m以下離れた位置に存在する人又は移動体を検知したことを契機として照明10bの明るさを上昇させることが好ましい。
【0048】
以上、実施の形態に基づき本開示を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0049】
照明10は、ダウンライト、グランドライト、ウォールライト、ポーチライト、フットライト、ガーデンライト、門柱灯、表札灯、門袖灯など、またそれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
実施の形態においては、主に住宅の玄関の周辺に設置される照明10を制御する場合について説明したが、建物の内部の空間の出入口の外部又は内部に設置された照明10にも、本開示の技術を適用可能である。例えば、建物内のホールなどに入場しようとする客や入場した客を出迎えるために本開示の技術を適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…照明システム、2…建物、3…玄関、4…人感センサ、5…カーポート、6…ステップ、7…塀、8…通路、9…照度センサ、10…照明、40…通信網、50…制御装置、51…通信装置、52…記憶装置、60…処理装置、61…検知情報取得部、62…明るさ制御部。