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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062623
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】カーテンウォールの固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/96 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E04B2/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170589
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】藤田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】千本 英二郎
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NB02
2E002NC03
2E002PA01
2E002QA04
2E002QB01
2E002QC01
2E002TA01
2E002TA02
(57)【要約】
【課題】施工及び管理が容易であり躯体にファスナーを強固に固定できるカーテンウォールの固定構造を提供する。
【解決手段】建物の躯体と、方立に連結されるとともに、孔部を有し、孔部に挿し通されたボルトを用いて躯体に固定されるファスナーと、を備える。ファスナーは、カーテンウォールの壁面に沿った幅方向の寸法が、壁面と直交する方向の寸法よりも長く、且つ、方立の連結位置を挟んで幅方向の両側において躯体に固定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体と、
方立に連結されるとともに、孔部を有し、前記孔部に挿し通されたボルトを用いて前記躯体に固定されるファスナーと、
を備え、
前記ファスナーは、
カーテンウォールの壁面に沿った幅方向の寸法が、前記壁面と直交する方向の寸法よりも長く、且つ、
前記方立の連結位置を挟んで前記幅方向の両側において前記躯体に固定される、カーテンウォールの固定構造。
【請求項2】
前記孔部は、前記幅方向に離れて配置され、それぞれが前記幅方向に延びる長孔部である、
請求項1に記載のカーテンウォールの固定構造。
【請求項3】
前記ファスナーは、前記長孔部のそれぞれに複数挿し通された前記ボルトを用いて前記躯体に固定される、
請求項2に記載のカーテンウォールの固定構造。
【請求項4】
前記ファスナーは、
前記孔部を前記壁面と直交する室内外方向に複数有し、
前記室内外方向に並ぶ複数の前記孔部に挿し通された複数の前記ボルトを用いて前記躯体に固定される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカーテンウォールの固定構造。
【請求項5】
前記ファスナーと前記躯体とを接着する接着剤を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカーテンウォールの固定構造。
【請求項6】
前記ボルトは、M12以上の六角ボルトである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のカーテンウォールの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーテンウォールの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、中高層ビルなどの建物の外壁にカーテンウォールを設ける場合、建物の躯体にファスナーを溶接し、ファスナーにカーテンウォールの方立を固定している。躯体にファスナーを溶接する場合、火花が発生するため火災に対する安全対策を十分に行う必要がある。溶接作業は専門性が高く資格も必要であるため、特定の作業員しかできない。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、高張力鋼で形成されたハイテンションボルトを用いることによって、建物の躯体にファスナーを介してカーテンウォールを高い接合強度で固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-216955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイテンションボルトは、固定強度は大きいが施工とボルト自身の管理が大変である。通常用いられる六角ボルト等のボルトは、施工とボルト自身の管理は容易であるが、固定強度が十分ではない。
【0006】
本開示は、以上のような点を考慮してなされたもので、施工及び管理が容易であり躯体にファスナーを強固に固定できるカーテンウォールの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、建物の躯体と、方立に連結されるとともに、孔部を有し、前記孔部に挿し通されたボルトを用いて前記躯体に固定されるファスナーと、を備え、前記ファスナーは、カーテンウォールの壁面に沿った幅方向の寸法が、前記壁面と直交する方向の寸法よりも長く、且つ、前記方立の連結位置を挟んで前記幅方向の両側において前記躯体に固定される、カーテンウォールの固定構造である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態のカーテンウォールの固定構造を示し、図2のA-A線断面に対応する鉛直断面図である。
図2図1のB-B線断面図である。
図3】第1実施形態のカーテンウォールの固定構造に係る第1変形例の断面図である。
図4】第1実施形態のカーテンウォールの固定構造に係る第2変形例の断面図である。
図5】第1実施形態のカーテンウォールの固定構造に係る第3変形例の断面図である。
図6】本開示の第2実施形態のカーテンウォールの固定構造を示す部分断面図である。
図7図6の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のカーテンウォールの固定構造の実施の形態を、図1から図7を参照して説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺やボルトの数等を異ならせている。
【0010】
[カーテンウォールの固定構造の第1実施形態]
図1および図2に示すように、第1実施形態に係るカーテンウォールの固定構造1は、ファスナー2と、固定金具4と、ボルト5と、を有する。ファスナー2は、躯体3に取り付けられる。カーテンウォール11は、固定金具4を介してファスナー2に取り付けられる。カーテンウォール11は、面材10を有する。面材10は、無目及び左右一対の方立13を四周枠組みすることによって構成した枠の内部にガラスやコンクリート等の面材パネル14を保持したものである。
【0011】
以下の説明では、カーテンウォール11における面材10の壁面に直交する方向を屋内外方向と表記する。カーテンウォール11の壁面に沿った水平方向であり、かつ屋内外方向に直交する方向を幅方向と表記する。図面では、幅方向を矢印Xで示し、屋内外方向を矢印Yで示し、上下方向を矢印Zで示す。
【0012】
躯体3は、H形鋼である。躯体3は、建物の幅方向全体にわたって延びる。躯体3は、板面が水平面となる姿勢の上フランジ31Aと下フランジ31Bとウェブ31Cとを有する。上フランジ31A及び下フランジ31Bは、フランジ部に対応する。上フランジ31Aは、貫通孔32を複数有する。貫通孔32は、ボルト5の位置に配置されている。複数の貫通孔32は、断面が円形であり、上フランジ31Aをそれぞれ上下方向に貫通する。貫通孔32には、ボルト5が挿し通される。貫通孔32は、幅方向に間隔をあけて2つ配置されている。2つの貫通孔32は、方立13を中心として幅方向に線対称に配置されている。
【0013】
固定金具4は、取付部51と、調整ボルト装着部52と、を有する。取付部51は、上下方向に延びる矩形の平板状である。取付部51は、挿通孔53と、挿通孔54と、を有する。挿通孔53及び挿通孔54は、取付部51を屋内外方向に貫通する。挿通孔54は、挿通孔53を挟んで上下方向の両側に配置されている。取付部51は、方立13に係合するボルト41が挿通孔54に挿し通され、ボルト41にナットが締結されることによって方立13に屋内側から固定される。挿通孔53には、屋外側からボルト40が挿入されて挿し通される。
【0014】
調整ボルト装着部52は、取付部51の上端から屋内側に延びている。調整ボルト装着部52は、挿通孔55と、収容溝56と、調整ナット43と、を有する。挿通孔55は、調整ボルト装着部52における屋内外方向の中央に位置する。挿通孔55は、断面円形であり、調整ボルト装着部52を上下方向に貫通する。挿通孔55には、調整ボルト42が上側から挿通する。収容溝56は、挿通孔55における上下方向の中途に設けられている。収容溝56は、幅方向と直交する横断面が矩形状であり、幅方向の両端部が開口した溝である。収容溝56は、幅方向に延びる中心軸線が挿通孔55の中心軸線と直交する。調整ナット43は、収容溝56に収容されている。調整ナット43は、平行な2辺が収容溝56の壁面と嵌め合わされることによって、調整ボルト装着部52に対して回転不能に装着される。調整ナット43の雌ねじ部には、調整ボルト42の雄ねじ部がねじ込まれている。
【0015】
ファスナー2は、幅方向と直交する断面形状がL字形の金具である。ファスナー2は、上側から見て、屋内外方向の寸法よりも幅方向の寸法が長い。ファスナー2は、方立固定片21と、躯体固定片22と、を有する。方立固定片21は、上下方向に延びる矩形の平板状である。方立固定片21は、屋内外方向に貫通するルーズ孔21aを有する。ルーズ孔21aは、上下方向に延びる。ルーズ孔21aには、屋外側からボルト40が挿入されて挿し通される。方立固定片21は、ボルト40がルーズ孔21aに挿し通され、ボルト40にナットが締結されることによって方立13に屋内側から連結される。
【0016】
躯体固定片22は、板面が長方形の平板状である。躯体固定片22は、板面が水平面となる姿勢で方立固定片21の下縁部から屋内側に突出する。躯体固定片22は、長孔部23を有する。長孔部23は、孔部に対応する。長孔部23は、躯体固定片22を上下方向に貫通する。長孔部23は、幅方向に延びる。長孔部23は、幅方向の両端に半円の円弧部23aをそれぞれ有する。長孔部23の屋内外方向の寸法は、ボルト5の直径よりも大きい。長孔部23には、ボルト5が挿し通される。長孔部23は、幅方向に間隔をあけて2つ並んで配置されている。長孔部23は、方立13の連結位置となるボルト40の位置を挟んで幅方向に離れた両側に配置されている。2つ長孔部23は、屋内外方向の位置が同一である。長孔部23は、躯体固定片22における幅方向の中央を中心として線対称に配置されている。長孔部23は、ファスナー2における幅方向ついて、方立13が連結された領域から離れて配置されている。
【0017】
長孔部23の屋内外方向の位置は、躯体3における貫通孔32の位置と同一の位置である。躯体固定片22を上フランジ31Aに設置したときに、長孔部23は貫通孔32と上下方向に連通する。上下方向に連通する長孔部23及び貫通孔32には、ボルト5が上側から挿し通され、ボルト5にナットが締結されることによって、躯体3に躯体固定片22が上側から固定される。
【0018】
ボルト5は、六角ボルトである。ボルト5が六角ボルトであることによって、ハイテンションボルトを用いた場合に生じる施工及び管理の手間を低減できる。ボルト5は、ファスナー2と躯体3の接合強度を大きくするためには、M12以上であることが好ましい。躯体固定片22を有するファスナー2は、ナットによる締結前に、貫通孔32に挿し通されたボルト5に対して幅方向に移動可能である。方立13に連結されたファスナー2を幅方向に移動させることによって、カーテンウォール11と躯体3の幅方向の位置を調整可能である。
【0019】
上記構成のカーテンウォール11の施工方法は、カーテンウォール11の壁面に沿った幅方向に、断面が円形でありボルト5が挿し通し可能な複数の貫通孔32が上フランジ31Aに形成された躯体3に、幅方向に延びボルト5が挿し通される孔部である長孔部23を有するファスナー2を配置することと、長孔部23と、長孔部23と対向する貫通孔32に挿し通したボルト5を用いて、ファスナー2を躯体3に仮固定することと、ファスナー2に方立13を連結することと、方立13を連結したファスナー2をボルト5を用いて躯体3に本固定することと、を含む。
【0020】
複数の貫通孔32が上フランジ31Aに形成されたH形鋼を有する躯体3に、長孔部23を有するファスナー2を配置することは、ファスナー2に方立13を連結する前に実施される。長孔部23と、長孔部23と対向する貫通孔32に挿し通したボルト5を用いて、ファスナー2を躯体3に仮固定することは、躯体3に対して方立13を配置する幅方向の位置に応じてファスナー2を設置し、ファスナー2における長孔部23と、長孔部23と上下方向に重なる貫通孔32にボルト5を上側から挿し通すとともに、ボルト41にナットを軽く締結してファスナー2を躯体3に仮固定する。
【0021】
ファスナー2を躯体3に仮固定した後には、ファスナー2に方立13を連結する。ファスナー2に方立13を連結することは、固定金具4における挿通孔53及びファスナー2におけるルーズ孔21aにボルト40を屋外側から挿し通しボルト40にナットを締結する。ボルト40にナットを締結することによって、固定金具4を介してファスナー2に方立13を連結する。
【0022】
ファスナー2に方立13を連結した後には、方立13を連結したファスナー2をボルト5に対して長孔部23に沿って移動させてファスナー2の幅方向の位置を調整する。ファスナー2は、躯体3に仮固定されているだけなので、ボルト5及び躯体3に対するファスナー2の幅方向の位置を容易に微調整可能である。ファスナー2の幅方向の位置を微調整することによって、ボルト5及び躯体3に対する方立13の幅方向の位置を微調整できる。ファスナー2を介して方立13の幅方向の位置を微調整した後には、ボルト5にナットを締結することによって、幅方向の位置を調整したファスナー2を躯体3に本固定する。ファスナー2を躯体3に本固定することによって、方立13を含むカーテンウォール11が、躯体3における調整された幅方向の位置に設置される。
【0023】
実施形態のカーテンウォールの固定構造1及び施工方法を用いたときには、ボルト5が六角ボルトであるため、ボルト5にナットを締結することによって、ファスナー2を躯体3に接合することができ施工及び管理が容易になる。ボルト5にナットを締結することによって、ファスナー2を躯体3に接合するため、溶接した場合に生じる躯体3の強度を低下を抑制できる。
【0024】
実施形態のカーテンウォールの固定構造1及び施工方法を用いたときには、ファスナー2の屋内外方向の寸法よりも幅方向の寸法が長いため、ファスナー2は幅方向に大きな面積で躯体3に接する。ファスナー2と躯体3が大きな面積で接することによって、ボルト5にナットを締結したときに、ファスナー2と躯体3との間の摩擦力が大きくなり、例えば、溶接を用いることなくファスナー2と躯体3との接合強度を大きくできる。風圧等によってカーテンウォール11を介して方立13に大きな負荷が掛かった際にも、躯体3に対するカーテンウォール11の位置がずれることを抑制できる。
【0025】
実施形態のカーテンウォールの固定構造1及び施工方法を用いたときには、方立13の連結位置を挟んで幅方向に離れた両側において躯体3に固定されるため、方立13を介して風圧等を受けるファスナー2の領域がボルト5による固定箇所の中間となり、回転するモーメントが加わりづらくなり、ファスナー2と躯体3を強固に固定することが可能になる。ファスナー2の屋内外方向の寸法よりも幅方向の寸法が長いことによって、固定箇所を幅方向に大きく離すことが可能となり、耐モーメント性が一層向上する。
【0026】
実施形態のカーテンウォールの固定構造1及び施工方法を用いたときには、方立13を連結したファスナー2をボルト5に対して長孔部23に沿って移動させることによって、ファスナー2及び方立13の幅方向の位置を容易に調整できる。実施形態のカーテンウォールの固定構造1及び施工方法を用いたときには、風圧等を受けるファスナー2の領域に長孔部23が設けられていないため、ファスナー2において風圧等を受ける箇所の断面性能が上がり、ファスナー2自体の強度を向上させることができる。
【0027】
[第1実施形態の第1変形例]
上記実施形態では、ファスナー2において、方立13の連結位置を挟んで幅方向に離れた両側にボルト5及び長孔部23をそれぞれ1つずつ配置する構成を例示した。図3に示すように、第1変形例においては、長孔部23のそれぞれに複数挿し通されたボルト5を用いてファスナー2が躯体3に固定される。第1変形例においては、長孔部23のそれぞれに2つのボルト5が長孔部23における幅方向の両端に挿し通され、合計4つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3が固定されている。上フランジ31Aには、ボルト5と上下方向に対向する位置に合計4つの貫通孔32が形成されている。
【0028】
第1変形例の固定構造を用いたときには、2つのボルト5を用いた場合と比較して接合強度が向上し、ファスナー2と躯体3をより強固に固定することができる。ファスナー2において、幅方向で最も離れた位置に挿し通されたボルト5同士の距離がより長くなるため、耐モーメント性を一層向上させることができる。ボルト5は、長孔部23のそれぞれに3つ以上挿し通される構成であってもよい。
【0029】
[第1実施形態の第2変形例]
図4に示すように、第2変形例においては、方立13の連結位置を挟んで幅方向に離れた両側に配置された長孔部23が、室内外方向に離れて複数並んでいる。第2変形例においては、長孔部23が、室内外方向に2列並んでいる。合計4つの長孔部23のそれぞれに複数挿し通されたボルト5を用いてファスナー2が躯体3に固定される。長孔部23のそれぞれにボルト5が長孔部23に挿し通され、合計4つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3が固定されている。上フランジ31Aには、ボルト5と上下方向に対向する位置に合計4つの貫通孔32が形成されている。
【0030】
第2変形例の固定構造を用いたときには、2つのボルト5を用いた場合と比較して接合強度が向上し、ファスナー2と躯体3をより強固に固定することができる。ファスナー2において、室内外方向に離れた位置に挿し通されたボルト5を用いてファスナー2と躯体3が固定されるため、耐モーメント性を一層向上させることができる。
【0031】
第2変形例の固定構造においては、第1変形例と同様に、長孔部23のそれぞれに2つのボルト5を長孔部23における幅方向の両端に挿し通し、合計8つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3を固定してもよい。合計8つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3を固定することによって、より強固に固定することができる。
【0032】
[第1実施形態の第3変形例]
図5に示すように、第3変形例においては、4つの長孔部23と、1つの孔部23Aとがファスナー2に形成されている。長孔部23は、方立13の連結位置を挟んで幅方向に離れた両側の位置と、室内外方向に離れた位置の4つ配置されている。孔部23Aは、平面視円形である。孔部23Aは、幅方向が方立13の連結位置であり、室内外方向が室内外方向に離れた長孔部23の中間の位置に1つ配置されている。4つの長孔部23及び1つの孔部23Aのそれぞれに挿し通された5つボルト5を用いてファスナー2が躯体3に固定される。上フランジ31Aには、ボルト5と上下方向に対向する位置に合計5つの貫通孔32が形成されている。
【0033】
第3変形例の固定構造を用いたときには、2つのボルト5を用いた場合と比較して接合強度が向上し、ファスナー2と躯体3をより強固に固定することができる。ファスナー2において、室内外方向に離れた位置に挿し通されたボルト5を用いてファスナー2と躯体3が固定されるため、耐モーメント性を一層向上させることができる。
【0034】
第3変形例の固定構造においては、第1変形例と同様に、長孔部23のそれぞれに2つのボルト5を長孔部23における幅方向の両端に挿し通し、合計9つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3を固定してもよい。合計9つのボルト5を用いてファスナー2と躯体3を固定することによって、より強固に固定することができる。
【0035】
[カーテンウォールの固定構造の第2実施形態]
図6に示すように、カーテンウォールの固定構造1は、ファスナー2と躯体3を接着する接着剤44を有する。接着剤44は、第1接着剤45と、第2接着剤46と、を有する。
【0036】
図6及び図7に示すように、第1接着剤45は、躯体固定片22の外周端241,242,243それぞれと躯体3の上フランジ31Aの上面311とがなす角部61,62,63に各外周端が延びる方向に沿って設けられる。
【0037】
第1接着剤45は、躯体固定片22の外周端241,242,243それぞれと上フランジ31Aの上面311の両方に付着されている。角部61,62,63は、それぞれ直角である。躯体固定片22の第1外周端241と上フランジ31Aの上面311とがなす角部61を第1角部61と表記する。躯体固定片22の第2外周端242と上フランジ31Aの上面311とがなす角部を第2角部62と表記する。躯体固定片22の第3外周端243と上フランジ31Aの上面311とがなす角部を第3角部63と表記する。
【0038】
第2接着剤46は、上フランジ31Aの屋外側の端面312と躯体固定片22の下面221とがなす第4角部64に、上フランジ31Aの屋外側の端面312が延びる方向に沿って設けられる。第4角部64は、直角である。第2接着剤46は、上フランジ31Aの屋外側の端面312および躯体固定片22の下面221の両方に付着されている。
【0039】
第1接着剤45および第2接着剤46は、例えば、常温環境下で硬化する二液性接着剤である。第1接着剤45および第2接着剤46の表面には、アングル材430が設けられる。アングル材430は、直線状に延び断面形状がL字形のピース状の部材である。第1角部61に設けられるアングル材430と、第2角部62に設けられるアングル材430と、第3角部63に設けられるアングル材430とは、別のピースであり、一体化していない。アングル材430における断面形状のL字の一方の片を第1片431と表記し、他方の片を第2片432と表記する。第1片431と第2片432とは、板面の形状および板厚が同じである。第1片431と第2片432とは、90°を成している。アングル材430は、例えば、鋼材やアルミニウム合金、ステンレスなどを材料として製作されている。アングル材430における第1片431の第2片432が接続される側と反対側の面、および第2片432の第1片431が接続される側と反対側の面を外側面433と表記する。
【0040】
第1接着剤45の表面に設けられるアングル材430の姿勢は、第1片431および第2片432の一方の片の板面が屋内外方向を向く鉛直面となり、他方が一方の下縁部から屋内側に突出する。本実施形態では、第1片431が一方の片であり、第2片432が他方の片である。第1片431は、第1接着剤45を介して躯体固定片22の第1外周端241と屋内外方向に対向する。第2片432は、第1接着剤45を介して上フランジ31Aの上面311に上方から対向する。アングル材430の第1片431と第2片432とがなす角部は、第1接着剤45を第1外周端241および上フランジ31Aの上面311に押し付ける。アングル材430は、第1角部61に設けられた第1接着剤45の表面全体を幅方向全体に亘って覆っている。
【0041】
第2角部62および第3角部63に設けられるアングル材430の姿勢は、第1片431および第2片432の一方の片の板面が幅方向を向く鉛直面となり、他方が一方の下縁部から幅方向に突出する。本実施形態では、第1片431が一方の片であり、第2片432が他方の片である。第1片431は、第1接着剤45を介して躯体固定片22の第2外周端242、第3外周端243と対向する。第2片432は、第1接着剤45を介して躯体固定片22の下面221と対向する。アングル材430の第1片431と第2片432とがなす角部は、第1接着剤45を第2外周端242、第3外周端243および躯体固定片22の下面221に押し付ける。アングル材430は、第1接着剤45の表面全体を幅方向全体にわたって覆っている。第2角部62および第3角部63に設けられた第1接着剤45の表面を屋内外方向全体にわたって覆っている。
【0042】
第1接着剤45は、表面にアングル材430が設けられるとアングル材430の外側面433に押される。第1接着剤45の断面形状は、略L字形状である。第1接着剤45は、表面にアングル材430が設けられた状態でもファスナー2および躯体3の両方に接着されている。
【0043】
第4角部64に設けられるアングル材430の姿勢は、第1片431および第2片432の一方の片の板面が屋内外方向を向く鉛直面となり、一方の片が一方の片の下縁部から屋外側に突出する。本実施形態では、第1片431が一方の片であり、第2片432が他方の片である。第1片431は、第2接着剤46を介して上フランジ31Aの屋外側の端面312と対向する。第2片432は、第2接着剤46を介してファスナー2の躯体固定片22の下面221と対向する。アングル材430は、第2接着剤46の表面を幅方向全体にわたって覆っている。
【0044】
カーテンウォールの固定方法について説明する。躯体3の上フランジ31Aの上に、ファスナー2の躯体固定片22を上から重ねて配置する。ファスナー2と躯体3とを、ボルト5で接合する。
【0045】
ファスナー2の躯体固定片22の外周端241,242,243と上フランジ31Aの上面311とがなす角部61,62,63に、躯体固定片22の外周端241,242,243が延びる方向に沿って第1接着剤45を設ける。第1接着剤45の表面にアングル材430を設ける。上フランジ31Aの屋外側の端面312と躯体固定片22の下面221とがなす第4角部64に、上フランジ31Aの屋外側の端面312が延びる方向に沿って第2接着剤46を設ける。第2接着剤46の表面にアングル材430を設ける。第1接着剤45および第2接着剤46を硬化させ、躯体固定片22と上フランジ31Aとを固定する。ファスナー2が躯体3に固定され、カーテンウォール11が建物の躯体3に固定される。
【0046】
カーテンウォールの固定構造1では、ファスナー2が躯体3に接着剤44で接着されるとともにボルト接合される。これによって、ファスナー2と躯体3とをより強固に固定できる。ファスナー2を躯体3に第1接着剤45で接着する前に、ファスナー2と躯体3とをボルト接合することによって、ファスナー2を躯体3に接着剤44で接着する際に、ファスナー2が躯体3に対して位置ずれすることなく、容易に接着できる。
【0047】
カーテンウォールの固定構造1では、第1接着剤45および第2接着剤46の表面にアングル材430が設けられる。第1接着剤45は、アングル材430の外側面433に押されることによって、躯体固定片22の外周端241,242,243および躯体3の上フランジ31Aの上面311に均一かつ広範囲に付着する。第2接着剤46は、アングル材430の外側面433に押されることによって、躯体固定片22の下面221および上フランジ31Aの端面312に均一かつ広範囲に付着する。
【0048】
カーテンウォールの固定構造1では、第1接着剤45および第2接着剤46は、常温環境下で硬化する二液性接着剤である。熱を使用せずにファスナー2を躯体3に接着でき、第1接着剤45および第2接着剤46を接着するための装置や電源が不要となる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
第1実施形態の第3変形例においては、ファスナー2に平面視円形の孔部23Aが形成される構成を例示したが、この構成に限定されない。孔部23Aは、見込み方向に延びる長孔に形成されていてもよい。孔部23Aが長孔に形成されることによって、見込み方向に離れた複数のボルト5を孔部23Aに挿し通してファスナー2と躯体3を固定することが可能になり、さらに強固に固定することができる。
【0051】
第1実施形態においては、2つの長孔部23が方立13の連結位置を挟んで幅方向に離れて配置される構成を例示したが、この構成に限定されない。幅方向の両側の長孔部23を繋いた1つの長孔部23としてもよい。幅方向の両側の長孔部23を繋いた1つの長孔部23を設けた場合には、長孔部23に挿し通し可能なボルト5の本数を増やすことが可能になり、ファスナー2と躯体3をさらに強固に固定することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…カーテンウォールの固定構造、2…ファスナー、3…躯体、5…ボルト、11…カーテンウォール、13…方立、23…長孔部、23A…孔部、44…接着剤
図1
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図7