(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062626
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】屋根用支持具及び二層折板屋根
(51)【国際特許分類】
E04D 3/36 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E04D3/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170594
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】中島 正実
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BN06
2E108DF07
2E108DF12
2E108ER03
2E108ER08
2E108ER17
2E108GG01
2E108GG06
(57)【要約】
【目的】二層タイプの折板屋根において、馳締タイプの下層折板屋根の馳締部に簡易且つ迅速に装着して、断熱性を有する屋根用支持具及び二層折板屋根を提供する。
【構成】折板屋根Bの馳締部Jの幅方向一方側を包持する馳包持部14を有し且つその下方に馳締部Jの首部の一方側に当接する挟持面11aを有しその下方に台座部15を有する第1挟持部材1と、第1挟持部材1と同等の構成で且つ馳締部Jの幅方向他方側を包持する馳包持部24と首部の他方側に当接する挟持面21aを有する第2挟持部材2と、第1挟持部材1と第2挟持部材2とを接合する締付具3とを備える。第1挟持部材1と第2挟持部材2の両馳包持部14,24を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部17,27とし、第2挟持部材2の頂面板部高さ寸法は第1挟持部材1の頂面板部高さ寸法よりも小さく形成され、第2挟持部材2の頂面板部23には吊子8が設置固着される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板屋根の馳締部の幅方向一方側を包持する空隙とした馳包持部を有し且つ該馳包持部の下方に前記馳締部の首部の一方側に当接する垂直平坦状の挟持面を有し該挟持面の下方に台座部を有する第1挟持部材と、該第1挟持部材と同等の構成で且つ前記馳締部の幅方向他方側を包持する馳包持部と前記首部の他方側に当接する挟持面を有する第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを接合する締付具とを備え、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材における両前記馳包持部を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部とし、前記第2挟持部材の頂面板部高さ寸法は前記第1挟持部材の頂面板部高さ寸法よりも小さく形成され、前記第2挟持部材の頂面板部には吊子が設置固着される構成としてなることを特徴とする屋根用支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との何れか一方に、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを所定の間隔に離間させる離間部が設けられてなることを特徴とする屋根用支持具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方及び前記第2挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方をそれぞれ当接正面とし、それぞれの前記当接正面は、それぞれの挟持面よりも外方に突出させ、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記当接正面同士が背合わせ状態で当接できる構成としてなることを特徴とする屋根用支持具。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の屋根用支持具において、前記第2挟持部材の頂面板部には、前記吊子をボルトで固定する内ネジ部が設けられてなることを特徴とする屋根用支持具。
【請求項5】
幅方向一方側に下馳部を他方側に上馳部を有する折板屋根板材が複数並設され,隣接する両該折板屋根板材同士の前記下馳部と前記上馳部とが馳締連結されてなる下層屋根と,該下層屋根と同等の構成を有する上層折板屋根とからなる二層折板屋根と、折板屋根の馳締部の幅方向一方側を包持する空隙とした馳包持部を有し且つ該馳包持部の下方に前記馳締部の首部の一方側に当接する垂直平坦状の挟持面を有し該挟持面の下方に台座部を有する第1挟持部材と、該第1挟持部材と同等の構成で且つ前記馳締部の幅方向他方側を包持する馳包持部と前記首部の他方側に当接する挟持面を有する第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを接合する締付具とを備え、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材における両前記馳包持部を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部とし、前記第2挟持部材の頂面板部高さ寸法は前記第1挟持部材の頂面板部高さ寸法よりも小さく形成され、前記第2挟持部材の頂面板部には吊子が設置固着される構成としてなる屋根用支持具とを備え、前記下層屋根の前記馳締部は前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記馳包持部にて包持され前記締付具にて固定され、前記屋根用支持具上部側にて前記上層折板屋根が支持されてなることを特徴とする二層折板屋根。
【請求項6】
請求項5に記載の二層折板屋根において、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との何れか一方に、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを所定の間隔に離間させる離間部が設けられてなることを特徴とする二層折板屋根。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方及び前記第2挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方をそれぞれ当接正面とし、それぞれの前記当接正面は、それぞれの挟持面よりも外方に突出させ、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記当接正面同士が背合わせ状態で当接できる構成としてなることを特徴とする屋根用支持具。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の二層折板屋根において、前記第2挟持部材の頂面板部には、前記吊子をボルトで固定する内ネジ部が設けられてなることを特徴とする二層折板屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層折板屋根と上層折板屋根とからなる二層タイプの屋根において、その馳締タイプの下層折板屋根の馳締部に簡易且つ迅速に装着することができると共に断熱性を有する屋根用支持具及び二層折板屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下層屋根と上層屋根とからなる二層タイプの屋根又は壁等の外囲体が多く存在している。これらの外囲体は、新設の二層タイプの屋根(又は壁)及び既設の屋根(壁も含む)に新たに屋根(壁も含む)を新設した改修屋根が存在する。その下層屋根(又は壁)は、金属製の折板屋根板材によって施工されている。
【0003】
この種の外囲体において、下馳部と上馳部とを有する折板屋根板材から構成され、その隣接する折板屋根板材同士の下馳部と上馳部とが馳締されて、折板屋根板材同士が連結されて折板屋根等が施工されるものが存在する。上層屋根と下層屋根との間には支持具が設けられており、該支持具は下層屋根上に装着され、前記支持具によって上層屋根が下層屋根上に支持されるものである。そして、前記支持具が金属であると金属製の上層屋根と下層屋根との間に支持具を介して熱伝達が行われ、下層屋根は上層屋根の温度の影響を受けることになる。特に、冬期において、現象は一般的に冷橋現象と称されることもあり、下層屋根側では、結露を発生することも十分にある。
【0004】
そして、二層タイプの屋根では、上層及び下層の屋根において、外気温による熱が上層と下層の屋根との間に温度差を生じさせることになる。そして、上層と下層との屋根間に配置された金属性の支持具は上層の屋根の熱を下層の屋根に伝達することになる。つまり、夏期の高温時では、太陽熱が上層屋根を熱くし、その熱は支持具を介して下層屋根に伝達される。そして、下層屋根は、上層屋根と略同温となり、室内の冷房の効率に悪影響を及ぼすことになる。
【0005】
また、冬期では、上層屋根が外部の冷気によって、低温となり、この低温が支持具を介して下層屋根に伝達されることになる。つまり、冬期の低温時では、低温となった上層屋根の熱が支持具を介して下層屋根に伝達され、下層屋根は低温となり、室内の暖房の効率に悪影響を及ぼすことになる。そこで、金属製の支持具の一部に合成樹脂製等の断熱性のある部材を具備した断熱支持具が存在する。該断熱支持具の断熱部材によって、上層屋根と下層屋根との間の熱伝達が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5-16946号公報
【特許文献2】特開2012-31653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような断熱支持具の一例として特許文献1(実開平5-16946号公報)を上げてみる。特許文献1では、断熱支持具として、樹脂製の断熱体が金属製の支持体にて保持され、これらがボルト・ナットにより構成されている。樹脂製の断熱材は、ABS樹脂等の比較的、耐衝撃性,耐久性のある材質が使用される。また、特許文献2(特開2012-31653号公報)では、金属製の支持具の頂部に断熱ベースが装着されており、該断熱ベースに吊子が固着される構成となっている。
【0008】
しかし、たとえ強固な樹脂製の断熱体(特許文献1)或いは断熱材(特許文献2)が使用されていたとしても、台風等の自然現象によって、一度に破損してしまうことや、又は大きな力が繰り返しかかることで、徐々にひびが拡がり、割れてしまうなどの破損に至ることがある。また、経年による断熱体或いは断熱材の劣化によっても破損し易くなる。その他、夏季の高温により、上層屋根の熱伸縮によって、樹脂製の断熱支持具に常時負荷がかかり、このようなことからも、破損に至るものである。このように、支持具を構成する金属製の部材と樹脂製の部材とでは、強度,耐久性に大きな差が生じるものである。
【0009】
そこで、本発明の目的(解決しようとする技術的課題)は、極めて簡単な構成にて、二層タイプの屋根における断熱性を確保しつつ、さらに二層折板屋根を強固な構造とすることができ屋根用支持具及び二層折板屋根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、折板屋根の馳締部の幅方向一方側を包持する空隙とした馳包持部を有し且つ該馳包持部の下方に前記馳締部の首部の一方側に当接する垂直平坦状の挟持面を有し該挟持面の下方に台座部を有する第1挟持部材と、該第1挟持部材と同等の構成で且つ前記馳締部の幅方向他方側を包持する馳包持部と前記首部の他方側に当接する挟持面を有する第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを接合する締付具とを備え、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材における両前記馳包持部を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部とし、前記第2挟持部材の頂面板部高さ寸法は前記第1挟持部材の頂面板部高さ寸法よりも小さく形成され、前記第2挟持部材の頂面板部には吊子が設置固着される構成としてなることを特徴とする屋根用支持具としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との何れか一方に、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを所定の間隔に離間させる離間部が設けられてなることを特徴とする屋根用支持具としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項3の発明を、請求項1又は2に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方及び前記第2挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方をそれぞれ当接正面とし、それぞれの前記当接正面は、それぞれの挟持面よりも外方に突出させ、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記当接正面同士が背合わせ状態で当接できる構成としてなることを特徴とする屋根用支持具としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1又は2に記載の屋根用支持具において、前記第2挟持部材の頂面板部には、前記吊子をボルトで固定する内ネジ部が設けられてなることを特徴とする屋根用支持具としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項5の発明を、幅方向一方側に下馳部を他方側に上馳部を有する折板屋根板材が複数並設され,隣接する両該折板屋根板材同士の前記下馳部と前記上馳部とが馳締連結されてなる下層屋根と,該下層屋根と同等の構成を有する上層折板屋根とからなる二層折板屋根と、折板屋根の馳締部の幅方向一方側を包持する空隙とした馳包持部を有し且つ該馳包持部の下方に前記馳締部の首部の一方側に当接する垂直平坦状の挟持面を有し該挟持面の下方に台座部を有する第1挟持部材と、該第1挟持部材と同等の構成で且つ前記馳締部の幅方向他方側を包持する馳包持部と前記首部の他方側に当接する挟持面を有する第2挟持部材と、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを接合する締付具とを備え、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材における両前記馳包持部を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部とし、前記第2挟持部材の頂面板部高さ寸法は前記第1挟持部材の頂面板部高さ寸法よりも小さく形成され、前記第2挟持部材の頂面板部には吊子が設置固着される構成としてなる屋根用支持具とを備え、前記下層屋根の前記馳締部は前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記馳包持部にて包持され前記締付具にて固定され、前記屋根用支持具上部側にて前記上層折板屋根が支持されてなることを特徴とする二層折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項6の発明を、請求項5に記載の二層折板屋根において、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との何れか一方に、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とを所定の間隔に離間させる離間部が設けられてなることを特徴とする二層折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項7の発明を、請求項5又は6に記載の屋根用支持具において、前記第1挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方及び前記第2挟持部材の前記正面板部の前記挟持面よりも上方をそれぞれ当接正面とし、それぞれの前記当接正面は、それぞれの挟持面よりも外方に突出させ、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材の両前記当接正面同士が背合わせ状態で当接できる構成としてなることを特徴とする屋根用支持具としたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項8の発明を、請求項5又は6に記載の二層折板屋根において、前記第2挟持部材の頂面板部には、前記吊子をボルトで固定する内ネジ部が設けられてなることを特徴とする二層折板屋根としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、主に、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材における少なくとも前記挟持面を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部とを備え、前記第2挟持部材の頂面板部は前記第1挟持部材の頂部よりも低位置とすると共に前記第2挟持部材の頂部には吊子が設置固着されてなる構成としたものである。したがって、直接、金属製の第2挟持部材の頂部に吊子を固着する構造となる。このために、上層折板屋根を構成する金属製の吊子と、金属製の支持部材との間に樹脂製の断熱材が設けられる従来の構造のものと比較して、樹脂製部材が存在するものではない。そのために、本発明の屋根用支持具は、全体が略金属製であり、極めて強固なものにでき、耐久性のあるものにできる。そして、台風等による上層折板屋根の破壊又は経年による屋根用支持具の破損を防止できる。
【0018】
第1挟持部材と第2挟持部材では、両前記馳包持部を含む下方が樹脂にて被覆される樹脂被覆部を備えている。そのために、二層折板屋根を構成する下層折板屋根に本発明の屋根用支持具を装着したときに、屋根用支持具の金属部分と下層折板屋根との間には樹脂被覆部が介在することとなり、上層折板屋根から屋根用支持具を介して下層折板屋根への熱伝達を防止することができる。特に、樹脂被覆部は、前述したように、両前記馳包持部を含む下方に設けられたものであり、したがって、樹脂被覆部は、屋根用支持具の下方の部分に形成されたものであり、樹脂被覆部は下層折板屋根の馳締部付近に配置されることとなる。そのため、屋根用支持具と下層折板屋根との接続は極めて強固なものとなり、したがって、断熱性を維持しつつ、二層折板屋根を強固に支持することができるものである。
【0019】
そして、屋根用支持具を二層折板屋根の構成に使用した場合において、上層折板屋根から屋根用支持具に高温又は低温における熱が屋根用支持具に伝達されたとしても、前記樹脂被覆部によって、熱が下層折板屋根に伝達されることを遮断し、下層の折板屋根及びその室内に低温或いは高温が伝達されることを防止でき、外部の寒暖に影響されず、常時室内の保温性を保つことができる。
【0020】
また、上層折板屋根が夏季等の高温により上層折板屋根を構成する折板屋根板材が長手方向(X方向)に沿って熱伸縮って屋根用支持具に対する位置ずれが生じ、振動及び騒音を発生することがある。このようなときに、前記樹脂被覆部によって、下層折板屋根に対する上層折板屋根の位置ずれ時による振動及び騒音の発生を最小限に低減し、板鳴り現象を抑制することができる。
【0021】
請求項2の発明では、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材との何れか一方に、前記第1挟持部材1と前記第2挟持部材とを所定の間隔に離間させる離間部が設けられたものである。該離間部により、屋根用支持具の第1挟持部材と第2挟持部材の両馳包持部にて下層折板屋根の馳締部を包持した状態で、第1挟持部材と第2挟持部材と対向する面が傾いてしまうおそれがあるが、この隙間に離間部が設けられることで、第1挟持部材と第2挟持部材とを略平衡状態に保つことができ、屋根用支持具を下層折板屋根の馳締部に安定した状態で装着することができる。
【0022】
請求項3の発明では、第1挟持部材及び第2挟持部材のそれぞれの正面板部の上方部分をそれぞれの挟持面よりも外方に突出する当接正面とし、両当接正面同士が当接することで、両馳包持部にて下層折板屋根の馳締部を包持した状態で、第1挟持部材と第2挟持部材とを略平衡状態に保つことができ、屋根用支持具を下層折板屋根の馳締部に安定した状態で装着することができる。請求項4の発明では、第2挟持部材の頂面板部には、前記吊子をボルトで固定する内ネジ部が設けられる構成により、第2挟持部材に対して吊子の装着を簡単に行うことができ、作業効率をより一層向上できる。
【0023】
請求項5の発明では、二層折板屋根を極めて強固で、且つ耐久性のあるものにできる。そして、台風等による上層折板屋根の破壊又は経年による屋根用支持具の破損を防止できる。さらに、二層折板屋根は、断熱性にも優れたものにできる。請求項6及び請求項7の発明では、二層折板屋根における屋根用支持具を安定した状態で下層折板屋根に装着することができる。請求項8の発明では、二層折板屋根の施工の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(A)は本発明の屋根用支持具を使用した二層折板屋根の正面略示図、(B)は(A)の(α)部における拡大断面図である。
【
図2】(A)は本発明の屋根用支持具の第1挟持部材と第2挟持部材と断熱ベースとを分離した状態の斜視図、(A)の(I)は樹脂被覆部が設けられていない第1挟持部材の斜視図、(A)の(II)は樹脂被覆部が設けられていない第2挟持部材の斜視図、(B)は第1挟持部材と第2挟持部材とを締付具の分離した状態の正面図、(B)の(I)は樹脂被覆部が設けられていない第1挟持部材の正面図、(B)の(II)は樹脂被覆部が設けられていない第2挟持部材の正面図、(C)は吊子の斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の屋根用支持具の第1挟持部材と第2挟持部材とを分離した状態の縦断正面図、(B)は(A)の(β)部における拡大断面図である。
【
図4】(A)は本発明の屋根用支持具を使用した二層折板屋根の下層折板屋根の馳締部付近の拡大図、(B)は本発明の屋根用支持具を使用した二層折板屋根の一部切除した側面図である。
【
図5】(A)は本発明の別の実施形態の屋根用支持具の第1挟持部材と第2挟持部材とを分離した状態の縦断正面図、(B)は(A)の屋根用支持具を使用した二層折板屋根における下層折板屋根の馳締部付近の拡大図である。
【
図6】(A)は本発明のさらに別の実施形態の屋根用支持具の第1挟持部材と第2挟持部材とを分離した状態の縦断正面図、(B)は(A)の屋根用支持具を使用した二層折板屋根における下層折板屋根の馳締部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。まず、本発明における屋根用支持具Aの説明を行い、次に該屋根用支持具Aを用いた二層折板屋根Bについて説明する。屋根用支持具Aの主な構成は、第1挟持部材1と、第2挟持部材2と、締付具3とから構成される。前記第2挟持部材2は、前記第1挟持部材1と略同等の構成に形成されたものである(
図2,
図3参照)。
【0026】
本発明では、方向を示す文言としてX方向及びY方向を使用する。本発明の屋根用支持具Aによって施工される二層折板屋根Bは、該二層折板屋根Bを構成する下層折板屋根B1及び上層折板屋根B2の複数の折板屋根板材71(72),71(72),…の並列される方向をY方向としている〔
図1(A)参照〕。また、各折板屋根板材71(72)の長手方向となる方向をX方向とする。
【0027】
したがって、本発明における屋根用支持具が装着される構造材91の長手方向はY方向となる〔
図1(A)参照〕。このX方向及びY方向は、屋根用支持具Aにも適用され、二層折板屋根Bに組込まれた状態で、二層折板屋根BのX方向及びY方向に倣うものとする。また、X方向は、前後方向を指すものと認識されても構わない。X方向及びY方向については、図中に記載した。
【0028】
前記第1挟持部材1は、金属製の本体部1Aと樹脂製の樹脂被覆部17とを備えている。金属製の本体部1Aは、プレス加工等によって形成される(
図1乃至
図3参照)。同様に、前記第2挟持部材2についても、金属製の本体部2Aと樹脂製の樹脂被覆部27を備えており、金属製の本体部2Aは、プレス加工等によって形成される(
図1乃至
図3参照)。
【0029】
前記第1挟持部材1の本体部1Aは、金属製であり、正面板部11の幅方向両側より背面側に側面板部12,12が形成され、前記正面板部11の上端に頂面板部13が形成されている〔
図2(A)の(I),(B)の(I)及び
図3等参照〕。前記正面板部11は、略長方形状に形成されたものであり、前記側面板部12は、前記正面板部11に対して直角(略直角も含む)に折曲形成されたものであり、さらに前記側面板部12の端縁から第1挟持部材1の外方に向かって補強端片12aが形成されている。該補強端片12aは、前記側面板部12に対して直角(略直角も含む)に形成されている(
図2,
図3参照)。前記第2挟持部材2の本体部2Aも同様に、金属製であり、正面板部21の幅方向両側より背面側に側面板部22,22が形成され、前記正面板部21の上端に頂面板部23が形成されている〔
図2(A)の(II),(B)の(II)及び
図3等参照〕。
【0030】
前記頂面板部13は、前記正面板部11の上端より直角(略直角も含む)に折曲形成されている。さらに、前記側面板部12の上端位置には、前記頂面板部13の位置よりも僅かに高くなるように、折曲形成された折曲片12bが設けられている(
図2,
図3参照)。該折曲片12bは、両側面板部12,12の両方に形成されたものであって、前記頂面板部13には、幅方向両側に、折曲片12b,12bが存在するものである。そして、両折曲片12b,12bとの間には適宜の間隔が設けられ空隙が形成される(
図2参照)。
【0031】
前記正面板部11及び両側面板部12の下方の位置には馳包持部14が形成されている。該馳包持部14は、後述する二層折板屋根を構成する下層の折板屋根B1の馳締部Jの略半分の部分を収納することができる空隙部であり、後述する第2挟持部材2の馳包持部24と共に前記馳締部Jを包持する役目をなすものである〔
図1(B),
図2,
図3,
図4参照〕。
【0032】
馳包持部14は、正面空隙部14aと両側面空隙部14b,14bとから構成されており、前記正面空隙部14aは、前記正面板部11に略長方形状の開口として形成されたものであり、前記側面空隙部14b,14bは、前記両側面板部12,12に略半円形状又は略「C」字形状の開口として形成されたものである〔
図1(B),
図2,
図3参照〕。
【0033】
馳包持部14の正面空隙部14aの下端縁より正面板部11の正面側に上向き傾斜状に突出する押え突起片14cが形成されている。該押え突起片14cは、第1挟持部材1と第2挟持部材2とで折板屋根B1の馳締部Jを挟持したときに、該馳締部Jの一部を押圧固定する役目をなすものである〔
図1(B),
図2,
図3参照〕。また、馳包持部14の上端箇所には馳保持片14dが形成されている。該馳保持片14dは、馳締部Jの上面箇所を保持する役目のものであり、馳締部Jの上面に当接又は近接する〔
図1(B),
図2,
図3,
図4(A)参照〕。
【0034】
また、前記正面板部11において、前記馳包持部14(正面空隙部14a)の形成位置よりも下方の面が挟持面11aとして使用される面となる〔
図2(B),
図3参照〕。該挟持面11aは、平坦状の面であり、馳締部Jの首部Jn箇所を後述する第2挟持部材2の挟持面21aと共に挟持固定する部位である。
【0035】
さらに、前記正面板部11及び前記側面板部12の下端には台座部15が形成されており、該台座部15は前記両側面板部12より外方に向かって突出形成されたものである。該台座部15は、前記正面板部11の下端から背面側に折曲形成されたものであり、僅かに傾斜角度を有して形成されることもある(
図1乃至
図3参照)。
【0036】
この傾斜角度は、後述する折板屋根板材72の上部の傾斜面と略同等となるように形成されることが好ましい(
図1参照)。ここで、前記正面板部11の正面側とは、第1挟持部材1と第2挟持部材2とを接合した状態で、後述する第2挟持部材2の正面板部21と対向する面であり、また背面側は、前記正面側の反対側の面のことである。前記正面板部11には、締付具3のボルト31が貫通する固着用貫通孔16が形成されている。なお、本発明における屋根用支持具全体として見た場合、つまり第1挟持部材1と第1挟持部材1とを締付具3にて接合した状態において、
図1(B)を屋根用支持具の正面図とする。
屋根用支持具
【0037】
次に、第1挟持部材1の樹脂被覆部17が少なくとも前記馳包持部14を含む下方の領域に樹脂にて被覆される部分が設けられている〔
図1(B),
図2(A),(B),
図3等参照〕。樹脂被覆部17の材質は、ポリエチレン等の樹脂である。樹脂被覆部17の本体部1Aへの形成手段としては、溶融した流体状の樹脂が充填された容器に本体部1Aの所定部分を浸漬させ、次いで、本体部1Aを容器から取り出し、本体部1Aに付着した溶融状態の樹脂を硬化させるものである。第1挟持部材1における樹脂被覆部17の形成範囲は、馳包持部14の正面空隙部14aの周囲及びその下方の台座部15の間に亘る範囲で、この範囲に樹脂が被覆されている〔
図1(B),
図2(A),(B),
図3等参照〕。
【0038】
また、樹脂被覆部17は、下層折板屋根B1の馳締部J及びその周辺と当接する箇所に施されれば良いものであり、正面板部11の挟持面11a,押え突起片14c及び台座部15の部分のみに樹脂被覆部17が設けられる実施形態も存在する(
図5参照)。第2挟持部材2においても、第1挟持部材1の樹脂被覆部17と同様の構成であり、樹脂被覆部27が設けられる。そして、第1挟持部材1と第2挟持部材2の馳包持部14,馳包持部24によって馳締部Jが包持されるときには、樹脂被覆部17,樹脂被覆部27によって本体部1A及び本体部2Aが馳締部J及びその周辺から離間された状態となり、断熱性を備えた構成となる〔
図1(B),
図4(A),(B)参照〕。
【0039】
次に、第2挟持部材2は、
図1(A),
図2(B)等に示すように、前記第1挟持部材1と略同等の形状であり、略同等の構成としたものであり、前記第1挟持部材1で使用された各部位の名称は、そのまま使用され、各部位の相対的な構成についても第1挟持部材1の場合と同様である。第2挟持部材2の頂面板部23の高さ寸法は前記第1挟持部材1の頂面板部13の高さ寸法よりも小さくされている〔
図1(B),
図2(B),
図3(A)等参照〕。前記第2挟持部材の頂面板部23には吊子8が設置固着されるようになっている。したがって、第1挟持部材1の頂板部13と、第2挟持部材2の頂面板部23との高低差は、吊子8の座金部の高さ寸法と略同等である〔
図1(B)参照〕。
【0040】
第2挟持部材2の正面板部21の幅方向両側より背面側に側面板部22,22が形成され、前記正面板部21の上端に頂面板部23が形成されている。さらに前記側面板部22の端縁から第2挟持部材2の外方に向かって補強端片22aが形成されている(
図2参照)。さらに、第1挟持部材1と同様に、側面板部22の上端位置には、前記頂面板部23の位置よりも僅かに高くなるように形成された折曲片22bが設けられている。第2挟持部材2の折曲片22bは、第1挟持部材1における折曲片12bと同等の構成である〔
図2,
図3(A)参照〕。
【0041】
前記正面板部21及び両側面板部22の下方の位置には馳包持部24が形成されている(
図2,
図3参照)。該馳包持部24は、前述したように、二層折板屋根Bの下層折板屋根B1を構成する折板屋根板材71,71,…の馳締部Jの略半分の部分を収納することができる空隙部であり、前記第1挟持部材1の馳包持部14と共に馳締部Jを包持する役目をなすものである〔
図1(B),
図4(A)参照〕。
【0042】
第2挟持部材2の馳包持部24は、正面空隙部24aと両側面空隙部24b,24bとから構成されており、前記正面空隙部24aは、前記正面板部21に略長方形状の開口として形成されたものであり、前記側面空隙部24b,24bは、前記両側面板部22,22に長方形又は正方形等の略方形状の開口として形成されたものである。前記正面板部21において、前記馳包持部24(具体的には正面空隙部24a)の形成位置よりも下方の面が挟持面21aとして使用される面となる(
図2,
図3等参照)。
【0043】
該挟持面21aは、平坦状の面であり、前述したように、馳締部Jの首部Jn箇所を後述する前記第1挟持部材1の挟持面11aと共に挟持固定する部位である〔
図1(B)参照〕。前記正面板部21及び前記側面板部22の下端には台座部25が形成されており、該台座部25は前記両側面板部22より外方に向かって突出形成されたものである。該台座部25は、前記正面板部21の下端から背面側に折曲形成されたものであり、僅かに傾斜角度を有して形成されることもある。この傾斜角度は、後述する折板屋根板材の上部の傾斜面と略同等となるように形成されることが好ましい。
【0044】
ここで、前記正面板部21の正面側とは、第1挟持部材1と第2挟持部材2とを接合した状態で、後述する第1挟持部材1の正面板部11と対向する面であり、また背面側は、前記正面側の反対側の面のことである。前記正面板部21には、締付具3のボルト31が貫通する固着用貫通孔26が形成されている。
【0045】
締付具3は、ボルト31,ナット32から構成されている〔
図1(B),
図2,
図3(A)参照〕。そして、前記ボルト31が第1挟持部材1の正面板部11と、第2挟持部材2の正面板部21のそれぞれの固着用貫通孔16,26に挿通され、ナット32によって、両正面板部11,12が締め付けられる。この締付具3の締付けによって、樹脂被覆部17,27を有する両挟持面11a,21aによる下層折板屋根B1の馳締部Jの首部Jnを締めつけることができる〔
図4(A)参照〕。
【0046】
屋根用支持具Aの幅方向(Y方向)において、第1挟持部材1の頂面板部13と、第2挟持部材2の頂面板部23とは段違いとなる面となるように構成されている。つまり、屋根用支持具Aにおいて第1挟持部材1の頂面板部13が高位面となり、第2挟持部材2の頂面板部23が低位面となり、第2挟持部材2の頂面板部23に、吊子8が配置固着される〔
図1(B)参照〕。また、第1挟持部材1の頂面板部13には、後述する上層折板屋根B2の山形頂部を裏面側より支持する役目をなすものである〔
図1(B)参照〕。
【0047】
第2挟持部材2の頂面板部23には、貫通孔23aが設けられている。該貫通孔23a箇所で且つ前記頂面板部23の下面側には、内ネジ部64が溶接手段等にて固着されている〔
図1(B),
図3(A)参照〕。該内ネジ部64は、ナットが使用されてもよい。そして、第2挟持部材2の貫通孔23aと連通する内ネジ部64には頂面板部23に載置される吊子8を固定するためのボルト62が螺合される〔
図1(B)参照〕。そして、第1挟持部材1と第2挟持部材2が締付具3によって、適正に接合される〔
図1(B),
図4(A)参照〕。
【0048】
前記第1挟持部材1と前記第2挟持部材2との何れか一方に、前記第1挟持部材1と前記第2挟持部材2とを所定の間隔に離間させる離間部18が設けられる。該離間部18は、第1挟持部材1の挟持面11aと、第2挟持部材2の挟持面21aとによって下層折板屋根B1の馳締部Jの首部Jnを挟持固定したときに、前記首部Jnの幅方向(Y方向)における厚さの分だけ第1挟持部材1と第2挟持部材2の下方が拡がり、上方が狭まることになる。
【0049】
第1挟持部材1と第2挟持部材2とを締付具3によって接合したときには、両正面板部11と正面板部21は、平行又は略平行状となることが下層折板屋根B1の馳締部Jに対する安定した装着が行えることで好適なものとなる。そのため、馳締部Jの首部Jnの幅方向と略同等の幅方向寸法を有するスペーサを第1挟持部材1と第2挟持部材2の上方(好ましくは締付具3の位置よりも上方)に配置するものである。このスペーサの役目を行うのが離間部18である〔
図1(B),
図2,
図3(A)等参照〕。離間部18は、切りお越しタイプ(
図2参照)及び別部材(
図5参照)を溶接等で固着するタイプが存在する。
【0050】
切りお越しタイプとした離間部18の実施形態としては、第1挟持部材1の正面板部11の固着用貫通孔16の位置よりも上方で略門形状の切り抜きを形成し、この部分を外方に切り起して正面板部11の外方に突出する離間部18を形成するものである〔
図1(B),
図2,
図3(A)等参照〕。また、離間部18は略方形状の板片とし、この板片とした離間部18を第1挟持部材1の正面板部11に溶接等で固着するものである〔
図5(A)参照〕。なお、特に図示しないが、前記離間部18は、第2挟持部材2の正面板部21側に設けても構わない。
【0051】
さらに、第1挟持部材1の挟持面11aと第2挟持部材2の挟持面21aとによって、馳締部Jを挟持した状態で、第1挟持部材1と第2挟持部材2との正面板部11と正面板部21とが平行を維持することができる実施形態の構成を
図6に基づいて説明する。第1挟持部材1の正面板部11の挟持面11aよりも上方の部分を当接正面11bとし、該当接正面11bは、挟持面11aよりも外方に突出させる構成とする。同様に、第2挟持部材2の正面板部21の挟持面21aよりも上方の部分を当接正面21bとし、第2挟持部材2の当接正面21bは、挟持面21aよりも外方に突出させる構成とする〔
図6(A)参照〕。
【0052】
そして、第1挟持部材1当接正面11bと、第2挟持部材2の当接正面21b同士が背合わせ状態で前記締付具3を介して当接できる構成としたものである〔
図6(B)参照〕。これによって、第1挟持部材1と挟持面11aと、第2挟持部材2の挟持面21aは所定の間隔を有することとなり、この両挟持面11a,挟持面21aで馳締部Jを挟持した状態で、両当接正面11b,当接正面21b同士が当接し、安定した馳締部Jの挟持状態にすることができる。
【0053】
ここで、第1挟持部材1における当接正面11bの挟持面11aからの突出量m及び第2挟持部材2における当接正面21bの挟持面21aからの突出量mは同等である〔
図6(A)参照〕。そして、第1挟持部材1と第2挟持部材2との二つの突出量m同士の総和2mは、馳締部Jの挟持される部分の厚さに略等しくすることが好適である〔
図6(B)参照〕。また、当接正面11b又は当接正面21bの外方への突出は第1挟持部材1又は第2挟持部材2の何れか一方のみとしてもよい。この場合、いずれか一方の当接正面11b又は当接正面21bからの突出量は2mとなる。
【0054】
次に、本発明における屋根用支持具Aによって施工される二層折板屋根Bについて説明する。二層折板屋根Bは下層折板屋根B1と上層折板屋根B2とから構成される。下層折板屋根B1は、複数の折板屋根板材71,71,…から構成される。該折板屋根板材71は、主板71aの幅方向両側より立上り側部71b,71bが形成されている。該立上り側部71b,71bの上端には略平坦状とした上片部71c,71c形成されている。該上片部71cは外方上向きに僅かな角度にて傾斜している。
【0055】
そして、両上片部71c,71cには、連結部71d,71eがそれぞれ設けられている。該連結部71d,71eは、種々のタイプが存在するが、具体的には、71d,71eとして馳締タイプの下馳部と上馳部が存在する。以下、連結部71d,71eは、馳締タイプとして、下馳部71d及び上馳部71eとして説明する。下馳部71d及び上馳部71eは、円弧状をなしている(
図1参照)。また、特に図示しないが,下馳部71d及び上馳部71eが共に略三角形状に折曲形成されたタイプも存在する。また、前記下馳部71dと上馳部71eには、略垂直状に形成された部位を有している。
【0056】
この垂直状部位は、下馳部71d及び上馳部71eの下部と前記上片部71cとの間に位置しており、首部71fと称する。そして、前記下馳部71d及び上馳部71eとが馳締めされて馳締部Jが構成される。該馳締部Jでは、前記下馳側の首部71fと、上馳側の首部71fとが略当接状態となる。
【0057】
母屋,胴縁等の構造材91上に複数の受金具92,92,…が所定間隔をおいて配置固着され、該受金具92を介して折板屋根板材71,71,…が複数並設され、隣接する折板屋根板材71,71同士の下馳部71d及び上馳部71eとが共に馳締されて連結され、屋根又は壁等が施工される(
図1参照)。
【0058】
次に、上層折板屋根B2は、
図1(A),
図2(A)に示すように、前記下層折板屋根B1と同等の構成であり、同様の折板屋根板材72,72,…が使用される。折板屋根板材72,72,…は下層折板屋根B1を構成する折板屋根板材71と同等又は略同等の構造を有する。つまり、主板72aの幅方向両側より立上り側部72b,72bが形成されている。
【0059】
該立上り側部72b,72bの上端には略平坦状とした上片部72c,72cが形成されている。該上片部72cは外方上向きに僅かな角度にて傾斜している。さらに、両上片部72cには連結部として下馳部72d及び上馳部72eを有している。また、両上片部72cと、下馳部72d或いは上馳部72eとの間に首部72f,72fが形成されている。
【0060】
上記のように、下層折板屋根B1及び上層折板屋根B2を構成する折板屋根板材71(72),71(72),…における連結部は、馳締タイプの下馳部71d(72d)及び上馳部71e(72e)として説明したが、本発明においては、連結部が馳締タイプに限定されるものではなく、例えば、図示しないが、山形部同士を嵌合するタイプ又はキャップ材を使用した嵌合タイプ、或いは山形部同士を重合させる重合タイプ等、本発明における屋根用支持具Aに装着可能なものであれば、どのようなタイプの連結部であっても構わない。
【0061】
前記吊子8は、前述したように、座金部81と舌片82とを備えており、前記座金部81が前記第2挟持部材2の頂面板部23上に載置され、ボルト62と内ネジ部64(ナット等)によって座金部81が固着されるものである〔
図1(B)参照〕。また、下層折板屋根B1を構成する隣接する折板屋根板材71,71の下馳部71d及び上馳部71eとは、吊子8の舌片82を挟むようにして馳締される〔
図1(B)参照〕。同様に隣接する上層折板屋根B2を構成する折板屋根板材72,72の下馳部72d及び上馳部72eとは、吊子8の舌片82を挟むようにして馳締される〔
図1(B)参照〕。
【0062】
下馳部71d,上馳部71e及び下馳部72d,上馳部72eは、その断面形状に円弧形状の部分が存在する丸馳形状に形成されたものである。また、特に図示しないが、下馳部71d,上馳部71e及び下馳部72d,上馳部72eの形状を略方形状とした角馳タイプのものや、形状を略逆L字形状とした立馳タイプのものが存在する。
【0063】
前記吊子8は、前述したように、基本的な構成として座金部81と舌片82とを備えている〔
図2(C)参照〕。前記座金部81は、平面より見て略長方形状とし、断面を逆門形状とした形状である。前記舌片82は、長手方向に直交する断面が略「?」字形状に形成されたものであり、座金部81は、その長手方向において上方が開放された逆門形状に形成されている。座金部81には、固定用ボルトが貫通する固定用貫通孔81aが形成されている。座金部81の固定用貫通孔81aにはボルトと内ネジ部64(ナット等)によって座金部81が固着されるものである。
【0064】
次に、本発明の屋根用支持具Aを下層折板屋根B1の馳締部Jに装着する工程について説明する。まず、本発明の屋根用支持具Aの第1挟持部材1の馳包持部14と、第2挟持部材2の馳包持部24とで馳締部Jを構成する下馳部71dと上馳部71eとを包持しつつ、前記第1挟持部材1の挟持面11aと、前記第2挟持部材2の挟持面21aとで、馳締部Jを構成する下馳部71dの首部71fと、上馳部71eの首部71f同士を挟持する。
【0065】
そして、前記第1挟持部材1と前記第2挟持部材2とを締付具3を介して接合する。このとき、前記馳締部Jの首部Jnを挟持する挟持面11aと挟持面21a及び台座部15と台座部25は、樹脂被覆部17及び樹脂被覆部27が設けられており、馳締部Jと第1挟持部材1の本体部1A及び第1挟持部材1の本体部2Aとは前記樹脂被覆部17及び樹脂被覆部27を介して接触し、本体部1A及び本体部2Aと下層折板屋根B1との金属同士の直接接触とはならない構造である〔
図1(B),
図4(A)参照〕。
【0066】
これによって、外気に晒された上層折板屋根B2の熱が屋根用支持具に伝達されても、屋根用支持具から下層折板屋根B1への熱の伝達は樹脂被覆部17及び樹脂被覆部27によって遮断されることになる。そして、第2挟持部材2の頂面板部23上には吊子8がボルト62によって装着される。
【0067】
上記二層折板屋根Bの施工において、下層折板屋根B1上に屋根用支持具Aを設置するときに、下層折板屋根B1の各馳締部Jに対して屋根用支持具Aをそれぞれの設置予定箇所に配置する。このとき屋根用支持具Aは、まず、締付具3による締付は行われず、仮設置状態とする。この屋根用支持具Aの馳締部Jに対する仮設置状態は、上層折板屋根B2を実際に施工するときに、設置位置の微調整を行うために移動させる必要が生じることも十分あり、そのために仮設置とするものである。
【0068】
本発明では、屋根用支持具Aを仮設置するときに、締付具3を緩めて第1挟持部材1と第2挟持部材2とを馳締部Jをそれぞれの馳包持部14,24に挿入可能となる程度の間隔に離間させる〔
図3(A)参照〕。そして、そのまま、屋根用支持具Aを下層折板屋根B1の馳締部J上に配置する。
【0069】
次いで、屋根用支持具Aを正確な位置に微調整する。そして、締付具3の締付を行い、第1挟持部材1と第2挟持部材2とを近接させ、両方の馳包持部14,馳包持部24内に馳締部Jを挿入収納する。これを順次繰り返して、複数の屋根用支持具A,A,…を下層折板屋根B1上に配置してゆく。
【0070】
そして、下層折板屋根B1上に装着された屋根用支持具A上に前記吊子8を介して前記上層屋根板材72,72,…の下馳部72dと上馳部72eとを馳締めし、これを順次繰り返して上層折板屋根B2を施工する。
第1挟持部材A1に設けられた第1樹脂被覆部61及び第2挟持部材A2に設けられた第2樹脂被覆部62は、二層折板屋根Bにおける上層折板屋根B2から下層折板屋根B1への温度の流れを遮断する断熱としての役目をなすものである〔
図4(A),(B)参照〕。
【0071】
本発明の屋根用支持具Aは、第1挟持部材1の樹脂被覆部17及び第2挟持部材2の樹脂被覆部27によって、低温又は高温等の外気温が二層折板屋根Bの上層折板屋根B2から屋根用支持具Aに伝達されたとしても、該屋根用支持具Aから下層折板屋根B1には熱の伝達をほとんど遮断し、熱伝達を防止すると共に、下層折板屋根B1下の室内の温度を略一定にすることができるものである。
【0072】
さらに、屋根用支持具Aの第1挟持部材1及び第2挟持部材2に樹脂被覆部17及び樹脂被覆部27が設けられることによって、上層折板屋根B2における板鳴り現象を低減させる役目をなすものである。これによって、上層折板屋根B2は、外気温の影響を受けて、特に夏季では高温により上層折板屋根B2を構成する折板屋根板材72は長手方向(X方向)に沿って熱伸縮を行う。この場合、上層折板屋根B2と該上層折板屋根B2を支持する屋根用支持具Aとの間で位置ずれが生じ、振動及び騒音を発生する。そして、樹脂被覆部17及び樹脂被覆部27は、上層折板屋根B2との位置ずれ時による振動及び騒音の発生を最小限に低減し、板鳴り現象を抑制する役目をなすものである。
【符号の説明】
【0073】
A…屋根用支持具、1…第1挟持部材、11a…挟持面、11b…当接正面、
14…馳包持部、15…台座部、17…樹脂被覆部、18…離間部、2…第2挟持部材、
21a…挟持面、21b…当接正面、24…馳包持部、25…台座部、
27…樹脂被覆部、3…締付具、31…ボルト、32…ナット、62…ボルト、
64…内ネジ部、B…二層折板屋根、B1…下層折板屋根、71…折板屋根板材、
71d…下馳部、71e…上馳部、B2…上層折板屋根、72…折板屋根板材、
72d…下馳部、72e…上馳部、8…吊子、J…馳締部。