(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062636
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/22 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
H03K17/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170614
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】宮長 晃一
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX31
5J055AX39
5J055BX16
5J055EX25
5J055EZ34
(57)【要約】
【課題】機能安全を提供する半導体集積回路を提供する。
【解決手段】リセット回路130は、電源電圧V
DDがしきい値電圧V
UVLOより低いときに、第1低電圧検出信号UVLO1をアサートする第1低電圧検出回路132と、電源電圧V
DDがしきい値電圧V
UVLOより低いときに、第2低電圧検出信号UVLO2をアサートする第2低電圧検出回路134と、を含み、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2の両方がアサートされたときにロジック回路120をリセットする。異常検出回路140は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2の不一致が、所定時間続くと、異常フラグERRを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジック回路と、
電源電圧がしきい値電圧より低いときに、第1低電圧検出信号をアサートする第1低電圧検出回路と、前記電源電圧が前記しきい値電圧より低いときに、第2低電圧検出信号をアサートする第2低電圧検出回路と、を含み、前記第1低電圧検出信号と前記第2低電圧検出信号の両方がアサートされたときに前記ロジック回路をリセットするリセット回路と、
前記第1低電圧検出信号と前記第2低電圧検出信号の不一致が、所定時間続くと、異常フラグを出力する異常検出回路と、
を備える、半導体集積回路。
【請求項2】
前記異常検出回路は、
前記第1低電圧検出信号と前記第2低電圧検出信号が不一致のときに出力をアサートする第1論理ゲートと、
前記第1低電圧検出信号と前記第2低電圧検出信号が両方、ネゲートのときに出力をアサートする第2論理ゲートと、
前記第1論理ゲートの前記出力がアサートされる期間、カウントアップし、前記第2論理ゲートの出力のアサートに応答してリセットされ、カウント値が所定値に達すると、出力がアサートされる、カウンタと、
を含む、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記異常検出回路は、前記カウンタの出力をラッチするとともに、前記第2論理ゲートの前記出力のアサートに応答してリセットされるフリップフロップをさらに含む、請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
車載用である、請求項1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ISO26262Part1においてにおいて、機能安全とは「電気電子(E/E)システムの機能不全のふるまいにより引き起こされるハザードが原因となる、不合理なリスクの不在」と定義されており、リスクをA~Dの4段階で分類する自動車安全水準(ASIL)が定められており、車載コンポーネントには、使用される機能に応じた安全性要件が課せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は係る状況においてされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、機能安全を提供する半導体集積回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある態様は半導体集積回路に関する。半導体集積回路は、ロジック回路と、電源電圧がしきい値電圧より低いときに、第1低電圧検出信号をアサートする第1低電圧検出回路と、電源電圧がしきい値電圧より低いときに、第2低電圧検出信号をアサートする第2低電圧検出回路と、を含み、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号の両方がアサートされたときにロジック回路をリセットするリセット回路と、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号の不一致が、所定時間続くと、異常フラグを出力する異常検出回路と、を備える。
【0006】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0007】
本開示のある態様によれば、機能安全を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体集積回路のブロック図である。
【
図2】
図2は、比較技術に係る半導体集積回路のブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の半導体集積回路において、第1低電圧検出回路と第2低電圧検出回路の一方に異常が生じているときの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0010】
一実施形態に係る半導体集積回路は、ロジック回路と、電源電圧がしきい値電圧より低いときに、第1低電圧検出信号をアサートする第1低電圧検出回路と、電源電圧がしきい値電圧より低いときに、第2低電圧検出信号をアサートする第2低電圧検出回路と、を含み、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号の両方がアサートされたときにロジック回路をリセットするリセット回路と、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号の不一致が、所定時間続くと、異常フラグを出力する異常検出回路と、を備える。
【0011】
この構成では、冗長な2個の低電圧検出回路を設けることで、一方に異常が生じても、他方が動作するため、機能安全を提供できる。さらに、異常検出回路を設けたことにより、低電圧検出回路に異常が生じていることを検出できる。
【0012】
一実施形態において、異常検出回路は、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号が不一致のときに出力をアサートする第1論理ゲートと、第1低電圧検出信号と第2低電圧検出信号が両方ネゲートのときに出力をアサートする第2論理ゲートと、第1論理ゲートの出力がアサートされる期間、カウントアップし、第2論理ゲートの出力のアサートに応答してリセットされ、カウント値が所定値に達すると、出力がアサートされる、カウンタと、を含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、異常検出回路は、カウンタの出力をラッチするとともに、第2論理ゲートの出力のアサートに応答してリセットされるフリップフロップをさらに含んでもよい。
【0014】
一実施形態において、半導体集積回路は、車載用であってもよい。
【0015】
(実施の形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0018】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0019】
図1は、実施形態に係る半導体集積回路100のブロック図である。半導体集積回路100は、レギュレータ回路110、ロジック回路120、リセット回路130、異常検出回路140を備える。半導体集積回路100は、自動車などの高い安全性が求められる用途に使用される。
【0020】
レギュレータ回路110は、電源電圧VDDを生成する電源回路である。レギュレータ回路110は、リニアレギュレータであってもよいし、スイッチングレギュレータであってもよい。
【0021】
ロジック回路120は、この半導体集積回路100が所望の機能を奏するように、多数の論理ゲートの組み合わせで構成される。半導体集積回路100の種類やロジック回路120の構成は特に限定されない。
【0022】
リセット回路130は、第1低電圧検出回路132、第2低電圧検出回路134、論理ゲート136を含む。第1低電圧検出回路132は、電源電圧VDDがしきい値電圧VUVLOより低いときに、第1低電圧検出信号UVLO1をアサートする。第2低電圧検出回路134は、電源電圧VDDがしきい値電圧VUVLOより低いときに、第2低電圧検出信号UVLO2をアサートする。第1低電圧検出回路132、第2低電圧検出回路134は、低電圧ロックアウト(Under Voltage Lock Out)回路とも称される。本実施形態において、低電圧検出信号UVLO1,UVLO2のアサートはハイが割り当てられ、ネゲートはローが割り当てられる。
【0023】
リセット回路130は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2の両方がアサート(ハイ)されたときに、ロジック回路120をリセットする。論理ゲート136は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2を受け、それらの両方がアサート(ハイ)されたときに、アサート(ハイ)となるリセット信号RSTを生成し、ロジック回路120に供給する。
【0024】
異常検出回路140は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2の不一致が、所定の判定時間τ続くと、異常フラグERRを出力する。
【0025】
異常検出回路140は、第1論理ゲート142、第2論理ゲート144、カウンタ146、フリップフロップ148を備える。
【0026】
第1論理ゲート142は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2を受け、それらが不一致のときに出力S1をアサートする。本実施形態において第1論理ゲート142は、排他的論理和(XOR)ゲートである。
【0027】
第2論理ゲート144は、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2を受け、第1低電圧検出信号UVLO1と第2低電圧検出信号UVLO2が両方、ネゲートのときに出力S2をアサートする。第2論理ゲート144に関しては、その出力S2のアサートはローが割り当てられており、第2論理ゲート144は、OR(論理和)ゲートで構成される。
【0028】
カウンタ146は、第1論理ゲート142の出力S1がアサートされる期間、クロック信号CLKに応じてカウントアップする。
【0029】
カウンタ146は、負論理のリセット端子を備えており、第2論理ゲート144の出力S2が入力される。カウンタ146は、第2論理ゲート144の出力S2のアサート(ロー)に応答してリセットされる。カウンタ146は、そのカウント値が所定値に達すると、出力S3がアサートされる。カウンタ146の所定値に応じて、異常検出回路140の判定時間τが規定される。
【0030】
フリップフロップ148は、カウンタ146の出力をラッチする。フリップフロップ148のリセット端子(負論理)には、第2論理ゲート144の出力S2が入力されており、出力S2のアサートに応答してフリップフロップ148はリセットされる。
【0031】
以上が半導体集積回路100の構成である。
【0032】
第1低電圧検出回路132と第2低電圧検出回路134のうち、いずれか一方に異常が発生して、2つの低電圧検出信号UVLO1、UVLO2の一方がアサート(ハイ)に固定されたとする。その場合に、第1低電圧検出回路132と第2低電圧検出回路134のうち正常である他方が生成する異常検出信号に応じて、正しいリセット信号RSTを生成することができ、機能安全を実現できる。
【0033】
半導体集積回路100のさらなる利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0034】
図2は、比較技術に係る半導体集積回路100Rのブロック図である。この半導体集積回路100Rは、
図1の半導体集積回路100から異常検出回路140を省略した構成を有している。
【0035】
比較技術に係る半導体集積回路100Rでは、実施形態に係る半導体集積回路100と同様に、第1低電圧検出回路132と第2低電圧検出回路134の一方に異常が生じた場合であっても、それらのうち正常である他方が生成する異常検出信号に応じて、正しいリセット信号RSTを生成することができ、機能安全を実現できる。
【0036】
しかしながら、比較技術に係る半導体集積回路100Rでは、第1低電圧検出回路132、第2低電圧検出回路134のうちのいずれか一方に異常が生じている状態で動作し続けることとなり、好ましくない。
【0037】
図1に戻る。
図3は、
図1の半導体集積回路100において、第1低電圧検出回路132と第2低電圧検出回路134の一方に異常が生じているときの動作を説明する図である。
【0038】
時刻t0より前は、第1低電圧検出回路132、第2低電圧検出回路134は両方とも正常である。時刻t0に、第1低電圧検出回路132に異常が発生し、第1低電圧検出信号UVLO1がアサート(ハイ)に固定される。時刻t0以降、2つの低電圧検出信号UVLO1,UVLO2が不一致となるため、第1論理ゲート142の出力S1がアサートされ、カウンタ146によるカウント動作がスタートする。
【0039】
時刻t1に、第1低電圧検出回路132の異常が解消すると、第1論理ゲート142の出力S1がネゲートされ、カウンタ146によるカウント動作が停止し、リセットされる。信号S1がハイであった時間は、判定時間τよりも短いため、カウンタ146の出力S3はアサートされない。
【0040】
時刻t2に、第1低電圧検出回路132に再び異常が発生し、第1低電圧検出信号UVLO1がアサート(ハイ)に固定される。時刻t2以降、2つの低電圧検出信号UVLO1,UVLO2が不一致となるため、第1論理ゲート142の出力S1がアサートされ、カウンタ146によるカウント動作がスタートする。
【0041】
異常状態が判定時間τ、持続すると、時刻t3に、カウンタ146の出力S3がアサートされ、異常フラグERRがアサートされる。
【0042】
以上が半導体集積回路100の動作である。この半導体集積回路100によれば、第1低電圧検出回路132、第2低電圧検出回路134のうちのいずれか一方に異常が生じている状態を検出することができる。
【0043】
(変形例1)
図1では、レギュレータ回路110が半導体集積回路100に内蔵されていたが、電源電圧V
DDは、外部の電源回路から供給された電圧であってもよい。
【0044】
(変形例2)
実施形態における各信号のアサート、ネゲートの割り当ては一例である。たとえばカウンタ146とフリップフロップ148のリセットが正論理である場合には、信号S2のアサートはハイとなり、第2論理ゲート144は、否定論理積ゲートで構成すればよい。
【0045】
実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0046】
100 半導体集積回路
110 レギュレータ回路
120 ロジック回路
130 リセット回路
132 第1低電圧検出回路
134 第2低電圧検出回路
136 論理ゲート
140 異常検出回路
142 第1論理ゲート
144 第2論理ゲート
146 カウンタ
148 フリップフロップ
UVLO1 第1低電圧検出信号
UVLO2 第2低電圧検出信号
ERR 異常フラグ