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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062642
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】洗濯物干し具
(51)【国際特許分類】
   D06F 57/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
D06F57/00 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170622
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】304049857
【氏名又は名称】今瀬 満
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 満
(72)【発明者】
【氏名】安江 章一
(57)【要約】
【課題】一度の操作で洗濯物の2カ所(複数箇所)を同時に挟んで保持し、一度の操作によって保持した洗濯物を同時に取り外すことができる洗濯バサミ機能の提供を課題とする。
【解決手段】
洗濯物を吊り下げるクリップ装置2を有した洗濯物干し具1であって、クリップ装置2は間隔を隔てて配置した少なくとも2個のピンチ機構を有し、ピンチ機構は、それぞれの先端同士が当接および離間をするように可逆的に回動する一方のピンチアーム7、31と他方のピンチアーム8、32を有し、一方のピンチアーム7、31と他方のピンチアーム8、32は、2個以上の前記ピンチ機構にわたってそれぞれ連結され連動して回動するように構成されていることを特徴とする。これにより洗濯物干し具1は、間隔を隔てて配置した少なくとも2個のピンチ機構が同時に動作するので、洗濯物の付け外しを一度の操作で簡単に行うことができるものとなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を吊り下げるピンチ機構を有したクリップ装置であって、
前記ピンチ機構を構成するそれぞれ一本の線状材によって形成した一対の第1のピンチ部材と第2のピンチ部材と当該第1のピンチ部材および第2のピンチ部材に装着するスプリング部材を有し、
前記第1のピンチ部材は、洗濯物の挟持部を先端に設けた一方のピンチアームと当該一方のピンチアームの操作に使用する一方の操作レバーおよび当該第1のピンチ部材の回動軸を構成する一方の軸部を有し、
前記第2のピンチ部材は、洗濯物の挟持部を先端に設けた他方のピンチアームと当該他方のピンチアームの操作に使用する他方の操作レバーおよび当該第2のピンチ部材の回動軸を構成する他方の軸部を有し、
前記一方のピンチアームの後端に、前記スプリングを装着する一方の装着部および当該装着部から前記一方の軸部に至るアーム部を設け、
前記他方のピンチアームの後端に、前記スプリングを装着する他方の装着部および当該装着部から前記他方の軸部に至るアーム部を設け、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部を凹要素と当該凹要素に嵌合する凸要素によって形成し、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部が嵌合した状態において、前記一方の装着部と他方の装着部に装着したスプリングによる挟着力の作用線の位置が、係合した前記一方の軸部と他方の軸部の位置よりも挟着部側に偏位するとともに、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部が離間した状態において、前記一方の装着部と他方の装着部に装着したスプリングによる挟着力の作用線の位置が、係合した前記一方の軸部と他方の軸部の位置よりも前記双方の操作レバー側に偏移するよう構成されたことを特徴とするクリップ装置。
【請求項2】
洗濯物を吊り下げるクリップ装置を有した洗濯物干し具であって、
前記クリップ装置は、間隔を隔てて配置した少なくとも2個のピンチ機構を有し、
前記ピンチ機構は、それぞれの先端同士が当接および離間をするように可逆的に回動する一方のピンチアームと他方のピンチアームを有し、
前記一方のピンチアームと他方のピンチアームは、2個以上の前記ピンチ機構にわたってそれぞれ連結され連動して回動するように構成されており、
連結された前記一方のピンチアームを有する第1の部材と連結された前記他方のピンチアームを有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材に前記一方のピンチアームを連結した連結手段を回動させる操作レバーと前記第2の部材に前記他方のピンチアームを連結した連結手段を回動させる操作レバーを設けたことを特徴とする洗濯物干し具。
【請求項3】
前記一方のピンチアームと他方のピンチアームは、引き合う方向に付勢する弾性部材を取り付けるための係合部をそれぞれ有しており、
前記一方のピンチアームと他方のピンチアームの先端が当接した際における前記各連結手段の回動中心と、先端が離間した際における前記各連結手段の回動中心が、
前記弾性部材を取り付けた両係合部を結ぶ力の作用線を跨いで変移するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の洗濯物干し具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布状の洗濯物を広げた状態で吊して干すことができる洗濯物干し具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯物干し具として、特許文献1に記載された洗濯挟み等が知られている。タオルなどの広げて干すことが好ましい洗濯物は、特許文献2の図4(h)に記載されたような洗濯物干しハンガー等を使用して距離を隔てた2カ所の洗濯バサミ(ピンチクリップ)に装着することで広げて干すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5735688号号公報
【特許文献2】特開2020-817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗濯物干しハンガー等を使用してタオルを干す場合、布の上縁を2カ所の洗濯バサミを使用して把持する。この際、2カ所の洗濯バサミはそれぞれ独立しているので、一つずつ操作してタオルの上辺を把持することになる。すなわち、2カ所を同時に止めることは出来ず、外す場合にも一つずつ洗濯バサミを開いて外す必要があるため、装着や取り外しに時間を要していた。
本発明は当該事情に鑑み発明されたものであって、一度の操作で洗濯物の2カ所(複数箇所)を同時に挟んで保持し、一度の操作によって2カ所(複数箇所)で保持した洗濯物を同時に取り外すことができる物干し具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。すなわち、
洗濯物を吊り下げるピンチ機構を有したクリップ装置であって、
前記ピンチ機構を構成するそれぞれ一本の線状材によって形成した一対の第1のピンチ部材と第2のピンチ部材と当該第1のピンチ部材および第2のピンチ部材に装着するスプリング部材を有し、
前記第1のピンチ部材は、洗濯物の挟持部を先端に設けた一方のピンチアームと当該一方のピンチアームの操作に使用する一方の操作レバーおよび当該第1のピンチ部材の回動軸を構成する一方の軸部を有し、
前記第2のピンチ部材は、洗濯物の挟持部を先端に設けた他方のピンチアームと当該他方のピンチアームの操作に使用する他方の操作レバーおよび当該第2のピンチ部材の回動軸を構成する他方の軸部を有し、
前記一方のピンチアームの後端に、前記スプリングを装着する一方の装着部および当該装着部から前記一方の軸部に至るアーム部を設け、
前記他方のピンチアームの後端に、前記スプリングを装着する他方の装着部および当該装着部から前記他方の軸部に至るアーム部を設け、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部を凹要素と当該凹要素に嵌合する凸要素によって形成し、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部が嵌合した状態において、前記一方の装着部と他方の装着部に装着したスプリングによる挟着力の作用線の位置が、係合した前記一方の軸部と他方の軸部の位置よりも挟着部側に偏位するとともに、
前記一方のピンチアームおよび他方のピンチアームの挟着部が離間した状態において、前記一方の装着部と他方の装着部に装着したスプリングによる挟着力の作用線の位置が、係合した前記一方の軸部と他方の軸部の位置よりも前記双方の操作レバー側に偏移するよう構成されたことを特徴とするクリップ装置。
【0006】
また、上記洗濯物干し具であって、
洗濯物を吊り下げるクリップ装置を有した洗濯物干し具であって、
前記クリップ装置は、間隔を隔てて配置した少なくとも2個のピンチ機構を有し、
前記ピンチ機構は、それぞれの先端同士が当接および離間をするように可逆的に回動する一方のピンチアームと他方のピンチアームを有し、
前記一方のピンチアームと他方のピンチアームは、2個以上の前記ピンチ機構にわたってそれぞれ連結され連動して回動するように構成されており、
連結された前記一方のピンチアームを有する第1の部材と連結された前記他方のピンチアームを有する第2の部材とを有し、
前記第1の部材に前記一方のピンチアームを連結した連結手段を回動させる操作レバーと前記第2の部材に前記他方のピンチアームを連結した連結手段を回動させる操作レバーを設けたことを特徴とする洗濯物干し具。
【0007】
また、上記洗濯物干し具であって、
前記一方のピンチアームと他方のピンチアームは、引き合う方向に付勢する弾性部材を取り付けるための係合部をそれぞれ有しており、前記一方のピンチアームと他方のピンチアームの先端が当接した際における前記各連結手段の回動中心と、先端が離間した際における前記各連結手段の回動中心が、前記弾性部材を取り付けた両係合部を結ぶ力の作用線を跨いで変移するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
広げて干すことが好ましいタオルなどの洗濯物は、一般的に複数のピンチクリップを使って吊り下げて干すことが行われるが、従来の物干し具は個々にピンチクリップを操作しなければ成らなかった。これに対して本発明は、一度に間隔を隔てた2箇所以上において同時にピンチクリップを動作させることが可能であり、洗濯物の付け外しが極めて簡単かつ効率的であるという効果を有しているものである。また、ピンチクリップ自体は、開いた状態と閉じた状態(挟持する状態)への移行を簡単な操作によって行うことができ、かつその状態を静的に維持できるように構成されている。このため、洗濯物の付け外しを簡単に素早く行えるという効果を有するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る洗濯物干し具の外観斜視図である。
図2】ピンチ機構を構成する第1の部材および第2の部材の外観斜視図である。
図3】クリップ装置が開いた状態を表した説明図である。
図4】クリップ装置が閉じた状態を表した説明図である。
図5】クリップ装置の開閉状態におけるスプリングによる作用線と第1の部材と第2の部材の回動中心との関係を表した説明図である。
図6】他のクリップ装置に関する説明図である。
図7】他のクリップ装置の動作状態を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を図を用いて説明する。
図1は本実施の形態に係る洗濯物干し具(以下「物干し具」という)1の外観を表した斜視図である。物干し具1は、複数のクリップ装置2を取り付ける略矩形の外形を有する枠体3と、枠体3を吊り下げる吊り下げ部材4を有している。吊り下げ部材4は、上端にフックを取り付けた紐や鎖で構成されたものである。
クリップ装置2は、互いに連携してピンチ機構を構成する図2(a)に示した第1の部材5および図2(b)に示した第2の部材6を有している。ピンチ機構は、第1の部材5に設けた一方のピンチアームと、第2の部材6に設けた他方のピンチアームによって開閉可能な挟持部を構成するものであり、洗濯物を挟んで保持したり解放したりするよう構成されたものである。
【0011】
[第1の部材]
本実施の形態における第1の部材5は、距離を隔てて配置された2個のピンチアーム7、8を有している。なお、本実施の形態では最適な例としてピンチアームを2個設けているが、2個以上設けてもよい。第1の部材5は一例として直径1~2mm程度の金属線によって形成されており、最適な素材としてステンレス鋼や剛性のある鉄線によって形成されている。
2個のピンチアーム7、8は真っ直ぐな金属線によって形成された連結手段9によって互いに連結されており、連結手段9を回転軸として連動して回動するように構成されている。ピンチアーム7、8は連結手段9を構成する金属線と一体を成しており、同一の金属線を適所において曲げ加工することにより所定の形状に形成したものである。
【0012】
ピンチアーム7、8は一例として、連結手段9から直交する横方向に伸びた横腕部10と、横腕部10から下方に向かって伸びた縦腕部11を有している。横腕部10の末端である縦腕部11との境界部分には、所定形状に屈曲形成したスプリング50を係合させるための系合部12が設けられている。また、縦腕部11の先端には金属線を折り返して環状に形成した挟持端13が形成されている。
スプリング50は、金属線によってC字型に形成された弾性変形可能な部材であり、両端部の距離を弾性的に広げた状態で装着することにより、両端部を閉じる方向に向かって弾性的な付勢力を生じるものである。
【0013】
連結手段9の横腕部10が設けられた部位には、連結手段9の長手方向に沿った貫通口を有する環状部15が設けられている。環状部15は、第2の部材6が有する連結手段30を挿通させる部位であり、第2の部材6を連結手段9に近接させた状態で回動させる軸受として作用する部位である。
ピンチアーム7、8を設けた部位よりも外側である連結手段9の両端部には、枠体3に取り付ける際に使用される被装着部16、17が設けられている。被装着部16、17は、上方に向かって突出した下方を開口させた外形部分を有する環状若しくは逆U字形状に形成された部位であり、枠体3に固定された環状金具18によって吊り下げられるようになっている。
【0014】
また、ピンチアーム7若しくはピンチアーム8を設けた部位の近傍に、上方に向けて大きく突出させU字状に折り返した操作レバー19を設けている。操作レバー19の長さは、縦腕部11の長さよりもやや長く形成されている。操作レバー19は、連結手段9に回動力を与えるためのレバーであり、操作レバー19の捜査に連動して連結手段9が回動し、この回動に伴いピンチアーム7、8が回動するようになっている。
【0015】
[第2の部材]
第2の部材6は、第1の部材5と同様に直径1~2mm程度のステンレス鋼若しくは鉄素材の線材を適所において曲げ加工することで形成したものである。
第2の部材6は、第1の部材5と同様に距離を隔てて設けられた2個のピンチアーム31、32を有している。ピンチアーム31、32は、第1の部材5に設けたピンチアーム7、8と共同することで、洗濯物を挟んで保持したり解放したりする挟持部を構成する部位である。このため、ピンチアーム31はピンチアーム7と、ピンチアーム32はピンチアーム8とそれぞれ対向するように配置されている。
【0016】
連結手段30は、連結手段5と同様に剛性のある直線状の金属線で構成されており、ピンチアーム31、32を連動させて回動させる回転軸を構成するものである。ピンチアーム31、32は連結手段30を構成する金属線と一体を成しており、金属線の適所を曲げ加工して所定の形状に形成した部位である。
ピンチアーム31、32は一例として、連結手段30から直交する横方向に伸びた横腕部33と、横腕部33から下方に向かって伸びた縦腕部34を有している。横腕部33の末端である縦腕部34との境界部分には、折り曲げ加工によってスプリング50との係合部35が設けられており、縦腕部34の先端には金属線を折り返して形成した挟持端36が設けられている。
【0017】
また、係合部35付近から連結手段30と平行に短い軸部37が設けられるとともに、軸部37を上方に向かって折り曲げることで形成された操作レバー38が設けられている。操作レバー38の先端には円形に折り曲げた環状部39が形成されている。連結手段30の操作レバー38は、連結手段9の操作レバー19と対向する位置に配置され、端部同士が近接した場合に操作レバー部19の先端が操作レバー38の環状部39内に入り込んだ状態で当接するようになっている。操作レバー19と操作レバー38は、両方を指先で挟むことで近接させるように構成されている。
【0018】
[クリップ装置]
図3は第1の部材5と第2の部材6を組み合わせたクリップ装置2においてピンチアーム7とピンチアーム31、ピンチアーム8とピンチアーム32が開いた状態を表している。また図4は、クリップ装置2において同ピンチアーム7、31およびピンチアーム8、32が閉じた状態の外観斜視図を表している。
クリップ装置2は、第1の部材5の連結手段9に設けた2カ所の環状部15に、金属線である第2の部材6の連結手段30を挿通させることによって、一定の角度の範囲において互いに回動可能となるように連結したものである。その他、連結手段9と連結手段30の動作を阻害しない程度に中間部位の外周を拘束する拘束具40を設けることによって近接状態を維持するようになっている。
【0019】
ピンチアーム7とピンチアーム31、ピンチアーム8とピンチアーム32は、操作レバー38の先端に設けた環状部39内に連結手段9の操作レバー19の先端が接触するまで回動して開き、この開いた状態を維持するようになっている。すなわち、環状部39と操作レバー19は、クリップ装置2が開く場合のストッパーとして作用するようになっている。操作レバー38の先端に設けた環状部39と操作レバー19の先端は、嵌合することによって回動方向に沿った移動のみを許容する状態になっており、この嵌合によって第1の部材5と第2の部材6の相対的な移動を制限することになり、各ピンチアーム7、31、ピンチアーム8、32が対向した状態を維持するようになっている。
【0020】
また、互いに嵌合した状態の操作レバー38の先端の環状部39と操作レバー19の先端は、ピンチアーム7、31およびピンチアーム8、32のように弾性的な挟着機能を有している。この挟着機能を利用すると、洗濯物の一端(角部)を一時的に保持させることも可能である。そして、洗濯物の角部を保持させたままピンチアーム7、31およびピンチアーム8、32の間に広げた洗濯物の縁部を配置させてピンチアーム7、31を指先で閉じると、これに連動させてピンチアーム8、32を一気に閉じて洗濯物を広げた状態で挟持し吊り下げることができる。
特に特徴として言えるのは、このような洗濯物の干し方が片手のみでできてしまうということである。即ち片手で操作レバー38の先端の環状部39と操作レバー19の先端によって洗濯物の角部を一時的に保持させることができ、角部を保持させたことにより、片手でピンチアーム7、31およびピンチアーム8、32によってタオルを広げた状態で吊り下げることが可能になる。また、取り外す場合も片手で操作レバー38、19を摘まむだけであるので、洗濯物を広げた状態で干す操作および取り外すといった一連の操作を片手のみで行うことができるという特徴を有している。
【0021】
また、略C字形状のスプリング50の端部を係合させる第1の部材5の系合部12と第2の部材6の係合部35は、スプリング50の弾性力によって引き寄せられる方向に付勢されている。クリップ装置2が開いた状態の場合、図5(a)に示すようにスプリング50による作用点である系合部12と係合部35を結ぶ線Lsが、第1の部材5と第2の部材6の回動中心Cである連結手段9および連結手段30のよりも上方に位置しているため、スプリング50の弾性力によってクリップ装置2の開いた状態が維持されるようになっている。系合部12と係合部35を結ぶ線Lsは、スプリング50によって生じる力の作用線である。
【0022】
反対にクリップ装置2が閉じた状態の場合、連結手段5の操作レバー38と連結手段9の操作レバー19は離間する。そして、ピンチアーム7とピンチアーム31の先端、ピンチアーム8とピンチアーム32の先端のそれぞれが、挟持端13に挟持端36が入り込んだ状態で係合する。この状態では、図5(b)に示すように、スプリング50による作用点である系合部12と係合部35を結ぶ作用線(線)Lsが、第1の部材5と第2の部材6の回動中心Cである連結手段9および連結手段30のよりも下方に位置しているため、スプリング50の弾性力によってクリップ装置2の閉じた状態が維持されるようになっている。
上記のように、一方のピンチアーム7、8と他方のピンチアーム31、32の先端が当接した際における各連結手段5、9の回動中心と、先端が離間した際における各連結手段5、9の回動中心が、弾性部材を取り付けた両係合部を結ぶ力の作用線Lsを跨いで変移するように構成されている。作用線Lsが各連結手段5、9の回動中心を跨ぐと、外力を必要とせずに跨いだ状態を維持するので、使用者が力を加えなくてもピンチ機構が閉じた状態および開いた状態を維持するようになっている。
【0023】
本発明は、間隔を隔てて配置したピンチアーム7とピンチアーム31によって構成されるピンチ機構と、ピンチアーム8とピンチアーム32によって構成される2箇所のピンチ機構が、連動して開閉しその状態を維持するようになっている。
この間隔を隔てて配置した2箇所のピンチ機構が連動して開閉するということは、タオルを広げて干す場合に、一度の操作で広げた状態を維持したままタオルを干す機能を提供するものとなっている。
また、タオルを外す場合には、何れかのピンチ機構を開く操作をすると他のピンチ機構も同時に開くようになっている。すなわち、ピンチ機構ごとの操作を伴って干したタオルを外す必要は無いという効果を有するものとなっている。
【0024】
以上の例は、最適な例として略矩形の外形を有する枠体3に複数のクリップ装置2を設けた例を説明したが、単独のクリップ装置2のみで簡易な物干し具を構成してもよいものである。
また、以上の例は最適な例として一つの連結手段9に一つの操作レバーを設けた場合を説明したが、一つの連結手段9にピンチ機構と同数の操作レバーを設けた物干し具を構成してもよいものである。
【0025】
[他の実施例]
次に、本発明を実施するための他の形態について図を用いて説明する。
図6はクリップ装置100の説明図である。クリップ装置100は、前述した枠体3のような略矩形の外形を有する枠体に吊り下げることで洗濯物干し具を構成するものである。クリップ装置100は、洗濯物を吊り下げる第1のピンチ部材101と第2のピンチ部材111を有したものである。各ピンチ部材101、111は一本の剛性を有した線状材を所定形状に折り曲げて形成したものである。
【0026】
第1のピンチ部材101は、洗濯物の挟持部103を先端に設けた一方のピンチアーム104と一方のピンチアーム104の操作に使用する一方の操作レバー105および第1のピンチ部材101の回動軸を構成する一方の軸部106を有している。
第2のピンチ部材111は、洗濯物の挟持部113を先端に設けた他方のピンチアーム115と他方のピンチアーム115の操作に使用する他方の操作レバー116および第2のピンチ部材111の回動軸を構成する他方の軸部117を有している。
【0027】
一方のピンチアーム104の後端には、スプリング107を装着する一方の装着部108および一方の装着部108から一方の軸部106に至るアーム部109が設けられている。また、他方のピンチアーム115の後端に、スプリング107を装着する他方の装着部118および装着部118から他方の軸部117に至るアーム部119が設けられている。
一方のピンチアーム104に設けた一方の軸部106は、コイルスプリングのように線状材を同軸に2乃至3回ほど巻回した部位であり、内部に形成された空間を他方のピンチアーム115の他方の軸部117を回動可能に支持する軸受けとして作用させるように形成した部位である。
他方のピンチアーム115の他方の軸部117は、先端に折り返えし部120を有するように成型した線状材によって形成された部位であり、折り返えし部120に逆U字状に成型し折り返した操作レバー116の末端121を挿入し係合させることができるようになっている。
【0028】
第1のピンチ部材101の挟持部103は、受け部として作用する凹要素(穴)を形成するために線状材を円環状に形成した部位である。また、第2のピンチ部材111の挟持部113は、線状材を凹要素として形成した挟持部103内に入り込んで嵌合する突出した形状に形成した部位である。挟持部103と挟持部113が嵌合した場合、凹形状と凸形状によって挟持した布の薄片である洗濯物の挟着力を高めるようになっている。
【0029】
図7(a)は第1のピンチ部材101の挟持部103と第2のピンチ部材111の挟持部113が当接した場合を表している。この状態では、スプリング107によって生じる挟着力が作用する一方の装着部108と他方の装着部118を結ぶ作用線Ls1が、一方の軸部106と他方の軸部117が係合した回動軸C1よりも挟持部103および挟持部113側に偏位している。この状態では、回動軸C1よりも一方の装着部108と他方の装着部118を結ぶ作用線Ls1が両装着部108、118側にあるので、スプリング107の挟着力が両装着部108、118に持続的に作用した状態になる。
【0030】
図7(b)は第1のピンチ部材101の挟持部103と第2のピンチ部材111の挟持部113が離間した場合を表している。この状態では、スプリング107によって生じる挟着力が作用する一方の装着部108と他方の装着部118を結ぶ作用線Ls1が、一方の操作レバー105および他方の操作レバー116側に偏位している。この状態では、回動軸C1よりも一方の装着部108と他方の装着部118を結ぶ作用線Ls1が両装着部108、118側にあるので、スプリング107の挟着力が両装着部108、118を離間させる方向に持続的に作用した状態になる。
【0031】
すなわち、回動軸C1と作用線Ls1の位置関係によって、スプリング107によって生じる弾性力が、挟持部103と挟持部113を挟着させたり離間させたりする方向に可逆的に変化するものである。そして、この可逆的に変化は実質的な瞬間的な動作として、挟持部103と挟持部113を開閉させることになる。
このような動作は、開いた挟持部103と挟持部113の間に洗濯ものを配置したまま、片手で挟持部103と挟持部113を閉じて装着するというような使用方法を可能にしている。
【0032】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、これは一例であって発明の技術的範囲の限定を意図したものではない。また、例示した各例および技術的要素は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において適宜組み合わせ、省略、置き換え、変更、追加を伴って使用することができるものであり、これらについても本明細書に記載されているものであり本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、洗濯物を干す際に使用する物干し具に利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 物干し具
2 クリップ装置
3 枠体
4 吊り下げ部材
5 第1の部材
6 第2の部材
7、31 ピンチアーム
8、32 ピンチアーム
9 連結手段
10 横腕部
11 縦腕部
12 系合部
13 挟持端
15 環状部
16、17 被装着部
18 環状金具
19 操作レバー
30 連結手段
31、32 ピンチアーム
33 横腕部
34 縦腕部
35 係合部
36 挟持端
37 軸部
38 操作レバー
39 環状部
40 拘束具
50 スプリング
Ls 線(作用線)
C 中心
100 クリップ装置
101 第1のピンチ部材
103 挟持部
104 一方のピンチアーム
105 一方の操作レバー
106 一方の軸部
107 スプリング
108 一方の装着部
109 アーム部
111 第2のピンチ部材
113 挟持部
115 他方のピンチアーム
116 他方の操作レバー
116 操作レバー
117 他方の軸部
118 他方の装着部
119 アーム部
120 折り返えし部
121 末端
C1 回動軸
Ls1 作用線

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7