(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062647
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】セメント硬化体の製造方法、及びセメント硬化体
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20240501BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170629
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】591135691
【氏名又は名称】日本コンクリート株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】林 正人
(72)【発明者】
【氏名】加賀 俊一
(72)【発明者】
【氏名】河合 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】向 俊成
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】関 健吾
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055AC05
4G055BA02
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を効率良く吸収させることができるセメント硬化体の製造方法、及びセメント硬化体を提供する。
【解決手段】セメント硬化体の製造方法は、型枠内にセメント組成物を供給して、直方体状の向かい合う2つの側面のうち一方の側面から他方の側面にわたって気体を通過可能な通路を有する中間品を成形する成形工程と、複数の中間品を各中間品の通路が繋がるように積み重ねた状態で養生室内に収容し、養生室内に炭酸ガスを充満させて養生する養生工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内にセメント組成物を供給して、直方体状の向かい合う2つの側面のうち一方の側面から他方の側面にわたって気体を通過可能な通路を有する中間品を成形する成形工程と、
複数の前記中間品を各前記中間品の前記通路が繋がるように積み重ねた状態で養生室内に収容し、前記養生室内に炭酸ガスを充満させて養生する養生工程と、
を備えるセメント硬化体の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、前記中間品の厚み方向の中心よりも、前記セメント硬化体の使用時に外部に露出する表面とは反対の裏面側に前記通路を設ける工程を含んでいる、
請求項1に記載のセメント硬化体の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は、少なくとも直方体状の長手方向の中心を挟んだ両側に2つの前記通路を設ける工程を含んでいる、
請求項1に記載のセメント硬化体の製造方法。
【請求項4】
前記養生工程は、前記中間品を、水平方向に隣接して配置された他の前記中間品との間に前記炭酸ガスを通す隙間を有して配置する工程を含んでいる、
請求項1から3のいずれか一項に記載のセメント硬化体の製造方法。
【請求項5】
直方体状に形成され向かい合う2つの側面のうち一方の側面から他方の側面にわたって気体を通過可能な通路を有するセメント硬化体であって、
前記通路は、前記中間品の厚み方向の中心よりも、前記セメント硬化体の使用時に外部に露出する表面とは反対の裏面側に設けられている、
セメント硬化体。
【請求項6】
前記通路は、少なくとも直方体状の幅方向の中心を挟んだ両側に2つ設けられている、
請求項5に記載のセメント硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、セメント硬化体の製造方法、及びセメント硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建築構造物及び土木構造物には、セメント硬化体の一例であるコンクリートが広く使用されている。コンクリートの製造に用いられる一般的なセメントの製造工程では、高温での焼成が行われるため、多量の二酸化炭素が排出される。一方、近年の気候変動への影響に対する関心の高まりを受けて、二酸化炭素の排出量を削減して環境負荷を低減することが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境負荷を低減する方法の一つとして、炭酸ガスをセメント硬化体に吸収させる方法が提案されている。しかしながら、従来構成では、セメント硬化体の表層において、炭酸ガスを吸収させることはできるが、セメント硬化体の表層といった部分的な領域にしか炭酸ガスを吸収させることができない。また、セメント硬化体を縦横に複数積上げられた状態として各セメント硬化体における外部に露出する部分の面積が小さい場合に、炭酸ガスを吸収させる点については考慮されていない。そのため、炭酸ガスつまり二酸化炭素を効率良く吸収させる点において改善の余地があった。
【0005】
そこで、二酸化炭素を効率良く吸収させることができるセメント硬化体の製造方法、及びセメント硬化体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のセメント硬化体の製造方法は、型枠内にセメント組成物を供給して、直方体状の向かい合う2つの側面のうち一方の側面から他方の側面にわたって気体を通過可能な通路を有する中間品を成形する成形工程と、複数の前記中間品を各前記中間品の前記通路が繋がるように積み重ねた状態で養生室内に収容し、前記養生室内に炭酸ガスを充満させて養生する養生工程と、を備える。
【0007】
また、実施形態のセメント硬化体は、直方体状に形成され向かい合う2つの側面のうち一方の側面から他方の側面にわたって気体を通過可能な通路を有するセメント硬化体であって、前記通路は、前記中間品の厚み方向の中心よりも、前記セメント硬化体の使用時に外部に露出する表面とは反対の裏面側に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態によるブロックの概略構成の一例を示す図
【
図2】一実施形態によるブロックの製造方法の工程を示すフローチャート
【
図3】一実施形態による中間品を縦横に複数積み重ねた状態を示す断面図
【
図4】一実施形態による中間品に形成される通路の他の例を示す図
【
図5】従来構成のブロックにフェノールフタレイン溶液を噴射した状態の一例を示す図
【
図6】一実施形態のブロックにフェノールフタレイン溶液を噴射した状態の一例を示す図
【
図7】熱分析試験における炭酸ガス吸収量と炭酸化養生期間との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、実施形態の特徴を分かり易くするために、便宜上部分的に拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0010】
本実施形態のセメント硬化体の製造方法は、例えばセメント、粗骨材、細骨材、水、及び混和材料を含むセメント硬化体の製造に適用することができる。セメント硬化体の製造方法で製造されるセメント硬化体は、例えば内部に鉄筋が配設されていない無筋コンクリートで構成されている。本実施形態では、セメント硬化体は、例えば道路、歩道、駐車場、及び公園等の路面を形成するための舗装用ブロック10に適用した場合について説明する。舗装用ブロック10は、例えばインターロッキングブロックや舗装用平板等を含む概念である。セメント硬化体は、舗装用ブロック以外の例えば建築構造物や土木構造物の構造体等にも適用することができる。本明細書では、舗装用ブロック10を単にブロック10と称する場合がある。
【0011】
ブロック10は、例えば直方体状に形成されており、例えば幅W98mm~298mm、長さL98mm~298mm、厚さt60mm~80mmで構成することができる。本実施形態では、ブロック10は、幅W198mm、長さL98mm、厚さt80mmで構成されている。ブロック10の幅方向は、ブロック10の長手方向を示し、ブロック10の長さ方向は、ブロック10の短手方向を示す。ブロック10は、例えば透水係数が0.1×10-4m/sec以上1.0×10-4m/sec未満である。ブロック10の透水係数は、1.0×10-4m/sec以上であっても良い。また、ブロック10は、例えば曲げ強度が3.0N/mm2以上である。ブロック10は、例えばセメント、粗骨材、細骨材、水、及び混和材料以外の他の材料が混合されていても良い。他の材料とは、例えばブロック10の舗装表面側に着色を施すための顔料を含む。
【0012】
ブロック10は、
図1に示すように、基層部11及び表層部12を有している。基層部11は、例えば厚さt70mmでブロック10の主体を構成している。基層部11は、例えば基層部11内部の水を滞留させることなく毛細管現象によって外表面側に供給させる揚水機能を有する。表層部12は、例えば厚さt10mmで基層部11の上部に積層されている。つまり、ブロック10は、基層部11及び表層部12によって上下二層に構成されている。表層部12は、例えば表層部12内部に水が滞留しないようにするための透水機能を有する。表層部12は、例えば化粧用の着色が施されている。
【0013】
ブロック10の表面に付着した雨水等は、表層部12を透過して基層部11に吸水及び保持されて、その後基層部11から表層部12に向けて徐々に水分が汲み上げられて表層部12つまりブロック10の表面から気化される。なお、基層部11と表層部12とは、一体成形されても良いし、それぞれ別体として成形したものを相互に接合しても良い。また、ブロック10は、二層構造に限らず、一層又は三層以上で構成しても良い。
【0014】
図2に示すように、ブロック10の製造方法では、例えばステップS11の成形工程と、ステップS12の養生工程と、を順に実行する。ステップS11の成形工程は、型枠内にセメント組成物を供給して、中間品20を成形する工程である。セメント組成物とは、例えばセメント、粗骨材、細骨材、水、及び混和材料を混合したもので、いわゆる硬練りコンクリートで構成されている。セメントは、例えば普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、及び高炉セメント等を使用できる。粗骨材は、例えば川砂利や海砂利等を使用できる。細骨材は、例えば川砂や海砂等を使用できる。混和材料は、例えば高炉スラグ、フライアッシュ、及びシリカフューム、並びにAE減水剤や流動化剤等を使用できる。
【0015】
中間品20は、ブロック10の製造過程の途中で得られるもので、特定の処理を加えることでブロック10になるものである。中間品20は、最終的な成形品であるブロック10と外形形状が略等しく、例えば直方体状に形成されている。中間品20は、基層部21及び表層部22を有している。中間品20は、ブロック10の基層部11及び表層部12に対応している。基層部21は、中間品20の主体を構成している。表層部22は、基層部21の上部に積層されている。
【0016】
成型工程は、中間品20に通路30を設ける工程を含んでいる。通路30は、気体が通過可能に形成されている。通路30は、
図3に示すように、例えば断面円形状で、中間品20の向かい合う2つの側面201、202のうち一方の側面201から他方の側面202へ貫いて形成される貫通孔で構成することができる。この場合、通路30は、長手方向の側面201、202間に形成されており、中間品20の短手方向の側面に平行して設けられている。なお、中間品の長手方向の側面に平行して設けられる構成としても良い。
【0017】
通路30の直径は、例えば5mm~20mm程度に設定することができる。中間品20の長手方向の断面積における通路30全体の断面積の占める割合は、例えば1%以上であってかつ10%以下に設定することができる。通路30は、断面円形状に限らず、断面楕円状や断面矩形状等の他の形状であっても良い。通路30は、中間品20の厚み方向の中心に対して表面203側の反対に位置する裏面204側に設けられている。通路30は、中間品20の基層部21側つまりブロック10のうち基層部11側に設けられる。
【0018】
ここで、通路30を貫通孔で形成する場合、当該貫通孔の端部から中間品20の裏面204までの距離が小さすぎると、ブロック10として使用する際にブロック10に対して上方から荷重が掛かった場合に、貫通孔の端部とブロック10の裏面との間にひび割れが生じてしまうおそれがある。そのため、本実施形態では、貫通孔の端部から中間品20の裏面204までの距離は、少なくとも10mm以上に設定されている。また、貫通孔の端部から中間品20の裏面204までの距離は、20mm以下であることが好ましい。これにより、ブロック10の使用時におけるひび割れの発生を抑制しつつ、ブロック10の強度を確保することができる。
【0019】
通路30は、少なくとも中間品20の長手方向の中心を挟んだ両側に2つ設けられている。この場合、2つの通路30は、中間品20の長手方向の中心に対して対称に設けられている。2つの通路30は、中間品20の長手方向の中心に対して非対称であっても良い。また、複数の通路30の離間距離つまり隣接する通路30の離間距離は、50mm以上に設定することができる。複数の通路30の離間距離を確保することによって、ブロック10の曲げ強度を確保することができる。なお、通路30は、中間品20の長手方向の中心を挟んだ片側に複数設けても良いし、中間品20の長手方向の任意の箇所に1つ設ける構成としても良い。
【0020】
中間品20の成形は、例えば型枠内に供給されたコンクリートを振動締固めして即時脱型によって行うことができる。この場合、型枠内の通路30に対応した位置には、例えば鋼製の中子が予め設置されている。中子の形状は、通路30の形状に対応している。そして、型枠を脱型する際に当該中子を型枠内から中間品20に対して水平方向に引き抜いて撤去することで、中間品20に通路30を形成することができる。通路30は、例えば電動ドリル等の電動工具を用いて、型枠から外した後の中間品20に対して形成しても良い。
【0021】
次に、ステップS12の養生工程について説明する。ステップS12の養生工程は、ステップS11の成形工程で成形された中間品20を型枠から外して養生させる工程である。成形工程で成形された中間品20は、例えばパレット上に中間品20の表面203側この場合ブロック10の使用時に外部に露出する面側を上にして縦横に複数積み重ねられる。複数の中間品20は、各中間品20の通路30が繋がるように積み重ねられる。中間品20の短手方向に隣接する各中間品20の通路30同士は、
図3に示すように、対向して配置される。対向とは、一方の通路の領域と他方の通路の領域との少なくとも一部が向き合っている状態を示す。この場合、中間品20の短手方向に隣接する一方の中間品20に形成された通路30の出口端と他方の中間品20に形成された通路30の入口端との少なくとも一部が向き合っている。
【0022】
養生工程は、積み重ねられた状態の各中間品20を養生室内に収容し、養生室内に炭酸ガスを充満させて養生する工程を含んでいる。このようにして、中間品20に炭酸ガスを吸収させることでブロック10を製造することができる。養生工程は、成形工程後の中間品20を所定期間にわたって例えば気中養生してから行う構成としても良い。
【0023】
また、養生工程は、
図3に示すように、中間品20を、水平方向に隣接して配置された他の中間品20との間に、隙間Sを有して配置する工程を含めることができる。隙間Sは、少なくとも気体を通す大きさに設定されている。隙間Sは、例えば0.1mm以上かつ5mm以下に設定することができる。中間品20の短手方向に隣接する各中間品20の通路30同士は、隙間Sを介して気体が通過可能に連通している。なお、隙間Sは、中間品20の成型時に現れる中間品20の側面の凹凸形状によって形成されても良いし、中間品20の側面に別途形成される図示しない突起又は窪みによって形成されても良い。また、隙間Sは、隣接する中間品20の間に設けられた例えば木製又は合成樹脂製の図示しない角材等によって形成されても良い。さらに、隙間Sは、隣接する中間品20同士の間の全てに存在する必要はなく、隣接する中間品20同士の裏面204側から表面203側に気体を通過させることができれば部分的に設けられていても良い。
【0024】
また、通路30は、貫通孔に限らず、溝で構成することができる。この場合、通路30は、中間品20の外面上この場合中間品20の裏面204上又は中間品の短手方向に延びる側面の一方又は両方に形成されている。
図4の例では、通路30は、中間品20の裏面204上に設けられ、例えば断面三角形状に形成されている。通路30は、断面三角形状に限らず、断面円形状や断面矩形状等の他の形状であっても良い。通路30は、中間品20の長手方向に延びる側面に形成しても良い。また、通路30を上述した貫通孔又は溝のいずれにするかは、ブロック10の使用状況や製造性等を考慮して選択することができる。通路30を複数設ける場合には、貫通孔と溝との両方を併用しても良い。
【0025】
本願発明者は、本実施形態のブロック10における炭酸ガスの吸収に関する各種試験を行った。各種試験は、目視による評価及び熱分析試験を行った。各種試験は、通路30を有しない構成及び通路30を有する構成つまり本実施形態のブロック10の2種類の仕様を用いて行った。試験体における通路30は、孔径15mmの貫通孔を用いた。各試験に用いる試験体は、パレット上に縦横に複数積み重ねた状態で、温度50℃、湿度50%RH、及び炭酸ガス濃度80Vol%の環境に設定した養生室内に静置して予め炭酸化養生を行った。
【0026】
目視による評価は、試験体を短手方向に切断し、切断した断面にフェノールフタレイン溶液を噴射後、試験体の変色していない範囲を観察することにより行った。目視による評価では、試験体が変色した範囲は炭酸ガスの浸透が進行した部分であると判断した。熱分析試験は、熱重量・示差熱同時分析装置を用いて行った。熱分析試験では、試験体を100℃で24時間乾燥した後に粉砕し10mgの試料を採取した。そして、採取した試料を30℃~1000℃まで毎分20℃で加熱させて得られた試料中の炭酸カルシウム濃度の測定結果から、炭酸ガス吸収量を算出した。
【0027】
図5及び
図6は、目視による評価におけるフェノールフタレイン溶液が噴射された後の試験体の状況を示したものであり、
図5及び
図6の破線で囲った領域Rは、フェノールフタレイン溶液によって変色した領域を示す。目視による評価では、
図5に示すように、通路30を有しない構成は、試験体の切断面のほぼ全域が変色したままであった。一方、
図6に示すように、通路30を有する本実施形態の構成は、通路30を中心として、広い範囲にわたって変色していない部分つまり炭酸ガスの浸透が確認された。また、本実施形態の構成では、試験体の厚み方向に対しても炭酸ガスの浸透が生じていることがわかる。これは、通路30及び各ブロック10間の隙間によって、炭酸ガスがブロック10の外面に行き渡りやすくなったためと推察する。
【0028】
図7は、熱分析試験における各仕様の炭酸化養生期間と炭酸ガス吸収量との関係を示したものであり、縦軸に炭酸ガス吸収量を示し、横軸に炭酸化養生期間を示す。
図7に示すように、通路30を設けることで、炭酸ガス吸収量が増加することがわかる。いずれも試験体も、炭酸化養生期間を長くするほど、炭酸ガス吸収量が増加した。炭酸化養生期間の経過に伴う炭酸ガス吸収量の経時的変化については、通路30の有無によって特段の違いは見られなかった。また、通路30を設けた仕様のうち、通路30を2つ設けた場合と通路30を3つ設けた場合とにおいて明確な違いは確認されなかった。このように、各種試験の結果、ブロックに通路30を設けることで、二酸化炭素を吸収させる効果が得られることがわかった。
【0029】
以上説明した実施形態によれば、ブロック10の製造方法は、成型工程と、養生工程と、を備える、成形工程は、型枠内にセメント組成物を供給して、直方体状の向かい合う2つの側面201、202のうち一方の側面201から他方の側面202にわたって気体を通過可能な通路30を有する中間品20を成形する工程である。養生工程は、複数の中間品20を各中間品20の通路30が繋がるように積み重ねた状態で養生室内に収容し、養生室内に炭酸ガスを充満させて養生する工程である。
【0030】
これによれば、中間品20に通路30を設けて養生することで、中間品20全体に二酸化炭素を効率よく吸収させることができる。また、複数の中間品20を各中間品20の通路30が繋がるように積み重ねることで、例えばパレタイズされた中間品20に対しても効果的に二酸化炭素を吸収させることができる。このように、ブロック10の製造過程において中間品20に二酸化炭素を吸収させることで、セメント製造時の二酸化炭素排出量の一部をブロック10に戻すことができる。よって、ブロック10の製造過程で排出される二酸化炭素の総量を低減し、結果として環境負荷を低減することができる。
【0031】
成形工程は、中間品20の厚み方向の中心よりも、ブロック10の使用時に外部に露出する表面203とは反対の裏面204側に通路30を設ける工程を含んでいる。これによれば、通路30を中間品20の裏面204側に設けることで、通路30から中間品20の表面までの距離を確保することができる。これにより、ブロック10の使用時において、ブロック10の表面に荷重がかかった場合に、通路30とブロック10表面との間にひび割れが生じるといった不具合の発生を抑制することができる。
【0032】
また、成形工程は、少なくとも直方体状の長手方向の中心を挟んだ両側に2つの通路30を設ける工程を含んでいる。これによれば、通路30を複数設けることで二酸化炭素をより吸収しやすくするとともに、通路30をブロック10の長手方向の中心付近に設けないことで、ブロック10の曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0033】
養生工程は、中間品20を、水平方向に隣接して配置された他の中間品20との間に炭酸ガスを通す隙間Sを有して配置する工程を含んでいる。これによれば、縦横に複数積上げられた中間品20間の上下方向に炭酸ガスを行き渡りやすくすることができる。これにより、例えばパレタイズされた中間品20に対してより効果的に二酸化炭素を吸収させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、上記した態様及び図面に記載した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形や拡張をすることができる。
【符号の説明】
【0035】
10…舗装用ブロック(セメント硬化体)、20…中間品、30…貫通孔