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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062652
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170637
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA07
(57)【要約】
【課題】圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむクランプ装置であって、クランプ対象物を精度良く位置決め固定し得るクランプ装置を提供すること。
【解決手段】クランプ装置は、主クランプ(101)および副クランプ(102)を備える。出力ロッド(4、30)は、軸方向のうちの先端側方向へカムロッド(37)を介して操作部材(7、32)によって移動され、軸方向のうちの基端側方向へ付勢手段(9)によって移動される。主クランプ(101)は、第1出力ロッド(4)の軸心(C1)を基準にしてクランプ対象物(WP)を位置決めするように構成され、副クランプ(102)は、直線(CL)に交差する方向においてクランプ対象物(WP)を位置決めするように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をあけて基台(CP)に固定される主クランプ(101)および副クランプ(102)であって、クランプ対象物(WP)を取り外し可能に固定する主クランプ(101)および副クランプ(102)を備え、
前記主クランプ(101)および前記副クランプ(102)は、それぞれ、
前記基台(CP)に固定されるハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)に当該ハウジング(1)の軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド(4、30)と、
前記ハウジング(1)の基端側に形成された筒孔(5)であって、前記出力ロッド(4、30)が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔(5)と、
前記出力ロッド(4、30)の基端側端面に回転可能な状態で配置される操作部材(7、32)であって、前記出力ロッド(4、30)を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材(7、32)と、
前記筒孔(5)の内部に配置され、または前記筒孔(5)の内部に充填され、前記出力ロッド(4、30)を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段(9)と、
を有し、
前記主クランプ(101)は、前記主クランプ(101)を構成する前記出力ロッドとしての第1出力ロッド(4)の軸心(C1)を基準にして前記クランプ対象物(WP)を位置決めするように構成されており、
前記副クランプ(102)は、前記軸心(C1)から前記副クランプ(102)を構成する前記出力ロッドとしての第2出力ロッド(30)の軸心(C2)へ延ばした仮想の直線(CL)に交差する方向において前記クランプ対象物(WP)を位置決めするように構成されており、
前記基台(CP)との間に所定の間隔をあけて配置されるカムロッド(37)には、前記主クランプ(101)を構成する前記操作部材としての第1操作部材(7)が嵌り込む第1カム溝(38)、および前記副クランプ(102)を構成する前記操作部材としての第2操作部材(32)が嵌り込む第2カム溝(39)が外周面に形成されており、
前記第1カム溝(38)は、前記第1操作部材(7)を前記先端側方向へ押すための第1カム面(38a)を有し、
前記第2カム溝(39)は、前記第2操作部材(32)を前記先端側方向へ押すための第2カム面(39a)を有し、
前記第2操作部材(32)が前記第2カム溝(39)に嵌り込むのに先行して、前記第1操作部材(7)が前記第1カム溝(38)に嵌り込むことで、前記副クランプ(102)による前記クランプ対象物(WP)のロックに先行して、前記主クランプ(101)による前記クランプ対象物(WP)のロックが行われる、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記主クランプ(101)および前記副クランプ(102)は、それぞれ、
前記ハウジング(1)から突設される筒状のプラグ部(3)と、
前記プラグ部(3)に外嵌される環状のコレット(17、33)であって、弾性的に縮径されるコレット(17、33)と、
を有し、
前記主クランプ(101)を構成する前記コレットとしての第1コレット(17)の外周面(17a)は、平面視において円形もしくは多角形の先細りの外周面、または周方向において相互に等しい間隔で少なくとも3つの凸部(45)を側面に有する先細りの外周面とされ、
前記副クランプ(102)を構成する前記コレットとしての第2コレット(33)の外周面(33a)は、前記直線(CL)に交差する方向の側面に凸部(36)を有する先細りの外周面とされている、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記第1出力ロッド(4)の基端側端面および前記第2出力ロッド(30)の基端側端面に、それぞれ、第1凹部(6)および第2凹部(31)が形成されており、
前記第1凹部(6)に前記第1操作部材(7)が回転可能な状態で収容されているとともに、前記第2凹部(31)に前記第2操作部材(32)が回転可能な状態で収容されている、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記カムロッド(37)は、前記基台(CP)に沿って移動可能とされている、
クランプ装置。
【請求項5】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記第1操作部材(7)および前記第2操作部材(32)は、球体、またはローラである、
クランプ装置。
【請求項6】
請求項3のクランプ装置において、
前記第1凹部(6)および前記第2凹部(31)の底中央部に、それぞれ、第1穴(27)および第2穴(34)が設けられており、
第1穴(27)および第2穴(34)のそれぞれに収容される第1磁石(28)および第2磁石(35)をさらに備え、
前記第1出力ロッド(4)、前記第2出力ロッド(30)、前記第1操作部材(7)、および前記第2操作部材(32)は、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成されている、
クランプ装置。
【請求項7】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記付勢手段(9)はバネ(9)である、
クランプ装置。
【請求項8】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記主クランプ(101)および前記副クランプ(102)は、それぞれ、
前記ハウジング(1)から突設される筒状のプラグ部(3)と、
前記プラグ部(3)の周壁に形成された貫通孔(13)に挿入される係合部材(14)であって、前記出力ロッド(4、30)が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔(13)内で移動され、前記プラグ部(3)が挿入可能となるように前記クランプ対象物(WP)に設けられる装着孔(24)が有する係止部(25)に当接可能となっている係合部材(14)と、
を有する、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークパレット、ワーク、金型、工具、または治具などのクランプ対象物を、基台としてのクランプパレット、またはテーブルなどに着脱可能に固定するのに好適なクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ装置(クランプ)は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、ハウジングから突設される筒状のプラグ部、出力ロッド、係合用のボール、およびピストンなどから構成される。クランプ装置を構成するハウジングには、圧力流体が給排されるクランプ室およびアンクランプ室が設けられている。クランプ装置の駆動、すなわちピストンおよび出力ロッドの駆動には、例えば圧縮エアが用いられ、駆動のたびに、クランプ室およびアンクランプ室に圧縮エアが給排される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/177385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなクランプ装置(クランプ)が多数設置されると、圧縮エアの供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、圧縮エアを給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない側面がある。そのため、駆動源として圧縮エアは不要である、または必要であるとしても最小限であることが望ましい。
【0006】
また、機械部品の加工精度などを高める場合、クランプ装置を構成するクランプが1つだけであると、ワークパレットなどのクランプ対象物をクランプ装置によって正確に位置決め固定することが難しいことがある。
【0007】
本発明の目的は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむクランプ装置であって、クランプ対象物を精度良く位置決め固定し得るクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクランプ装置は、例えば、図1から図15に示すように、次のように構成される。
【0009】
(1)本願で開示するクランプ装置は、所定の間隔をあけて基台CPに固定される主クランプ101および副クランプ102であって、クランプ対象物(WP)を取り外し可能に固定する主クランプ101および副クランプ102を備える。前記主クランプ101および前記副クランプ102は、それぞれ、前記基台CPに固定されるハウジング1と、前記ハウジング1に当該ハウジング1の軸方向に移動可能となるように挿入される出力ロッド4、30と、前記ハウジング1の基端側に形成された筒孔5であって、前記出力ロッド4、30が前記軸方向に移動可能となるように挿入される筒孔5と、前記出力ロッド4、30の基端側端面に回転可能な状態で配置される操作部材7、32であって、前記出力ロッド4、30を前記軸方向のうちの先端側方向へ押して移動させる操作部材7、32と、前記筒孔5の内部に配置され、または前記筒孔5の内部に充填され、前記出力ロッド4、30を前記軸方向のうちの基端側方向へ押して移動させる付勢手段9と、を有する。前記主クランプ101は、前記主クランプ101を構成する前記出力ロッドとしての第1出力ロッド4の軸心C1を基準にして前記クランプ対象物WPを位置決めするように構成されている。前記副クランプ102は、前記軸心C1から前記副クランプ102を構成する前記出力ロッドとしての第2出力ロッド30の軸心C2へ延ばした仮想の直線CLに交差する方向において前記クランプ対象物WPを位置決めするように構成されている。前記基台CPとの間に所定の間隔をあけて配置されるカムロッド37には、前記主クランプ101を構成する前記操作部材としての第1操作部材7が嵌り込む第1カム溝38、および前記副クランプ102を構成する前記操作部材としての第2操作部材32が嵌り込む第2カム溝39が外周面に形成されている。前記第1カム溝38は、前記第1操作部材7を前記先端側方向へ押すための第1カム面38aを有し、前記第2カム溝39は、前記第2操作部材32を前記先端側方向へ押すための第2カム面39aを有する。前記第2操作部材32が前記第2カム溝39に嵌り込むのに先行して、前記第1操作部材7が前記第1カム溝38に嵌り込むことで、前記副クランプ102による前記クランプ対象物WPのロックに先行して、前記主クランプ101による前記クランプ対象物WPのロックが行われる。付勢手段9は、例えばバネまたは圧縮ガス(圧力ガス)である。
【0010】
なお、前記第2操作部材32が前記第2カム面39aによって前記先端側方向へ移動されるのに先行して、前記第1操作部材7が前記第1カム面38aによって前記先端側方向へ移動されることで、前記副クランプ102による前記クランプ対象物WPのロックに先行して、前記主クランプ101による前記クランプ対象物WPのロックが行われるようにされてもよい。
【0011】
本願で開示するクランプ装置は次の作用効果を奏する。当該クランプ装置は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該クランプ装置では、上記のカムロッドが手動もしくは外力によって動かされることで、または、基台が手動もしくは外力によって動かされることで、軸方向のうちの先端側方向へ操作部材を介して出力ロッドを駆動できる。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、上記の付勢手段によって出力ロッドは駆動される。したがって、当該クランプ装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむ。
【0012】
また、第1出力ロッドの軸心から第2出力ロッドの軸心へ延ばした仮想の直線に交差する方向においてクランプ対象物を位置決めするように構成された副クランプによるクランプ対象物のロックに先行して、第1出力ロッドの軸心を基準にしてクランプ対象物を位置決めするように構成された主クランプによるクランプ対象物のロックが行われることで、クランプ対象物を精度良く位置決め固定し得る。
【0013】
(2)(1)のクランプ装置において、前記主クランプ101および前記副クランプ102は、それぞれ、前記ハウジング1から突設される筒状のプラグ部3と、前記プラグ部3に外嵌される環状のコレット17、33であって、弾性的に縮径されるコレット17、33と、を有してもよい。前記主クランプ101を構成する前記コレットとしての第1コレット17の外周面17aは、平面視において円形もしくは多角形の先細りの外周面、または周方向において相互に等しい間隔で少なくとも3つの凸部45を側面に有する先細りの外周面とされ、前記副クランプ102を構成する前記コレットとしての第2コレット33の外周面33aは、前記直線CLに交差する方向の側面に凸部36を有する先細りの外周面とされてもよい。
【0014】
この構成によると、クランプ対象物を精度良く位置決め固定し得る。
【0015】
(3)(1)または(2)のクランプ装置において、前記第1出力ロッド4の基端側端面および前記第2出力ロッド30の基端側端面に、それぞれ、第1凹部6および第2凹部31が形成されており、前記第1凹部6に前記第1操作部材7が回転可能な状態で収容されているとともに、前記第2凹部31に前記第2操作部材32が回転可能な状態で収容されていてもよい。
【0016】
この構成によると、各出力ロッドの基端側端面における各操作部材の配置が容易となる。
【0017】
(4)(1)から(3)のいずれかのクランプ装置において、前記カムロッド37は、前記基台CPに沿って移動可能とされてもよい。
【0018】
この構成によると、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむクランプ装置によって、クランプ対象物を容易に精度良く位置決め固定し得る。
【0019】
(5)(1)から(4)のいずれかのクランプ装置において、前記第1操作部材7および前記第2操作部材32は、球体、またはローラであるとよい。
【0020】
この構成によると、軸方向のうちの先端側方向へ各出力ロッドをスムーズに移動させることができる。
【0021】
(6)(3)のクランプ装置において、前記第1凹部6および前記第2凹部31の底中央部に、それぞれ、第1穴27および第2穴34が設けられており、クランプ装置は、第1穴27および第2穴34のそれぞれに収容される第1磁石28および第2磁石35をさらに備えてもよい。この場合、前記第1出力ロッド4、前記第2出力ロッド30、前記第1操作部材7、および前記第2操作部材32は、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成される。
【0022】
この構成によると、磁石によって、重力により各操作部材が落下することを防止できる。
【0023】
(7)(1)から(6)のいずれかのクランプ装置において、前記付勢手段9はバネ9とされてもよい。
【0024】
この構成によると、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としないクランプ装置とすることができる。
【0025】
(8)(1)から(7)のいずれかのクランプ装置において、前記主クランプ101および前記副クランプ102は、それぞれ、前記ハウジング1から突設される筒状のプラグ部3と、前記プラグ部3の周壁に形成された貫通孔13に挿入される係合部材14であって、前記出力ロッド4、30が前記軸方向へ移動されることにより前記貫通孔13内で移動され、前記プラグ部3が挿入可能となるように前記クランプ対象物WPに設けられる装着孔24が有する係止部25に当接可能となっている係合部材14と、を有してもよい。
【0026】
この構成によると、クランプ対象物を強固に精度良く位置決め固定し得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない、または圧力流体を駆動に必要としてもその量が少なくてすむクランプ装置であって、クランプ対象物を精度良く位置決め固定し得るクランプ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の一部断面図である。
図2図2は、図1のY-Y矢視図である。
図3図3は、図1のX-X矢視図である。
図4図4は、図1のA部拡大図である。
図5図5は、図2のC部拡大図である。
図6図6は、図1に示す主クランプの斜視図である。
図7図7は、図1のB部拡大図である。
図8図8は、図2のD部拡大図である。
図9図9は、図1に示す副クランプの斜視図である。
図10図10は、図1に示すクランプ装置がリリース状態からロック状態へ切換わるときの第1段階を示す、クランプ装置の側面視の一部断面図である。
図11図11は、図1に示すクランプ装置がリリース状態からロック状態へ切換わるときの第2段階を示す、クランプ装置の側面視の一部断面図である。
図12図12は、図1に示すクランプ装置のロック状態における側面視の一部断面図である。
図13図13は、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の一部断面図である。
図14図14は、図13のX-X矢視図である。
図15図15は、第1コレットの変形例を示す、図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の説明では、基台としてのクランプパレットCPに、クランプ対象物であるワークパレットWPを固定するという、クランプ装置の使用例を例示している。
【0030】
図1から図12に示す本発明の第1実施形態において、クランプパレットCPは複数の脚部材50で下から支持されて固定されている。図1から図12に基づいて、第1実施形態のクランプ装置の構成を説明する。
【0031】
クランプ装置は、主クランプ101および副クランプ102を備える。主クランプ101および副クランプ102は、所定の間隔をあけてクランプパレットCPに固定される。主クランプ101および副クランプ102は、いずれも、ワークパレットWPを取り外し可能に固定するためのものである。
【0032】
主クランプ101の構成と副クランプ102の構成とは、ほぼ同じである。主クランプ101の構成をまず説明する。
【0033】
図4図5などに示すように、クランプパレットCPに主クランプ101のハウジング1が複数のボルト2によって固定される。ハウジング1から筒状のプラグ部3が上方へ一体に突設される。プラグ部3のプラグ部筒孔3aに出力ロッド4(第1出力ロッド)の上ロッド部分4aが上下方向(プラグ部筒孔3aの軸方向)へ移動可能に挿入される。ハウジング1の軸方向と出力ロッド4の軸方向とプラグ部筒孔3aの軸方向とは同じ方向である。
【0034】
ハウジング1の基端側に筒孔5が形成され、筒孔5内に出力ロッド4の下ロッド部分4bが上下方向へ移動可能に挿入される。筒孔5は、プラグ部筒孔3aよりも径が大きい孔である。筒孔5とプラグ部筒孔3aとは上下に連ねて形成される。筒孔5の軸方向とプラグ部筒孔3aの軸方向とは同じ方向である。
【0035】
下ロッド部分4bの基端側端面に形成された凹部6(第1凹部)に、操作部材(第1操作部材)としてのボール7(球体、回転体)が回転可能な状態で収容される。ボール7の一部は、筒孔5の軸方向の外方へ突出している。なお、操作部材としてボール7に代えてローラ(不図示)などの回転体を用いることも可能である(副クランプ102についても同様)。
【0036】
また、凹部6は形成されなくてもよい(副クランプ102についても同様)。すなわち、下ロッド部分4bの基端側端面は、例えば全面が平らな面とされてもよい。この場合、ボール7またはローラなどの回転体は、下ロッド部分4bの基端側端面に、支持部材(不図示)を介して回転可能な状態で取り付け配置される。
【0037】
凹部6の底中央部に、出力ロッド4の軸方向に延びる有底の穴27(第1穴)が設けられ、この穴27の底に磁石28(第1磁石)が収容される。磁石28の下に隙間埋め部材としてプラグ29が捩じ込まれることで磁石28は穴27に固定される。出力ロッド4、プラグ29、およびボール7は、鉄など、磁石に引き付けられる磁性体材料で形成される。この構成により、重力によりボール7が落下することを磁石28によって防止できる。
【0038】
上記凹部6が形成された下ロッド部分4bの基端部は、フランジ部8(大径部)とされており、出力ロッド4の他の部分よりも径が大きい。筒孔5のうちのフランジ部8よりも上側の空間に、フランジ部8を下方(基端側方向)へ押す付勢手段としてのバネ9が配置される。バネ9は圧縮コイルバネである。本実施形態のバネ9は、第1バネ9aと第2バネ9bとで構成される。第2バネ9bの径は、第1バネ9aの径よりも大きい。フランジ部8の上面(先端側面)に、第1バネ9aの下端を受け止める第1段差部8a、および第2バネ9bの下端を受け止める第2段差部8bが内側からこの順で設けられている。第1バネ9aの上には、当該第1バネ9aの上端を受け止めるリング状のバネ受け10が設けられ、第2バネ9bの上には、当該第2バネ9bの上端を受け止めるリング状のバネ受け11が設けられている。筒孔5の基端部には、筒孔5から出力ロッド4が抜けることを防止するリング状のストッパ12(止め輪)が取り付けられている。
【0039】
なお、バネ9は、2本のバネからなるものに限定されるものではない。また、バネとして、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である(副クランプ102についても同様)。
【0040】
プラグ部3の周壁の上寄り部に複数の貫通孔13が周方向へ所定間隔をあけて形成される。各貫通孔13に、係合部材としてのボール14(係合ボール)が挿入される。貫通孔13によって、径方向の内方の図1(拡大図は図4)に示す位置と径方向の外方の図12に示す位置(外側位置)との間で各ボール14が移動可能に支持される。
【0041】
出力ロッド4の上ロッド部分4aの外周壁には、各ボール14に対応させて、押圧面15と退避溝16とが上下に連ねて形成される。押圧面15は、上方へ向かうにつれて広がるように形成される。押圧面15がボール14に対面する位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の外方へ突出するように外側位置へ移動される。また、退避溝16がボール14に対面する位置であって、ボール14が挿入可能となる退避位置に移動することにより、ボール14がプラグ部3の外周面よりも径方向の内方へ移動可能となる。本実施形態では、4つのボール14が各貫通孔13にそれぞれ1つずつ挿入されているが、ボール14は4つに限定されない。
【0042】
プラグ部3の周壁の下寄り部(根本部)に環状のコレット17(第1コレット)が外嵌される。コレット17は上すぼまりの(先細りの)外周面17a(テーパ外周面)を備え、上下方向へ延びる1つのスリット17bによって弾性的に縮径されるようになっている。コレット17は止め輪18によってプラグ部3から抜けないようにされている(上方への移動が規制されている)。ハウジング1の上面1aに、コレット17を上方(先端側方向)へ押す押圧部材19が挿入される複数の貫通孔20が周方向へ所定間隔をあけて形成される。押圧部材19は、円柱形状であり、大径部19a(フランジ部)を下端部に有する。大径部19aにおいて、押圧部材19はバネ受け10により下から支持されている。コレット17は、押圧部材19およびバネ受け10を介して、第1バネ9aによって上方へ付勢されている。そのため、止め輪18によって上方への移動が規制されているコレット17は、僅かではあるが、上下方向へ移動可能である。本実施形態では、3つの押圧部材19が各貫通孔20にそれぞれ1つずつ挿入されているが、押圧部材19は3つに限定されない。
【0043】
コレット17が備える前記外周面17aは、平面視において円形の先細りの外周面である。なお、外周面17aは、平面視において多角形の先細りの外周面とされてもよい。主クランプ101は、コレット17の形状を上記のようにすることで、出力ロッド4の軸心C1を基準にしてワークパレットWPを位置決めするように構成されている。
【0044】
ワークパレットWPの下面に凹部21が開口される。凹部21にリング部材22が装着され、リング部材22は複数のボルト23によってワークパレットWPに固定される。リング部材22の内周孔によって装着孔24が構成され、装着孔24にプラグ部3が挿入可能になっている。
【0045】
リング部材22の装着孔24に係止部25が上方へ向かうにつれて広がるようにテーパ状に形成される。また、係止部25の下方に、コレット17の外周面17aに係合するテーパ内周面26が形成される。テーパ内周面26は、上すぼまりの、言い換えれば、上方へ向かうにつれて狭まるように形成された面である。
【0046】
なお、本実施形態では、装着孔24をリング部材22に形成するようにしたが、ワークパレットWPの凹部21の内周孔によって装着孔24を構成するようにしてもよい。すなわち、ワークパレットWPの凹部21の内周孔自体に、上記係止部25およびテーパ内周面26が形成されてもよい(後述する副クランプ102に対応する装着孔24(係止部25およびテーパ内周面26)についても同様)。
【0047】
図7図8などを参照しつつ、副クランプ102の構成を説明する。前記のとおり、主クランプ101の構成と副クランプ102の構成とは、ほぼ同じである。そのため、副クランプ102の構成の説明においては、副クランプ102と主クランプ101との相違点について説明する。副クランプ102を構成する各部材について、特に説明なき部材は、主クランプ101の構成についての前記説明を参照されたい。
【0048】
副クランプ102を構成する各部材について、主クランプ101を構成する各部材と同様の部材については、原則、同じ符号を付している。なお、副クランプ102を構成する各部材について、主クランプ101を構成する各部材と同様の部材であっても、単に両者を区別するために異なる符号を付している部材もある。
【0049】
副クランプ102を構成する、出力ロッド30(第2出力ロッド)、凹部31(第2凹部)、操作部材(第2操作部材)としてのボール32、穴34(第2穴)、および磁石35(第2磁石)は、主クランプ101を構成する、出力ロッド4(第1出力ロッド)、凹部6(第1凹部)、操作部材(第1操作部材)としてのボール7、穴27(第1穴)、および磁石28(第1磁石)に相当する。副クランプ102を構成する上記各部材に、主クランプ101において対応する各部材の符号と異なる符号を付しているが、副クランプ102を構成する上記各部材は、主クランプ101において対応する各部材と同様の部材である。
【0050】
なお、副クランプ102の出力ロッド30における上ロッド部分30aおよび下ロッド部分30bは、それぞれ、主クランプ101の出力ロッド4における上ロッド部分4aおよび下ロッド部分4bに相当する。
【0051】
副クランプ102を構成するコレット33(第2コレット)は、上下方向へ延びる1つのスリット33bによって弾性的に縮径されるようになっているなどの点で、主クランプ101を構成するコレット17(第1コレット)と同じである。一方、コレット33は、下記の点で、コレット17と相違する。
【0052】
主クランプ101の出力ロッド4の軸心C1から出力ロッド30の軸心C2へ延ばした仮想の直線を直線CLとする。図8などに示すように、コレット33が備える外周面33aは、この直線CLに交差する方向の側面に凸部36を有する先細りの外周面とされる。本実施形態では、外周面33aは、直線CLに直交する方向の両側面に凸部36を有する先細りの外周面とされている。副クランプ102は、コレット33の形状を上記のようにすることで、直線CLに交差する方向においてワークパレットWPを位置決めするように構成されている。
【0053】
主クランプ101の場合と同様、ワークパレットWPの下面に、副クランプ102に対応する凹部21が開口される。凹部21にリング部材22が装着され、リング部材22は複数のボルト23によってワークパレットWPに固定される。リング部材22の内周孔によって装着孔24が構成され、装着孔24にプラグ部3が挿入可能になっている。装着孔24の構成は、主クランプ101に対応する装着孔24の構成と同様である。
【0054】
次に、図1などに基づいてカムロッド37について説明する。
【0055】
カムロッド37は、クランプパレットCPとの間に所定の間隔をあけて、クランプパレットCPの下方に配置される。カムロッド37は、直動ガイド51によって下から支持される。直動ガイド51を構成するレール52はテーブルTに固定され、直動ガイド51を構成する可動部材53の上面にカムロッド37が固定される。カムロッド37は、上記構成により、クランプパレットCPに沿って移動可能とされている。
【0056】
カムロッド37は、ロッド本体部44と、ロッド本体部44の軸方向端部に設けられたグリップ部43とを備え、オペレータは、例えばグリップ部43を掴んでカムロッド37を移動させる。
【0057】
ロッド本体部44の外周面に、主クランプ101のボール7が嵌り込む第1カム溝38、および副クランプ102のボール32が嵌り込む第2カム溝39が形成される。第1カム溝38は、ボール7を先端側方向へ押すための第1カム面38aを有する。第2カム溝39は、ボール32を先端側方向へ押すための第2カム面39aを有する。第1カム面38aおよび第2カム面39aは、ロッド本体部44(カムロッド37)の軸方向に対して同じ方向に傾斜する面である。
【0058】
第1カム溝38と第2カム溝39とはロッド本体部44の軸方向において所定の距離、離される。ボール32が第2カム溝39に嵌り込むのに先行して、ボール7が第1カム溝38に嵌り込むように、第1カム溝38と第2カム溝39との間の距離が決められる。
【0059】
クランプパレットCPの下面にストッパ40が固定される。ストッパ40の先端部が入り込む溝41がロッド本体部44の外周面に形成される。溝41には、ストッパ40を構成するボール42が嵌り込む2つの窪み41a、41bが形成されている。窪み41aは、クランプ装置がリリース状態のときにボール42が嵌り込む窪みであり、窪み41bは、クランプ装置がロック状態のときにボール42が嵌り込む窪みである。
【0060】
上記ストッパ40および溝41が設けられることで、カムロッド37を必要以上に動かしてしまうこと、およびカムロッド37がレール52から抜けてしまうことを防止できる。
【0061】
上記構成のクランプ装置は次のように動作する。
【0062】
図1に示すリリース状態では、ロッド本体部44の外周面(カム溝38、39、および溝41が形成されていない部分)によって、ボール7およびボール32が上方へ押され、ボール7およびボール32は図12に示すロック状態のときよりも各ハウジング1の筒孔5内に押し込まれている。これにより、各バネ9の付勢力に抗してボール7およびボール32が、それぞれ、出力ロッド4および出力ロッド30を上方(先端側方向)へ押して上昇させた状態となっている。出力ロッド4および出力ロッド30が上昇しているので、各プラグ部3のボール14が各退避溝16内の退避位置に移動可能となっている。図1に示すリリース状態のクランプ装置の上方にワークパレットWPが搬入される。
【0063】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、まず、ワークパレットWPを下降させて、各リング部材22の装着孔24に各プラグ部3が挿入された状態とする。このとき、各装着孔24に形成されているテーパ内周面26が、拡径状態のコレット17の外周面17a(副クランプ102では、拡径状態のコレット33の外周面33a)に当たり、各ハウジング1の上面1a(着座面)と各リング部材22の下面との間に少しの隙間が形成された状態にある。
【0064】
その後、カムロッド37を直動ガイド51の可動部材53を介してレール52の上を移動させることで、第1カム溝38にボール7を嵌り込ませるとともに、第2カム溝39にボール32を嵌り込ませる。図1において、図中右方向にカムロッド37を移動させる。
【0065】
カムロッド37を移動させていくと、図10に示すように、まず、主クランプ101のボール7が、バネ9で押されて第1カム溝38の第1カム面38aを下っていく。カムロッド37をさらに移動させていくと、図11に示すように、副クランプ102のボール32が、バネ9で押されて第2カム溝39の第2カム面39aを下っていく。このように、ボール7の下降開始は、ボール32の下降開始よりもタイミングが早く、副クランプ102のボール32よりも先に主クランプ101のボール7が下降する。
【0066】
そのため、主クランプ101は、副クランプ102に先行して次のように動作する。
【0067】
バネ9が出力ロッド4を下方(基端側方向)へ押し、出力ロッド4は下降する。出力ロッド4が下降すると、出力ロッド4に形成されている退避溝16の一部を構成する押出し部16aがプラグ部3のボール14を径方向の外方の突出位置へ押し出す。そして、出力ロッド4に形成されている押圧面15がボール14を介してワークパレットWP(リング部材22)の係止部25を下向きに押圧していく。すなわち、主クランプ101はワークパレットWPを引き込んでいく。これにより、コレット17は縮径しワークパレットWPとともに少しばかり下降する。その結果、リング部材22の下面がハウジング1の上面1aに強く受け止められ、主クランプ101は、図1に示すリリース状態から図12に示すロック状態へ切換えられる。
【0068】
このとき、コレット17が備える外周面17aが、平面視において円形の先細りの外周面であるため、主クランプ101は、出力ロッド4の軸心C1を基準にしてワークパレットWPを位置決め固定する。
【0069】
一方、副クランプ102は、主クランプ101に遅れて次のように動作する。
【0070】
バネ9が出力ロッド30を下方(基端側方向)へ押し、出力ロッド30は下降する。出力ロッド30が下降すると、出力ロッド30に形成されている退避溝16の一部を構成する押出し部16aがプラグ部3のボール14を径方向の外方の突出位置へ押し出す。そして、出力ロッド30に形成されている押圧面15がボール14を介してワークパレットWP(リング部材22)の係止部25を下向きに押圧していく。すなわち、副クランプ102はワークパレットWPを引き込んでいく。これにより、コレット33は縮径しワークパレットWPとともに少しばかり下降する。その結果、リング部材22の下面がハウジング1の上面1aに強く受け止められ、副クランプ102は、図1に示すリリース状態から図12に示すロック状態へ切換えられる。
【0071】
このとき、コレット33が備える外周面33aが、直線CLに交差する方向の側面に凸部36を有するため、副クランプ102は、直線CLに交差する方向においてワークパレットWPを位置決め固定する。副クランプ102部分において、直線CLの方向には、ワークパレットWPは強く拘束されず、微小量移動可能である。そのため、先行の主クランプ101による、出力ロッド4の軸心C1を基準にしたワークパレットWPの位置決め固定を維持しつつ、副クランプ102によって、直線CLに交差する方向においてワークパレットWPを位置決め固定できる。すなわち、副クランプ102によるワークパレットWPのロックに先行して、主クランプ101によるワークパレットWPのロックが行われることで、ワークパレットWPを出力ロッド4の軸心C1を基準にして精度良く位置決め固定できる。
【0072】
なお、図12に示すロック状態において、ボール7と第1カム溝38との間、およびボール32と第2カム溝39との間に隙間があるが、このような状態も、第1カム溝38にボール7が嵌り込んだ状態、第2カム溝39にボール32が嵌り込んだ状態である。上記隙間があっても、重力によりボール7、32が落下することを磁石28、35によって防止できる。
【0073】
クランプ装置を図12に示すロック状態から図1に示すリリース状態へ切換えるときは、図中左方向にカムロッド37を移動させる。
【0074】
カムロッド37を移動させていくと、図11に示すように、まず、副クランプ102のボール32が第2カム面39aで押され、ボール32は第2カム面39aに沿って移動してカムロッド37のロッド本体部44の外周面(カム溝38、39、および溝41が形成されていない部分)に乗り上がっていく。また、カムロッド37を移動させていくと、主クランプ101のボール7が、ボール32に遅れて、第1カム面38aで押され、ボール7は第1カム面38aに沿って移動してカムロッド37のロッド本体部44の外周面(カム溝38、39、および溝41が形成されていない部分)に乗り上がっていく。
【0075】
ここで、主クランプ101および副クランプ102は次のように動作する。
【0076】
各バネ9の付勢力に抗してボール7よびボール32が、それぞれ、出力ロッド4および出力ロッド30を上方(先端側方向)へ押して、出力ロッド4および出力ロッド30は上昇する。出力ロッド4および出力ロッド30が上昇すると、出力ロッド4および出力ロッド30に形成されている各退避溝16がプラグ部3のボール14に対面する位置となり、ボール14は退避溝16内(出力ロッド4、30の径方向の内方)へ移動可能となる。その結果、図1に示すように、ワークパレットWPをクランプパレットCPから円滑に取り外すことが可能となる。なお、ボール7、32は回転するので、カム面38a、39aでボール7、32が押されたとき、カム面38a、39aからの横方向の力をボール7、32で一部逃がすことができ、筒孔5の内周面と出力ロッドのフランジ部8とがこじれることを防止できる。その結果、出力ロッド4、30を先端側方向へスムーズに移動させることができる。
【0077】
クランプ装置(主クランプ101および副クランプ102)は、従来のクランプ装置が備えるクランプ室およびアンクランプ室というような駆動のたびに圧力流体が給排される室を備えない。当該クランプ装置では、カムロッド37が手動もしくは外力によって動かされることで、軸方向のうちの先端側方向へボール7、32を介して出力ロッド4、30を駆動できる。軸方向のうちのもう一方の方向である基端側方向へは、各バネ9によって出力ロッド4、30は駆動される。したがって、当該クランプ装置は、圧縮エアなどの圧力流体を駆動に必要としない。
【0078】
図13および図14は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態のクランプ装置では、クランプパレットCPが移動可能とされ、カムロッド37が固定されている。第2実施形態のクランプ装置は、この点が、第1実施形態のクランプ装置と相違する。なお、第2実施形態のクランプ装置を構成する各部材について、第1実施形態のクランプ装置を構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している。
【0079】
クランプパレットCPは、直動ガイド51によって下から支持される。直動ガイド51を構成するレール52はテーブルTに固定され、直動ガイド51を構成する可動部材53の上面にクランプパレットCPが固定される。クランプパレットCPは、上記構成により、テーブルTの上を移動可能(搬送可能)とされている。
【0080】
カムロッド37は、テーブルTに固定され移動しないため、第1実施形態におけるグリップ部43を有さない。
【0081】
第1実施形態のクランプ装置では、カムロッド37を移動させることで、クランプ装置(主クランプ101および副クランプ102)をロック状態としたりリリース状態としたりしたが、第2実施形態のクランプ装置では、クランプパレットCPを移動させることで、クランプ装置(主クランプ101および副クランプ102)をロック状態としたりリリース状態としたりする。
【0082】
カムロッド37が移動するのか、クランプパレットCPが移動するのか、の相違を除いて、第2実施形態のクランプ装置(主クランプ101および副クランプ102)の動作は、第1実施形態と同じである。なお、クランプパレットCPは、手動または外力によって動かされる。クランプパレットCPが手動または外力によって動かされることで、ボール7を介して主クランプ101の出力ロッド4は駆動され、ボール32を介して副クランプ102の出力ロッド30は駆動される。
【0083】
図15は、コレット17(第1コレット)の変形例を示す。コレット17が備える外周面17aは、周方向において相互に等しい間隔で配置された3つの凸部45を有する先細りの外周面とされる。本実施形態では、コレット17の形状を上記のようにすることで、出力ロッド4の軸心C1を基準にしてワークパレットWPを位置決めするように構成されている。なお、凸部45は3つに限定されない。4つ以上の凸部45が外周面17aの周方向において外周面17a(側面)に相互に等しい間隔で配置されてもよい。
【0084】
第1実施形態や第2実施形態のクランプ装置では、主クランプ101および副クランプ102の各筒孔5の内部(筒孔5のうちのフランジ部8よりも上側の空間)にバネ9を配置し、バネ9が出力ロッド4、30を基端側方向へ押して移動させるようにしている。これに代えて、各筒孔5のうちのフランジ部8よりも上側の空間を圧ガス室とし、当該圧ガス室のガス圧で、出力ロッド4、30を基端側方向へ押して移動させるようにしてもよい。圧ガス室とは、内部に圧力ガスが充填された室のことである。圧ガス室は、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように室外部に対して封止される。各圧ガス室に充填された圧力ガスが、出力ロッド4、30を基端側方向へ押して移動させる、バネ9に代わる付勢手段となる。圧力ガスは、圧縮空気、圧縮窒素ガスなどである。
【0085】
各圧ガス室は、上記のとおり、室外部へ圧力ガスが漏れ出ないように封止されるが、充填された圧力ガスによって出力ロッド4、30を駆動すると、少量ではあるが、圧ガス室から圧力ガスが漏れ出てしまうことがある。そのため、出力ロッド4、30を動かすのに必要な圧ガス室のガス圧を維持するために、圧ガス室から漏れ出た量の圧縮空気のみが圧ガス室に充填されるように主クランプ101および副クランプ102が構成されるとよい。
【0086】
圧ガス室には、当該圧ガス室から漏れ出た量の圧力ガスが供給されることとなるが、圧力ガスの使用量は極めて少ない。よって、空気圧縮機などの圧力ガスの供給設備は必要であるものの、その設備規模は極めて小さくてすむ。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0088】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0089】
第1実施形態や第2実施形態のクランプ装置では、ボール32が第2カム溝39に嵌り込むのに先行して、ボール7が第1カム溝38に嵌り込むことで、副クランプ102によるワークパレットWPのロックに先行して、主クランプ101によるワークパレットWPのロックが行われる。これに代えて、ボール32が第2カム面39aによって副クランプ102の筒孔5内へ押し込まれる(先端側方向へ移動される)のに先行して、ボール7が第1カム面38aによって主クランプ101の筒孔5内へ押し込まれる(先端側方向へ移動される)ことで、副クランプ102によるワークパレットWPのロックに先行して、主クランプ101によるワークパレットWPのロックが行われるようにしてもよい。
【0090】
この場合、主クランプ101および副クランプ102は、出力ロッド4、30が先端側方向へ移動することでワークパレットWPをロックし、出力ロッド4、30が基端側方向へ移動することでワークパレットWPをリリースするように構成される。
【0091】
直線CLに交差する方向においてワークパレットWPを位置決めする副クランプ102の構成として、上記実施形態では、コレット33の外周面(側面)に凸部36を設けた。これに代えて、コレット33の外周面に係合する、クランプ対象物(ワークパレットWP)側の装着孔24に形成されるテーパ内周面26に凸部36に相当する凸部が設けられてもよい。
【0092】
磁石28、35などのボール7、32落下防止手段は省略されてもよい。図12に示すロック状態において、ボール7と第1カム溝38との間、およびボール32と第2カム溝39との間の隙間が微小であれば、ボール7、32が落下する(外れる)ことはない。
【0093】
クランプ装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にされたり、横向きにされたり、さらには斜め向きにされたりしてもよい。
【0094】
クランプ装置は、テーブルなどに固定されてもよい。クランプ対象物は、ワーク、金型、工具、または治具などであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1:ハウジング、3:プラグ部、4:第1出力ロッド(出力ロッド)、5:筒孔、6:凹部(第1凹部)、7:ボール(第1操作部材)、9:バネ(付勢手段)、13:貫通孔、14:ボール(係合部材)、17:コレット(第1コレット)、17a:外周面、24:装着孔、25:係止部、27:穴(第1穴)、28:磁石(第1磁石)、30:第2出力ロッド(出力ロッド)、31:凹部(第2凹部)、32:ボール(第2操作部材)、33:コレット(第2コレット)、33a:外周面、34:穴(第2穴)、35:磁石(第2磁石)、36:凸部、37:カムロッド、38:第1カム溝、38a:第1カム面、39:第2カム溝、39a:第2カム面、45:凸部、101:主クランプ、102:副クランプ、CP:クランプパレット(基台)、WP:ワークパレット(クランプ対象物)、C1:軸心、C2:軸心、CL:仮想の直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15