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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062658
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ロック機構および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G03G21/16 133
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170645
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】篠遠 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】西出 秀一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 倫明
(72)【発明者】
【氏名】上島 章
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 隆大
(72)【発明者】
【氏名】中村 亘
【テーマコード(参考)】
2H171
【Fターム(参考)】
2H171FA01
2H171FA03
2H171GA12
2H171GA34
2H171HA23
2H171KA23
2H171KA25
2H171KA27
2H171SA11
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
2H171SA31
(57)【要約】
【課題】ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べ、設計の負担を軽減する。
【解決手段】ロックする一方側に設けられ、回転軸を中心に回転する第1部材と、ロックする他方側に設けられ、第1部材に接触して第1部材を回転させる第2部材と、第2部材により回転した第1部材に対して更に回転力を付与する回転付与部材と、ロック状態から解除する方向に回転する第1部材の動きを規制する規制部と、第1部材と規制部とを弾性力を介して接触させるとともに、ロック状態から解除する方向である解除方向に第2部材により回転した第1部材が回転付与部材により更に回転する前に、第1部材と規制部との弾性力を介した接触を開始させる弾性部と、を有するロック機構。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックする一方側に設けられ、回転軸を中心に回転する第1部材と、
ロックする他方側に設けられ、前記第1部材に接触して当該第1部材を回転させる第2部材と、
前記第2部材により回転した前記第1部材に対して更に回転力を付与する回転付与部材と、
ロック状態から解除する方向に回転する前記第1部材の動きを規制する規制部と、
前記第1部材と前記規制部とを弾性力を介して接触させるとともに、前記ロック状態から解除する方向である解除方向に前記第2部材により回転した当該第1部材が前記回転付与部材により更に回転する前に、当該第1部材と当該規制部との弾性力を介した接触を開始させる弾性部と、
を有するロック機構。
【請求項2】
前記弾性部は、前記第1部材が前記解除方向に回転するにつれて、当該弾性部の変形が大きくなる
ことを特徴とする請求項1記載のロック機構。
【請求項3】
前記弾性部は、前記第1部材に設けられ、前記規制部と接触する際に、前記第1部材の回転軸に近い側から接触し、徐々に当該第1部材の回転軸から遠い側が接触する
ことを特徴とする請求項2記載のロック機構。
【請求項4】
前記弾性部は、前記第1部材の端部から立ち上がり、当該第1部材に沿って伸びる板状部材である
ことを特徴とする請求項3記載のロック機構。
【請求項5】
前記弾性部は、前記規制部に接触している場合に、前記第1部材に対して、前記解除方向と反対方向であるロック方向に回転力を付与する
ことを特徴とする請求項4記載のロック機構。
【請求項6】
前記第1部材を前記解除方向に回転させるために必要な操作力を高める操作力増加部を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項7】
前記弾性部は、前記第1部材に設けられ
前記操作力増加部は、前記規制部に設けられ、前記解除方向に前記第1部材が回転した際に前記弾性部が当該規制部に沿って進む方向に沿って進んだ側が、前記第1部材の回転軸側に向かって近づいている段形状を有する段差である
ことを特徴とする請求項6記載のロック機構。
【請求項8】
前記弾性部は、前記段差に引っ掛かり、突き出した形状を有する突起部を更に備える
ことを特徴とする請求項7記載のロック機構。
【請求項9】
前記第1部材と前記規制部との弾性力を介した接触を開始させるときに、前記突起部と前記段差とが接触する
ことを特徴とする請求項8に記載のロック機構。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のロック機構を備えた画像形成装置であって、
画像形成を行う装置本体と、
前記装置本体に対して開閉可能なカバーと、
を備え、
前記装置本体側に、
前記第1部材と、前記回転付与部材と、前記規制部と、前記弾性部とを備え、
前記カバー側に、
前記第2部材を備える
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衝撃音の発生を抑制することができるロック機構を提供するために、ばねによって加速した部材を弾性変形可能な部材で挟み込んで減速させ、衝突音を抑制する技術が記載されている。
特許文献2には、中立点前後の異音の問題を解消し得るトグル機構を備えたロック機構を提供するために、ばねによる回転モーメントが切り替わるタイミングの前に、回転モーメントの切り替わりによって加速される部材を挟み込んで衝突音を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-156520号公報
【特許文献2】特開2016-194674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば筐体にカバーをロックするために用いられるなどの各種ロック機構では、回転部材を用いてロックするとともに、この回転部材に回転を付与する回転付与部材が用いられる場合がある。しかし、回転付与部材によって回転が加速された回転部材が他の部材に衝突すると大きな音が発生する。この発生する音の抑制を複数部材の位置の調整で行おうとすると、複数部材の配置から生じる累積公差を考慮する必要があり、設計の負担が大きい。
本発明の目的は、ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べ、設計の負担を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ロックする一方側に設けられ、回転軸を中心に回転する第1部材と、ロックする他方側に設けられ、前記第1部材に接触して当該第1部材を回転させる第2部材と、前記第2部材により回転した前記第1部材に対して更に回転力を付与する回転付与部材と、ロック状態から解除する方向に回転する前記第1部材の動きを規制する規制部と、前記第1部材と前記規制部とを弾性力を介して接触させるとともに、前記ロック状態から解除する方向である解除方向に前記第2部材により回転した当該第1部材が前記回転付与部材により更に回転する前に、当該第1部材と当該規制部との弾性力を介した接触を開始させる弾性部と、を有するロック機構である。
請求項2記載の発明は、前記弾性部は、前記第1部材が前記解除方向に回転するにつれて、当該弾性部の変形が大きくなることを特徴とする請求項1記載のロック機構である。
請求項3記載の発明は、前記弾性部は、前記第1部材に設けられ、前記規制部と接触する際に、前記第1部材の回転軸に近い側から接触し、徐々に当該第1部材の回転軸から遠い側が接触することを特徴とする請求項2記載のロック機構である。
請求項4記載の発明は、前記弾性部は、前記第1部材の端部から立ち上がり、当該第1部材に沿って伸びる板状部材であることを特徴とする請求項3記載のロック機構である。
請求項5記載の発明は、前記弾性部は、前記規制部に接触している場合に、前記第1部材に対して、前記解除方向と反対方向であるロック方向に回転力を付与することを特徴とする請求項4記載のロック機構である。
請求項6記載の発明は、前記第1部材を前記解除方向に回転させるために必要な操作力を高める操作力増加部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のロック機構である。
請求項7記載の発明は、前記弾性部は、前記第1部材に設けられ前記操作力増加部は、前記規制部に設けられ、前記解除方向に前記第1部材が回転した際に前記弾性部が当該規制部に沿って進む方向に沿って進んだ側が、前記第1部材の回転軸側に向かって近づいている段形状を有する段差であることを特徴とする請求項6記載のロック機構である。
請求項8記載の発明は、前記弾性部は、前記段差に引っ掛かり、突き出した形状を有する突起部を更に備えることを特徴とする請求項7記載のロック機構である。
請求項9記載の発明は、前記第1部材と前記規制部との弾性力を介した接触を開始させるときに、前記突起部と前記段差とが接触することを特徴とする請求項8に記載のロック機構である。
請求項10記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のロック機構を備えた画像形成装置であって、画像形成を行う装置本体と、前記装置本体に対して開閉可能なカバーと、を備え、前記装置本体側に、前記第1部材と、前記回転付与部材と、前記規制部と、前記弾性部とを備え、前記カバー側に、前記第2部材を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べて、設計の負担を軽減できる。
請求項2の発明によれば、弾性部は、第1部材が解除方向に回転するにつれて、弾性部の変形が大きくなる構成を採用しない場合に比べて、公差設計の負担を減少できる。
請求項3の発明によれば、弾性部は、第1部材に設けられ、規制部と接触する際に、第1部材の回転軸に近い側から接触し、徐々に第1部材の回転軸から遠い側が接触する構成を採用しない場合に比べて、カバーを閉める際に必要な力を減少することができる。
請求項4の発明によれば、弾性部は、第1部材の端部から立ち上がり、第1部材に沿って伸びる板状部材である構成を採用しない場合に比べて、公差があった場合でも、その変動分を吸収できる。
請求項5の発明によれば、弾性部は、規制部に接触している場合に、第1部材に対して、解除方向と反対方向であるロック方向に回転力を付与する構成を採用しない場合に比べて、カバーを開閉するための操作性を高めることができる。
請求項6の発明によれば、第1部材を解除方向に回転させるために必要な操作力を高める操作力増加部を更に備える構成を採用しない場合に比べて、意図しない操作を抑制できる。
請求項7の発明によれば、弾性部は、第1部材に設けられ操作力増加部は、規制部に設けられ、解除方向に第1部材が回転した際に弾性部が規制部に沿って進む方向に沿って進んだ側が、第1部材の回転軸側に向かって近づいている段形状を有する段差である構成を採用しない場合に比べて、カバーが意図せずに開くことを抑制できる。
請求項8の発明によれば、弾性部は、段差に引っ掛かり、突き出した形状を有する突起部を更に備える構成を採用しない場合に比べて、カバーが閉じた状態をより維持できる。
請求項9の発明によれば、第1部材と規制部との弾性力を介した接触を開始させるときに、突起部と段差とが接触する構成を採用しない場合に比べて、カバーが意図せずに開くことを抑制できる。
請求項10の発明によれば、ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べ、設計の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態が適用される画像形成装置の構成を示した図である。
図2】ロック部を説明するための図であり、図2(a)は、ロック部を図1の前方向から見た斜視図であり、図2(b)は、ロック部の後方向から見た斜視図である。
図3】引き込み部材を説明するための斜視図であり、図3(a)は、引き込み部材の斜視図であり、図3(b)は、引き込み部材の内部を説明するために引き込み部材の一部を断面で示す斜視図である。
図4】保持部材を説明するための斜視図であり、図4(a)は、保持部材を図4の前方向から見た斜視図であり、図4(b)は、保持部材の後方向から見た斜視図である。
図5】カバーを開く際のロック部と押し込み部材との関係を説明するための図であり、(a)、(b)及び(c)の順に時系列で示す。
図6】カバーを閉める際のロック部と押し込み部材との関係を説明するための図である。
図7】板部の先端側に突起部を有する変形例を示す図である。
図8】ロック状態を解除する際の引き込み部材と押し込み部材との関係を説明するための図であり、(a)、(b)及び(c)の順に時系列で示す。
図9図8の段差の配置と突起部の配置を変更した変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置1の構成を示した図である。
画像形成装置1は、例えば用紙Pなどの記録媒体に対して電子写真方式等を用いて画像を形成する。
【0010】
画像形成装置1は、画像形成装置1の外面を覆う外装である筐体2と、その筐体2に対して開閉可能なカバー9とを備える。筐体2とカバー9とは、筐体2とカバー9とを回転可能に接続するカバー回転軸81を介して接続されている。
カバー9は、例えば用紙Pが画像形成装置1内の搬送経路で紙詰まりを起こした場合に、この紙詰まりを処理するためにユーザにより開閉される等、装置内部への作業を行う際に開閉される。
【0011】
筐体2は、カバー9を閉じるためのロック部20を備え、カバー9は、ロック部20によって引き込まれる押し込み部材91を備える。この押し込み部材91は、カバー9を閉じた際に、ロック部20に対向する位置に設けられている。
ロック部20と押し込み部材91とがロック機構の一例である。
【0012】
筐体2の内部には、用紙Pに画像を形成するための種々の機器が設けられている。画像形成装置1は、用紙Pを収容する用紙収容部11、12、13と、用紙Pに画像を形成する画像形成部14と、画像が形成された用紙Pを排出する排出ロール15と、画像形成装置1の動作を制御する本体制御部16とを備える。
【0013】
画像形成部14は、用紙収容部11、12、13から搬送されてくる用紙Pに画像を形成する。画像形成部14としては、例えば、感光体に付着させたトナーを用紙Pに転写して像を形成する電子写真方式や、インクを用紙P上に吐出して像を形成するインクジェット方式などが採用される。
【0014】
次に、図2を用いて、ロック部20を説明する。
図2は、ロック部20を説明するための図である。図2(a)は、ロック部20を図1の前方向から見た斜視図であり、図2(b)は、ロック部20の後方向から見た斜視図である。
【0015】
ロック部20は、引き込み部材21と、保持部材50と、回転付与部材70と、を備える。
引き込み部材21は、回転軸35を有し回転軸35を中心として回転する。
保持部材50は、引き込み部材21を保持する。保持部材50は、引き込み部材21の回転軸35を回転可能に保持するための開口である回転軸保持部55を有する。
回転付与部材70は、本実施の形態では引張コイルばね71であり、引張コイルばね71の長手方向の両端にフック72を有する。
【0016】
図2(a)に示すように、引き込み部材21の回転軸35は、保持部材50の回転軸保持部55に回転可能に挿入される。ここで、図2(a)に示すように、回転軸35を右方向側から左方向に向かって見た場合に、回転軸35を中心として時計回り方向を解除方向と呼び、反時計周り方向をロック方向と呼ぶ。
【0017】
また、図2(b)に示すように、引張コイルばね71に設けられた2つのフック72の一方が、保持部材50に設けられたフック掛け部59に取り付けられる。また、引張コイルばね71のフック72の他方は、引き込み部材21のフック掛け部38(後述)に取り付けられる。引張コイルばね71は、引き込み部材21のフック掛け部38に対して、引張コイルばね71が縮む方向に力を加える。引張コイルばね71により引き込み部材21に加えられた力は、回転軸35を中心として解除方向またはロック方向に、引き込み部材21を回転させる。図5を用いて後述するが、引張コイルばね71が引き込み部材21を回転させる方向は、引張コイルばね71の両端の位置と、回転軸35の位置との関係により定まる。
【0018】
次に図3を用いて、引き込み部材21を説明する。
図3(a)、(b)は引き込み部材21を説明するための斜視図である。図3(a)は、引き込み部材21の斜視図であり、図3(b)は、引き込み部材21の内部を説明するために引き込み部材21の一部を断面で示す斜視図である。
引き込み部材21は、回転部材30と、弾性部材40と、を備える。
【0019】
回転部材30は、受け部33と、引き込み部34と、回転軸35と、フック掛け部38と、レバー39と、を備える。回転部材30が第1部材の一例である。
【0020】
図3(a)及び(b)に示すように、本実施の形態では、レバー39は、互いに対向する円弧状の2つのレバー部を有し、2つのレバー部の間に受け部33とフック掛け部38が位置する。図3に示すように、レバー39の一端側に受け部33が設けられ、他端側にフック掛け部38が設けられている。引き込み部34は、レバー39の2つのレバー部に跨って設けられており、フック掛け部38側に位置する。引き込み部34は、レバー部から下方向に延びている。
【0021】
受け部33は、カバー9が閉じる際にカバー9に設けられている押し込み部材91(図1参照)と接触する。押し込み部材91が受け部33に接触することで回転部材30が回転する。押し込み部材91が第2部材の一例である。
引き込み部34は、カバー9を閉じる際に、押し込み部材91に接触し押し込み部材91を筐体2(図1参照)側に引き込む部材である。ここで、カバー9が閉じ、引き込み部34が押し込み部材91を筐体2側に引き込んでいる状態を、ロック状態と称する。
フック掛け部38は、引張コイルばね71のフック72が掛けられる部材である。
【0022】
回転軸35は、互いに外径が異なる回転軸基部36及び回転軸先部37が一体に構成された段形状であり、レバー39における2つのレバー部の各々に設けられている。より詳細には、2つのレバー部の対向する面を内面とすると、その反対側の面である外面にそれぞれ回転軸35が設けられている。2つの回転軸35は、同一軸上に位置する。
さらに説明すると、回転軸基部36は、レバー部と回転軸先部37との間に位置する。
【0023】
回転軸35は、保持部材50の回転軸保持部55により保持される。より詳細には、回転軸基部36の外径は回転軸保持部55の開口よりも大きく、回転軸先部37の外径は回転軸保持部55の開口よりも小さい。
回転軸基部36は、回転部材30を保持部材50に取り付けた場合に、保持部材50により回転部材30の左方向及び右方向への移動が規制される。
【0024】
弾性部材40は、立ち上がり部41と、板部42と、を備える。
図3(a)に示すように、立ち上がり部41は、回転部材30の前方向側の上部から立ち上がるように形成された部材である。板部42は、立ち上がり部41に連続して設けられ、立ち上がり部41から後方向に伸びる板状の弾性部材である。板部42は上面に下方向の力を受けると、板部42自体が下方向に湾曲して変形する。弾性部材40が弾性部の一例である。
【0025】
図4(a)、(b)は、保持部材50を説明するための斜視図である。図4(a)は、保持部材50を図4の前方向から見た斜視図であり、図4(b)は、保持部材50の後方向から見た斜視図である。
保持部材50は、保持基板51を備える。
【0026】
保持基板51は、板状の部材であり、中央付近に引き込み部材21を取り付けるための開口51aを有する。保持基板51は、保持部材50の基部となる部分であり、規制部52と、側面54と回転軸保持部55とフック掛け部59とを備える。
【0027】
規制部52は、図4(a)に示すように、保持基板51の上側に位置し、保持基板51から前方向に延びている。規制部52は、回転軸保持部55の側に位置する内面を有する。保持部材50に引き込み部材21を取り付けた状態で、引き込み部材21が解除方向(図2参照)に回転した際に、引き込み部材21の弾性部材40が規制部52の内面に当たり、引き込み部材21の動きを規制する。
【0028】
側面54は、図4(a)に示すように、規制部52から下方向に延びる部分であり、保持部材50に取り付けた引き込み部材21を保護する。
【0029】
回転軸保持部55は、側面54に設けられた開口であり、引き込み部材21の回転軸35を保持する。
フック掛け部59は、保持基板51から後方向に飛び出しており(図5参照)、保持基板51より後ろ側で引張コイルばね71のフック72を保持する。フック掛け部59は、図4(b)に示すように、規制部52に対して下方向に離れて位置する。フック掛け部59は、保持基板51の開口51aを跨いで接続される。
【0030】
なお、本実施の形態では、保持部材50を単独の部品とし、保持部材50を筐体2に取り付ける構成となっているが、保持部材50は、筐体2の他の部材に設けられていてもよい。
【0031】
(作用)
図5は、カバー9を開く際のロック部20と押し込み部材91との関係を説明するための図であり、(a)、(b)及び(c)の順に時系列で示す。図5(a)は、引き込み部34が被引き込み部93に接し、弾性部材40が規制部52に接していない状態であり、図5(b)は、引き込み部34が被引き込み部93に接し、弾性部材40が規制部52に接している状態であり、図5(c)は引き込み部34が被引き込み部93から離れ、弾性部材40が規制部52に接している状態を示す図である。
なお、図中の破線A1は、回転軸35の中心とフック掛け部59とを結ぶ直線であり、引張コイルばね71が回転部材30に付与する回転力の方向が切り替わる位置である。上述したように、引張コイルばね71の一端がフック掛け部38に掛けられ、他端がフック掛け部59に掛けられている。
図5(a)では、ユーザがカバー9を引いている状態を示しており、これにより、カバー9は開く方向に動き、被引き込み部93が前方向に移動している。それにともない、回転部材30の引き込み部34が、被引き込み部93の面に沿って移動し、回転部材30は、解除方向に回転する。
【0032】
図5(a)では、回転部材30は、ユーザの引く力の他に引張コイルばね71からも、力を受けている。引張コイルばね71は、回転部材30のフック掛け部38に対して、引張コイルばね71が縮む方向、すなわちフック掛け部38からフック掛け部59に向かう方向に力を付与している。すなわち、引張コイルばね71は、カバー9が開くことを妨げる方向に力を付与している。
【0033】
引張コイルばね71が回転部材30に付与する力の回転軸35を中心としたモーメントの向きは、以下説明するように、回転軸35とフック掛け部38とフック掛け部59との位置関係により定まる。以下、引張コイルばね71が回転部材30に付与する力の回転軸35を中心としたモーメントの向きを、引張コイルばね71が付与する回転力の向きと称する。
【0034】
本実施の形態では、回転軸35とフック掛け部59とは、保持部材50によって位置が決まっているため、回転部材30が解除方向に回転しても両者の位置関係は変わらない。その一方で、回転軸35とフック掛け部38の相対的な位置は、回転部材30が解除方向の回転によって変わる。
引張コイルばね71が回転部材30に対して付与する力の向きは、図5(a)に示す破線A1より下方向側にフック掛け部38が位置する場合は、ロック方向の向きとなる。その一方で、破線A1より上方向側にフック掛け部38が位置する場合は、引張コイルばね71の力の向きは、解除方向の向きとなる。
【0035】
さらに説明すると、図5(a)では、引張コイルばね71が付与する回転力の向きは、ロック方向であるため、回転部材30の引き込み部34と、押し込み部材91の被引き込み部93とが接触している状態が維持される。
【0036】
図5(b)は、図5(a)の状態からさらに、カバー9が開いた状態であり、弾性部材40の先端が保持部材50の規制部52に接触した状態を示している。
図5(b)では、フック掛け部38は、破線A1より下方向側にあり、引張コイルばね71が付与する回転力は、ロック方向の向きであり、解除方向ではない。いいかえると、引張コイルばね71が付与する回転力が解除方向に作用する前に、弾性部材40の先端が保持部材50の規制部52に接触している。回転部材30が引張コイルばね71により更に回転する前に、回転部材30と規制部52とが弾力性を介した接触が開始している。
【0037】
図5(b)の状態からさらに、カバー9が開くと、被引き込み部93の斜面に沿って回転部材30はさらに解除方向に回転し、フック掛け部38は、破線A1より、上方向側に位置する。フック掛け部38は、破線A1より、上方向側に位置すると、回転部材30には、引張コイルばね71から解除方向の回転力が付与され、引き込み部34と被引き込み部93とが離れる。
【0038】
図5(c)は、カバー9が開き、回転部材30の動きが停止した状態を示している。
図5(b)から図5(c)に移行するまで、弾性部材40が規制部52に接触し、弾性部材40の弾性変形が図5(c)の状態になるにつれて大きくなっている。また、弾性部材40が規制部52に接触する位置は、図5(b)から図5(c)に移行するにつれて前方向に進む。言い換えると、弾性部材40は、回転軸35に近い側から接触し、徐々に回転部材30の回転軸35から遠い側が接触している。
【0039】
本実施の形態では、カバー9が開く際に、回転部材30が引張コイルばね71により更に回転する前に、回転部材30と規制部52とが弾力性を介した接触が開始し、カバー9が開ききるまで弾性部材40が弾性変形している。これによって、回転付与部材70によって回転部材30が加速させられる場合に、回転速度が過度に上がることが抑制される。そのため、回転部材30と、保持部材50の規制部52とが衝突する際の衝突音が抑制される。
【0040】
次に、図5(c)と、図6を用いて、カバー9を閉める際の動きを説明する。
図6は、カバー9を閉める際のロック部20と押し込み部材91との関係を説明するための図である。図6は、引張コイルばね71が回転部材30に対して付加する回転力の方向が切り替わる位置まで、押し込み部材91が回転部材30を押し込んだ状態を示している。
【0041】
図5(c)の状態からカバー9を閉めると、カバー9に設けられる押し込み部材91は後方向に移動する。そして、押し込み部材91の押し込み部92が、回転部材30の受け部33を押して、回転部材30をロック方向(図6参照)に回転させる。回転部材30には、引張コイルばね71から解除方向に力が付与されている。さらに、弾性部材40が弾性変形しているため、弾性部材40からロック方向に回転する向きに力を受けている。このため、弾性部材40がない場合に比べて、押し込み部92を後方向に押し込む力が減少する。
【0042】
図6の状態から、更に、カバー9が閉まると、引張コイルばね71が回転部材30に与える回転力の向きは、解除方向からロック方向に切り替わる。これによって、回転部材30の受け部33と押し込み部92とが離れ、引き込み部34と押し込み部材91の被引き込み部93とが接触する。
【0043】
本実施の形態では、カバー9を閉める際に、弾性部材40が回転部材30に対してロック方向に回転力を付加しているため、弾性部材40がない場合に比べて、カバー9を閉じる際に必要な力が弱まる。
【0044】
次に図7を用いて、本実施の形態の変形例1を説明する。
図7は、板部42の先端側に突起部44を有する変形例を示す図である。
上述した実施の形態と同様な機能については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0045】
図7の引き込み部材21は、上述した本実施の形態が適用される引き込み部材21に対して、突起部44が加えられたものである。
突起部44は、板部42の先端側に設けられ、規制部52に設けられた段差53(後述)に引っ掛かることで、カバー9を開く場合に必要な力を大きくする。段差53は、操作力増加部の一例である。
本変形例に係る突起部44は、板部42の先端側に設けられ、板部42の板面から略垂直に伸びる突出面45と、突出面45から連続して設けられ、突出面45が突出する角度より緩やかな角度で板部42に接続する緩斜面46とを備える。
【0046】
(作用)
図8を用いて、変形例1の作用を説明する。
図8は、ロック状態を解除する際の引き込み部材21と押し込み部材91との関係を説明するための図であり、(a)、(b)及び(c)の順に時系列で示す。図8(a)は、規制部52の段差53に対して、突起部44が引っ掛かる状態を示す図であり、図8(b)は、突起部44が段差53を乗り越える様子を示す図であり、図8(c)は、ロック状態が解除された状態を示す。
【0047】
図8(a)に示すように、引き込み部材21が回転すると弾性部材40の突出面45が規制部52の段差53に突き当たる。それにより、引き込み部材21を解除方向に回転させるための力がより大きくなる。言い換えると、引き込み部材21を解除方向に回転させるための操作力がより大きくなる。
【0048】
図8(a)から図8(b)へ遷移する途中の弾性部材40の状態について説明する。図8(a)から、さらにカバー9が開くと、回転部材30が時計回りに回転させられるが、段差53に突出面45が突き当たっているため、段差53を突起部44が乗り越えるまでは、弾性部材40が、図8(b)の破線Bで示すように、湾曲する。突起部44が段差53を乗り越えると、被引き込み部93によって、回転部材30が更に回転させられる。
【0049】
図8(a)に示すように、突出面45と段差53とが突き当たるときに、フック掛け部38は、フック掛け部59と、回転部材30の回転軸35とを結ぶ破線A1より下方向側に位置する。そのため、引張コイルばね71は、回転部材30に対して、解除方向に回転力を付与している。言い換えると、回転部材30が引張コイルばね71により更に解除方向に回転する前に、回転部材30と規制部52の段差53との弾性力を介した接触を開始している。
【0050】
図8(b)の状態では、フック掛け部38が破線A1より上側に位置しているため、引張コイルばね71が回転部材30に付与する回転力の方向が解除方向となる。回転部材30は、解除方向に回転し、図8(c)の状態になる。
【0051】
図9は、図8の段差53の配置と突起部44の配置を変更した変形例2を示す図である。
図9の引き込み部材21は、図7、8に示す変形例1の引き込み部材21と比べて、突起部44の向きと、段差53の向きが異なっている。
この変形例2では、段差53を乗り越えるために、弾性部材40を、破線Cで示すように湾曲させる力が必要となり、段差53がない場合に比べて、ロック方向に回転させるために必要な力が増す。変形例2によれば、例えば、ユーザがカバー9(図1参照)を開き、筐体2(図1参照)の内部への作業中にユーザの指101が回転部材30に触れた場合に、回転部材30がロック方向に回転することが抑制される。
【0052】
(付記)
(((1)))
ロックする一方側に設けられ、回転軸を中心に回転する第1部材と、
ロックする他方側に設けられ、前記第1部材に接触して当該第1部材を回転させる第2部材と、
前記第2部材により回転した前記第1部材に対して更に回転力を付与する回転付与部材と、
ロック状態から解除する方向に回転する前記第1部材の動きを規制する規制部と、
前記第1部材と前記規制部とを弾性力を介して接触させるとともに、前記ロック状態から解除する方向である解除方向に前記第2部材により回転した当該第1部材が前記回転付与部材により更に回転する前に、当該第1部材と当該規制部との弾性力を介した接触を開始させる弾性部と、
を有するロック機構。
(((2)))
前記弾性部は、前記第1部材が前記解除方向に回転するにつれて、当該弾性部の変形が大きくなる
ことを特徴とする(((1)))に記載のロック機構。
(((3)))
前記弾性部は、前記第1部材に設けられ、前記規制部と接触する際に、前記第1部材の回転軸に近い側から接触し、徐々に当該第1部材の回転軸から遠い側が接触する
ことを特徴とする(((2)))に記載のロック機構。
(((4)))
前記弾性部は、前記第1部材の端部から立ち上がり、当該第1部材に沿って伸びる板状部材である
ことを特徴とする(((3)))に記載のロック機構。
(((5)))
前記弾性部は、前記規制部に接触している場合に、前記第1部材に対して、前記解除方向と反対方向であるロック方向に回転力を付与する
ことを特徴とする(((4)))に記載のロック機構。
(((6)))
前記第1部材を前記解除方向に回転させるために必要な操作力を高める操作力増加部を更に備える
ことを特徴とする(((5)))に記載のロック機構。
(((7)))
前記弾性部は、前記第1部材に設けられ
前記操作力増加部は、前記規制部に設けられ、前記解除方向に前記第1部材が回転した際に前記弾性部が当該規制部に沿って進む方向に沿って進んだ側が、前記第1部材の回転軸側に向かって近づいている段形状を有する段差である
ことを特徴とする(((6)))に記載のロック機構。
(((8)))
前記弾性部は、前記段差に引っ掛かり、突き出した形状を有する突起部を更に備える
ことを特徴とする(((7)))に記載のロック機構。
(((9)))
前記第1部材と前記規制部との弾性力を介した接触を開始させるときに、前記突起部と前記段差とが接触する
ことを特徴とする(((8)))に記載のロック機構。
(((10)))
(((1)))ないし(((9)))のいずれか1項に記載のロック機構を備えた画像形成装置であって、
画像形成を行う装置本体と、
前記装置本体に対して開閉可能なカバーと、
を備え、
前記装置本体側に、
前記第1部材と、前記回転付与部材と、前記規制部と、前記弾性部とを備え、
前記カバー側に、
前記第2部材を備える
画像形成装置。
【0053】
(((1)))の発明によれば、ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べて、設計の負担を軽減できる。
(((2)))の発明によれば、弾性部は、第1部材が解除方向に回転するにつれて、弾性部の変形が大きくなる構成を採用しない場合に比べて、公差設計の負担を減少できる。
(((3)))の発明によれば、弾性部は、第1部材に設けられ、規制部と接触する際に、第1部材の回転軸に近い側から接触し、徐々に第1部材の回転軸から遠い側が接触する構成を採用しない場合に比べて、カバーを閉める際に必要な力を減少することができる。
(((4)))の発明によれば、弾性部は、第1部材の端部から立ち上がり、第1部材に沿って伸びる板状部材である構成を採用しない場合に比べて、公差を減少することができる。
(((5)))の発明によれば、弾性部は、規制部に接触している場合に、第1部材に対して、解除方向と反対方向であるロック方向に回転力を付与する構成を採用しない場合に比べて、カバーを開閉するための操作性を高めることができる。
(((6)))の発明によれば、第1部材を解除方向に回転させるために必要な操作力を高める操作力増加部を更に備える構成を採用しない場合に比べて、意図しない操作を抑制できる。
(((7)))の発明によれば、弾性部は、第1部材に設けられ操作力増加部は、規制部に設けられ、解除方向に第1部材が回転した際に弾性部が規制部に沿って進む方向に沿って進んだ側が、第1部材の回転軸側に向かって近づいている段形状を有する段差である構成を採用しない場合に比べて、カバーが意図せずに開くことを抑制できる。
(((8)))の発明によれば、弾性部は、段差に引っ掛かり、突き出した形状を有する突起部を更に備える構成を採用しない場合に比べて、カバーが閉じた状態をより維持できる。
(((9)))の発明によれば、第1部材と規制部との弾性力を介した接触を開始させるときに、突起部と段差とが接触する構成を採用しない場合に比べて、カバーが意図せずに開くことを抑制できる。
(((10)))の発明によれば、ロック機構から発生する音を複数部材の位置の調整で抑制する場合に比べ、設計の負担を軽減できる。
【符号の説明】
【0054】
1…画像形成装置、2…筐体、9…カバー、20…ロック部、21…引き込み部材、30…回転部材、33…受け部、34…引き込み部、35…回転軸、38…フック掛け部、39…レバー、40…弾性部材、41…立ち上がり部、42…板部、44…突起部、50…保持部材、52…規制部、53…段差、55…回転軸保持部、59…フック掛け部、70…回転付与部材、71…引張コイルばね、72…フック、91…押し込み部材、92…押し込み部、93…被引き込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9