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特開2024-62664要求仕様作成装置、要求仕様作成方法及び要求仕様作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062664
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】要求仕様作成装置、要求仕様作成方法及び要求仕様作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/10 20180101AFI20240501BHJP
   G06F 8/36 20180101ALI20240501BHJP
【FI】
G06F8/10
G06F8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170657
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】591102095
【氏名又は名称】三菱電機ソフトウエア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 啓一
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376BB11
5B376BC03
5B376BC32
(57)【要約】
【課題】要求仕様書の作成にかかる負担を軽減する。
【解決手段】仕様書取得部21は、既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する。要求モデル生成部23は、変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、対象の仕様モデルに付与された変更コメントを要求モデルに属する子モデルとして設定する。要求仕様作成部24は、要求モデル及び子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する仕様書取得部と、
前記仕様書取得部によって取得された前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定する要求モデル生成部と、
前記要求モデル生成部によって生成された前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成部と
を備える要求仕様作成装置。
【請求項2】
前記親モデルには、前記複数の要求モデルの生成元の仕様モデルに付与された変更コメントに共通する、前記既存システムに対する変更要求が設定される
請求項1に記載の要求仕様作成装置。
【請求項3】
前記仕様書データは、構成要素間の関係性を前記仕様モデル間の接続により表し、
前記要求仕様作成装置は、さらに、
前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与されておらず、かつ、前記変更コメントが付与された仕様モデルに挟まれた仕様モデルを変更候補として抽出する候補抽出部
を備える請求項1に記載の要求仕様作成装置。
【請求項4】
前記候補抽出部は、前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与されておらず、かつ、前記変更コメントが付与された仕様モデルと前記変更候補との少なくともいずれかに挟まれた仕様モデルを新たに変更候補として抽出する
請求項3に記載の要求仕様作成装置。
【請求項5】
前記変更コメントには、変更種別が割り当てられており、
前記要求モデル生成部は、前記対象の仕様モデルに付与された2つの変更コメント間で、割り当てられた前記変更種別がマイナスの影響を与える変更種別である場合には、前記2つの変更コメントに対応する子モデル間に競合識別子を設定する
請求項1に記載の要求仕様作成装置。
【請求項6】
前記要求仕様作成装置は、さらに、
1つ以上の設定文言のうちいずれかの設定文言が、2つ以上の仕様モデルに付与された変更コメントに共通して含まれる場合には、前記2つ以上の仕様モデルから生成された要求モデルに対して共通の親モデルの設定を提案する親提案部
を備える請求項1に記載の要求仕様作成装置。
【請求項7】
コンピュータが、既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得し、
コンピュータが、前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定し、
コンピュータが、前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成方法。
【請求項8】
既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する仕様書取得処理と、
前記仕様書取得処理によって取得された前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定する要求モデル生成処理と、
前記要求モデル生成処理によって生成された前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成処理と
を行う要求仕様作成装置としてコンピュータを機能させる要求仕様作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、既存システムの仕様書を利用して新システムの仕様書を作成する際に、要求仕様書の作成を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
システム開発では、視覚的に表現されるモデルを用いて、最上流のシステム設計書を作成するモデルベースシステムズエンジニアリングの手法が採られることがある。モデルは、UMLとSysMLといったモデリング言語を用いて記述される。UMLは、Unified Modeling Languageの略である。SysMLは、Systems Modeling Languageの略である。開発者は、システム設計書を用いて、具体的なハードウェア及びソフトウェアの設計書を作成する。
【0003】
近年では、システム開発を全くの新規で行うことは少なく、類似する既存システムを流用して新システムを開発することが多い。既存システムを流用して新システムを開発する場合には、既存システムの設計書を基に、新システムのシステム設計書が作成される。
【0004】
特許文献1には、既存システムの設計書を用いて新システムの設計書を作成する作業を支援する技術が記載されている。特許文献1では、既存システムの設計書と、既存システムの設計書を変更して作成された設計書とを比較して、変更箇所間の関連性等を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/033393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
システム仕様書を作成する際には、初めに、システムに対する要求をまとめた要求仕様書が作成される。システムに対する要求とは、システムで実現したい内容である。そして、要求仕様書に示された要求を満たすように、機能についての仕様を示す機能仕様書等が作成される。
既存システムを用いて新システムを開発する場合には、既存システムに対する変更要求をまとめた要求仕様書が作成される。既存システムに対する変更要求とは、既存システムでは実現されていなかったが新システムで実現してほしい内容である。そして、要求仕様書に示された要求を満たすように、機能についての変更仕様を示す機能仕様書等が作成される。
【0007】
システム開発者は技術者である。そのため、システム開発者は機能仕様書等に具体的な変更内容を技術的に記述することには抵抗がない。これに対して、システム開発者は既存システムに対する変更要求のみをまとめて表現することが苦手であることが多い。そのため、システム開発現場では、機能仕様書等が先に作成され、後付けで要求仕様書が作成されることがある。
後付けで要求仕様書を作成する場合には、機能仕様書等を参照しながら要求仕様書が作成される。しかし、それでも要求仕様書の作成に手間がかかっている。
【0008】
特許文献1には、既存システムの設計書を用いて新システムの設計書を作成する作業を支援する技術が記載されている。しかし、特許文献1には、要求仕様書の作成にかかる負担を軽減する方法については記載されていない。
【0009】
本開示は、既存システムの仕様書を利用して新システムの仕様書を作成する際に、要求仕様書の作成にかかる負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る要求仕様作成装置は、
既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する仕様書取得部と、
前記仕様書取得部によって取得された前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定する要求モデル生成部と、
前記要求モデル生成部によって生成された前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成部と
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示では、モデルベースシステムズエンジニアリングを用いて作成された仕様書データの仕様書モデルに変更コメントを付与することで、要求モデル及び子モデルが生成される。そして、要求モデルの上位に親モデルを設定することで、簡便にモデルベースシステムズエンジニアリングを用いた場合の要求仕様書を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の構成図。
図2】実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の動作の流れを示すフローチャート。
図3】実施の形態1に係る仕様書データの説明図。
図4】実施の形態1に係る新システムの仕様書データの説明図。
図5】実施の形態1に係る要求モデル生成処理の説明図。
図6】実施の形態1に係るマッピングテーブル31の説明図。
図7】実施の形態1に係る要求モデル43及び子モデル44の説明図。
図8】変形例1に係る要求仕様作成装置10の構成図。
図9】実施の形態2に係る変更コメント41の説明図。
図10】実施の形態2に係る変更種別の説明図。
図11】実施の形態2に係る競合識別子46の説明図。
図12】実施の形態3に係る要求仕様作成装置10の構成図。
図13】実施の形態3に係る親提案部25の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1を参照して、実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の構成を説明する。
要求仕様作成装置10は、コンピュータである。
要求仕様作成装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信インタフェース14とのハードウェアを備える。プロセッサ11は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0014】
プロセッサ11は、プロセッシングを行うICである。ICはIntegrated Circuitの略である。プロセッサ11は、具体例としては、CPU、DSP、GPUである。CPUは、Central Processing Unitの略である。DSPは、Digital Signal Processorの略である。GPUは、Graphics Processing Unitの略である。
【0015】
メモリ12は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ12は、具体例としては、SRAM、DRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略である。
【0016】
ストレージ13は、データを保管する記憶装置である。ストレージ13は、具体例としては、HDDである。HDDは、Hard Disk Driveの略である。また、ストレージ13は、SD(登録商標)メモリカード、CompactFlash(登録商標)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク、DVDといった可搬記録媒体であってもよい。SDは、Secure Digitalの略である。DVDは、Digital Versatile Diskの略である。
【0017】
通信インタフェース14は、外部の装置と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース14は、具体例としては、Ethernet(登録商標)、USB、HDMI(登録商標)のポートである。USBは、Universal Serial Busの略である。HDMIは、High-Definition Multimedia Interfaceの略である。
【0018】
要求仕様作成装置10は、機能構成要素として、仕様書取得部21と、候補抽出部22と、要求モデル生成部23と、要求仕様作成部24とを備える。要求仕様作成装置10の各機能構成要素の機能はソフトウェアにより実現される。
ストレージ13には、要求仕様作成装置10の各機能構成要素の機能を実現するプログラムが格納されている。このプログラムは、プロセッサ11によりメモリ12に読み込まれ、プロセッサ11によって実行される。これにより、要求仕様作成装置10の各機能構成要素の機能が実現される。
【0019】
ストレージ13には、マッピングテーブル31が記憶されている。
【0020】
図1では、プロセッサ11は、1つだけ示されていた。しかし、プロセッサ11は、複数であってもよく、複数のプロセッサ11が、各機能を実現するプログラムを連携して実行してもよい。
【0021】
***動作の説明***
図2から図7を参照して、実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の動作を説明する。
実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の動作手順は、実施の形態1に係る要求仕様作成方法に相当する。また、実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の動作を実現するプログラムは、実施の形態1に係る要求仕様作成プログラムに相当する。
【0022】
図2を参照して、実施の形態1に係る要求仕様作成装置10の動作の流れを説明する。
(ステップS1:仕様書取得処理)
仕様書取得部21は、既存システムの仕様書データに対して変更内容を示す変更コメント41が付与された新システムの仕様書データを取得する。
【0023】
ここでは、モデリング言語により、既存システムの仕様書データが作成されているとする。仕様書データには、機能の仕様を表した機能仕様書と、構造の仕様を表した構造仕様書といった各種仕様書が含まれる。仕様書データは、既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する。仕様書データは、構成要素間の親子関係等を含む関係性を仕様モデル間の接続により表す。
例えば、機能仕様書であれば、図3に示すように、既存システムを構成する機能毎に仕様モデルである機能モデルを有し、関係する機能の機能モデルが関係線により接続される。図3では、機能モデルが階層分けされており、階層と関係線とによって親子関係が表されている。
【0024】
図4に示すように、新システムの仕様書データは、既存システムの仕様書データが有する仕様モデルのうち少なくとも一部の仕様モデルに対して1つ以上の変更コメント41が付与されている。図4では、図3に示す機能仕様書に変更コメント41が付与された例が示されている。変更コメント41は、開発者によって付与される。変更コメント41は、仕様の変更内容が具体的に記述されている。
【0025】
(ステップS2:候補抽出処理)
候補抽出部22は、ステップS1で取得された仕様書データが有する仕様モデルのうち、変更コメント41を付与し忘れている可能性がある仕様モデルを変更候補42として抽出する。
具体的には、候補抽出部22は、変更コメント41が付与されておらず、かつ、変更コメント41が付与された仕様モデルと変更候補42として抽出された仕様モデルとの少なくともいずれかに挟まれた仕様モデルを変更候補42として抽出することを再帰的に繰り返す。挟まれたとは、以下の(1)(2)の場合を意味する。(1)同じ階層の2つ以上の仕様モデルが接続されている。(2)親階層の仕様モデルと子階層の仕様モデルとが接続されている。
【0026】
図4では、機能モデルBは、変更コメント41が付与された、同じ階層の2つの機能モデルである機能モデルAと機能モデルCとが接続されている。そのため、機能モデルBは、変更候補42として抽出される。次に、機能モデルEは、変更候補42として抽出された機能モデルBが親階層の機能モデルとして接続され、変更コメント41が付与された機能モデルFが子階層の機能モデルとして接続されている。そのため、機能モデルEは、変更候補42として抽出される。
【0027】
(ステップS3:抽出判定処理)
候補抽出部22は、ステップS2で変更候補42が抽出されたか否かを判定する。
候補抽出部22は、変更候補42が抽出された場合には、処理をステップS4に進める。一方、候補抽出部22は、変更候補42が抽出されなかった場合には、処理をステップS6に進める。
【0028】
(ステップS4:警告処理)
候補抽出部22は、ステップS2で抽出された変更候補42を示して、変更コメント41を付与し忘れている可能性があることを警告する。例えば、候補抽出部22は、変更候補42を赤枠で囲って表示する等する。
【0029】
(ステップS5:変更判定処理)
候補抽出部22は、警告を受けて仕様書データの変更をするか否かの入力をシステム開発者から受け付ける。
候補抽出部22は、仕様書データを変更すると入力された場合には、処理をステップS1に戻して、変更された仕様書データを取得する。一方、候補抽出部22は、仕様書データを変更しないと入力された場合には、処理をステップS6に進める。
【0030】
(ステップS6:要求モデル生成処理)
要求モデル生成部23は、マッピングテーブル31を参照して、要求モデル43を生成して、要求仕様書50内に描画する。
具体的には、要求モデル生成部23は、ステップS1で取得された仕様書データが有する仕様モデルのうち、変更コメント41が付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象の仕様モデルに設定する。そして、図5に示すように、要求モデル生成部23は、対象の仕様モデルに対応する要求モデル43を生成する。さらに、要求モデル生成部23は、対象の仕様モデルに付与された変更コメント41を、生成された要求モデル43に属する子モデル44として設定する。要求モデル生成部23は、対象の仕様モデルに複数の変更コメント41が付与されている場合には、各変更コメント41に対応する子モデル44を設定する。要求モデル43に属する子モデル44として設定するとは、変更コメント41に対応する子モデル44を生成し、要求モデル43に属することを表す関係線で要求モデル43と子モデル44とを結ぶという意味である。
【0031】
図6に示すように、マッピングテーブル31には、人手エリア32と自動抽出エリア33とが設定されている。自動抽出エリア33には、モデル種別毎のモデルエリア34が設定されている。モデル種別は、機能モデル及び構造モデルといった仕様モデルの種別である。
要求モデル生成部23は、自動抽出エリア33における対応するモデルエリア34に、生成した要求モデル43と子モデル44とを描画する。例えば、要求モデル生成部23は、機能モデルが対象の仕様モデルである場合には、自動抽出エリア33における機能モデルに対応するモデルエリア34に、要求モデル43と子モデル44とを描画する。
【0032】
(ステップS7:要求仕様作成処理)
要求仕様作成部24は、ステップS6で生成された要求モデル43及び子モデル44を表示して、複数の要求モデル43の上位に親モデル45を設定させる。これにより、要求仕様作成部24は、要求仕様書50を作成する。
具体的には、要求仕様作成部24は、図7に示すように、描画された各仕様モデルについての要求モデル43及び子モデル44を表示する。そして、要求仕様作成部24は、システム開発者に、人手エリア32に親モデル45を設定させ、親モデル45と親モデル45に紐づく複数の要求モデル43とを関係線により接続させる。この際、親モデル45には、接続された複数の要求モデル43の生成元の仕様モデルに付与された変更コメントに共通する、既存システムに対する変更要求が設定される。つまり、要求仕様作成部24は、親モデル45及び接続線と、生成元の仕様モデルに付与された変更コメントに共通する既存システムに対する変更要求との入力を受け付ける。
【0033】
***実施の形態1の効果***
以上のように、実施の形態1に係る要求仕様作成装置10は、変更コメント41が付与された仕様書データから、要求モデル43及び子モデル44を生成して、親モデル45を設定させる。これにより、システム開発者は、仕様書データの仕様書モデルに変更コメント41を付与し、親モデル45を設定するだけで、要求仕様書50を作成することができる。
ここで、仕様書モデルに変更コメント41を記述することは、システム開発者には抵抗の少ない作業である。また、親モデル45を設定する作業も、一覧表示された要求モデル43の上位概念を記述するだけなので、比較的負担が小さい。そのため、要求仕様書の作成にかかる負担を軽減することが可能である。
【0034】
***他の構成***
<変形例1>
実施の形態1では、各機能構成要素がソフトウェアで実現された。しかし、変形例1として、各機能構成要素はハードウェアで実現されてもよい。この変形例1について、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0035】
図8を参照して、変形例1に係る要求仕様作成装置10の構成を説明する。
各機能構成要素がハードウェアで実現される場合には、要求仕様作成装置10は、プロセッサ11とメモリ12とストレージ13とに代えて、電子回路15を備える。電子回路15は、各機能構成要素と、メモリ12と、ストレージ13との機能とを実現する専用の回路である。
【0036】
電子回路15としては、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、FPGAが想定される。GAは、Gate Arrayの略である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略である。
各機能構成要素を1つの電子回路15で実現してもよいし、各機能構成要素を複数の電子回路15に分散させて実現してもよい。
【0037】
<変形例2>
変形例2として、一部の各機能構成要素がハードウェアで実現され、他の各機能構成要素がソフトウェアで実現されてもよい。
【0038】
プロセッサ11とメモリ12とストレージ13と電子回路15とを処理回路という。つまり、各機能構成要素の機能は、処理回路により実現される。
【0039】
なお、以上の説明における「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「処理回路」に読み替えてもよい。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態2は、変更コメント41が競合する可能性があることを警告する点が実施の形態1と異なる。実施の形態2では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0041】
***動作の説明***
図9に示すように、変更コメント41には、仕様の変更内容に対応する変更種別が割り当てられ、説明が付加される。変更種別は、仕様の変更により得られる効果の分類であり、図10に示す(1)から(11)がある。説明は、仕様の変更により得られる具体的な効果である。
図10に示すように、変更種別間には、互いにプラスの影響があるものと、互いにマイナスの影響があるものとが存在する。図10では、“+”が付された行の変更種別と列の変更種別との間では、互いにプラスの影響がある。“-”が付された行の変更種別と列の変更種別との間では、互いにマイナスの影響がある。空欄の場合には、行の変更種別と列の変更種別との間では、ほとんど影響がない。
つまり、“+”が付された行の変更種別が割り当てられた変更コメント41と列の変更種別が割り当てられた変更コメント41との両方の対応を行うと、相乗効果が得られる。一方、“-”が付された行の変更種別が割り当てられた変更コメント41と列の変更種別が割り当てられた変更コメント41との両方の対応を行うと、効果を打ち消しあう等の悪い影響が起こり得る。
【0042】
図2のステップS6で、要求モデル生成部23は、対象の仕様モデルに付与された2つの変更コメント41間で、割り当てられた変更種別がマイナスの影響を与える変更種別である場合には、2つの変更コメントに対応する子モデル44間に競合識別子46を設定する。例えば、図11に示すように、(2)の性能効率性の変更種別が割り当てられた変更コメント41に対応する子モデル44と、(5)の相互運用性の変更種別が割り当てられた変更コメント41に対応する子モデル44との間に、競合識別子46が設定される。
【0043】
***実施の形態2の効果***
以上のように、実施の形態2に係る要求仕様作成装置10は、マイナスの影響を与える変更種別が割り当てられた変更コメント41に対応する子モデル44の間に競合識別子46を設定する。これにより、要求仕様書50の作成の際に、変更コメント41の不具合に気が付くことが可能になる。
【0044】
実施の形態3.
実施の形態3は、複数の要求モデル43に対する共通の親モデル45の設定を提案する点が実施の形態1,2と異なる。実施の形態3では、この異なる点を説明し、同一の点については説明を省略する。
【0045】
***構成の説明***
図12を参照して、実施の形態3に係る要求仕様作成装置10の構成を説明する。
要求仕様作成装置10は、機能構成要素として、親提案部25を備える点が図1に示す要求仕様作成装置10と異なる。親提案部25の機能は、他の機能構成要素と同様に、ソフトウェア又はハードウェアによって実現される。
また、要求仕様作成装置10は、ストレージ13に1つ以上の設定文言35が記憶されている点が図1に示す要求仕様作成装置10と異なる。
【0046】
***動作の説明***
図2のステップS7では、親提案部25は、ストレージ13に記憶された1つ以上の設定文言35のうちいずれかの設定文言35が、2つ以上の仕様モデルに付与された変更コメント41に共通して含まれるか否かを判定する。親提案部25は、共通して含まれる場合には、2つ以上の仕様モデルから生成された要求モデル43に対して共通の親モデル45の設定を提案する。
例えば、図13に示すように、要求仕様作成部24は、描画された各仕様モデルについての要求モデル43及び子モデル44を表示する。この際、子モデル44Xに対応する変更コメント41と子モデル44Zに対応する変更コメント41とに、共通して設定文言35が含まれるとする。この場合には、親提案部25は、子モデル44Xが属する要求モデル43Aと、子モデル44Zが属する要求モデル43Bとに共通の親モデル45の設定を提案する。図13では、親提案部25は、破線で親モデル45を示すことにより、親モデル45の設定を提案している。
【0047】
***実施の形態3の効果***
以上のように、実施の形態3に係る要求仕様作成装置10は、変更コメント41に設定された文言に基づき、共通の親モデル45の設定を提案する。これにより、親モデル45の設定に係る負担の軽減を図ることができる。
【0048】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する仕様書取得部と、
前記仕様書取得部によって取得された前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定する要求モデル生成部と、
前記要求モデル生成部によって生成された前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成部と
を備える要求仕様作成装置。
(付記2)
前記親モデルには、前記複数の要求モデルの生成元の仕様モデルに付与された変更コメントに共通する、前記既存システムに対する変更要求が設定される
付記1に記載の要求仕様作成装置。
(付記3)
前記仕様書データは、構成要素間の関係性を前記仕様モデル間の接続により表し、
前記要求仕様作成装置は、さらに、
前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与されておらず、かつ、前記変更コメントが付与された仕様モデルに挟まれた仕様モデルを変更候補として抽出する候補抽出部
を備える付記1又は2に記載の要求仕様作成装置。
(付記4)
前記候補抽出部は、前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与されておらず、かつ、前記変更コメントが付与された仕様モデルと前記変更候補との少なくともいずれかに挟まれた仕様モデルを新たに変更候補として抽出する
付記3に記載の要求仕様作成装置。
(付記5)
前記変更コメントには、変更種別が割り当てられており、
前記要求モデル生成部は、前記対象の仕様モデルに付与された2つの変更コメント間で、割り当てられた前記変更種別がマイナスの影響を与える変更種別である場合には、前記2つの変更コメントに対応する子モデル間に競合識別子を設定する
付記1から4までのいずれか1項に記載の要求仕様作成装置。
(付記6)
前記要求仕様作成装置は、さらに、
1つ以上の設定文言のうちいずれかの設定文言が、2つ以上の仕様モデルに付与された変更コメントに共通して含まれる場合には、前記2つ以上の仕様モデルから生成された要求モデルに対して共通の親モデルの設定を提案する親提案部
を備える付記1から5までのいずれか1項に記載の要求仕様作成装置。
(付記7)
コンピュータが、既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得し、
コンピュータが、前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定し、
コンピュータが、前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成方法。
(付記8)
既存システムを構成する構成要素毎にその構成要素の仕様を表す仕様モデルを有する仕様書データであって、少なくとも一部の仕様モデルに対して仕様の変更内容を示す変更コメントが付与された仕様書データを取得する仕様書取得処理と、
前記仕様書取得処理によって取得された前記仕様書データが有する仕様モデルのうち、前記変更コメントが付与された1つ以上の仕様モデルそれぞれを対象として、対象の仕様モデルに対応する要求モデルを生成するとともに、前記対象の仕様モデルに付与された前記変更コメントを前記要求モデルに属する子モデルとして設定する要求モデル生成処理と、
前記要求モデル生成処理によって生成された前記要求モデル及び前記子モデルを表示して、複数の要求モデルの上位に親モデルを設定させることにより、要求仕様書を作成する要求仕様作成処理と
を行う要求仕様作成装置としてコンピュータを機能させる要求仕様作成プログラム。
【0049】
以上、本開示の実施の形態及び変形例について説明した。これらの実施の形態及び変形例のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 要求仕様作成装置、11 プロセッサ、12 メモリ、13 ストレージ、14 通信インタフェース、15 電子回路、21 仕様書取得部、22 候補抽出部、23 要求モデル生成部、24 要求仕様作成部、25 親提案部、31 マッピングテーブル、32 人手エリア、33 自動抽出エリア、34 モデルエリア、35 設定文言、41 変更コメント、42 変更候補、43 要求モデル、44 子モデル、45 親モデル、46 競合識別子、50 要求仕様書。
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