(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062668
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】コイル部品及びコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240501BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240501BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240501BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 F
H01F41/04 C
H01F17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170663
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 信之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延也
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB02
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】素体と端子電極との接合強度の向上を図ること。
【解決手段】コイル部品は、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、コイルの一端部と一方の端子電極とを接続している第一接続導体、及び、コイルの他端部と他方の端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、実装面において端子電極が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部が設けられており、端子電極の少なくとも一部は、凹部内に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、
前記素体の前記実装面に配置されている一対の端子電極と、
前記素体内に配置されており、一対の前記端子電極と電気的に接続されているコイルと、
前記コイルの一端部と一方の前記端子電極とを接続している第一接続導体、及び、前記コイルの他端部と他方の前記端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、
前記実装面において前記端子電極が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部が設けられており、
前記端子電極の少なくとも一部は、前記凹部内に配置されている、コイル部品。
【請求項2】
前記実装面と前記主面との対向方向における前記凹部の深さは、0.5μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記端子電極は、前記実装面上に配置されている第一金属層と、前記第一金属層上に配置されている第二金属層と、前記第二金属層上に配置されている第三金属層と、を含んで構成されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記凹部の表面には、前記第一金属層及び前記第二金属層が配置されている、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第一接続導体及び前記第二接続導体のそれぞれは、前記第三金属層と接続されており、
前記第一金属層及び前記第二金属層は、前記素体と前記第一接続導体及び前記第二接続導体との境界を跨ぐように配置されている、請求項3に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記素体は、樹脂及びフィラーを含んで構成されており、
前記実装面は研磨によって形成されている研磨面であり、
前記実装面の少なくとも一部に前記フィラーが露出している、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第一接続導体及び前記第二接続導体のそれぞれと一対の前記端子電極のそれぞれとの接続部分は、同じ材料によって形成されている、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項8】
実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、
前記素体の前記実装面に配置されている一対の端子電極と、
前記素体内に配置されており、一対の前記端子電極と電気的に接続されているコイルと、
前記コイルの一端部と一方の前記端子電極とを接続している第一接続導体、及び、前記コイルの他端部と他方の前記端子電極とを接続している第二接続導体と、を備えるコイル部品の製造方法であって、
前記実装面において前記端子電極が配置される領域の少なくとも一部に凹部を形成し、
前記端子電極の少なくとも一部が前記凹部内に配置されるように、前記端子電極を形成する、コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル部品及びコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂からなる絶縁体と、絶縁体内に設けられたコイル状の内部導体と、内部導体と電気的に接続されており、素体の実装面に配置されている端子電極と、を備えるコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示では、素体と端子電極との接合強度の向上が図れるコイル部品及びコイル部品の製造方法が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るコイル部品は、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、コイルの一端部と一方の端子電極とを接続している第一接続導体、及び、コイルの他端部と他方の端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、実装面において端子電極が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部が設けられており、端子電極の少なくとも一部は、凹部内に配置されている。
【0006】
本開示の一側面に係るコイル部品の製造方法は、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、コイルの一端部と一方の端子電極とを接続している第一接続導体、及び、コイルの他端部と他方の端子電極とを接続している第二接続導体と、を備えるコイル部品の製造方法であって、実装面において端子電極が配置される領域の少なくとも一部に凹部を形成し、端子電極の少なくとも一部が凹部内に配置されるように、端子電極を形成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、素体と端子電極との接合強度の向上が図れるコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すコイル部品を端面側から見た図である。
【
図3】
図3は、コイル部品の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係るコイル部品の一部を各段して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]実施形態の概要
(1)本開示の一側面に係るコイル部品は、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、コイルの一端部と一方の端子電極とを接続している第一接続導体、及び、コイルの他端部と他方の端子電極とを接続している第二接続導体と、を備え、実装面において端子電極が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部が設けられており、端子電極の少なくとも一部は、凹部内に配置されている。
【0010】
本開示の一側面に係るコイル部品では、実装面において端子電極が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部が設けられている。端子電極の少なくとも一部は、凹部内に配置されている。これにより、コイル部品では、アンカー効果によって、素体と端子電極との接合強度の向上を図ることができる。その結果、コイル部品では、端子電極の剥離を抑制できる。
【0011】
(2)上記(1)のコイル部品において、実装面と主面との対向方向における凹部の深さは、0.5μm以上5.0μm以下であってもよい。凹部の深さが浅すぎると、アンカー効果を得ることができない。一方で、凹部の深さが深すぎると、素体の強度が低下し得る。そこで、コイル部品では、凹部の深さを0.5μm以上5.0μm以下とすることにより、素体と端子電極との接合強度の向上を図りつつ、素体の強度が低下することを抑制し得る。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)のコイル部品において、端子電極は、実装面上に配置されている第一金属層と、第一金属層上に配置されている第二金属層と、第二金属層上に配置されている第三金属層と、を含んで構成されていてもよい。素体と端子電極との接合強度を確保するためには、端子電極を形成する材料を、素体と接合(密着)し易い材料で形成する必要がある。しかし、素体と接合し易い材料は、導電性が低い場合がある。そこで、端子電極を第一金属層、第二金属層及び第三金属層によって形成することにより、第一金属層によって素体との接合性を確保し、第二金属層によって第一金属層と第二金属層との接合性を確保し、第三金属層によって導電性を確保できる。したがって、コイル部品では、素体と端子電極との接合強度を確保しつつ、端子電極の導電性を確保できる。
【0013】
(4)上記(3)のコイル部品において、凹部の表面には、第一金属層及び第二金属層が配置されていてもよい。この構成では、凹部と端子電極との接合強度の向上を図ることができる。
【0014】
(5)上記(3)又は(4)のコイル部品において、第一接続導体及び第二接続導体のそれぞれは、第三金属層と接続されており、第一金属層及び第二金属層は、素体と第一接続導体及び第二接続導体との境界を跨ぐように配置されている。この構成では、第一金属層及び第二金属層を形成した後に、第一接続導体及び第二接続導体と第三金属層とを接続するために、第一金属層及び第二金属層をエッチングによって除去する際、素体と第一接続導体及び第二接続導体との境界からエッチング液が浸入することを抑制できる。
【0015】
(6)上記(1)~(5)のいずれか一つのコイル部品において、素体は、樹脂及びフィラーを含んで構成されており、実装面は研磨によって形成されている研磨面であり、実装面の少なくとも一部にフィラーが露出していてもよい。このように、実装面にフィラーが露出する構成では、研磨する際にフィラーの一部が脱落して、実装面に凹部が形成される。このように、研磨によって凹部が形成されるため、実装面に端子電極を形成することにより、端子電極が凹部に配置される構成とすることができる。
【0016】
(7)上記(1)~(6)のいずれか一つのコイル部品において、第一接続導体及び第二接続導体のそれぞれと一対の端子電極のそれぞれとの接続部分は、同じ材料によって形成されていてもよい。この構成では、第一接続導体及び第二接続導体のそれぞれと端子電極との接合強度の向上を図ることができる。
【0017】
(8)本開示の一側面に係るコイル部品の製造方法は、実装面と当該実装面と対向する主面とを含む素体と、素体の実装面に配置されている一対の端子電極と、素体内に配置されており、一対の端子電極と電気的に接続されているコイルと、コイルの一端部と一方の端子電極とを接続している第一接続導体、及び、コイルの他端部と他方の端子電極とを接続している第二接続導体と、を備えるコイル部品の製造方法であって、実装面において端子電極が配置される領域の少なくとも一部に凹部を形成し、端子電極の少なくとも一部が凹部内に配置されるように、端子電極を形成する。
【0018】
本開示の一側面に係るコイル部品の製造方法では、実装面において端子電極が配置される領域の少なくとも一部に凹部を形成し、端子電極の少なくとも一部が凹部内に配置されるように、端子電極を形成する。これにより、コイル部品の製造方法によって製造されたコイル部品では、アンカー効果によって、素体と端子電極との接合強度の向上を図ることができる。その結果、コイル部品では、端子電極の剥離を抑制できる。
【0019】
[2]実施形態の例示
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
図1を参照して、本実施形態に係るコイル部品を説明する。
図1は、一実施形態に係るコイル部品の斜視図である。
図1に示されるように、コイル部品1は、素体2と、第一端子電極3及び第二端子電極4と、コイル5と、第一接続導体10(
図2参照)及び第二接続導体11と、を備えている。
図1では、説明の便宜上、素体2を二点鎖線で示していると共に、コイル5を透過させて示している。
図2においても、説明の便宜状、コイル5を透過させて示したり、第一端子電極3及び第二端子電極4を破線で示したりしている。
【0021】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外面として、一対の端面2a,2bと、一対の主面2c,2dと、一対の側面2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、互いに対向している。主面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、端面2a,2bの対向方向を第一方向D1、主面2c,2dの対向方向を第二方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は互いに略直交している。
【0022】
端面2a,2bは、主面2c,2dを連結するように第二方向D2に延在している。端面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。主面2c,2dは、端面2a,2bを連結するように第一方向D1に延在している。主面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように第三方向D3にも延在している。側面2e,2fは、端面2a,2bを連結するように第一方向D1に延在している。側面2e,2fは、主面2c,2dを連結するように第二方向D2にも延在している。
【0023】
主面2dは、実装面であり、たとえばコイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基材、又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。端面2a,2bは、実装面(すなわち主面2d)から連続する面である。
【0024】
素体2の第一方向D1における長さは、素体2の第二方向D2における長さ及び素体2の第三方向D3における長さよりも長い。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さよりも短い。すなわち、本実施形態では、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の第二方向D2における長さは、素体2の第三方向D3における長さと同等であってもよいし、素体2の第三方向D3における長さよりも長くてもよい。
【0025】
なお、本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0026】
素体2は、複数の素体層(図示省略)が第二方向D2において積層されてなる。つまり、素体2の積層方向は、第二方向D2である。実際の素体2では、複数の素体層は、その層間の境が視認できない程度に一体化されていてもよいし、層間の境が視認できるように一体化されていてもよい。
【0027】
素体層は、樹脂層である。素体層の材料は、たとえば、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、結晶性ポリスチレン、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビスマレイド系樹脂及びフッ素系樹脂から選択された少なくとも一つを含んでいる。素体層は、フィラーを含んでいる。フィラーは、たとえば、無機フィラーである。無機フィラーとしては、たとえば、シリカ(SiO2)が挙げられる。なお、素体層において、フィラーが含まれていなくてもよい。
【0028】
なお、素体層は、磁性材料を含んで構成されていてもよい。素体層の磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料を含んでいる。素体層の磁性材料は、たとえば、Fe合金を含んでいていてもよい。素体層は、たとえば、非磁性材料を含んでいてもよい。素体層の非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。
【0029】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2に設けられている。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、素体2の主面2dに配置されている。第一端子電極3と第二端子電極4とは、第一方向D1において互いに離間して素体2に設けられている。具体的には、第一端子電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。第二端子電極4は、素体2の端面2b側に配置されている。
【0030】
第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、長方形状(矩形状)を呈している。第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれは、各辺が第一方向D1又は第三方向D3に沿うように配置されている。第一端子電極3及び第二端子電極4は、主面2dよりも突出している。すなわち、本実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4のそれぞれの表面は、主面2dと面一ではない。
【0031】
第一端子電極3及び第二端子電極4は、導電材料により構成されている。
図3に示されるように、第一端子電極3は、第一金属層3Aと、第二金属層3Bと、第三金属層3Cと、を含んで構成されている。
【0032】
第一金属層3Aは、主面2d上に配置されている。第一金属層3Aは、たとえばCrで形成されている。第一金属層3Aの厚さは、たとえば、10nmである。第一金属層3Aは、素体2とのコンタクトメタルである。第二金属層3Bは、第一金属層3A上に配置されている。第二金属層3Bは、たとえばCuで形成されている。第二金属層3Bは、たとえば、100nm~300nmである。第二金属層3Bは、第三金属層3Cを電解めっきにより形成するためのシード層である。第三金属層3Cは、第二金属層3B上に配置されている。第三金属層3Cは、たとえばCuで形成されている。第三金属層3Cの厚さは、たとえば、15μmである。第一金属層3A及び第二金属層3Bは、たとえば、スパッタ膜である。第三金属層3Cは、めっきである。第二端子電極4についても同様に、第一金属層と、第二金属層と、第三金属層と、を含んで構成されている。
【0033】
図1及び
図2に示されるように、コイル5は、素体2内に配置されている。コイル5は、複数の第一配線部6と、複数の第二配線部7と、複数のピラー部8と、を有している。コイル5は、第一配線部6、第二配線部7及びピラー部8が電気的に接続されることによって構成されている。コイル5のコイル軸は、第三方向D3に沿って設けられている。複数の第一配線部6、複数の第二配線部7及び複数のピラー部8は、導電材料(たとえば、Cu)により構成されている。第一配線部6、第二配線部7及びピラー部8は、端面2a,2b、主面2c,2d及び側面2e,2fから離間して配置されている。
【0034】
第一配線部6のそれぞれは、素体2の主面2c側に配置されている。第一配線部6のそれぞれは、第一方向D1に沿って延在している。第一配線部6のそれぞれは、二つのピラー部8を接続している。第一配線部6は、二つのピラー部8に掛け渡されている。第一配線部6の延在方向の一方の端部(端面2a側の端部)は、ピラー部8の一方の端部(主面2c側の端部)に接続されている。第一配線部6の延在方向の他方の端部(端面2b側の端部)は、ピラー部8の一方の端部に接続されている。
【0035】
第二配線部7のそれぞれは、素体2の主面2d(実装面)側に配置されている。第二配線部7のそれぞれは、第一方向D1において延在している。第二配線部7のそれぞれは、二つのピラー部8を接続している。第二配線部7は、二つのピラー部8に掛け渡されている。第二配線部7の延在方向の一方の端部(端面2a側の端部)は、ピラー部8の他方の端部(主面2d側の端部)に接続されている。第二配線部7の延在方向の他方の端部(端面2b側の端部)は、ピラー部8の他方の端部に接続されている。複数の第二配線部7は、複数の第一配線部6よりも数が一本少ない。すなわち、第一配線部6がn本である場合には、第二配線部7はn-1本となる。
【0036】
第一接続導体10は、第一端子電極3とコイル5の一端部とを接続している。第一接続導体10は、コイル5のピラー部8の他方の端部に接続されている。第一接続導体10は、端面2a寄りで且つ側面2e寄りの位置に配置されている。第一接続導体10は、導電材料により構成されている。第一接続導体10は、たとえば、Cuにより形成されている。
図3に示されるように、第一接続導体10は、第一端子電極3の第三金属層3Cと接続されている。すなわち、第一接続導体10の端部には、第一金属層3A及び第二金属層3Bが配置されていない。上記のように、第一接続導体10はCuにより形成されており、第一端子電極3の第三金属層3CはCuにより形成されている。そのため、第一接続導体10と第一端子電極3との接続部分は、同じ材料(Cu)で形成されている。
【0037】
図1及び
図2に示されるように、第二接続導体11は、第二端子電極4とコイル5の他端部とを接続している。第二接続導体11は、コイル5のピラー部8の他方の端部に接続されている。第二接続導体11は、端面2b寄りで且つ側面2f寄りの位置に配置されている。第二接続導体11は、導電材料により構成されている。第二接続導体11は、たとえば、Cuにより形成されている。第二接続導体11は、第二端子電極4の第三金属層と接続されている。すなわち、第二接続導体11の端部には、第一金属層及び第二金属層が配置されていない。上記のように、第二接続導体11はCuにより形成されており、第二端子電極4の第三金属層はCuにより形成されている。そのため、第二接続導体11と第二端子電極4との接続部分は、同じ材料(Cu)で形成されている。
【0038】
図3に示されるように、主面2dは、研磨面である。研磨面は、たとえば、グラインド研磨によって形成される。研磨面である主面2dには、フィラーFが露出している。主面2dにおいて、少なくとも第一端子電極3及び第二端子電極4が配置される領域には、凹部15が設けられている。凹部15は、一又は複数設けられている。凹部15は、たとえば研磨によってフィラーFが素体2から脱落することによって形成され得る。凹部15の断面は、フィラーFの外形に対応する形状であり、たとえば湾曲形状を呈している。凹部15の深さHは、たとえば0.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。凹部15の深さHは、第二方向D2における深さである。具体的には、凹部15の深さHは、凹部15の最も低い位置と主面2dの表面との間の、第二方向D2における距離である。
【0039】
第一端子電極3の一部は、凹部15内に配置されている。すなわち、第一端子電極3の一部は、凹部15内に充填され、凹部15内に入り込んでいる。凹部15の表面には、第一金属層3A及び第二金属層3Bが配置されており、凹部15内において第二金属層3Bによって形成される空間に第三金属層3Cが配置されている。第二端子電極4も同様に、一部が凹部15内に配置されている。
【0040】
コイル部品1は、たとえば、以下ように製造することができる。素体2は、素体層を構成するシートをラミネートすることにより形成することができる。コイル5(第一配線部6、第二配線部7、ピラー部8)、第一接続導体10及び第二接続導体11は、フォトリソグラフィ法を用いて製造することができる。「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類などに限定されない。
【0041】
たとえば、ピラー部8を構成する導体をフォトリソグラフィ法によって形成した後、素体層を構成するシートをラミネートする。続いて、シートをグラインド研磨によって研磨し、導体を露出させると共に平坦化する。この処理を所定回数繰り返すことにより、ピラー部8を形成する。
【0042】
続いて、第一端子電極3及び第二端子電極4の形成について説明する。第一端子電極3及び第二端子電極4を配置する主面2dを構成する素体層のシートをラミネートした後、シートと第一接続導体10及び第二接続導体11の端部とをグラインド研磨し、平坦化する。研磨によって、第一接続導体10及び第二接続導体11が露出する。また、研磨によって、シートに含まれるフィラーの一部が脱落し、主面2dに凹部15が形成される。続いて、主面2d、第一接続導体10及び第二接続導体11上に第一金属層及び第二金属層をスパッタ法によって形成する。続いて、第一接続導体10及び第二接続導体11上に形成された第一金属層及び第二金属層をエッチングにより除去する。そして、第二金属層、第一接続導体10及び第二接続導体11上に第三金属層を電解めっきにより形成し、第一端子電極3及び第二端子電極4を所定の形状にパターニングする。以上により、コイル部品1が得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るコイル部品1では、主面2dにおいて第一端子電極3及び第二端子電極4が配置されている領域の少なくとも一部には、凹部15が設けられている。第一端子電極3及び第二端子電極4の少なくとも一部は、凹部15内に配置されている。これにより、コイル部品1では、アンカー効果によって、素体2と第一端子電極3及び第二端子電極4との接合強度の向上を図ることができる。その結果、コイル部品1では、第一端子電極3及び第二端子電極4の剥離を抑制できる。
【0044】
本実施形態に係るコイル部品1では、第二方向D2凹部の深さHは、0.5μm以上5.0μm以下である。凹部15の深さHが浅すぎると、アンカー効果を得ることができない。一方で、凹部15の深さHが深すぎると、素体2の強度が低下し得る。そこで、コイル部品1では、凹部15の深さを0.5μm以上5.0μm以下とすることにより、素体2と第一端子電極3及び第二端子電極4との接合強度の向上を図りつつ、素体2の強度が低下することを抑制し得る。
【0045】
本実施形態に係るコイル部品1では、第一端子電極3は、主面2d上に配置されている第一金属層3Aと、第一金属層3A上に配置されている第二金属層3Bと、第二金属層3B上に配置されている第三金属層3Cと、を含んで構成されている。素体2と第一端子電極3との接合強度を確保するためには、第一端子電極3を形成する材料を、素体2と接合(密着)し易い材料で形成する必要がある。しかし、素体2と接合し易い材料は、導電性が低い場合がある。そこで、第一端子電極3を第一金属層3A、第二金属層3B及び第三金属層3Cによって形成することにより、第一金属層3Aによって素体2との接合性を確保し、第二金属層3Bによって第一金属層3Aと第二金属層3Bとの接合性を確保し、第三金属層3Cによって導電性を確保できる。第二端子電極4も、第一端子電極3と同様の構成を有している。したがって、コイル部品1では、素体2と第一端子電極3及び第二端子電極4との接合強度を確保しつつ、第一端子電極3及び第二端子電極4の導電性を確保できる。第一端子電極3及び第二端子電極4の導電性を確保することにより、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)の低下を図ることができる。
【0046】
本実施形態に係るコイル部品1では、素体2は、樹脂及びフィラーを含んで構成されている。素体2の実装面である主面2dは、研磨によって形成されている研磨面である。コイル部品1では、主面2dの少なくとも一部にフィラーFが露出している。このように、主面2dにフィラーFが露出する構成では、研磨する際にフィラーFの一部が脱落して、主面2dに凹部15が形成される。このように、研磨によって凹部15が形成されるため、主面2dに第一端子電極3及び第二端子電極4を形成することにより、第一端子電極3及び第二端子電極4が凹部15に配置される構成とすることができる。
【0047】
本実施形態にコイル部品1では、第一接続導体10と第一端子電極3の接続部分、及び、第二接続導体11と第二端子電極4との接続部分は、同じ材料によって形成されている。この構成では、第一接続導体10と第一端子電極3、及び、第二接続導体11と第二端子電極4との接合強度の向上を図ることができる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0049】
上記実施形態では、第一端子電極3及び第二端子電極4の第一金属層3A及び第二金属層3Bが第一接続導体10及び第二接続導体11上に配置されていない形態を一例に説明した。すなわち、第一接続導体10(第二接続導体11)と第一端子電極3(第二端子電極4)の第三金属層3Cとの間に第一金属層3A及び第二金属層3Bが配置されておらず、第一接続導体10(第二接続導体11)と第三金属層3Cとが直接接続されている形態を一例に説明した。しかし、
図4に示されるように、第一接続導体10と第一端子電極3の第三金属層3Cとの間に第一金属層3A及び第二金属層3Bが配置されていてもよい。
【0050】
図4に示す例では、第一金属層3A及び第二金属層3Bは、素体2と第一接続導体10との境界を跨ぐように配置されている。この構成では、第一金属層3A及び第二金属層3Bを形成した後に、第一接続導体10と第三金属層3Cとを接続するために、第一金属層3A及び第二金属層3Bをエッチングによって除去する際、素体2と第一接続導体10との境界からエッチング液が浸入することを抑制できる。
【0051】
上記実施形態では、第一端子電極3が第一金属層3A、第二金属層3B及び第三金属層3Cにより構成される形態を一例に説明した。しかし、第一端子電極3は、二つの層によって形成されていてもよいし、四以上の層によって形成されてもよい。二つ層で形成する場合、たとえば、Cuの無電解めっきによってめっき層を形成し、当該めっき層上に更にめっき層を形成してもよい。
【0052】
上記実施形態では、主面2dを形成するための研磨によってフィラーFが脱落し、これにより凹部15を形成する形態を一例に説明した。しかし、凹部は他の方法によって形成してもよい。
【0053】
上記実施形態では、コイル5が、複数の第一配線部6と、複数の第二配線部7と、複数のピラー部8と、を有している形態を一例に説明した。しかし、コイルの構成はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0054】
1…コイル部品、2…素体、2c,2d…主面(実装面)、3A…第一金属層、3B…第二金属層、3C…第三金属層、5…コイル、10…第一接続導体、11…第二接続導体、15…凹部、F…フィラー。