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特開2024-62671車両用送風ユニットおよび車両送風構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062671
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両用送風ユニットおよび車両送風構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/24 20060101AFI20240501BHJP
   B60H 1/26 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
B60H1/24 621
B60H1/26 651A
B60H1/26 671A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170667
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】江口 卓也
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA12
3L211BA55
3L211DA17
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】車室後部と車室外との間で空気を効率的に流通させることができる車両用送風ユニットおよび車両送風構造を提供する。
【解決手段】送風ユニット1は、車両3の車室内と車室外との間で空気を流通させるダクト11と、ダクト11内の空気の流通を促進させる送風機12と、を備える。ダクト11は、車室内側に開口する内側開口部11Aと、車室外側に開口する外側開口部11Bと、を有し、外側開口部11Bは、車両3における車両側部の上側部分に配置され、内側開口部11Aは、外側開口部11Bよりも車両後方側かつ車室後部に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内と車室外との間で空気を流通させるダクトと、
前記ダクト内の空気の流通を促進させる送風機と、
を備える車両用送風ユニットにおいて、
前記ダクトは、
車室内側に開口する内側開口部と、
車室外側に開口する外側開口部と、を有し、
前記外側開口部は、前記車両における車両側部の上側部分に配置され、
前記内側開口部は、前記外側開口部よりも車両後方側かつ車室後部に配置されることを特徴とする車両用送風ユニット。
【請求項2】
前記送風機は、前記外側開口部よりも車両後方側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項3】
前記ダクトは、前記送風機を内部に収容可能な収容部を有し、
前記収容部の内部空間における前記空気の流れ方向に垂直な断面積が、前記外側開口部の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項4】
前記内側開口部は、車室内側かつ車両下方側に開口していることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項5】
前記内側開口部は、前記車両に設けられている物を載置するための載置台の上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項6】
前記ダクトは、
前記送風機を内部に収容可能な収容部と、
前記収容部および前記内側開口部の間において前記空気の流れ方向が変化する流通路変化部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項7】
前記ダクトの少なくとも一部は、前記車両側部の車室内側に配置されているシートの座面に対して車両上下方向で対面する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項8】
前記車両に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の車両用送風ユニット。
【請求項9】
車両の車室内と車室外との間で空気を流通させるダクトと、
前記ダクト内の空気の流通を促進させる送風機と、
を備える車両用送風ユニットを用いた車両送風構造において、
前記ダクトは、
車室内側に開口する内側開口部と、
車室外側に開口する外側開口部と、を有し、
前記外側開口部は、前記車両における車室側部の上側部分に配置され、
前記内側開口部は、前記外側開口部よりも車両後方側かつ車室後部に配置されることを特徴とする車両送風構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用送風ユニットおよび車両送風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、車両周辺が無風状態であっても車室内の空気を効率的に入れ換える1つの方法として、車室内に送風ユニットを設置して換気を行うことが考えられる。車室内の空気を入れ換えるためには、車室内と車室外とが連通する位置に送風ユニットを設ける必要があり、車室内に特別に連通口を設けない場合には、窓ガラスと窓枠との間が連通口として利用される。例えば、特許文献1には、車のフロントシートに対応したサイド窓枠の窓ガラス受け溝と窓ガラスとの間にアームを設け、該アームに吊下げ状に取付けた送風ファンを駆動して車室内の換気を行う車用換気扇が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-214852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ラゲッジスペースが車室後部に設けられている車両では、シートバックを前倒しにしたリヤシートを当該シートの足元空間にチルトダウンさせるなどして、車室後部にワークスペースを確保したり、乗員が快適に過ごすためのフラット空間を形成したりすることがある。このような車両では、ラゲッジスペースを含めた車室後部を効率的に換気することが求められる場合がある。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の車用換気扇(車両用送風ユニット)は、フロントシートに対応するサイド窓枠の上部に設けられているので、車室前部を効率的に換気できるものの、フロントシートより後方に位置する車室空間の効率的な換気は困難であった。仮に、リヤシートに対応するサイド窓枠の上部に従来の車用換気扇を設けたとしても、リヤシートよりも後方に配置されるラゲッジスペースの空気を効率的に入れ換えることは難しい。ラゲッジスペースに対応する車室側部には、クォーターウィンド等の採光用の窓が設けられている場合もあるが、該窓は開閉できないものが多く、ラゲッジスペースを含めた車室後部の効率的な換気に関して改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、車室後部と車室外との間で空気を効率的に流通させることができる車両用送風ユニットおよび車両送風構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、車両の車室内と車室外との間で空気を流通させるダクトと、前記ダクト内の空気の流通を促進させる送風機と、を備える車両用送風ユニットを提供する。この車両用送風ユニットにおいて、前記ダクトは、車室内側に開口する内側開口部と、車室外側に開口する外側開口部と、を有し、前記外側開口部は、前記車両における車両側部の上側部分に配置され、前記内側開口部は、前記外側開口部よりも車両後方側かつ車室後部に配置される。
【0008】
また、本発明の他の態様は、車両の車室内と車室外との間で空気を流通させるダクトと、前記ダクト内の空気の流通を促進させる送風機と、を備える車両用送風ユニットを用いた車両送風構造を提供する。この車両送風構造において、前記ダクトは、車室内側に開口する内側開口部と、車室外側に開口する外側開口部と、を有し、前記外側開口部は、前記車両における車室側部の上側部分に配置され、前記内側開口部は、前記外側開口部よりも車両後方側かつ車室後部に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両用送風ユニットおよび車両送風構造によれば、ダクトの内側開口部が、車両における車室側部の上側部分に配置された外側開口部よりも車両後方側かつ車室後部に配置されることによって、車室後部と車室外との間で空気を効率的に流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用送風ユニットが取り付けられた車両における車室内の概略構成を示す斜視図である。
図2図1における送風ユニットの付近を拡大して車室内側から見た側面図である。
図3図2において送風ユニットを取り外した状態を示す側面図である。
図4図2のA-A線に沿って車両および送風ユニットを切断した一部断面正面図である。
図5】上記実施形態において車室後部にフラット空間が形成された状態を示す側面図である。
図6】上記実施形態に関連する第1変形例の概略構成を示す側面図である。
図7】上記実施形態に関連する第2変形例の概略構成を示す側面図である。
図8】上記実施形態に関連する第3変形例の概略構成を示す側面図である。
図9】上記実施形態に関連する第4変形例の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用送風ユニット1が取り付けられた車両3における車室内の概略構成を示す斜視図である。なお、以下で説明する各図において、矢印Fr方向は車両前後方向で前方を示し、矢印U方向は車両上下方向で上方を示し、矢印R方向および矢印L方向は車室内から車両前方を見たときの右方および左方を示している。
【0012】
図1において、本実施形態の送風ユニット1は、自動車等の車両3における車室内に取り付けられる。車両3の車室内には、フロントシート31およびリヤシート32が設置され、リヤシート32の車両後方側にはラゲッジスペースLが設けられている。つまり、送風ユニット1は、車室内にラゲッジスペースLを備えた車両3において、ラゲッジスペースLを含めた車室後部の空気を入れ換えるための換気装置として、車室内の予め定められた位置に取り付けられている。
【0013】
なお、図1には、左右のフロントシート31のうちの左側のフロントシート31およびリヤシート32における各シートバックを座面側にそれぞれ前倒しにして折り畳んだ状態が示されているとともに、後述する載置台として利用可能なラゲッジボード39がラゲッジスペースLに取り付けられた状態が示されている。
【0014】
本実施形態の送風ユニット1は、例えば、ダクト11と、送風機12と、仕切部材13と、を備えている。ダクト11は、車両3の車室内と車室外との間で空気を流通させるための管状の部材である。ダクト11の一端部には、車室内側に開口する内側開口部11Aが形成されている。また、ダクト11の他端部には、車室外側に開口する外側開口部11Bが形成されている。外側開口部11Bは、仕切部材13に取り付けられている。仕切部材13は、車両3における車両側部の上側部分にダクト11の外側開口部11Bを支持するための部材(アダプタ)である。
【0015】
送風機12は、ダクト11内の空気の流通を促進させるための電動機器である。本実施形態において送風機12は、ダクト11における内側開口部11Aと外側開口部11Bとの間に挿入されている。つまり、ダクト11および送風機12によって、車室内と車室外との間で空気を特定の方向へ流通させるための流通路が形成されている。送風ユニット1における送風機12に対応する部分は、車両3の車両側部に設けられたクォータピラー33の上部に着脱可能に固定されている。
【0016】
なお、図1には、車両3における左右の車両側部のうちの右側の車両側部だけが図示されている。左右の車両側部は、車室における車幅方向の両端、すなわち、車両3において人員等が乗車する空間の左側端および右側端を区画している。本実施形態では、送風ユニット1が右側の車両側部に取り付けられる一例を説明するが、左側の車両側部に送風ユニット1を取り付けるようにしてもよい。車両側部に対する送風ユニット1の取付構造の詳細については後述する。
【0017】
車両3の車両側部には、リヤシート32に対応する位置にリヤサイドドア開口部34が設けられている。リヤサイドドア開口部34は、リヤサイドドア35によって開閉可能に構成されている。リヤサイドドア35は、車両側部の一部を形成しており、リヤサイドドア35の上側部分にはリヤサイドウィンド開口部35Aが設けられている。リヤサイドウィンド開口部35Aは、車両上下方向に移動可能なリヤサイドウィンドガラス36によって開閉可能に構成されている。送風ユニット1における送風機12に対応する部分が固定されるクォータピラー33は、リヤサイドドア開口部34の車両後側に配置されている。
【0018】
クォータピラー33の車両後方上側には、採光用のクォータウィンドガラス37が設けられている。クォータウィンドガラス37は、上記リヤサイドウィンドガラス36とは異なり、開閉することができない構造になっている。クォータウィンドガラス37の車両下側に配置されているサイドトリム38には、前述したラゲッジボード39を横置きまたは縦置きするための支持部38Aが複数の箇所に形成されている。図1には、サイドトリム38の上段に位置する支持部38Aにラゲッジボード39を横置きした状態が図示されている。このような状態のラゲッジボード39は、物を載置するための載置台として利用することが可能である。ラゲッジボード39の上方には、ダクト11の内側開口部11Aが配置されている。
【0019】
ここで、送風ユニット1の具体的な構成例と、車両側部に対する送風ユニット1の取付構造の一例とについて詳しく説明する。
図2は、図1における送風ユニット1の付近を拡大して車室内側から見た側面図である。また、図3は、図2において送風ユニット1を取り外した状態を示す側面図である。さらに、図4は、図2のA-A線に沿って車両および送風ユニットを切断した一部断面正面図である。
【0020】
図2図4に示すように、本実施形態の送風ユニット1は、リヤサイドウィンドガラス36を所定量下げた状態で、該リヤサイドウィンドガラス36の上端部とリヤサイドウィンド開口部35Aの上部(窓枠の上部)との間に形成される隙間Gに仕切部材13が嵌め込まれ、該仕切部材13にはダクト11の外側開口部11Bが取り付けられている。
【0021】
具体的に、本実施形態における仕切部材13は、車両前後方向に延びる板状の部材であって、長手方向の全長がリヤサイドウィンド開口部35Aの全幅(車両前後方向の長さ)と略等しくなるように形成されている(図2)。仕切部材13の上面部には、車両上側に突出し車両前後方向に延在する凸形状部13Aが設けられている(図4)。凸形状部13Aは、リヤサイドウィンド開口部35Aの上部下面に形成されているウィンドガラス受け溝35Bと係合可能に構成されている。
【0022】
また、仕切部材13の下面部には、車両上側に凹み車両前後方向に延在する凹形状部13Bが設けられている(図4)。凹形状部13Bは、リヤサイドウィンドガラス36の上端部と係合可能に構成されている。リヤサイドウィンドガラス36は、リヤサイドドア35の下部を形成しているドアインナパネル35Cおよびドアアウタパネル35Dの間で、車両上下方向へ移動可能に支持されている。
【0023】
さらに、仕切部材13の後部には、車幅方向に貫通した通気口13Cが設けられている。通気口13Cは、車両側方視で、略円形の形状を有している。ただし、通気口13Cの形状は略円形に限定されない。仕切部材13における通気口13Cの周辺部分には、ダクト11の外側開口部11Bが車幅方向内側から取り付けられている。本実施形態では、送風機12の回転方向に応じて、ダクト11内を流通した空気が仕切部材13の通気口13Cを介して車室外に排出されるか、或いは、車室外の空気が仕切部材13の通気口13Cを介してダクト11内に吸入される。このような仕切部材13を使用したダクト11の取付構造においては、仕切部材13の通気口13Cの面積A1がダクト11の外側開口部11Bの実質的な開口面積に相当する(図2)。
【0024】
ダクト11の外側開口部11Bが取り付けられた仕切部材13は、リヤサイドウィンドガラス36の上下位置が調整されることにより、上面側の凸形状部13Aとリヤサイドウィンド開口部35Aのウィンドガラス受け溝35Bとが係合し、かつ、下面側の凹形状部13Bとリヤサイドウィンドガラス36の上端部とが係合した状態にされる。これにより、リヤサイドウィンドガラス36の上端部とリヤサイドウィンド開口部35Aのウィンドガラス受け溝35Bとの間の隙間Gに嵌め込まれた仕切部材13の通気口13Cを介して、ダクト11の外側開口部11Bが車室外側に開口した状態となる。
【0025】
本実施形態におけるダクト11は、外側開口部11Bから車室内側に延びた後に車両下側に湾曲し、車両下方に向かうに従って車両後方に傾斜しながら延びて、送風機12の収容部11Cへと繋がっている(図1図2および図4)。ダクト11に形成される収容部11Cは、送風機12の外形に合わせてダクト11の内部空間(空気の流通路)が車両上下方向および車幅方向に拡張されている。つまり、ダクト11は、内側開口部11Aおよび外側開口部11Bの間に空気の流通路を拡径させた拡径部が形成されており、該拡径部に送風機12が収容されている。換言すると、収容部11C(拡径部)は、送風機12の上流側および下流側に向けて徐々に拡縮している。このようにダクト11内の空気の流通路が送風機12の前後で拡径および拡縮していることで、流体抵抗が徐々に変化するので、乱流が生じ難くなる。
【0026】
本実施形態では、車両前方側から見た正面視で、ダクト11の収容部11Cが略矩形の形状を有している(図4)。収容部11Cの内部空間における空気の流れ方向に垂直な断面積A2は、仕切部材13の通気口13Cの面積A1(ダクト11の外側開口部11Bの実質的な開口面積)よりも大きくなるように設定されている。
【0027】
さらに、ダクト11は、送風機12の収容部11Cから車両後方に延びた後に、車両下側に湾曲して車両下方に延びている(図2)。ダクト11の先端(下端)部分には、内側開口部11Aが形成されている。ダクト11の内側開口部11Aは、横置きされたラゲッジボード39の上面に形成されている円形状の窪み部分39Aの車両上方に位置するように配置されている(図1図2および図4)。窪み部分39Aは、ラゲッジボード39上に飲料容器や食器などを載置しやすくなるように設けられている。
【0028】
上記のようなダクト11の少なくとも一部は、リヤシート32の座面に対して車両上下方向で対面する位置に配置されている(図1および図2)。換言すると、車両3を上方側から見た上面視で、ダクト11の少なくとも一部とリヤシート32の座面とが重なるように配置されている。本実施形態では、ダクト11における外側開口部11Bから車室内側に延出した部分とリヤシート32の座面とが、車両上下方向で対面するような配置になっている。また、車両3を前方側から見た正面視で、ダクト11は、右側のフロントシート31のシートバックと重なるように配置されている(図1)。
【0029】
ダクト11の内壁面には、外側開口部11Bの下側部分から車室内側に向かうに従って車両上側に傾斜した傾斜部11Dが形成されている(図4)。このような車室外側から車室内側に徐々に高くなる傾斜部11Dがダクト11の内壁面の外側開口部11B近傍に設けられていることによって、雨水等が仕切部材13の通気口13Cおよび外側開口部11Bを介してダクト11内に浸入するのを抑制することができるようになる。また、傾斜部11Dの先端部分(車室内側の端部分)には、車両上側に突出した防水リブ11Eが設けられている。このような防水リブ11Eを設けることによって、傾斜部11Dを越えた雨水等がダクト11内における送風機12の収容部11C側に浸入するのを抑制することができるようになる。なお、雨水等が防水リブ11Eを越えて浸入したとしても、送風機12の収容部11Cにおける車両下方に凹んだ部分に雨水等が貯留されるので、雨水等の車室内への浸入を防止することが可能な構成になっている。収容部11Cの底部分には、ここでは図示を省略するが、排水口を別途設けるようにしてもよい。
【0030】
また、ダクト11において送風機12の収容部11Cと内側開口部11Aとの間に位置する湾曲部分は、ダクト11内の空気の流れ方向が変化する流通路変化部11Gを形成している(図2)。流通路変化部11Gは、送風機12の作動中、異物が内側開口部11Aからダクト11内に吸い込まれた場合に、該異物が流通路変化部11Gの内壁面に衝突するように構成されている。
【0031】
ダクト11の収容部11Cに収容される送風機12は、例えば、羽車12Aと、羽車12Aを駆動するモータ12Bと、を有している。羽車12Aは、モータ12Bの回転軸に取り付けられている。モータ12Bは、車両前後方向に沿って延びる回転軸を中心に羽車12Aを正回転および逆回転させることが可能である。モータ12Bは、車両3のクォータピラー33に設けられている後述する給電口42および電気配線43を介して、車両に搭載されているバッテリー(図示せず)からの電力供給を受けて作動する。ダクト11の外壁面にはモータ12Bの操作部12Cが設けられており(図2および図4)、この操作部12Cを車両3の乗員が操作することによって、モータ12Bのオンオフや回転方向が切り換えられる。
【0032】
ダクト11における送風機12の収容部11Cに対応する部分は、支持部材(アダプタ)14を介してクォータピラー33の上部に着脱可能に固定されている(図4)。本実施形態では、クォータピラー33がピラーインナパネル33Aおよびピラーアウタパネル33Bを有しており、ピラーインナパネル33Aが車室内側壁の一部を形成している。ピラーインナパネル33Aの上部には、ユーティリティナット等からなる固定部40が車両上下方向に間隔を空けて2箇所設けられている(図3および図4)。ピラーインナパネル33Aの2箇所の固定部40の間には、前述したバッテリーに電気配線43を介して接続された給電口42が設けられている。
【0033】
支持部材14は、車両上下方向に延びており、車幅方向内側端部がダクト11における送風機12の収容部11Cに対応する部分に接合され、車幅方向外側端部がピラーインナパネル33Aの各固定部40にボルト等の連結部材41で固定されている(図4)。支持部材14における車幅方向外側端面には、ピラーインナパネル33Aの側の給電口42に対応する位置に受電口44が設けられている。受電口44には、電気配線43を介してモータ12Bが接続されており、給電口42および受電口44にそれぞれ設けられている各電極が接触することで、車載バッテリーからの電力がモータ12Bに供給される。
【0034】
次に、本実施形態の送風ユニット1の作用について詳しく説明する。
上記のように構成された送風ユニット1では、車室内にラゲッジスペースLを備えた車両3におけるリヤサイドウィンド開口部35Aとリヤサイドウィンドガラス36の隙間Gを利用して、ダクト11の外側開口部11Bが配置されるとともに、外側開口部11Bよりも車両後方側かつ車両後部のラゲッジスペースLに、ダクト11の内側開口部11Aが配置されている。
【0035】
このような送風ユニット1において、車両3の乗員が送風ユニット1の操作部12Cを操作して、送風機12のモータ12Bをオンに切り換え羽車12Aを一方向に回転(正回転)させると、図2の破線矢印に示すように、ダクト11内の空気が内側開口部11Aの側から外側開口部11Bの側に流通するようになる。つまり、車両3の周辺が無風状態であっても、ラゲッジボード39上方の空気が内側開口部11Aからダクト11内に吸い込まれ、送風機12の収容部11C、外側開口部11Bおよび仕切部材13の通気口13Cを通って車室外に排出されるようになる。
【0036】
また、乗員による操作部12Cの操作によって、送風機12の羽車12Aを反対方向に回転(逆回転)させると、図示を省略するが、ダクト11内の空気が外側開口部11Bの側から内側開口部11Aの側に流通するようになる。つまり、車両3の周辺が無風状態であっても、車室外の空気が仕切部材13の通気口13Cを介して外側開口部11Bからダクト11内に取り込まれ、送風機12の収容部11Cおよび内側開口部11Aを通って車室内のラゲッジボード39上方に送り出されるようになる。
【0037】
図1図4に示したように、ラゲッジスペースLの側部に設けられたサイドトリム38の上段に位置する支持部38Aにラゲッジボード39が横置きされた状態では、ラゲッジボード39の上方、特に、窪み部分39Aの周辺の空気が、送風ユニット1によって、車室外の空気と効率的に入れ換えられるようになる。なお、図1等に図示されているラゲッジボード39の窪み部分39Aを上下方向に貫通する貫通孔(図示せず)とすれば、送風ユニット1によって、ラゲッジボード39の下方空間と車室外との間でも空気を効率的に入れ換えることができるようになる。
【0038】
また、例えば図5に示するように、リヤシート32のシートバックを座部の上面側に前倒しにしつつ座部を着座位置から前方下側に位置する足元空間にチルトダウンさせた収納状態にして、該リヤシート32の上方にフロントシート31のシートバックを後倒しにするとともに、サイドトリム38の下段に位置する支持部38Aにラゲッジボード39を横置きにして、車室内にフラット空間が形成されるようにした場合には、該フラット空間に体を横たえて休む乗員の上方の空気が、送風ユニット1によって、車室外の空気と効率的に入れ換えられるようになる。
【0039】
上記のような本実施形態の送風ユニット1によれば、ダクト11の外側開口部11Bが車両3における車両側部の上側部分に配置されるとともに、ダクト11の内側開口部11Aが、外側開口部11Bよりも車両後方側かつ車室後部に配置されていることによって、車室後部と車室外との間で空気を効率的に流通させることができる。特に、リヤサイドウィンドガラス36の上端部とリヤサイドウィンド開口部35Aのウィンドガラス受け溝35Bとの隙間Gに、ダクト11の外側開口部11Bを取り付けた仕切部材13が嵌め込まれ、その外側開口部11Bよりも車両後方側にダクト11の内側開口部11Aが配置されるようにすれば、ダクト11の内側開口部11Aがリヤシート32の車両後方側に位置するようになるので、ラゲッジスペースLを含めた車室後部と車室外との間で空気を効率的に流通させることができる。加えて、車両3の側に送風ユニット1用の換気口を別途設ける必要がないので、多様な車種に対して送風ユニット1を容易に適用可能である。
【0040】
また、本実施形態の送風ユニット1では、送風機12がダクト11の外側開口部11Bよりも車両後方側に配置されている。これにより、送風機12がリヤサイドウィンドガラス36と車幅方向で重なり難くなるので、送風機12によってリヤサイドウィンドガラス36の視界が遮られるのを防止することができる。送風機12がリヤサイドウィンドガラス36の視界を遮り難くなれば、送風機12における送風面の大きさや形状の自由度が高まるので、送風ユニット1の送風効率を向上させることも可能になる。
【0041】
また、本実施形態の送風ユニット1では、ダクト11が送風機12の収容部11Cを有しており、該収容部11Cの内部空間における空気の流れ方向に垂直な断面積A2が、仕切部材13の通気口13Cの面積A1(ダクト11の外側開口部11Bの実質的な開口面積)よりも大きくなっている。これにより、ダクト11の外側開口部11Bからダクト11内への雨水等の浸入を抑えつつ、送風機12の送風面を大きくして送風量を増加させることができる。加えて、送風機12による所要の送風性能を確保した上でダクト11の外側開口部11Bを小さくすることができるので、送風ユニット1を取り付けたことに伴ってリヤサイドウィンドガラス36の視界が狭まるのを抑制することが可能である。
【0042】
本実施形態では、上述した従来の車用換気扇のように窓枠に換気扇(送風機)を直結するのではなく、ダクト11の途中に送風機12の収容部11Cを設けて、送風機12がダクト11を介してリヤサイドウィンド開口部35Aに接続されるようにすることで、送風機12の大きさを用途に合わせて選定できるとともに、送風機12の大きさに対してダクト11の外側開口部11Bを小さくすることが可能になっている。また、送風機12とリヤサイドウィンド開口部35Aとの間に一定の距離があるため、ダクト11の急激な形状変形による流量の損失を防ぐことも可能である。
【0043】
また、本実施形態の送風ユニット1では、ダクト11の内側開口部11Aが車室内側かつ車両下方側に開口していることにより、該内側開口部11Aの下方空間の空気を効率的に換気することができる。このような効果は、図5に例示したような車室内のフラット空間を利用して車中泊をするときなどに特に有効である。加えて、ダクト11の内側開口部11Aからダクト11内に異物が吸い込まれても、該異物に重力が作用するので送風機12側に異物が移動し難くなる。
【0044】
また、本実施形態の送風ユニット1では、ダクト11の内側開口部11Aが車室内のラゲッジスペースLに横置きされたラゲッジボード39(載置台)の上方に配置されていることにより、ラゲッジボード39に載置された飲料容器や食器などから発生する蒸気や匂いを車室外へ効率的に排気することができるので、車室後部に形成される多目的スペースを快適な環境にしやすくなる。
【0045】
また、本実施形態の送風ユニット1では、ダクト11における送風機12の収容部11Cと内側開口部11Aとの間に、空気の流れ方向が変化する流通路変化部11Gが設けられている。これにより、ダクト11の内側開口部11Aからダクト11内に吸い込まれた異物が流通路変化部11Gの内壁面に衝突して収容部11Cに導かれ難くなるので、該異物が送風機12と接触するのを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の送風ユニット1では、ダクト11の少なくとも一部がリヤシート32の座面に対して車両上下方向で対面する位置に配置されている。このような配置とすることにより、リヤシート32におけるダクト11直下の位置には乗員が座り難くなるので、リヤシート32のシートバックを起立させた状態(通常の使用状態)での乗員の着座と送風ユニット1の設置とを両立させることが困難になる。したがって、通常の使用状態のリヤシート32に着座した乗員の頭部が送風ユニット1のダクト11の内側開口部11A付近に位置して乗員に違和感を与えるような状況が発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0047】
また、本実施形態の送風ユニット1は、車両3に着脱可能に取り付けられているので、車室後部の換気が不要の場合には送風ユニット1を取り外しておくことが可能であり、ラゲッジスペースLを含めた車室後部の限られたスペースを有効に活用することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、羽車12Aを有する送風機12がダクト11の内側開口部11Aおよび外側開口部11Bの間に配置される一例について説明したが、本発明はこの一例に限定されるものではない。以下、送風ユニット1の各種変形例について説明する。
【0049】
図6図8は、上述した実施形態に関連する送風ユニット1の変形例における概略構成を示す側面図である。
図6に示す第1変形例では、上述した実施形態における羽車12Aを有する送風機12に代えてシロッコファン15が使用されている。シロッコファン15は、ドラム状の遠心ファンであり、角度を持たせた複数の羽根が円盤上に垂直に立てられている。シロッコファン15は、回転軸に対して直交方向に風が出るように構成されている。第1変形例におけるシロッコファン15は、ダクト11内の内側開口部11Aおよび外側開口部11Bの間に配置されている。
【0050】
上記のような第1変形例において、シロッコファン15が一方向に回転(正回転)されると、図6の破線矢印に示すように、内側開口部11Aからダクト11内に吸い込まれた空気がシロッコファン15を下方側から前方側に通過し、ダクト11の外側開口部11Bおよび仕切部材13の通気口13Cを通って車室外に排出されるようになる。また、シロッコファン15が反対方向に回転(逆回転)されると、ダクト11内の空気が上記とは逆方向に流通するようになる。このような第1変形例の送風ユニット1によっても、上述した実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0051】
図7に示す第2変形例は、上述した実施形態における送風機12をダクト11の内側開口部11Aに配置したものである。つまり、送風機12の車両後側の送風面が車室内側に開口するように、ダクト11の内側開口部11Aと対面する位置に送風機12が設けられている。このような第2変形例によれば、上述した実施形態の場合の効果に加えて、車室後部の広範囲の空気をダクト11内に効率的に取り込むことができるようになる、或いは、車室外の空気を車室後部の広範囲に送風することができるようになる。なお、図示を省略するが、ダクト11の外側開口部11Bと対面する位置に送風機12を設けることも勿論可能である。
【0052】
図8に示す第3変形例では、上述した実施形態におけるダクト11について、送風機12から内側開口部11Aまでの部分が、車両前後方向に沿った軸中心に回動可能かつ着脱可能な位置調整部11Fとなっている。ダクト11の位置調整部11Fは、例えば、上述した実施形態の場合と同様な内側開口部11Aが車両下方側に開口した状態(破線)から、車両前方を向いて右回り(時計方向)に概ね90°回転されることで、ダクト11の内側開口部11Aが車幅方向内側に開口した状態(実線)に調整することが可能である。このような位置調整部11Fをダクト11に設けることによって、上述した実施形態の場合の効果に加えて、車室後部における所望スペースの換気を効率的に行うことが可能になる。また、位置調整部11Fを取り外すことで、車室後部の換気を行いつつ、車室後部に広いスペースを確保することができる。
【0053】
図9に示す第4変形例では、上述した実施形態における送風機12よりも送風面の小さなファン16A,16Bが、ダクト11内における内側開口部11Aおよび外側開口部11Bの間に多段構成(ここでは2段構成)で設けられている。各ファン16A,16Bの送風面は、ここではダクト11の内径と同程度の大きさを有している。車室内側(車両後方側)のファン16Aと車室外側(車両前方側)のファン16Bとは、ダクト11内の流通路上で所要の間隔を空けて配置されている。このような多段構成のファン16A,16Bをダクト11内に設けることで、所要の送風性能を確保しつつ、送風ユニット1の小型化を図ることが可能になる。
【0054】
また、上述した実施形態では、車両3における左右の車両側部のうちの一方(右側)の車両側部に送風ユニット1が取り付けられる一例を説明したが、左右の車両側部の双方に送風ユニット1を取り付けることも可能である。この場合、左右の送風ユニット1における送風機12の回転方向を逆方向にして、一方の送風ユニット1を排気装置、他方の送風ユニット1を吸気装置として利用すれば、車室後部を一層効率的に換気することができる。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、ダクト11の外側開口部11Bがリヤサイドウィンド開口部35A側に配置される一例を説明したが、外側開口部11Bの配置は上記一例に限定されない。例えば、車室外と車室内との間で空気を流通させる空気流通口(換気口)が車両に設けられている場合、該空気流通口と連通可能な位置(例えば、車両側部に設けられている換気口と車幅方向で対面する位置など)にダクトの外側開口部を配置するようにしてもよい。或いは、車室天井部(ルーフパネル)に設けられた開閉式ルーフウィンド開口部のような天面の空気流通口側にダクトの外側開口部を配置することも可能である。
【0056】
加えて、上述した実施形態では、ダクト11の外側開口部11Bが内側開口部11Aよりも高い位置に配置されている一例を示したが、外側開口部と内側開口部とを同じ高さに配置したり、外側開口部よりも内側開口部を高い位置に配置したりするようにしてもよい。外側開口部と内側開口部とを同じ高さに配置する場合、ダクトを車両前後方向に略直線状に延ばすことができるので、流路寸法(空気の流れ方向の全長)を短くすることができる、または、ダクト内の圧力損失を低減することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、送風ユニット1が車両3の車両側部に着脱可能に取り付けられる一例を説明したが、車両3における車両送風構造として送風ユニット1が車両側部に予め組み付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…送風ユニット
11…ダクト
11A…内側開口部
11B…外側開口部
11C…収容部
11D…傾斜部
11E…防水リブ
11F…位置調整部
11G…流通路変化部
12…送風機
12A…羽車
12B…モータ
12C…操作部
13…仕切部材
13A…凸形状部
13B…凹形状部
13C…通気口
14…支持部材
3…車両
31…フロントシート
32…リヤシート
33…クォータピラー
34…リヤサイドドア開口部
35…リヤサイドドア
35A…リヤサイドウィンド開口部
36…リヤサイドウィンドガラス
37…クォータウィンドガラス
38…サイドトリム
39…ラゲッジボード
40…固定部
41…連結部材
42…給電口
43…電気配線
44…受電口
G…隙間
L…ラゲッジスペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9