(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062672
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】データ収集・分析システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/901 20190101AFI20240501BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20240501BHJP
G08C 15/06 20060101ALI20240501BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240501BHJP
G06F 16/909 20190101ALI20240501BHJP
【FI】
G06F16/901
G08C15/00 E
G08C15/06 H
G16Y40/20
G06F16/909
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170668
(22)【出願日】2022-10-25
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】516003171
【氏名又は名称】イネーブラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100136744
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 佳正
(72)【発明者】
【氏名】杉井 靖典
(72)【発明者】
【氏名】篠原 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】松坂 要佐
【テーマコード(参考)】
2F073
5B175
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA19
2F073AA21
2F073AB01
2F073AB05
2F073BB01
2F073BB07
2F073BB09
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC09
2F073CC12
2F073CC14
2F073CD17
2F073DD07
2F073DE06
2F073DE13
2F073DE17
2F073EF08
2F073EF09
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG06
2F073GG08
2F073GG09
5B175FB02
5B175FB03
(57)【要約】
【課題】 異なる多種多様なセンサから収集したデータの横断的検索を容易にする。
【解決手段】 1以上のセンサから送信されるセンサデータを集約するゲートウェイと、ゲートウェイを通過したデータを集積するデジタルエビデンスプラットフォームとを備えるデータ収集・分析システムであって、ゲートウェイは、集約したセンサデータに時空タグを付与し、時空タグを付与した1次データをブロックデータとしてデジタルエビデンスプラットフォームに送信し、デジタルエビデンスプラットフォームは、ゲートウェイから送信されたブロックデータを保存し、ブロックデータに含まれるセンサの種類ごとに分割した2次データ(エンティティデータ)を生成し、2次データに対してスキーマを使って意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を生成し、2次データ及び3次データを検索可能なインデックスを生成することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のセンサから送信されるセンサデータを集約するゲートウェイと、
前記ゲートウェイを通過したデータを集積するデジタルエビデンスプラットフォームと
を備えるデータ収集・分析システムであって、
前記ゲートウェイは、
集約した前記センサデータに時空タグを付与し、前記時空タグを付与した1次データをブロックデータとして前記デジタルエビデンスプラットフォームに送信し、
前記デジタルエビデンスプラットフォームは、前記ゲートウェイから送信された前記ブロックデータを保存し、
前記ブロックデータに含まれる前記センサの種類ごとに分割した2次データ(エンティティデータ)を生成し、
前記2次データ(エンティティデータ)に対してスキーマを使って意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を生成し、
前記2次データ(エンティティデータ)及び前記意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記デジタルエビデンスプラットフォームは、さらに、
前記3次データ(セマンティクスデータ)について、有効数字を考慮した単位の相互変換が可能となる4次データ(コンバーチブルデータ)を生成し、
前記4次データ(コンバーチブルデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成する
を行うことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記デジタルエビデンスプラットフォームに保存された前記1次データ~前記4次データは、SDKによって機能提供され、
前記提供される機能においては、
時空検索ができ、かつ、
前記時空検索の結果は、エンティティとして得られる
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検索結果である前記エンティティにはURI含まれ、前記URIから前記1次データ~4次データの各階層の証跡を辿ることができる
ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
1以上のセンサから送信されるセンサデータを集約するゲートウェイと、前記ゲートウェイを通過したデータを集積するデジタルエビデンスプラットフォームとを備えるデータ収集・分析システム上で動作するコンピュータプログラムであって、
前記ゲートウェイに、
集約した前記センサデータに時空タグを付与させ、前記時空タグを付与した1次データをブロックデータとして前記デジタルエビデンスプラットフォームに送信させるステップと、
前記デジタルエビデンスプラットフォームに、前記ゲートウェイから送信された前記ブロックデータを保存させるステップと、
前記ブロックデータに含まれる前記センサの種類ごとに分割した2次データ(エンティティデータ)を生成させるステップと、
前記2次データ(エンティティデータ)に対してスキーマを使って意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を生成させるステップと、
前記2次データ(エンティティデータ)及び前記意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成させるステップと
実行することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記デジタルエビデンスプラットフォームに、さらに、
前記3次データ(セマンティクスデータ)について、有効数字を考慮した単位の相互変換が可能となる4次データ(コンバーチブルデータ)を生成させるステップと、
前記4次データ(コンバーチブルデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成させるステップと
を実行することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記デジタルエビデンスプラットフォームに保存された前記1次データ~前記4次データは、SDKによって機能提供され、
前記提供される機能においては、
時空検索ができ、かつ、
前記時空検索の結果は、エンティティとして得られる
ことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記検索結果である前記エンティティにはURI含まれ、前記URIから前記1次データ~4次データの各階層の証跡を辿ることができる
ことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くデータを収集し分析するシステム等に関し、より詳細には、IoTセンサなどから収集したデータを収集し、分析するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全ての物がインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)社会が到来するとの想定のもと、ネットワークに接続された各種センサから多種多量のデータを収集し、収集したデータを解析して有益な情報を引き出すための様々な取り組みがなされてきた。これらの取り組みにおいては、時刻同期の問題を含め、種々の課題と向き合ってきた。
【0003】
たとえば、センサの演算性能とクロックの精度が悪い場合でも、各センサから送信されるセンサデータの正確な時刻同期をとることができるセンシングシステム及び時刻同期方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
すなわち、特許文献1には、センサデータを送信するように構成された1つ以上のセンサと、前記センサデータを上位装置へ送信するように構成されたデータ収集端末親機と、前記センサと前記データ収集端末親機との間で前記センサデータの中継を行うように構成されたデータ収集端末子機とを備え、前記センサは、時間を計測するように構成された第1の時計部と、前記センサデータを送信するときに、前記第1の時計部の時刻情報を基にデータ送信時刻を示すタイムスタンプを前記センサデータに付与するように構成されたタイムスタンプ付与部と、前記データ収集端末親機から前記データ収集端末子機を介してダミーパケットを受信したときに、返送パケットを生成し、前記第1の時計部の時刻情報を基に前記ダミーパケットの受信時刻を示すタイムスタンプと前記返送パケットの送信時刻を示すタイムスタンプとを前記返送パケットに付与するように構成された返送パケット生成部と、前記タイムスタンプ付与部によってタイムスタンプが付与されたセンサデータおよび前記返送パケット生成部によってタイムスタンプが付与された返送パケットを前記データ収集端末子機に送信するように構成された第1の通信処理部とを備え、前記データ収集端末親機は、時間を計測するように構成された第2の時計部と、時刻同期処理を行う際に、前記ダミーパケットを前記センサに送信するように構成されたダミーパケット送信部と、前記返送パケットを受信したときに、前記第2の時計部の時刻情報から取得した前記ダミーパケットの送信時刻および前記返送パケットの受信時刻と、前記返送パケットのタイムスタンプから取得した前記ダミーパケットの受信時刻および前記返送パケットの送信時刻とから、前記データ収集端末親機と前記センサの同期ずれ時間および前記データ収集端末親機と前記センサ間の伝搬遅延時間を算出するように構成された時間算出部と、前記センサデータを受信したときに、このセンサデータのタイムスタンプから取得したデータ送信時刻と、前記同期ずれ時間および前記伝搬遅延時間とから、補正されたデータ送信時刻を算出するように構成された補正時刻算出部と、この補正時刻算出部の算出結果を基に前記センサデータのタイムスタンプを補正するように構成されたタイムスタンプ補正部と、このタイムスタンプ補正部によってタイムスタンプが補正されたセンサデータを上位装置に転送するように構成された第2の通信処理部とを備えることを特徴とするセンシングシステムが開示されている。
【0005】
また、精度とコストとのトレードオフの問題を克服した時系列データ収集・分析支援システム等も提案されている(特許文献2)。
【0006】
すなわち、特許文献2には、GNSS信号を受信できないIoT端末に対してiPNTからの時刻情報及び位置情報(空間情報)を提供し、前記IoT端末から送信されるデータを時系列データとして収集し、前記時系列データの分析を支援するシステムあって、前記iPNTからの時刻情報及び位置情報(空間情報)を管理し、前記システムと同期をとっている無線通信端末のうちの親端末に対し、前記管理している前記iPNTの時刻情報及び位置情報(空間情報)を提供することを特徴とするシステム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2018/123857
【特許文献2】特開2021-068297
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術においても、次のような課題があった。
(1)複数のセンサの時刻同期を行ったとしても同期の精密性が十分でなく、このため、収集したデータの時刻を揃え、空間情報を含めた精密な分析を行おうとすると改善の余地があった。
(2)複数のセンサについては、複数の異なるベンダから提供される多種の規格に基づくセンサが存在するのであり、これらの異なる多種多様なセンサから収集したデータを横断的に検索しようとすると改善の余地がった。
(3)物流の現場等においては、複数の運送事業者(大中小のトラック運送、鉄道、海運)、生産事業者、小売事業者など複数のプレイヤーがおり、複数のプレイヤーがそれぞれで収集したデータを集約して検索する必要がある。その際、プレイヤー間で品質や信頼性の点でばらつきあるデータを取り扱おうとすると、プレイヤー間の相互信頼の問題もあり、改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、複数のセンサの時刻同期を高度な精密度で行い、また、高精度に同期された時刻情報と空間情報とを含めた時空間情報を分析し、さらに、異なる多種多様なセンサから収集したデータの横断的検索を容易にするシステム等を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、物流の現場等における複数のプレイヤーがそれぞれで収集したデータを集約して検索する技術を提供し、プレイヤー間で品質や信頼性の点でばらつきあるデータを高い信頼性をもって取り扱える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるデータ収集・分析システムは、1以上のセンサから送信されるセンサデータを集約するゲートウェイと、
前記ゲートウェイを通過したデータを集積するデジタルエビデンスプラットフォームと
を備えるデータ収集・分析システムであって、
前記ゲートウェイは、
集約した前記センサデータに時空タグを付与し、前記時空タグを付与した1次データをブロックデータとして前記デジタルエビデンスプラットフォームに送信し、
前記デジタルエビデンスプラットフォームは、前記ゲートウェイから送信された前記ブロックデータを保存し、
前記ブロックデータに含まれる前記センサの種類ごとに分割した2次データ(エンティティデータ)を生成し、
前記2次データ(エンティティデータ)に対してスキーマを使って意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を生成し、
前記2次データ(エンティティデータ)及び前記意味づけされた3次データ(セマンティクスデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成する
ことを特徴とする
【0012】
また、前記デジタルエビデンスプラットフォームは、さらに、前記3次データ(セマンティクスデータ)について、有効数字を考慮した単位の相互変換が可能となる4次データ(コンバーチブルデータ)を生成し、前記4次データ(コンバーチブルデータ)を横断的に検索可能なインデックスを生成することを特徴とする。
【0013】
また、前記デジタルエビデンスプラットフォームに保存された前記1次データ~前記4次データは、SDKによって機能提供され、前記提供される機能においては、時空検索ができ、かつ、前記時空検索の結果は、エンティティとして得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるデータ収集・分析システム等によれば、複数のセンサの時刻同期を高度な精密度で行い、また、異なる多種多様なセンサから収集したデータの横断的検索を容易にする技術を提供することができる。
【0015】
また、物流の現場等における複数のプレイヤーがそれぞれで収集したデータを集約して検索する技術を提供し、プレイヤー間で品質や信頼性の点でばらつきあるデータを高い信頼性をもって取り扱える技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムのシステム構成概念を説明する説明図である。
【
図2A】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムのシステム構成概念を説明する説明図である。
【
図2B】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムのシステム構成概念を説明する説明図である。
【
図3A】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける検索インデックス作成サーバの機能構成を説明する説明図である。
【
図3B】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおけるブロックチェーン合意形成作成サーバの機能構成を説明する説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける動作フローを説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける処理の詳細フローを説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいて生成されるデータのデータ形式例を説明する説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいて生成される階層型ブロックチェーンの構成概念例を説明する説明図である。
【
図8A】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける動作をクライアント側からみたフローを説明するための説明図である。
【
図8B】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける動作をクライアント側からみたフローを説明するための説明図である。
【
図9A】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいて取り扱われるデータのデータ構造例を説明する説明図である。
【
図9B】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいて取り扱われるデータのデータ構造例を説明する説明図である。
【
図9C】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいて取り扱われるデータのデータ構造例を説明する説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける4次データの登録動作例を説明する説明図である。
【
図11】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける4次データに対する読み出し、応答動作例を説明する説明図である。
【
図12】本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおける1次テーブル(1次データ)~4次テーブル(4次データ)までのテーブル間の関係を証跡の観点から説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(用語の定義)
はじめに、本実施例で使用される用語の定義を行う。
【0018】
[時空情報(時空間情報)]
時空情報(時空間情報ともいう。以下、総称して「時空情報」という。)とは、日時/時刻や空間に関する情報全般をいい、特に、本実施例においては、モノやヒト等の位置情報及び日時/時刻情報、あるいは、モノやヒト等の緯度・経度・高度・日時/時刻情報をいう。
【0019】
[電子署名]
測位信号に含まれる航法メッセージは本物であることを証明する電子情報をいう。一例として、みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)においては、この電子署名の仕組みが既に実装されており、位置情報及び時刻情報の信頼性・安全性を高めることができる。
【0020】
[ゲートウェイ]
本発明にかかるデータ収集・分析システムを構成する装置であり、ネットワークのエッジとなる各現場に配置されるデータ収集装置をいう。一例として、物流拠点に配置される拠点ゲートウェイや車載ゲートウェイなどがある。
ゲートウェイでは、GPS信号を使ったナノ秒精度の時刻同期が行われており、収集されたデータに対して、時空情報の一形態である「時空タグ」が付与される。ゲートウェイで収集される前の各種センサデータは時刻情報が不揃いの可能性があるが、ゲートウェイを通過することで、地球上のどの場所であっても、人工衛星に搭載された原子時計に高精度で同期した時刻タグを付与することができ、後に時刻と位置を使った正確な検索が可能になる。
なお、ゲートウェイを通過するデータのデータ構造の概略は次のとおりである。まず、各種センサデータは、エンティティデータとして「エンティティコンテナ」に格納される。複数のエンティティデータは、ブロックデータとして「ブロックコンテナ」に格納される。ゲートウェイ上のブロックコンテナに対しては、ブロックチェーン特有のチェーン状のハッシュ値計算が行われると同時に、電子署名が付与される。これにより、データ改竄や詐称が極めて難しくなる。ブロックデータは、電子署名が付与され、後述のDEPに送信される。
【0021】
[デジタルエビデンスプラットフォーム(DEP)]
インターネット回線等を通して送り込まれた各ゲートウェイで生成されたデータを保存し、検索可能なインデックス生成を行って外部からの検索リクエストに応答するプラットフォームである。DEP上では、各ゲートウェイに安全に保存されている秘密鍵と対になる公開鍵が保存されており、送信されてきたデータの電子署名データの検証による真正性の確認が行われる。
【0022】
[スキーマ、スキーマID]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるクロックチェーンでは、どのようなセンサデータでも収集して解析することができる。この場合、センサ毎にデータのデータ構造が異なるため、その構造を定義したスキーマデータを各センサに対して作成することになる。つまり、スキーマは、センサ毎に異なるデータ構造の定義である。そして、このスキーマデータを識別する識別子がスキーマIDである。スキーマIDは、DEPに保存される。
【0023】
[サイドチェーン]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるゲートウェイから送信されるブロックデータは、ブロックチェーン状の構造をしているが、DEP上では、複数のゲートウェイから送信されてくる各ブロックのハッシュ値を使ってブロックデータ全体をまとめるブロックチェーンを生成する必要がある。このような多重構造のブロックチェーンをサイドチェーンという。ブロックチェーンそれ自体においては、同時に処理できるデータ量に制限があるが、このサイドチェーンにより、そのデータ量の制限を緩和することができる。
【0024】
[マークルツリー構造]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるブロック内には、複数のエンティティが格納されている(オリジナルのブロックチェーンにおいては「トランザクション」と呼ばれるものである)。これら各エンティティのデータの改竄を検知するためのハッシュ値計算を高速化するために使われるデータ構造をマークルツリー構造という。マークルツリーのオリジナルは、R.C.Merkleによって1980年に提案された概念である。
【0025】
[1次データ、1次テーブル]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるDEP上に格納されるブロック情報に関するデータを1次データといい、1次データのデータベース構造を1次テーブルいう。入力された各ブロックに付与された時空タグ、ブロックのハッシュ値、電子署名の検証結果が格納されて検索に利用される。この段階で証跡毎の検索が可能になる。
【0026】
[2次データ、2次テーブル]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるDEP上に格納されるエンティティ情報に関するデータを2次データといい、2次データのデータベース構造を2次テーブルという。ブロックに格納された各エンティティ情報が分解されて格納され、検索に利用される。この段階ではセンサデータ毎の検索が可能になるが、スキーマを使ったデータの解析や意味づけはまだ行われない。
【0027】
[3次データ、3次テーブル]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるDEP上に格納されるセンサ情報に関するデータを3次データといい、3次データのデータベース構造を3次テーブルいう。3次テーブル作成にあたっては、スキーマを使ってエンティティデータが解析されており(意味づけされており)、センサ情報は、各センサ値に分解され、検索可能になっている。
【0028】
[4次データ、4次テーブル]
本発明にかかるデータ収集・分析システムにおけるDEP上に格納されるセンサ情報に関するデータを4次データといい、4次データのデータベース構造を4次テーブルという。4次テーブルでは、3次テーブルのセンサ値が単位変換され、また同じ意味を持つデータにまとめて整理されている点に特徴がある。これにより、異種センサから収集したデータの集合体であっても、これらデータの集合体を横断的に検索することが可能となる。
なお、この「横断的検索」は、「串刺し検索」ともいうが、本願においては横断的検索と呼ぶこととする。
【0029】
[時空認証(登録商標。以下、同じ)]
時空情報を用いた認証技術をいう。時空認証は、数学的、暗号学的に証明しうる事実をマークルツリー構造で管理し、改ざん不可能な状態を保ちながら時間/空間/責任者/確からしさ等を事後検証できるように作動する分散認証技法である。時空認証では、データの取得時に中央機関による認証行為を行うアーキテクチャを採用していない。
なお、時空認証を行うゲートウェイを「時空認証ゲートウェイ」、「時空認証ゲートウェイサーバ」、あるいは、単に「ゲートウェイサーバ」ともいう。
【0030】
[iPNT]
iPNTとは、「Indoor Position, Navigation, Timing」の略称であり、GNSS互換信号を用いて、屋内空間に高精度な時刻、タイミング、位置座標、メッセージ情報を放送して高精度時刻同期を実現する仕組みをいう。
具体的には、上空のGNSS信号を受信したTAS(Time and Authentication Service)装置で独自の時刻メッセージを生成し、そのメッセージを既存のTV共視聴システムなどの伝送経路を利用して、建物内に放送として配信するなどがある。ここで、GPS信号(iPNT信号)を送信したい任意の場所にiPNT送信機を設置して、IMESS同様にiPNT信号(GNSS信号)を送信する。そのiPNTを受信したGNSS受信機では、位置情報やメッセージを読み取ると同時に時刻メッセージを読みとることで、高精度な同期信号(1PPS)を出力できることとなる。
【0031】
[IMES]
IMESとは、「Indoor Messaging System」の略称であり、IMES信号は、GNSS信号を補完するための疑似的な信号である。
【0032】
(本発明の基本概念)
本発明の理解のために、まず、本発明の基本概念について説明する。本発明の目的は、あらゆるセンサデータに「時間・空間・確からしさ・データの責任者・追跡性」を付与したうえで、数学的・暗号学的に改ざん不能な情報として保管すると共に、これら情報の横断的検索性を持たせたデジタルトラスト証跡基盤(クロックチェーン(登録商標。以下、同じ))を提供することである。
【0033】
ここで、クロックチェーンにおける「情報の横断的検索性」は、さらに具体的には次のような機能的性質を有している。
(1)時間と空間の情報を検索条件として、複数の発信者によるデータを一元的に検索できる(時空検索)。
(2)上記(1)の時空検索に加え、データの「意味」を検索条件として、複数の発信元から送信されてきたデータを一元的に検索できる(セマンティクス検索)。
(3)上記(1)及び(2)の検索結果について、データの単位を統合して管理することができる。
(4)上記(1)~(3)のいずれにおいても、「時間」「空間」「確からしさ」及び、「データの責任者」を事後検証でき、かつ、それらの証跡を辿ること、すなわち、それらに対する「追跡可能性」を有する。
【0034】
また、クロックチェーンを実現するための基本的な仕組みは、大別して次のようなものである((a)~(h))。
(a)データの発生源からデータを収集してくる仕組み(データコレクタ)。データコレクタの具体的デバイスとしては、シーケンサ、デジタコ、RFID、バーコードリーダー、ドキュメント(リポジトリ(スマホ、スキャナ、NAS))がある。
(b)上記(a)のデータを集約する仕組み(時空認証ゲートウェイ)。
(c)上記(b)のデータスキーマを定義する仕組み。
(d)クロックチェーンのネットワークに当該データを送信する仕組み。
(e)送信されたデータを改ざん不可能な状態で保管し、ID化する仕組み。
(f)上記(e)のIDをブロックチェーンに書き込み、証跡化する仕組み。必要に応じてサイドチェーンが採用される。
(g)上記(f)のデータを時空検索および、セマンティクス検索を可能化し、単位を統合する仕組み。
(h)ダウンロードまたはAPIを通じて上記(f)の検索結果を取得可能にする仕組み(アクセスコントロール機能を含む。なお、アクセスコントロールは、情報の発生源の責任者が自ら設定可能)。
【0035】
(本発明の活用分野等)
本発明にかかるデータ収集・分析システム等によれば、荷物のトレーサビリティや無人授受(所有者移転)、CO2排出量の算出において一定の成果が得られるほか、物流サプライチェーン(情報共有・取引)、交通、インフラ維持管理(保守データ)、工場・製造(予知保全データ・サプライ情報)、不動産(評価データ)、医療・介護(広域にわたる移動)、農業、漁業等、様々な方面へのシステム等展開が期待できる。
【0036】
(本発明の基本原理、課題の解決手段の要点)
まず、本発明にかかるデータ収集・分析システム等においては、複数センサの時刻同期を精密に行うために、センサから収録したデータを各現場に設置されたゲートウェイに通過させ、このゲートウェイ上でタイムスタンプを付与する。なお、一実施形態において、ゲートウェイはGPS受信機をもち、人工衛星に搭載された原子時計と同期することで、世界中どこでもマイクロ秒以下の精度で時刻同期することができる。
【0037】
また、複数ベンダが製造した多種の規格が異なるセンサから収集したデータに対して横断的検索を可能にするためには、データスキーマと各データベーステーブルを用いる。本発明はこれに限定されるものではないが、一実施形態において、ゲートウェイから送信されたデータは、クロックチェーンのクラウドサービスで受信され、クラウドサービス上でデータの分析が行われる。
そして、データの受信時刻とタイムスタンプ時刻、電子署名の検証結果を格納する「1次テーブル」、データを個別のセンサデータに分割した「2次テーブル」、個別のセンサデータを個別のセンサ値に分割した「3次テーブル」、多種のセンサから収集された同質のデータごとに単位を揃えて検索可能に構成された「4次テーブル」を作成する。最終的には、この4次テーブルに対する検索を行うことで、多種多様なデータに対する横断的検索が可能になる。また、各テーブルは親子関係をもち、その関連を辿ることができる(証跡化)。例えば、「検索した4次テーブルのデータに対する電子署名の検証を1次テーブルから得る」といったことも可能となる。
【0038】
複数のプレイヤー間の相互信頼の問題に関しては、電子署名とブロックチェーン技術を用いることで解決する(必要に応じて、サイドチェーンが採用される。以下、同様)。ゲートウェイは、データに対してタイムスタンプを付与すると同時に電子署名も付与する。また、一実施形態において、電子署名は、偽造が困難なハードウェアセキュリティモジュールに格納されており、「確かにその機器をデータが通過した」ことを信頼性高く証明することができる。さらに、データはブロックチェーンのリンク構造の形でサーバに送信されるため、データの偽造がより困難になる。サーバに送信されたデータは電子署名の検証とリンク構造の検証が行われた上で、ブロックチェーンの合意形成の仕組みを使って複数サーバによる検証計算結果を統合する形でデータ検証が行われる。また、複数のプレイヤーは、自分自身で検証サーバを運用することもでき、データの利用者は、特定のプレイヤーによる検証ではなく、複数のプレイヤーの合意によって信頼ができると検証されたデータを利用することができる。
【0039】
以下、本発明にかかるデータ収集・分析システム等ついて、図面を参照しながら詳述する。
【実施例0040】
図1に、本発明の一実施形態にかかるデータ収集・分析システムのシステム構成を示す。
図1において、一実施形態にかかるデータ収集・分析システム100aは、1以上のIoTセンサ110と、時空認証ゲートウェイサーバ120と、4G/5G基地局130と、デジタルエビデンスプラットフォーム140とを含む。ここで、時空認証ゲートウェイサーバ120と、4G/5G基地局130との通信については、例示的にLPWA設備120dが採用される(但し、本発明の構成はこれに限定されない)。
IoTセンサ110は、ネットワークに接続され、モノ(Things)の測定データを収集及び/または管理するセンサであり、そのセンサの種類によってあらゆるIoTセンサデータを収集する。一実施形態においては、IoTセンサには、光センサ、イメージセンサ、圧力センサ、温度センサ、湿度センサ、加速度センサなどがあり、これらのセンサからの測定情報を収集する。また、必要に応じてGPS受信機等を搭載するなどして、単独で位置情報を収集させることもできる。
【0041】
また、
図1において、他の実施形態にかかるデータ収集・分析システム100bは、時空認証ゲートウェイサーバ120と4G/5G基地局130と、デジタルエビデンスプラットフォーム140とを含む。この場合、データ収集・分析システムは、1以上のIoTセンサ110を必須の構成要素としない。
また、
図1において図示しないさらに他の実施形態にかかるデータ収集・分析システムにおいては、LPWA設備120d、4G/5G基地局130に替えて、他の通信設備を採用することもできる。
【0042】
次に、IoTセンサについて具体的に説明する。一例として、ある建物のある位置に取り付けられたIoTセンサであれば、振動情報や温度情報などを収集することができる。また、IoTセンサがバイオメトリクスセンサであれば、そのセンサの取り付け位置の体温情報、血圧情報、または心拍情報を収集することができる。
本発明はこれに限定されるものではないが、
図1に一実施形態にかかるIoTセンサが取り付けられたモノ(Things)の例示を11a~11fを示す。11a~11fは、IoTセンサ110のバリエーションである。
【0043】
なお、本発明の一実施形態において、各IoTセンサには、個別のIDを割り当てることができ、各IoTセンサからのデータ送信時に発信元としてこのIDを送信させることができる。また、IoTセンサからのデータ送信には、WiFi,Bluetoothといった低消費電力無線方式や、いわゆるLPWA(Low Power Wide Area)を採用することができる。
【0044】
図1において、IoTセンサ110が収集したデータは、時空認証ゲートウェイサーバ120へ送信される。
【0045】
時空認証ゲートウェイサーバ120は、IoTセンサ110から送信されるデータメトリクスを受信するとともに、図中の測位衛星10a~10cから送信される測位信号(典型的には、位置情報+時刻情報)を受信する。
【0046】
本発明の一実施形態において、時空認証ゲートウェイサーバ120は、IoTセンサ110から受信したデータメトリクスと測位衛星10a~10cから受信した測位信号とに基づいて、時空認証スタンプ処理を行う。具体的には、IoTセンサ110から受信したデータメトリクスにそのデータ送信元の位置情報や発信時刻情報(一例として、受信時刻から推定する)を刻印する。
【0047】
また、本発明の一実施形態において、取得されたデータには、その種別に関係なく、識別ID、時刻情報、空間情報(位置樹報)が付加されることができる。これらの付加情報は、その妥当性が検証可能な形式を有する。
さらに、付加情報(時刻情報、空間情報)に加え、その正確さの度合いを表すアキュラシー情報も併せて記録される。このアキュラシー情報は、例えば、同時刻の周辺のプローブデータに基づいて後処理を行うことでさらに高精度のデータへ補正するために利用される。
【0048】
時空認証ゲートウェイサーバ120においてこの時空認証スタンプがなされることによって、IoTセンサ110から送信されるあらゆるデータメトリクスは、正確に認証された時空情報となる。これらのデータは、トランザクションデータとして、LPWA設備120d(一例として、LTE Cat.M1, Narrow Band-IoTなど)を介して4Gないし5Gの基地局130から外部へ発信される。本発明の一実施形態においては、デジタルエビデンスプラットフォーム140へ送信され、されに高次のデータ分析やデータ加工がなされる。
【0049】
本発明の一実施形態において、時空認証ゲートウェイサーバ120は、上記時空認証スタンプ処理のほかに、ブロックチェーン向けのトランザクション作成や署名、投稿処理などを行うことができる。
【0050】
一実施形態において、基地局130からは、時空認証ゲートウェイサーバ120で生成されたトランザクションデータがLTE閉域網を介してデジタルエビデンスプラットフォーム140へ送信され、ユーザ端末等に対するサービスが提供される。こうしたサービスの提供は、「デジタルエビデンスクラウドサービス」として位置付けることができる。
【0051】
デジタルエビデンスクラウドサービスの一形態としては、指定のエリア及び期間、ならびにデータタイプ等の検索設定条件から抽出したデータセットのサービス提供や、所定のフィルタリングを経たデータストリームのサービス提供といったサービス形態が挙げられる。
【0052】
なお、
図1に示したデータ収集・分析システムは、時空認証ゲートウェイサーバ120が固定的に設置されたタイプのものであるが、本発明はこれに限定されず、自動車等の移動体に設置されるタイプのものもある。これらについては、例えば、
図2Bを参照して後述する。
なお、本実施例で採用されている仮想ゲートウェイは、これに制限されるものではないが、一実施形態において次のような処理機能を有している。すわなち、データソースが、現場からリアルタイムに取得されるセンサデータ(ストリーム処理部の処理対象)ではなく、すでにセンシングされたセンサデータを蓄積する外部システムから取得されるデータである場合に、この外部システムから、デリミタ付きのレコードデータとしてエクスポートした上で、時刻情報、空間情報(位置情報)、および、アキュラシー情報を付加し、上記各号の条件を満たすデータ変換処理を行い、ゲートウェイの機器から発せられるものと同じフォーマットのデータを構成して、インターネット上にアップロードする。
なお、本実施例では、仮想ゲートウェイを採用しているが、センサデータをリアルタイムに処理するゲートウェイを採用することもできる。