(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062683
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】コンピュータ会話装置、コンピュータ会話方法およびコンピュータ会話装置用のプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/90 20190101AFI20240501BHJP
【FI】
G06F16/90 100
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170690
(22)【出願日】2022-10-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】597079083
【氏名又は名称】小川 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 正宏
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA01
5B175EA01
(57)【要約】
【課題】会話のボケやズレを低減し、会話の成立性を向上するコンピュータ会話装置を提供する。
【解決手段】ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置は、ユーザが入力文を入力可能な入力部と、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データを記憶する記憶部と、前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定する情報処理部と、前記情報処理部が決定した前記出力文を出力する出力部と、を備え、前記情報処理部は、前記キーワードの品詞が異なると、前記対応データの参照手順が異なることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置であって、
前記ユーザが入力文を入力可能な入力部と、
複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データを記憶する記憶部と、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定する情報処理部と、
前記情報処理部が決定した前記出力文を出力する出力部と、を備え、
前記情報処理部は、前記キーワードの品詞が異なると、前記対応データの参照手順が異なることを特徴とする、コンピュータ会話装置。
【請求項2】
前記情報処理部は、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが名詞以外の品詞である場合、前記入力文中の単語のうち前記キーワードのみを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、請求項1に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに続く格助詞と前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、請求項2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記キーワードが動詞である場合、前記キーワードを用いて、かつ、前記入力文と共に入力されて前記ユーザの価値判断を示す価値を用いずに、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが動詞以外の品詞である場合、前記価値と前記キーワードとを用いて、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項5】
前記対応データにおいては、前記複数の単語のうち一部または全部に対して価値がそれぞれ紐づけられており、
前記入力文と共に入力されて前記ユーザの価値判断を示す価値が、同じ前記入力文から決定された前記キーワードに前記対応データ中で紐づけられた価値と異なることが、連続する複数回の前記入力文の入力で発生した場合、前記情報処理部は、所定のサマリコメントを出力する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項6】
前記入力文と共に、前記ユーザの価値判断を示す価値と、前記価値の程度とが、前記ユーザによって前記入力部に入力され、
前記程度として同じ値が連続する複数回の前記入力文の入力で発生した場合、前記情報処理部は、所定のサマリコメントを出力する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項7】
前記情報処理部は、前記入力文中の単語間の関係に基づいて重要度を決定し、重要度が最も高い単語を第1キーワードとし、重要度が前記第1キーワードの次に高い単語を第2キーワードとし、前記複数の文から前記第1キーワードに紐づけられた前記出力文を表層文として選択すると共に、前記複数の文から前記第2キーワードに紐づけられた文を内心文として選択し、
前記出力部は、前記情報処理部により選択された前記表層文に加えて前記内心文を出力することを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項8】
ユーザと会話をするためのコンピュータ会話方法であって、
ユーザが入力した入力文を取得することと、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定することと、
決定した前記出力文を出力することと、を備え、
前記決定することにおいて、前記キーワードの品詞が異なると、前記対応データの参照手順が異なることを特徴とする、コンピュータ会話方法。
【請求項9】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置のためのプログラムであって、
前記ユーザによって入力された入力文を取得する取得部、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定し、決定した前記出力文を出力させる出力制御部として、前記コンピュータ会話装置を機能させ、
前記出力制御部は、前記キーワードの品詞が異なると、前記対応データの参照手順が異なることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と会話をするように構成されたコンピュータ会話装置、コンピュータ会話方法およびコンピュータ会話装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人々が言語で普段やり取りしている会話を、形式言語(プログラム)で実現しようとすれば、手段の言語内の世界に留まらず、時空間をはじめ実生活に関連する現実世界全体を利用可能な形でデータベース(例えば、後述の概念文辞書等)を準備しなければならない。人は、常識のベース上に言語世界を構築している。それをどうすれば、人と会話ができるコンピュータ会話装置が実現できるのか。それについて、発明者は、次の仮説を立て、その仮定に基づき実施(実験)を行い、結果(結論)を得た。
【0003】
<仮定>
発明者は、次の(A1)、(A2)、(A3)により、人と会話ができるコンピュータ会話装置が実現できると仮定した。
(A1)まず、あらゆる分野の現実世界を、独立要素に分けてそれを言語で記述してみる。これは数多く不可能なので、大枠の分類(大枠の要素、即ち「概念」)として、詳細な要素は、大枠の要素に従属させる。そのようにして、発明者は、概念分類表を作成した。概念分類表は、第1版では約300概念であったが、版を繰り返すうち、第20版では約500概念となった。会話に必要なあらゆる分野の現実世界を僅か約500概念で表すことが、ほぼできることは驚くべきことである。
(A2)次に、あらゆる分野の現実世界を、人間はどのように価値判断して認識しているのかをそれぞれに価値をつけ記述してみた。簡単のために、価値を独立要素毎に3種類に大別(+/=/―)する。
(A3)そして、発明者は、上記(A1)と(A2)を合わせて、価値付概念別の概念文辞書を作成した。第20版の概念文辞書は、約500概念×3=約1500の文より成るものである。以下、概念文辞書に登録された文を「概念文」という。
【0004】
<実施>
発明者は、上記の概念文辞書を用いて、人とコンピュータとが会話を行えるように構成したプログラムを作製し、それをコンピュータにインストールし、コンピュータ会話装置(以下、単に「会話装置」という)を作成した。この会話装置は、次の(B1)、(B2)、(B3)のステップにより人(即ち、「入力者」)とコンピュータとが会話を行うものである。
(B1)まず、入力者は現実世界のできごとを短文で会話装置に入力し、さらに、入力者はそのできごとをどのように捉えているかといった価値判断も併せて会話装置に入力する。
(B2)次に、会話装置は、入力された短文(即ち、「入力文」)に含まれる単語の中で重要な意味を有するキーワードと、入力された価値判断(すなわち、入力価値)に基づき、会話装置の記憶部に記憶させた名詞概念辞書を引き、概念文辞書に紐づけられた概念文を選択する。なお、名詞概念辞書も発明者が作成したものである。名詞概念辞書は、この発明の出願時において約60000語の名詞を登録したものであり、それぞれの名詞に価値(+/=/―)を付し、さらに、それぞれ名詞および価値判断と概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。
(B3)続いて、会話装置は、選択した概念文をユーザへの返事としてディスプレイに表示する。以下、ディスプレイに表示された文(即ち、概念文等)を「返事」または「出力文」という。
【0005】
<結果>
発明者は、上記の会話装置を複数の人に使用させることで、次のような結果を得た。
(C1)会話装置からは、入力者が入力する現実世界のさまざまな状況に追従した返事(即ち、「出力文」)が得られる。
(C2)会話装置からの返事には、概念文辞書等の作成時に価値判断を設定した作成者の人格がとくに反映される。
(C3)概念分類が外れれば、トンチンカンな返事になる。このことから、上記の仮定は正しいとの結論が得られた。
(C4)しかし、概念文辞書に記述された概念文が大枠過ぎて返事として会話のボケやズレが発生することがあった。このことは、会話として好ましくない。
(C5)また、概念文辞書に記述された概念文が大枠過ぎて抽象的な返事となり、具体性がなく面白くないこともあった。このことも、会話として好ましくない。
【0006】
発明者は、上記結果の(C5)を改善するため、特許文献1(特許4347618号公報)に記載のように、生活シーン辞書を作製した。生活シーン辞書は、概念文辞書に登録された概念文と同一の概念および価値に属する具体的な生活シーンを表した文を登録したものである。以下、生活シーン辞書に登録された文を「生活シーン文」という。この発明の出願時において、生活シーン辞書には、約1500の生活シーン文が登録されている。生活シーン文は、時空間や対象主体が異なっても違和感なく楽しめるので、同様の生活シーン文のグループから乱数で一つを選択する。これにより、組み合わせが毎回変わり同じ返事とはならない。このことは、会話として非常に好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の会話装置は、上記(C4)で述べたように、概念が大枠なので厳密ではなく、入力文に対する返事に会話のボケやズレが発生することがあった。すなわち、特許文献1に記載の会話装置は、基本作動は良いが、会話としての正答率が50%程度の出来であった。発明者は、特許文献1に記載の会話装置をWebに一時的に公開し、複数の人の判断を得ることとした。そこでは、広い分野での会話が違和感なく成立すれば絶賛され、入力文に対し出力文(返事)がお門違いの内容となれば酷評されていた。そこで、発明者は、特許文献1に記載の会話装置を精密化および拡張して有意義な道具とし、人の伴侶として役立てるべく今回の発明をなし得たものである。
【0009】
上記点に鑑みて本発明の目的は、会話のボケやズレを低減し、会話の成立性を向上するコンピュータ会話装置、コンピュータ会話方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の1つの観点によれば、ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置、ユーザと会話をするためのコンピュータ会話方法、コンピュータ会話装置のためのプログラムにおいて、ユーザによって入力された入力文に含まれる単語の中からキーワードが決定され、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文からキーワードに対応する文が選び出され、選び出された文に応じた出力文が出力される。そして、キーワードの品詞が異なると、対応データの参照手順が異なる。
【0011】
これにより、品詞間の特徴の違いに応じた参照手順により対応データを用いて出力文を作成することができる。したがって、会話のボケやズレが低減され、会話の成立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るコンピュータ会話装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】コンピュータ会話装置の入力画面を示す図である。
【
図3】コンピュータ会話装置の出力画面を示す図である。
【
図5】(a)名詞概念辞書の一部、および(b)格文法名詞概念辞書の一部を示す図である。
【
図7】(a)形容詞概念辞書の一部、(b)形容動詞概念辞書の一部、および(c)動詞文辞書の一部を示す図である。
【
図8】情報処理部が実行する処理のフローチャートである。
【
図10】名詞をキーワードとする場合の辞書選択の処理を示すフローチャートである。
【
図11】名詞以外をキーワードとする場合の辞書選択の処理を示すフローチャートである。
【
図12】サマリコメント用の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】サマリコメント用の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】サマリコメント用の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】サマリコメント用の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】コンピュータ会話装置の出力画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態によるコンピュータ会話装置(以下、「会話装置」という)は、人とコンピュータとが会話をするように構成されたものである。会話とは、話題縦横自在の、相手とのリアルタイムの複数回のやりとりにより、互いの感情や知識を知り、それを交換し互いに補って、共に高みに到達し納得するプロセスである。会話は、世界観や人格の交流ということができる。会話の単位のプロセスとしては、相手の話の流れの中からポイントを捉え、それを加工して、返すものである。
【0014】
ところが、従来の会話プログラム(例えば、音声アシスタントなど)では、テーマや質問事項がないと、どういう分野のどういう話を検索し展開すればよいのかが分からずに、返事をもらっても、そのまま停止せざるを得ない技術レベルにある。
【0015】
それに対し、本実施形態の会話装置は、話題は森羅万象なんでもよい。人に生じたできごとやそれに付随する気持ちから、概念や価値へ、更に、その概念や価値の枠内の具体的生活シーンへと会話を展開する。それを受けて人が発言をすれば(具体的には、ユーザが入力文を入力すれば)、会話装置は、その内容をまた新たなできごとと捉え、展開・応答して話が弾む。会話装置は、会話を、このような繰り返しでのやり取りとするものである。
【0016】
まず、会話装置の構成について説明する。
図1に示すように、会話装置は、入力部1、記憶部2、情報処理部3、出力部4などを備えている。入力部1は、例えばキーボード、マイクロフォン、タッチパネルなど、ユーザがキータッチ、発声、パネルタッチ等の入力操作を行える機器により構成されている。
図2は、会話装置の入力画面の一例を示している。ユーザは、キーボード操作などにより、入力文と、その入力文に付随するユーザの入力文に対する価値判断を表す価値と、その価値の程度を入力することが可能である。以下、ユーザによって入力された価値を、入力価値ともいう。なお、
図2では、価値として、嬉しい、困った、不定という、それぞれ、肯定的、否定的、中立的な、3段階の値が入力できるようになっている。また、価値判断の程度として、「とても」、「すこし」、「不定」という、それぞれ、比較的強い、比較的弱い、不明という、3段階の値が入力できるようになっている。なお、本実施形態では、価値の値として3つが例示されているが、他の例として、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、程度の値として3つが例示されているが、他の例として、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。あるいは、価値という変数は設けられなくてもよい。また、程度という変数は設けられなくてもよい。
【0017】
図1に戻り、記憶部2は、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリなどの記憶媒体により構成されている。記憶部は、非遷移的実体的記憶媒体である。記憶部2には、
図4~
図7に示す概念文辞書、品詞概念辞書、動詞文辞書が記憶されている。また記憶部には、後述する生活シーン辞書、相槌文辞書、概念対応テーブル、コメント辞書が記憶されている。これら記憶部に記録されたデータは、全体として、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データの一例に相当する。なお、品詞概念辞書としては、慣用句概念辞書、熟語概念辞書、格文法名詞概念辞書、名詞概念辞書、形容詞概念辞書、形容動詞概念辞書がある。また、記憶部は、情報処理部が実行するコンピュータ会話プログラムを記憶している。
【0018】
概念文辞書は、
図4に示すように、会話に用いられるように記載し且つ価値を付した複数の文が登録されたものである。詳細には、概念文辞書は、現実世界を複数(例えば、200以上2000以下、約500)の独立要素(即ち、概念)に分けて、それら独立要素の各々に複数の価値に応じた複数の文が登録されたものである。以下の説明では、概念文辞書に登録された文を「概念文」という。なお、記憶部2には概念文辞書が男性用と女性用の2種類が記憶されている。情報処理部は、ユーザの選択、ランダムな選択等により、ユーザの話し相手として男性と女性のどちらかを選択し、2種類の概念文辞書のうち選択された男女別に対応する方を用いる。概念文辞書に登録された概念文の各々には、概念番号と、+、=、-で示された価値が付されている。+、=、-は、それぞれ、上述した嬉しい、困った、不定に該当する。
【0019】
名詞概念辞書は、
図5の(a)に示すように、名詞と、概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。名詞概念辞書に登録された名詞は、それぞれの名詞に付された概念番号により、概念文辞書に記載された概念文と紐づけられている。また、名詞概念辞書において、一部または全部の名詞に対して価値が紐づけられている。
【0020】
格文法名詞概念辞書は、
図5の(b)に示すように、名詞に続く格助詞およびそれに続く述語により同定される名詞の意味と、名詞の意味に応じた文および概念番号が登録されたものである。以下の説明では、格文法名詞概念辞書に登録された文を「格文法概念文」という。例えば、
図5の例では、「ごはん」、「ゴハン」等の名詞の意味として、「食事・主食」、「食事・材料」の2つが紐づけられる。そして「食事・主食」には、上記名詞に続く助詞として「ガ」、「ヲ」、「ニ」が紐づけられ、それら助詞のうち、例えば「ガ」に続く述語としては「余る」、「残る」、「足りる」等が紐づけられる。更に「食事・主食」には、概念番号として△×07が、格文法概念文として「おいしいご飯は、それだけでも満足なの」が紐づけられる。また、「食事・材料」には、上記名詞に続く助詞として「ガ」、「ヲ」、「ニ」が登録され、それら助詞のうち、例えば「ヲ」に続く述語として「食べる」、「ほおばる」、「かじる」等が登録される。更に「食事・材料」には、概念番号として△×14が、格文法概念文として「おいしいご飯は、それだけでも満足なの」が紐づけられる。また、格文法名詞概念辞書において、一部または全部の名詞に対して価値が紐づけられている。
【0021】
慣用句概念辞書は、
図6に示すように、慣用句と、概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。具体的には、慣用句辞書では、複数の慣用句の各々に、その慣用句を構成する主要な複数の(例えば2つの)単語が紐づけされている。複数の単語のうち1つは名詞で、他の1つは名詞以外の単語(例えば述語)である。また、複数の慣用句の各々に、その慣用句に対応する概念番号が紐づけされている。慣用句概念辞書に登録された慣用句は、それぞれの慣用句に付された概念番号により、概念文辞書に記載された概念文と紐づけられている。図示は省略するが、熟語概念辞書は、熟語と、概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。また、慣用句概念辞書において、一部または全部の慣用句に対して価値が紐づけられ、熟語概念辞書において、一部または全部の熟語に対して価値が紐づけられている。
【0022】
形容詞概念辞書は、
図7の(a)に示すように、形容詞と、概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。形容詞概念辞書に登録された形容詞は、それぞれの形容詞に付された概念番号により、概念文辞書に記載された概念文と紐づけられている。形容詞概念辞書において、一部または全部の形容詞に対して価値が紐づけられている。形容動詞概念辞書も、
図7の(b)に示すように、形容詞辞書と同様に、形容動詞と概念文辞書に記載された概念文とを紐づけたものである。形容動詞概念辞書において、一部または全部の形容動詞に対して価値が紐づけられている。動詞文辞書は、
図7の(c)に示すように、動詞と、動詞に応じた文が登録されたものである。
【0023】
不図示の生活シーン辞書では、概念文辞書に記載された複数の概念の各々について、その概念に属する1つまたは複数の生活シーンが規定されている。例えば、「ペット」という概念には家庭、自然という2つの生活シーンが規定される。そして、生活シーン辞書中においては、各生活シーンについて、その生活シーンに属する1つまたは複数の生活シーン因子が規定される。例えば、「家庭」という生活シーンには、子供、親、ペットという3つの生活シーン因子が規定される。そして、生活シーン辞書においては、各生活シーン因子について、価値毎に1つまたは複数の生活シーン文が規定される。生活シーン辞書の構成およびそれに基づいて後述の生活シーン文が作成される処理内容については、特許文献1に記載されたものと同じである。
【0024】
情報処理部3は、例えばCPU、MPUなどのプロセッサにより構成されている。情報処理部3は、入力文に含まれる単語の中から少なくとも1つをキーワードとして決定する。そして、情報処理部3は、名詞概念辞書、格文法名詞概念辞書、形容詞概念辞書、形容動詞概念辞書、慣用句概念辞書、熟語概念辞書および動詞文辞書の少なくとも1つと入力価値とにより、概念文辞書、格文法名詞概念辞書および動詞辞書の少なくとも1つから概念文、格文法概念文などを選択する。また、情報処理部3は、生活シーン辞書から生活シーン文を選択することも可能である。そして、情報処理部3は、それらの文を、出力部4を介してユーザに表示する。
【0025】
出力部4は、例えばディスプレイ、スピーカ、プロジェクタなど、ユーザに情報を表示可能な機器により構成されている。出力部4は、情報処理部3により選択された文などを、画像および音声のうち一方または両方により出力する。
【0026】
次に、会話装置の作動について説明する。
図2は、ユーザが会話装置と会話する際に表示される入力画面の一例を示したものである。入力文として、前段のマスに格助詞より前の文字が入力可能であり、格助詞である「が」、「は」、「を」、「に」のいずれか1つが選択可能であり、後段のマスに格助詞より後の文字が入力可能である。また、入力文に付随するユーザの価値判断を示す価値として、「嬉しい」「困った」「不定」のいずれか1つを選択できるようになっている。なお、このような格助詞で入力文を分けるような入力方法ではなく、入力文全体をまとめて入力する方法が採用されてもよい。
【0027】
上記の情報をユーザがコンピュータに入力すると、情報処理部は、入力文に含まれる単語の中から少なくとも1つをキーワードとして決定する処理を実行する。この処理を
図8のフローチャートに示す。情報処理部は、上述のコンピュータ会話プログラムを実行することで、
図8の処理を実現する。なお、以下の説明および図では、ステップを単に「S」と表記する。
【0028】
図8に示すように、情報処理部は、まずS100で、上記のように入力された入力文、価値、および程度を取得する。続いてS105で、入力された程度に対応する相槌文を出力部4に出力させる。なお、S100からS105への遷移は、ユーザが「はい・つぎ」のボタンを押すことで、実行されてもよい。出力される相槌文は、
図3の例では「まずいよ。」、「言えてる。」、「えーっ!」の3つが該当する。程度の各々の値にどの相槌文が対応するかは、記憶部にあらかじめ記録されている相槌文辞書に規定されている。程度の値の各々に複数の相槌文が対応していてもよい。その場合、情報処理部は、入力された程度に対応する複数の相槌文のうち1つを(例えばランダムに)選択して出力文としてもよい。また例えば、「不定」に対応する複数の相槌文と、「少し」に対応する複数の相槌文とが同じであってもよい。
【0029】
また、S100からS105への遷移は、ユーザが「はい・つぎ」のボタンを押すことで、実行される。S110では、形態素解析を実行し、入力文に含まれる品詞を判別する。次に、S115で掛り解析を実行し、句・文節・単語間の修飾関係などの文構造を解析する。続いて、S120で入力文中における単語の語順を調査し、S125で文中における同一単語の重複を調査する。
【0030】
そして、S125で、入力文中における単語の語順、同一単語の重複、および品詞の種類などに応じて、入力文に含まれる各単語の得点に対して加点、減点を行う。ここで、単語の得点は、入力文中のその単語の重要度が高いほど高くなる指標である。例えば、文末に近い単語ほど加点量を高くしたり、重複のある単語は無い単語に比べて加点量を高くする。また、各名詞に対しては、それ(またはそれを含む文節)を掛り先とする形容詞の数が多いほど、加点量が増大する。また、各動詞に対しては、それ(またはそれを含む文節)を掛り先とする副詞の数が多いほど、加点量が増大する。また、品詞については、形容詞、形容動詞に対する加点量が名詞に対する加点量より大きくてもよい。また、名詞においても、名詞に続く助詞の種類に応じて、加点量が変化してもよい。例えば、名詞に続く助詞が「を」、「は」、「が」の場合に比べて、名詞に続く助詞がそれら以外のものでる場合に比べて、当該名詞に対する加点量が少なくなってもよい。また、上述したどの辞書にもキーワードとして記載のない単語(すなわち未知語)には、最も高い加点量が付与されてもよい。なお、未知語がキーワードに選ばれた場合は、後述する出力文は、あらかじめ定められた例外文(例えば「意味不明です」)となる。
【0031】
続いてS135で、あらかじめ定められた特殊な単語に関して加減点を行う。例えば、意味が強いとあらかじめ定められた単語(例えば「正月」)には所定の点数を加算し、意味の弱い単語には所定の点数を減算する。さらに、S140で特定品詞の繰り返し数による加点を行う。例えば、同じ品詞(例:形容詞)の単語が複数個連続している場合、それら単語に所定の点数を加算する。
【0032】
続くS145で、入力文中の単語ごとに上述の加点、減点を総合計する。そして、S150で入力文中の単語の中で最も得点の高い単語をキーワードに決定する。なお、図示は省略するが、情報処理部は、会話を開始してユーザが1回目に入力した入力文に含まれる単語の中から少なくとも1つをキーワードとして選択する際、ユーザの気持ちが含まれる形容詞、形容動詞、動詞の得点を高くしてもよい。一方、情報処理部は、会話を開始してユーザが複数回目に入力した入力文に含まれる単語の中から少なくとも1つをキーワードとして選択する際、入力文に含まれる名詞の得点を高くしてもよい。ただし、同じ返事が返らないように、当該複数回目より前(例えば前回)に入力された入力文からキーワードとして選ばれた名詞については、当該名詞の得点を逆に低くしてもよい。ユーザの気持ちが含まれる形容詞、形容動詞、動詞のリストは、あらかじめ定められて記憶媒体に記録されている。
図3の事例では、キーワードとして、最初の入力文からは動詞の「食べる」が決定され、2番目の入力文からは名詞の「メニュー」が決定され、3番目の入力文からは名詞の「ご飯」が決定される。
【0033】
続くS155では、決定したキーワードおよび入力された価値に基づき、概念文、格文法概念文等の出力文を選択して出力部に出力させる。具体的には、情報処理部は、キーワードの品詞に応じて、
図9の表に示すような対応データの参照手順で、出力文を選択する。
図3では、ユーザが入力した入力文を画面左側に示し、会話装置からの出力文を画面右側に示している。
図3に示された出力文のうち、「えぇ、メニュー。シンプルなものから複雑なものまで、いろいろなパターンや構成があるねえ。」、「ご飯は、おいしいご飯は、それだけでも満足なのにね。」は概念文の一例である。「「食べる」ではこうなります:ムシャムシャとなのね。・・」は動詞文辞書から選択された文の一例である。
【0034】
すなわち、キーワードが名詞の場合、慣用句概念辞書、熟語概念辞書、格文法名詞概念辞書、名詞概念辞書のうちいずれかを選択的に参照するという手順を採用する。。選択手法については後述する。また、キーワードが形容詞の場合、形容詞概念辞書を参照するという手順を採用する。そして、キーワードとなる形容詞に付された概念番号を参照し、その概念番号に紐づけられた概念文辞書の概念文を選定する。
【0035】
キーワードが形容動詞の場合、形容動詞概念辞書を参照するという手順を採用する。。そして、キーワードとなる形容動詞に付された概念番号を参照し、その概念番号に紐づけられた概念文辞書の概念文を選定する。例えば、キーワードの「穏やか」と入力された価値「-」に紐づけられた概念文として、
図4、
図7の(b)に示すように「雰囲気で判断すると、いつか間違います。」が出力される。
【0036】
キーワードが動詞の場合、動詞文辞書を参照するという手順を採用する。そして、キーワードとなる動詞に応じた文を動詞文辞書から選定する。例えば、
図3の1番目の入力文に対しては、キーワードの「食べる」と入力された価値「-」に紐付けられた文として、
図7の(c)のように「むしゃむしゃとなのね・・。」が決定され、出力される。
【0037】
キーワードが助動詞の場合、入力文中の該当箇所を表示し、文を作成する。この文の作成方法については後述する。なお、情報処理部は、S110からS155の直前まで、出力部に動画等の画像を表示させてもよい。これにより、概念文の出力に時間がかかってもユーザの不満感が軽減される。なお、キーワードが助動詞の場合は、得点が2番目の単語も追加のキーワードとして決定してもよい。その場合、それら2つのキーワードにそれぞれ対応する2つの出力文が生成される。
【0038】
S155に続くS160では、情報処理部は、品詞に応じて生活シーン文を出力する。具体的には、
図9に示すように、キーワードが名詞の場合および形容動詞の場合に、生活シーン文を出力し、キーワードが形容詞、動詞、助動詞の場合に生活シーン文を出力しない。なお、生活シーン文も出力文の一例である。
【0039】
生活シーン文を出力する場合、情報処理部は、キーワード(例えば子猫)からそれに対応する概念(例えばペット)を、不図示の概念対応テーブルに基づいて特定する。概念対応テーブルは、複数のキーワードと複数の概念の対応関係を規定し、記憶部に記録されている。そして、特定した概念から、上述の生活シーン辞書の規定に従って、生活シーンおよび生活シーン因子を特定する。例えば、特定した概念に対応する1つまたは複数の生活シーンからランダムに1つを選択し、選択した1つの生活シーンに対応する1つまたは複数の生活シーン因子からランダムに1つを選択する。そして、選択した1つの生活シーン因子に対応する複数の生活シーン文のうち、S100で取得した価値と同じ値に対応する生活シーン文を特定する。そして特定した生活シーン文を出力部に出力させる。
図3に示された出力文のうち、「『メニュー』・・まあねえ、さすがに、もう後がなさそうです・・・。」、「『ご飯』・・まあねえ、お昼のコンビニで、自分が一体何を食べたいか分からないと呟いていたOLにはすっかり共感しました。」は生活シーン文の一例である。なお、生活シーン文と価値との対応関係は、特許文献1と同様、概念文と価値との対応関係と同様である。
【0040】
次に、情報処理部がS155でキーワードの品詞に応じて概念文を選択する方法について、より詳細に説明する。
図10は、キーワードが名詞の場合に情報処理部がS155で実行する処理を示す。この処理では、まずS503で、キーワードが慣用句概念辞書のうち1つの慣用句にヒットするか否かを判定する。慣用句にヒットするとは、慣用句概念辞書で当該慣用句に紐づけられた複数の単語のうち名詞がキーワードと一致し、かつ、当該複数の単語のうち他の単語のすべてが入力文に含まれる場合をいう。キーワードが慣用句にヒットする場合、S504に進み、ヒットした慣用句の概念番号と入力された価値を慣用句概念辞書に基づいて決定するという参照手順を採用する。続いてS505に進み、概念文辞書を参照し、概念番号と入力された価値に紐づけられた概念文を決定する。
【0041】
一方、S503で、キーワードが慣用句概念辞書に登録されているどの慣用句にもヒットしない場合、S506に進む。S506で、キーワードが熟語概念辞書に登録されている単語に該当するか否か検索する。キーワードが熟語概念辞書に登録されている単語に該当する場合、S504に進み、熟語概念辞書においてキーワードに紐づけられた概念番号を決定するというという参照手順を採用する。続いて、S505に進み、概念文辞書を参照し、概念番号と入力された価値に紐づけられた概念文を決定する。
【0042】
S506で、キーワードが熟語概念辞書に登録されている単語に該当しない場合、S507に進む。S507で、キーワードが格文法名詞概念辞書に登録されているいずれかの名詞にヒットするか否か判定する。ここで、ヒットするとは、キーワードが当該名詞と一致し、かつ、格文法名詞概念辞書中で当該名詞に続く格助詞と述語の組と、入力文中でキーワードに続く格助詞と述語の組とが一致する場合をいう。キーワードが格文法名詞概念辞書に登録されているいずれか1つの単語にヒットする場合、S508に進み、当該1つの単語の概念番号または格文法概念文を格文法名詞概念辞書に基づいて選択する。
【0043】
具体的には、キーワードである名詞に続く格助詞が主格に付く助詞(例えば「ガ」、「ハ」)である場合は、ヒットした名詞およびそれに続く格助詞、述語の組に紐づけられている格文法概念文を選択する。また、キーワードである名詞に続く格助詞が主格以外に付く助詞(例えば「ヲ」、「ニ」)である場合は、ヒットした名詞、格助詞、述語の組に紐づけられている概念番号を選択する。なお、
図5(b)に示したように、格文法名詞概念辞書中で、同じ名詞、助詞、述語の組が異なる2つ以上の概念番号に割り当てられている場合がある。そのような場合、情報処理部は、それら2つの概念番号のうちどちらか1つを選択する。選択の手法はどのようなものであってもよいが、例えば、ランダムに選択されてもよい。
【0044】
続いて情報処理部は、S509に進み、直前のステップで概念番号が選択された場合は、概念文辞書を参照し、概念番号と入力された価値に紐づけられた概念文を決定する。これらの処理により、S508で選ばれた格文法概念文またはS509で決定された概念文が、出力文の候補として決まる。さらに情報処理部は、S510に進み、入力された価値および選択された男女別に合わせて出力文の候補の語尾を、あらかじめ定められた価値別および男女別の語尾の設定に従って、調整し、調整後の文を出力文として決定する。
【0045】
S507で、キーワードが格文法名詞概念辞書に登録されている単語に該当しない場合、S511に進む。S511で、キーワードが名詞概念辞書に登録されている単語に該当するか否かを判定する。キーワードが当該単語に該当する場合、S512に進み、当該単語の概念番号を名詞概念辞書に基づいて決定する。続いて、S513に進み、概念文辞書を参照し、概念番号と入力された価値に紐づけられた概念文を決定する。
【0046】
S505、S510、S513の後は、S515で、選ばれた概念文を出力部に出力させる。このように、格文法名詞概念辞書は、名詞概念辞書に対して優先使用される。その理由は、格文法名詞概念辞書は、名詞、格助詞、述語の組み合わせが考慮されているので、入力文に対する出力文のズレを無くすことができるからである。例えば、
図3の第3の入力文の様にキーワードが「ご飯」で、それに続く格助詞および述語が「は」、「やってる」の場合、格文法名詞概念辞書では
図5の(b)のように「ご飯」に続く格助詞「は」およびそれに続く「やってる」にヒットし、「おいしいご飯はそれだけでも満足なのにね」といった格文法概念文が決定される。一方、名詞概念辞書では「ご飯」の上位概念の「食事」と価値「-」での応答となり、例えば
図4、
図5の(a)のように「気兼ねする相手との食事なんて、お金をもらってもヤダ」といったように会話がズレるからである。また、格文法名詞概念辞書よりも熟語概念辞書が優先され、熟語概念辞書よりも慣用句概念辞書が優先される。
【0047】
図11は、キーワードが名詞以外の場合に情報処理部がS155で実行する処理を示す。この処理では、キーワードが動詞の場合、S605で動詞文辞書を参照し、キーワードとなる動詞と入力された価値から文を選定する。
図3の最初の入力文の事例では、キーワードの「食べる」と価値「-」に紐付けられた文として「むしゃむしゃとなのね・・。」が決定され、出力される。
【0048】
キーワードが形容詞の場合、S607で形容詞概念辞書を参照し、キーワードとなる形容詞に付された概念番号を決定する。そして、S609で、概念文辞書から、概念番号に紐づけられた概念文を決定する。例えば、キーワードの「暑い」と価値「=」に紐づけられた概念文として、
図4、
図7に示すように「日本もだんだん熱帯になってるんだって。」が出力される。
【0049】
S611でキーワードが形容動詞の場合、S612で形容動詞概念辞書を参照し、キーワードとなる形容動詞に付された概念番号を決定する。そして、S609で、概念文辞書から、概念番号に紐づけられた概念文を決定する。
【0050】
キーワードが助動詞等の特定語の場合、S615で、入力文の一部を流用して出力文を作成する。特定語とは、否定の形容詞(例えば「ない」)、希望を示す助動詞(例えば「たい」)、命令を示す単語(例えば「べし」)、伝聞・推測を示す助詞または形容詞(例えば「ようだ」、「らしい」)、疑問を示す助詞(例えば「か」)等である。具体的には、入力文から、当該特定語を含む文節およびそれに掛かる文節を抽出し、それを出力分に含める。このようにすることで、入力文で意図された状況をユーザと共有する出力文を作成することができる。このようにするのは、名詞、形容詞、形容動詞、動詞等の他の品詞に比べて、助動詞は、意味を有する度合いが少ないからである。例えば、動詞は動きそのものについては、部分的意味のようなものがあるが、助動詞には意図程度しかない。
【0051】
そしてS616で、特定語の概念に対するコメントを出力文に含める。含めるコメントは、特定語によって異なる。特定語とコメントの対応関係は、あらかじめ記憶部のコメント辞書に記録されている。例えば、特定語「たい」に対応するコメントは「へ~ぇ、意思・希望ですか。」であり、特定語「ようだ」に対応するコメントは「え~っとすみません、疑問・質問には答えられないのです・・。」である。このようにする理由は、会話では、詳細の議論は避け、気持ちが重視されるからである。このようにすることで、入力文を受け流すような表現が出力文に含まれる。
【0052】
S605、S609、S616の後は、S618に進み、作成された出力文を出力部に出力させる。以上説明したように、第1実施形態の会話装置は、ユーザの意向や気持ちや意向を汲んだ返事を選択し、出力部から出力することができる。その結果、この会話装置は、会話のボケやズレを低減し、会話の成立性を向上でき、人の伴侶として役立つものとなる。
【0053】
なお、本実施形態では、
図8のS100~S160の処理は、1回のみでなく、3回以上の所定回数繰り返される。すなわち、入力文が入力され、その入力文に対応する出力文が出力されるというサイクルが繰り返される。したがって、ユーザは、初回に入力文を入力するとき以外は、過去の出力文に対して更に返事をする感覚で新たな入力文を入力する場合がある。このようなユーザの行動に対応するため、情報処理部は、その所定回数の入力文と出力文の繰り返しにおける、過去複数回の入力文に付随して入力された複数の価値に基づいて、サマリコメントを出力してもよい。サマリコメントも出力文に該当する。このようにすることで、ユーザの内心に沿った応答ができる可能性が高くなる。また、応答の多様性が向上して起伏に富んだ会話となるので、ユーザに「返事は直前の入力文中の単語から機械的に作っているだけでは?」と思われる可能性が低減される。
【0054】
具体的には、情報処理部は、例えば、
図12に示すように、直近の連続する2個の入力文と共に入力された価値の値が+の連続である場合は、S710からS715に進み、「ますますいいじゃないですか。」というサマリコメントを作成して、出力装置に出力させる。また例えば、直近の2個の入力文と共に入力された価値の値が-の連続である場合は、S710からS715に進み、「気落ちするけれど大丈夫ですか。」というサマリコメントを作成して、出力装置に出力させる。
【0055】
また、直近の連続する複数回の程度の値に応じて、サマリコメントを変化させてもよい。例えば、
図13に示すように、「とても」が直近の連続する2回続いたときに、S720からS725に進み、サマリコメントを出力し、それ以外の場合には、S720からS725をバイパスし、サマリコメントを出力しないようになっていてもよい。この際、直近の連続する2回において、入力された価値は同じであっても違っていてもよい。例えば、直近の連続する2回の入力文が「車は便利だ」、「自転車は危ない」であり、最初の文と共に入力された価値および程度が「とても」と「+」であり、二番目の文と共に入力された価値および程度が「とても」と「-」であったとする。その場合、情報処理部は、あらかじめ程度として「とても」が連続した場合用として記憶部に記録された所定のサマリコメントを出力する。
【0056】
また、ある回に入力文および価値(すなわち、入力価値)が入力されたとき、当該入力文から選ばれたキーワードに辞書中で紐づけられた価値と、当該入力価値とが、異なる場合がある。このように、キーワードに辞書中で紐づけられた価値と、入力価値とが異なることが、直近の連続する複数回の入力文の入力で発生した場合、
図14に示すように、情報処理部は、S730からS735に進み、「大変のようだけど、ガンバッテますねえ。」とか「どうしたのですか?どうもおかしいですね。」のようなサマリコメント文を出力してもよい。このようなサマリコメント文は、入力者の気持ちと世界に更に一歩踏み込んだサマリコメントである。なお、ある回の入力において、キーワードに辞書中で紐づけられた価値と、入力価値とのうち、どちらか一方が否定的な意味で使われているなら、当該キーワードに辞書中で紐づけられた価値と、当該入力価値の値とが実際には異なっていても、情報処理部は異なっていないと判定してもよい。
【0057】
ここで、キーワードに辞書中で紐づけられた価値とは、名詞概念辞書、格文法名詞概念辞書、熟語概念辞書、形容詞概念辞書、形容動詞概念辞書のいずれかが用いられた場合は、用いられた辞書で当該キーワードに紐づけられた価値である。また、キーワードに辞書中で紐づけられた価値とは、慣用句概念辞書が用いられた場合は、慣用句概念辞書から選ばれた慣用句に紐づけられた価値である。
【0058】
また例えば、
図15に示すように、直近の連続する複数回の入力文から選ばれたキーワード間で所定の関連性がある場合には、情報処理部は、その関連性に応じたサマリコメントを作成して出力させてもよい。例えば、直近の連続する3回のキーワードが、季節に関する用語としてあらかじめ記憶部にリストされた「春」、「夏」、「秋」、「冬」のうち2種類以上を含んでいたら、S740からS745に進み、そのリストにあらかじめ記憶部で紐づけられた「季節のリズム感はいいものですねえ。」というサマリコメントを作成して出力させてもよい。また例えば、直近の連続する3回のキーワードが、家族に関する用語としてあらかじめ記憶部にリストされた「子供」、「父」、「母」のうち2種類以上を含んでいたら、S740からS745に進み、そのリストにあらかじめ記憶部で紐づけられた「やはり家族のことは気がかりですかねえ。」というサマリコメントを作成して出力させてもよい。また例えば、直近の連続する3回のキーワードが、乗り物に関する用語としてあらかじめ記憶部にリストされた「バス」、「電車」、「タクシー」、「自転車」のうち2種類以上を含んでいたら、S740からS745に進み、そのリスト中で上記3回のキーワードに含まれなかった用語にあらかじめ記憶部で紐づけられたサマリコメント(「自転車ではどうでしょうかねえ」)を作成して出力させてもよい。なお、これらのようなサマリコメントを作成するのは、直近の連続する複数回の入力価値が「=」の場合に限ってもよいし、限られなくてもよい。
【0059】
このような、
図12から
図15に示したサマリコメント用の処理は、例えば、
図8の処理のS160の後に実行されてもよいし、S160よりも前に実行されてもよい。また、
図12から
図15の処理は、上述のようにどれか1つだけ実行されてもよいし、2つ以上が組み合わされて実行されてもよい。
【0060】
[1]以上説明した通り、対応データに基づいて複数の文からキーワードに対応する文が選び出され、選び出された文に応じた出力文が出力される。そして、キーワードの品詞が異なると、対応データの参照手順が異なる。これにより、品詞間の特徴の違いに応じた参照手順により対応データを用いて出力文を作成することができる。したがって、会話のボケやズレが低減され、会話の成立性が向上する。そして、本実施形態においては、出力文常識的な入力文が与えられた場合、正答率が90%近くとなる。なお、正答率は、出力文に対して人が適切であると判断した率をいう。
【0061】
[2]また情報処理部は、キーワードが名詞である場合、入力文においてキーワードに対応する述語とキーワードとの組み合わせを用いて格文法名詞概念辞書を参照することで、概念文を決定する。そして、キーワードが形容詞、形容動詞、動詞である場合、入力文中の単語のうちキーワードのみを用いて対応データを参照することで、出力文を決定する。このように、名詞とそれ以外とで対応データの参照手順が異なるのは、独立して直接に意味を持つのは品詞のうちで名詞だけだからである。他の品詞は、単独で意味が限定できる可能性が名詞に比べて低いので、出力文の決定手順を厳密化しても結果が発散してしまう可能性が高い。それに対して、独立して直接に意味を持つ名詞の場合、格文法概念文を用いて、関連する他の単語との関係を用いて厳密化することができる。すなわち、格文法名詞概念辞書に登録された、より的確・限定的な文を使うことで、会話のボケやズレを低減できる。
【0062】
[3]また情報処理部は、キーワードが名詞である場合、入力文においてキーワードに続く格助詞とキーワードに対応する述語とキーワードとの組み合わせを用いて格文法名詞概念辞書を参照することで、出力文を決定する。このように、述語のみならず格助詞を用いることで、より精度が高まる。
【0063】
[4]また情報処理部は、キーワードが名詞、形容詞、または形容動詞である場合、キーワードと入力価値とを用いて、辞書を参照することで出力文を決定する。そして、キーワードが動詞である場合、ユーザが入力部に入力した情報のうちキーワードのみを用いて入力価値を用いず、動詞辞書を参照することで出力文を決定する。このようにするのは、動詞は、名詞、形容詞、形容動詞に比べて、意味を表す度合いが弱いからである。意味を表す度合いが弱い単語に無理に概念を当てはめてると、会話のボケやズレが発生する可能性が高くなってしまう。
【0064】
ここで、格文法名詞概念辞書と名詞概念辞書について比較する。まず、格文法名詞概念辞書は、狭い概念の範囲で詳しい陳述を行うために用いられるのに対し、名詞概念辞書は、広い範囲の概念で大枠を示すために用いられる。前者では、会話がボケる可能性が低く、微妙な微妙な概念差異の陳述が可能となる一方、会話のズレが発生する可能性が高くなる。後者では、大枠からの整理に役立つ一方、会話がボケる可能性が高くなる。
【0065】
次に、格文法名詞概念辞書に含まれる名詞の数は、名詞概念辞書に含まれる名詞の数より少ない。例えば、前者は後者の1/10以下である。前者は、1つの名詞に関する情報量が後者に対して多いため、データ量低減のため、後者に含まれる名詞のうち、常用される(すなわち、使用確率の高い)一部の名詞を含む。ただし、情報処理部の処理においては、一般の会話に対して前者が使われる場面数と後者が使われる場面数の比は、1/10より大きく、例えば1/5以上である。このような頻度で格文法名詞概念辞書が用いられることで、会話が適度に細かい展開となって、会話に変化がもたらされる。
【0066】
次に、情報処理部は、格文法名詞概念辞書を用いる場合、キーワードである名詞と格助詞と述語とのセットを使用して、比較的厳密に出力文を選択するのに対し、名詞概念辞書を用いる場合、キーワードである単語の第一義を用いて出力文を選択する。また、格文法名詞概念辞書を用いた場合は、主格に付く助詞および述語と共にキーワードが用いられる場合、格文法名詞概念辞書中の格文法概念文が、入力された価値とも選択された男女別とも無関係に、選択され、選択された格文法概念文の語尾が、入力された価値および選択された男女別に基づいて調整されて、出力文となる。これにより、用意するデータ量が多くなりがちな格文法名詞概念辞書の過度なデータ量の増大を抑えることができる。また、名詞概念辞書を用いた場合は、入力された価値および選択された男女別に対しては、概念文辞書において価値別、男女別に設けられた概念文を出力文とする。
【0067】
[5]また情報処理部は、入力文と共に入力された価値が、同じ入力文から決定されたキーワードに辞書中で紐づけられた価値と異なることが、連続する複数回の入力文の入力で発生した場合、所定のサマリコメントを出力する。入力文と共に入力された価値は、通常は、同じ入力文から決定されたキーワードに辞書中で紐づけられた価値と同じはずであるが、そうでない場合もあり得る。後者の場合は、例外的な場合としてサマリコメントを出力することで、会話のボケやズレが低減される。
【0068】
[6]また情報処理部は、程度として同じ値が連続する複数回の入力文の入力で発生した場合、所定のサマリコメントを出力する。このようにすることで、ユーザの感情の持続に応じた文を出力することができる。
【0069】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第1実施形態では、文のデータ構造である文法を活用して、概念文の適用仕分けや格文法による細分化した意味への追従、さらには文章意図の処理を行った。それに加え、本実施形態では、会話ベースである話者の意向や心のあり方について、第2キーワードを使った内心への対処が実現されている。
【0070】
具体的には、第1実施形態では、入力文中における単語の語順、同一単語の重複、および品詞の種類などに応じて各単語に得点を与え、入力文中の単語の中で最も得点の高い単語をキーワードに決定した。それに対し、第2実施形態では、得点が最も高い単語を第1キーワードに決定し、第1キーワードの次に得点が高い単語を第2キーワードに決定する。
【0071】
そして、情報処理部は、第1キーワードと入力価値に基づき、第1実施形態の
図8の処理と同様に、出力文を出力する。更に情報処理部は、第2キーワードと入力価値に基づき、第1実施形態の
図8の処理と同様に、出力文を出力する。以下の説明では、第1キーワードと入力価値に基づいて選択された出力文を「表層文」と呼び、第2キーワードと入力価値に基づいて選択された出力文を「内心文」と呼ぶ。
【0072】
例えば、
図12に示すように、ユーザが入力文として「うららちゃんの背が高くなり、喜美子を追い越した。」、程度を「=」、価値を「+」と入力したとする。この場合、情報処理部は、入力文中の各単語の中から第1キーワードと第2キーワードを決定する。ここでは、第1キーワードが形容詞の「高い」に、第2キーワードが「背」に決定されたとする。なお、
図12は、出力部による画面表示の内容を表している。ただし、点線枠で囲まれた箇所は、画面表示の一部ではなく、入力文と出力文の関係を示す情報を便宜的に示すものである。そして、点線枠内では、程度の「とても」、「不定」、「少し」が、価値の左側に、スラッシュ記号「/」で隔てられて、それぞれ、「+」、「=」、「-」のいずれかで表されている。
【0073】
情報処理部は、第1キーワードの「高い」に紐づけられ、入力価値に合致した文を形容詞概念文辞書、概念文辞書から選択し、表層文として表示すると共に、第2キーワードの「背」に紐づけられ、入力価値に合致した文を例えば名詞概念辞書、概念文辞書から選択し、内心文として表示する。具体的に、表層文として「おぅ、高い。なるほど、そういう位置関係/レベルですか。」が表示され、内心文として「おう、かっちょいいねえ。」が表示されている。なお、内心文は、他の出力文よりも強調して(例えば太字のゴシック体で)表示してもよい。
【0074】
なお、
図12の点線枠内に例示するように、概念文辞書には、「背」に紐づけられた文として、価値+、=、-3つの文がそれぞれ登録されている。例えば、価値+の文は「おう、かっちょいいねえ。」である。価値=の文は「変えられる部分も無いではないが。」である。価値-の文は「まあ、本人が望んでなっている訳ではないので。」である。この3つの文の中で、「おう、かっちょいいねえ。」は、入力文「うららちゃん・・・追い越した。」と入力された価値「+」に合致し、話者の意向や心のあり方に応答した内心文となっている。
図12に示された他の2つの入力文「まだ、中学一年生…」、「まあ、争わなくても…」についても、同様の手順で、それぞれ第2キーワード「中学」、「行動」と入力価値とから、「ともかく、教育は…」、「やってしまった事は、…」の内心文が選ばれて出力される。
【0075】
さらに、第2実施形態の会話装置の入力部には、内心文を表示させるためにユーザが操作可能な「内心ボタン」を設けている。第1キーワードが名詞(但し慣用句、熟語を除く)、形容動詞、動詞、助動詞である場合、出力部は、表層文を出力した後に内心ボタンが操作されると、上述のような処理により内心文が出力される。一方、第1キーワードが形容詞である場合、出力部は、表層文を出力すると共に内心文も出力する。
【0076】
なお、第1キーワードが形容詞である場合、出力部が表層文を出力すると共に内心文も出力した後、ユーザが内心ボタンを操作することも考えられる。その場合、情報処理部は、出力部が直前に出力した表層文中の各単語に得点を与え、各単語に与えられた得点に応じてキーワードを決定し、そのキーワードと所定の価値(例えば「=」)に紐づけられた概念文等の出力文を選択し、その出力文を出力部から出力させる。
【0077】
以上説明したように、第2実施形態の会話装置は、入力文に対する表層文に加えて、第2キーワードと入力価値とに紐づけられた内心文を追加することで、ユーザの意向や判断の心のあり方にも応答できる。さらに、文意を多面的に把握し応答したことになるので、会話のボケやズレ感も減少する。
【0078】
なお、会話のベースである話者の意向や心のあり方について言及すれば、複数回のやりとり中の価値判断の変化や、入力価値とキーワードに辞書中で紐づけられた価値とのずれを捉えることにより、入力者にコメントすることも可能である。
【0079】
さらに、この会話装置の効用について言及すれば、「人となり」の概念文と「生活実態」の生活シーン文がセットであれば、個性ある人格とその生きざまを、遭遇する様々なケース上で知り、再現できる。「学生生活」「社会生活」・・「余生」と実態の焦点を定めれば、人生のフェーズに合わせて、他人の人生の喜怒哀楽をいわば伴侶として楽しむことが可能である。
【0080】
[6]このように、情報処理部は、入力文に含まれる単語の中からキーワードを第1のキーワードとして決定すると共にそれとは別の単語を第2のキーワードとして決定し、複数の文から第1キーワードに紐づけられた出力文を表層文として選択して出力させると共に、複数の文から第2キーワードに紐づけられた文を内心文として選択して出力させる。
【0081】
第1キーワードは意味を表す名詞や動作を表す動詞、第2キーワードはそれを修飾する形容詞や形容動詞となることが多く、そのため、入力文を入力したユーザの気持ちは第2キーワードに含まれることが多い。従って、表層文に加えて、第2キーワードに基づく内心文が出力されれば、ユーザの意向や判断の心のあり方にも応答したことになる。さらに、文意を多面的に把握し応答したことになるので、会話のボケやズレ感も減少する。
【0082】
上述の通り、キーワード選択時には、ある単語A(あるいはその単語Aを含む文節)に掛かる単語Bの数が多いほど、単語Aの得点が高くなり、単語Aが第1キーワードとして選ばれる可能性が高くなる。また同時に、単語Aに掛かる単語Bも、単語Aの得点が高いほど得点を高くすることで、単語Bが第2キーワードとして選ばれる可能性を高くしてもよい。このように、内心文を決める要素である第2キーワードとして単語Bが選ばれ易くするのは、文における「掛かる」という機能が、本質的に、単語Aが示す事柄に対して別の観点からの判断を付加するという機能に相当するからである。別の観点からの判断は、内心の微妙なユレに関連するものである。
【0083】
(他の実施形態)
上記実施形態では、会話装置は、概念文辞書、各品詞概念辞書、動詞文辞書および生活シーン辞書などを備えるものとして説明したが、これに限らない。例えば、会話装置は、概念文辞書および名詞概念辞書に加えて、形容詞概念辞書、形容動詞概念辞書、動詞文辞書および生活シーン辞書の少なくとも1つを備えていればよい。
【0084】
また、上記実施形態では、会話装置は、名詞概念辞書と共に格文法名詞概念辞書を備えるものとして説明したが、これに限らず、例えば、名詞概念辞書に代えて格文法名詞概念辞書を備えていてもよい。
【0085】
上記実施形態では、動詞文辞書は、動詞と、動詞に応じた文が登録されたものとして説明したが、これに限らない。例えば、動詞文辞書に登録されている文を概念文辞書に登録し、その概念文辞書に登録した文と動詞文辞書に登録されている動詞とを紐づけしてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、格文法名詞概念辞書は、入力文中の名詞に続く格助詞およびそれに続く述語により同定される名詞の意味と、名詞の意味に応じた文が登録されたものとして説明したが、これに限らない。例えば、格文法名詞概念辞書に登録されている文を概念文辞書に登録し、その概念文辞書に登録した文と格文法名詞概念辞書に登録されている名詞の意味とを紐づけしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、会話装置は、単体の装置として実現されている。しかし、必ずしもこのようになっていなくてもよい。例えば、会話装置のうち、情報処理部と記憶部がサーバ装置として構成されており、入力部および出力部がクライアント装置ととして実現され、サーバ装置とクライアント装置が双方向通信することで、上記の作動が実現してもよい。なおこの場合、サーバ装置は互いに通信する複数のコンピュータの分散処理により実現されてもよい。
【0088】
本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0089】
上記実施形態において、情報処理部3は例えばプログラムを実行可能なプロセッサとして実現されている。しかし、情報処理部3は、このようなものに限られず、例えば、上記実施形態の作動に特化して構成されたハードウェア回路として実現されていてもよいし、あるいは回路構成がプログラム可能なプログラマブルロジックデバイスとして実現されていてもよい。なお、上記各実施形態において、情報処理部が、
図8のS100を実行することで取得部として機能し、S105~S160を実行することで出力制御部として機能する。
【符号の説明】
【0090】
1…入力部、2…記憶部、3…情報処理部、4…出力部
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置であって、
前記ユーザが入力文を入力可能な入力部と、
複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データを記憶する記憶部と、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定する情報処理部と、
前記情報処理部が決定した前記出力文を出力する出力部と、を備え、
前記対応データは、名詞と述語の複数の組み合わせを複数の文のいずれかに紐づけるデータを含み、
前記情報処理部は、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが名詞以外の品詞である場合、前記入力文中の単語のうち前記キーワードのみを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、コンピュータ会話装置。
【請求項2】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置であって、
前記ユーザが、入力文と、前記入力文に対する前記ユーザの価値判断を段階的に示す複数個の価値のうち1つとを、入力可能な入力部と、
前記複数個の価値のいずれかがそれぞれ対応づけれた複数の文と、複数の単語との、対応関係を規定する対応データを記憶する記憶部と、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定する情報処理部と、
前記情報処理部が決定した前記出力文を出力する出力部と、を備え、
前記情報処理部は、前記キーワードが動詞である場合、前記キーワードを用いて、かつ、入力された前記1つの価値を用いずに、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが動詞以外の品詞である場合、入力された前記1つの価値と前記キーワードとを用いて、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、コンピュータ会話装置。
【請求項3】
前記対応データは、名詞と格助詞と述語の複数の組み合わせを複数の文のいずれかに紐づけるデータを含み、
前記情報処理部は、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに続く格助詞と前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記ユーザが、前記入力文と、前記入力文に対する前記ユーザの価値判断を段階的に示す複数個の価値のうち1つとを、入力可能であり、
前記対応データにおいては、前記複数の単語のうち一部または全部に対して前記複数個の価値のいずれかがそれぞれ紐づけられており、
入力された前記1つの価値が、前記入力文から決定された前記キーワードに前記対応データ中で紐づけられた価値と異なることが、連続する複数回の前記入力文の入力で発生した場合、前記情報処理部は、前記場合が発生したことに基づいて、前記場合に対応するコメントとして、所定のサマリコメントを出力する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記ユーザが、前記入力文と、前記入力文に対する前記ユーザの価値判断を段階的に示す複数個の価値のうち1つと、入力された前記1つの価値の強弱の程度とを、入力可能であり、
前記程度として同じ値が連続する複数回の前記入力文の入力で発生した場合、前記情報処理部は、前記場合が発生したことに基づいて、前記程度として連続した前記同じ値に対応するコメントとして、所定のサマリコメントを出力する、請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項6】
前記情報処理部は、前記入力文中の単語間の関係に基づいて重要度を決定し、重要度が最も高い単語を第1キーワードとし、重要度が前記第1キーワードの次に高い単語を第2キーワードとし、前記複数の文から前記第1キーワードに紐づけられた前記出力文を表層文として選択すると共に、前記複数の文から前記第2キーワードに紐づけられた文を内心文として選択し、
前記出力部は、前記情報処理部により選択された前記表層文に加えて前記内心文を出力することを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータ会話装置。
【請求項7】
ユーザと会話をするためのコンピュータ会話方法であって、
ユーザが入力した入力文を取得することと、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定することと、
決定した前記出力文を出力することと、を備え、
前記対応データは、名詞と述語の複数の組み合わせを複数の文のいずれかに紐づけるデータを含み、
前記決定することにおいて、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが名詞以外の品詞である場合、前記入力文中の単語のうち前記キーワードのみを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定することを特徴とする、コンピュータ会話方法。
【請求項8】
ユーザと会話をするためのコンピュータ会話方法であって、
前記ユーザが、入力文と、前記入力文に対する前記ユーザの価値判断を段階的に示す複数個の価値のうち1つとを、入力したとき、入力された前記入力文および入力された前記1つの価値を取得することと、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記複数個の価値のいずれかがそれぞれ対応づけれた複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定することと、
決定した前記出力文を出力することと、を備え、
前記決定することにおいて、前記キーワードが動詞である場合、前記キーワードを用いて、かつ、入力された前記1つの価値を用いずに、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが動詞以外の品詞である場合、入力された前記1つの価値と前記キーワードとを用いて、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定することを特徴とする、コンピュータ会話方法。
【請求項9】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置のためのプログラムであって、
前記ユーザによって入力された入力文を取得する取得部、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定し、決定した前記出力文を出力させる出力制御部として、前記コンピュータ会話装置を機能させ、
前記対応データは、名詞と述語の複数の組み合わせを複数の文のいずれかに紐づけるデータを含み、
前記出力制御部は、前記キーワードが名詞である場合、前記入力文において前記キーワードに対応する述語と前記キーワードとの組み合わせを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが名詞以外の品詞である場合、前記入力文中の単語のうち前記キーワードのみを用いて前記対応データを参照することで、前記出力文を決定することを特徴とする、プログラム。
【請求項10】
ユーザと会話をするように構成されたコンピュータ会話装置のためのプログラムであって、
前記ユーザが、入力文と、前記入力文に対する前記ユーザの価値判断を段階的に示す複数個の価値のうち1つとを、入力したとき、入力された前記入力文および入力された前記1つの価値を取得する取得部、
前記入力文に含まれる単語の中からキーワードを決定し、前記複数個の価値のいずれかがそれぞれ対応づけれた複数の文と複数の単語との対応関係を規定する対応データに基づいて複数の文から前記キーワードに対応する文を選び出し、選び出した文に応じた出力文を決定し、決定した前記出力文を出力させる出力制御部として、前記コンピュータ会話装置を機能させ、
前記出力制御部は、前記キーワードが動詞である場合、前記キーワードを用いて、かつ、入力された前記1つの価値を用いずに、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定し、前記キーワードが動詞以外の品詞である場合、入力された前記1つの価値と前記キーワードとを用いて、前記対応データを参照することで、前記出力文を決定することを特徴とする、プログラム。