(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062692
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光学制御素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240501BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G02F1/13 505
A01G7/00 601C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170710
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 仁
【テーマコード(参考)】
2B022
2H088
【Fターム(参考)】
2B022DA03
2B022DA08
2H088EA47
2H088GA03
2H088HA02
2H088HA21
2H088HA28
2H088KA06
2H088KA13
2H088MA20
(57)【要約】
【課題】 植物の成長を促進可能な光を照射する光学制御素子を提供する。
【解決手段】 光学制御素子は、発光素子と、反射物と、コレステリック液晶素子と、を備え、前記コレステリック液晶素子は、第1電極が設けられた第1基板と、第2電極が設けられた第2基板と、前記第1基板及び前記第2基板との間に挟持された、コレステリック液晶層と、を備え、前記コレステリック液晶層は、右円偏光の光を透過し、左円偏光の光を反射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
反射物と、
コレステリック液晶素子と、
を備え、
前記コレステリック液晶素子は、
第1電極が設けられた第1基板と、
第2電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板との間に挟持された、コレステリック液晶層と、
を備え、
前記コレステリック液晶層は、右円偏光の光を透過し、左円偏光の光を反射する、光学制御素子。
【請求項2】
前記発光素子は、赤色を発光する第1発光素子と、青色を発光する第2発光素子と、を含む、請求項1に記載の光学制御素子。
【請求項3】
前記反射物は、鏡である、請求項1に記載の光学制御素子。
【請求項4】
前記反射物は、ホログラフィック光学素子である、請求項1に記載の光学制御素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学制御素子に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の成長は、光の質によって大きく異なり、例えば、右円偏光を照射して栽培すると成長が促進されることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-165304号公報
【特許文献2】特開2012-226229号公報
【特許文献3】国際公開第2020/121720号
【特許文献4】国際公開第2020/121719号
【特許文献5】国際公開第2018/034154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、植物の成長を促進可能な光を照射する光学制御素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る光学制御素子は、
発光素子と、
反射物と、
コレステリック液晶素子と、
を備え、
前記コレステリック液晶素子は、
第1電極が設けられた第1基板と、
第2電極が設けられた第2基板と、
前記第1基板及び前記第2基板との間に挟持された、コレステリック液晶層と、
を備え、
前記コレステリック液晶層は、右円偏光の光を透過し、左円偏光の光を反射する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の光学制御素子の概略的な構成の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、コレステリック液晶素子に適用し得る構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、コレステリック液晶層の配列を説明する図である。
【
図4】
図4は、コレステリック液晶層の配列を説明する図である。
【
図5】
図5は、コレステリック液晶層による円偏光の反射を説明する図である。
【
図6】
図6は、コレステリック液晶層による円偏光の反射を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る光学制御素子について詳細に説明する。
【0008】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。なお第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zを、それぞれ、X方向、Y方向、及び、Z方向と呼ぶこともある。
【0009】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0010】
また、第3方向Zの矢印の先端側に光学制御素子を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における光学制御素子の断面を見ることを断面視という。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態の光学制御素子の概略的な構成の一例を示す断面図である。光学制御素子LCEは、鏡MRRと、コレステリック液晶素子CLSと、発光素子LSと、を備えている。発光素子LSは、赤色を発光する発光素子LSRと、青色を発光する発光素子LSBと、を有している。発光素子LSは、コレステリック液晶素子CLS及び鏡MRRとの間に設けられている。
【0012】
光学制御素子LCEの下方に、植物PLTが配置されている。コレステリック液晶素子CLSは、発光素子LS及び植物PLTの間に設けられている。植物PLTは、赤色の光と青色の光を吸収している。よって、発光素子LSは、赤色を発光する発光素子LSR及び青色を発光する発光素子LSBを備えることが好適である。
【0013】
詳細は後述するが、コレステリック液晶素子CLSは、コレステリック液晶層を含んでいる。当該コレステリック液晶層は、赤色の光及び青色の光のうち、左円偏光の光を反射する。
【0014】
鏡MRRは、発光素子LSから出射された光を反射する。鏡MRRの代わりに、光を反射する性質を持つ反射物、例えば、ホログラフィック光学素子(HOE)を配置してもよい。
【0015】
図2は、コレステリック液晶素子に適用し得る構成の一例を示す分解斜視図である。コレステリック液晶素子CLSは、基板SUB1と、基板SUB2と、基板SUB1及び基板SUB2の間に設けられたコレステリック液晶層(図示せず)と、を備えている。基板SUB1は、基材BA1と、帯状電極LE1と、を備えている。基板SUB2は、基材BA2と、帯状電極UE1と、を備えている。
【0016】
帯状電極LE1は、基材BA1に接して設けられ、第1方向Xに沿って延伸し、第2方向Yに沿って並んで配列されている。帯状電極UE1は、基材BA2に接して設けられ、第2方向Yに沿って延伸し、第1方向Xに沿って並んで配列されている。
【0017】
図2には図示していないが、帯状電極LE1及び帯状電極UE1それぞれを覆って、配向膜が設けられている。
【0018】
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶材料で構成される液晶層である。コレステリック液晶層は、帯状電極LE1及び帯状電極UE1との間に生じる電界、いわゆる縦電界によって駆動される。
【0019】
基材BA1及び基材BA2の材料は、例えば、ガラス基板やプラスチック基板などの透明絶縁基材である。
【0020】
帯状電極LE1及び帯状電極UE1は、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)などの透明導電材料によって形成された透明電極である。
【0021】
コレステリック液晶素子CLSは、いわゆるパッシブマトリクス方式の液晶素子である。ただし、コレステリック液晶素子CLSは、これに限定されない。コレステリック液晶素子CLSは、複数のスイッチング素子を有するアクティブマトリクス方式の液晶素子であってもよい。
【0022】
図3及び
図4は、コレステリック液晶層の配列を説明する図である。コレステリック液晶層は、双安定性(メモリ性)の特徴を具備している。双安定性とは光を反射するプレーナ状態、光を透過するフォーカルコニック状態、またはそれらの中間的な状態が自己保持できることをいう。これらの状態は、コレステリック液晶層に印加する電界強度、換言するとコレステリック液晶層を挟持する電極間の電圧の調節により、切り替え可能である。
【0023】
図3は、プレーナ状態における、コレステリック液晶層の液晶分子の配向状態を示している。
図4は、フォーカルコニック状態における、コレステリック液晶層の液晶分子の配向状態を示している。
【0024】
図3に示すように、プレーナ状態のコレステリック液晶層の液晶分子LMは、第3方向Zに順次回転して螺旋構造を形成する。螺旋構造の旋旋軸は、帯状電極UE1及び帯状電極LE1が設けられるX-Y平面に対して、ほぼ垂直になる。つまり螺旋構造の旋旋軸は、第3方向Zに平行な方向に沿う。
【0025】
この状態では、入射光LIのうち、液晶分子LMの螺旋ピッチに応じた所定の波長の光が、反射光LRとして、選択的にコレステリック液晶層CLC1で反射される。コレステリック液晶層の平均屈折率をnとし、螺旋ピッチをpとすると、反射が最大となる波長λは、λ=n×pである。コレステリック液晶層の長軸及び短軸の屈折率を、それぞれ、ne及びn0とすると、平均屈折率nは、n=(ne+n0)/2(式1)で表される。入射光LIのうち、反射光LR以外は、透過光LTとして透過し、コレステリック液晶素子CLSから出射される。
【0026】
コレステリック液晶層のピッチpは、コレステリック液晶層を形成する際の重合性液晶化合物と共に、カイラル剤の種類、又は添加濃度cに依存する。カイラル剤特有の比例定数をβとすると、波長λは、λ=n×p=n/(β×c)(式2)のように表すことができる。
【0027】
偏光選択反射を示す選択反射帯の半値幅Δλは、コレステリック液晶層の複屈折Δnとピッチpに依存し、Δλ=Δn×p(式3)のように表すことができる。Δnは、コレステリック液晶層を形成する際に、重合性液晶化合物の種類や混合比率、又は配向固定時の温度を制御することにより、調整することができる。
【0028】
本実施形態のコレステリック液晶素子CLSでは、コレステリック液晶層CLC1は、赤色の光として、例えば、中心波長λ=625nm以上780nm以下、青色の光として、例えば、450nm以上485nm以下の光を反射する、屈折率Δn及びピッチpを有するものが好ましい。
【0029】
フォーカルコニック状態では、コレステリック液晶層の液晶分子は、第3方向Zと垂直な方向、すなわち、X-Y平面に平行な方向に、順次回転して螺旋構造を形成する。螺旋構造の螺旋軸は、X-Y平面に平行な方向となる。フォーカルコニック状態では、コレステリック液晶層CLC1に反射波長の選択性は失われ、入射光LIのほとんどが透過光LTとして透過する。
【0030】
コレステリック液晶層は、電圧無印加時、プレーナ状態かフォーカルコニック状態で存在する。低電圧パルスを印加すると、フォーカルコニック状態に変化する。一方、プレーナ状態かフォーカルコニック状態の混合状態、又は、フォーカルコニック状態で、高電圧パルスを印加しそのまま保持すると、プレーナ状態となる。
【0031】
コレステリック液晶層CLC1の液晶分子は、螺旋構造を形成する材料である。コレステリック液晶層CLC1は、螺旋構造の巻く向きと同じ方向の円偏光を反射する。
【0032】
図5及び
図6は、コレステリック液晶層による円偏光の反射を説明する図である。
図5に示す例では、帯状電極LE1、帯状電極UE1、並びに、帯状電極LE1及び帯状電極UE1の間に挟持されるコレステリック液晶層CLC1のみを示している。コレステリック液晶層CLC1は、帯状電極LE1からの距離に応じて、複数の層P1乃至層P9を有している。複数の層P1乃至層P9それぞれでは、複数の液晶分子LMが、概略同じ方向に配向している。なお
図5に示す例では、当該層の数は9であるが、本実施形態はこれに限定されない。
【0033】
複数の層P1乃至層P9それぞれに示す白抜き矢印は、それぞれの層における液晶分子LMの配向方向を示している。層P1から層P9までの当該配向方向を繋ぐと、左回りに回転し、左回りの螺旋を形成する。
【0034】
コレステリック液晶層の螺旋の回転方向は、液晶分子の構造(例えば側鎖の官能基)又はカイラル剤の種類によって決定される。より具体的には、不斉炭素の絶対配置と、骨格と、不斉炭素までのスペーサ原子数が奇数か偶数かと、を組み合わせることにより、右円偏光又は左円偏光のどちらかを反射するかが決定される。
【0035】
上述のように、コレステリック液晶層CLC1の液晶分子は、左回り(Counterclockwise)の螺旋を形成している。
図1及び
図6に示すように、コレステリック液晶素子CLSに入射する入射光をLIとする。入射光LIのうち、螺旋構造の巻く向きと同じ方向である左円偏光の光CPLはコレステリック液晶層CLC1で反射される。右円偏光の光CPRはコレステリック液晶層CLC1を透過する。透過した右円偏光の光CPRは下方に照射される。
【0036】
図1及び
図6に示すように、コレステリック液晶素子CLSに含まれるコレステリック液晶層CLC1は、入射光LIのうち左円偏光の光CPLを反射する。左円偏光の光CPLを反射させるためには、上述のようにコレステリック液晶層CLC1を形成する際に、カイラル剤の種類、比率、若しくは添加濃度、重合性液晶化合物の種類や混合比率、又は配向固定時の温度を制御することにより、調整すればよい。上述したように、液晶分子の螺旋構造の巻く向きと同じ方向の円偏光成分が反射される。
【0037】
図1に示すように、コレステリック液晶層CLC1により反射された、左円偏光の光CPLは、鏡MRRによりさらに反射する。鏡MRRにより反射することで、左円偏光の光CPLは、右円偏光の光CPRに変換される。変換された右円偏光の光CPRは、コレステリック液晶層CLC1を透過し、植物PLTに照射される。
【0038】
本実施形態により、植物PLTが吸収する赤色の光及び青色の光のうち、成長を促進する右円偏光のみを、植物PLTに照射することができる。これにより、植物PLTの成長が促進することが可能となる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
CLC1…コレステリック液晶層、CLS…コレステリック液晶素子、CPL…光、CPR…光、LCE…光学制御素子、LE1…帯状電極、LM…液晶分子、LS…発光素子、MRR…鏡、P1…層、P9…層、PLT…植物、UE1…帯状電極。