(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062705
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】事故抜去検知装置、及び事故抜去検知方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20240501BHJP
A61M 5/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
A61M5/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170731
(22)【出願日】2022-10-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月20日に電子メールで配布された、第67回日本透析医学会学術集会・総会のWEBサイトにアップされ、かつプログラムに掲載された「第67回日本透析医学会学術集会・総会 企業展示・出展社一覧(50音順)」の原稿に掲載 令和4年7月1日~3日に開催された第67回日本透析医学会学術集会・総会にて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】岩根 雅史
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ48
4C066QQ77
(57)【要約】
【課題】 医療用チューブ部材の事故抜去を、早期に、正確、かつ簡便に検知するために用いられる事故抜去検知装置、及び事故抜去検知方法を提供すること。
【解決手段】 伸縮可能なセンサ部材と、第1取付部と、第2取付部と、を有し、前記第1取付部及び前記第2取付部の間に前記センサ部材が配置され、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方が、患者に施された医療用チューブ部材に取り付けられる、伸縮センサと、前記センサ部材の変形を計測する計測部と、前記計測部の計測結果に基づき、事故抜去を検知する検知部と、を備える事故抜去検知装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮可能なセンサ部材と、第1取付部と、第2取付部と、を有し、
前記第1取付部及び前記第2取付部の間に前記センサ部材が配置され、
前記第1取付部及び前記第2取付部の一方が、患者に施された医療用チューブ部材に取り付けられる、伸縮センサと、
前記センサ部材の変形を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果に基づき、事故抜去を検知する検知部と、
を備える事故抜去検知装置。
【請求項2】
前記第1取付部及び前記第2取付部の他方が、前記患者に取り付けられる、請求項1に記載の事故抜去検知装置。
【請求項3】
前記伸縮センサは、医療用チューブ部材に取り付けられる前記第1取付部又は前記第2取付部を、前記医療用チューブ部材に取り付けるためのチューブ側固定用部材を含む、請求項1に記載の事故抜去検知装置。
【請求項4】
前記伸縮センサは、患者に取り付けられる前記第2取付部又は前記第1取付部を、前記患者に取り付けるための患者側固定用部材を含む、請求項2又は3に記載の事故抜去検知装置。
【請求項5】
前記センサ部材は、エラストマー製の誘電層と、前記誘電層の上面に形成された第1電極層と、前記誘電層の下面に形成された第2電極層とを有し、前記第1電極層及び前記第2電極層の対向する部分を前記検出部とし、前記変形量に応じて、前記検出部の静電容量が変化する、請求項1~3のいずれかに記載の事故抜去検知装置。
【請求項6】
前記医療用チューブ部材は、透析治療において透析回路を構成する動脈側チューブ及び静脈側チューブの一方又は両方である、請求項1~3のいずれかに記載の事故抜去検知装置。
【請求項7】
患者に取り付けられる前記第2取付部又は前記第1取付部は、前記患者に装着される、前記医療用チューブ部材を固定及び/又は保護するサポート部材に取り付けられる、請求項2又は3に記載の事故抜去検知装置。
【請求項8】
前記サポート部材は、医療用テープ、医療用ベルト、又は抜管防止具である、請求項7に記載の事故抜去検知装置。
【請求項9】
前記検知部における事故抜去の検知結果を、医療従事者に通知する通知部を備える、請求項1に記載の事故抜去検知装置。
【請求項10】
前記通知部は、前記検知結果を、音、振動、及び光から選択される少なくとも一つで、医療従事者に通知する、請求項9に記載の事故抜去検知装置。
【請求項11】
前記検知部は、前記検知結果を、前記通知部に無線で送信する、無線送信手段を有し、
前記通知部は、前記無線送信手段からの前記通知結果を受信する、無線受信手段を有する、請求項9又は10に記載の事故抜去検知装置。
【請求項12】
前記通知部は、前記医療従事者の携帯端末である、請求項11に記載の事故抜去検知装置。
【請求項13】
前記事故抜去は、患者による自己抜去である、請求項1~3のいずれかに記載の事故抜去検知装置。
【請求項14】
請求項1~3のいずれかに記載の事故抜去検知装置を用いる、事故抜去検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブ部材の事故抜去を検知するための装置、及びこの装置を用いた事故抜去の検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医師や看護師等の医療従事者は、患者に、点滴、気管チューブ、胃管等の医療用チューブ部材の設定を行った後、医療用チューブ部材が設定された状態で、患者を留置する場合がある。患者に施された医療用チューブ部材は、医療従事者の意図とは無関係に、何らかの原因で患者から外れてしまう場合がある。このような事象は、事故抜去と呼ばれる。事故抜去には、ベッド移動、患者の体位変換及び転倒等により、医療用チューブ部材が患者から外れてしまうケースがある。また、事故抜去には、患者自身が医療用チューブ部材を抜去してしまう、自己抜去と呼ばれるケースもある。特に、認知症やせん妄を伴う患者は、自己抜去を起こしやすい。そこで、自己抜去に対する予防、及び早急な対処が求められている。
【0003】
事故抜去を検知するための装置として、例えば、特許文献1には、体表に取り付けられた磁気シートからの磁界の変化をチューブに取り付けられた磁気センサによって検出することで、事故抜去を通知する装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の装置は、チューブが完全に外れたか、又は外れそうな状態となるまで異常を検知することができない。そのため、特許文献1に記載の装置は、自己抜去に対する予防、及び早急な対処が困難な場合がある。
【0004】
自己抜去に対する予防、及び早急な対処を可能とすべく、特許文献2には、点滴針の挿入部位に固定されたセンサ部が、静電容量によりセンサ部と患者の手との位置関係の正否を判定することで、自己抜去を検知する装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、チューブを固定するテープに配置された磁気バイアス磁石、及び注射針を固定するテープに配置された検知対象用磁石からの磁界強度の変化を、磁気センサで測定することで、自己抜去を検知する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-159035号公報
【特許文献2】特開2020-118626号公報
【特許文献3】国際公開第2009/031560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び特許文献3で開示された装置は、特許文献1に開示されている装置よりも、患者の自己抜去の行動を早期に検知できる。そのため、特許文献1に開示されている装置よりも、自己抜去に対する予防、及び早急な対処を達成しやすい。
しかしながら、特許文献2の静電容量、及び特許文献3の磁界強度は、空間を隔ててセンサが測定するため、センサ側の測定感度の調整が難しい。センサ側の測定感度を上げ過ぎると、誤検知が増加し、医療従事者による患者確認の負担が増加してしまう。逆に、センサ側の測定感度を下げ過ぎると、異常の検知が遅れ、自己抜去の発生を早期に検知することが困難になる。
【0008】
また、特許文献3の装置では、磁気センサ、磁気バイアス磁石、及び検知対象用磁石の配置状態が、磁界強度に影響を及ぼす場合がある。そのため、医療従事者は、適度な距離を保ちつつ、磁気センサ、磁気バイアス磁石、及び検知対象用磁石を患者に装着する必要があり、準備作業が煩雑であった。
【0009】
本発明者らは、患者による自己抜去を含む、医療用チューブ部材の事故抜去を、早期に、正確に、かつ簡便に検知すべく鋭意検討を行い、新たな技術思想に基づき本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の事故抜去検知装置は、
伸縮可能なセンサ部材と、第1取付部と、第2取付部と、を有し、
上記第1取付部及び上記第2取付部の間に上記センサ部材が配置され、
上記第1取付部及び上記第2取付部の一方が、患者に施された医療用チューブ部材に取り付けられる、伸縮センサと、
上記センサ部材の変形を計測する計測部と、
上記計測部の計測結果に基づき、事故抜去を検知する検知部と、
を備える。
【0011】
上記(1)の事故抜去検知装置によれば、医療用チューブ部材の事故抜去を、早期に、正確に、かつ簡便に検知することができる。
また、センサ部材の第1取付部及び第2取付部の一方が医療用チューブ部材に取り付けられている。そのため、医療用チューブ部材の状態変化を検知し易く、事故抜去の早期検知に適している。
【0012】
(2)好ましくは、上記(1)の事故抜去検知装置において、上記第1取付部及び上記第2取付部の他方が、上記患者に取り付けられる。
上記(2)の事故抜去検知装置によれば、患者と医療用チューブ部材とが伸縮センサを介して繋がった状態にある。そのため、患者による自己抜去の検知に適している。
なお、患者に取り付けられる取付部は、患者の体表に直接取り付けられていてもよいし、患者に装着されたサポート部材等に取り付けられることで、患者に間接的に取り付けられていてもよい。
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)に記載の事故抜去検知装置において、
上記伸縮センサは、医療用チューブ部材に取り付けられる上記第1取付部又は上記第2取付部を、上記医療用チューブ部材に取り付けるためのチューブ側固定用部材を含む。
(4)好ましくは、上記(2)又は(3)に記載の事故抜去検知装置において、
上記伸縮センサは、患者に取り付けられる上記第2取付部又は上記第1取付部を、上記患者に取り付けるための患者側固定用部材を含む。
上記(3)及び(4)の事故抜去検知装置によれば、伸縮センサの取り付けが容易になる。
【0014】
(5)好ましくは、上記(1)~(3)のいずれかに記載の事故抜去検知装置において、
上記センサ部材は、エラストマー製の誘電層と、上記誘電層の上面に形成された第1電極層と、上記誘電層の下面に形成された第2電極層とを有し、上記第1電極層及び上記第2電極層の対向する部分を上記検出部とし、上記変形量に応じて、上記検出部の静電容量が変化する。
上記(5)の事故抜去検知装置によれば、正確に、かつ簡便に事故抜去を検知するのにより適している。
【0015】
(6)好ましくは、上記(1)~(5)のいずれかに記載の事故抜去検知装置において、
上記医療用チューブ部材は、透析治療において透析回路を構成する動脈側チューブ及び静脈側チューブの一方又は両方である。
上記(5)の事故抜去検知装置によれば、透析治療中の事故抜去(自己抜去を含む)を早期に、正確に、かつ簡便に検知するのに適している。
【0016】
(7)好ましくは、上記(1)~(6)のいずれかに記載の事故抜去検知装置において、
患者に取り付けられる上記第2取付部又は上記第1取付部は、上記患者に装着される、上記医療用チューブ部材を固定及び/又は保護するサポート部材に取り付けられる。
【0017】
(8)好ましくは、上記(7)に記載の事故抜去検知装置において、
上記サポート部材は、医療用テープ、医療用ベルト、又は抜管防止具である。
【0018】
上記(7)及び(8)の事故抜去検知装置によれば、医療従事者は、事故抜去検知装置の患者への装着をより簡便に行うことができる。
また、(7)及び(8)の事故抜去検知装置は、伸縮センサの状態を調整しながら、例えば適正なプリテンション状態になるように調整しながら、伸縮センサを取り付けるのに適している。
【0019】
(9)好ましくは、上記(1)~(8)のいずれかに記載の事故抜去検知装置は、
上記検知部の事故抜去の検知結果を、医療従事者に通知する通知部を備える。
【0020】
(10)好ましくは、上記(9)に記載の事故抜去検知装置において、
上記通知部は、上記検知結果を、音、振動、及び光から選択される少なくとも一つで、医療従事者に通知する。
【0021】
(11)上記(9)又は(10)に記載の事故抜去検知装置において、
上記検知部は、上記検知結果を、上記通知部に無線で送信する、無線送信手段を有し、
上記通知部は、上記無線送信手段からの上記通知結果を受信する、無線受信手段を有する、ことが好ましい。
【0022】
(12)好ましくは、上記(9)~(11)のいずれかに記載の事故抜去検知装置において、
上記通知部は、上記医療従事者の携帯端末である。
【0023】
上記(9)~(12)の事故抜去検知装置によれば、医療従事者は、より早期に、医療用チューブ部材の事故抜去を察知することができる。
【0024】
(13)好ましくは、上記(1)~(12)に記載の事故抜去検知装置において、
上記事故抜去は、患者による自己抜去である。
上記(1)~(13)に記載の事故抜去検知装置は、患者に施された医療用チューブ部材に取り付けられる第1取付部及び第2取付部の一方を有する伸縮センサを備える。患者は、医療用チューブ部材を自己抜去する場合、医療用チューブ部材を引っ張って抜去するケースが多い。そのため、上記事故抜去検知装置は、患者による自己抜去の検知に好適に用いることができる。
また、上記事故抜去検知装置は、第1取付部及び第2取付部の一方が医療用チューブ部材に取り付けられる。そのため、患者が医療用チューブ部材を触り始めた時点で、その行為を検知できる場合がある。患者が医療用チューブ部材を触り始めた行為を検知できた場合は、患者の自己抜去を予防することができる。
【0025】
(14)本発明の事故抜去検知方法は、上記(1)~(13)のいずれか一つに記載の事故抜去検知装置を用いる。
【0026】
上記(14)に記載の事故抜去検知方法は、上記(1)~(13)のいずれか一つに記載の事故抜去検知装置を用いるため、医療用チューブ部材の事故抜去を、早期に、正確に、かつ簡便に検知することができる。
また、上記事故抜去検知方法によれば、特に、患者による自己抜去を好適に検知することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の事故抜去検知装置を用いた事故抜去検知方法によれば、医療用チューブ部材の事故抜去を、早期に、正確に、かつ簡便に検知することができる。
また、この事故抜去検知方法によれば、自己抜去前に発生する自己抜去につながりそうな患者の行為(例えば、患者が医療用チューブ部材を触る行為など)を検知できるケースがある。そのため、上記事故抜去検知装置を用いた事故抜去検知方法は、自己抜去の予兆の検知にも貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る自己抜去検知装置の使用状態を示す図である。
【
図2】
図1の拡大図であり、医療用チューブ部材が施された患者の腕の周辺を示す。
【
図3】
図1の自己抜去検知装置を構成する、伸縮センサを含むセンサユニットを示す模式図である。
【
図4】伸縮センサを構成するチューブ側固定用部材を説明する図である。
【
図5】伸縮センサを構成する患者側固定用部材を説明する図である。
【
図6】伸縮センサを含むセンサユニットの取り付け態様を説明する図である。
【
図7】第1実施形態で採用されるセンサ部材を説明するための斜視図である。
【
図9】
図1の自己抜去検知装置を構成するケーブルを示す図である。
【
図10】
図1の自己抜去検知装置を構成する検知ユニットを示す図である。
【
図11】第1実施形態の自己抜去検知装置の構成を示す概略図である。
【
図12】
図9の検知ユニットのモニターの表示画面の一事例を示す図である。
【
図13】
図9の検知ユニットのモニターに表示される画面の遷移を示す図である。
【
図14】第1実施形態に係る検知ユニットの演算回路による、監視準備処理のフローチャートである。
【
図15】第1実施形態に係る検知ユニットの演算回路による、自己抜去検知処理のフローチャートである。
【
図16】第1実施形態に係る携帯端末の演算回路による、自己抜去検知処理のフローチャートである。
【
図17】第2実施形態で採用されるセンサ部材を説明するための斜視図である。
【
図19】第3実施形態に係る自己抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
【
図20】第4実施形態に係る自己抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
【
図21】第5実施形態に係る自己抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
【
図22】第6実施形態に係る事故抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
【
図23】第7実施形態に係る自己抜去検知装置の構成を示す概略図である。
【
図24】第7実施形態で採用されるセンサ部材及び接続端子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(用語の説明)
本発明は、事故抜去検知装置及び事故抜去検知方法である。これらの装置及び方法の目的は、医療用チューブ部材の意図しない、偶発的な抜去を検知することにある。
一方、本願明細書では、自己抜去検知装置及び自己抜去検知方法の用語も使用される。ここで、「自己抜去」とは、患者によって行われる、医療従事者の意図しない医療用チューブ部材の抜去を意味する。この自己抜去は、事故抜去に含まれる概念である。
そして、本願明細書において、自己抜去の検知を主な目的とする発明の実施形態の説明では、自己抜去検知装置及び自己抜去検知方法の用語を使用する。ただし、この用語の使用は、事故抜去検知装置及び事故抜去検知方法としての適用を除外するものではない。従って、本発明の実施形態に係る自己抜去検知装置及び自己抜去検知方法を用いた場合も、自己抜去以外の偶発的に発生する事故抜去を検知することできる。
【0030】
(第1実施形態)
本実施形態は、透析治療中の患者に、本発明の実施形態に係る自己抜去検知装置を適用した例である。
<自己抜去検知装置>
図1は、本実施形態に係る自己抜去検知装置100の使用状態を示す図である。この図には、透析装置を用いた透析治療中の患者の状態を示している。
自己抜去検知装置100は、抜管防止具600で保護された患者200の左腕に装着される。
自己抜去検知装置100は、検知ユニット110、ケーブル115、センサユニット120、及び携帯端末130を有する。
センサユニット120は、伸縮センサ50と、伸縮センサ50が有するセンサ部材10の変形を計測する計測器3を含む。
図2は、
図1の拡大図であり、医療用チューブ部材が施された患者の腕の周辺(領域X)を示す。
【0031】
透析装置9は、透析装置本体900及び透析部材800を備える。
透析部材800は、留置針810及びチューブ820を有する。
留置針810は、動脈側留置針811、及び静脈側留置針812を含む。動脈側留置針811、及び静脈側留置針812は、患者200に穿刺されている。
チューブ820は、動脈側チューブ821、及び静脈側チューブ822を含む。
動脈側チューブ821は、動脈側留置針811と透析装置本体900が有する動脈側接続部910とに接続され、動脈側(脱血)の透析回路を構成する。静脈側チューブ822は、静脈側留置針812と透析装置本体900が有する静脈側接続部920とに接続され、静脈側(返血)の透析回路を構成する。
【0032】
抜管防止具600は、患者に施された医療用チューブ部材の留置針やチューブを、固定及び/又は保護する部材であり、透析中の抜針を防止するために使用される。
抜管防止具600は、保持部610、カバー部620、及び固定部630を備える。
保持部610は、主に患者200の前腕の外側と肘とを覆うように装着される部材である。保持部610は、患者200の腕の動きを規制することで抜針を防止する。保持部610は、例えば、樹脂やアルミニウムなど金属等からなる、剛性を確保するための基材と、この基材の表面に覆うように設けられたメッシュ生地などの繊維部材等からなる被覆部材とで構成されている。
カバー部620は、主に患者200の前腕の内側を覆うように装着される部材である。カバー部620は、主に留置針810への患者200のアクセスを防止する。カバー部620は、樹脂製の透明な部材であり、面ファスナ(図示せず)等で保持部610に取り付けられる。カバー部620には、通気性を確保するために複数の貫通孔が設けられている。
本発明の実施形態で使用される抜管防止具600は、カバー部が省略され、保持部610と固定部とで構成されていてもよい。
上記抜管防止具は、シーネと呼ばれることもある。
【0033】
固定部630は、患者200の腕に保持部610を固定するための部材である。固定部630は、第1固定部631、第2固定部632、及び第3固定部633を含み、各固定部は、いずれも伸縮性布生地を含む帯状部材である。
固定部630は、患者200の手や腕に保持部610を固定するように、患者200の手や腕に巻き付けて使用する。固定部630は、面ファスナを有する帯状部材で構成されている。上記帯状部材の患者に巻き付かせる側の面の一端側に、上記面ファスナのフックが設けられている。上記帯状部材の上記フックが設けられている面と反対側の面は、ほぼ全面に上記面ファスナのループが設けられている。すなわち、
図2において、固定部630の表面には、上記ループが設けられている。
医療従事者は、患者200の腕に巻き付ける固定部630の締め付け力を、上記フックの、上記ループへの貼付け位置で調整することができる。
第1固定部631は、患者200の手に巻き付けられる。第2固定部632は、患者200の前腕に巻き付けられる。第3固定部633は、患者の上腕に巻き付けられる。これにより、患者200の手や腕は、保持部610で保持される。
【0034】
図3は、
図1の自己抜去検知装置100を構成するセンサユニット120を示す模式図である。
図3に示すように、センサユニット120は、センサ部材10、被覆部材21、第1取付部121、及び第2取付部122を含む伸縮センサ50と、接続端子30Aとを有する。更に、センサユニット120は、
図3には示されていないが、計測器3を有する。
伸縮センサ50は、静電容量タイプのセンサである。
被覆部材21は、伸縮性の布生地からなり、センサ部材10の周囲に設けられている。
【0035】
第1取付部121は、センサ部材10の一端側に設けられ、スナップボタンのオス側(以下、スナップオスともいう)121Aを2つ有する。
第1取付部121は、長手方向寸法がセンサ部材10の幅よりも長い、平面視矩形状を有する2枚の布生地で構成される。第1取付部121は、この2枚の布生地で、被覆部材21で被覆されたセンサ部材の一方側(後述の、第1配線13A及び第2配線13B等が形成された側)の端部を挟み込むように設けられている。2枚の布生地は、接着又は縫い付けによって被覆部材21の一方側の端部に固定されている。スナップオス121Aは、2枚の布生地のうちの1枚(センサユニットの裏面側に設けられた1枚)に取り付けられている。スナップオス121Aは、センサ部材10と重ならない位置に取り付けられている。
第1取付部121は、布生地に代えてゴムシート、樹脂シートで構成されていてもよい。
【0036】
第2取付部122は、センサ部材10の他端側に設けられ、スナップオス122Aを2つ有する。
第2取付部122は、長手方向寸法がセンサ部材10の幅よりも長い、平面視矩形状を有する2枚の布生地で構成される。第2取付部122は、この2枚の布生地で、被覆部材21で被覆されたセンサ部材の他方側の端部を挟み込むように設けられている。2枚の布生地は、接着又は縫い付けによって被覆部材21の他方側の端部に固定されている。スナップオス122Aは、2枚の布生地のうちの1枚(センサユニット120の裏面側に設けられた1枚)に取り付けられている。スナップオス122Aは、センサ部材10と重ならない位置に取り付けられている。
第2取付部122は、布生地に代えてゴムシート、樹脂シートで構成されていてもよい。
【0037】
スナップオス121Aは、後述のチューブ側固定用部材151が有するスナップボタンのメス側(以下、スナップメスともいう)151Bに留めることができる。
スナップオス122Aは、後述の患者側固定用部材152が有するスナップボタンのメス側(以下、スナップメスともいう)152Bに留めることができる。
センサ部材10は、接続端子30Aに接続されたケーブル115を介して、検知ユニット110と、電気的に接続される。
【0038】
センサユニット120の伸縮センサ50は、更に、固定用部材として、チューブ側固定用部材151、及び患者側固定用部材152を有する。センサユニット120は、この固定用部材を用いて、チューブ820、及び固定部630に取り付けられる。
図4は、センサユニット120をチューブ820に取り付けるための、チューブ側固定用部材151を示す図である。
図5は、センサユニット120を固定部630に取り付けるための、患者側固定用部材152を示す図である。
センサユニット120は、チューブ側固定用部材151を用いて、動脈側チューブ821及び静脈側チューブ822に取り付けられる。センサユニット120は、患者側固定用部材152を用いて患者200(抜管防止具600)に取り付けられる。
【0039】
チューブ側固定用部材151は、第1取付部121が有する2つのスナップオス121Aと嵌合する、2つのスナップメス151Bを有する。チューブ側固定用部材151は、センサユニット120の裏面側から、第1取付部121に取り付けられる。また、チューブ側固定用部材151は、2つのスナップメス151Bの間に、滑り止め151Cを有する。
【0040】
チューブ側固定用部材151は、チューブ820(動脈側チューブ821、及び静脈側チューブ822)に、第1取付部121を取り付けるために用いられる。
図4の態様では、動脈側チューブ821及び静脈側チューブ822の2本のチューブ820に、センサユニット120の第1取付部121が取り付けられる。
ここでは、第1取付部121とチューブ側固定用部材151とで、2本のチューブ820を挟んだ状態で、スナップオス121Aと、スナップメス151Bとが留められる。これにより、センサユニット120の第1取付部121が、2本のチューブ820に取り付けられる。
2本のチューブ820は、滑り止め151Cで固定される。これにより、第1取付部121の取り付け位置がチューブ820に沿ってずれることが防止される。
【0041】
図4の態様では、第1取付部121とチューブ側固定用部材151とで、2本のチューブ820を纏めて挟みこむことによって、センサユニット120の第1取付部121をチューブ820に取り付けている。
本発明の実施形態において、チューブ820にセンサユニット120の第1取付部121を取り付ける場合、動脈側チューブ821又は静脈側チューブ822のいずれか一方のみを第1取付部121とチューブ側固定用部材151とで挟みこむことによって、センサユニット120の第1取付部121を1本のチューブ820(動脈側チューブ821又は静脈側チューブ822)に取り付けてもよい。
センサユニット120の第1取付部121を1本のチューブ820に取り付ける場合は、チューブ側固定用部材151よりも2つのスナップメス151B間の距離の短いチューブ側固定用部材を用いればよい。
【0042】
センサユニット120は、第1取付部121側にケーブル115と接続される接続端子30Aが設けられている。
第1取付部121は、上述した通り、医療用チューブ部材に取り付けられる。従って、接続端子30Aが第1取付部121側に設けられていると、医療用チューブ部材とケーブル115とが纏めやすくなる。
【0043】
患者側固定用部材152は、固定部630の第3固定部633に、センサユニット120の第2取付部122を取り付けるために用いられる。
図5に示されるように、第2取付部122のスナップオス122Aは、患者側固定用部材152のスナップメス152Bと留められる。これにより、第2取付部122に、センサユニット120の裏面側から患者側固定用部材152が取り付けられる。
【0044】
図6は、抜管防止具600における固定部630の第3固定部633への第2取付部122の取り付けを示す模式図である。
図6に示されるように、本実施形態では、チューブ側固定用部材151を用い、センサユニット120の第1取付部121が、動脈側チューブ821及び静脈側チューブ822に取り付けられた状態で、第2取付部122が第3固定部633に取り付けられる。
【0045】
患者側固定用部材152は、
図5に示されるように平面視矩形状のシート部材であり、一方の面にスナップメス152Bが配置され、この面と反対側の面のほぼ全面に、面ファスナのフック152D(
図6参照)が設けられている。
上述したように、第3固定部633の取り付け状態で外側になる面には面ファスナのループが設けられている。そのため、患者側固定用部材152が留められた第2取付部122は、面ファスナのフック152Dによって、第3固定部633に貼り付けることができる。第2取付部122を第3固定部633に貼り付けることで、センサユニット120の第2取付部122は、抜管防止具600を介して患者200に取り付けられる。
【0046】
医療従事者は、第2取付部122を第3固定部633に貼り付ける際に、第2取付部122の、第3固定部633への貼り付け位置で調整することで、センサ部材10のプリテンション量を調整することができる。プリテンション量の調整については後述する。
【0047】
本実施形態において、センサユニット120を患者に取り付ける場合、第1取付部121がチューブ820に取り付けられた状態で、第2取付部122を固定部630に取り付けてもよいし、第2取付部122が固定部630に取り付けられた状態で、第1取付部121をチューブ820に取り付けてもよい。
【0048】
図7は、
図3のセンサユニット120が備えるセンサ部材10を主に説明するための斜視図である。
図8は、
図7のA-A線断面図である。
センサユニット120が備えるセンサ部材10は、
図7及び
図8に示すように、誘電層、電極層、電極接続部などを備えた積層体である。センサ部材10は、帯状であり、長手方向(
図7、8中、左右方向)に伸縮可能に構成されている。
センサ部材10の説明では、
図8に示されるセンサ部材10の上側を表側とし、下側を裏側とする。
【0049】
センサ部材10は、伸縮性を有するシート状の誘電層11と、誘電層11のおもて面に形成された第1電極層12Aと、誘電層11の裏面に形成された第2電極層12Bと、第1電極層12Aに連結された上記長手方向に延びる第1配線13Aと、第2電極層12Bに連結された上記長手方向に延びる第2配線13Bとを備える。
【0050】
誘電層11は、ウレタンゴム等のエラストマーを含むエラストマー組成物からなる。第1電極層12A、第2電極層12B、第1配線13A及び第2配線13Bは、いずれも、カーボンナノチューブ等の導電材料を含む導電性組成物からなる。
【0051】
センサ部材10は、非伸縮性の樹脂シート17の上面に銅箔からなる電極接続部16A及び電極接続部16Bが形成されたシート状の接続部材18を備える。センサ部材10では、第1配線13Aと電極接続部16A、及び第2配線13Bと電極接続部16B、がそれぞれ導電性接着剤14A、及び導電性接着剤14Bを介して電気的に接続されている。
【0052】
誘電層11の表側及び裏側のそれぞれには、第1電極層12A及び第2電極層12Bを覆うように表側保護層15A及び裏側保護層15Bが形成されている。
【0053】
センサ部材10は、上記の接続部材18によって回路基板218に接続される。
回路基板218は、回路(図示せず)が形成された配線板217と、この配線板217上に実装された計測器3と、計測器3と電気的に接続され、回路基板218に固定された接続端子30Aを備える。更に、配線板217の上面には、銅箔からなる回路接続部216A及び回路接続部216Bが設けられている。
電極接続部16Aと回路接続部216A、及び電極接続部16Bと回路接続部216Bとのそれぞれはリード線26で接続されている。各接続部間は、リード線26に代えてハンダで接続されていてもよい。
なお、
図8において、計測器3及び接続端子30Aの内部構造は省略する。
【0054】
第1電極層12Aと第2電極層12Bとは、同一の平面視形状を有しており、誘電層11を挟んで第1電極層12Aと第2電極層12Bとは全体が対向している。センサ部材10では、第1電極層12Aと第2電極層12Bとの対向した部分が検出部位19となる。上記センサ部材10において、第1電極層12Aと第2電極層12Bとは、必ずしも誘電層11を挟んでその全体が対向している必要はなく、少なくともその一部が対向していれば良い。
【0055】
センサ部材10において、誘電層11は面方向に伸縮可能である。従って、誘電層11は、表裏面の面積が変化するように変形することができる。また、誘電層11が変形した際には、その変形に追従して第1電極層12A及び第2電極層12B、並びに、表側保護層15A及び裏側保護層15B(以下、両者を合わせて単に保護層ともいう)も、変形することができる。そのため、センサ部材10では、検出部位19の静電容量が、誘電層11の変形量(電極層の面積変化)と相関をもって変化する。よって、検出部位19の静電容量の変化を検出することで、センサ部材10の変形量が検出できる。また、センサ部材10において、平面視した際に樹脂シート17と重なる部分は、上記長手方向(センサ部材10の面方向)に実質的に伸縮することができない。
【0056】
なお、センサ部材10は、裏面側であって、長手方向の一端側(
図6及び
図7中、左右方向の右側)にのみ非伸縮性の部材(樹脂シート17)を備えるが、本発明の実施形態に係るセンサ部材10は、当該センサ部材10の裏面側であって、長手方向の他端側(
図6及び
図7中、左右方向の左側)にも非伸縮性の部材(例えば、樹脂シート)を備えていてもよい。
【0057】
図3に戻って、センサ部材10の両面には、伸縮性の布生地からなる被覆部材21が設けられている。被覆部材21は、長手方向(
図3中、左右方向)の長さがセンサ部材10の長手方向の長さより長い2枚の伸縮性布生地からなる。センサ部材10は、この2枚の布生地同士の間に挟み込まれている。被覆部材21を設けることにより、センサ部材10が、保護される。この伸縮性布生地は、少なくともセンサ部材の長手方向に充分な伸縮性を有する。
【0058】
図2に示されるように、本実施形態に係る自己抜去検知装置100の使用状態において、センサユニット120は、チューブ820に第1取付部121が取り付けられている。
また、センサユニット120の第2取付部122が、抜管防止具600の固定部630に取り付けられている。
このようにセンサユニット120が取り付けられている場合、患者200による自己抜去を検出するのに適している。
【0059】
患者200による自己抜去は、患者200の腕に施された透析部材800を排除することを目的とする行動である。この場合、患者200は、主に抜管防止具600及び/又はチューブ820を除去しようとする。この患者200の除去行動により、センサユニット120で繋がれたチューブ820と固定部630との間の距離は変化する。本実施形態は、この変化量を、センサ部材10の伸縮量として捉えることにより、自己抜去検知装置100は、患者200による自己抜去の行動を検知することができる。
よって、本実施形態にように、チューブ820と患者200とを繋ぐようにセンサユニット120を取り付けることは、自己抜去検知装置100が、患者の自己抜去の行動を検知するのに好適である。
【0060】
また、本実施形態において、センサユニット120は、チューブ820と抜管防止具600とを繋ぐように取り付けられている。
この場合、センサユニット120の取り付けが容易であり、更には、センサユニット120を適度なプリテンションを有する状態で取り付けるのに適している。
【0061】
自己抜去検知装置100を用いて患者200による自己抜去の監視を開始するにあたり、センサ部材10は、適度なプリテンションを有していることが好ましい。
ここで、プリテンションを有しているとは、センサ部材10が予め外力によって伸ばされ、外力を解放すると縮む状態にあることを意味する。
検知ユニット110は、センサ部材10の伸縮状態に対する静電容量の出力を、センサ部材10の伸縮量(mm)に変換する。そして、検知ユニット110は、センサ部材10の伸縮量と、所定の閾値とを比較し、患者200による自己抜去の有無を判断する。センサユニット120は、チューブ820と固定部630との間を架け渡すように設置される。この場合、センサユニット120のセンサ部材10の伸縮量は、チューブ820と固定部630と間の距離の変化と相関する。従って、自己抜去検知装置100は、患者200の自己抜去行動によるチューブ820と固定部630との間の距離の変化量を、センサ部材10の伸縮量として捉えることで、自己抜去を検知することができる。
【0062】
自己抜去検知装置100による自己抜去の監視開始時に、センサ部材10が弛んだ状態の場合、チューブ820と固定部630と間の距離の変化が、センサ部材10の弛みに吸収される。そのため、患者200による自己抜去を早期に検知できない場合がある。
逆に、自己抜去の監視開始時に、センサ部材10が、検出限界の近くまで伸びた状態(プリテンションが極めて過剰な状態)の場合、センサ部材10の検出限界を超えたチューブ820と固定部630との間の距離の変化が検知できなくなる。そのため、患者200による自己抜去の検知ができない場合がある。
そのため、自己抜去検知装置100は、センサ部材10が適度なプリテンションを有する状態で患者に取り付けられることが好ましい。
【0063】
そして、センサユニット120を構成する患者側固定用部材152が留められた第2取付部122は、患者側固定用部材152に設けられている面ファスナのフック152Dにより、第3固定部633に形成されている上述の面ファスナのループに貼り付けることができる。そのため、本実施形態に係る自己抜去検知装置100は、センサ部材10のプリテンション量を、第2取付部122の第3固定部633への取り付け位置の調整で、容易に調節可能である。
【0064】
一方、プリテンションの調整方法はこれに限られない。
本実施形態では、第2取付部122の第3固定部633への取り付け手段として面ファスナを採用しているが、この取り付け手段として、面ファスナに代えて、医療用テープや、両面テープ、磁石等を適用してもよく、この場合も、センサ部材10のプリテンションを調整することができる。
また、第1取付部121のチューブへの取り付け位置を調整することで、プリテンションを調整することもできる。
【0065】
図9は、本実施形態に係る自己抜去検知装置100が備えるケーブル115を示す図である。
ケーブル115は、ケーブル本体116と、ケーブル本体116の両端に設けられた接続端子117A及び117Bを備える。
接続端子117Aは、前述のセンサユニット120の接続端子30Aと接続するための接続端子である。
接続端子117Bは、後述する検知ユニット110と接続端子30Bと接続するための接続端子である。
【0066】
図10は、本実施形態に係る自己抜去検知装置100が備える検知ユニット110を示す図である。検知ユニット110は事故抜去を検知する。
検知ユニット110は、本体5及び接続端子30Bを備える。
接続端子30Bは、ケーブル115の一方の端部に設けられた接続端子117Bと接続するための接続端子である。接続端子30Bと接続端子117Bとを接続することにより、検知ユニット110は、ケーブル115と接続される。検知ユニット110は、更にケーブル115の他方の端部に設けられた接続端子117Aと接続されたセンサユニット120と電気的に接続される。
検知ユニット110は、例えば、背面側に背面固定版28がネジ29で固定されて使用される。この場合、検知ユニット110は、
図1に示されるように、フック等に引っ掛けて使用することができる。
【0067】
本体5は、電源ボタン6、第1操作ボタン7A、第2操作ボタン7B、モニター4d、及び多数の貫通孔8を有する。
電源ボタン6を押すことで、検知ユニット110のONとOFFとが切替わる。本体5は、電源(図示せず)を有しており、電源ボタン6により、検知ユニット110、及び検知ユニット110に接続されたセンサユニット120への電気供給が制御される。
【0068】
モニター4dには、準備画面、監視画面、及び警報画面が表示される。モニター4dに表示される準備画面と監視画面とは、第1操作ボタン7Aを押すことで切り替わる。
準備画面は、自己抜去検知装置100による監視を開始する前に、監視条件を設定するための画面である。医療従事者は、この画面が表示されている状態で、第1操作ボタン7A、第2操作ボタン7B、及び電源ボタン6を所定の順序で押すことで、監視条件を設定することができる。
監視画面は、自己抜去検知装置100が患者を監視し、異常を検知してないとき(検知ユニット110のステータスが監視中)に表示される画面であり、モニター4dには、センサユニット120の伸縮センサ50の状態が表示されている。
警報画面は、自己抜去検知装置100が患者の異常を検知した場合(検知ユニット110のステータスが警報中)に表示される画面である。
【0069】
多数の貫通孔8は、本体5に内蔵されたスピーカー4cが出力する音の通り道である。
本体5は、センサユニット120からの出力信号に基づいてセンサ部材10の変形量を算出する。更に、算出された変形量に基づいて、本体5は、変形状態のモニター4dへの表示、自己抜去の有無の判断、警告音による自己抜去の警告、及び携帯端末130への警告信号の送信を行う。
【0070】
図11は、本実施形態の自己抜去検知装置100の構成を示す概略図である。
自己抜去検知装置100は、
図11に示すように、センサユニット120、ケーブル115、検知ユニット110、及び携帯端末130を有する。
センサユニット120は、センサ部材10と、センサ部材10の静電容量の変化を計測する計測器3とを備える。
【0071】
計測器3は、静電容量Cをアナログ電圧信号に変換するためのCV変換回路3a、アナログ電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路3b、及び記憶部3cを備える。計測器3は、センサ部材10の検出部位19の静電容量Cをアナログ電圧信号に変換した後、更にデジタル信号に変換して検知器4に送信する。以下、本実施形態において、計測器3から検知器4へ送信される上記のデジタル信号は、電圧信号Vと表記される。
記憶部3cは、静電容量Cから取得した電圧信号Vと、センサ部材10の伸縮量(mm)との相関を記録したデータテーブルを記憶している。使用する伸縮センサ50により、センサ部材10の変形量に対する静電容量の出力が異なるため、データテーブルは、使用する伸縮センサごとに設定されることが好ましい。
【0072】
検知ユニット110の本体5は、計測器3で取得した計測結果を処理する検知器4を備える。
【0073】
検知器4は、演算回路4a、記憶部4b、スピーカー4c、モニター4d、及び無線送信器4eを備える。
記憶部4bは、後述する閾値レベル等の監視条件に関するデータを記憶している。
また、記憶部4bは、本体5の演算回路4aの処理フローを記憶している。
【0074】
演算回路4aは、記憶部3cに記憶されているデータテーブル、及び計測器3より受信した電圧信号Vに基づき、センサ部材10の伸縮量(mm)を算出する。
記憶部4bは、自己抜去の警告を行うセンサ部材10の伸縮量の閾値を記憶している。本実施形態では、記憶部4bは、センサ部材10が伸長した場合の上限閾値と、センサ部材10が収縮した場合の下限閾値とを記憶している。上限閾値及び下限閾値の数値としては、後述するように、準備画面で選択した閾値レベルに応じた数値を記憶している。
演算回路4aは、センサ部材10の伸縮量と、記憶部4bに記憶されている上限閾値、及び下限閾値とを比較する。演算回路4aは、伸縮量が閾値を逸脱している場合、スピーカー4cに警告音を、モニター4dに警告表示を、無線送信器4eに警告信号を、出力させる制御を行う。
上記警告表示は、モニター4dからの光出力により、医療従事者に自己抜去の警告を伝えられるものであれば特に制限されない。上記警告表示としては、例えば、文字、色彩、及び輝度等が挙げられる。
【0075】
携帯端末130は、無線受信器130a、演算回路130b、記憶部130c、スピーカー130d、バイブレータ130e、及びモニター130fを備える。無線受信器130aが、本体5の無線送信器4eから発信された警告信号を受信すると、演算回路130bは、スピーカー130dに警告音を、バイブレータ130eに振動を、及びモニター130fに警告表示を出力させる制御を行う。
上記警告表示は、モニター130fからの光出力により、医療従事者に自己抜去の警告を伝えられるものであれば特に制限されない。上記警告表示としては、例えば、文字、色彩、及び輝度等が挙げられる。
【0076】
本実施形態における携帯端末130は、スマートフォンであり、モニター130fは、入力機能も備える。また、記憶部130cには、演算回路130bが、後述する所定の処理フローを実行するための、アプリケーションがインストールされている。
【0077】
図12は、検知ユニット110のモニター4dの表示画面の一事例を示す図である。
図12(a)は、準備状態の画面(以下、準備画面ともいう)である。
図12(b)は、患者を監視している状態の画面(以下、監視画面ともいう)である。
図13は、検知ユニット110のモニター4dに表示される画面の遷移を示す図である。
準備画面では、準備画面であることを示す「STB」の文字がモニター4dに表示されている。監視画面では、監視画面であることを示す「RUN」の文字がモニター4dに表示されている。
【0078】
モニター4dの上部には、検知ユニット110の状態を表示する状態表示エリア210がある。状態表示エリア210には、無線マーク211、音量マーク212、電源接続マーク213が表示されている。医療従事者は、無線マーク211により、携帯端末130との無線接続が維持されているか否かを確認することができ、音量マーク212により設定されている音量(ミュートを含む)を確認することができ、電源接続マーク213により、検知ユニット110が電源に接続されているか否かを確認することができる。
本発明の実施形態において、状態表示エリア210に表示されるマークは上述したマークに限定されず、充電量を示すマーク等が表示されてもよい。
【0079】
検知ユニット110のモニター4dには、伸縮センサ50のセンサ部材10の伸縮状態を示すインジケータ220が表示される。このインジケータ220の表示には、伸長側の閾値としての上限閾値221、収縮側の閾値としての下限閾値222、及びセンサ値223の表示が含まれる。
上限閾値221及び下限閾値222は、医療用チューブ部材の抜去が発生にしているか否かを判断する基準値である。例えば、上限閾値221が「+15mm」に設定されている場合は、センサ部材が15mm以上伸長すると自己抜去が発生と判断する。また、例えば、下限閾値222が「-10mm」に設定されている場合は、センサ部材が10mm以上収縮すると自己抜去が発生と判断する。
センサ値223は、センサ部材のリアルタイムの伸縮量である。
【0080】
監視画面のインジケータ220には、更に伸長ホールド線224及び収縮ホールド線225が表示される。伸長ホールド線224は、監視中における最大伸長時の伸長量を示すラインである。収縮ホールド線225は、監視中における最大収縮時の収縮量を示すラインである。伸長ホールド線224及び収縮ホールド線225を表示することより、医療従事者は、監視中に生じたセンサ部材の最大伸長時、及び最大収縮量を把握することができる。
【0081】
更に、モニター4dには、閾値レベル230が表示されている。本実施形態において、閾値レベルとは、上限側閾値の大小と相関する指標である。閾値レベルは、例えば、レベル1~レベル4の4段階で設定されている。具体的には、上限閾値が20mmの場合はレベル1、15mmの場合はレベル2、10mmの場合はレベル3、5mmの場合はレベル4に設定されている。この閾値レベルは、患者の様子や、自己抜去検知装置の取り付け方を考慮して、選択すればよい。
閾値レベルごとの上限閾値は、予め記憶部4bに記憶されている。
上述した閾値レベルの設定条件は例示であり、これに限定されない。閾値レベルを設定する場合は、自己抜去検知装置の使用対象や使用方法に応じて、種々の条件で設定すればよい。
【0082】
医療従事者は、検知ユニット110のモニター4dを見ながら、自己抜去の監視条件を設定することができる。
検知ユニット110は、電源ボタン6を押すと電源が入り、モニター4dが表示される。モニター4dが表示された状態で、第1操作ボタン7Aを押すと、第1操作ボタン7Aを押す毎にモニター4dに表示される画面が「準備画面」と「監視画面」を行き来するように切り替わる。
また、「準備画面」で電源ボタン6を長押しすると、検知ユニット110の電源がOFFになる。
【0083】
検知ユニット110は、「準備画面」が表示された状態で、電源を押すと、モニター4dに表示される画面が「設定画面A」に切り替わる。
「設定画面A」には、スピーカーの音量(Speaker vol.)や、閾値レベル(Alert Level)等の複数の設定項目のリストが表示される。そして、リスト内の選択された1つの項目は、他の項目と背景色が異なっている。また、「設定画面A」では第2操作ボタン7Bを押すことで、設定された項目が切り替わる。
【0084】
また、「設定画面A」が表示された状態で、第1操作ボタン7Aを押すと、モニター4dに表示される画面が「設定画面B」に切り替わる。この「設定画面B」は、「設定画面A」で選択された項目について、具体的な設定を行う画面である。
図13には、「設定画面B」の例として、「設定画面A」で項目として閾値レベル(Alert Level)を選択した場合の例が示されている。この例では、第2操作ボタン7Bを押すたびに、モニター4dに表示される閾値レベルが切り替わる。そして、モニター4dに所望の閾値レベルが表示された状態(
図13の例では、レベル2が表示された状態)で電源ボタンを押すと、閾値レベルがレベル2に設定されて、「設定画面A」に戻る。
このように、医療従事者は、自己抜去検知装置100における自己抜去の監視条件を、検知ユニット110を操作することによって設定することができる。
【0085】
図14のフローチャートは、準備段階における検知ユニット110の演算回路4aの処理フローの一例を示す。
この処理フローが実行されることで、自己抜去の監視条件が設定される。
S10において、演算回路4aは、検知ユニット110の電源をONにする指示があるか否かを判定する。演算回路4aは、電源がONにする指示があると、モニター4dに設定画面Aを表示させ、S20に移動する。
検知ユニット110の電源をONにする指示は、医療従事者が検知ユニット110の電源ボタン6が押すことで入力される。
検知ユニット110は、電源がONにされ、モニター4dに準備画面が表示されると、自己抜去の監視条件が設定可能になる。
【0086】
S20において、演算回路4aは、記憶部4bに記憶されている監視条件を読み出し、モニター4dに表示させる。このとき、モニター4dが表示する監視条件は、前回使用時の監視条件、又は、製品出荷時の監視条件である。
【0087】
次に、S30において、演算回路4aは、計測器3からの電圧信号Vに基づいて、センサ部材10の伸縮量(mm)を取得する。より具体的には、演算回路4aは、計測器3の記憶部3bに記憶されている上述のデータテーブルに基づき、計測器3からの電圧信号Vの電圧値と初期電圧値との差に関する値から、センサ部材10の伸縮量を取得する。ここで、演算回路4aにより変換されるセンサ部材10の伸縮量は、上記の初期電圧値における伸縮量0mmを基準として、センサ部材10が縮んだ場合は、マイナスの伸縮量となり、センサ部材10が伸びた場合は、プラスの伸縮量となる。例えば、プリテンション状態から、センサ部材10が3mm縮んだ場合、伸縮量は「-3mm」となる。逆に、プリテンション状態から、センサ部材10が5mm伸びた場合、伸縮量は「+5mm」となる。
【0088】
次に、S40において、演算回路4aは、監視条件の設定を開始するか否かを判定する。演算回路4aは、モニター4dに設定画面Aを表示させる指示があった場合は、監視条件の設定を開始すると判定してS70に移動する。モニター4dに設定画面Aを表示させる指示は、医療従事者により入力される。医療従事者は、S20でモニター4dに表示された準備画面を確認して、監視条件を変更するか否かを判断し、その結果、監視条件を変更すると判断した場合は電源ボタンを押す。
【0089】
S70では、スピーカーの音量、閾値レベル、無線通信の有無等の監視条件の設定を行う。
S70において、演算回路4aは、医療従事者が入力した指示に応じて、モニター4dに、設定画面A、設定画面Bを表示させる。また、医療従事者が入力した指示に応じて、スピーカーの音量、閾値レベル、無線通信の有無等の監視条件を選択する。更に、演算回路4aは、選択された監視条件を記憶部4bに記憶させる。ここで、医療従事者による指示の入力は、医療従事者が、電源ボタン6、第1操作ボタン7A、及び第2操作ボタン7Bを操作することにより行われる。
【0090】
S80において、演算回路4aは、監視条件の設定を完了するか否かを判定する。演算回路4aは、モニター4dの設定画面Aを準備画面に戻す指示があった場合は、監視条件の設定を完了すると判定してS30に移動する。モニター4dに表示させる画面を準備画面に戻す指示は、医療従事者により入力される。医療従事者は、モニター4dに表示させる画面を準備画面に戻す場合、モニター4dに設定画面Aが表示された状態で電源ボタンを押す。
一方、モニター4dの設定画面Aを準備画面に戻す指示がない場合は、演算回路4aは、監視条件の設定を完了せず、S70に戻る。
【0091】
S40において、モニター4dに設定画面Aを表示させる指示が無かった場合は、演算回路4aは、監視条件を設定しない(監視条件を変更しない)と判定してS50に移動する。
S50において、演算回路4aは、患者の自己抜去の監視を開始するか否かを判定する。演算回路4aは、モニター4dに監視画面を表示させる指示があった場合は、患者の監視を開始すると判定して、監視段階に移行する(※1)。監視段階における処理フローは後述する。モニター4dに監視画面を表示させる指示は、医療従事者により入力される。医療従事者は、モニター4dに監視画面を表示させる場合、モニター4dに準備画面が表示された状態で第1操作ボタン7Aを押す。
一方、モニター4dに監視画面を表示させる指示がない場合、監視段階に移行せず、演算回路4aの処理はS60に移行する。
【0092】
S60において、演算回路4aは、検知ユニット110の電源をOFFにするか否かを判定する。演算回路4aは、検知ユニット110の電源をOFFにする指示があった場合は、電源をOFFにして処理フローを終了する。電源をOFFにする指示は、医療従事者により入力される。医療従事者は、モニター4dに準備画面を表示した状態で、電源ボタン6を長押しすることにより、検知ユニット110の電源をOFFにする指示を入力する。
一方、S60において、検知ユニット110の電源をOFFにする指示が無いと判定された場合は、演算回路4aの処理はS30に戻る。
【0093】
本実施形態の自己抜去検知装置により、患者の自己抜去を監視する場合、センサユニット120を患者に取り付ける。センサユニットの取り付けは、上述した検知ユニットにおける監視条件の設定を完了し、自己抜去の監視を開始する前に行うことが好ましい。この場合、適度なプリテンションを有する状態でセンサユニット120を患者200に取り付けるのに適しているからである。
検知ユニット110を準備状態(モニター4dに準備画面が表示された状態)で、センサユニット120の取り付けを行うと、モニター4dに表示されたセンサ値223を確認しながらセンサユニット120の取り付けを行うことができる。そのため、センサ部材10に適正な伸び(プリテンション)を付与できるように、取り付け位置を微調整しながら、第1取付部121をチューブ820に取り付け、第2取付部を抜管防止具600の第3固定部633に取り付けることができる。
【0094】
図15のフローチャートは、監視段階における検知ユニット110の演算回路4aの処理フローの一例を示す。
検知ユニット110は、モニター4dに監視画面を表示させると、自己抜去の監視が開始される(※1)。
【0095】
S110において、演算回路4aは、記憶部4bに、計測器3から取得したプリテンション状態のセンサ部材10の電圧信号V(初期電圧値)、及びステータスとして監視中を記憶させる。すなわち、S110における初期電圧値が、センサ部材10の伸縮量が0mmの状態を示す電圧信号Vとなる。なお、ステータスが監視中とは、自己抜去が検知されていない状態を示す。監視段階のステータスは、監視中、又は警報中のいずれかである。
【0096】
次に、S120において、演算回路4aは、計測器3からの電圧信号Vに基づいて、センサ部材10の伸縮量(mm)を取得する。伸縮量(mm)を取得する手法は、S30で説明した通りである。
次に、S130において、演算回路4aは、ステータスが、監視中か否かを判定する。ステータスが監視中ではない、すなわち警報中の場合、演算回路4aの処理は、S160の実行に移行する。なお、ステータスが警報中とは、自己抜去が検知された状態を示す。
【0097】
一方、S130において、ステータスが監視中であると判定された場合、S140において、演算回路4aは、S120で取得されたセンサ部材10の伸縮量と、記憶部4bに記憶されている、準備段階で設定した上限閾値(+15mm)及び下限閾値(-10mm)を比較する。伸縮量が、上限閾値未満及び下限閾値を超える場合、演算回路4aの処理は、S170の実行に移行する。なお、伸縮量が上限閾値未満及び下限閾値を超える状態は、監視中のステータス、すなわち、自己抜去が検知されていない状態である。
【0098】
一方、S140において、伸縮量が、上限閾値(+15mm)以上、又は下限閾値(-10mm)以下の場合、演算回路4aは、S150において、警報中のステータスを記憶部4bに記憶させる。すなわち、記憶部4bに記憶されていた、監視中のステータスが、警報中のステータスに変更される。なお、伸縮量が、上限閾値以上、又は下限閾値以下の状態は、自己抜去が検知された状態である。
次に、S160において、演算回路4aは、スピーカー4cに警告音を出力させ、モニター4dに警報画面を出力させる。
【0099】
次に、S170において、演算回路4aは、無線送信器4eに、ステータスに関する信号を送信させる。具体的には、無線送信器4eは、自己抜去が検知されていない状態であれば、監視中のステータスに関する信号を送信し、自己抜去が検知された状態であれば、警報中のステータスに関する信号を送信する。
次に、S180において、演算回路4aは、警報停止指示又は監視停止指示の有無を判定する。S180において、警報停止指示又は監視停止指示の指示が有ると判定された場合、演算回路4aは、※2(S20)に移動する。一方、S180において、警報停止指示又は監視停止指示の指示が無いと判定された場合、演算回路4aはS120の処理に戻る。
S180における警報停止指示は、検知ユニットのモニター4dに警報画面が表示された状態で、医療従事者が操作ボタン7Aを押すことで入力できる。S180における監視停止指示は、検知ユニットのモニター4dに監視画面が表示された状態で、医療従事者が操作ボタン7Aを押すことで入力できる。
【0100】
S160の処理を行った後、S170に移行し、その後S180に移動した場合、S180において、警報停止指示又は監視停止指示が無ければ、演算回路4aの処理は、S120に戻り、S130に移動する。ここで、記憶部4bに記憶されているステータスが、警報中の場合は、演算回路4aの処理は、S130から、S160にスキップすることになる。すなわち、S140において、自己抜去が検知された場合、演算回路4aは、警報停止指示の指示が無い限り、警告処理を継続することになる。これにより、患者200の自己抜去中に、センサ部材10の伸縮量が、上限閾値未満及び下限閾値を超える状態に戻ったとしても、スピーカー4cによる警告音、及びモニター4dによる警報画面の表示が継続する。その結果、本実施形態に係る自己抜去検知装置100は、患者200の自己抜去行動を、医療従事者に適切に通知することができる。
【0101】
図16のフローチャートは、携帯端末130の演算回路130bの処理フローの一例を示す。
携帯端末130にインストールされている、上述のアプリケーションを実行することで、
図16の処理フローが開始される(スタート)。
S210において、演算回路130bは、記憶部130cに、受信待ち時間として0秒、及び監視中のステータスを記憶させ、警告音停止指示の記憶を削除させる。受信待ち時間とは、無線受信器130aが、上述のS170において、無線送信器4eから出力されたステータスに関する信号を、最後に受信した時点からの経過時間(秒)である。
S220において、演算回路130bは、無線受信器130aによるステータス信号の受信の有無を判定する。
【0102】
S220において、ステータス信号の受信が無いと判定された場合、S230において、演算回路130bは、記憶部130cに記憶されている受信待ち時間を更新する。具体的には、演算回路130bは、記憶部130cに記憶されていた受信待ち時間に、経過時間を加算することで、更新された受信待ち時間を算出し、更新された受信待ち時間を、記憶部130cに記憶させる。S230の処理後、演算回路130bは、S240において、タイムアウトの有無を判定する。S240において、タイムアウトが有ると判定された場合、演算回路130bは、S250において、警報中のステータスを記憶部130cに記憶させ、S270の処理に移行する。本実施形態において、タイムアウトは、30秒に設定されている。演算回路130bは、記憶部130cに記憶されている受信待ち時間が、30秒以上の場合、タイムアウトが有ると判定する。タイムアウトの処理は、所謂フェイルセーフとして機能する。すなわち、検知ユニット110、及び携帯端末130の少なくとも一つが、故障や不具合により、ステータスに関する信号を、送受信できなくなった場合、タイムアウトが発生する。タイムアウトにより、ステータスが警報中に変更され、演算回路130bは、後述する警告処理を開始する。そのため、医療従事者は、自己抜去検知装置100の故障や不具合の発生を早期に気付くことができる。また、患者200が、自己抜去行動を開始するにあたり、本体5の電源をOFFにする場合がある。この場合、ステータスに関する信号の、検知ユニット110からの送信が途切れる。その結果、タイムアウトが発生し、演算回路130bは、警告処理を開始する。これにより、自己抜去検知装置100は、患者200による計画的な自己抜去行動も検知することができる。
【0103】
S220において、ステータス信号の受信が有ると判定された場合、S260において、演算回路130bは、記憶部130cに、受信待ち時間として0秒、及び無線受信器130aが受信したステータスに関する情報を記憶させる。ここで、無線受信器130aが受信するステータスに関する情報は、上述のS170において、無線送信器4eより送信された、監視中又は警報中のステータスである。S270において、演算回路130bは、記憶部130cに記憶されているステータスが、監視中か否かを判定する。S270において、監視中であると判定された場合、演算回路130bは、S280において、モニター130fに監視中である旨を示す表示を出力させ、スピーカー130dに警告音を停止させ、バイブレータ130eに振動を停止させる。ここで、停止は、スピーカー130d、及びバイブレータ130eが、待機状態になることを意味する。S290において、演算回路130bは、アプリケーションの停止指示の有無を判定する。アプリケーションの停止指示が有る場合、演算回路130bは、アプリケーションを停止し、処理を完了する(エンド)。アプリケーションの停止指示が無い場合、演算回路130bの処理は、S220に戻る。
【0104】
S270において、監視中ではないと判定された場合、演算回路130bは、S300において、モニター130fに警告表示を出力させる。ここで、S270における監視中ではないとの判定は、記憶部130cに記憶されているステータスが、警報中であることを意味する。次に、S310において、演算回路130bは、警告音停止指示の有無を判定する。警告音停止指示が有る場合、演算回路130bは、S320において、記憶部130cに、警告音停止指示を記憶させる。警告音停止指示が無い場合、演算回路130bの処理は、S330に移行する。S330において、演算回路130bは、記憶部130cにおける、警告音停止指示の記憶の有無を判定する。S330において、警告音停止指示が、記憶部130cに記憶されていると判定された場合、演算回路130bは、S340において、スピーカー130dに警告音を停止させ、バイブレータ130eに振動を停止させ、上述のS290の処理に移行する。警告音停止指示が、記憶されていないと判定された場合、演算回路130bは、S350において、スピーカー130dに警告音を出力させ、バイブレータ130eに振動を出力させ、上述のS290の処理に移行する。
【0105】
図16のフローチャートに示される処理フローでは、警告処理が開始された際、医療従事者は、携帯端末130のモニター130fから、警告音停止指示を入力する(S310)ことにより、スピーカー130dの警告音、及びバイブレータ130eの振動を停止することができる(S340)。これにより、警告音、及び振動による、患者200を含む、病院内に居る患者への影響が低減できる。
なお、本実施形態は、警告音停止指示の入力により、警告音、及び振動の両方を、同時に停止する処理となっているが、本発明は、これに限られない。例えば、警告音、及び振動が、医療従事者の入力により、別々に停止可能な処理とすることもできる。また、警告音、及び振動の少なくとも一つについて、停止、及び出力が、医療従事者の入力により、切り換え可能な処理とすることもできる。
【0106】
このように、本実施形態に係る自己抜去検知装置及び自己抜去検知装置によれば、患者の自己抜去を監視し、事故抜去の予兆の検知、及び事故抜去発生時の早期の検知が可能である。
【0107】
(第2実施形態)
本実施形態は、伸縮センサが有するセンサ部材の構成が第1実施形態と異なる。
図17は、本実施形態で採用されるセンサ部材40を説明するための斜視図である。
図17は、
図18のB-B線断面図である。
本実施形態では、センサ部材として、第1実施形態のセンサ部材10に代えて、
図17、18に示されたセンサ部材40を採用する。
センサ部材40は、誘電層(第1誘電層)及びその両面に形成された第1電極層及び第2電極層に加えて、第2誘電層及び第3電極層を備える。
【0108】
図17、18に示されるセンサ部材40は、伸縮性を有するシート状の第1誘電層41Aと、第1誘電層41Aのおもて面に形成された第1電極層42Aと、第1誘電層41Aの裏面に形成された第2電極層42Bと、第1誘電層41Aの表側に第1電極層42Aを覆うように積層された第2誘電層41Bと、第2誘電層41Bのおもて面に形成された第3電極層42Cとを備える。また、センサ部材40は、第1電極層42Aに連結された第1配線43Aと、第2電極層42Bに連結された第2配線43Bと、第3電極層42Cに連結された第3配線43Cとを備える。ここで、第3配線43Cの一部は、第2配線43B上に積層され、第2配線43Bと一体化されている。
【0109】
更に、センサ部材40は、上面に銅箔からなる2つの電極接続部46A、及び電極接続部46Bが非伸縮性の樹脂シート47上に形成された接続部材48を備え、第1配線43Aと電極接続部46A、並びに、一体化された第2配線43B及び第3配線43Cと電極接続部46B、がそれぞれ導電性接着剤44A、及び導電性接着剤44Bを介して電気的に接続されている。また、センサ部材40は、第1誘電層41Aの裏側及び第2誘電層41Bの表側のそれぞれに裏側保護層45B及び表側保護層45Aが形成されている。
センサ部材40の接続部材48は、第1実施形態の接続部材18と同様、リード線やハンダを用いて回路基板218に接続される。
【0110】
センサ部材40において、第1~第3電極層42A~42Cは、同一の平面視形状を有する。第1電極層42Aと第2電極層42Bとは、第1誘電層41Aを挟んで全体が対向しており、第1電極層42Aと第3電極層42Cとは、第2誘電層41Bを挟んで全体が対向している。センサ部材40では、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分、及び第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分が、検出部位49となり、第1電極層42Aと第2電極層42Bとの対向した部分の静電容量と、第1電極層42Aと第3電極層42Cとの対向した部分の静電容量との和が、検出部位49の静電容量となる。
【0111】
このような構成を備えたセンサ部材40を用いて計測を行う場合、第2電極層42Bと第3電極層42Cとが電気的に接続されているため、導体である生体等を発生源とするノイズによって生じる計測誤差が低減される。そのため、センサ部材40を用いることによって、センサ部材10と比べて精度良く、伸縮量が検出される。
【0112】
第1及び第2実施形態で採用された伸縮センサ50は、静電容量型の伸縮センサである。
一方、本発明の実施形態で採用される伸縮センサは、静電容量型の伸縮センサに限定されるわけではなく、例えば、変形量に応じて検出部位の電気抵抗が変動する抵抗式の伸縮センサ等を採用することもできる。
【0113】
次に、静電容量型の伸縮センサを採用する場合を例に、自己抜去検知装置100の構成部材が説明される。
【0114】
[センサユニット]
<静電容量型の伸縮センサ>
≪センサ部材≫
(誘電層)
上記誘電層は、エラストマー組成物からなるシート状物である。上記誘電層は、その表裏面の面積が変化するように可逆的に変形することができる。本発明において、シート状の誘電層の表裏面は、誘電層のおもて面及び裏面を意味する。上記エラストマー組成物としては、例えば、エラストマーと、必要に応じて他の任意成分とを含有するものが、挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム等が、挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。上記エラストマーは、ウレタンゴム、シリコーンゴムが好ましい。永久歪み(または永久伸び)が、小さいからである。また、上記エラストマー組成物は、エラストマー以外に、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤等の添加剤、誘電性フィラー等を含有してもよい。
【0115】
上記誘電層の平均厚さは、10μm以上1000μm以下が好ましい。この場合、上記誘電層は、平面視時の面積が大きくなるように伸長するのに適している。上記平均厚さは、30μm以上200μm以下がより好ましい。上記誘電層は、その表裏面の面積が無伸長状態から30%以上増大するように変形可能であることが好ましい。ここで、30%以上増大するように変形可能であるとは、荷重をかけて面積を30%増大させても破断することがなく、かつ、荷重を解放すると元の状態に復元する(即ち、弾性変形範囲にある)ことを意味する。なお、上記誘電層の面方向に変形可能な範囲は、誘電層の設計(材質や形状等)により、制御することができる。
【0116】
(電極層)
上記電極層は、導電材料を含有する導電性組成物からなる。上記第1~第3電極層は、通常同一の材料を用いて形成されるが、必ずしも同一材料を用いる必要はない。上記導電材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、グラファイト、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、導電性高分子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。上記導電材料としては、カーボンナノチューブや、金属ナノワイヤーなどアスペクト比が大きいものが、好ましい。誘電層の変形に追従して変形する電極層の形成に適しているからである。
【0117】
上記導電性組成物は、上記導電材料以外に、例えば、導電材料のつなぎ材料として機能するバインダー成分や、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、導電材料のための分散剤、バインダー成分のための架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。
【0118】
(保護層)
上記センサ部材は、上記保護層(表側保護層及び裏側保護層)を備えていてもよい。上記保護層を設けることにより、電極層等を外部から電気的に絶縁することができる。また、上記保護層を設けることにより、センサ部材の強度や耐久性が高まる。上記保護層の材質としては、例えば、上記誘電層の材質と同様のエラストマー組成物等が挙げられる。
【0119】
(接続部材)
上記接続部材は、シート状の基材と上記基材の上面に形成された複数の電極接続部とからなる。上記シート状の基材としては、例えば、樹脂フィルムや樹脂板、不織布等の布生地等を使用することができる。上記シート状の基材は、上記伸縮性基材が伸縮しても実質的に伸縮(変形)しないものが好ましい。当該基材が容易に変形すると、電極接続部が破断する等の不都合が発生しやすくなる。上記樹脂フィルムや樹脂板の樹脂材料としては特に限定されず、例えば、PET等のポリエステル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
【0120】
上記電極接続部としては、例えば、銅箔等の金属箔からなるもの等が挙げられる。更に、上記電極接続部は、銅箔以外にも、例えば、金属材料からなる印刷層やメッキ層であってもよい。上記電極接続部は、例えば、接着剤を用いて上記基材に固定されている。
【0121】
上記電極接続部は、電極層に接続された配線(第1配線や第2配線、第1~第3配線)と導電性接着剤を介して電気的に接続されている。上記導電性接着剤としては、特に限定されず、従来公知の導電性接着剤が使用できる。上記導電性接着剤としては、市販品も使用できる。なお、上記電極層に接続された配線としては、例えば、上記電極層と同様の導電性組成物からなるものが挙げられる。
【0122】
このような構成を備えたセンサ部材は、例えば、特開2016-90487号公報に記載されたセンサシートの作製方法と同様の方法を用いて、誘電層の表裏面に電極層と保護層とが積層された部材を作製した後、上記接続部材を取り付け、その後、電極層(配線)と電極接続部とを電気的に接続することにより製造することができる。
【0123】
≪被覆部材≫
上記被覆部材は、上記センサ部材の周囲に設けられた絶縁性の部材である。上記被覆部材としては、例えば、伸縮性を有する布生地や、エラストマー組成物からなる部材が挙げられる。
上記伸縮性を有する布生地は、特に限定されず、織物であってもよいし、編物であってもよく、不織布であってもよい。
上記被覆部材は、伸縮異方性を有する部材が好ましい。
【0124】
上記被覆部材は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着材、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を用いて上記センサ部材と一体化される。ここで、上記粘着剤は、上記誘電層の伸縮を阻害しない柔軟性が必要である。
【0125】
≪第1取付部/第2取付部≫
第1取付部及び第2取付部を構成する素材は、例えば、布生地、ゴムシート、樹脂シート等である。
第1取付部及び第2取付部は、上記被覆部材に固定されている。第1取付部及び第2取付部の固定方法としては、接着剤による固定や、縫い付け等が採用できる。
第1取付部及び第2取付部には、スナップボタンのオス側又はメス側が取り付けられている。
第1取付部と第2取付部とは、同じ素材で構成されていてもよいし、異なる素材で構成されていてもよい。
【0126】
≪チューブ側固定用部材≫
チューブ側固定用部材を構成する素材は、例えば、布生地、ゴムシート、樹脂シート等である。
チューブ側固定用部材には、医療用チューブ部材に取り付けられる取付部(第1取付部)のスナップボタンと噛み合う、スナップボタンのメス側又はオス側が取り付けられている。
チューブ側固定用部材は、更にゴム製のすべり止め部材が設けられていてもよい。
【0127】
≪患者側固定用部材≫
患者側固定用部材を構成する素材は、例えば、布生地、ゴムシート、樹脂シート等である。
患者側固定用部材には、患者に取り付けられる取付部(第2取付部)のスナップボタンと噛み合う、スナップボタンのメス側又はオス側が取り付けられている。
患者側固定用部材は、更にゴム製のすべり止め部材が設けられていてもよい。
患者側固定用部材は、上記チューブ側固定用部材と同じ素材で構成されていてもよいし、異なる素材で構成されていてもよい。
【0128】
<計測器>
上記計測器は、上記センサ部材と電気的に接続されている。上記計測器は、上記センサ部材の上記検出部位の静電容量を計測する。上記静電容量を計測する方法としては従来公知の方法を用いることができる。そのため、上記計測器は、必要となる静電容量測定回路、演算回路、増幅回路、電源回路等を備える。
上記静電容量を計測する方法(回路)としては、例えば、自動平衡ブリッジ回路を利用したCV変換回路(LCRメータなど)、反転増幅回路を利用したCV変換回路、半波倍電圧整流回路を利用したCV変換回路、シュミットトリガ発振回路を用いたCF発振回路、シュミットトリガ発振回路とF/V変換回路とを組み合わせて用いる方法、及びCV変換回路とA/D変換回路とを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。
【0129】
[検知ユニット]
<本体>
≪検知器≫
上記検知器は、演算回路、増幅回路、記憶部、スピーカー、モニター、無線送信器、及び電源回路等を備える。
上記記憶部は、上述のデータテーブル、アプリケーション、及び上記センサ部材の伸縮量に関する情報等のデジタルデータを記憶できるものであればよい。上記記憶部としては、例えば、RAM、ROM、及びHDD等が挙げられる。
【0130】
上記無線送信器は、後述の携帯端末の無線受信機に通信できるものであればよい。上記無線送信器と、上記無線受信機との無線方式としては、例えば、ZigBee、Bluetooth、Wi-Fi、及び無線LAN等が挙げられる。なお、上記携帯端末が、上記自己抜去検知装置の構成として含まれない場合は、上記無線送信器の無い検知器が検知ユニットの本体として採用されてもよい。
上記検知器は、医療従事者に、自己抜去を通知できる手段を少なくとも一つ有していればよい。例えば、上記検知器は、スピーカー、及び、モニターから選択される少なくとも一つを有していればよい。また、自己抜去の通知手段は、スピーカー、及びモニターに限られず、例えば、バイブレータ等を含んでもよい。
【0131】
上述の第1実施形態では、計測器3と検知器4とは、ケーブル115を用いて有線で接続されているが、両者は無線で接続されていてもよい。上記計測器及び上記検知器が無線で接続される場合、上記計測器は無線送信器を、上記検知器は無線受信器を、それぞれ備える。
【0132】
また、上述の第1実施形態では、自己抜去検知装置専用の本体5を有する構成を示したが、本発明の自己抜去検知装置は、これに限られない。本体5は、上述の検出器の構成を有する汎用端末でもよい。汎用端末としては、例えば、パソコン、スマートフォン、携帯電話、タブレット型端末等が挙げられる。
【0133】
[携帯端末]
上記携帯端末は、演算回路、増幅回路、記憶部、スピーカー、バイブレータ、モニター、無線受信器、及び電源回路等を備える。
上記携帯端末の上記記憶部としては、上述の検知器と同様の記憶部を用いることができる。
上記携帯端末は、医療従事者に自己抜去を通知できる手段を少なくとも一つ有する。例えば、上記携帯端末は、スピーカー、バイブレータ、及びモニターから選択される少なくとも一つを有する。
上記携帯端末は、医療従事者が携帯できるものであればよく、特に制限されない。
上記携帯端末としては、例えば、スマートフォン、携帯電話、ノートパソコン、及びタブレット型端末等が挙げられる。
【0134】
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態における、医療用チューブ部材が施された患者の腕の周辺を示す。本実施形態は、第1実施形態と同様の自己抜去検知装置を用いて実施することができる。
本実施形態は、動脈側留置針811及び静脈側留置針812の穿刺の向きが第1実施形態とは異なる。そのため、センサユニット120の患者200への取り付け方法も異なる。
本実施形態において、動脈側留置針811及び静脈側留置針812は、手側から上腕側に向かうように、前腕の内側に穿刺されている。更に、第一実施形態と同様、留置針810が穿刺された患者の左腕には、抜管防止具600が装着されている。
【0135】
本実施形態では、このように透析治療が施された患者に対して、第1取付部121がチューブ820に取り付けられ、第2取付部122が抜管防止具600の第1固定部631に面ファスナによって取り付けられて、自己抜去検知装置が装着される。
このような実施形態も本発明の実施形態の1つであり、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0136】
(第4実施形態)
図20は、第4実施形態における、医療用チューブ部材が施された患者の腕の周辺を示す。
本実施形態は、このセンサユニット320の第2取付部322の患者へ取り付ける際に、第2取付部322を患者の体表(前腕の内側)に直接接触させ、医療用テープ500を用いて固定している。なお、図中、321は第1取付部であり、チューブ820に取り付けられている。
そのため、本実施形態は、センサユニットの構成が第1実施形態と異なる。具体的には、本実施形態で使用するセンサユニット320は、患者側固定用部材を有していない点で、第1実施形態で使用したセンサユニットと異なる。
このように、センサユニット320を患者に取り付けた実施形態も、本発明の実施形態の1つである。本実施形態でも医療用チューブ部材の自己抜去を、早期に、正確に、かつ簡便に検知することができる。また、自己抜去の予兆の検知のも寄与することができる。
なお、
図20に示された実施形態では、カバー部620は使用されていないが、本実施形態においても、保持部610に固定されたカバー部が使用されてもよい。
また、第4実施形態の手法でセンサユニット320を患者に取り付ける場合、患者は、抜管防止具(保持部610及び固定部631、632、633)が装着されていなくてもよい。
また、チューブ820の動きを抑制するために、抜管防止具の一部、例えば、固定部631のみが装着されていてもよい。
【0137】
(第5実施形態)
本実施形態は、自己抜去の検出対象となる治療が、第1実施形態と異なる。本実施形態において、自己抜去の検知対象となる患者は、経鼻胃管部材を用いた経鼻栄養法による処置が施された患者である。
図21は、第5実施形態に係る自己抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
本実施形態では、医療用チューブ部材が、患者200に施された経鼻胃管部材700である。
【0138】
経鼻胃管部材700は、カテーテル710、ボトル720、注入ポンプ730、第1チューブ740、第2チューブ750、第3チューブ760、第1コネクタ770、及び第2コネクタ780を備える。
カテーテル710は、患者200の鼻孔に挿入される。
ボトル720は、患者200に供給される栄養剤を収容する容器である。
注入ポンプ730は、ボトル720に収容されている栄養剤を、カテーテル710に送り出す装置である。
第1チューブ740は、注入ポンプ730の栄養剤の送出口(図示せず)に接続されている。
第2チューブ750は、注入ポンプ730の栄養剤の吸引口(図示せず)に接続されている。
第3チューブ760は、ボトル720に接続されている。
第1コネクタ770は、カテーテル710の患者200の鼻孔に挿入される末端とは反対側の末端と、第1チューブ740の注入ポンプ730と接続される末端とは反対側の末端とを接続固定する。
第2コネクタ780は、第2チューブ750の注入ポンプ730と接続される末端とは反対側の末端と、第3チューブのボトル720と接続される末端とは反対側の末端とを接続固定する。
【0139】
このような経鼻胃管部材700を用いると、ボトル720に収容されている栄養剤は、第3チューブ760、第2チューブ750、注入ポンプ730、及び第1チューブ740を通って、カテーテル710に供給される。
【0140】
本実施形態では、このような処置の施された患者に、自己抜去検出装置を取り付ける。
本実施形態で使用する自己抜去検出装置の構成は、第4実施形態で使用する自己抜去検出装置の構成とほぼ同様である。
本実施形態において、センサユニット320の第1取付部321は、チューブ側固定用部材を用いてカテーテル710に取り付けられる。センサユニット320では、チューブ側固定用部材における2つのスナップメス間の寸法が、カテーテル710に取り付けるのに適した寸法になっており、この点で、第4実施形態と異なる。
また、センサユニット320の第2取付部322は、患者の体表(頬)に直接接触させ、医療用テープ500を用いて固定される。
このように、センサユニット320を患者に取り付けた場合も、早期に自己抜去を検知することができる。このような実施形態も本発明の実施形態の1つである。
【0141】
このように、自己抜去の検知対象となる医療用チューブ部材には、透析部材だけでなく、経鼻胃管部材が含まれる。更に、上記医療用チューブ部材には、点滴部材や、血管系、消化器官系、ドレナージ系、呼吸器系、並びに、その他の体外式ペースメーカー、及び持続硬膜外麻酔等、チューブ、カテーテル、及びドレーン類を患者に挿入する、各種医療用部材も含まれる。
【0142】
(第6実施形態)
図22は、本実施形態に係る事故抜去検知装置の使用状態を示す模式図である。
本実施形態は、センサユニットとして、第4実施形態で採用したセンサユニット320とほぼ同様の構成のセンサユニットを採用した以外は、第1実施形態と同様の事故抜去検知装置を使用し、透析治療中の事故抜去を検知する実施形態である。
本実施形態では、センサユニット320の第1取付部321を、静脈側チューブ822の透析装置本体900に近い部分に取り付ける。第1取付部321の取り付け手法は、2つのスナップメス間の寸法が第1実施形態よりも狭く、1本のチューブに取り付けるのに適した寸法を有するチューブ側固定用部材を用いる以外は第1実施形態と同様である。
本実施形態では、第2取付部322を患者ではなく、透析装置本体900に取り付ける。第2取付部322は、透析装置本体900の静脈側接続部920に近い部分に、医療用テープ500を用いて固定される。
本実施形態によっても、医療用チューブ部材の事故抜去(自己抜去を含む)を検知することができる。
【0143】
このように、本発明の実施形態において、センサユニットの第2取付部は、患者以外に取り付けられていてもよい。この場合も医療用チューブ部材の事故抜去を検知することができる。
【0144】
(第7実施形態)
本発明の実施形態に係る事故抜去検知装置の構成は、
図11に示す構成に限定されない。本発明の実施形態に係る事故抜去検知装置は、
図23に示すような構成を有する自己抜去検知装置1100であってもよい。自己抜去検知装置1100は、計測器3がセンサユニット1120ではなく、検知ユニット1110に設けられている点で、第1実施形態の自己抜去検知装置100と異なる。これ以外の自己抜去検知装置1100の構成は、自己抜去検知装置100と同様である。
図24は、第7実施形態におけるセンサ部材10及び接続端子30Aの構成を示す斜視図である。自己抜去検知装置1100は、センサユニット1120が計測器3を備えていないため、センサユニット1120が備えるセンサ部材10は、2つの電極接続部16A及び電極接続部16Bが、リード線22を介して接続端子31Aと接続されている。
【0145】
このような構成を採用することにより、本実施形態の自己抜去装置1100は、第1実施形態の自己抜去検知装置100に比べて、消耗品であるセンサユニット1120を安価に製造することができる。そのため、ランニングコストを抑えることができる。
一方、本発明の実施形態に係る事故抜去検知装置は、第7実施形態の事故抜去装置1100に比べて、第1実施形態の事故抜去検知装置100の方が検知精度に優れる。これは、センサ部材10の近傍で、計測結果がデジタル信号に変換されるため、ケーブル115等の静電容量の影響を受けにくいからである。
【0146】
(その他実施形態)
第1実施形態に係る事故抜去検知装置100は、通知部(携帯端末130)として、スマートフォンを備えている。しかしながら、本発明の実施形態に係る事故抜去検知装置が備える通知部は、スマートフォンに限定されず、ナースコールによる呼び出しを医療従事者に通知する端末や、透析装置本体に設けられた出力装置等が備えていてもよい。
これらの端末や出力装置は、検知部が発信する検知結果を、有線通信手段を介して受信してもよいし、無線通信手段を介して受信してもよい。
【0147】
本発明の実施形態において、センサユニット120、320を取り付ける場合、上述した実施形態では、第1取付部を医療用チューブに取り付けているが、第2取付部(接続端子30Aから遠い側の取付部)を医療用チューブに取り付けても良い。
【0148】
本発明の実施形態において、センサユニットの第2取付部(又は第1取付部)を患者に取り付ける手法は、面ファスナを有する患者側固定用部材を用いた方法や、医療用テープに用いる手法に限定されない。上記第2取付部は、例えば、両面テープ、磁石等で取り付けられてもよく、患者に巻き付ける医療用ベルトを用いて、医療用ベルトと患者の体表との間に挟みこむように取り付けられてもよい。
本発明の実施形態において、センサユニットの第1取付部(又は第2取付部)を医療用チューブ部材に取り付ける手法は、チューブ側固定用部材を用いる手法に限定されず、医療用テープに用いる手法等、他の手法で医療用チューブ部材に取り付けられてもよい。
【0149】
センサユニットの第2取付部(又は、第1取付部)を、患者に装着される上記医療用チューブ部材を固定及び/又は保護するサポート部材に取り付ける場合、上記サポート部材は、抜管防止具に限定されず、医療用テープや、医療用ベルトであってもよい。
【0150】
既に説明した通り、本発明の実施形態に係る事故抜去検知装置(自己抜去検知装置)は、第1取付部(又は第2取付部)が取り付けられる医療用チューブ部材の形状に応じて、スナップメス間の距離の異なるチューブ側固定用部材を使い分けることができる。
従って、上記事故抜去検知装置をユーザに提供する場合には、スナップメス間の距離の異なる複数のチューブ側固定用部材を含むセットにして、事故抜去検知装置を提供してもよい。
【符号の説明】
【0151】
3 計測器
3a CV変換回路
3b A/D変換回路
3c 記憶部
4 検知器
4a 演算回路
4b 記憶部
4c スピーカー
4d モニター
4e 無線送信器
5 本体
6 電源ボタン
7A 第1操作ボタン
7B 第2操作ボタン
8 貫通孔
9 透析装置
10 センサ部材
11 誘電層
12A 第1電極層
12B 第2電極層
13A 第1配線
13B 第2配線
14A 導電性接着剤
14B 導電性接着剤
15A 表側保護層
15B 裏側保護層
16A 電極接続部
16B 電極接続部
17 樹脂シート
18 接続部材
19 検出部位
21 被覆部材
22 リード線
26 リード線
28 背面固定版
29 ネジ
30A 接続端子
30B 接続端子
31A 接続端子
40 センサ部材
41A 第1誘電層
41B 第2誘電層
42A 第1電極層
42B 第2電極層
42C 第3電極層
43A 第1配線
43B 第2配線
43C 第3配線
44A 導電性接着剤
44B 導電性接着剤
45A 表側保護層
45B 裏側保護層
46A 電極接続部
46B 電極接続部
47 樹脂シート
48 接続部材
49 検出部位
50 伸縮センサ
100、1100 自己抜去検知装置(事故抜去検知装置)
110、1110 検知ユニット
115 ケーブル
116 ケーブル本体
117A 接続端子
117B 接続端子
120、1120 センサユニット
121 第1取付部
121A スナップオス
122 第2取付部
122A スナップオス
130 携帯端末
130a 無線受信器
130b 演算回路
130c 記憶部
130d スピーカー
130e バイブレータ
130f モニター
151 チューブ側固定用部材
151B スナップメス
151C 滑り止め
152 患者側固定用部材
152B スナップメス
152D 面ファスナのフック
200 患者
210 表示エリア
211 無線マーク
212 音量マーク
213 接続マーク
216A 回路接続部
216B 回路接続部
217 配線板
218 回路基板
220 インジケータ
221 上限閾値
222 下限閾値
223 センサ値
224 ホールド線
225 ホールド線
230 閾値レベル
320 センサユニット
321 第1取付部
322 第2取付部
500 医療用テープ
600 抜管防止具
610 保持部
620 カバー部
630 固定部
631 第1固定部
632 第2固定部
633 第3固定部
700 経鼻胃管部材
710 カテーテル
720 ボトル
730 注入ポンプ
740 第1チューブ
750 第2チューブ
760 第3チューブ
770 第1コネクタ
780 第2コネクタ
800 透析部材
810 留置針
811 動脈側留置針
812 静脈側留置針
820 チューブ
821 動脈側チューブ
822 静脈側チューブ
900 透析装置本体
910 動脈側接続部
920 静脈側接続部
X 領域