(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062708
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 25/04 20060101AFI20240501BHJP
A01D 63/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A01D25/04
A01D63/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170734
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】592170558
【氏名又は名称】訓子府機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 謙
【テーマコード(参考)】
2B072
2B081
【Fターム(参考)】
2B072AA03
2B072AA10
2B072DA05
2B081AA20
2B081DA09
(57)【要約】
【課題】農作業機の先端部を地表面に近づけることを課題とする。
【解決手段】平行リンク部と中間部と先端部を備え、平行リンク部は、上リンク部材と下リンク部材で構成されており、各リンク部材は、それぞれ走行部側の取付枠に回動軸を介して連結されており、中間部は、第1接地体とリンク取付部を備え、リンク取付部は、各リンク部材をそれぞれ回動軸を介して連結しており、その内、上リンク部材のみ、走行部側の取付枠とリンク取付部の間隔を変えることができる間隔変更機構を備えたものであり、第1接地体は、リンク取付部に近接して中間部の機枠に固定されており、先端部は、先端部の機枠を備え、先端部の機枠は、下方に第2接地体が取り付けられており、中間部の機枠に固定されている農作業機。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行リンク部と中間部と先端部を備え、
平行リンク部は、上リンク部材と下リンク部材で構成されており、
各リンク部材は、それぞれ走行部側の取付枠に回動軸を介して連結されており、
中間部は、第1接地体とリンク取付部を備え、
リンク取付部は、各リンク部材をそれぞれ回動軸を介して連結しており、
その内、上リンク部材のみ、走行部側の取付枠とリンク取付部の間隔を変えることができる間隔変更機構を備えたものであり、
第1接地体は、リンク取付部に近接して中間部の機枠に固定されており、
先端部は、先端部の機枠を備え、
先端部の機枠は、
下方に第2接地体が取り付けられており、
中間部の機枠に固定されている
農作業機。
【請求項2】
間隔変更機構は、走行部側の取付枠またはリンク取付部に設けられた上リンク部材の回動軸が、上リンク部材の長手方向に設けられた長孔を介して取り付けられているものである
請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
間隔変更機構は、上リンク部材が伸縮可能なロッドである請求項1記載の農作業機。
【請求項4】
先端部は、分草体として機能する
請求項1記載の農作業機。
【請求項5】
農作業機が蔓切り機であり、
中間部は、切断装置を有し、
先端部は、切断装置へ蔓を誘導する誘導部材を有する
請求項1記載の農作業機。
【請求項6】
第1接地体は、
後方にリンク取付部に近接した第1の固定部を有し、中間部機枠に高さ調節可能に固定されており、
前方に第2の固定部を有し、中間部の機枠に固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項7】
第2接地体は、
後方に第3の固定部を有し、先端部の機枠に高さ調節可能に固定されており、
前方に第4の固定部を有し、先端部の機枠に固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンク機構を備えた農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のような、分草装置を備えた農作業機があった。分草体は、玉葱用の農作業機やカボチャや甘藷などの蔓性作物用の農作業機など様々な農作業機に使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分草体は、地表面にある作物の茎葉をピックアップして左右に振り分ける部材であり、その先端が地表面に近い程、漏れなく茎葉のピックアップができる。
分草体に限らず、従来から農作業機の最先端をできる限り地表面に近づけたいという課題があったが、地表面には凹凸があり、困難だった。分草体などの作業部は、地表面に近づけるほど、地表面の凹凸により地表面と接触するからである。
そこで、本発明は、農作業機の先端部を地表面に近づけることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の手段を採用することで課題を解決した。
平行リンク部と中間部と先端部を備え、平行リンク部は、上リンク部材と下リンク部材で構成されており、各リンク部材は、それぞれ走行部側の取付枠に回動軸を介して連結されており、中間部は、第1接地体とリンク取付部を備え、リンク取付部は、各リンク部材をそれぞれ回動軸を介して連結しており、その内、上リンク部材のみ、走行部側の取付枠とリンク取付部の間隔を変えることができる間隔変更機構を備えたものであり、第1接地体は、リンク取付部に近接して中間部の機枠に固定されており、先端部は、先端部の機枠を備え、先端部の機枠は、下方に第2接地体が取り付けられており、中間部の機枠に固定されている農作業機。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、農作業機の先端部を地表面に近づけることができた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、蔓切り機(農作業機)を取り付けたトラクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、蔓切り機(農作業機)が備える各部の説明図であり、
図2(A)は平面図、
図2(B)は正面図である。
【
図6】
図6は、第2ソリ体の高さ調整板およびガイドの説明図であり、
図6(A)はガイド部の拡大斜視図、
図6(B)はガイド部から接地体(ソリ)を取り外した状態の斜視図である。
【
図7】
図7は、第1ソリ体の高さ調整体の説明図である。
図7(A)は高さ調整体を後部側から観た斜視図である。
図7(B)は高さ調整体の側面図である。
【
図8】
図8は、平行リンク部の動作の説明図である。
図8(A)~
図8(D)は、凸部のある地表面を蔓切り機(農作業機)が乗り越える様子を時系列順に示す説明図である。
図8(A)~
図8(D)の右側には、平行リンク部の拡大図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
本明細書でいう右・左とは、トラクタTの座席から観て右・左を意味する。また、前、後ろとは、トラクタTの進行方向を前とする。
【0009】
(実施例)
【0010】
実施例は、平行リンク部3を備えた蔓切り機2(農作業機)に関する例である。
実施例のカボチャの蔓切り機2(農作業機)は、先端部6に蔓をピックアップするガイド61を取り付けている。
図1は、蔓切り機2(農作業機)を取り付けたトラクタTの斜視図である。実施例では、トラクタTを走行車両とする蔓切り機2(農作業機)であるが、蔓切り機2(農作業機)が自走する走行部を備えていてもよい。
さらに、蔓切り機2が取付けられたカボチャの収穫機のような場合は、カボチャの収穫機が本発明の農作業機に相当する。
【0011】
実施例の蔓切り機2(農作業機)は、トラクタTの前部に設けられた連結部1に取り付けられている。連結部1は、装着リンク11と横機枠13で構成されている。装着リンク11は、先端に横機枠13が取り付けられている。装着リンク11に設けられた昇降シリンダ12は、装着リンク11を伸び縮みさせ横機枠13を昇降させる。
横機枠13は、中空部を有する型材である。横機枠13の両端にある開放端は、中空部に一回り小さい型材を呑み込んでおり、一回り小さい型材を伸縮させることで、横機枠13の左右幅を調節できる左右幅調整部131となっている。
実施例の蔓切り機2(農作業機)は、横機枠13の左に1台、右に1台の計2台の蔓切り機2(農作業機)が配置されている。左右幅調整部131を用いて、畝の幅と同じになるように2台の蔓切り機2(農作業機)の間隔が調整されている。畝溝を這い、隣の畝まで伸びる蔓は、蔓切り機2(農作業機)により切断される。
図2は、蔓切り機2(農作業機)が備える各部の説明図であり、
図2(A)は平面図、
図2(B)は正面図である。
図1と
図2を併せて参照されたい。蔓切り機2(農作業機)は、大きく分けて平行リンク部3と中間部4と先端部6で構成されており、各部はこの順に並んで配置されている。
平行リンク部3は、
図1に図示されているように横機枠13の両端付近にある縦機枠132(取付枠)に取り付けられている。
中間部4は、平行リンク部3側にリンク取付部47を備えている。リンク取付部47は、平行リンク部3を取り付ける部位である。中間部4は、下方に第1ソリ体46(第1接地体)が固定されており、中間部4を支えている。
先端部6は、中間部4の前方に固定されている。先端部6は、下方に第2ソリ体64(第1接地体)が固定されており、先端部6を支えている。
【0012】
中間部4にある第1ソリ体46(第1接地体)と先端部6にある第2ソリ体64(第2接地体)は、共に地表面と接地する。第1ソリ体46(第1接地体)と第2ソリ体64(第2接地体)は、地表面の凹凸に従い先端部6に取り付けられたガイド61の最先端部611の位置を適切な位置に保つのに役立つ。
【0013】
先端部6に取り付けられたガイド61は、地表面を這う蔓を持ち上げるものである。ガイド61の最先端部611は、農作業中に地表面に食い込み、地表を這う蔓を効率的に持ち上げ、後方に向かってガイドする。ガイド61は、地表面に食い込みながら進み、絡まった蔓を持ち上げながら進むため、作業時に大きな負荷と荷重が、蔓切り機2(農作業機)にかかる。ガイド61の最先端部611は、地中に深く刺さりすぎると、著しく負荷がかかるため、その位置決めは重要である。
蔓切り機2(農作業機)は、第1ソリ体46(第1接地体)と第2ソリ体64(第2接地体)により、荷重を分散して支えることができる。このため、先端部6のみに第2ソリ体64(第2接地体)を設ける場合と比較して、第2ソリ体64(第2接地体)の幅を細身(小さく)にすることができる。
【0014】
実施例は、第1ソリ体46(第1接地体)と第2ソリ体64(第2接地体)を共にソリ体としたが、両ソリ体(46・64)は、何れか一方または両方を車輪のような形式の接地体としてもよい。
接地体の形式は、農作業機の種類や地表面の固さなどにより、選択することができる。
【0015】
(分草)
中間部4は、平行リンク部3と先端部6を繋ぐ役割を果たすものである。中間部4の側面は、
図2(A)に図示するように、後方に行くにしたがい幅を広げる傾斜面を有する側方カバー45で覆われている。側方カバー45は、地表面を這う蔓を左右側方に向けて押しやる役割を果たす。側方カバー45の後方に配置されている分草杆41は、側方カバー45で側方に押し出された蔓や収穫物を更に側方に押し出すように作用する。
図2(B)に図示されているように、実施例の分草杆41は2本の棒材を上下に並べた形状となっている。分草杆41は、構造、形状、材質等を問わない。
分草杆41は、中間部4に取り付けられているが、先端部6に取り付けられていてもよく、何に取り付けるかは適宜である。
【0016】
(切断装置)
図3は、
図1の円で囲ったA領域の拡大図である。
図3は、主に切断装置5の構造を図示している。
中間部4は、切断装置5を備えており、実施例の切断装置5は回転刃となっている。切断装置5は、水平軸回りに回転するものであり、ガイド61により地表面から持ち上げながら送られて来る蔓を切断する。
切断装置5(回転刃)の回転軸には、駆動装置52(モータ)が直接取り付けられている。駆動装置52(モータ)が切断装置5(回転刃)に極めて近接して配置されているため、複雑かつ大がかりな動力伝達部材を別途設けなくとも、切断装置5(回転刃)を駆動できる。
駆動装置52(モータ)は、電気駆動でも流体圧駆動でもよく、駆動源の種類は問わない。
実施例は、切断装置5に回転刃を採用したが、切断装置5は往復駆動する刈刃や固定刃であってもよい。
【0017】
切断装置5(回転刃)の周囲は、保護フレーム43で囲われており、不注意に切断装置5(回転刃)に触れることが無いように配慮されている。また、保護フレーム43は、切断済みの蔓が切断装置5(回転刃)の回転軸に絡みつくことを防止する。
さらに、保護フレーム43は、切断装置5近傍の蔓を押さえる作用が奏されるような位置に設けられると、切断効率が向上するので好ましい。
【0018】
切断装置5の側面は、側方カバー45で覆われている。
図2から分かるように、側方カバー45は、左右両側面を覆っている。蔓が切断装置5(回転刃)に絡まるとトラブルを誘発するため、側方カバー45は蔓が切断装置5の内部に入ることを防ぐ。
【0019】
中間部4の機枠(図示せず)は、下側に第1ソリ体46(第1接地体)が取り付けられており、中間部4の下方を塞いでいる。第1ソリ体46(第1接地体)は圃場に接地して、蔓切り機2(農作業機)が過剰に地面に沈むことを防ぐ。特に、圃場がぬかるんでいるなどの時には、蔓切り機2(農作業機)のガイド61の最先端部611が深く地面に沈み込むトラブルが起き得る。第1ソリ体46(第1接地体)は後述する先端部6の第2ソリ体64(第2接地体)と併せて、このようなトラブルを防ぐのに寄与する。さらに、第1ソリ体46(第1接地体)は蔓切り機2の地表面からの高さを決める作用を備えており、接地することで地表から切断装置5やガイド61の高さを一定に保つ。副次的な効果として、第1ソリ体46(第1接地体)は、泥、葉、蔓などが切断装置5の底部から内部に侵入することを防いでいる。
【0020】
(ガイド部)
先端部6は、蔓切り機2(農作業機)の最も前方に位置する部材である。
図4は、
図1の円で囲ったB領域の拡大図である。
下方バー65と面材62は、先端部6の機枠を構成し、中間部4に固定されている。ガイド61は、蔓を持ち上げ所定の高さにある切断装置5まで導くものである。
【0021】
図5は、先端部6の分解図である。また、
図6は、第2ソリ体64の高さ調整板63およびガイド61の説明図であり、
図6(A)は先端部6の拡大斜視図、
図6(B)は先端部6から第2ソリ体64(第2接地体)を取り外した状態の斜視図である。
トラクタTの進行に伴いガイド61の上面を蔓が、滑り誘導されるようになっている。
ガイド61の最先端部611は、尖っている。ガイド61は、金属製の面材62で支えられている。面材62は、
図5で示されているようにガイド61の一部を構成する先端筒状部材621を備えている。そして、面材62の後部は、ガイド61の樹脂部613を取り付けるための後部取付部材622を取り付けできる。
図6(A)や
図6(B)のハッチングの領域が、先端筒状部材621と後部取付部材622である。
ガイド61は、最先端部611が樹脂より硬い材料である金属材料で構成された先端筒状部材621となっている。ガイド61の最先端部611は、地中に刺し込まれるため最も耐久性が求められる部分であり、金属材料で構成することでガイド61の耐久性を高めている。
【0022】
(樹脂部)
一般的に樹脂製のガイド61は、金属製のガイド61よりコストが安く有利である。また、樹脂製のガイド61は、金属製のガイド61に比べると摩擦係数が小さく、ガイド61として有利な特性を備えている。しかしながら、樹脂製のガイド61は、耐久性が金属に比べて劣る。
他方、ガイド61をすべて金属材料で構成することは、摩擦抵抗が高くなり蔓が途中で引っかかるなど好ましくないことが起きる。金属材料のガイド61は、錆び等により、摩擦抵抗が次第に高くなる。ガイド61の途中で、蔓が滑らず止まると、後から送られて来る蔓と合わさり蔓の塊ができることがある。塊となった蔓は、しばらくすると切断装置5に向かって動き出すが、塊が大きくなりすぎたり、複雑に絡んだりすることで上下方向に広がり、切断されないまま保護フレーム43に引っかかることが起き得る。また、一部でも切断されていない蔓が切断装置5近くに留まると、次から次へと送られて来る蔓が切断装置5の手前で絡まって行く。このような事象が積み重なるとトラブルに発展し、作業者は、作業を中断しなくてはならなくなる。
実施例のガイド61の樹脂部613は、摩擦係数を下げ、このようなトラブルの発生を予防する。
【0023】
ガイド61は、先端筒状部材621に続き、途中から摩擦係数の小さい樹脂部613となっていることで、スムーズに蔓を誘導することができる。
様々な樹脂を使うことができるが、中でもポリオレフィン系樹脂は、熱可塑性樹脂のため成形性が良好であり、かつ、柔軟性も兼ね備えており、強い衝撃を受けても欠けてしまうことが少ないので特に好ましい。実施例は、樹脂部613の材質にポリエチレン樹脂を採用している。高密度ポリエチレンは、分子量が大きいため堅牢である。他方、低密度ポリエチレンは柔軟性がある。ポリエチレン樹脂は、低密度、中密度、高密度、直鎖低密度などの様々な種類のポリエチレン樹脂があり、望む種類の選択が可能である。また、樹脂部613は、異なる種類や分子量のポリエチレン樹脂をブレンドすることで、望む特性にすることができる。また、樹脂は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの3種類の樹脂をブレンド(混合)したABS樹脂などのポリマーブレンド樹脂であってもよい。ポリブタジエン樹脂は、プラスチックをゴムの中間的な性質を有し、これを添加することで柔軟性を付加することができる。さらに、樹脂は共重合樹脂などであってもよい。
【0024】
(先端筒状部材)
面材62の先端には、樹脂部613を呑み込む先端筒状部材621が溶着されている。樹脂部613は、先端筒状部材621に挿入されることで装着される。先端筒状部材621は、先端が尖っており、土壌に刺さるのに都合が良いようになっている。先端筒状部材621はガイド61の最先端部611でもあり、ガイド61の一部を構成する部材である。先端筒状部材621は、地表と接触するため、樹脂より硬い材料、たとえば、金属で構成されている。そのため、ガイド61の最先端部611は、地表面と激しく接触することがあっても損傷することが無い。
【0025】
実施例のガイド61の後端部612は、金属製の後部取付部材622となっている。後部取付部材622は、樹脂部613の最後部を包み込み、面材62と締結固定されている。実施例では、後部取付部材622により樹脂部613の最後部を固定しているが、適宜な取り付け手法を適用することができ、実施例はその一例に過ぎない。
【0026】
(面材)
面材62は略直角三角形の形状をしており、上述したように面材62の斜辺には、ガイド61が取り付けられている。
図5や
図6(B)に図示されているように、面材62は、下方に下方バー65が溶着されており、面材62が変形しないように強度の向上が図られている。
面材62の後側には締結孔623が、前側には軸孔624が設けられている。
【0027】
(第2ソリ体の高さ調節)
実施例の先端部6の機枠は、面材62と下方バー65で構成されている。先端部6の機枠は、第2ソリ体64(第2接地体)やガイド61を支えることができればよく、実施例の構造に限定されない。
図6(A)に図示されているように、高さ調整板63は、下方に第2ソリ体64(第2接地体)があり、高さ調整板63と第2ソリ体64(第2接地体)は溶接などで一体化されている。
高さ調整板63の後側には、湾曲長孔631が設けられている。また、高さ調整板63の後側には、軸挿通孔634が設けられている。軸挿通孔634は面材62の軸孔624と位置合わせされ、軸633が挿通されている。軸633を中心に面材62と高さ調整板63を回動することができる。
【0028】
高さ調整板63は第2ソリ体64(第2接地体)で支えられており、地表から常に同じ高さ位置を保つ。高さ調整板63は、湾曲長孔631から面材62に設けた締結孔623を通して高さ調整ボルト635を挿通し締結することができる。高さ調整板63は、面材62と所定の位置関係で固定され、第2ソリ体64(第2接地体)を基準にして、ガイド61の最先端部611の高さを調整することができる。
高さの調整は、次のように行われる。第2ソリ体64(第2接地体)の高さを調整するための軸633の位置は、
図5に示されているように先端部6の全長の略半分の位置にある。第2ソリ体64(第2接地体)の高さを調整するため、作業者は軸633を中心に、第2ソリ体64(第2接地体)の後端部を上下に動かす。第2ソリ体64(第2接地体)の高さ調整は、高さ調整板63に設けられた湾曲長孔631の範囲で行うことができる。
第2ソリ体64(第2接地体)の高さが希望する高さになったとき、作業者は、湾曲長孔631に挿通された高さ調整ボルト635を締め付け固定し、高さの調整が終了する。実施例の第2ソリ体64(第2接地体)の高さ調整は、ガイド61の最先端部611の角度と先端部6全体の地表面からの高さに影響を与える。作業者は、蔓を確実にピックアップするため、作業時には最先端部611が地表よりやや下に位置するように、第2ソリ体64(第2接地体)を基準にして、最先端部611の高さや角度を調整する。第2ソリ体64(第2接地体)の高さの調整は、農作業機の種類に応じて様々であり、実施例は、蔓切り機2(農作業機)における高さの調整を例に説明したものである。高さ調整のための部材や機構は、農作業機の種類に応じて変わり得る。
【0029】
なお、実施例の蔓切り機2(農作業機)は、カボチャのみならず、サツマイモなど蔓性作物全般に適用できるものであり、作物の種類や圃場の条件等に応じて適切なガイド61の高さがあることは言うまでもない。作物の種類によっては、最先端部611は、地表より上に調整されていてもよい。
【0030】
高さ調整板63と面材62の間にスペーサ66が挟まれている。スペーサ66は、下方バー65が面材62の幅より広いため、面材62と高さ調整板63が平行な面となるように取り付けられている。スペーサ66は、ガイド61の最先端部611の高さ調整に必須なものではない。
【0031】
実施例は、高さ調整板63と面材62を軸633で繋ぎ、互いに回動させることでガイド61の最先端部611の高さを変更するものであった。地中に深く最先端部611を差し込む際は、上記回動に伴い、ガイド61の最先端部611の地中への進入角度も大きくなるものであった。
地中への進入角度が大きくなると、ガイド61に負荷がかかる。そこで、樹脂部613が先端筒状部材621に呑み込まれることを利用した変形例が可能である。先端筒状部材621に挿入された樹脂部613の呑み込み長さを伸ばしたり縮めたりすることで、最先端部611は伸び縮みし、最先端部611の高さを変更できる。この場合、進入角度は、面材62の斜辺角度のままとなり、進入角度が変化することはない。
【0032】
面材62や高さ調整板63は、高さを調整するために必須なものではない。代替え手段は、面材62や高さ調整板63に代えて支持棒を採用し、支持棒に高さ調整自在なゲージ輪(接地体)を取り付けた方式であってもよい。
さらに、トラクタTとの装着リンク11の昇降シリンダ12は、大きな範囲で高さ調節することができる。実施例は、微調整として前述の高さ調整が採用されている。
【0033】
(第1ソリ体の高さ調節)
図7は、第1ソリ体46の高さ調整体461の説明図である。
図7(A)は高さ調整体461を後部側から観た斜視図である。
図7(B)は高さ調整体461の側面図である。高さ調整体461は、第1ソリ体46(第1接地体)の後側に一方が取付けられ、中間部4の機枠下方に他方が取付けられる。中間部4の機枠は、特に図示して示さないが、中間部4を支えるものであり、フレームで構成されている。高さ調整体461は、縦長孔464を備えており、縦長孔464を介して締結部材462で中間部4の機枠と固定されている。高さ調整体461の高さ調節は、締結部材462と縦長孔464の位置関係を変えることで行われる。締結部材462による固定は、しっかりとなされており、農作業中に動くことはない。
第1ソリ体46(第1接地体)の前側は、前方回動軸463となっており、高さ調節するときのみ、回動する。
【0034】
(平行リンクと第1ソリ体の高さ調整体)
平行リンク部3を構成する上リンク部材34と下リンク部材35は、それぞれリンク取付部47に上リンク回動軸341と下リンク回動中心軸351で回動自在に固定されている。
平行リンク部3の動きの詳細は、後述するが、第1ソリ体46(第1接地体)は、中間部4のリンク取付部47に近接した位置で中間部4の機枠に固定されている。このため、地表面の凸部に第1ソリ体46(第1接地体)の後側が乗り上げると、その直上にある、リンク取付部47に上動として伝わる。このリンク取付部47の上動は、上リンク部材34の上リンク回動軸341と、下リンク回動中心軸351を介して、平行リンク部3の中間部4側を上に動かす。このとき側方から平行リンク部3を見ると、リンク取付部47が上下することで、平行リンク部3全体の角度が変わるが、縦機枠132(取付枠)が不動であるため、縦機枠132側の上リンク回動軸341と下リンク回動軸352の高さは変わらない。上リンク部材34と下リンク部材35の中間部4側の端部(リンク取付部47)の高さだけが上下する。
縦機枠132(取付枠)は、連結部1を介してトラクタTに取り付けられており、トラクタTに対して旋回時などを除けば農作業中に昇降されることはない。地表面の凹凸により第1ソリ体46を介して中間部4は上下動するが、平行リンク部3のこの動作により中間部4の上下動がトラクタT側の縦機枠132(取付枠)に伝わることはない。
【0035】
(平行リンク部の動作)
図8は、平行リンク部3の動作の説明図である。
図8(A)~
図8(D)は、凸部のある地表面を蔓切り機2(農作業機)が乗り越える様子を時系列順に示す説明図である。
図8(A)~
図8(D)の右側には、平行リンク部3の拡大図が示されている。
平行リンク部3の動きは、2つの動きで支配される。
【0036】
(第1の動き)
第1の動きは、第2ソリ体64(第2接地体)の動きである。先端部6と中間部4は連結されており、平行リンク部3とリンク取付部47を介して取り付けられていることは前述したとおりである。第2ソリ体64(第2接地体)の動きは、リンク取付部47の傾きを変える働きをする。
図8(A)は、第1ソリ体46(第1接地体)と第2ソリ体64(第2接地体)ともに平坦な地表面と接地している状態を示している。
図8(B)の状態は、第2ソリ体64(第2接地体)が、凸部に乗り上げる状態を示している。地表面の凸部の傾斜角度に沿うように、先端部6と、先端部6と一体に取り付けられた中間部4は、全体的に進行方向前側を上にして傾く。この時、第1ソリ体46(第1接地体)は、まだ平坦な地表面と接地しており、第2ソリ体64(第2接地体)の傾きが、先端部6と中間部4の傾きを支配している。
【0037】
先端部6と中間部4の傾きは、中間部4の一部を構成しているリンク取付部47を傾ける。
図8(B)の状態をみると、リンク取付部47の上部が縦機枠132(取付枠)側に傾いた状態となっていることが分かる。
図8(B)の平行リンク部3の拡大図は、説明のためリンク取付部47の傾きをより大きく傾いたように強調して図示したものである。リンク取付部47の上部が縦機枠132(取付枠)側に傾くと、上リンク部材34は、強く縦機枠132(取付枠)側に押し出される。上リンク部材34の縦機枠132(取付枠)側には、長孔342(間隔変更機構)がある。長孔342(間隔変更機構)を介して締結されている上リンク回動軸341は、長孔342(間隔変更機構)をスライドして動く。縦機枠132(取付枠)は不動であるため、長孔342(間隔変更機構)のある上リンク部材34のみが、スライド動作をすることで、トラクタT側(走行部側)の縦機枠132(取付枠)とリンク取付部47の間隔が調整される。
【0038】
間隔変更機構として機能する長孔342(間隔変更機構)による上リンク部材34の動きは、あたかも下リンク回動中心軸351を中心に中間部4と先端部6が回動しているようにみえる。上リンク部材34が長孔42(間隔変更機構)によりスライド動作するから、平行リンク部3は、下リンク部材35は不動で上リンク部材34のみがスライドしているようにみえる。
【0039】
(第2の動き)
第2の動きは、第1ソリ体46(第1接地体)の動きである。
図8(A)と
図8(D)は、共に長孔342(間隔変更機構)に対する上リンク回動軸341の位置が同じ位置にある。
図8(A)と
図8(D)の状態は、共に、トラクタTは平坦な地表面上を走行しており、縦機枠132(取付枠)は平坦な地表面に対して同じ高さを保っている。第1ソリ体46(第1接地体)が地表面の凸部に乗り上げている
図8(D)の状態は、
図8(A)の状態より第1ソリ体46(第1接地体)が高い位置にある。第1ソリ体46(第1接地体)は、リンク取付部47に近接して中間部4の機枠に固定されているため、第1ソリ体46(第1接地体)の上下動は、リンク取付部47のトラクタT(縦機枠132)に対する高さを変えることになる。第1ソリ体46(第1接地体)の上下動は、リンク取付部47の上下動となって平行リンク部3のリンク取付部47側にある上リンク回動軸341と下リンク回動中心軸351を上下動させる。トラクタT(縦機枠132)は平坦な地表面側にあるため、縦機枠132(取付枠)は上下動せず、平行リンク部3のみが、全体的にリンク取付部47の上下動に追随して傾斜する。地表面の凹凸は、このように平行リンク部3の傾斜により吸収され、トラクタT(縦機枠132)に伝わることが無い。
【0040】
(第1の動きと第2の動きの連動)
前述したように、蔓切り機2(農作業機)の場合、先端部6の幅を非常に狭くしたい事情がある。このような場合、縦長の農作業機となり、農作業機の荷重を支えるため接地体も縦長にならざるを得ない。接地体が縦長になると、地表面の凹凸に対する追随に時間遅れが発生し、先端部6が地表面に深く刺さるなど不都合が発生しやすくなる。
実施例の蔓切り機2(農作業機)は、第1の動きと第2の動きが組み合わされて地表面の凹凸に追随するため、このような不都合を避けることができる。
また、第1の動きは、平行リンク部3に対して中間部4と先端部6が、リンク取付部47の下リンク回動中心軸351回りにあたかも回動し折れ曲がるような動きをする。実施例の蔓切り機2(農作業機)は、地表の凸部の頂点や凹部の溝底で先端部6が急に向きを変えても折れ曲がるように動くことで、追随できる。
【0041】
(本発明が適用できる農作業機)
先端部6の幅を非常に狭くしたいという事情は、蔓切り機2に特有の事情ではない。分草体(デバイダー)も先端部6の幅を狭くしたいという課題を有する部材である。分草体を有する農作業機は様々あり、玉葱収穫機はその内の一つである。本発明の農作業機は、溝切り機などの土作業機にも適用できる。以上のように本発明の農作業機は、実施例で示した蔓切り機2に限られない。
【0042】
(変形例)
実施例の間隔変更機構は、上リンク部材34の縦機枠132(取付枠)側に設けた長孔342を利用するものであった。長孔342(間隔変更機構)は、リンク取付部47側にあっても同等の機能を奏する。また、長孔342(間隔変更機構)は、走行部側の取付枠(縦機枠132)及びリンク取付部47の双方に設けられてもよい。
さらに、間隔変更機構は、長孔342以外の態様でも実施できる。たとえば、間隔変更機構は、上リンク部材34を長尺なプランジャのように伸縮するロッドにすることでも実現できる。本発明の間隔変更機構は、走行部側の取付枠(縦機枠132)とリンク取付部47の間隔を変えることができればよく、実施例に限定されるものではない。
【0043】
具体的な構成は、前述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0044】
また、前述の多様な態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 連結部
11 装着リンク
12 昇降シリンダ
13 横機枠
131 左右幅調整部
132 縦機枠(取付枠)
2 蔓切り機(農作業機)
3 平行リンク部
34 上リンク部材
341 上リンク回動軸
342 長孔(間隔変更機構)
35 下リンク部材
351 下リンク回動中心軸
352 下リンク回動軸
4 中間部
41 分草杆
43 保護フレーム
45 側方カバー
46 第1ソリ体(第1接地体)
461 高さ調整体
462 締結部材
463 前方回動軸
464 縦長孔
47 リンク取付部
5 切断装置
52 駆動装置(モータ)
6 先端部
61 ガイド
611 最先端部
612 後端部
613 樹脂部
62 面材
621 先端筒状部材
622 後部取付部材
623 締結孔
624 軸孔
63 高さ調整板
631 湾曲長孔
634 軸挿通孔
633 軸
635 調整ボルト
64 第2ソリ体(第2接地体)
65 下方バー
66 スペーサ
T トラクタ