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特開2024-62709作業機械及び作業機械を制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062709
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】作業機械及び作業機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170735
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 裕貴
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232CC20
3D232DA04
3D232DA24
3D232DA32
3D232DA96
3D232DB03
3D232DB05
3D232DB06
3D232DB07
3D232EA01
3D232EB04
3D232GG04
(57)【要約】
【課題】自動ステアリング制御中に、作業機械の前進と後進とが切り替えられた場合に、作業機械がふらつくことを抑える。
【解決手段】作業機械は、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、コントローラとを備える。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を中立角から左右に変化させる。コントローラは、ステアリングアクチュエータを制御する。コントローラは、作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように、ステアリングアクチュエータによって操舵角を制御する自動ステアリング制御を実行する。コントローラは、作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定する。コントローラは、自動ステアリング制御中に、進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、操舵角を中立角とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
走行輪と、
前記走行輪の操舵角を中立角から左右に変化させるステアリングアクチュエータと、
前記ステアリングアクチュエータを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように、前記ステアリングアクチュエータによって前記操舵角を制御する自動ステリング制御を実行し、
前記作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定し、
前記自動ステリング制御中に、前記進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、前記操舵角を前記中立角とする、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記作業機械の前後の進行方向を指示する指令信号を取得し、
前記作業機械の車速を取得し、
前記指令信号と前記車速とに基づいて、前記進行方向ステータスを判定する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記進行方向ステータスが前進である場合に、前記指令信号が前進以外の指示を示し、且つ、前記車速が所定の閾値未満である場合に、前記進行方向ステータスが不明であると判定する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記進行方向ステータスが後進である場合に、前記指令信号が後進以外の指示を示し、且つ、前記車速が所定の閾値未満である場合に、前記進行方向ステータスが不明であると判定する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、前記進行方向ステータスが前進又は後進と判定するまで、前記操舵角を前記中立角に維持する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記作業機械の前後の進行方向を指示する指令信号を取得し、
前記指令信号によって前記進行方向の切り替えが指示されたときに、前記進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、所定時間が経過するまで、前記操舵角を前記中立角に維持する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように前記作業機械の操舵角を制御する自動ステリング制御を実行することと、
前記作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定することと、
自動ステリング制御中に、前記進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、前記操舵角を中立角とすること、
を備える方法。
【請求項8】
前記作業機械の前後の進行方向を指示する指令信号を取得することと、
前記作業機械の車速を取得することと、
前記指令信号と前記車速とに基づいて、前記進行方向ステータスを判定すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記進行方向ステータスが前進である場合に、前記指令信号が前進以外の指示を示し、且つ、前記車速が所定の閾値未満である場合に、前記進行方向ステータスが不明であると判定すること、
を備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記進行方向ステータスが後進である場合に、前記指令信号が後進以外の指示を示し、且つ、前記車速が所定の閾値未満である場合に、前記進行方向ステータスが不明であると判定すること、
を備える請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記進行方向ステータスが前進又は後進と判定するまで、前記操舵角を前記中立角に維持すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記作業機械の前後の進行方向を指示する指令信号を取得することと、
前記指令信号によって前記進行方向の切り替えが指示されたときに、前記進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、所定時間が経過するまで、前記操舵角を前記中立角に維持すること、
を備える請求項7に記載の方法。
【請求項13】
作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように前記作業機械の操舵角を制御する自動ステリング制御を実行することと、
前記作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定することと、
自動ステリング制御中に、前記作業機械の前後の進行方向が切り替えられた際に、前記操舵角を中立角とすること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械及び作業機械を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械には、作業機械が所定の目標進路に沿って移動するように、自動ステアリング制御を行うものがある。例えば、特許文献1では、モータグレーダの位置及び方位と、モータグレーダの進行方向とに基づいて、走行経路が生成される。そして、モータグレーダが走行経路に沿って走行するように、操向機構が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-54269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した自動ステアリング制御では、作業機械が、走行経路から右方にずれている場合には、コントローラが、前進時には前輪を左方に操舵し、後進時には前輪を右方に操舵することで、作業機械の向きを修正する。作業機械が走行経路から左方にずれている場合には、コントローラは、前進時には前輪を右方に操舵し、後進時には前輪を左方に操舵することで、作業機械の向きを修正する。それにより、作業機械が、走行経路に沿って走行するように自動的に制御される。
【0005】
作業機械の前後の進行方向は、例えば作業機械の前後の進行方向を指示する指令信号によって判定される。例えば、作業機械は、作業機械の前進と後進とを切り替えるために操作されるシフトレバーを備えている。コントローラは、シフトレバーの位置を検出し、シフトレバーの位置に応じて、作業機械の前後の進行方向を判定する。
【0006】
しかし、作業機械では、シフトレバーが前進位置から後進位置に切り替えられても、慣性により前進し続ける場合がある。この場合、コントローラが、シフトレバーの位置によって作業機械の進行方向が後進と判断しても、実際には作業機械は前進している。そのため、自動ステアリング制御において、走行輪が適切な方向と逆方向に操舵されてしまうことで、作業機械がふらついてしまう。本開示の目的は、自動ステアリング制御中に、作業機械の前進と後進とが切り替えられた場合に、作業機械がふらつくことを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る作業機械は、走行輪と、ステアリングアクチュエータと、コントローラとを備える。ステアリングアクチュエータは、走行輪の操舵角を中立角から左右に変化させる。コントローラは、ステアリングアクチュエータを制御する。コントローラは、作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように、ステアリングアクチュエータによって操舵角を制御する自動ステアリング制御を実行する。コントローラは、作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定する。コントローラは、自動ステアリング制御中に、進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、操舵角を中立角とする。
【0008】
本開示の他の態様に係る作業機械を制御するための方法は、作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように作業機械の操舵角を制御する自動ステアリング制御を実行することと、作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定することと、自動ステアリング制御中に、進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、操舵角を中立角とすること、を備える。
【0009】
本開示のさらに他の態様に係る作業機械を制御するための方法は、作業機械を制御するための方法であって、作業機械が所定の目標進路に沿って走行するように作業機械の操舵角を制御する自動ステリング制御を実行することと、作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスを判定することと、自動ステリング制御中に、作業機械の前後の進行方向が切り替えられた際に、操舵角を中立角とすること、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自動ステアリング制御中に、作業機械の前後の進行方向を示す進行方向ステータスが不明であると判定された場合には、操舵角が中立角とされる。それにより、作業機械が、適切な方向と逆方向に操舵されることが防止される。そのため、自動ステアリング制御中に、作業機械の前進と後進とが切り替えられた場合に、作業機械がふらつくことが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る作業機械の斜視図である。
図2】作業機械の側面図である。
図3】作業機械の構成を示す模式図である。
図4】作業機械の前部を示す上面図である。
図5】ステアリング操作部材の操作による作業機械の走行の一例を示す図である。
図6】直進維持モードにおける操舵角の自動制御を示す図である。
図7】進行方向ステータスに応じて目標角度を決定するための処理を示すフローチャートである。
図8】進行方向ステータスの判定ロジックを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1の斜視図である。図2は、作業機械1の側面図である。図1に示すように、作業機械1は、車体2と、走行輪3A,3B,4A-4Dと、作業機5とを備える。車体2は、フロントフレーム11と、リアフレーム12と、キャブ13と、動力室14とを含む。走行輪3A,3B,4A-4Dは、前輪3A,3Bと、後輪4A-4Dとを含む。前輪3A,3Bが左右に操舵されることで、作業機械1が左右に旋回する。
【0013】
リアフレーム12は、フロントフレーム11に接続されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して、左右にアーティキュレート可能である。なお、以下の説明において、前後左右の各方向は、アーティキュレート角が0、すなわち、フロントフレーム11とリアフレーム12とが真っすぐな状態での車体2の前後左右の各方向を意味するものとする。
【0014】
キャブ13と動力室14とは、リアフレーム12上に配置されている。キャブ13には、図示しない運転席が配置されている。動力室14は、キャブ13の後方に配置されている。フロントフレーム11は、リアフレーム12から前方へ延びている。前輪3A,3Bは、フロントフレーム11に取り付けられている。後輪4A-4Dは、リアフレーム12に取り付けられている。
【0015】
作業機5は、車体2に対して可動的に接続されている。作業機5は、支持部材15とブレード16とを含む。支持部材15は、車体2に可動的に接続されている。支持部材15は、ブレード16を支持している。支持部材15は、ドローバ17とサークル18とを含む。ドローバ17は、フロントフレーム11の下方に配置される。
【0016】
ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19に接続されている。ドローバ17は、フロントフレーム11の前部19から後方へ延びている。ドローバ17は、フロントフレーム11に対して、少なくとも車体2の上下方向と左右方向とに揺動可能に支持されている。例えば、前部19は、ボールジョイントを含む。ドローバ17は、ボールジョイントを介して、フロントフレーム11に対して回転可能に接続されている。
【0017】
サークル18は、ドローバ17の後部に接続されている。サークル18は、ドローバ17に対して回転可能に支持される。ブレード16は、サークル18に接続される。ブレード16は、サークル18を介して、ドローバ17に支持されている。図2に示すように、ブレード16は、チルト軸21回りに回転可能にサークル18に支持されている。チルト軸21は、左右方向に延びている。
【0018】
作業機械1は、作業機5の姿勢を変更するための複数のアクチュエータ22-26を備えている。複数のアクチュエータ22-26は、複数の油圧シリンダ22-25を含む。複数の油圧シリンダ22-25は、作業機5に接続されている。複数の油圧シリンダ22-25は、油圧によって伸縮する。複数の油圧シリンダ22-25は、伸縮することで、車体2に対する作業機5の姿勢を変更する。以下の説明では、油圧シリンダの伸縮を「ストローク動作」と呼ぶ。
【0019】
詳細には、複数の油圧シリンダ22-25は、左リフトシリンダ22と、右リフトシリンダ23と、ドローバシフトシリンダ24と、ブレードチルトシリンダ25とを含む。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、左右方向に互いに離れて配置されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、ドローバ17に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とは、リフタブラケット29を介して、フロントフレーム11に接続されている。左リフトシリンダ22と右リフトシリンダ23とのストローク動作により、ドローバ17は、上下に揺動する。それにより、ブレード16が上下に移動する。
【0020】
ドローバシフトシリンダ24は、ドローバ17とフロントフレーム11とに接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、リフタブラケット29を介してフロントフレーム11に接続されている。ドローバシフトシリンダ24は、フロントフレーム11からドローバ17に向かって、斜め下方に延びている。ドローバシフトシリンダ24のストローク動作により、ドローバ17は、左右に揺動する。ブレードチルトシリンダ25は、サークル18とブレード16とに接続されている。ブレードチルトシリンダ25のストローク動作により、ブレード16がチルト軸21回りに回転する。
【0021】
複数のアクチュエータ22-26は、回転アクチュエータ26を含む。回転アクチュエータ26は、ドローバ17とサークル18とに接続されている。回転アクチュエータ26は、ドローバ17に対してサークル18を回転させる。それにより、ブレード16が、上下方向に延びる回転軸回りに回転する。
【0022】
図3は、作業機械1の構成を示す模式図である。図3に示すように、作業機械1は、駆動源31と、油圧ポンプ32と、動力伝達装置33と、作業機バルブ34とを含む。駆動源31は、例えば内燃機関である。或いは、駆動源31は、電動モータ、或いは内燃機関と電動モータとのハイブリッドであってもよい。油圧ポンプ32は、駆動源31によって駆動されることで、作動油を吐出する。
【0023】
作業機バルブ34は、油圧回路を介して、油圧ポンプ32と複数の油圧シリンダ22-25とに接続されている。作業機バルブ34は、複数の油圧シリンダ22-25にそれぞれ接続される複数の弁を含む。作業機バルブ34は、油圧ポンプ32から複数の油圧シリンダ22-25に供給される作動油の流量を制御する。作業機バルブ34は、例えば電磁比例制御弁である。或いは、作業機バルブ34は、油圧パイロット式の比例制御弁であってもよい。
【0024】
本実施形態では、回転アクチュエータ26は、油圧モータである。作業機バルブ34は、油圧回路を介して油圧ポンプ32と回転アクチュエータ26とに接続されている。作業機バルブ34は、油圧ポンプ32から回転アクチュエータ26に供給される作動油の流量を制御する。なお、回転アクチュエータ26は、電動モータであってもよい。
【0025】
動力伝達装置33は、駆動源31からの駆動力を後輪4A-4Dに伝達する。動力伝達装置33は、トルクコンバータ、及び/又は、複数の変速ギアを含んでもよい。或いは、動力伝達装置33は、HST(Hydraulic Static Transmission)、或いは、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などのトランスミッションであってもよい。
【0026】
作業機械1は、作業機操作部材35と、シフト操作部材53と、アクセル操作部材36と、ブレーキ操作部材47と、コントローラ37とを含む。作業機操作部材35は、作業機5の姿勢を変更するためにオペレータによって操作可能である。作業機操作部材35は、例えば複数の操作レバーを含む。或いは、作業機操作部材35は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。作業機操作部材35は、オペレータによる作業機操作部材35への操作を示す信号を出力する。
【0027】
シフト操作部材53は、作業機械1の前後の進行方向を指示するためにオペレータによって操作可能である。シフト操作部材53は、例えばシフトレバーを含む。或いは、シフト操作部材53は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。シフト操作部材53は、前進位置(F)と、後進位置(R)と、中立位置(N1)とに操作可能である。シフト操作部材53は、シフト操作部材53の操作位置を示す信号を出力する。
【0028】
アクセル操作部材36は、作業機械1を走行させるためにオペレータによって操作可能である。アクセル操作部材36は、例えばアクセルペダルを含む。或いは、アクセル操作部材36は、スイッチ、或いはタッチパネルなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材36は、オペレータによるアクセル操作部材36への操作を示す信号を出力する。ブレーキ操作部材47は、作業機械1を制動するためにオペレータによって操作可能である。ブレーキ操作部材47は、例えばブレーキペダルを含む。
【0029】
コントローラ37は、シフト操作部材53の操作に応じて、動力伝達装置33を制御することで、作業機械1の前進と後進とを切り換える。或いは、シフト操作部材53は、機械的に動力伝達装置33に接続されてもよい。シフト操作部材53の動作が機械的に動力伝達装置33に伝達されることで、動力伝達装置33の前進と後進のギアが切り替えられてもよい。
【0030】
コントローラ37は、アクセル操作部材36の操作に応じて、駆動源31及び動力伝達装置33を制御することで、作業機械1を走行させる。また、コントローラ37は、作業機操作部材35の操作に応じて、油圧ポンプ32と作業機バルブ34とを制御することで、作業機5を動作させる。
【0031】
コントローラ37は、記憶装置38とプロセッサ39とを含む。プロセッサ39は、例えばCPUであり、作業機械1を制御するためのプログラムを実行する。記憶装置38は、RAM及びROMなどのメモリと、SSD或いはHDDなどの補助記憶装置を含む。記憶装置38は、作業機械1を制御するためのプログラムとデータとを記憶している。
【0032】
作業機械1は、車速センサ51を備えている。車速センサ51は、作業機械1の車速を検出する。車速センサ51は、作業機械1の車速を示す信号を出力する。車速センサ51は、例えば、動力伝達装置33の出力回転速度を検出する。動力伝達装置33の出力回転速度は、作業機械1の車速に相当する。或いは、車速センサ51は、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバであってもよい。
【0033】
作業機械1は、方向センサ52を備えている。方向センサ52は、車体2の進行方向を検出する。方向センサ52は、車体2の進行方向を示す方向信号を出力する。コントローラ37は、方向センサ52からの方向信号により、車体2の進行方向を取得する。車体2の進行方向は、例えば車体2のヨー角で示される。方向センサ52は、例えばIMU(慣性計測装置)である。コントローラ37は、車体2の加速度および角速度に基づいて、車体2の進行方向を算出する。或いは、方向センサ52は、などのGNSSレシーバであってもよい。コントローラ37は、方向センサ52が検出した作業機械1の位置の変化から、車体2の進行方向を取得してもよい。
【0034】
図3に示すように、作業機械1は、操舵角センサ40と、ステアリングアクチュエータ41と、ステアリングバルブ42とを備えている。ステアリングアクチュエータ41は、油圧シリンダである。ステアリングアクチュエータ41は、油圧ポンプ32からの作動油によって伸縮する。ステアリングアクチュエータ41は、伸縮することで、前輪3A,3Bを操舵する。
【0035】
図4は、作業機械1の前部を示す上面図である。図4に示すように、前輪3A,3Bは、第1前輪3Aと第2前輪3Bとを含む。第1前輪3Aと第2前輪3Bとは、左右方向に離れて配置されている。第1前輪3Aは、第1ステアリング軸43回りに回動可能にフロントフレーム11に支持されている。第2前輪3Bは、第2ステアリング軸44回りに回動可能にフロントフレーム11に支持されている。第1ステアリング軸43と第2ステアリング軸44とは、上下方向に延びている。
【0036】
ステアリングアクチュエータ41は、前輪3A,3Bとフロントフレーム11とに接続されている。ステアリングアクチュエータ41は、前輪3A,3Bの操舵角θ1を所定の中立角から左右に変化させる。図4に示すように、操舵角θ1は、作業機械1の前後方向に対する前輪3A,3Bの向きの角度である。作業機械1の前後方向は、フロントフレーム11の前後方向を意味するものとする。ただし、作業機械1の前後方向は、リアフレーム12の前後方向を意味してもよい。
【0037】
中立角は、0度の操舵角θ1である。従って、操舵角θ1が中立角であることは、前輪3A,3Bが作業機械1の真正面を向いていることを意味する。なお、図4において、3A’は、中立角から左方に操舵角θ1だけ操舵された第1前輪3Aを示している。3B’は、中立角から左方に操舵角θ1だけ操舵された第2前輪3Bを示している。
【0038】
ステアリングバルブ42は、油圧回路を介して、油圧ポンプ32とステアリングアクチュエータ41とに接続されている。ステアリングバルブ42は、油圧ポンプ32からステアリングアクチュエータ41に供給される作動油の流量を制御する。
【0039】
操舵角センサ40は、操舵角θ1を検出する。操舵角センサ40は、操舵角θ1を示す角度信号を出力する。コントローラ37は、操舵角センサ40からの角度信号により現在の操舵角θ1を取得する。操舵角センサ40は、例えば、ステアリングアクチュエータ41のストローク量を検出する。操舵角θ1は、ステアリングアクチュエータ41のストローク量から算出される。或いは、操舵角センサ40は、操舵角θ1を直接的に検出してもよい。
【0040】
図3に示すように、作業機械1は、ステアリング操作部材45を含む。ステアリング操作部材45は、前輪3A,3Bの操舵角θ1を左右に変化させるために、オペレータによって操作可能である。ステアリング操作部材45は、中立位置(N2)から左操舵範囲(L)と右操舵範囲(R)に操作可能である。ステアリング操作部材45は、例えばレバーである。或いは、ステアリング操作部材45は、ステアリングホイール、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。ステアリング操作部材45は、オペレータによるステアリング操作部材45への操作を示す信号を出力する。
【0041】
コントローラ37は、ステアリング操作部材45の操作に応じて、ステアリングバルブ42を制御することで、ステアリングアクチュエータ41を動作させる。それにより、前輪3A,3Bの操舵角θ1が左右に変化することで、作業機械1が左右に旋回する。
【0042】
次に、操舵角θ1を自動的に制御する自動ステアリング制御について説明する。自動ステアリング制御では、コントローラ37は、操舵角θ1を所定の目標角度とするように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。自動制御は、センターリターンモードと直進維持モードとを含む。
【0043】
センターリターンモードでは、コントローラ37は、ステアリング操作部材45が左操舵範囲(L)から中立位置(N2)に戻されたとき、又は、右操舵範囲(R)から中立位置(N2)に戻されたときに、操舵角θ1を自動的に中立角に戻すように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。
【0044】
例えば、操舵角θ1が、左方への所定角度であるときに、ステアリング操作部材45が、中立位置(N2)に戻されると、コントローラ37は、操舵角θ1が、左方への所定角度から中立角に戻るように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。操舵角θ1が、右方への所定角度であるときに、ステアリング操作部材45が、中立位置(N2)に戻されると、コントローラ37は、操舵角θ1が、右方への所定角度から中立角に戻るように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。
【0045】
図5は、ステアリング操作部材45の操作による作業機械1の走行の一例を示す図である。図5に示すように、作業機械1が地点P1では、ステアリング操作部材45は中立位置(N2)に位置している。操舵角θ1は中立角であり、作業機械1は直進している。地点P2において、オペレータがステアリング操作部材45を左操作範囲内の操作量L1に操作すると、前輪3A,3Bの操舵角θ1が中立角から左方へ変化し始める。それにより、作業機械1は左方へ旋回する。
【0046】
地点P2から地点P3までの間、オペレータがステアリング操作部材45を操作量L1に保持すると、前輪3A,3Bの操舵角θ1は、左方への最大操舵角θmaxまで増大し続ける。それにより、作業機械1は、左方へ旋回し続ける。
【0047】
そして、地点P3において、オペレータがステアリング操作部材45を中立位置(N2)に戻すと、センターリターンモードにより、前輪3A,3Bの操舵角θ1は、最大操舵角θmaxから中立角へ向かって減少する。そして、地点P5において、前輪3A,3Bの操舵角θ1が中立角に戻る。
【0048】
直進維持モードでは、コントローラ37は、作業機械1が直線状の目標進路に沿って走行するように、操舵角θ1を制御する。詳細には、コントローラ37は、車体2の進行方向を目標方向に保持するように、操舵角θ1を制御する。例えば、コントローラ37は、図5に示すように、地点P5において、操舵角θ1が中立角に戻ったときの車体2の進行方向(H1)を、目標方向として決定する。そして、コントローラ37は、車体2の進行方向を目標方向H1に保持するように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。それにより、作業機械1は、目標方向H1に延びる直線状の目標進路R1に沿って移動する。
【0049】
詳細には、コントローラ37は、車体2の現在の進行方向と目標方向H1との差に基づいて、操舵角θ1の目標角度を決定する。コントローラ37は、操舵角θ1が目標角度となるように、ステアリングアクチュエータ41を制御する。例えば、コントローラ37は、車体2の現在の進行方向と目標方向H1との差に、所定のゲインを乗じることで、操舵角θ1の目標角度を決定する。コントローラ37は、操舵角θ1が目標角度に保持されるように、フィードバック制御により、ステアリングアクチュエータ41を制御する。
【0050】
直進維持モードにおいて、コントローラ37は、車体2が後進しているときには、車体2が前進しているときに対して操舵角θ1の目標角度を左右逆にする。例えば、図6に示すように、作業機械1の向きが目標進路R1から右方にずれている状態で、矢印A1で示すように、作業機械1が前進する場合には、コントローラ37は、目標角度を中立角よりも左方の角度に決定する。作業機械1の向きが目標進路R1から右方にずれている状態で、矢印A2で示すように、作業機械1が後進する場合には、コントローラ37は、目標角度を中立角よりも右方の角度に決定する。
【0051】
逆に、作業機械1の向きが目標進路R1から左方にずれている状態で、作業機械1が前進する場合には、コントローラ37は、目標角度を中立角よりも右方の角度に決定する。作業機械1の向きが目標進路R1から左方にずれている状態で、作業機械1が後進する場合には、コントローラ37は、目標角度を中立角よりも左方の角度に決定する。すなわち、コントローラ37は、車体2の進行方向ステータスを判定し、進行方向ステータスに応じて目標角度を決定する。進行方向ステータスは、作業機械1の前後の進行方向を示す。
【0052】
図7は、進行方向ステータスに応じて目標角度を決定するための処理を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS101で、コントローラ37は、車速を取得する。コントローラ37は、車速センサ51からの信号により、車速を取得する。ステップS102で、コントローラ37は、シフト操作位置を取得する。シフト操作位置は、シフト操作部材53の操作位置である。コントローラ37は、シフト操作部材53から信号により、シフト操作位置を取得する。コントローラ37は、前進位置(F)と、後進位置(R)と、中立位置(N2)とのいずれかを、シフト操作位置として取得する。
【0053】
ステップS103で、コントローラ37は、進行方向ステータスを判定する。コントローラ37は、車速とシフト操作位置とに基づいて、進行方向ステータスを判定する。図8は、進行方向ステータスの判定ロジックを示すブロック図である。図8に示すように、進行方向ステータスは、「停止」と、「前進」と、「後進」と、「不明」とを含む。
【0054】
図8に示すように、初期状態では、進行方向ステータスは「停止」である。コントローラ37は、進行方向ステータスが「停止」である状態で、前進条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「前進」であると判定する。前進条件は、シフト操作位置が前進位置(F)であることを含む。
【0055】
コントローラ37は、進行方向ステータスが「停止」である状態で、後進条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「後進」であると判定する。後進条件は、シフト操作位置が後進位置(R)であることを含む。
【0056】
コントローラ37は、進行方向ステータスが「前進」である状態で、第1不明条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「不明」であると判定する。第1不明条件は、シフト操作位置が前進位置(F)以外の位置であり、且つ、車速が第1閾値未満であることを含む。すなわち、第1不明条件は、シフト操作位置が後進位置(R)又は中立位置(N2)であり、且つ、車速が第1閾値未満であることを含む。第1閾値は、例えば、作業機械1の前後の進行方向を正確に判定することが不可能な程度の遅い速度を示す。
【0057】
コントローラ37は、進行方向ステータスが「後進」である状態で、第2不明条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「不明」であると判定する。第2不明条件は、シフト操作位置が後進位置(R)以外の位置であり、且つ、車速が第2閾値未満であることを含む。すなわち、第2不明条件は、シフト操作位置が前進位置(F)又は中立位置(N2)であり、且つ、車速が第2閾値未満であることを含む。第2閾値は、第1閾値と同じであってもよい。第2閾値は、第1閾値と異なってもよい。第2閾値は、例えば、作業機械1の前後の進行方向を正確に判定することが不可能な程度の遅い速度を示す。
【0058】
コントローラ37は、進行方向ステータスが「不明」である状態で、前進条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「前進」であると判定する。コントローラ37は、進行方向ステータスが「不明」である状態で、後進条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「後進」であると判定する。コントローラ37は、進行方向ステータスが「不明」である状態で、停止条件が成立した場合に、進行方向ステータスが「停止」であると判定する。停止条件は、車速が第3閾値未満である状態が所定時間以上、継続することを含む。第3閾値は、例えば、作業機械1が停止していると見なせる程度の遅い速度を示す。以上のように、コントローラ37は、進行方向ステータスが、「停止」と、「前進」と、「後進」と、「不明」とのいずれであるかを判定する。
【0059】
図7に示すように、直進維持モードにおいて、進行方向ステータスが前進である場合には、ステップS104で、コントローラ37は、操舵角θ1の目標角度を、前進目標角度に決定する。前進目標角度は、上述した前進時の操舵角θ1の目標角度である。直進維持モードにおいて、進行方向ステータスが後進である場合には、ステップS105で、コントローラ37は、操舵角θ1の目標角度を、後進目標角度に決定する。後進目標角度は、後進時の操舵角θ1の目標角度である。後進目標角度は、前進目標角度と左右逆の角度である。
【0060】
直進維持モードにおいて、進行方向ステータスが不明である場合には、ステップS106で、コントローラ37は、操舵角θ1の目標角度を、中立角に決定する。直進維持モードの実行中には、コントローラ37は、上記の処理を繰り返し実行する。従って、コントローラ37は、進行方向ステータスが不明と判定した場合には、操舵角を中立角に設定し、その後、進行方向ステータスが前進又は後進と判定するまで、操舵角を中立角に維持する。
【0061】
コントローラ37は、進行方向ステータスが不明から前進に変わった場合には、操舵角を、中立角から前進目標角度に変更する。コントローラ37は、進行方向ステータスが不明から後進に変わった場合には、操舵角を、中立角から後進目標角度に変更する。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1では、自動ステアリング制御中に、進行方向ステータスが不明であると判定された場合には、操舵角が中立角とされる。それにより、作業機械1が、適切な方向と逆方向に操舵されることが防止される。それにより、自動ステアリング制御中に、作業機械1の前進と後進とが切り替えられた場合に、作業機械1がふらつくことが抑えられる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0064】
作業機械1は、モータグレーダに限らず、ホイールローダ、ダンプトラック、フォークリフトなどの他の作業機械であってもよい。ステアリングアクチュエータ41の数は1つに限らず、2つ以上であってもよい。ステアリングアクチュエータ41は、油圧シリンダに限らず、油圧モータ、或いは電動モータであってもよい。上記の実施形態では、前輪が左右に操舵されることで、作業機械1が左右に旋回する。しかし、後輪が左右に操舵されることで、作業機械1が左右に旋回してもよい。
【0065】
自動ステアリング制御の処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ37は、進行方向ステータスが不明であると判定した場合には、所定時間が経過するまで、操舵角を中立角に維持してもよい。コントローラ37は、進行方向ステータスが不明であるかに関わらず、作業機械1の前後の進行方向が切り替えられた際に、操舵角を中立角としてもよい。コントローラ37は、作業機械1の前後の進行方向が切り替えられた際に、所定時間が経過するまで、操舵角を中立角に維持してもよい。
【0066】
目標方向H1は、操舵角θ1が中立角に戻ったときの車体2の進行方向に限らず、他の方法によって決定されてもよい。例えば、目標方向H1は、ステアリング操作部材が中立位置(N2)に戻ったときの車体2の進行方向であってもよい。或いは、目標方向H1は、オペレータによって入力されてもよい。目標方向H1は、外部のコンピュータから入力されてもよい。
【0067】
上記の実施形態では、作業機械1の前後の進行方向を指示する指令信号は、シフト操作部材53からのシフト操作位置を示す信号である。しかし、作業機械1の前後の進行方向を指示する指令信号は、他の信号であってもよい。例えば、コントローラ37が作業機械1の走行を自動制御する場合には、作業機械1の前後の進行方向を指示する指令信号は、コントローラ37によって生成されてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、目標進路R1は、直進維持モードにおける目標方向H1によって規定されているが、他の方法によって目標進路R1が設定されてもよい。例えば、目標進路R1は、オペレータによって入力される任意の経路であってもよい。目標進路R1は、外部のコンピュータから入力される任意の経路であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示によれば、自動ステアリング制御中に、作業機械の前進と後進とが切り替えられた場合に、作業機械がふらつくことが抑えられる。
【符号の説明】
【0070】
1:作業機械
3A,3B:走行輪
37:コントローラ
41:ステアリングアクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8