(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062710
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/352 20210101AFI20240501BHJP
A61B 5/347 20210101ALI20240501BHJP
A61B 5/16 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
A61B5/352 100
A61B5/352
A61B5/347
A61B5/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170736
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 郷司
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ06
4C038PS00
4C127AA02
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG11
4C127GG13
4C127GG16
4C127LL13
(57)【要約】
【課題】自律神経の失調状態を時間軸に沿って把握することを可能とする情報処理装置を提供する。
【解決手段】ユーザの拍動を示す第1データを取得し、前記第1データからHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第2データを生成し、前記第2データの複数の組み合わせのプロットから回帰直線を算出し、前記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出し、前記回帰直線および前記統計量から許容可能な領域に係る第3データを生成し、前記ユーザの拍動を示す第4データを取得し、前記第4データからHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第5データを生成し、前記第5データの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す第6データを生成し、前記第6データに基づく出力を可能とする、情報処理装置1。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体データ取得部材を介して検出される、第1時間期間における第1ユーザの拍動を示す第1データを取得する生体データ取得部と、
前記第1データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第2データを生成するLFおよびHF算出部と、
前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにそれぞれプロットされる場合について、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、前記複数のプロットについて、前記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出し、前記回帰直線および前記統計量に基づいて、許容可能な領域に係る第3データを生成する、グラフデータ生成部と
を備える情報処理装置であって、
前記生体データ取得部はさらに、前記生体データ取得部材を介して検出される、第2時間期間における前記第1ユーザの拍動を示す第4データを取得し、
前記LFおよびHF算出部はさらに、前記第4データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第5データを生成し、
前記情報処理装置はさらに、
前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す第6データを生成する時系列データ生成部と、
前記第6データに係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記情報処理装置が備える出力器を用いて、前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行う、出力部と
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記第6データは、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての、HFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の前記回帰直線からの距離を、時系列に沿って示すことにより、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値の大小関係を示し第2の軸がLF/HFの値の大小関係を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、
前記第6データが示す、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの距離は、前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離、前記回帰直線からの前記第2の軸方向での距離、または、前記回帰直線からの最短距離である、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値の大小関係を示し第2の軸がLF/HFの値の大小関係を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、
前記グラフデータ生成部は、前記ばらつきを表す統計量として、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離に基づいて標準偏差を算出し、
前記許容可能な領域は、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第1の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第2の直線との間の第1領域である、あるいは、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第3の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第4の直線との間の第2領域である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記グラフデータ生成部は、前記ばらつきを表す統計量として、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離に基づいて標準偏差を算出し、
前記許容可能な領域は、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第1の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第2の直線との間の第1領域である、あるいは、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第3の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第4の直線との間の第2領域であり、
前記第6データが示す、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの距離は、前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離を前記標準偏差で除した値である、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値を対数スケールで示し、第2の軸がLF/HFの値を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第6データに基づいて、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが前記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成する、通知データ生成部をさらに備え、
前記出力部は、前記第6データに係る情報の前記出力として、前記通知データを前記出力装置に出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置と、
前記第1ユーザに前記第6データに基づく時系列に沿った出力を行う出力装置、および、前記生体データ取得部材、の少なくとも一方と
を具備するシステム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置から前記第6データに係る情報を受信する出力装置であって、
前記第6データに係る情報を受信する受信部と
前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行う出力部と
を備える出力装置。
【請求項10】
請求項1から6のいずれかに記載の情報処理装置から、前記第6データに係る情報を受信する出力装置であって、
前記出力装置は、
前記第6データを受信する受信部と、
前記第6データに基づいて、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが前記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成する、通知データ生成部と
出力器を用いて前記通知データに基づく出力を行う出力部と
を備える出力装置。
【請求項11】
請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶する、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項13】
コンピュータおよび記憶媒体を備える装置が実行する情報処理方法であって、
生体データ取得部材を介して検出される、第1時間期間における第1ユーザの拍動を示す第1データを取得することと、
前記第1データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第2データを生成することと、
前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにそれぞれプロットされる場合について、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、前記複数のプロットについて、前記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出し、前記回帰直線および前記統計量に基づいて、許容可能な領域に係る第3データを生成することと
を備え、
前記生体データ取得部材を介して検出される、第2時間期間における前記第1ユーザの拍動を示す第4データを取得することと、
前記第4データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第5データを生成することと、
前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す第6データを生成することと、
前記第6データに係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記装置が備える出力器を用いて、前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行うことと
をさらに備える、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ選手、アスリート、および武道家等の訓練、各種作業訓練、ならびに、自己啓発等において、メンタル状態を把握して訓練に活かす試みがなされている。例えば、特許文献1には、被験者の拍動間隔から周波数スペクトル変換を介して得たパワースペクトルを定積分してLFおよびHFを算出し、当該拍動間隔と、副交感神経系活動の指標であるLFとHFの少なくともいずれか一方とを、直交座標系のそれぞれの座標軸に取り、生体情報を二次元的に図示することにより被験者の心理・生理学状態を表示する生体情報提示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の生体情報提示システムによれば、自律神経系の活動の変化をある程度、把握することができるが、近年では特に自律神経の失調状態の把握を容易とすることが求められている。
【0005】
本発明者らは、これに対し、特願2021-111939を出願した。本出願は、自律神経活動指標の交感神経活動指標と副交感神経活動指標を、それぞれXY軸にとり、自律神経活動の様子を二次元平面上で把握する手法ならびに関連技術についてのものである。この手法により、自律神経の活動領域が通常の領域であるか、あるいは通常領域を逸脱しているかの判定が容易になった。
【0006】
しかしながら、この手法では、被験者の活動状態を監視するには、二次元平面上にプロットされる位置を追い続けることになり、自律神経活動指標の経時的な動きをより把握し易くすることが求められている。また、この手法において事後的に解析する場合には、通常状態を逸脱している時間帯を表示から直接的に特定することが出来ないため、元データに戻って見直すこととなっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自律神経の失調状態を時間軸に沿って把握することを可能とする情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を含み得る。
[1] 生体データ取得部材を介して検出される、第1時間期間における第1ユーザの拍動を示す第1データを取得する生体データ取得部と、
前記第1データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第2データを生成するLFおよびHF算出部と、
前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにそれぞれプロットされる場合について、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、前記複数のプロットについて、前記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出し、前記回帰直線および前記統計量に基づいて、許容可能な領域に係る第3データを生成する、グラフデータ生成部と
を備える情報処理装置であって、
前記生体データ取得部はさらに、前記生体データ取得部材を介して検出される、第2時間期間における前記第1ユーザの拍動を示す第4データを取得し、
前記LFおよびHF算出部はさらに、前記第4データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第5データを生成し、
前記情報処理装置はさらに、
前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す第6データを生成する時系列データ生成部と、
前記第6データに係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記情報処理装置が備える出力器を用いて、前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行う、出力部と
を備える、情報処理装置。
[2] 前記第6データは、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての、HFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の前記回帰直線からの距離を、時系列に沿って示すことにより、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す、[1]に記載の情報処理装置。
[3] 前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値の大小関係を示し第2の軸がLF/HFの値の大小関係を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、
前記第6データが示す、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの距離は、前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離、前記回帰直線からの前記第2の軸方向での距離、または、前記回帰直線からの最短距離である、
[2]に記載の情報処理装置。
[4] 前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値の大小関係を示し第2の軸がLF/HFの値の大小関係を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、
前記グラフデータ生成部は、前記ばらつきを表す統計量として、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離に基づいて標準偏差を算出し、
前記許容可能な領域は、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第1の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第2の直線との間の第1領域である、あるいは、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第3の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第4の直線との間の第2領域である、
[1]に記載の情報処理装置。
[5] 前記グラフデータ生成部は、前記ばらつきを表す統計量として、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離に基づいて標準偏差を算出し、
前記許容可能な領域は、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第1の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の3倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第2の直線との間の第1領域である、あるいは、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の正方向に平行移動させた第3の直線と、前記回帰直線を前記標準偏差の2倍の値だけ前記第1の軸の負の方向に平行移動させた第4の直線との間の第2領域であり、
前記第6データが示す、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての前記回帰直線からの距離は、前記回帰直線からの前記第1の軸方向での距離を前記標準偏差で除した値である、
[3]に記載の情報処理装置。
[6] 前記グラフデータ生成部は、前記回帰直線として、第1の軸がHFの値を対数スケールで示し、第2の軸がLF/HFの値を示すように、前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれプロットされる場合の、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出する、[1]に記載の情報処理装置。
[7] 前記第6データに基づいて、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが前記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成する、通知データ生成部をさらに備え、
前記出力部は、前記第6データに係る情報の前記出力として、前記通知データを前記出力装置に出力する、
[1]に記載の情報処理装置。
[8] [1]から[7]のいずれかに記載の情報処理装置と、
前記第1ユーザに前記第6データに基づく時系列に沿った出力を行う出力装置、および、前記生体データ取得部材、の少なくとも一方と
を具備するシステム。
[9] [1]から[7]のいずれかに記載の情報処理装置から前記第6データに係る情報を受信する出力装置であって、
前記第6データに係る情報を受信する受信部と
前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行う出力部と
を備える出力装置。
[10] [1]から[6]のいずれかに記載の情報処理装置から、前記第6データに係る情報を受信する出力装置であって、
前記出力装置は、
前記第6データを受信する受信部と、
前記第6データに基づいて、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが前記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成する、通知データ生成部と
出力器を用いて前記通知データに基づく出力を行う出力部と
を備える出力装置。
[11] [1]から[7]のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
[12] [1]から[7]のいずれかに記載の情報処理装置の各部による処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記憶する、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
[13] コンピュータおよび記憶媒体を備える装置が実行する情報処理方法であって、
生体データ取得部材を介して検出される、第1時間期間における第1ユーザの拍動を示す第1データを取得することと、
前記第1データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第2データを生成することと、
前記第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにそれぞれプロットされる場合について、当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出し、前記複数のプロットについて、前記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出し、前記回帰直線および前記統計量に基づいて、許容可能な領域に係る第3データを生成することと
を備え、
前記生体データ取得部材を介して検出される、第2時間期間における前記第1ユーザの拍動を示す第4データを取得することと、
前記第4データに基づいてHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含む第5データを生成することと、
前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す第6データを生成することと、
前記第6データに係る情報を出力装置に出力する、あるいは、前記装置が備える出力器を用いて、前記第6データに基づく、前記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ前記許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行うことと
をさらに備える、情報処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成により、自律神経の失調状態を時間軸に沿って把握することを可能とする情報処理装置、システム、出力装置、プログラム、記憶媒体、および情報処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの構成の一例を示す。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成のうち、グラフデータ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図3に示した第1実施形態に係る情報処理装置の制御部のソフトウェア構成のうち、時系列データ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る情報処理装置により実行される動作の一例のフローチャートを示す。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る情報処理装置において用いられる生体データとしての典型的な心電波形の一例である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る情報処理装置により心電波形の周波数分析からLFおよびHFを求める概念の説明図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の一例を示す。元になったデータは、発表会にてプレゼンテーションを行った被験者の、発表前後を含む午後約半日間のデータである。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る情報処理装置により
図9のグラフデータに関連して生成された時系列データに基づく表示の一例を示す。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る情報処理装置により生成されたグラフデータに基づく表示の別の例を示す。元になったデータは、ソーラーカーレースに出場したドライバーの、練習走行、睡眠、レース本番を含む、約28時間のデータである。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る情報処理装置により
図11のグラフデータに関連して生成された時系列データに基づく表示の一例を示す。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る情報処理装置とともに用いられる出力装置の概略構成を示す。
【
図14】
図14は、他の実施形態に係る情報処理装置の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明に係る実施形態を説明する。
以下では、下記実施形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0012】
[第1実施形態]
(構成例)
(1)システム構成
図1は、第1実施形態に係る情報処理装置1を含むシステムSYSの構成の一例を示す。システムSYSは、情報処理装置1に加えて、例えば、生体データ取得部材2、生体データ取得装置3、および出力装置4を含む。
【0013】
生体データ取得部材2は、例えば、生体データ取得用電極である。生体データ取得装置3は、例えば、生体データ取得部材2を介して取得される電圧信号をアナログデジタル変換し、当該アナログデジタル変換後の信号を、通信ネットワークNWを介して外部装置に送信可能な装置である。生体データ取得部材2および生体データ取得装置3の構成の詳細については後述する。
【0014】
情報処理装置1は、例えば計測機器およびパーソナルコンピュータ等である。出力装置4は、例えば、スマートフォン、携帯端末(例えばタブレット端末)、スマートウォッチ、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラス、スマートコンタクトレンズ、およびパーソナルコンピュータ等である。
図1では、情報処理装置1と出力装置4とが通信ネットワークNWを介して接続される別個の装置であるものとして示されているが、本実施形態はこれに限定されない。情報処理装置1と出力装置4とを組み合わせたものが、単一の装置を構成していてもよい。例えば、情報処理装置1と出力装置4との組み合わせが、計測機器、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、移動端末(例えばタブレット端末)、スマートウォッチ、およびヘッドマウントディスプレイ等を構成していてもよい。同様に、生体データ取得部材2、生体データ取得装置3、情報処理装置1、および出力装置4のうちの2つ以上が、単一の装置を構成していてもよい。
【0015】
生体データ取得装置3は、生体データ取得部材2を介して、生体データ取得部材2が取り付けられたユーザ(以下、被験者とも称される。)の拍動を示す生体データを取得する。生体データ取得装置3は、通信ネットワークNWを介して生体データを情報処理装置1に送信する。情報処理装置1は、当該生体データを受け取り、当該生体データに基づいて、グラフデータおよび/または時系列データを生成する。
【0016】
情報処理装置1によるグラフデータの生成について説明する。情報処理装置1は、後述するように、LFおよびHF算出部112による制御の下、被験者の拍動間隔から周波数スペクトル変換を介して得たパワースペクトルを定積分してLFおよびHFを算出し、さらにLF/HFを算出する。情報処理装置1は、グラフデータ生成部113による制御の下、例えば、第1の軸にHFを取り、第1の軸と交差する第2の軸にLF/HFを取ったグラフに関係するグラフデータを生成する。情報処理装置1は、通信ネットワークNWを介して、当該グラフデータを出力装置4に送信可能である。
【0017】
出力装置4は、当該グラフデータを受信し、当該グラフデータに基づいて、上記の通り、第1の軸にHFを取り第2の軸にLF/HFを取ったグラフを表示する。当該表示により、被験者の自律神経の失調状態におけるプロットの把握が容易となる。より具体的には、グラフデータが例えば許容可能領域に係るデータを含むことにより、当該グラフに許容可能領域も表示され、これにより、被験者の自律神経の失調状態におけるプロットの把握が容易となる。
【0018】
情報処理装置1はさらに、時系列データ生成部114による制御の下、HFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが上記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す時系列データを生成する。情報処理装置1は、通信ネットワークNWを介して、当該時系列データを出力装置4に送信する。
【0019】
出力装置4は、当該時系列データを受信し、当該時系列データに基づいて、HFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが当該許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示すグラフを表示する。当該表示により、被験者の自律神経活動の経時的な動きの把握が容易となる。
【0020】
情報処理装置1は、時系列データに基づいて通知データを生成し、当該通知データを出力装置4に送信してもよい。出力装置4は、当該通知データを受信し、当該通知データに基づいて、HFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行うことも可能である。
【0021】
次に、生体データ、ならびに、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3について、より詳細に説明する。
【0022】
生体データ取得装置3は、生体データ取得部材2を介して被験者の拍動間隔を示す生体データを取得する。本明細書では、主に当該生体データが心電情報である場合を例に挙げて説明する。生体データ取得部材2としては、生体データ取得用電極が好ましく、生体接触型電極がより好ましい。生体データ取得部材2は、生体データ取得装置3に直接、または配線を介して接続されていることが好ましい。生体データ取得装置3は、得られた心電情報を例えば情報処理装置1に送信することが可能なものであってもよく、温度計、GPSによる位置情報、XYZ各軸への加速度センサ等が搭載されているものであってもよい。生体データ取得装置3は、心電情報を後述するRRI等の拍動間隔の情報に変換してもよいし、情報処理装置1において、心電情報をRRI等の拍動間隔の情報に変換してもよい。本明細書では、特に明示されない限り、当該変換の前の心電情報と、当該変換後のRRI等の拍動間隔の情報は、いずれも生体データと称されてもよい。
【0023】
生体データ取得部材2は、衣服型の(図示しない)生体情報測定装置に設けられた複数の生体データ取得用電極であることが好ましい。衣服型の生体情報測定装置としては、センシングウェア、ウェアラブル・スマート・デバイス等が挙げられる。生体データ取得装置3は、例えば、当該衣服型の生体情報測定装置を被験者に装着させて、当該生体情報測定装置に設けられた複数の生体接触型電極を介して経時的に電圧測定を行うことにより、心電情報を取得する。生体データ取得装置3の電圧測定部における入力インピーダンスは好ましくは100kΩ以上、より好ましくは300kΩ以上、更に好ましくは1MΩ以上である。上限は特に規定されない。当該生体情報測定装置の衣服は、20%伸張応力が20N以下である生地により形成されることが好ましい。また衣服圧は0.1kPa以上1.5kPa以下となるように被験者に着用されることが好ましい。衣服圧は日本人の標準体形の持ち主を前提としているが、被験者の体形と衣服のサイズにあわせて調整してもよい。また、衣服圧が0.3kPa以上となる部分に皮膚接触型電極を配置することが好ましい。これにより、皮膚接触型電極の違和感を低減することができる。
【0024】
生体データが示す拍動間隔は、例えば心拍の間隔である。当該間隔の単位はmsであることが好ましい。心拍間隔は、心電図からR波とR波の間隔を読み取ること、あるいは、隣り合う心拍同士の間隔を計測することにより取得可能である。
図7に示されるように、規則的に表れる高い急峻なピークがR波である。拍動間隔およびその揺動には、精神神経の状態が反映されると言われている。
【0025】
生体データが示す拍動間隔は、心電信号におけるR波と次のR波との間隔であるRR間隔(以下、「RRI」と記載する場合がある)であることが好ましい。RRIは信号のピークがはっきり出ることによりピーク位置の誤認識が起こりにくいため、拍動間隔の測定精度を高めることができる。また、情報処理装置1で行われる周波数スペクトル変換にはある一定期間の波数が必要であるが、拍動間隔の測定精度が高ければ短い時間、少ない波数でスペクトル変換が可能となり、リアルタイムに近い迅速な検出が可能となる。なお
図7は、典型的な心電波形の一例である。
【0026】
なお、拍動間隔を示す生体データとして、心電情報に基づく心拍間隔を示す生体データの代わりに、血流量の変化に係る脈波情報に基づく脈拍間隔を示す生体データが用いられてもよい。脈拍間隔は、隣り合う脈拍同士の間隔を計測することにより取得可能である。脈波は、生体データ取得部材2により、被験者の手首、手指等で取得することができる。また心電情報と、心臓から離れた位置における脈波情報との差分から血圧に関連するパラメータを算出してもよい。
【0027】
生体データ取得部材2について、より詳細に説明する。
上述の通り、生体データ取得部材2として、皮膚接触型電極を用いることができる。皮膚接触型電極としては、導電性ファブリックを用いた電極を用いることができる。導電性ファブリックとして、少なくとも導電糸を含む繊維からなる織布、不織布、編物、刺繍糸、縫糸等が挙げられる。
【0028】
皮膚接触電極としては、伸縮性導体組成物を用いた電極を用いることができる。伸縮性導体層として、伸縮性を有し、且つ比抵抗が1×100Ωcm以下の層が挙げられる。伸縮性とは、導電性を保った状態で、繰り返し10%以上の伸縮が可能であることを意味する。伸縮性導体層は、層単独で40%以上の破断伸度を有することが好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上である。破断伸度は、導電性ペーストを離型シート上に所定の膜厚に塗布し、乾燥後に剥離し、引張試験を行って測定できる。伸縮性導体層は、引張弾性率が10~500MPaであることが好ましい。伸縮性導体層の平均厚さは、例えば20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは250μm以下、特に好ましくは90μm以下である。
【0029】
伸縮性導体層は、例えば導電性ペーストを用いて形成できる。導電性ペーストは、(i)銀粒子、カーボン粒子等の導電性粒子、(ii)ゴム、エラストマー等の柔軟性樹脂、および(iii)溶剤を含むことが好ましい。
【0030】
なお、皮膚接触型電極には導電性ゲルを用いることができる、導電性ゲルとして、医療機器において用いる皮膚接触型電極の表面に用いられるゲル電極材料が挙げられる。
【0031】
(2)情報処理装置に係るハードウェア構成
図2は、第1実施形態に係る情報処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0032】
情報処理装置1は、制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、入出力インタフェース(入出力I/F)14、およびバスBUSを含む。プログラム記憶部12、データ記憶部13、および入出力インタフェース14、の各々は、バスBUSを介して制御部11に接続される。
【0033】
制御部11は、中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを有する。
【0034】
プログラム記憶部12は、記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせたものである。プログラム記憶部12は、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、本実施形態に係る各種制御処理の実行のために用いられるプログラムを格納する。プログラム記憶部12は、例えば、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、CD-ROM、DVDディスク、およびUSBメモリ等の可搬型の記録媒体により実現されてもよい。
【0035】
データ記憶部13は、記憶媒体として、例えば、HDDまたはSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせたものである。データ記憶部13は、制御部11が有するハードウェアプロセッサの作業領域として使用され、データを一時的に保持し、バッファおよびキャッシュとして機能する。データ記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、CD-ROM、DVDディスク、およびUSBメモリ等の可搬型の記録媒体により実現されてもよい。
【0036】
入出力インタフェース14は、制御部1による制御の下、通信ネットワークNWにより定義される通信プロトコルを使用して、外部装置との間で伝送されるデータの送受信を行う。入出力インタフェース14は、例えば有線LANまたは無線LANに対応するインタフェースにより構成される。
【0037】
(3)情報処理装置に係るソフトウェア構成
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置1の制御部11のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部11中に示される各種機能部は、一例にすぎず、
図3に示されるように区別されている必要はない。単一のブロックとして示されている或る機能部が複数の単位に分割されて実現されてもよいし、異なる複数のブロックとして示されている機能部が或るまとまった単位で実現されてもよい。
【0038】
制御部11は、例えば、生体データ取得部111、LFおよびHF算出部112、グラフデータ生成部113、時系列データ生成部114、データ出力部115、および通知データ生成部116を含む。グラフデータ生成部113は、例えば、回帰分析データ生成部1131および許容可能領域算出部1132を含む。制御部11が含む各機能部の処理機能は、制御部11が、プログラム記憶部12に格納されるプログラムを、制御部11のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。プログラム記憶部12に格納されるプログラムが用いられる場合の説明を行ったが、用いられるプログラムは、通信ネットワークNWを通して提供されるものであってもよい。
【0039】
入出力インタフェース14は、生体データ取得装置3から通信ネットワークNWを介して送信される生体データを受け取り、当該生体データを制御部11に入力する。入出力インタフェース14はまた、制御部11から出力されるデータを受け取り、制御部11からの指示にしたがって、当該データを出力装置4に通信ネットワークNWを介して送信する。
【0040】
データ記憶部13は、例えば、生体データ記憶部131、LFおよびHF記憶部132、回帰分析データ記憶部133、許容可能領域記憶部134、時系列データ記憶部135、ならびに通知データ記憶部136を含む。これら各種記憶部は、情報処理装置1に含まれているものとして説明するが、これら記憶部のうち1つ以上が、例えばクラウドコンピューティング上に設けられていてもよい。
【0041】
生体データ記憶部131は、生体データを記憶する。LFおよびHF記憶部132は、LFとHFとの組み合わせのデータ、および/または、HFとLF/HFとの組み合わせのデータを記憶する。回帰分析データ記憶部133は、回帰分析データ生成部1131による処理で生成されるデータを記憶する。許容可能領域記憶部134は、許容可能領域算出部1132による処理で生成されるデータを記憶する。時系列データ記憶部135は、時系列データ生成部114による処理で生成される時系列データを記憶する。通知データ記憶部136は、通知データを記憶する。
【0042】
生体データ取得部111は、入出力インタフェース14を介して、生体データ取得部材2から送信される生体データを取得する処理を実行する。LFおよびHF算出部112は、生体データに基づいてLFおよびHFの組み合わせのデータを生成する処理を実行する。LFおよびHF算出部112はさらに、LF/HFを算出し、HFとLF/HFとの組み合わせのデータを生成する処理を実行する。グラフデータ生成部113は、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータに基づいて、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせのグラフ上へのプロットに関係するグラフデータを生成する処理を実行する。回帰分析データ生成部1131は、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせのグラフ上へのそれぞれのプロットに基づく回帰直線を算出して当該回帰直線を示す回帰直線データを生成する処理を実行する。許容可能領域算出部1132は、当該回帰直線に基づいて許容可能領域に係るデータを生成する処理を実行する。回帰直線データおよび許容可能領域に係るデータは、上述したグラフデータに含まれ得る。時系列データ生成部114は、HFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが当該許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す時系列データを生成する処理を実行する。データ出力部115は、グラフデータおよび/または時系列データを、入出力インタフェース14を介して、出力装置4に出力する処理を実行する。通知データ生成部116は、例えば時系列データに基づいて通知データを生成する。データ出力部115は、通知データも同様に出力装置4に出力する処理を実行する。
【0043】
図4は、第1実施形態に係る情報処理装置1の、グラフデータ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
【0044】
先ず、第1時間期間における被験者の拍動を示すデータに関係する処理を説明する。
図4では、当該処理に関係するデータの流れは破線で示されている。
【0045】
生体データ取得部111は、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3を介して検出される、第1時間期間における被験者(以下、第1ユーザとも称され得る。)の拍動を示す生体データ(以下、第1データとも称され得る。)を、入出力インタフェース14を介して取得し、当該第1データを生体データ記憶部131に記憶させる処理を実行する。
【0046】
LFおよびHF算出部112は、生体データ記憶部131から当該第1データを読み出し、当該第1データに基づいて、当該第1時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、当該第1データが示す拍動間隔の変動の時系列情報から、周波数スペクトル変換を介してパワースペクトルを算出し、当該パワースペクトルに基づいてLFおよびHFを算出することにより、LFとHFとの複数の組み合わせを含むデータを生成し、当該データを、LFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行し得る。LFおよびHF算出部112はさらに、LF/HFを算出し、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、第2データとも称され得る。)を生成し、当該第2データをLFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行してもよい。
【0047】
グラフデータ生成部113は、LFおよびHF記憶部132から当該第2データを読み出す処理を実行する。
【0048】
回帰分析データ生成部1131は、当該第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出して当該回帰直線を示す回帰直線データを生成し、当該回帰直線データを回帰分析データ記憶部133に記憶させる処理を実行する。本明細書ではこのような回帰直線データが生成される場合について主に説明するが、回帰分析データ生成部1131は、回帰直線データの代わりに、例えば、LF/HFを変数としてHFの値が定まるような曲線の関数のデータを回帰分析により生成してもよい。
【0049】
許容可能領域算出部1132は、回帰分析データ記憶部133から当該回帰直線データを読み出す処理を実行する。続いて、許容可能領域算出部1132は、上記第2データに係る上述した複数のプロットについて、上記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出する処理を実行する。続いて、許容可能領域算出部1132は、当該回帰直線および当該統計量に基づいて、当該回帰直線を基準とした許容可能な領域に係るデータ(以下、第3データとも称され得る。)を生成し、当該第3データを許容可能領域記憶部134に記憶させる処理を実行する。当該第3データは、例えば、上記回帰直線および上記統計量から算出される、許容可能領域の境界の1以上の直線を示すデータであってもよい。
【0050】
データ出力部115は、許容可能領域記憶部134から当該第3データを読み出し、当該第3データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による第3データに基づく表示が可能となる。当該表示では、例えば、第3データが示す許容可能領域が表示される。データ出力部115はさらに、LFおよびHF記憶部132から上記第2データを読み出し、当該第2データを同様に出力装置4に出力する処理を実行してもよい。データ出力部115はさらに、回帰分析データ記憶部133から上記回帰直線データを読み出し、当該回帰直線データを同様に出力装置4に出力する処理を実行してもよい。このような第2データおよび/または回帰直線データの出力により、出力装置4による第2データおよび/または回帰直線データに基づく表示も可能となる。データ出力部115による第3データの出力処理、第2データの出力処理、回帰直線データの出力処理が実行される順番は、ここに記載したものに限定されず、少なくとも2つのデータの出力が並行して行われるものであってもよい。
【0051】
続いて、第2時間期間における被験者の拍動を示すデータに関係する処理を説明する。
図4では、当該処理に関係するデータの流れは一点鎖線で示されている。なお、第2時間期間は、例えば第1時間期間より後の時間期間であるが、本実施形態はこれに限定されない。第2時間期間が第1時間期間より前の時間期間であってもよいし、第2時間期間と第1時間期間とが部分的に重なっていてもよい。
【0052】
生体データ取得部111は、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3を介して検出される、第2時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データ(以下、第4データとも称され得る。)を、入出力インタフェース14を介して取得し、当該第4データを生体データ記憶部131に記憶させる処理を実行する。
【0053】
LFおよびHF算出部112は、生体データ記憶部131から当該第4データを読み出し、当該第4データに基づいて、当該第2時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、第1データについて説明したのと同様にLF、HF、およびLF/HFを算出することにより、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(以下、第5データとも称され得る。)を生成し、当該第5データを、LFおよびHF記憶部132に記憶させる処理を実行する。当該記憶処理では、例えば、HFとLF/HFとの各組み合わせに対応するタイミング情報も記憶される。
【0054】
データ出力部115は、LFおよびHF記憶部132から当該第5データを読み出し、当該第5データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による第5データに基づく表示が可能となる。当該表示では、例えば、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされたグラフが表示される。当該表示は、例えば、上述した第3データに基づく表示とともに行われる。
【0055】
図5は、第1実施形態に係る情報処理装置1の、時系列データ生成処理に関係する構成を説明するための図である。
【0056】
時系列データ生成部114は、許容可能領域記憶部134から第3データを読み出し、LFおよびHF記憶部132から第5データを読み出す処理を実行する。第5データの読出し処理では、例えば、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせの各々のタイミング情報も読み出される。時系列データ生成部114は、当該第3データおよび当該第5データに基づいて、当該第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ上記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す時系列データ(以下、第6データとも称され得る。)を生成し、当該第6データを時系列データ記憶部135に記憶させる処理を実行する。当該時系列データの生成処理では、上述したタイミング情報も用いられ得る。
【0057】
当該第6データは、例えば、上記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせそれぞれについての、当該複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の上記回帰直線からの距離を、時系列に沿って示す。より具体的には、例えば、当該第6データに基づく表示では、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせの各々について、一方の軸が当該組み合わせのタイミング情報を示し、もう一方の軸が、当該組み合わせの上記プロットと上記回帰直線との距離を示す。当該距離としては、当該回帰直線からの上記第1の軸方向での距離、当該回帰直線からの上記第2の軸方向での距離、または、当該回帰直線からの最短距離が用いられる。当該距離として、回帰直線からの上記第1の軸方向での距離が用いられる場合は、第1の軸方向で回帰直線より大きい側にあるHFとLF/HFとの組み合わせについては正の値が用いられ、第1の軸方向で回帰直線より小さい側にあるHFとLF/HFとの組み合わせについては負の値が用いられるようにしてもよい。当該距離として、回帰直線からの上記第2の軸方向での距離が用いられる場合も同様である。これにより、第6データに基づく表示では、このような距離を基準にして、上記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ上記許容可能な領域を外れているか否かが時系列に沿って示される。これは、許容可能な領域も、後述するように回帰直線からの距離に基づいて定められているためである。本明細書では、第6データがこのように回帰直線からの距離を時系列に沿って示すものである場合について主に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。第6データとしては、例えば、時系列に沿って、HFとLF/HFとの組み合わせが許容可能な領域を外れていない場合にロー(L)レベル、許容可能な領域を外れている場合にハイ(H)レベルを示すように、許容可能な領域を外れているか否かを2値で示すものが用いられてもよい。
【0058】
データ出力部115は、時系列データ記憶部135から当該第6データを読み出し、当該第6データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による第6データに基づく表示が可能となる。例えば、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った視覚的な表示が可能となる。
【0059】
通知データ生成部116は、時系列データ記憶部135から第6データを読み出し、当該第6データに基づいて、上記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが上記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成し、当該通知データを通知データ記憶部136に記憶させる処理を実行する。通知データとしては、通知データに基づくユーザへのリアルタイムな警告のための単純な通知信号でもよいが、第6データに基づく表示とともに用いられる等、警告が事後的に表示等される場合、例えば、当該表示の適切な個所に警告を表示するためのタイミング情報が含まれるものであってもよい。
【0060】
本明細書では、通知データが、HFとLF/HFとの当該複数の組み合わせのうち時系列的に連続する3つの組み合わせが許容可能な領域を外れる場合に生成されるものとして主に説明するが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、通知データは、HFとLF/HFとの当該複数の組み合わせのうち或る単一の組み合わせが許容可能な領域を外れる場合に生成されるようにしてもよい。あるいは、通知データは、HFとLF/HFとの当該複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する予め設定された数の組み合わせが許容可能な領域を外れる場合に生成されるようにしてもよい。当該数としては、任意の値が設定可能である。
【0061】
データ出力部115は、通知データ記憶部136から通知データを読み出し、当該通知データを、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する処理を実行する。当該出力により、出力装置4による通知データに基づく出力が可能となる。例えば、後述する警告が可能となる。例えば、時系列表示を行うグラフ上での時系列に沿っての警告の表示、および/または、その他のリアルタイムに行われる警告として、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力が実現される。
【0062】
このように、データ出力部115は、第6データおよび/または通知データという、第6データに係る情報を出力装置4に出力する処理を実行する。これにより、出力装置4では、上述したように、第6データに基づく、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力が可能となる。
【0063】
(動作例)
以上のように構成された情報処理装置1の動作例を説明する。
(1)全体動作フロー
図6は、情報処理装置1により実行される動作の一例のフローチャートを示す図である。以下で説明する動作は一例に過ぎず、本実施形態に係る動作はこれに限定されるものではない。
【0064】
当該動作に先立ち、生体データ取得装置3が生体データ取得部材2を介して第1時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データ(第1データ)を取得する。生体データ取得装置3は、(図示しない)出力部による制御の下、当該生体データを、通信ネットワークNWを介して情報処理装置1に送信する。当該送信に応じて、
図6のフローチャートに示される動作が開始される。
【0065】
情報処理装置1の制御部11は、生体データ取得部111による制御の下、当該第1時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データ(第1データ)を取得する(ST01)。
【0066】
続いて、制御部11は、LFおよびHF算出部112による制御の下、当該第1データに基づいて、当該第1時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、当該第1データが示す拍動間隔の変動の時系列情報から、周波数スペクトル変換を介してパワースペクトルを算出し、当該パワースペクトルに基づいてLFおよびHFを算出し、さらにLF/HFを算出することにより、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(第2データ)を生成する(ST02)。なお、ST02の動作は、ST01の動作と、少なくとも一部が並行して行われてもよい。
【0067】
続いて、制御部11は、回帰分析データ生成部1131による制御の下、当該第2データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがHFとLF/HFとの関係を示すようにプロットされる場合の当該複数のプロットに基づく回帰直線を算出する(ST03)。
【0068】
続いて、制御部11は、許容可能領域算出部1132による制御の下、上記第2データに係る上述した複数のプロットについて、上記回帰直線を基準としたばらつきを表す統計量を算出する(ST04)。
【0069】
続いて、制御部11は、許容可能領域算出部1132による制御の下、当該回帰直線および当該統計量に基づいて、当該回帰直線を基準とした許容可能な領域に係るデータ(第3データ)を生成する(ST05)。
【0070】
続いて、制御部11は、生体データ取得部111による制御の下、生体データ取得部材2および生体データ取得装置3を介して検出される、第2時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データ(第4データ)を、入出力インタフェース14を介して取得する(ST06)。
【0071】
続いて、制御部11は、LFおよびHF算出部112による制御の下、当該第4データに基づいて、当該第2時間期間に含まれる複数の時間期間の各々について、第1データについて説明したのと同様にLFおよびHFを算出し、さらにLF/HFを算出することにより、HFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータ(第5データ)を生成する(ST07)。
【0072】
続いて、制御部11は、時系列データ生成部114による制御の下、上記第3データおよび当該第5データに基づいて、当該第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ上記許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す時系列データ(第6データ)を生成する(ST08)。
【0073】
続いて、制御部11は、データ出力部115による制御の下、当該第6データに係る情報を、入出力インタフェース14を介して出力装置4に出力する(ST09)。当該情報は、第6データそのものであってもよいし、後述する通知データであってもよい。通知データが出力される場合、事前に、制御部11は、通知データを生成する動作を実行する。通知データ生成処理では、制御部11は、通知データ生成部116による制御の下、第6データに基づいて、例えば、上記第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち、時系列的に連続する3つの組み合わせが上記許容可能な領域を外れる場合に通知データを生成する処理を実行する。
【0074】
上記では、ST05の動作の後にST06およびST07の動作が実行されるものとして説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ST06およびST07の動作は各々、ST02、ST03、ST04、およびST05の動作の少なくとも1つと並行して実行されてもよい。さらに、ST07の動作、ST08の動作、およびST09の動作は、ST06の動作と少なくとも一部が並行して実行されてもよい。さらには、ST06の動作が、少なくとも一部において、ST01の動作より前に実行されるようなことがあってもよい。
【0075】
以下、
図6に示すフローに関連して説明した動作の詳細を説明する。
【0076】
(2)LFおよびHF算出処理
ST02およびST07の動作において制御部11がLFおよびHF算出部112による制御の下で実行するLFおよびHF算出処理を、より詳細に説明する。
【0077】
図7は、拍動間隔を示す生体データとしての典型的な心電波形の一例を示す。拍動間隔の一例である、R波と次のR波との間隔であるRRIが示されている。
【0078】
LFは、例えば拍動間隔から周波数スペクトル変換を介して得たパワースペクトルを周波数Lf1からLf2まで定積分することにより算出することができる。HFは、当該パワースペクトルを周波数Hf1からHf2まで定積分することにより算出することができる。Lf1、Lf2、Hf1、およびHf2は、Hf1>Lf1およびHf2>Lf2の関係を満たすものである。
【0079】
より詳細には、LFは、時間信号fである拍動間隔を周波数スペクトル変換したもの(周波数スペクトルF)を二乗することにより得られるパワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)を周波数Lf1からLf2まで定積分することにより求めてもよい。HFは、上記パワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)を周波数Hf1(>Lf1)からHf2(>Lf2)まで定積分することにより求めてもよい。
【0080】
第1のパワースペクトルF2を用いて計算されるLF、HFの単位としては、ms2が挙げられる。周波数スペクトル変換の方法としては、例えば高速フーリエ変換(FFT)、ウェーブレット解析、および最大エントロピー法等を用いることができる。なお、本明細書においては、FFTを用いた場合を例として説明するが、他の方法を用いることも可能である。
【0081】
例えば、拍動間隔をスプライン補間しサンプリング間隔Δtで再サンプリングした拍動間隔RRIkの離散フーリエ変換Gkは、以下の式(I)で表され、パワースペクトルF2(第1のパワースペクトル)(単位:ms2/Hz)は、以下の式(II)で表される。ここで、kは時系列、Nはデータ数を表し、Sは任意のスケールであり、一般にパワースペクトラムではS=1である。
【0082】
【0083】
【0084】
他方、LFおよびHFの値として、拍動間隔を周波数スペクトル変換した値から得たパワースペクトルF(第2のパワースペクトル)(単位:ms)を所定の区間で定積分したものを用いてもよい。このように、パワースペクトルとして拍動間隔を周波数スペクトル変換した値を用いれば、より簡便にLFおよびHFの値を算出することができる。第2のパワースペクトルFを用いて計算されるLF、HFの単位は無次元量であることが好ましい。パワースペクトルF(第2のパワースペクトル)は、以下の式(III)で表される。
【0085】
【0086】
LF、HFの算出方法について、パワースペクトル積分の説明図である
図8を参照しながら説明する。
図8に示されるグラフでは、縦軸はパワースペクトル密度(単位:ms
2/Hz)を示し、横軸は周波数(単位:Hz)を示す。LFは、パワースペクトル(例えば第1のパワースペクトルF
2)を例えば0.04Hz(L
f1)から0.15Hz(L
f2)まで定積分した値であり、
図8において斜線によりハッチングがされている部分の面積である。ここで、L
f1<L
f2である。一方、HFは、パワースペクトル(例えば第1のパワースペクトルF
2)を例えば0.15Hz(H
f1)から0.4Hz(H
f2)まで定積分した値であり、
図8において縦線によりハッチングがされている部分の面積である。ここで、H
f1<H
f2である。
図8では、L
f2とH
f1がいずれも0.15Hzと等しくなるように積分範囲を設定したが、L
f1<H
f1およびL
f2<H
f2の関係を満たしていれば、L
f2とH
f1は同一の値であっても異なる値でもよい。ここでは、パワースペクトル積分の方法を、第1のパワースペクトルF
2を用いて説明したが、第2のパワースペクトルFによる定積分も同様に行うことができる。
【0087】
LFの積分範囲は、少なくとも0.1Hzを含み、Lf1<0.1<Lf2であることが好ましい。また、Lf1は0.01Hz以上であることが好ましく、0.04Hz以上であることがより好ましい。Lf2は0.13Hz以上であることがより好ましく、0.14Hz以上であることが更に好ましく、また、0.16Hz以下であることが好ましく、0.15Hz以下であることがより好ましい。
【0088】
HFの積分範囲は、少なくとも0.3Hzを含み、Hf1<0.3<Hf2であることが好ましい。Hf1は0.14Hz以上であることが好ましく、0.15Hz以上であることがより好ましく、また、0.17Hz以下であってもよく、0.16Hz以下であってもよい。Hf2は0.38Hz以上であることが好ましく、0.39Hz以上であることがより好ましく、また、0.41Hz以下であることが好ましく、0.4Hz以下であることがより好ましい。
【0089】
このようなLFおよびHFの算出に用いられる例えば心電情報である生体データについて説明する。
生体データ取得部材2を介して取得された生体データは、生体データ記憶部131に記憶される。詳細には、まずLFおよびHF算出部112で、周波数スペクトル変換を行うためには、ある程度の時間が必要である。心拍は概ね1Hz前後の低周波信号であり、その拍動間隔の揺らぎとして仮に0.017Hzまでを扱う場合には1/0.017=約60秒間のデータが最低限必要となる。したがってリアルタイムで周波数スペクトル変換を行うことは原理的には困難である。一方、所定の時間間隔Aで過去に遡って、生体データ記憶部131に記憶されたデータから任意の時間幅Bのデータを抽出して移動平均的に周波数スペクトル変換を行っていけば、疑似的なリアルタイムの周波数スペクトル変換が可能となる。所定の時間間隔Aは、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上20秒以下である。上記任意の時間幅Bは、好ましくは1分間以上10分間以下、より好ましくは1分間以上5分間以下、更に好ましくは1分間以上3分間以下である。これにより10秒程度~5分程度の遅れで疑似リアルタイム的に周波数スペクトル変換が可能となる。
【0090】
後述する母集団データに係るLFとHFとの各組み合わせ(HF1,LF1),(HF2,LF2)・・・,(HFn,LFn)は、被験者の正常時に取得した心電情報から導かれた所定の時間幅のHFとLFの集合であることが好ましい。所定の時間幅は、好ましくは180秒以下、より好ましくは30秒以下、更に好ましくは10秒以下である。
【0091】
母集団データに係る心電情報を取得した後に、自律神経活動をチェックするために新たに取得する心電情報に係る、すなわち、後述する標本集団データに係る、LF、HFの値は、それぞれ、所定の時間幅で得られた心拍変動RRIから移動平均的に算出された値であることが好ましい。所定の時間幅は、好ましくは300秒間以下、より好ましくは180秒以下、更に好ましくは60秒以下である。
【0092】
(3)母集団データに基づくグラフデータ生成処理
ST01の動作で取得される第1時間期間における被験者(第1ユーザ)の拍動を示す生体データ(第1データ)に基づいて、ST02の動作で生成されるHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを、以下では母集団データとも称する。
【0093】
当該第1データは、予め、普段の生活や慣れた作業、通常の仕事のルーチンをこなしている状態や休憩している状態の被験者の正常時の心電情報が生体データ取得部材2を介して取得されるようにしたものである。当該第1データに基づく母集団データの、次に説明する複数のプロットを基準にして、新たに取得した心電情報に係るプロットが、母集団データのプロットから有意に外れた領域に位置した場合に自律神経失調状態に至ったと判断することができる。なお、生体データ取得部材2が設けられる例えば衣服型の生体情報測定装置に、および/または、生体データ取得装置3に記憶部を設けて、そこに母集団データに係る心電情報等を保存してもよい。
【0094】
(3-1)HFおよびLF/HFのプロット
ST03の動作に関係して、制御部11がグラフデータ生成部113による制御の下で実行し得る、母集団データに基づく、HFおよびLF/HFの複数の組み合わせをそれぞれグラフにプロットする処理を、先ず説明する。
【0095】
制御部11は、グラフデータ生成部113による制御の下、第1の軸にHFを取り、第1の軸と交差する第2の軸にLF/HFを取ったグラフに関係するグラフデータを生成する。当該グラフは、例えば、XY二次元座標系において、X軸にLF/HFを取り、Y軸にHFを取ったグラフであることが好ましい。一方、当該グラフは、X軸にHFを取り、Y軸にLF/HFを取ったグラフであってもよい。また、当該グラフにおいて、第1の軸と第2の軸は必ずしも直交している必要は無い。また、当該グラフは、HFおよびLF/HFの他に加速度およびRRI等の第3成分の値をZ軸にとったXYZ三次元座標系のものであってもよい。
【0096】
例えば、X軸にLF/HFを取り、Y軸にHFを取ったグラフでは、被験者の自律神経が正常に働いている場合、LF/HFが小さくHFが大きい側の領域(
図9に示されるグラフの左上領域に対応)がリラックス状態であり、LF/HFが大きくHFが小さい側の領域(
図9に示されるグラフの右下領域に対応)が緊張状態やストレスを感じている状態であると解釈できる。一方、左下領域や右上領域は、自律神経が正常に働いていない状態、すなわち自律神経失調状態であると解釈できる。
【0097】
第1の軸がHFを対数スケールで示すようなグラフデータを生成することが好ましい。このために、制御部11は、例えば、グラフデータ生成部113による制御の下、LFおよびHF記憶部132に記憶されるHFに基づいて、そのHFの対数(log(HF))を算出する。健康な人の正常時であってもHFの値の変動は激しいため、第1の軸がHFを対数スケールで示すようにすることにより、グラフを確認し易くすることができる。また、統計処理もしやすくなる。なおここに対数の底は特に限定されず、自然対数でも10を底とする対数(常用対数)でも良い。便宜上、以下では10を底とする常用対数を用いて説明する。
【0098】
(3-2)回帰分析データ生成処理および許容可能領域算出処理
ST03、ST04、およびST05の動作において制御部11がグラフデータ生成部113による制御の下で実行する回帰分析データ生成処理および許容可能領域算出処理を、より詳細に説明する。
【0099】
制御部11は、回帰分析データ生成部1131による制御の下、第1時間期間における被験者の拍動間隔に基づいて算出されたHFの対数とLF/HFとがそれぞれプロットされたグラフにおいて、当該複数のプロットから最小二乗法により回帰直線を算出する。制御部11は、許容可能領域算出部1132による制御の下、上記複数のプロットと回帰直線とのHFの対数の差異に係るばらつきを表す統計量を算出する。制御部11は、許容可能領域1132による制御の下、回帰直線とばらつきを表す統計量から許容可能領域を算出することが好ましい。これにより、母集団データに基づく許容可能領域を設定することができる。なお、第1の軸がHFを対数スケールで示すものとせずに、HFとLF/HFとをグラフにプロットし、当該グラフにおいて、母集団データに基づく許容可能領域を設定してもよい。
【0100】
ばらつきを表す統計量として、平均偏差、分散、標準偏差、変動係数、範囲(Xbar-R管理図における最大値と最小値の差)、四分位範囲、平均絶対偏差、および離散エントロピー等を例示することができる。ばらつきを表す統計量として、標準偏差σを用いることが好ましい。標準偏差σを用いることにより、許容可能領域の信頼度が向上する。
【0101】
上記許容可能領域は、上述したグラフにおける第1の直線と第2の直線の間の領域であり、第1の直線は、回帰直線を標準偏差σの3倍の値である3σだけ第1の軸の正の方向に平行移動させた直線であり、第2の直線は、回帰直線を3σだけ第1の軸の負の方向に平行移動させた直線であることが好ましい。このように99.7%許容可能領域とすることにより、母集団データに基づく許容可能領域の信頼度が向上する。なお、第1の軸がHFを対数スケールで示すものとはせずに、HFとLF/HFとをグラフにプロットして母集団データの99.7%許容可能領域を設定してもよい。また、同様に標準偏差σの2倍の値である2σ等を用いて、95.4%許容可能領域等を設定してもよい。
図9および
図11において、このような回帰直線および許容可能領域が表示されるグラフの例が示される。
【0102】
99.7%許容可能領域は、(LF/HF)、log(HF)座標系において、下記式(1)、式(2)の直線の間の領域を求めることにより設定してもよい。
log(HF)=A×(LF/HF)+B+3×S ・・・(1)
log(HF)=A×(LF/HF)+B-3×S ・・・(2)
[式(1)、(2)中、Aは母集団データに基づくプロットの(LF/HF),log(HF)座標系における回帰直線の比例係数であり、Bは当該回帰直線の切片であり、Sは、母集団データに基づく各プロットと当該回帰直線とのlog(HF)軸上の距離の標準偏差である。]
【0103】
(4)標本集団データに基づくグラフ関連処理
ST06の動作で取得される第2時間期間における第1ユーザの拍動を示す生体データ(第4データ)に基づいて、ST07の動作で生成されるHFとLF/HFとの複数の組み合わせを含むデータを、以下では標本集団データとも称する。説明の便宜上、通知データ生成処理を説明した後に時系列データ生成処理を説明するが、後述するように、時系列データに基づいて通知データが生成されることがより好ましい。
【0104】
第2時間期間は、第1時間期間より例えば後の測定期間である。当該第4データは、例えば、被験者が自律神経失調状態に至り易い作業や訓練等を行っている時の心電情報が生体データ取得部材2を介して取得されるようにしたものである。
【0105】
(4-1)通知データ生成処理
母集団データの後に新たに取得する標本集団データに係るLFとHFとの各組み合わせを(hf1,lf1),(hf2,lf2)・・・・,(hfm,lfm)とすると、下記式(3)を満足する領域を自律神経活動が正常に活動しているとみなすことができる。
A×(lft/hft)+B-3×S≦log(hft)≦A×(lft/hft)+B+3×S ・・・(3)
【0106】
一方、被験者のlog(hf)と(lf/hf)が、下記式(4)または式(5)を満たした時点、あるいは、下記式(4)または式(5)を満たす状態に連続して所定時間以上留まった場合に自律神経活動が正常ではないと判断することができる。
A×(lft/hft)+B-3×S>log(hft) ・・・(4)
log(hft)>A×(lft/hft)+B+3×S ・・・(5)
【0107】
情報処理装置1は、第2時間期間中に測定した被験者の拍動間隔に基づいてLFおよびHF算出部112が算出したHFの対数とLF/HFのプロットが、許容可能領域の範囲外となったことを検知し、それを記録しおよび/または外部に通知するための通知データを生成する通知データ生成部116を有することが好ましい。例えば、通知データ生成部116により生成された通知データに基づいて出力装置4が自律神経失調に至ったことを表示することにより、被験者が自律神経失調状態に至ったことを被験者、指導者、医師等が知ることができる。これにより、被験者が極度の自律神経失調状態に至ったことに気付かずに作業や訓練等を継続して悪化する危険を回避することができる。また、上記プロットが許容可能領域の範囲外となったことを検知した際に、外部に通知することなく記録しておくだけでも構わない。すなわち、一旦通知データ記憶部136に記録しておき、後からその記録を確認することもできる。なおHFの対数の代わりにHFを用いてもよい。
【0108】
更に、第2時間期間に取得した被験者の心電情報に基づいてLFおよびHF算出部112およびグラフデータ生成部113によりHFの対数とLF/HFとを算出して、HFの対数が当該許容可能領域の範囲外であるか否かを通知データ生成部116で判別して、範囲外であると判断した後に、通知データ生成部116は通知データを生成することが好ましい。通知データは、例えば、データ出力部115により出力装置4に送信される。さらに、当該通知データに基づいて、出力装置4が被験者等が知覚可能な表示を表示させることが好ましい。なお、In Situで心電測定を行う場合にはノイズが混入し易いため、ある一定時間の間連続して当該許容可能領域から逸脱したときに通知データ生成部116が通知データを生成するように構成されていることがより好ましい。具体的には、好ましくは1以上のプロット、より好ましくは2以上のプロット、更に好ましくは3以上のプロット、更により好ましくは4以上のプロットが許容可能領域の範囲外であるときに通知データ生成部116が通知データを生成するように構成されていてもよい。
【0109】
なお、HFまたはHFの対数を縦軸にとり、LF/HFを横軸にとって、且つ回帰直線からの差異を縦軸方向で計算した場合の許容可能領域は、縦軸と横軸を入れ替えて算出した許容可能領域と同様の範囲となる。
【0110】
このような通知データを、次のようなシステムで利用してもよい。被験者が乗り物の運転者であり、当該乗り物は、情報処理装置1から、当該被験者の自律神経活動が正常な状態から逸脱したことの検知に係る通知データを受信し、当該通知データに応じて当該乗り物を通常運転モードから、自動運転モード、運転アシストモード、または、遠隔から操縦されるモードに切り替える機能を有する。ここで、通常運転モードとは、例えば、運転者が自ら運転操作を行うモードであり、運転アシストモードのようなアシスト等がないモードである。上記では、通常運転モードから、自動運転モード、運転アシストモード、または、遠隔から操作されるモードへの切り替わりを例に挙げて説明したが、上記通知データに応じて、運転者の負担が軽くなるようにモードが切り替わるものであればよい。例えば、運転アシストモードから、自動運転モードまたは遠隔から操縦されるモードへの切り替わりが行われてもよい。
【0111】
(4-2)時系列データ生成処理
ST08の動作において制御部11が時系列データ生成部114による制御の下で実行する時系列データ生成処理を、より詳細に説明する。
【0112】
本発明では、さらにプロットされた各点の、回帰直線からの距離を求め、それを時系列に並べて表示することで、自律神経活動の経時的な動きを表示する。ここで、各プロットの回帰直線からの距離は、縦軸、すなわちHF軸ないしHFの対数軸で求めても良く、横軸すなわちLF/HF軸での距離でも良く、回帰直線との最短距離でも良い。いずれも結果的には等価である。さらに、各プロットの回帰直線からの距離としては、ばらつきを表す統計量、好ましくは標準偏差で除すことによって規格化されたものを用いることもできる。仮に標準偏差で除した値を用いた場合には、この値が3を超えた場合に許容可能領域から逸脱したと理解することができる。
図10および
図12において、このような時系列表示の例が示される。
【0113】
出力装置4は、視覚化してグラフを表示することが好ましい。また出力装置4は、視覚化して自律神経失調状態である旨の警告に係る表示を行うことが好ましい。当該警告に係る表示は、例えば、上述した通知データに基づいて行われる。なお、情報処理装置1において、グラフはコンピュータ等の機械装置内で数式的な仮想平面、仮想空間上で作成してもよく、必ずしも視覚化して表示する必要は無い。情報処理装置1では、グラフは人工知能(AI)等により作成されてもよい。また出力装置4は、グラフを表示せずに上記警告に係る表示のみ行ってもよい。また警告に係る表示の代わりに、視覚に限らず音声、振動、発熱等の人が知覚可能な態様で警告が行われてもよい。さらに、上述したような、通知データを用いて運転モードの切り替えを行うシステムの場合にも、出力装置4におけるグラフの表示は必須ではない。
【0114】
上述した通知データ生成に当該時系列データが用いられることも好ましい。これは、当該時系列データにおいて、標本集団データのプロットの各々について、当該プロットの回帰直線からの距離がタイミング情報に対応付けられているため、時系列的に連続する複数のプロットが許容可能領域を外れているかが容易に判断可能なためである。すなわち、上述したように、被験者のlog(hf)と(lf/hf)が、上記式(4)または式(5)を満たした時点、あるいは、上記式(4)または式(5)を満たす状態に連続して所定時間以上留まったか否かの判断が容易になる。例えば、HFとLF/HFとの複数の組み合わせのうち時系列的に連続する3つの組み合わせが許容可能な領域を外れる場合に通知データが生成されるようにする。これにより、ノイズあるいは突発的な自律神経の動きを除外して、明らかに、何らかの異常な状態に被験者が入っているということが読み取れる場合に通知データが生成されるようにすることが可能である。
【0115】
(効果)
例えば、情報処理装置1により生成されるグラフデータに基づく表示により、上述の通り、自律神経失調状態を把握し易くすることができる。当該グラフデータに基づく表示、および/または、グラフデータに基づく通知データを用いて、被験者の自律神経活動状態を監視すること、さらには、自律神経失調状態がある一定時間以上継続する場合に警告を出すこと等も可能となる。
【0116】
自律神経は文字通り、本人の意思とは無関係に生命活動を維持するために働いている神経活動であり、自律神経が正常に働いているか否か本人が直接的に感じることはできない。多くの場合、自律神経が異常な状態すなわち自律神経失調状態に陥ると、呼吸や心拍が乱れ、そのため当人が動悸息切れ等の形で間接的に自律神経の異常を感じる場合が多い。そのため本人が気付いたときには、すでに自律神経失調状態が長引いていて、身体に深刻なダメージを受けてしまっていることもある。例えば酷暑環境での作業を行っている場合、極度の緊張状態、何らかのショックによる脱力状態に陥った場合、高齢者である場合等は、特に本人が自分の状態を冷静に把握し難い。上記グラフデータに基づく表示等を危険予防のために用いることにより、このような場合の自律神経失調状態の悪化を回避することができる。更に、予期しない失策、事故、怪我等を防止することができる。
【0117】
上記グラフデータに基づく表示、および/または、グラフデータに基づく通知データを用いて、例えば球技、体操、水泳、射撃、弓道、アーチェリー、投擲競技、格闘技等の各種スポーツ訓練において、無理なトレーニング状態に陥っていないかどうかの確認を男性、女性を問わず行ってもよい。また、上記グラフデータに基づく表示、および/または、グラフデータに基づく通知データを用いて、自動車、船舶、飛行機、土木用重機等の運転時の運転者の自律神経活動状態の監視や、木工作業、鉄工作業、彫金、縫製作業、歯科技工、医療手術、料理等の技能訓練や、管楽器、弦楽器、打楽器、声楽等の演奏訓練、書道、カリグラフ、彫刻、刺繍、絵画等の芸術訓練等を行ってもよい。
【0118】
グラフデータおよび/または通知データを受信する出力装置4は、上記のいずれかのグラフを表示する。このような表示としては、例えばシート状物、または表示器により視覚的に表示される画像等が挙げられる。シート状物として、紙類、フィルム類等の単層シート、またはこれらの積層体が挙げられる。画像は静止画であってもよく、動画であってもよい。表示されるグラフは、上述の通り、XY二次元座標系において、X軸にLF/HFを取り、Y軸にHFを取ったグラフであることが好ましい。また、X軸にHFを取り、Y軸にLF/HFを取ったグラフであってもよい。また、当該グラフにおいて、第1の軸と第2の軸は必ずしも直交している必要は無い。また、当該グラフは、HF、LF/HFの他に加速度、RRI等の第3成分の値をZ軸にとったXYZ三次元座標系であってもよい。また、これらHFの代わりにHFの対数を軸に取ることが好ましい。また当該グラフには、母集団データの情報についてはプロットが表示されずに第1の直線と第2の直線の間の許容可能領域のみが表示されていることが好ましい。また、出力装置4による表示では、プロットが許容可能領域の範囲外となったことを知らせる警告表示が表示されてもよい。
【0119】
第1実施形態に係る情報処理装置1によると、生体データに基づくHFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが許容可能な領域を外れているか否かを時系列に沿って示す時系列データが生成される。出力装置4による当該時系列データに基づく表示では、生体データに基づくHFおよびLF/HFの組み合わせのプロットが許容可能な領域を外れているか否かが時系列に沿って表示される。これにより、被験者等が自律神経の失調状態を時間軸に沿って把握することが容易となる。さらには、このような目的のためには、時系列データに加えて、または、時系列データの代わりに、時系列データに基づく通知データを用いることも有益である。
【実施例0120】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0121】
以下の通り、生体データ取得部材としての皮膚接触型電極を備える衣服型の生体情報測定装置と、情報処理装置と、出力装置とを含むシステムを準備し、各グラフの作成を行った。
【0122】
[伸縮性導体ペースト]
バインダとして、三洋化成工業株式会社製コートロンKYU-1(ガラス転移温度-35℃)、銀粒子として三井金属鉱業株式会社製微小径銀粉SPH02J(平均粒子径1.2μm)、カーボン粒子としてライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用い、バインダ10質量部、銀粒子70質量部、カーボン粒子1質量部、溶剤19質量部の配合において伸縮性導体ペーストを調整した。詳細には、所定の溶剤量の半分量の溶剤にバインダ樹脂を溶解し、得られた溶液に金属系粒子、炭素系粒子を添加して予備混合の後、三本ロールミルにて分散することによりペースト化した。次いで、得られたペーストを厚さが25μmとなるようにスクリーン印刷し、100℃にて20分間乾燥し、伸縮性導体層を得た。得られた伸縮性導体層は、初期の比抵抗が250μΩ・cmであり、20%伸張を100回繰り返した後も導電性を維持するストレッチャビリティを有していた。
【0123】
[伸縮性カーボンペースト]
電極保護層用のカーボンペーストを調整した。詳細には、ガラス転移温度が-19℃のニトリルブタジエンゴム樹脂を40質量部、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC300Jを20質量部、溶剤としてエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50質量部を予備攪拌の後三本ロールミルにて分散化し、伸縮性カーボンペーストを得た。
【0124】
[電極、配線]
表面をシリコーン系離型剤により処理されたPET製離型シートに、電極部分とコネクタ部が切り抜かれた所定形状のウレタンシート(絶縁カバー層)を仮接着し、電極部分に伸縮性カーボンペーストをスクリーン印刷し、さらに伸縮性導体ペーストを電極部分からコネクタ位置まで所定パターンで印刷し、更にウレタンシートを覆うように両面ホットメルトシート(絶縁下地層)をラミネートして離型シート上に電極と配線を形成した。
【0125】
[第1の衣服型の生体情報測定装置]
20%伸張応力が5Nの生地を用いて形成されたスポーツブラジャーのアンダーバスト部分の生地に対して、上記離型シート上に形成された電極と配線を、両面ホットメルトシート側が触れるように重ね、ホットプレスにより加熱、加圧することによって、電極と配線を絶縁下地層、絶縁カバー層とともに転写した。次いで、コネクタを取り付け、生体データ取得装置を取り付けて、心電情報を測定することができる第1の衣服型の生体情報測定装置を作製した。なお、上記生体データ取得装置として、情報処理装置に得られた心電情報を送信することが可能なものであり、温度計、GPSによる位置情報、XYZ各軸への加速度センサも搭載されているものを用いた。また、上記離型シート上に形成された電極と配線の20%伸張応力は0.5Nであった。得られた第1の衣服型の生体情報測定装置を被験者に着用させ、軽い運動を行って衣服圧を測定したところ、アンダーバスト部の最大衣服圧は0.8kPa、最小衣服圧は0.25kPaであった。被験者から第1の衣服型の生体情報測定装置の着用時の違和感等は報告されなかった。
【0126】
[第2の衣服型の生体情報測定装置]
綿/ポリエステル=50%/50%の混紡糸からなるニット生地を用いて、前身頃から後身頃にかけて面ファスナーを用いて胴囲を調整できる男性用Tシャツを作製した。男性用Tシャツの胸部の肌側面に、第1の衣服型の生体情報測定装置と同様の方法で電極と配線を転写し、コネクタとしてのスナップファスナーを取り付け、更に第1の衣服型の生体情報測定装置と同じ生体データ取得装置を取り付けて、心電情報を測定することができる第2の衣服型の生体情報測定装置を作製した。
【0127】
<実施例1(発表会でプレゼンを行った女性)>
まず健康な一般女性を被験者Aとして、被験者Aに上記第1の衣服型の生体情報測定装置を着用させて、社内発表会で午後にプレゼンテーションが行われた日の、発表会を挟んで、約半日分のRRIデータを取得した。なおサンプリングレートは1kHzとした。取り扱った信号の周波数スペクトルは、ほぼ1Hz程度以下の領域であるためこの程度のサンプリングレートでも問題は無かった。
【0128】
得られた心電情報は、第1の衣服型の生体情報測定装置に取り付けられた生体データ取得装置から、情報処理装置としてのコンピュータ(解析機)に送信され、解析機のLFおよびHF算出部において、得られた拍動間隔データを周波数スペクトル変換し、得られたパワースペクトルを定積分してLFおよびHFを算出した。詳細には、この例では、0.01Hzから0.15Hzまでの積分値をLF、0.15Hzから0.40Hzまでの積分値をHFとして扱った。また周波数スペクトル変換は、過去3分間に得られた拍動間隔を用いて1分毎に行った。
【0129】
ここから、被験者が発表会会場に入った時点から、発表会会場から出た時間帯までを除いた領域について、母集団データとして、解析機のLFおよびHF算出部112ならびにグラフデータ生成部113において、HFの対数とLF/HFとを算出し、さらに、縦軸にHFの対数を取り、横軸にLF/HFを取り、最小二乗法により回帰直線を求めた。回帰直線は下記式の通りであった。なおlogは10を底とする対数である。
log(HF)=-0.07288×(LF/HF)+2.278
なお、ここでLF/HFが20を超えるLFとHFとの組み合わせデータについては、エラーと見なして計算には用いていない。
【0130】
次に、母集団データの各プロットの回帰直線との縦軸方向の差を計算し、その差の標準偏差σを求め、回帰直線を標準偏差σの3倍の値である3σだけ第1の軸の正の方向に平行移動させた第1の直線を求め、更に、回帰直線を3σだけ第1の軸の負の方向に平行移動させた第2の直線を求めた。更に、これらの情報を解析機のデータ記憶部に記憶させた。
図9にこれらの直線を表示したグラフを示す。
図9中、回帰直線は符号RL、第1の直線は符号L1、第2の直線は符号L2で示す。
図9に示す第1の直線L1と第2の直線L2の間の領域は99.7%許容可能領域である。
【0131】
次いで、被験者Aが、社内の発表会においてプレゼンテーションを行った日の、発表会会場に入った時点から、発表会会場を出る時点までについて、同様に計算し、LF/HFとlog(HF)を求め、同じグラフ上にプロットした。その結果が
図9のグラフに示される。プロットを結ぶ各種線について、細い破線が会場内で自分の出番を待って待機している期間、太実線がプレゼンテーション中、太い破線がプレゼンテーション後に自席に戻って着座している期間である。この図から、プレゼンテーション中の自律神経活動が、明らかに許容可能領域から逸脱していることを読み取ることができる。
【0132】
さて、この様にすれば、自律神経活動指標の動きを二次元平面上の動きとして把握することができるのであるが、この図では時間経過が示されないため、この例のように、プロットないしプロット間の軌跡を色分けする等して表現しなければならず、過去データを見直した際に、どの時点が許容可能領域から逸脱しているかを確かめるためには一度元データに戻って見直す必要があった。
【0133】
本発明が提案するところの、各プロットの回帰直線からの距離を時系列にプロットした結果について
図10に示す。
図10の上段のグラフはLF/HF(:交感神経活動指標)を時系列に沿って表示したグラフである。中段のグラフはlog(HF)(:副交感神経活動指標)を時系列に沿って表示したグラフである。一般に心拍変動について論じる際にはこの二種のグラフが用いられる。この二種のグラフから、交感神経、副交感神経の各々の動きを読み取ることはできるが、許容可能領域、すなわち通常の活動領域内であるのか、あるいは逸脱した状態であるのかを読み取ることはできない。
【0134】
図10の下段が、本願発明の提案であるところの、各プロットの回帰直線からの距離を時系列に沿って並べたグラフである。縦軸は標準偏差で除して規格化されている。図中、破線の長方形で区切った範囲が、発表会会場に入った時点から、発表会会場を出る時点までの範囲である。図中破線の楕円で囲った部分がプレゼンテーション中であり、この時に自律神経活動指標が3σを超えて、非定常状態に入っていることを明確に読み取ることができる。
【0135】
<実施例2(ソーラーカーレースに参加した男性)>
図11、
図12は、ソーラーカーレースに参加した男性ドライバーの、レース前日の練習走行、就寝、レース当日に渡る、約28時間のRRIデータから求めた結果のプロットである。
【0136】
図11は、実施例1の
図9と同様のプロットである。この例では練習走行、およびレース本番のレース車両に乗り込んでいた期間を除いた部分から母集団データを算出している。回帰式は
log(HF)=-0.05325×(LF/HF)+1.4053
であった。
図11の左上の破線楕円で囲った、吹き出しにて「sleep」と表示したところが、就寝中のデータである。また左下の、許容可能領域から逸脱しているのが明らかな破線楕円で囲われた部分は(吹き出しにて「R2」と表示)は、速度域の速いレース参加中の領域である。
【0137】
図12は
図10と同様に、上段がLF/HF(:交感神経活動指標)を時系列に沿って表示したグラフであり、中段がlog(HF)(:副交感神経活動指標)を時系列に沿って表示したグラフであり、下段が本願発明の提案であるところの、各プロットの回帰直線からの距離を時系列に沿って並べたグラフである。
図10と同様に縦軸は標準偏差で除して規格化されている。
「R0」が練習走行、「sleep」が就寝中、「R1」が速度の比較的遅いレース競技に参加中、「R2」は速度が比較的速いレース競技に参加中のプロットである。
全体的に時折3σを超えてはいるが、単発的である。一方「R2」の区間においては、明らかに連続して3σを超えていることが解る。
【0138】
以上より、本発明のプロットを用いれば、好ましくは衣服型の生体情報測定装置を用いて得られるRRIから自律神経活動指標を求め、単に活動指標を時系列的に並べるのではなく、被験者の自律神経活動が、通常の活動領域にあるのか、あるいは異常な領域にあるのかの推移を時系列的に簡単に求めることが可能であり、他のバイタル指標と組み合わせて、熱中症や、疲労蓄積、等の状態を的確に把握することが可能である。
【0139】
[他の実施形態]
第1実施形態では、主に情報処理装置1の構成および動作について説明した。情報処理装置1とともに用いられる出力装置4についても説明する。
【0140】
図13は、出力装置4の概略構成を示す。出力装置4は、ハードウェア構成として、制御部41、プログラム記憶部42、データ記憶部43、入出力インタフェース(入出力I/F)44、および出力器45を含む。制御部41、プログラム記憶部42、データ記憶部43、入出力インタフェース44はそれぞれ、ハードウェア構成としては、第1実施形態で情報処理装置1の制御部11、プログラム記憶部12、データ記憶部13、入出力インタフェース14について説明したのと同様なため、ここでは省略する。出力器45は、例えば表示画面であるが、必ずしも限定されない。
【0141】
制御部41は、ソフトウェア構成として、受信部411および出力部415を含む。制御部41は、ソフトウェア構成として、通知データ生成部416を含んでもよい。データ記憶部43は、時系列データ記憶部435を含む。データ記憶部43は、通知データ記憶部436を含んでもよい。
【0142】
受信部411は、入出力インタフェース44を介して、情報処理装置1から時系列データ(第6データ)を受信し、当該第6データを時系列データ記憶部435に記憶させる処理を実行する。出力部415は、時系列データ記憶部435から第6データを読み出し、第6データに基づき、出力器45において、上述したような表示を行う処理を実行する。
【0143】
通知データ生成部416は、第1実施形態において通知データ生成部116が実行するとして説明したのと同様に、時系列データ記憶部435から第6データを読み出して通知データを生成し、当該通知データを通知データ記憶部436に記憶させる処理を実行する。出力部415は、通知データ記憶部436から通知データを読み出し、当該通知データに基づいて、出力器45において、上述したような警告を行う処理を実行する。
【0144】
出力装置4が通知データ生成部416を含まない場合、受信部411が、入出力インタフェースを介して、情報処理装置1から通知データを受信し、出力部415が当該通知データに基づいて、出力器45において、上述したような警告を行う処理を実行する。
【0145】
第1実施形態では、情報処理装置が通信ネットワークを介して出力装置に各種データを送信するものとして説明した。情報処理装置が例えば被験者への出力が可能な出力器を含む場合、当該情報処理装置が、当該出力器を用いて、このような各種データに基づいて、上記では出力装置により行われると説明した時系列に沿った出力を行ってもよい。このような場合の情報処理装置の構成例を、当該情報処理装置および当該出力器をそれぞれ情報処理装置1aおよび出力器15aとして
図14に示した。出力器15aは、例えば表示画面であるが、必ずしもこれに限定されない。出力器15aは、時系列データ(第6データ)に基づいて視覚的な表示を行ってもよい。出力器15aは、通知データに基づいて、視覚的な表示を行ってもよいが、視覚的な表示に加えて又は視覚的な表示の代わりに、音声、振動、発熱等の、被験者が知覚可能な態様で警告を行うものであってもよい。このように、出力器15aを用いれば、情報処理装置1aは、時系列データおよび/または通知データに基づいて、第5データのHFとLF/HFとの複数の組み合わせがそれぞれ許容可能な領域を外れているか否かについての時系列に沿った出力を行うことが可能である。
【0146】
以上、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる
実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
1,1a…情報処理装置、11…制御部、111…生体データ取得部、112…LFおよびHF算出部、113…グラフデータ生成部、1131…回帰分析データ生成部、1132…許容可能領域算出部、114…時系列データ生成部、115…データ出力部、116…通知データ生成部、12…プログラム記憶部、13…データ記憶部、131…生体データ記憶部、132…LFおよびHF記憶部、133…回帰分析データ記憶部、134…許容可能領域記憶部、135…時系列データ記憶部、136…通知データ記憶部、14…入出力インタフェース、15a…出力器、2…生体データ取得部材、3…生体データ取得装置、4…出力装置、41…制御部、411…受信部、415…出力部、416…通知データ生成部、42…プログラム記憶部、43…データ記憶部、435…時系列データ記憶部、436…通知データ記憶部、44…入出力インタフェース、45…出力器、SYS…システム、NW…通信ネットワーク、BUS…バス。