(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062733
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240501BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240501BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240501BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240501BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240501BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20240501BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20240501BHJP
B60T 8/172 20060101ALI20240501BHJP
B60T 8/175 20060101ALI20240501BHJP
B60W 10/12 20120101ALI20240501BHJP
【FI】
B60W30/02 310
G08G1/00 J
G08G1/16 D
F02D29/02 311A
B60W10/06
B60W10/184
B60W40/068
B60T8/172 A
B60T8/175
B60W10/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170779
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松元 洸樹
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3G093
5H181
【Fターム(参考)】
3D241AA48
3D241AC01
3D241AC26
3D241AD04
3D241AD10
3D241AD31
3D241AD41
3D241AE04
3D241AE41
3D241BA18
3D241BB08
3D241BB52
3D241BC01
3D241BC04
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE02
3D241CE04
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3D241DA05Z
3D241DA13Z
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3D241DA58Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC46Z
3D246GB02
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3D246HA01A
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3D246HA15A
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3D246HA64A
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3D246HB01A
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3D246JB11
3D246JB27
3D246JB35
3G093BA04
3G093DA06
3G093DB05
3G093DB11
3G093DB15
3G093DB18
3G093EA02
3G093EA09
3G093EB04
5H181AA01
5H181CC02
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF04
5H181LL09
5H181LL16
(57)【要約】
【課題】雪上走行中の車両の周囲環境に応じた適切な制御を行って車輪に生じる空転を抑止し常に安定的な走行制御を行うことができる車両の走行制御装置を提供する。
【解決手段】車両の周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置(10,36~41))と、車両の状態情報を取得する車両状態認識装置42と、周囲環境情報と車両状態情報との少なくとも一方に基づいて車両の走行制御を行う走行制御ユニット14とを具備し、駆動輪の空転が検出されたときには、空転している駆動輪の制動制御を行うブレーキLSD制御を実行する車両の走行制御装置1において、走行制御ユニットは、車両が雪上走行中の状況にありかつ車両の進行方向の走行路上に融雪領域と非融雪領域が混在する地域が存在することが認識された場合にブレーキLSD制御の動作モード設定を第1モードから第2モードに切り換える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置と、
前記車両の状態情報を取得する車両状態認識装置と、
前記周囲環境認識装置によって取得された周囲環境情報と、前記車両状体認識装置によって取得された車両状態情報との少なくとも一方に基づいて前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットとを具備し、
前記車両状態認識装置により前記車両の複数の駆動輪のうちの少なくとも一つの駆動輪の空転が検出されたときには、前記空転している駆動輪の制動制御を行うブレーキLSD制御を実行する車両の走行制御装置において、
前記走行制御ユニットは、
前記周囲環境認識装置によって、前記車両が雪上走行中の状況にあり、かつ前記車両の進行方向の走行路上に融雪領域と非融雪領域が混在する地域が存在することが認識された場合には、
前記ブレーキLSD制御の動作モード設定を、通常の第1モードから第2モードに切り換えることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキLSD制御の前記第2モードは、
制動制御介入時のブレーキ昇圧速度を、前記第1モードにおけるブレーキ昇圧速度よりも高める制御を行うか、若しくは
制動制御介入時のブレーキ減圧タイミングを、前記第1モードにおけるブレーキ減圧タイミングよりも遅らせる制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記融雪領域は、融雪設備であるロードヒーティングシステム或いは消雪パイプ装置の設置されている領域、又は除雪された領域であることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記車両の周囲環境が雪上走行の状況から離脱したことが認識された場合には、前記ブレーキLSD制御の設定を前記第2モードから前記第1モードに切り換えることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、融雪又は除雪されている領域と融雪又は除雪されていない領域との間で車両を走行させる際に、車輪に生じる空転を抑止して常に安定した走行制御を行う車両の走行制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等が道路等を走行中に、例えば車輪が空転(スリップ)した場合に、車両の駆動トルクを低下させる駆動制御を行い、或いは複数の駆動輪のうち空転した駆動輪に制動をかける制動制御を行う等によって、車輪の空転を抑止するための技術が、例えば特開2021-130361号公報等によって、種々提案されている。
【0003】
上記特開2021-130361号公報等によって開示されている走行制御装置は、複数の駆動輪のうちの一部の駆動輪が空転した場合に、当該空転した駆動輪を制動する制動制御を行うことによって、車輪の空転を抑制するというものである。
【0004】
ところで、従来、例えば寒冷地域等においては、車道や歩道,駐車場等の舗装された路面上の積雪を融雪するための設備、または路面凍結を抑止するための設備等、各種の設備実用化されている。
【0005】
例えば融雪するための設備や路面凍結を抑止するための設備としては、例えば舗装路面内に電熱線類又は温水等を循環させるパイプ類等を埋設して路面を加熱して融雪を行うロードヒーティングシステムや、路面内に埋設したパイプ類等を循環する地下水等の温水を路上に設置したノズルから路面上に散布して積雪を除去する消雪パイプ装置等の設備が周知である。
【0006】
また、例えば融雪剤を路面上に撒布したり、定期的に除雪車を走行させることにより路面上の積雪を融雪し又は除雪する等の工夫が、従来一般に実行されている。
【0007】
しかしながら、例えばロードヒーティングシステムや消雪パイプ装置等の設備は、設置や維持にコストがかかることから、全ての道路に設置することはできないのが通常である。また、例えばロードヒーティングシステムや消雪パイプ装置等の設備が設置されている領域であっても、例えばシステムや装置等が故障している場合、或いは節電対策等の各種の理由によって部分的に非稼働状態とされている場合がある。
【0008】
さらに、融雪剤を撒布したとしても、極端な低温環境下等においては充分な融雪効果を得ることができない場合がある。さらにまた、除雪車を走行させることができる道路は限定されてしまうことから、例えば狭い路地等や歩道等までは充分に除雪できない場合がある。そして、商業施設等や集合住宅等の専用駐車場、或いは個人住宅等の駐車スペース等では、充分な除雪が行われていない場合も多く見られる。
【0009】
このような各種の要因によって、寒冷地域等における冬期の道路事情としては、融雪又は除雪されている領域(以下、融雪領域という)と、融雪又は除雪されていない領域(以下、非融雪領域という)とが混在しているのが通常である。
【0010】
このような状況下において、例えば融雪領域で融雪された水分が、融雪領域と非融雪領域との境界部分に貯留することによって再凍結する可能性がある。また、融雪領域と非融雪領域との境界部分では、融雪領域の路面と、非融雪領域の圧雪路面との間には、圧雪等よる段差が生じている場合がある。
【0011】
具体的には、例えば融雪領域の車道から駐車場等へ進入する際に、非融雪領域の歩道を横切る場合、或いは融雪領域の幹線道路から非融雪領域の路地等へ進入する場合等には、路面状況が急激に変化している。そのため、例えば融雪領域から非融雪領域へと走行するとき、融雪領域と非融雪領域との境界部分の凍結部分を走行し、或いは圧雪による段差を乗り越えて走行する必要が生じる。このような場合、凍結部分或いは段差部分において車輪が空転する可能性が高くなる。すると、駆動源(エンジン又は駆動モータ等)からの駆動力が全ての駆動輪に伝達されない状況になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記特開2021-130361号公報等によって開示されている従来の走行制御装置による駆動制御或いは制動制御は、運転者が路面状況に応じて手動切り換え操作を行うことによって制御のオンオフが設定されていた。したがって、運転者は、周囲状況を判断して、適宜、走行制御装置の切り換え操作を行う必要があるという問題点があった。
【0014】
本発明は、融雪領域と非融雪領域とが混在している地域において車両を走行させる際に、車両の走行している周囲環境に応じた適切な制御を行って、車輪に生じる空転を抑止し常に安定的な走行制御を行うことができる車両の走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の車両の走行制御装置は、車両の周囲環境情報を取得する周囲環境認識装置と、前記車両の状態情報を取得する車両状態認識装置と、前記周囲環境認識装置によって取得された周囲環境情報と、前記車両状体認識装置によって取得された車両状態情報との少なくとも一方に基づいて前記車両の走行制御を行う走行制御ユニットとを具備し、前記車両状態認識装置により前記車両の複数の駆動輪のうちの少なくとも一つの駆動輪の空転が検出されたときには、前記空転している駆動輪の制動制御を行うブレーキLSD制御を実行する車両の走行制御装置において、前記走行制御ユニットは、前記周囲環境認識装置によって、前記車両が雪上走行中の状況にあり、かつ前記車両の進行方向の走行路上に融雪領域と非融雪領域が混在する地域が存在することが認識された場合には、前記ブレーキLSD制御の動作モード設定を、通常の第1モードから第2モードに切り換える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、融雪領域と非融雪領域とが混在している地域において車両を走行させる際に、車両の走行している周囲環境に応じた適切な制御を行って、車輪に生じる空転を抑止し常に安定的な走行制御を行うことができる車両の走行制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の車両の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図
【
図2】本発明の一実施形態の車両の走行制御装置を搭載した車両を運用する場合の各種の状況を例示する概念図
【
図3】
図2に示す第3状況について別の方向から見た様子を示す概念図
【
図4】本発明の一実施形態の車両の走行制御装置の作用を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。以下の説明に用いる各図面は模式的に示すものであり、各構成要素を図面上で認識できる程度の大きさで示すために、各部材の寸法関係や縮尺等を構成要素毎に異ならせて示している場合がある。したがって、本発明は、各図面に記載された各構成要素の数量や各構成要素の形状や各構成要素の大きさの比率や各構成要素の相対的な位置関係等に関して、図示の形態のみに限定されるものではない。
【0019】
なお、本実施形態の構成及び作用を説明するのに際しては、車両の通行区分を進行方向に向かって左側とする左側通行を基本とした道路システムであるものとして例示している。しかし、本実施形態の構成及び作用は、左右を入れ替えて考慮すれば、右側通行を基本とする道路システムに対しても全く同様に応用することができる。
【0020】
まず、本発明の一実施形態の車両の走行制御装置の概略的な構成を、
図1を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の車両の走行制御装置の概略構成を示すブロック構成図である。本実施形態の走行制御装置の基本的な構成は、従来の同種の走行制御装置と略同様の構成を有する。したがって、以下に示す説明は、本実施形態の車両の走行制御装置の概略的な説明に留めている。
【0021】
本実施形態の車両の走行制御装置1は、当該走行制御装置1を搭載している車両(以下、自車両という)の車室内の前寄り上部中央部分に固定された車載カメラ装置であるカメラユニット10を有する。
【0022】
カメラユニット10は、ステレオカメラ11と、画像処理ユニット(IPU)12と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)13と、走行制御ユニット(走行_ECU)14とを有して構成されている。
【0023】
ステレオカメラ11は、メインカメラ11aと、サブカメラ11bとを有する。メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、自車両の車室内において車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に、前方(進行方向)に向けて配置されている。また、メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、CMOSイメージセンサ等によって構成され、互いに同期された所定の撮像周期にて、車外前方の所定の範囲の周囲環境を異なる視点からの二つの画像を取得してステレオ画像を生成する。
【0024】
IPU12は、ステレオカメラ11によって撮像した周囲環境画像データ(自車両の走行中の周囲環境を表す画像データ)に対し所定の画像処理を施し、画像上に表される物体や道路面上に標示される区画線等(以下、単に区画線等という)などの各種対象物のエッジを検出する。これにより、IPU12は、車両周囲の立体物や区画線等を認識する。そして、IPU12は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を取得し、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0025】
画像認識_ECU13は、IPU12から受信した距離画像情報などに基づき、自車両が走行する走行路(自車走行路)の左右を区画する区画線の道路曲率〔1/m〕及び左右区画線間の幅(車線幅)を求める。この道路曲率及び車線幅の求め方は種々知られている。例えば、画像認識_ECU13は、道路曲率を周囲環境情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小自乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。さらに、画像認識_ECU13は、左右両区画線の曲率の差分から車線幅を算出する。
【0026】
そして、画像認識_ECU13は、左右区画線の曲率と車線幅とに基づき、車線中央、車線中央から自車両の車幅方向中央までの距離である自車横位置偏差等を算出する。
【0027】
また、画像認識_ECU13は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って延在するガードレール、縁石及び周辺車両等の立体物の認識などのほか、道路面の状況等(以下、路面状況等という)の認識を行う。ここで、画像認識_ECU13における立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物の高さ、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両との相対速度、立体物同士の相対的な距離(例えば、道路端の縁石等と、その近傍にある区画線等との間の横方向距離など)などの認識が行われる。また、路面状況等は、例えば路面が雨や融雪水等によって濡れている状況や、降雨状況或いは積雪状況又は圧雪状況若しくは路面凍結状況等を認識する。
【0028】
これら画像認識_ECU13において認識された各種情報は、第1の周囲環境情報として走行_ECU14に出力される。
【0029】
このように、本実施形態において、画像認識_ECU13は、ステレオカメラ11及びIPU12と共に、車両周囲の第1の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を有する。
【0030】
走行_ECU14は、走行制御装置1を統括制御するための制御ユニットである。この走行_ECU14には、各種の制御ユニットとして、コックピット制御ユニット(CP_ECU)21、と、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)22と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)23と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)25とがCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を通して接続されている。
【0031】
CP_ECU21には、運転席の周辺に配設されたヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)31が接続されている。HMI31は、例えば、各種の運転支援制御の実行を指示するためのスイッチ、運転モードの切り換えを行うためのモード切換スイッチ,運転者の保舵状態を検出するステアリングタッチセンサ,運転者の顔認証や視線等を検出するドライバモニタリングシステム(DMS),タッチパネル式のディスプレイ,コンビネーションメータ,スピーカ等を有して構成されている。
【0032】
CP_ECU21は、走行_ECU14からの制御信号を受信すると、先行車等に対する各種警報や運転支援制御の実施状況及び自車両の周囲環境等に関する各種情報等を、HMI31を通じた表示や音声等により、運転者に適宜報知する。また、CP_ECU21は、HMI31を通じて運転者により入力された各種運転支援制御に対するオン/オフ操作状態等の各種入力情報を、走行_ECU14に出力する。
【0033】
E/G_ECU22の出力側には、電子制御スロットルのスロットルアクチュエータ32等が接続されている。また、E/G_ECU22の入力側には、図示しないアクセルセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0034】
E/G_ECU22は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号等に基づき、スロットルアクチュエータ32に対する駆動制御を行う。これにより、E/G_ECU22は、エンジンの吸入空気量を調整し、所望のエンジン出力を発生させる。また、E/G_ECU22は、各種センサ類において検出されたアクセル開度等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0035】
T/M_ECU23の出力側には、油圧制御回路33が接続されている。また、T/M_ECU23の入力側には、図示しないシフトポジションセンサ等の各種センサ類が接続されている。T/M_ECU23は、E/G_ECU22において推定されたエンジントルク信号や各種センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路33に対する油圧制御を行う。これにより、T/M_ECU23は、自動変速機に設けられている摩擦係合要素やプーリ等を動作させ、エンジン出力を所望の変速比にて変速する。また、T/M_ECU23は、各種センサ類において検出されたシフトポジション等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0036】
BK_ECU24の出力側には、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに出力するブレーキ液圧を各々調整するためのブレーキアクチュエータ34が接続されている。また、BK_ECU24の入力側には、図示しないブレーキペダルセンサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサ及び車速センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0037】
BK_ECU24は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、ブレーキアクチュエータ34に対する駆動制御を行う。これにより、BK_ECU24は、自車両に対する強制的な制動制御やヨーレート制御等を行うためのブレーキ力を各車輪に適宜発生させる。また、BK_ECU24は、各種センサにおいて検出されたブレーキ操作状態や、ヨーレート,前後加速度,車速(自車速)等の信号を走行_ECU14に出力する。
【0038】
PS_ECU25の出力側には、ステアリング機構にモータの回転力による操舵トルクを付与する電動パワステモータ35が接続されている。また、PS_ECU25の入力側には、操舵トルクセンサや舵角センサ等の各種センサ類(不図示)が接続されている。
【0039】
PS_ECU25は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、電動パワステモータ35に対する駆動制御を行う。これにより、PS_ECU25は、ステアリング機構に対する操舵トルクを発生させる。また、PS_ECU25は、各種センサ類において検出された操舵トルク及び舵角等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0040】
さらに、走行_ECU14には、各種のセンサ類として、ロケータユニット36と、車載レーダ装置37と、後方センサ38と、レインセンサ39と、近赤外線センサ40と、外気温センサ41と、車輪速センサ42等が接続されている。
【0041】
ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aと、高精度道路地図データベース(道路地
図DB)36bとを有して構成されている。
【0042】
GNSSセンサ36aは、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信することにより、自車両の位置(緯度,経度,高度等)を測位する。
【0043】
道路地
図DB36bは、HDD,SSDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この道路地
図DB36bは、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度などを保有している。この車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。
【0044】
また、ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aによって測位された自車両位置におけるリアルタイムの周囲環境の情報(例えば渋滞情報や天候情報等)を外部システムとの通信を行って取得することができる。この場合において、天候情報には、例えば自車両位置を含む地域の降雨情報や降雪情報,積雪情報等をも含む。
【0045】
また、道路地
図DB36bは、各種施設や駐車場等の情報等のほか、寒冷地域等における各種の融雪のための設備や又は路面凍結を抑止するための設備(例えば舗装路面内に電熱線類又は温水等を循環させるパイプ類等を埋設して路面を加熱して融雪を行うロードヒーティングシステムや、路面内に埋設したパイプ類等を循環する地下水等の温水を路上に設置したノズルから路面上に散布して積雪を除去する消雪パイプ装置等;以下、これらを総称して融雪設備と呼称する)の設置領域情報等を保有している。さらに、道路地
図DB36bは、ロケータユニット36が外部システム(不図示)との通信を行うことによって取得した情報、例えば除雪車両による除雪作業に関する情報、或いは融雪剤の撒布作業に関する情報(例えば、各作業地域や運行日程等の情報等)を保有している。
【0046】
道路地
図DB36bは、例えば、走行_ECU14からの要求信号に基づき、GNSSセンサ36aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報を、第3の周囲環境情報として走行_ECU14に出力する。
【0047】
このように、本実施形態において、道路地
図DB36bは、GNSSセンサ36aと共に、車両周囲の第3の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を有する。
【0048】
車載レーダ装置37は、複数のセンサからなり、例えば複数のミリ波レーダ等によって構成されている。ここで、複数のミリ波レーダは、出力した電波に対し、物体からの反射波を受けて解析することにより、主として歩行者や併走車両等の立体物のほか、道路端(例えば、路肩側の端部)に設けられる構造物等(例えば、縁石,ガードレール,建物等の壁,植栽等の立体物等)を検出する。さらに、複数のミリ波レーダは、道路上に存在する立体的な障害物等をも検出する。この場合において、複数のミリ波レーダは、立体物に関する具体的な情報として、立体物の横幅,立体物の代表点の位置(自車両との相対位置,相対距離)及び相対速度等を検出する。
【0049】
なお、車載レーダ装置37に含まれる複数のセンサ(複数のミリ波レーダ等)は、例えばフロントバンパの左右側部(前側左右側方センサという)やリアバンパの左右側部(後側左右側方センサという)等に配設されている。そして、前側左右側方センサは、ステレオカメラ11の画像では認識することが困難な自車両の左右斜め前方及び側方の領域に存在する立体物を第2の周囲環境情報として検出する。また、後側左右側方センサは、前側左右側方センサでは認識することが困難な自車両の左右斜め側方及び後方の領域に存在する立体物を第2の周囲環境情報として検出する。
【0050】
このように、本実施形態において、車載レーダ装置37は、車両周囲の第2の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を有する。そして、車載レーダ装置37の各センサにより取得された情報は、画像認識_ECU13へと送られる。
【0051】
後方センサ38は、例えば、ソナー装置等によって構成されている。この後方センサ38は、例えば、リアバンパに少なくとも1つ(複数であってもよい)配設されている。後方センサ38は、後側左右側方センサでは認識することが困難な自車両の後方の領域に存在する立体物を第4の周囲環境情報として検出する。
【0052】
このように、本実施形態において、後方センサ38は、車両周囲の第4の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を有する。
【0053】
なお、画像認識_ECU13によって認識された第1の周囲環境情報、ロケータユニット36によって認識された第3の周囲環境情報、車載レーダ装置37によって認識された第2の周囲環境情報、後方センサ38によって認識された第4の周囲環境情報のそれぞれに含まれる車外の各対象の座標は、何れも、走行_ECU14において、自車両の中心を原点とする三次元座標系の座標に変換される。
【0054】
レインセンサ39は、フロントウィンドウに付着した雨滴や降雪等を検知するセンサである。レインセンサ39によって取得された情報は、走行_ECU14へと出力される。そして、この走行_ECU14において、降雨降雪量や走行速度に応じた制御信号が生成されて、例えばワイパー装置等の駆動制御が行われる。同時に、レインセンサ39によって取得された情報に基づいて、自車両周囲の天候情報(降雨降雪状況等の情報)等を認識する。
【0055】
近赤外線センサ40は、自車両の周囲状況、特に路面温度等の路面状況等を認識するセンサである。この近赤外線センサ40によって取得される情報に基づいて、路面温度や路面上の水分量,路面上の積雪状況等を認識する。
【0056】
外気温センサ41は、自車両周囲の外気温の変化を検出するセンサである。
【0057】
なお、レインセンサ39,近赤外線センサ40,外気温センサ41等の各センサ類にて取得された情報は、第5の周囲環境情報として検出する。そして、本実施形態において、レインセンサ39,近赤外線センサ40,外気温センサ41等の各センサ類は、車両周囲の第5の周囲環境を認識する周囲環境認識装置としての機能を有する。
【0058】
車輪速センサ42は、自車両の複数の車輪(通常は4つの車輪)のそれぞれの車輪速を検出するセンサである。この車輪速センサ42は、例えば各車輪の回転速度を検出することで自車両の走行速度を検出する。また、車輪速センサ42は、例えば各車輪のロック状態や空転状態等を個別に検出する。ここで、車輪速センサ42は、自車両の状態情報を取得する車両状態認識装置として機能する。
【0059】
そして、走行_ECU14は、各種センサ類によって取得された各情報に基づいて、車両の安定走行を行うための走行制御を実行する。具体的には、例えば車輪速センサ42の出力情報に基づいて各車輪の回転差を検出し、各車輪間に回転差が生じている場合には、E/G_ECU23によるエンジン出力制御や各駆動輪のトルク配分制御を行うほか、BK_ECU24による各車輪の個別の制動制御(ブレーキ制御)等を実行して、車両の不安定走行を抑止する走行制御を行う。
【0060】
ここで、特に、複数の車輪間で回転差が発生した場合に、BK_ECU24による個別の制動制御を介入させる際の制御をブレーキLSD(Limited Slip Differential)制御という。このブレーキLSD制御自体は周知の技術であるので、詳細説明は省略する。
【0061】
本実施形態の車両の走行制御装置1においては、ブレーキLSD制御について、各車輪に個別の制動制御を介入させる際のブレーキ昇圧速度又はブレーキ減圧タイミングを異ならせた複数の動作モードを設定し得る構成としている。なお、本実施形態においては、以下の二種の動作モードを例示する。
【0062】
例えば、通常のブレーキLSD制御を第1モード(又は標準モード)と呼称し、第1モードに対して強化制御を行う動作モードを第2モード(又は強化モード)と呼称する。
【0063】
ブレーキLSD制御における第2モードでは、例えば複数の車輪間に回転差が発生した時のブレーキ昇圧速度について、第1モード時のブレーキ昇圧速度に対して高める制御を行う。また、複数の車輪間に回転差が発生した時のブレーキ減圧タイミングについて、第1モード時のブレーキ減圧タイミングに対して遅らせる制御を行なう。
【0064】
このような第2モードによるブレーキLSD制御処理を行うことで、より滑りやすい路面を走行する際の駆動力をより高めて、安定的な走行を実現する工夫としている。
【0065】
なお、ロケータユニット36,画像認識_ECU13,走行_ECU14,CP_ECU21,E/G_ECU22,T/M_ECU23,BK_ECU24,PS_ECU25等の全部又は一部は、ハードウエアを含むプロセッサにより構成されている。
【0066】
ここで、プロセッサは、例えば、中央処理装置(CPU;Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)や、不揮発性メモリ(Non-volatile memory),不揮発性記憶装置(Non-volatile storage)等のほか、非一過性の記録媒体(non-transitory computer readable medium)等を備える周知の構成及びその周辺機器等によって構成されている。
【0067】
ROMや不揮発性メモリ、不揮発性記憶装置等には、CPUが実行するソフトウエアプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。そして、CPUがROM等に格納されたソフトウエアプログラムを読み出してRAMに展開して実行し、また、当該ソフトウエアプログラムが各種データ等を適宜参照等することによって、上記各構成部や構成ユニット(13,14,21~25,36)等の各機能が実現される。
【0068】
また、プロセッサは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの半導体チップなどにより構成されていてもよい。また、上記各構成部や構成ユニット(13,14,21~25,36)等は電子回路によって構成してもよい。
【0069】
さらに、ソフトウエアプログラムは、コンピュータプログラム製品として、フレキシブルディスク,CD-ROM,DVD-ROM等の可搬型板媒体や、カード型メモリ,HDD(Hard Disk Drive)装置,SSD(Solid State Drive)装置等の非一過性の記憶媒体(non-transitory computer readable medium)等に、全体あるいは一部が記録されている形態としてもよい。
【0070】
このように構成された本実施形態の車両の走行制御装置の作用について、
図2~
図4を用いて以下に説明する。
【0071】
図2は、本実施形態の車両の走行制御装置を搭載した車両を運用する場合の各種の状況を概念的に示す図である。そして、
図2においては、寒冷地域等における冬期の道路事情を概念的に示している。
【0072】
まず、
図2において、符号100は車道を示し、符号101は歩道を示し、符号102は路地を示し、符号103は敷地を示している。
【0073】
また、
図2において斜線で示す領域は、融雪又は除雪されていない領域(以下、非融雪領域という)を示すものとする。
図2において斜線の無い領域は、融雪又は除雪されている領域(以下、融雪領域という)を示すものとする。
【0074】
車道100は、車両が走行するための領域である。
図2の例示では、車道100は往復二車線(片側一車線)からなる比較的広い幹線道路を想定して図示している。ここで、車道100には融雪設備が設置されているものとする。この場合において、符号100Aで示す領域は、当該融雪設備が稼働している領域を示している。したがって、車道100のうち領域100Aは融雪領域(斜線の無い領域)として図示されている。
【0075】
また、符号100Bで示す領域は、当該融雪設備が稼働していない領域若しくは設置されていない領域を示している。したがって、車道100のうち領域100Bは非融雪領域(斜線で示す領域)として図示されている。
【0076】
なお、
図2において符号BD1で示す破線は、車道100のうちの融雪領域100Aと非融雪領域100Bとの境界を示している。この境界BD1においては、融雪領域100Aの路面と、非融雪領域100Bの圧雪路面との間に段差が形成されている(詳細後述。
図3等参照)。
【0077】
歩道101は、車道100の両側縁に沿って設けられ、歩行者等が通行するための領域である。なお、
図2において、符号BD2で示す破線は、車道100と歩道101との境界を示している。ここで、歩道101は非融雪領域として図示している。ただし、後述するように、歩道101の一部領域101aのみは融雪領域として図示している。この境界BD2においても、上述の境界BD1と同様に、融雪領域100Aの路面と、非融雪領域となる歩道101上の圧雪路面との間に段差が形成されている(詳細後述。
図3等参照)。
【0078】
路地102は、車道100に接続され、車両や歩行者等が通行するための領域である。
図2の例示では、路地102は車道100に比べて若干狭い幅の車道を想定して図示している。ここで、路地102は非融雪領域として図示している。
【0079】
敷地103は、車道100又は歩道101等に沿って存在する領域である。この敷地103の領域には、建物等が存在している場合があり、空き地となっている場合があり、若しくは駐車場等として利用されている場合がある。
【0080】
例えば、
図2の例示では、敷地103に設置されているガレージ(車庫)として、符号104で示している。この場合において、符号104aは、敷地103の領域内にあり、ガレージ104と車道100とを連絡する通路の一部を示している(以下、敷地内通路104aと呼称する)。この敷地内通路104aは、歩道101の一部領域101aを隔てて車道100へと通じている。したがって、車両(
図2に示す符号M3参照;詳細後述)が、ガレージ104から車道100へと出庫する際には、敷地内通路104aを通過した後、歩道101の一部領域101aを横切ることになる。一方、同車両(M3)が車道100からガレージ104へと入庫する際には、歩道101の一部領域101aを横切った後、通路104aを通過することになる。
【0081】
ここで、歩道101の一部領域101aと敷地内通路104a及びガレージ104は融雪領域として図示している。一般に、寒冷地域等における積雪地帯では、ガレージなどと車道との通路は、使用者等により除雪されていることが多い。このような状況を想定して、
図2の例示としている。
【0082】
また、
図2において、符号Mは、本実施形態の車両の走行制御装置1を搭載した自車両を示している。符号Mに附される数字1~3は、自車両Mのおかれている各種の状況を示すものとする。したがって、符号M1は第1状況にある自車両を示している。同様に、符号M2は第2状況にある自車両を、符号M3は第3状況にある自車両を、それぞれ示している。
【0083】
ここで、第1状況は、例えば車道100の融雪領域100Aを走行している自車両M1が、非融雪領域の路地102へと進入して走行する際の状況を想定している。
図2の矢印D1は、自車両M1の想定走行軌跡を示している。
【0084】
第2状況は、例えば車道100の融雪領域100Aを走行している自車両M2が、走行を継続して非融雪領域100Bへと進入して走行する際の状況を想定している。
図2の矢印D2は、自車両M2の想定走行軌跡を示している。
【0085】
第3状況は、例えばガレージ104内に入庫している自車両M3が、ガレージ104から出庫して敷地内通路104a及び歩道101の一部領域101a(融雪領域)を通って車道100の非融雪領域100Bへと進入して走行する際の状況を想定している。
図2の矢印D3は、自車両M3の想定走行軌跡を示している。
【0086】
なお、
図3は、上述の第3状況について、別の方向(
図2の矢印[3]方向)から見た様子を概念的に示す図である。上述したように、第3状況においては、ガレージ104内に入庫している自車両M3が出庫する際の状況を想定している。ここで、ガレージ104は、屋根が設けられていることによりガレージ104内は融雪領域となっていることを想定している。また、敷地内通路104a及び歩道101の一部領域101aも、融雪設備若しくは除雪作業により融雪領域となっていることを想定している。そして、敷地内通路104a,一部領域101aに通じる車道100は非融雪領域100Bとなっている状況を想定している。この場合、融雪領域と非融雪領域との境界部分には、段差H(
図3参照)が形成されている。このような段差Hは、例えば10~20cm程度の高さを有する圧雪により形成されているのが一般である。
【0087】
上述の第1状況,第2状況,第3状況は、いずれも自車両M1,M2,M3が融雪領域から非融雪領域へ向けて走行する際の状況を想定している。つまり、これら第1~第3状況では、路面の摩擦係数が大きく滑り難い融雪領域から、路面の摩擦係数が小さく滑り易い非融雪領域へと走行する状況であり、かつ段差Hを乗り越える状況を想定している。
【0088】
なお、上述した第1~第3状況以外にも、同様の状況はさまざま考えられる。例えば、商業施設等に付属の大駐車場等は、一般に、除雪作業によって融雪領域となっていることが多い。この場合、当該駐車場等(融雪領域)から車道(非融雪領域)へ向けて走行する場合には、上述の3つの状況と略同様の状況となる。また、融雪設備が歩道に設置されている場合もある。この場合、例えばガレージや駐車場等の融雪領域から出庫する車両は、融雪領域の歩道を横切った後、車道100の非融雪領域100Bへ出庫し走行する状況が考えられる。このような状況は、上述の第3状況に類似する。
【0089】
次に、本実施形態の車両の走行制御装置1による作用を、
図4のフローチャートによって説明する。本制御処理は、雪上走行をしている車両が、上述のような走行状況、即ち自車両Mが融雪領域から非融雪領域へと走行する状況が発生することを想定して実行される制御処理である。
【0090】
本実施形態の車両の走行制御装置1を搭載する自車両Mは、例えば寒冷地域等における冬期の道路上を走行しているものとする。
【0091】
このような状況下において、カメラユニット10の走行_ECU14は、
図4のステップS1において、ステレオカメラ11,ロケータユニット36,レインセンサ39,近赤外線センサ40,外気温センサ41等の各種センサ類によって取得される各種情報に基づいて自車両Mの周囲環境の情報(周囲情報)及び路面状況情報を取得する。
【0092】
次いで、ステップS2において、走行_ECU14は、上述のステップS1の処理にて取得された周囲環境の情報及び路面状況情報に基づいて、自車両Mの走行状況が雪上走行中であるか否かの確認を行う。なお、雪上走行中の状況とは、例えば自車両Mが走行している位置情報に基づく地域の天候情報やレインセンサ39による降雪情報等に加えて、ステレオカメラ11による画像情報等により、走行中の車道100の路面が既に積雪している状況にあり、非融雪領域を走行している状況を想定している。
【0093】
ここで、自車両Mが雪上走行中であることが確認された場合は、次のステップS3の処理に進む。また、自車両Mが雪上走行中ではないことが確認された場合は、上述のステップS1の処理に戻り(リターン)、ステップS1にて周囲環境の情報の取得処理を継続する。
【0094】
ステップS3において、走行_ECU14は、上述のステップS1の処理にて取得された周囲環境の情報及び路面状況情報に基づいて、自車両Mの進行方向に融雪領域が存在するか否かの確認を行う。
【0095】
ここで、自車両Mの進行方向に融雪領域が存在するか否かの判断は、次のようにして行われる。例えば、自車両Mがナビゲーションシステム(不図示)等によって予め設定された走行ルートに沿って走行している場合には、その設定された走行ルートに沿う進行方向の領域の周囲環境の情報を確認する。そして、自車両Mの進行方向に、例えば融雪設備等が設置されている場合等には、進行方向に融雪領域が存在するものと判断できる。
【0096】
また、例えば、ステレオカメラ11の画像情報に基づいて認識される路面状況情報から、進行方向に融雪領域の存在を確認することができる。さらに、近赤外線センサ40と外気温センサ41等のセンサ類の情報に基づいて、路面温度や路面状況を認識することによって、自車両Mの進行方向の融雪領域の存在を確認することができる。
【0097】
上述のステップS3の処理にて、自車両Mの進行方向に融雪領域が存在することが確認された場合は、次のステップS4の処理に進む。また、自車両Mの進行方向に融雪領域が存在しないことが確認された場合は、ステップS2の処理に戻る。
【0098】
ステップS4において、走行_ECU14は、ブレーキLSD制御の現在の設定が、第2モードに設定されているか否かの確認を行う。ここで、ブレーキLSD制御が既に第2モードに設定されている場合には、ステップS6の処理に進む。また、ブレーキLSD制御が第2モードに設定されていない場合には、次のステップS5の処理に進む。
【0099】
ステップS5において、走行_ECU14は、ブレーキLSD制御の設定を第2モードに切り換える処理を行う。
【0100】
このようにして、雪上(非融雪領域)を走行中の自車両Mは、進行方向に融雪領域が存在する場合には、ブレーキLSD制御の設定を自動的に第2モードに切り換える。そして、この状態で、進行方向に存在する融雪領域に進入することになる。このときの状況が、
図2,
図3に示す第1~第3状況として例示されている。
【0101】
即ち、雪上(非融雪領域)を走行中の自車両Mが、進行方向に存在する融雪領域に進入すると、
図2に示すように、車道100の融雪領域100Aを走行している状況になる(第1状況,第2状況)。なお、第3状況では、自車両M3は、雪上走行中ではないが、ガレージ104を出庫しようとしている状況において、進行方向に融雪領域が存在している状況である。
【0102】
したがって、
図2の第1~第3状況のいずれの場合においても、自車両M1,M2,M3は、融雪領域にある状況から、やがて非融雪領域に乗り上げる状況になる。
【0103】
このとき、融雪領域と非融雪領域との境界部分には段差(H)がある。この段差(H)は、融雪領域側で低く、非融雪領域側で高い。そして、この段差(H)は、圧雪若しくは凍結状態にあるので極めて滑りやすい。したがって、自車両M1,M2,M3が融雪領域から非融雪領域へと走行する場合において、段差(H)を乗り越える際には、複数の駆動輪のうちの一部が空転する可能性が高い。
【0104】
このとき、自車両M1,M2,M3における走行制御装置1のブレーキLSD制御の設定は、上述の制御処理によって第2モードに設定されている状態にある。この第2モードは、通常の第1モード時よりも制御が強化されているので、より強い効果で車輪の空転を抑えることができ、より効率的に各車輪に対し駆動源からの駆動力を伝達することができる。したがって、自車両M1,M2,M3はより安定して走行することができる。そのようにして自車両Mは走行を継続する。
【0105】
そして、
図4のステップS6において、走行_ECU14は、自車両Mの走行が終了したか否かの確認を行う。この確認は、例えば駆動源(駆動エンジン若しくは駆動モータ等)が停止したか否かの確認により行われる。ここで、走行終了が確認された場合には、ステップS8の処理に進む。また、走行終了が確認されなかった場合は、走行が継続されているものと判断されて、次のステップS7の処理に進む。
【0106】
ステップS7において、走行_ECU14は、雪上走行が終了したか否か、若しくは雪上路から離脱したか否かの確認を行う。この確認は、ステレオカメラ11等の各種センサ類によって取得される各種情報に基づいて行う。
【0107】
雪上路からの離脱条件の確認は、例えば、自車両Mの現在の位置情報に対応する地域の天候情報や、レインセンサ39等によって検出される降雨降雪情報等に基づいて行われる。
【0108】
また、自車両Mの走行中の車道100の路面上に積雪が存在していない状態で、所定の時間以上の継続走行がなされていることを、ステレオカメラ11によって取得される画像情報等に基づいて確認された場合に、雪上路から離脱したものと判断してもよい。この場合における所定の時間としては、例えば、30分程度の走行継続時間、または所定の走行距離(例えば5キロメートル(km)程度)を閾値として設定すればよい。なお、上記所定時間の設定閾値は、自車両Mが走行中の道路の種別、例えば幹線道路であるか、路地裏道路であるか等によって適宜変更してもよい。
【0109】
さらに、自車両Mの走行中の道路の路面状況のみに限らず、例えば、当該道路の周囲の歩道101や路地102等における積雪状況や冠雪状況等を考慮に入れて、雪上路から離脱したか否かの確認を行うようにすれば、より確実に判断を行うことができる。
【0110】
ここで、雪上走行の終了、若しくは雪上路からの離脱が確認された場合には、次のステップS8の処理に進む。また、雪上走行の終了、若しくは雪上路からの離脱が確認されない場合は、ステップS6の処理に戻る。
【0111】
ステップS8において、走行_ECU14は、ブレーキLSD制御の設定を通常の第1モードへと自動的に切り換える処理を行う。その後、一連の処理を終了する(リターン)。
【0112】
以上説明したように上記一実施形態によれば、車両の複数の駆動輪のうちの少なくとも一つの駆動輪の空転が検出されたとき、空転している駆動輪の制動制御を行うブレーキLSD制御によって、車輪の空転を抑制する機能を有する車両の走行制御装置において、当該走行制御装置を搭載した車両が、雪上走行中の状況にあり、かつ融雪領域と非融雪領域とが混在している地域を走行していることが確認された場合には、ブレーキLSD制御の動作モード設定を、通常の第1モードから強化された第2モードへと自動的に切り換わる制御が実行される。
【0113】
したがって、車両が融雪領域から非融雪領域へと走行するとき、当該車両の境界線において、特に凍結部分或いは圧雪等による段差を乗り越える場合に、予めブレーキLSD制御が第2モード(強化モード)に設定されているので、車輪の空転は抑止され常に安定した走行制御を行うことができる。
【0114】
このように、ブレーキLSD制御の第2モード(強化モード)を設けたことにより、融雪領域から非融雪領域へと移動する際の車輪の空転をより確実に抑止することができる。よって、常に安定的な車両の走行を確保することができる。
【0115】
各種センサ類等によって認識された車両の周囲環境が所定の条件に合致するとき(即ち雪上走行中で、かつ融雪領域と非融雪領域との混在地域)には、自動的にブレーキLSD制御の動作モードを第2モードに切り換えるようにしたので、運転者自身が自車両の周囲状況等についての確認等を行わなくてよい。したがって、運転者は、運転に集中することができ、よって、安全な走行を確保することができる。
【0116】
また、上記所定の条件の周囲環境の領域から離脱したことが確認された場合には、自動的にブレーキLSD制御の動作モードを第1モードに戻す切り換え設定が行われるので、周囲環境に応じて適切な走行制御とすることができる。
【0117】
なお、上述の一実施形態においては、エンジンを駆動源とする車両における走行制御装置に適用した場合の例を挙げて説明しているが、本発明は、このような形態に限られることはない。例えば、電動モータを駆動源とする車両の走行制御装置に対しても、本発明は同様に適用することができ、その場合にも、全く同様の効果を得ることができる。
【0118】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0119】
1…走行制御装置
10…カメラユニット
11…ステレオカメラ
11a…メインカメラ
11b…サブカメラ
12…画像処理ユニット(IPU)
13…画像認識ユニット(画像認識_ECU)
14…走行制御ユニット(走行_ECU)
21…コックピット制御ユニット(CP_ECU)
22…エンジン制御ユニット(E/G_ECU)
23…トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)
24…ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)
25…パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)
31…ヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)
32…スロットルアクチュエータ
33…油圧制御回路
34…ブレーキアクチュエータ
35…電動パワステモータ
36…ロケータユニット
36a…GNSSセンサ
36b…高精度道路地図データベース(道路地
図DB)
37…車載レーダ装置
38…後方センサ
39…レインセンサ
40…近赤外線センサ
41…外気温センサ
42…車輪速センサ
100…車道
100A…融雪領域
100B…非融雪領域
101…歩道
101a…一部領域
102…路地
103…敷地
104…ガレージ
104a…敷地内通路
BD1,BD2…境界
H…段差
M1,M2,M3…自車両