(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062742
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240501BHJP
G05B 23/02 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
G06N20/00
G05B23/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170788
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂元 佑気
(72)【発明者】
【氏名】木村 克行
(72)【発明者】
【氏名】土川 健斗
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223BA03
3C223BB08
3C223BB09
3C223EB02
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】既知の環境で入手可能なデータを利用して新規の環境において使用する制御モデルのための学習データを生成する。
【解決手段】システムは、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101と、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102とを学習データとして、第1ドメインの実データから第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデル120を生成する変換モデル生成部と、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111を学習済モデル120に入力し、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成するデータ生成部と、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を学習データとして、第2工場100Bで使用される制御モデル140Bを生成する制御モデル生成部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1工場における第1ドメインの実データと、前記第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、前記第1ドメインの実データから前記第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成する変換モデル生成部と、
第2工場における前記第1ドメインの実データを前記学習済モデルに入力し、前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを生成するデータ生成部と、
前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを学習データとして、前記第2工場で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部とを備える、システム。
【請求項2】
第1工場における第1ドメインの実データと、第2工場における前記第1ドメインの実データとを学習データとして、前記第1工場におけるドメインの実データから、前記第2工場における前記ドメインと同一ドメインの疑似データを生成するように学習した学習済モデルを生成する変換モデル生成部と、
前記第1工場における第2ドメインの実データを前記学習済モデルに入力し、前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを生成するデータ生成部と、
前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを学習データとして、前記第2工場で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部とを備える、システム。
【請求項3】
前記第1工場にある第1制御装置から前記第1ドメインの実データおよび前記第2ドメインの実データを収集し、前記第2工場にある第2制御装置から前記第1ドメインの実データを収集する通信部をさらに備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御モデル生成部は、前記第2工場における前記第1ドメインの実データから、前記第2工場で使用される他の制御モデルを生成し、
前記通信部は、前記第2制御装置に、前記第2工場で使用される制御モデルと、前記第2工場で使用される他の制御モデルとを送信する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1ドメインおよび前記第2ドメインは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1ドメインのデータおよび前記第2ドメインのデータは、センサの出力信号である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御モデルは、設備の異常検知、製品の異常検知、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合のいずれかを行うためのモデルである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項8】
コンピュータにより実行される方法であって、
第1工場における第1ドメインの実データと、前記第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、前記第1ドメインの実データから前記第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成するステップと、
第2工場における前記第1ドメインの実データを前記学習済モデルに入力し、前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを生成するステップと、
前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを学習データとして、前記第2工場で使用される制御モデルを生成するステップとを備える、方法。
【請求項9】
コンピュータにより実行されるプログラムであって、
第1工場における第1ドメインの実データと、前記第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、前記第1ドメインの実データから前記第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成するステップと、
第2工場における前記第1ドメインの実データを前記学習済モデルに入力し、前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを生成するステップと、
前記第2工場における前記第2ドメインの疑似データを学習データとして、前記第2工場で使用される制御モデルを生成するステップとを前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、迅速な工場の立ち上げを支援するためのシステムに関し、より特定的には、制御モデルの学習用データの生成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の制御装置において、学習済モデルが使用されることがある。このような場合、新しい工場を立ち上げるときに、学習済モデルを生成するためのデータが必要となる。これに関して、機械学習には転移学習が存在する。転移学習は、元ドメインのデータもしくは学習済モデルを用いることにより、少量の目標ドメインのデータしか入手できない場合でも学習を可能にする。しかしながら、転移学習には目標ドメインのデータが少量とはいえ必要となる。工場の立ち上げ時には、新工場における目標データが必要となる。
【0003】
学習済モデルの作成技術に関し、例えば、特開2021-140400号公報(特許文献1)は、「第1拠点(マザー拠点)における検査対象の状態をニューラルネットワークの第1のモデル(マザーモデル)を用いて診断する第1サーバ(マザーサーバ)と、複数の第2拠点(チャイルド拠点)の各拠点における検査対象の状態をニューラルネットワークの第2のモデル(チャイルドモデル)を用いて診断する複数の第2サーバ(チャイルドサーバ)と、を備える。この学習モデル作成システムにおいて、第1サーバは、複数の第2サーバの各々から学習済みの第2のモデルの特徴量を受信し、受信した複数の第2のモデルの特徴量と、学習済みの第1のモデルの特徴量とを融合し、融合した特徴量に基づいて、第1のモデルを再構築し学習する」学習モデル作成システムを開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術によると、第1拠点および第2拠点は共通のモデルを使用しており、拠点毎に適切な学習済モデルが提供できない可能性がある。したがって、既知の環境で入手可能なデータを利用して新規の環境において使用する制御モデルのための学習データを生成する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面における目的は、既知の環境で入手可能なデータを利用して新規の環境において使用する制御モデルのための学習データを生成するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態に従うと、システムが提供される。システムは、第1工場における第1ドメインの実データと、第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、第1ドメインの実データから第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成する変換モデル生成部と、第2工場における第1ドメインの実データを学習済モデルに入力し、第2工場における第2ドメインの疑似データを生成するデータ生成部と、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして、第2工場で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部とを備える。
【0008】
上記の開示によれば、システムは、第2工場における第2ドメインの実データを収集することなく、第2工場における第1ドメインの実データから第2工場における第2ドメインの疑似データを生成し得る。さらに、システムは、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして第2工場で使用される制御モデルを生成し得る。
【0009】
他の実施の形態に従うと、他のシステムが提供される。システムは、第1工場における第1ドメインの実データと、第2工場における第1ドメインの実データとを学習データとして、第1工場におけるドメインの実データから、第2工場におけるドメインと同一ドメインの疑似データを生成するように学習した学習済モデルを生成する変換モデル生成部と、第1工場における第2ドメインの実データを学習済モデルに入力し、第2工場における第2ドメインの疑似データを生成するデータ生成部と、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして、第2工場で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部とを備える。
【0010】
上記の開示によれば、システムは、第2工場における第2ドメインの実データを収集することなく、第1工場における第2ドメインの実データから第2工場における第2ドメインの疑似データを生成し得る。さらに、システムは、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして第2工場で使用される制御モデルを生成し得る。
【0011】
ある開示の一例によると、システムは、第1工場にある第1制御装置から第1ドメインの実データおよび第2ドメインの実データを収集し、第2工場にある第2制御装置から第1ドメインの実データを収集する通信部をさらに備える。
【0012】
上記の開示によれば、システムは、第1工場にある第1制御装置と、第2工場にある第2制御装置とから、必要な実データを収集し得る。
【0013】
ある開示の一例によると、制御モデル生成部は、第2工場における第1ドメインの実データから、第2工場で使用される他の制御モデルを生成する。通信部は、第2制御装置に、第2工場で使用される制御モデルと、第2工場で使用される他の制御モデルとを送信する。
【0014】
上記の開示によれば、システムは、第2工場において必要となる複数のドメインの各々に対応する制御モデルを生成し得る。
【0015】
ある開示のシステムの一例によると、第1ドメインおよび第2ドメインは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせを含む。
【0016】
上記の開示によれば、システムは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせからなるドメインごとに、制御モデルを生成し得る。
【0017】
ある開示のシステムの一例によると、第1ドメインのデータおよび第2ドメインのデータは、センサの出力信号である。
【0018】
上記の開示によれば、システムは、センサの出力信号を学習データとして使用し得る。
ある開示のシステムの一例によると、制御モデルは、設備の異常検知、製品の異常検知、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合のいずれかを行うためのモデルである。
【0019】
上記の開示によれば、システムは、設備の異常検知、製品の異常検知、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合のいずれかを行うための制御モデルを生成し得る。
【0020】
他の実施の形態に従うと、コンピュータにより実行される方法が提供される。方法は、第1工場における第1ドメインの実データと、第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、第1ドメインの実データから第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成するステップと、第2工場における第1ドメインの実データを学習済モデルに入力し、第2工場における第2ドメインの疑似データを生成するステップと、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして、第2工場で使用される制御モデルを生成するステップとを備える。
【0021】
上記の開示によれば、方法を実行するコンピュータは、第2工場における第2ドメインの実データを収集することなく、第2工場における第1ドメインの実データから第2工場における第2ドメインの疑似データを生成し得る。さらに、方法を実行するコンピュータは、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして第2工場で使用される制御モデルを生成し得る。
【0022】
さらに他の実施の形態に従うと、コンピュータにより実行されるプログラムが提供される。プログラムは、第1工場における第1ドメインの実データと、第1工場における第2ドメインの実データとを学習データとして、第1ドメインの実データから第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成するステップと、第2工場における第1ドメインの実データを学習済モデルに入力し、第2工場における第2ドメインの疑似データを生成するステップと、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして、第2工場で使用される制御モデルを生成するステップとをコンピュータに実行させる。
【0023】
上記の開示によれば、プログラムを実行するコンピュータは、第2工場における第2ドメインの実データを収集することなく、第2工場における第1ドメインの実データから第2工場における第2ドメインの疑似データを生成し得る。さらに、プログラムを実行するコンピュータは、第2工場における第2ドメインの疑似データを学習データとして第2工場で使用される制御モデルを生成し得る。
【発明の効果】
【0024】
ある実施の形態に従うと、既知の環境で入手可能なデータを利用して新規の環境において使用する制御モデルのための学習データを生成することが可能である。
【0025】
この開示内容の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本開示に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】システム40の動作概要の一例を示す図である。
【
図2】スタイル変換モデル120の生成手順の一例を示す図である。
【
図3】第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成する手順の一例を示す図である。
【
図4】本実施の形態に従うシステム40の構成の一例を示す図である。
【
図5】本実施の形態に従うシステム50の構成の一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態に従うシステム60の構成の一例を示す図である。
【
図7】他のスタイル変換モデル720の生成手順の例を示す図である。
【
図8】スタイル変換モデル120を生成する処理手順の一例を示す図である。
【
図9】第2工場100Bにおいて使用する制御モデル130B,140Bを生成する処理手順の一例を示す図である。
【
図10】新規環境における異常検知の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る技術思想の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0028】
<A.適用例>
図1~
図3を参照して、本開示の技術の概要について説明する。
図1~
図3に示される処理は、
図4に示されるシステム40によって実行される。
【0029】
図1は、システム40の動作概要の一例を示す図である。
図1を参照して、システム40が、第1工場(既知環境)で得られるデータを利用して、第2工場(新規環境)で使用する学習済モデルを生成するまでの動作概要について説明する。
【0030】
(a.用語)
まず、本開示の技術を説明するために必要な用語について説明する。本明細書において、「システム」は、1または複数の装置からなる構成、サーバ、クラウド環境に構築された仮想マシンもしくはコンテナ、または、これらの少なくとも一部からなる構成を包含する。また、装置は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ装置、タブレット、スマートフォン等の情報処理装置と、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置とを含んでいてもよく、また、これらの組合せであってもよい。ある局面において、システム40は、ディスプレイおよびキーボード等の入出力機器と接続されて、ユーザに使用されてもよい。他の局面において、システム40は、ネットワークを介して、クラウドサービスまたはウェブアプリケーションとして、ユーザに各種機能を提供してもよい。この場合、ユーザは、自身の端末にインストールされたブラウザまたはクライアントソフトウェアを介して、システム40の機能を使用し得る。
【0031】
本明細書において、「工場」は、任意の生産設備、検査設備等、もしくはこれらの組み合わせを含む建物、および、建造物の内外に設置される個別の生産設備、検査設備、もしくはこれらの組み合わせを包含する。例えば、ある製品を製造するための設備A,B,Cを設置された建物Xは、工場である。また、建物Yの内部に、ある製品を製造するための設備D,E,Fが設置されており、さらに、建物Yの内部に、他の製品を製造するための設備G,H,Iが設置されているとする。この場合、建物Yの内部に2つの工場(設備D,E,Fからなる工場と、設備G,H,Iからなる工場)が存在するとも言える。また、建物Y自体も工場であると言える。
【0032】
本明細書において、「ドメイン」は、機械学習のためのデータを収集するための領域または範囲を示す。一例として、ドメインは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせを包含する。
【0033】
本明細書において、「データ」は、アナログ信号またはデジタル信号により示される任意の情報を示す。特に説明がない場合、あるドメインのデータとは、あるドメインにおいて収集された機械学習用のデータを示す。また、データは、「実データ」および「疑似データ」を含む。「実データ」は、実際に取得されたデータである。例えば、センサの出力信号等は、実データである。「疑似データ」は、学習済モデルによって生成されたデータである。例えば、あるセンサ群の出力信号を使用して学習した学習済モデルが、あるセンサ群の出力信号を模して生成したデータは、疑似データである。
【0034】
本明細書において、「モデル」は、任意の機械学習によって得られた学習済モデルである。「制御モデル」は、PLC等の制御装置によって使用されるモデルである。制御装置は、制御モデルを用いて、設備の異常検知、製品の異常検知、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合等の任意の処理を実行し得る。
【0035】
(b.工場を稼働させるために必要な制御モデル)
次に、工場を稼働させるために必要な制御モデルについて説明する。工場内の制御装置は、製品の製造または検査等において、制御モデルを使用することがある。この場合、制御装置は、ドメイン毎に異なる制御モデルを使用することがある。
【0036】
例えば、ドメインは、季節であるとする。また、制御モデルは、製品の異常検知モデルであるとする。夏および冬では、温度、湿度、日照時間等の様々な外部要因が異なり、異常検知処理における閾値も変化する。そのため、工場内の制御装置は、ドメイン毎(季節毎)に、異なる制御モデルを使用することが望ましい。例えば、制御装置は、夏の間は、夏ドメインの制御モデルを使用し、冬の間は、冬ドメインの制御モデルを使用する。工場を稼働させるためには、最低限、各ドメインの制御モデルが必要となる。
【0037】
なお、夏および冬はドメインの分け方の一例であり、ドメインの分け方はこれに限られない。ある局面において、ドメインは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせに基づいて、任意に定められる。また、制御装置は、3つ以上のドメインの各々に割り当てられた3つ以上の制御モデルを使用してもよい。
【0038】
(c.制御モデルの生成に必要なデータ)
次に、制御モデルの生成に必要なデータについて説明する。ドメインは、季節であり、第1ドメイン(夏ドメイン)および第2ドメイン(冬ドメイン)を含むとする。この場合、第1ドメイン(夏ドメイン)の第1制御モデルを生成するためには、第1ドメイン(夏ドメイン:夏の間)で得られた学習データが必要となる。例えば、第1制御モデルが異常検知モデルであるとする。この場合、第1制御モデルの生成のためには、第1ドメイン(夏ドメイン)で得られた、製品の異常検知用のセンサデータ、画像データ等が必要となる。同様に、第2ドメイン(冬ドメイン)の第2制御モデルの生成のためには、第2ドメイン(冬ドメイン:冬の間)で得られた、製品の異常検知用のセンサデータ、画像データ等が必要となる。
【0039】
(d.新規工場立ち上げ時の課題)
次に、新規工場立ち上げ時の課題について説明する。新規工場を稼働させる場合、ドメイン毎の制御モデルを予め用意しておく必要がある。すなわち、ドメイン毎の制御モデルを生成するために、ドメイン毎の学習用のデータを収集する必要がある。
【0040】
ドメインは、季節であり、第1ドメイン(夏ドメイン)および第2ドメイン(冬ドメイン)を含むとする。この場合、新規工場を稼働させるために、第1ドメイン(夏ドメイン)の第1制御モデルと、第2ドメイン(冬ドメイン)の第2制御モデルとが必要となる。
【0041】
現在の季節が夏であるとする。この場合、新規工場がある場所における第1ドメイン(夏ドメイン)のデータは収集可能であるが、新規工場がある場所における第2ドメイン(冬ドメイン)のデータは収集できない。そのため、新規工場用の第2制御モデルが生成できない。そのため、冬になると一旦工場を停止させる必要が出てくる。このような自体を防止するために、新規工場立ち上げ時に、新規工場の場所における全てのドメインのデータを取得するための技術が必要とされている。
【0042】
(e.システムの動作概要)
上記の課題を解決するために、本実施の形態に従うシステム40は、既知の工場がある場所における各ドメインのデータを使用する。これ以降、区別のために、既に稼働している既知の工場を「第1工場」と呼ぶ。これから稼働する工場を「第2工場」と呼ぶ。
【0043】
一例として、ドメインは、季節であり、第1ドメイン(夏ドメイン)および第2ドメイン(冬ドメイン)を含むものとして、システム40の動作について説明する。
【0044】
図1の例では、第1工場100Aがすでに稼働している。また、第1工場100Aに設置された制御装置120Aには、第1ドメイン(夏ドメイン)用の制御モデル130Aと、第2ドメイン(冬ドメイン)用の制御モデル140Aとがインストールされている。
【0045】
システム40は、第2工場の稼働前に、第1工場から第1ドメイン(夏ドメイン)の実データ101と、第2ドメイン(冬ドメイン)の実データ102とを収集しておく。次に、システム40は、収集したこれらの実データ101,102を学習用データとして、第1ドメイン(夏ドメイン)のデータを第2ドメイン(冬ドメイン)のデータに変換するためのスタイル変換モデル(変換モデル)120を生成する。スタイル変換モデル120の生成には、一例として、GAN(Generative Adversarial Networks)または、CycleGANが使用される。
【0046】
次に、システム40は、現在の季節が第1ドメイン(夏ドメイン)の場合、第2工場100Bにおける第1ドメイン(夏ドメイン)の実データ111を収集する。システム40は、第2工場100Bにおける第1ドメイン(夏ドメイン)の実データ111を、スタイル変換モデル120に入力する。スタイル変換モデル120は、第2工場100Bにおける第1ドメイン(夏ドメイン)の実データ111から、第2工場100Bにおける第2ドメイン(冬ドメイン)の疑似データ112を生成する。
【0047】
次に、システム40は、第2工場100Bにおける第1ドメイン(夏ドメイン)の実データから、第1ドメイン(夏ドメイン)用の制御モデル130Bを生成し、第2工場100Bにおける第2ドメイン(冬ドメイン)の疑似データから、第2ドメイン(冬ドメイン)用の制御モデル140Bを生成する。
【0048】
第2工場の制御装置120Bは、システム40から、制御モデル130B,140Bを取得する。これらの一連の処理により、第2工場の制御装置120Bは、必要となる各ドメインに対応する制御モデル130B,140Bを取得するため、生産ライン等が冬に一旦停止するという自体を防止し得る。
【0049】
上記のように、本実施の形態に従うシステム40は、既知の環境(第1工場)から得られたデータから、スタイル変換モデル120を生成し、当該スタイル変換モデル120を使用することで、現在入手できない未知の環境(第2工場)のデータを生成する。これにより、システム40は、未知の環境(第2工場)において必要な全てのデータ(学習データ)を用意し、第2工場を早期に稼働させることができる。
【0050】
図2は、スタイル変換モデル120の生成手順の一例を示す図である。システム40は、第1工場100A内にある制御装置401Aから、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101と、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102とを取得する。一例として、実データ101および実データ102は、制御装置401Aがセンサ群403Aから取得した出力信号であってもよい。
【0051】
システム40は、実データ101および実データ102を用いて、例えば、CycleGAN等を用いた機械学習を実行する。システム40は、当該機械学習により、波形生成部210A,210Bと、波形識別部212A,212Bとを生成する。
【0052】
システム40内で行われる機械学習の手順の一例について簡単に説明する。まず、波形生成部210Aは、実データ101を入力として、実データ102に類似する特徴を持ったデータを出力する。すなわち、波形生成部210Aは、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101から、第1工場100Aにおける第2ドメインの疑似データを生成する。
【0053】
次に、波形識別部212Bは、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102と、波形生成部A210が生成した第2ドメインの疑似データとを比較する。波形識別部212Bは、疑似データが本物であるか否か(疑似データが第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102であるか否か)を判定する。波形識別部212Bは、判別結果をフィードバックとして、波形生成部210Aに出力する。
【0054】
上記の処理を繰り返すことにより、波形識別部212Bは、高精度に疑似データを偽物であると(疑似データが第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102ではないと)見破れるようになる。これに対抗するように、波形生成部210Aは、より精巧な疑似データ(第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102に近い疑似データ)を生成できるようになる。
【0055】
同様に、波形生成部210Bは、実データ102を入力として、実データ101に類似する特徴を持った疑似データを出力する。すなわち、波形生成部210Bは、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102から、第1工場100Aにおける第1ドメインの疑似データを生成する。
【0056】
次に、波形識別部212Aは、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101と、波形生成部210Bが生成した第1ドメインの疑似データとを比較する。波形識別部212Aは、疑似データが本物であるか否か(疑似データが第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101であるか否か)を判定する。波形識別部212Aは、判別結果をフィードバックとして、波形生成部210Bに出力する。
【0057】
上記の処理を繰り返すことにより、波形識別部212Aは、高精度に疑似データを偽物であると(疑似データが第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101ではないと)見破れるようになる。これに対抗するように、波形生成部210Bは、より精巧な疑似データ(第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101に近い疑似データ)を生成できるようになる。
【0058】
システム40は、学習が完了した波形生成部210Aをスタイル変換モデル120として使用する。なお、
図2の例では、システム40は、CycleGANを使用しているため、波形生成部210A,210Bが存在しているが、GAN,pix2pix等を使用して波形生成部210Aのみの学習を行ってもよい。
【0059】
図3は、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成する手順の一例を示す図である。システム40は、第2工場100B内にある制御装置401Bから、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111を取得する。一例として、実データ111は、制御装置401Bがセンサ群403Bから取得した出力信号であってもよい。
【0060】
次に、システム40は、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111を、波形生成部210A(スタイル変換モデル120)に入力する。波形生成部210A(スタイル変換モデル120)は、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成する。
【0061】
上記の処理により、システム40は、新規工場(第2工場100B)の立ち上げ時に、必要となる各ドメインのデータをすぐに収集することができる。その結果、システム40は、第2工場100Bにおける第1ドメイン(夏ドメイン等)の実データから、第1ドメイン用の制御モデル130Bを生成し、第2工場100Bにおける第2ドメイン(冬ドメイン等)の疑似データから、第2ドメイン用の制御モデル140Bを生成し得る。
【0062】
<B.システム構成>
次に、システム40の構成およびそのバリエーションについて説明する。本明細書では、システム40を例に本開示の技術について説明するが、システム50,60も、システム40と同等の機能を備える。
【0063】
図4は、本実施の形態に従うシステム40の構成の一例を示す図である。
図4を参照して、システム40の構成およびシステム40の動作について説明する。
【0064】
(a.システム構成)
システム40は、サーバ430と、第1工場100A内にある制御装置401A、異常検知結果表示部402A、センサ群403Aと、第2工場100B内にある制御装置401B、異常検知結果表示部402B、センサ群403Bとを含む。ある局面において、システム40は、サーバ430と、制御装置401Aと、制御装置401Bとを含み、
図4中の他の構成を含まなくてもよい。他の局面において、システム40は、サーバ430を含み、
図4中の他の構成を含まなくてもよい。
【0065】
第1工場100Aは、制御装置401Aと、異常検知結果表示部402Aと、センサ群403Aとを備える。第2工場100Bは、制御装置401Bと、異常検知結果表示部402Bと、センサ群403Bとを備える。制御装置401Aは、制御プログラム410Aと、センサデータDB(Database)411Aと、データ収集部412Aと、異常検知部413Aとを備える。制御装置401Bは、制御プログラム410Bと、センサデータDB411Bと、データ収集部412Bと、異常検知部413Bとを備える。なお、第2工場100B内の各構成は、第1工場100A内の各構成と同一であるため、これ以降、工場内の構成については、第1工場100Aの構成のみについて説明する。
【0066】
制御装置401Aは、PLC等であり、アクチュエータ、ロボット等を制御する。また、制御装置401Aは、センサ群403Aから出力信号を取得する。出力信号は、圧力センサ、光センサ、音センサ、接触センサ、ガスセンサ、その他任意のセンサの出力信号、カメラの画像信号、映像信号、その他の任意の信号を包含する。
【0067】
制御プログラム410Aは、制御装置401Aの各種機能を実現するためのプログラムである。制御装置401Aは、ストレージ(図示せず)からメモリ(図示せず)に制御プログラム410Aを読み出し、当該制御プログラム410Aをプロセッサ(図示せず)により実行することで、各種機能を実現する。
【0068】
センサデータDB411Aは、センサ群403Aからの出力信号を格納する。ある局面において、センサデータDB411Aは、リレーショナルデータベースとして実現されてもよい。他の局面において、センサデータDB411Aは、他の任意のフォーマットのデータとして実現されてもよい。
【0069】
データ収集部412Aは、センサ群403Aから出力信号を受信し、当該出力信号をセンサデータDB411Aに格納する。ある局面において、出力信号がアナログ信号の場合、データ収集部412Aは、アナログ信号を数値等のデジタルデータに変換し、当該変換後のデータをセンサデータDB411Aに格納してもよい。
【0070】
異常検知部413Aは、工場内の設備の異常、製造または検査している製品の異常、その他の任意の異常を検知する。異常検知部413Aは、ドメイン毎に用意された異常検知モデル(制御モデル)を使用して、異常検知処理を行う。例えば、ドメインが2つの場合、異常検知部413Aは、2つの異常検知モデルを使用する。他の例において、ドメインが4つの場合、異常検知部413Aは、4つの異常検知モデルを使用する。
【0071】
なお、制御モデルは、異常検知以外の用途に使用されてもよい。一例として、制御装置401Aは、制御モデルを用いて、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合等を行い得る。この場合、制御装置401Aは、各処理に対応する機能部を備える。例えば、制御装置401Aは、制御モデルを用いて製品の嵌合を行う場合、嵌合処理部を備える。
【0072】
異常検知結果表示部402Aは、制御装置401Aと、無線または有線によって接続され、制御装置401Aから受信したメッセージを表示する。当該メッセージは、例えば、工場内の設備の異常、製造または検査している製品の異常、その他の任意の異常を含み得る。ある局面において、異常検知結果表示部402Aは、ディスプレイ、タブレット、スマートフォン等であってもよい。
【0073】
センサ群403Aは、ラインの制御、検品、製品または設備の異常検出等に使用するための信号を出力する。ある局面において、センサ群403Aは、圧力センサ、光センサ、音センサ、接触センサ、ガスセンサ、カメラ、その他任意のセンサを含み得る。
【0074】
サーバ430は、スタイル変換モデル生成部(変換モデル生成部)431と、データ生成部432と、異常検知モデル生成部433と、通信部434と、センサデータDB435とを備える。ある局面において、サーバ430は、1つ以上の装置からなるサーバとして構成されてもよい。他の局面において、サーバ430は、クラウド環境上に構築された仮想サーバまたはインスタンスであってもよい。また、他の局面において、サーバ430は、分散環境上の各ノードが協業することによって実現されてもよい。
【0075】
スタイル変換モデル生成部431は、制御装置401Aから取得した実データを用いて、スタイル変換モデル120を生成する。スタイル変換モデル生成部431の処理は、
図2を参照して説明された機械学習の処理に相当する。スタイル変換モデル生成部431は、必要に応じて、センサデータDB435から、各ドメインのセンサデータ(出力信号)を取得する。
【0076】
データ生成部432は、スタイル変換モデル生成部431によって生成されたスタイル変換モデル120を用いて、第2工場100Bの第2ドメインの疑似データ112を生成する。より具体的には、データ生成部432は、制御装置401Bから取得した第1ドメインの実データ111を、スタイル変換モデル120に入力する。スタイル変換モデル120は、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111から、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成する。データ生成部432の処理は、
図3を参照して説明された、疑似データの生成処理に相当する。データ生成部432は、必要に応じて、センサデータDB435から、各ドメインのセンサデータ(出力信号)を取得する。
【0077】
異常検知モデル生成部433は、制御装置401Bが使用するための制御モデル130B,140Bを生成する。より具体的には、異常検知モデル生成部433は、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111から、第1ドメインに対応する制御モデル130Bを生成する。また、異常検知モデル生成部433は、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112から、第2ドメインに対応する制御モデル140Bを生成する。ある局面において、異常検知モデル生成部433は、Isolation Forest、One Class SVM、Local Outlier Factor(LOF)、MT法等の教師なし学習アルゴリズムを用いて、各制御モデルを生成し得る。
【0078】
通信部434は、制御装置401A,401Bと通信する。通信部434は、制御装置401A,401Bから、各ドメインのデータを受信する。通信部434は、受信したデータ(センサデータまたはセンサの出力信号)をセンサデータDB435に格納する。また、通信部434は、制御装置401A,401Bに、制御モデルを送信する。ある局面において、通信部434は、有線LAN(Local Area Network)ポートおよびWi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)モジュール等によって実現されてもよい。他の局面において、通信部434は、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)等の通信プロトコルを用いてデータを送受信してもよい。
【0079】
センサデータDB435は、各ドメインのデータを格納する。各ドメインのデータは、工場別に区別されてセンサデータDB435に格納される。
【0080】
(b.システムの動作)
制御装置401A、制御装置401Bおよびサーバ430の動作の流れについて説明する。まず、サーバ430は、制御装置401Aから、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101を受信する。また、サーバ430は、制御装置401Aから、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102を受信する。
【0081】
次に、サーバ430は、制御装置401Aから受信した各ドメインのデータをセンサデータDB435に格納する。また、サーバ430は、制御装置401Aから受信した各ドメインのデータに基づいて、第1ドメインのデータを第2ドメインのデータに変換するためのスタイル変換モデル120を生成する。
【0082】
次に、サーバ430は、制御装置401Bから、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111を受信する。
【0083】
次に、サーバ430は、制御装置401Bから受信した第1ドメインのデータをセンサデータDB435に格納する。また、サーバ430は、制御装置401Bから受信した第1ドメインの実データ111をスタイル変換モデル120に入力し、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を生成する。
【0084】
次に、サーバ430は、制御装置401Aが使用するための各制御モデルを生成する。より具体的には、サーバ430は、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101に基づいて、第1ドメインに対応する制御モデル130Aを生成する。サーバ430は、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102に基づいて、第2ドメインに対応する制御モデル140Aを生成する。
【0085】
次に、サーバ430は、制御装置401Bが使用するための各制御モデルを生成する。より具体的には、サーバ430は、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111に基づいて、第2ドメインに対応する制御モデル130Bを生成する。サーバ430は、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112に基づいて、第2ドメインに対応する制御モデル140Bを生成する。
【0086】
次に、サーバ430は、制御装置401A,401Bに制御モデルを送信する。より具体的には、サーバ430は、制御装置401Aに、制御モデル130A,140Aを送信する。制御装置401A(異常検知部413A)は、制御モデル130A,140Aを用いて異常検知を行う。同様に、サーバ430は、制御装置401Bに、制御モデル130B,140Bを送信する。制御装置401B(異常検知部413B)は、制御モデル130B,140Bを用いて異常検知を行う。
【0087】
なお、上記の動作は、一例であり、システム40は、各処理の実行順序を任意に入れ替えてもよい。例えば、制御モデル130A,140Aの生成は、制御装置401Aから各ドメインのデータを取得した段階で可能である。そのため、システム40は、制御装置401Aから各ドメインのデータを取得した時点で、制御モデル130A,140Aを生成してもよい。また、第1工場100Aおよび第2工場100Bの稼働開始時期は異なるため、上記の一連の処理の一部は、第1工場100Aの稼働中に実行されて、上記の一連の処理の残りの一部は、第2工場100Bの立ち上げ時に実行されてもよい。
【0088】
図5は、本実施の形態に従うシステム50の構成の一例を示す図である。システム50は、システム40と異なり、制御装置501A,501Bが、異常検知モデル生成部433を備える。
【0089】
システム50は、サーバ430の代わりにサーバ530を、制御装置401A,401Bの代わりに、制御装置501A,501Bを備える。制御装置501A,501Bは、異常検知モデル生成部433を備える。
【0090】
サーバ530は、制御モデルの代わりに、各ドメインのデータを各制御装置に送信し得る。少なくとも、サーバ530は、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112を制御装置501Bに送信する。
【0091】
制御装置501A内の異常検知モデル生成部433は、センサデータDB411A内に格納された、第1ドメインの実データ101と、第2ドメインの実データ102とを用いて、制御モデル130A,140Aを生成する。ある局面において、制御装置501Aは、センサデータを自装置に蓄えずに、サーバ530に送信してもよい。この場合、制御装置501A内の異常検知モデル生成部433は、サーバ530から受信した第1ドメインの実データ101と、第2ドメインの実データ102とを用いて、制御モデル130A,140Aを生成し得る。
【0092】
制御装置501B内の異常検知モデル生成部433は、センサデータDB411B内に格納された、第1ドメインの実データ111と、サーバ530から受信した第2ドメインの疑似データ112とを用いて、制御モデル130B,140Bを生成する。ある局面において、制御装置501Bは、センサデータを自装置に蓄えずに、サーバ530に送信してもよい。この場合、制御装置501B内の異常検知モデル生成部433は、サーバ530から受信した第1ドメインの実データ111と、第2ドメインの疑似データ112とを用いて、制御モデル130B,140Bを生成し得る。
【0093】
図6は、本実施の形態に従うシステム60の構成の一例を示す図である。システム60は、システム40,50と異なり、制御装置601A,601Bが、データ生成部432と、異常検知モデル生成部433とを備える。
【0094】
システム60は、サーバ430の代わりにサーバ630を、制御装置401A,401Bの代わりに、制御装置601A,601Bを備える。制御装置601A,601Bは、データ生成部432と、異常検知モデル生成部433とを備える。
【0095】
サーバ530は、制御モデルおよび学習用データ(実データ101,102,111、および、疑似データ112)の代わりに、スタイル変換モデル120を各制御装置に送信し得る。より具体的には、少なくとも、サーバ530は、スタイル変換モデル120を制御装置501Bに送信する。
【0096】
制御装置501A内の異常検知モデル生成部433は、センサデータDB411A内に格納された、第1ドメインの実データ101と、第2ドメインの実データ102とを用いて、制御モデル130A,140Aを生成する。ある局面において、制御装置501Aは、センサデータを自装置に蓄えずに、サーバ530に送信してもよい。この場合、制御装置501Aは、制御モデル生成のために、サーバ630から、第1ドメインの実データ101と、第2ドメインの実データ102とを受信する。
【0097】
制御装置501B内のデータ生成部432は、サーバ630から受信したスタイル変換モデル120を用いて、第1ドメインの実データ111から、第2ドメインの疑似データ112を生成する。制御装置501B内の異常検知モデル生成部433は、センサデータDB411B内に格納された、第1ドメインの実データ111と、生成した第2ドメインの疑似データ112とを用いて、制御モデル130B,140Bを生成する。ある局面において、制御装置501Bは、センサデータを自装置に蓄えずに、サーバ530に送信してもよい。この場合、制御装置501Bは、制御モデル生成のために、サーバ630から、第1ドメインの実データ111を受信する。
【0098】
<C.応用例>
図7は、他のスタイル変換モデル720の生成手順の例を示す図である。スタイル変換モデル720は、スタイル変換モデル120と異なり、第1工場100Aにおけるあるドメインのデータを、第2工場100Bにおける同一ドメインのデータに変換する。より具体的には、スタイル変換モデル720は、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データの入力を受け付けると、第2工場100Bにおける第1ドメインの疑似データを生成する。また、スタイル変換モデル720は、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データの入力を受け付けると、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データを生成する。以下に、スタイル変換モデル720の生成手順および利用手順について説明する。
【0099】
システム40は、制御装置401Aから、第1工場100Aにおける第1ドメインの実データ101を収集する。また、システム40は、制御装置401Bから、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111を収集する。次に、システム40は、
図2を参照して説明されたアルゴリズムを使用して、実データ101および実データ111による機械学習を行う。当該学習の結果、スタイル変換モデル720が生成される。
【0100】
次に、システム40は、制御装置401Aから、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102を収集する。システム40は、実データ102を、スタイル変換モデル720に入力する。スタイル変換モデル720は、第1工場100Aにおける第2ドメインの実データ102から、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ712を生成する。システム40は、疑似データ712から制御モデル140Bを生成し得る。
【0101】
上記のように、システム40は、スタイル変換モデル720を用いることでも、即座に入手できない第2工場100Bにおける第2ドメインのデータ(制御モデルの生成に必要な学習データ)を取得し得る。なお、システム50,60も、同様にスタイル変換モデル720を生成および利用し得る。
【0102】
<D.フローチャート>
次に、
図8~
図10を参照して、システム40の内部処理について説明する。なお、システム50,60も同様の処理を行い得る。ある局面において、サーバ430および制御装置401A,401Bの各々は、
図8~
図10の少なくとも一部の処理を行うためのプログラムをストレージからメモリに読み込んで、プロセッサにより当該プログラムを実行し得る。他の局面において、当該処理の一部または全部は、当該処理を実行するように構成された回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0103】
図8は、スタイル変換モデル120を生成する処理手順の一例を示す図である。
図8を参照して、システム40が、各ドメインのデータを収集して、スタイル変換モデル120を生成するまでの処理手順について説明する。
【0104】
ステップS810において、システム40は、既知環境で元ドメインのデータと、目標ドメインのデータとを収集する。
図1を例に説明すると、既知環境とは、既に稼働している第1工場100Aに相当する。元ドメインは、スタイル変換モデル120に入力されるデータのドメインであり、第1ドメインに相当する。目標ドメインは、スタイル変換モデル120が出力するデータのドメインであり、第2ドメインに相当する。すなわち、本ステップにおいて、システム40は、第1工場100Aから、第1ドメインの実データ101と、第2ドメインの実データ102とを収集する。
【0105】
ステップS820において、システム40は、データの前処理を行う。前処理は、機械学習エンジンに入力するデータを学習に適したデータに加工する処理である。システム40は、既知の前処理技術を使用して、各ドメインのデータの前処理を行い得る。
【0106】
ステップS830において、システム40は、スタイル変換モデル120の学習を行う。本ステップの処理は、
図2を参照して説明された処理に相当する。
【0107】
図9は、第2工場100Bにおいて使用する制御モデル130B,140Bを生成する処理手順の一例を示す図である。
図9を参照して、システム40が、新規環境(新しく立ち上げる工場)で使用する制御モデルを生成して、当該制御モデルの使用を開始するまでの処理手順について説明する。
【0108】
ステップS910において、システム40は、新規環境で元ドメインのデータを収集する。
図1を例に説明すると、新規環境とは、新しく立ち上げる第2工場100Bに相当する。元ドメインは、スタイル変換モデル120に入力されるデータのドメインであり、新規環境の元ドメインは、第2工場100Bにおける第1ドメインに相当する。すなわち、本ステップにおいて、システム40は、第2工場100Bから、第1ドメインの実データ111を収集する。
【0109】
ステップS920において、システム40は、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111の前処理を行う。システム40は、既知の前処理技術を使用して、第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111の前処理を行い得る。
【0110】
ステップS930において、システム40は、スタイル変換モデル120に、新規環境の元ドメインのデータ(第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111)を入力する。
【0111】
ステップS940において、システム40は、スタイル変換モデル120から、新規環境の目標ドメインのデータ(第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112)を取得する。
【0112】
ステップS950において、システム40は、生成した新規環境の目標ドメインのデータ(第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112)から異常検知モデル(制御モデル140B)を生成する。ある局面において、システム40は、異常検知モデルの代わりに、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合等の制御モデルを生成してもよい。なお、システム40は、新規環境の元ドメインのデータ(第2工場100Bにおける第1ドメインの実データ111)から、もう一つの異常検知モデル(制御モデル130B)も生成し得る。
【0113】
ステップS960において、システム40は、異常検知の閾値を設定する。ある局面において、本ステップの処理は、異常検知部413Bに制御モデル140Bをセットする処理であってもよい。この場合、制御モデル130B,140Bは、内包する閾値に基づく判定結果を出力し得る。他の局面において、本ステップの処理は、制御モデル130B,140Bの出力値が異常であるか否かの判定のための閾値を設定する処理であってもよい。この場合、システム40は、当該閾値によって、制御モデル130B,140Bの出力値が異常であるか否かを判定し得る。異常検知部413Bは、制御モデル140Bを用いて異常検知処理を行い得る。異常検知処理は、例えば、工場内の設備の異常であってもよいし、工場内で製造または検品される製品の異常であってもよい。なお、システム40は、異常検知部413Bに、制御モデル130Bもセットする。
【0114】
図10は、新規環境における異常検知の処理手順の一例を示す図である。
図10を参照して、新規環境(第2工場100B)において、第2工場100Bにおける第2ドメインの疑似データ112から生成された制御モデル140Bを用いた異常検知を行う処理手順について説明する。
【0115】
ステップS1010において、システム40は、新規環境の目標ドメインでデータを収集する。
図4を例に説明すると、システム40は、制御装置401Bから、第2ドメインの実データを収集する。本ステップの処理は、稼働中の第2工場100Bにおいて実行される。
【0116】
ステップS1020において、システム40は、取得したデータの前処理を行う。システム40は、既知の前処理技術を使用して、第2工場100Bにおける第2ドメインの実データの前処理を行い得る。
【0117】
ステップS1030において、システム40は、生成した異常検知モデルを用いて、データが正常であるか否かを推論する。
図4を例に説明すると、システム40(異常検知部413B)は、制御モデル140Bを用いて、第2ドメインの実データが正常であるか否かを推論する。
【0118】
ステップS1040において、システム40は、推論結果が閾値を超えているか否かを判定する。ある局面において、システム40は、異常検知モデルが出力した推論結果(値)が予め定められた閾値を超えているか否かを判定してもよい。他の局面において、システム40は、異常検知モデルから、推論結果が予め定められた閾値を超えているか否かを示す出力結果を受け取ってもよい。
【0119】
システム40は、推論結果が閾値を超えていると判定した場合(ステップS1040にてYES)、制御をステップS1050に移す。そうでない場合(ステップS1040にてNO)、システム40は、制御をステップS1030に移す。
【0120】
ステップS1050において、システム40は、異常通知を行う。例えば、第2工場100Bにおいて異常が検知された場合、システム40は、異常検知結果表示部402Bに異常発生を示す通知を出力し得る。また、システム40は、管理者の端末に異常発生を示す通知を送信してもよい。
【0121】
以上説明した通り、本実施の形態に従うシステム40,50,60は、既知環境(既に稼働してる第1工場100A)における各ドメイン(夏ドメイン、冬ドメイン等)の実データに基づいて、スタイル変換モデル120を生成する。そして、システム40,50,60は、スタイル変換モデル120に、新規環境(これから稼働を開始する第2工場100B)における一部のドメイン(夏ドメイン等)の実データを入力することで、新規環境の一部のドメイン(冬ドメイン等)の疑似データを生成し得る。これらの一連の処理により、システム40,50,60は、新規環境(第2工場100B)の稼働開始に必要な各ドメインのデータを迅速に用意し得る。
【0122】
<E.付記>
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
[構成1]
第1工場(100A)における第1ドメインの実データ(101)と、上記第1工場(100A)における第2ドメインの実データ(102)とを学習データとして、上記第1ドメインの実データから上記第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成する変換モデル生成部(431)と、
第2工場(100B)における上記第1ドメインの実データ(111)を上記学習済モデルに入力し、上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を生成するデータ生成部(432)と、
上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を学習データとして、上記第2工場(100B)で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部(433)とを備える、システム(40,50,60)。
[構成2]
第1工場(100A)における第1ドメインの実データ(101)と、第2工場(100B)における上記第1ドメインの実データ(111)とを学習データとして、上記第1工場(100A)におけるドメインの実データから、上記第2工場(100B)における上記ドメインと同一ドメインの疑似データを生成するように学習した学習済モデルを生成する変換モデル生成部(431)と、
上記第1工場(100A)における第2ドメインの実データ(102)を上記学習済モデルに入力し、上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を生成するデータ生成部(432)と、
上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を学習データとして、上記第2工場(100B)で使用される制御モデルを生成する制御モデル生成部(433)とを備える、システム(40,50,60)。
[構成3]
上記第1工場(100A)にある第1制御装置から上記第1ドメインの実データおよび上記第2ドメインの実データを収集し、上記第2工場(100B)にある第2制御装置から上記第1ドメインの実データを収集する通信部(434)をさらに備える、構成1または2に記載のシステム(40,50,60)。
[構成4]
上記制御モデル生成部(433)は、上記第2工場(100B)における上記第1ドメインの実データ(111)から、上記第2工場(100B)で使用される他の制御モデルを生成し、
上記通信部(434)は、上記第2制御装置に、上記第2工場(100B)で使用される制御モデルと、上記第2工場(100B)で使用される他の制御モデルとを送信する、構成3に記載のシステム(40,50,60)。
[構成5]
上記第1ドメインおよび上記第2ドメインは、季節、期間、時間帯、温度、湿度、日照時間の長さ、紫外線強度、明度、または、これらの組み合わせを含む、構成1または2に記載のシステム(40,50,60)。
[構成6]
上記第1ドメインのデータおよび上記第2ドメインのデータは、センサの出力信号である、構成1または2に記載のシステム(40,50,60)。
[構成7]
上記制御モデルは、設備の異常検知、製品の異常検知、製品の製造、製品のピッキング、製品の嵌合のいずれかを行うためのモデルである、構成1または2に記載のシステム(40,50,60)。
[構成8]
コンピュータにより実行される方法であって、
第1工場(100A)における第1ドメインの実データ(101)と、上記第1工場(100A)における第2ドメインの実データ(102)とを学習データとして、上記第1ドメインの実データから上記第2ドメインの疑似データを生成する学習済モデルを生成するステップと、
第2工場(100B)における上記第1ドメインの実データ(111)を上記学習済モデルに入力し、上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を生成するステップと、
上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を学習データとして、上記第2工場(100B)で使用される制御モデルを生成するステップとを備える、方法。
[構成9]
コンピュータにより実行されるプログラムであって、
第1工場(100A)における第1ドメインの実データ(101)と、第2工場(100B)における上記第1ドメインの実データ(111)とを学習データとして、上記第1工場(100A)におけるドメインの実データから、上記第2工場(100B)における上記ドメインと同一ドメインの疑似データを生成するように学習した学習済モデルを生成するステップと、
上記第1工場(100A)における第2ドメインの実データ(102)を上記学習済モデルに入力し、上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を生成するステップと、
上記第2工場(100B)における上記第2ドメインの疑似データ(112)を学習データとして、上記第2工場(100B)で使用される制御モデルを生成するステップとを前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【0123】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された開示内容は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。
【符号の説明】
【0124】
40,50,60 システム、100A 第1工場、100B 第2工場、101,102,111 実データ、112,712 疑似データ、120,720 スタイル変換モデル、120A,120B,401A,401B,501A,501B,601A,601B 制御装置、130A,130B,140A,140B 制御モデル、210A,210B,A210 波形生成部、212A,212B 波形識別部、402A,402B 異常検知結果表示部、403A,403B センサ群、410A,410B 制御プログラム、411A,411B,435 センサデータDB、412A,412B データ収集部、413A,413B 異常検知部、430,530,630 サーバ、431 スタイル変換モデル生成部、432 データ生成部、433 異常検知モデル生成部、434 通信部。