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特開2024-62744制御装置、産業機械システム、コンピュータ、ファイル転送方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062744
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】制御装置、産業機械システム、コンピュータ、ファイル転送方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240501BHJP
   B29C 45/03 20060101ALI20240501BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240501BHJP
   G06F 21/64 20130101ALI20240501BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/03
G05B23/02 Z
G06F21/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170793
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小末 将吾
【テーマコード(参考)】
3C223
4F206
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF18
3C223GG01
3C223HH02
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP27
4F206JP28
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】転送対象のファイルの選択ミス、改ざん、破損の有無等を検証し、所要の産業機械制御用ファイルを、外部のコンピュータから誤りなく産業機械の制御装置に転送して保存することができる制御装置を提供する。
【解決手段】産業機械の制御装置であって、産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、ファイルのファイル名及びファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体からハッシュファイルを取得する取得部と、制御部と、記憶部とを備え、制御部は、ハッシュファイルに含まれるファイル名及びハッシュ値に基づいて、転送対象のファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、同一性が確認できた場合、コンピュータ又は可搬型記録媒体が記憶するファイルを記憶部に保存する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の制御装置であって、
前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得する取得部と、
制御部と、
記憶部と
を備え、
前記制御部は、
前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、
前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記記憶部に保存する
制御装置。
【請求項2】
前記ハッシュファイルに電子署名が付与されており、
前記制御部は、
前記電子署名に基づいて、電子署名時の前記ハッシュファイルと、署名検証時の前記ハッシュファイルとの同一性を検証し、
前記ハッシュファイルの同一性、並びに前記ファイル名及びハッシュ値の同一性が確認できた場合、前記ファイルを前記記憶部に保存する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
転送対象の前記ファイルのファイルサイズ、ファイル名の文字数、又は拡張子の種類に基づいて、前記ファイルが前記産業機械の制御に係るファイルであるか否かを検証し、
転送対象の前記ファイルが前記産業機械の制御に係るファイルであり、前記ファイルの前記ファイル名及びハッシュ値の同一性が確認できた場合、前記ファイルを前記記憶部に保存する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
検証に失敗した前記ファイルのファイル名を表示する表示部を備える
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記産業機械は射出成形機であり、
前記ファイルは、
前記射出成形機による射出成形工程の動作を記述したデータ、前記制御装置の外部と通信するための命令データ、及び前記射出成形機に係る画面表示の命令データの少なくとも一つを含む
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ファイルは、
金型の型閉動作、金型の型締動作、射出ユニットの前進動作、射出動作、冷却動作、計量動作、射出ユニットの後退動作、カン型の型開動作、及び成形品のエジェクト動作の少なくとも一つを含む前記射出成形機の動作シーケンスを記述したデータを含む
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記射出成形機は、ヒータを有する加熱シリンダを含み、
前記ファイルは、
前記ヒータの動作を制御するソフトを含む
請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記射出成形機は、加熱シリンダと、該加熱シリンダに成形材料を投入するホッパと、前記加熱シリンダ及び前記ホッパの連結部を冷却する冷却機構とを備え、
前記ファイルは、
前記冷却機構の動作を制御するソフトを含む
請求項5に記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の前記産業機械の前記制御装置と、
前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータと
を備え、
前記コンピュータは、
転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する演算部を備える
産業機械システム。
【請求項10】
前記コンピュータは、
転送対象の前記ファイル及び前記ハッシュファイルを前記可搬型記録媒体に保存する
請求項9に記載の産業機械システム。
【請求項11】
産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータであって、
転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する演算部を備える
コンピュータ。
【請求項12】
産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得し、
前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、
前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記産業機械の記憶部に保存する
ファイル転送方法。
【請求項13】
産業機械の制御装置に、
前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得し、
前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、
前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記産業機械の記憶部に保存する
処理を前記制御装置に実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、産業機械システム、コンピュータ、ファイル転送方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
押出機、射出成形機、NC工作機械等の産業機械の動作を制御する制御装置に、外部のコンピュータから所要の産業機械制御用ファイルを転送して保存することがある。産業機械が新たに導入された際、産業機械に新機能を追加するような場合に、産業機械制御用ファイルの転送が行われる。ファイルの転送には、例えば可搬型記録媒体が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-244570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、産業機械制御用ファイルの転送作業の過程で、ファイルの操作ミス、悪意のある第三者、コンピュータウィルスにより予期せぬファイルが可搬型記録媒体に追加されることがある。また、産業機械制御用ファイルが破損したり、改ざんされたりする可能性がある。可搬型記録媒体を用いない場合であっても、同様の問題が生じ得る。問題のあるファイルが制御装置に保存されると、産業機械の誤動作を招く恐れがある。
【0005】
本開示の目的は、転送対象のファイルの選択ミス、改ざん、破損の有無等を検証し、所要の産業機械制御用ファイルを、誤りなく産業機械の制御装置に転送して保存することができる制御装置、産業機械システム、コンピュータ、ファイル転送方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る制御装置は、産業機械の制御装置であって、前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得する取得部と、制御部と、記憶部とを備え、前記制御部は、前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記記憶部に保存する。
【0007】
本開示の一側面に係る産業機械システムは、前記産業機械の前記制御装置と、前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータとを備え、前記コンピュータは、転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する演算部を備える。
【0008】
本開示の一側面に係るコンピュータは、産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータであって、転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する演算部を備える。
【0009】
本開示の一側面に係るファイル転送方法は、産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得し、前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記産業機械の記憶部に保存する。
【0010】
本開示の一側面に係る制御プログラムは、産業機械の制御装置に、前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得し、前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記産業機械の記憶部に保存する処理を前記制御装置に実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、転送対象のファイルの選択ミス、改ざん、破損の有無等を検証し、所要の産業機械制御用ファイルを、誤りなく産業機械の制御装置に転送して保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態1に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。
図2】本実施形態1に係るメンテナンス用コンピュータの構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態1に係る産業装置の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本実施形態1に係るメンテナンス用コンピュータの処理手順を示すフローチャートである。
図5】本実施形態1に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
図6】ハッシュファイルに対応した産業機械と、ハッシュファイルに非対応の産業機械が混在した状態を示す模式図である。
図7】本実施形態2に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。
図8】本実施形態2に係る制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
図9】実施形態3に係る産業装置の制御装置の構成例を示すブロック図である。
図10】異常定義ファイルの概念図である。
図11】実施形態3に係る産業装置の制御装置の構成例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態4に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係る制御装置、産業機械システム、コンピュータ、ファイル転送方法及び制御プログラムを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る産業機械システムは、産業機械1と、当該産業機械1のメンテナンス用コンピュータ3とを備える。
【0015】
<産業機械システムの概要>
産業機械1は、産業機器本体10と、制御装置2とを備える。産業機械1は、例えば、射出成形機、押出機、NC工作機械である。メンテナンス用コンピュータ3は、産業機械1の外部のコンピュータであり、複数の産業機械制御用ファイルを記憶している。産業機械制御用ファイルは、産業機械1の制御に係るデータを含む。産業機械制御用ファイルは、例えば、新規導入された産業機械1に転送される基本動作プログラム、制御条件設定データ、産業機械1に機能を追加するためのプログラム等が含まれる。産業機械1の動作に関わるファイルであれば、産業機械制御用ファイルの内容は特に限定されるものでは無い。
【0016】
ところで、産業機械1においては、その動作に関する産業機械制御用ファイルをメンテナンス用コンピュータ3から制御装置2に転送するために、可搬型記録媒体4が用いられる場合がある。転送作業時の操作ミス、悪意ある第三者、コンピュータウィルスにより予期せぬファイルが可搬型記録媒体4に追加されたり、既存の産業機械制御用ファイルが改ざんされたりする可能性がある。このようなファイルを制御装置2に転送してしまうと、産業機械1の誤動作を招く恐れがある。コンピュータウィルスのような悪意のあるファイルで無くても、誤って大容量のファイルが制御装置2に転送及び保存され、正規の動作に支障が生ずるおそれもある。
【0017】
本実施形態1に係る産業機械システムは、このような技術的課題を解決するものである。メンテナンス用コンピュータ3は、転送対象の産業機械制御用ファイルを可搬型記録媒体4にコピーする際、産業機械制御用ファイルを検証するためのハッシュファイルを作成し、産業機械制御用ファイルと共にハッシュファイルを可搬型記録媒体4に保存する。ここで、ハッシュファイルは、ファイル名、ハッシュ値を含むものである。ファイル名は拡張子を含んでいてもよい。可搬型記録媒体4が産業機械1の制御装置2に接続されると、制御装置2は、ハッシュファイルを参照し、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイルを検証する。例えば、制御装置2は、産業機械制御用ファイルが破損していないか、改ざんされていないか、誤ったファイルが保存されていないか等を検証する。検証の結果、問題が無ければ、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイルを、制御装置2に保存する。
【0018】
このようにして、産業機械システムは上記技術的課題を解決することが可能になる。以下、産業機械システムの構成及び処理の詳細を説明する。
【0019】
<メンテナンス用コンピュータ>
図2は、本実施形態1に係るメンテナンス用コンピュータ3の構成例を示すブロック図である。メンテナンス用コンピュータ3は、演算部31、記憶部32、操作部33、表示ディスプレイ34及びファイル入出力部35を備える。記憶部32、操作部33、表示ディスプレイ34及びファイル入出力部35は、演算部31に接続されている。
【0020】
なお、メンテナンス用コンピュータ3は、メンテナンス専用機である必要は無く、汎用のコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット端末等、任意のコンピュータを用いることができる。また、メンテナンス用コンピュータ3は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0021】
演算部31は、プロセッサであり、CPU、マルチコアCPU等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの内部記憶装置、I/O端子などを有する。演算部31は、後述の記憶部32が記憶するコンピュータプログラム(図2中、「PG」)P1を実行することにより、本実施形態1に係るメンテナンス用コンピュータ3として機能する。
【0022】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、本実施形態1に係る産業機械制御用ファイルの転送処理を演算部31に実行させるためのコンピュータプログラムP1を記憶している。また、記憶部32は、産業機械1の制御に係るデータを含む複数の産業機械制御用ファイルを記憶している。
【0023】
コンピュータプログラムP1等は、記録媒体30にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部32は、図示しない読出装置によって記録媒体30から読み出されたコンピュータプログラムP1等を記憶する。記録媒体30はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体30はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体30は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバからコンピュータプログラムP1等をダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。
【0024】
操作部33は、キーボード、マウス等の入力機器である。表示ディスプレイ34は、液晶パネル、有機ELディスプレイ、電子ペーパ、プラズマディスプレイ等である。
【0025】
ファイル入出力部35は、可搬型記録媒体4が接続されるインタフェースである。演算部31は、可搬型記録媒体4をマウントし、可搬型記録媒体4に産業機械制御用ファイル等をコピーして保存することができる。
【0026】
<産業機械1>
図3は、本実施形態1に係る産業装置の制御装置2の構成例を示すブロック図である。制御装置2は、産業機器本体10の運転制御を行うコンピュータであり、制御部21、記憶部22、操作パネル23、制御信号出力部24、センサ信号入力部25、及びファイル入出力部(取得部)26を備える。
【0027】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの内部記憶装置、I/O端子などを有する。制御部21は、記憶部22が記憶する制御プログラム(図3中、「制御PG」)P2、メンテナンス用コンピュータ3から転送して保存された産業機械制御用ファイルを読み出して実行することにより、産業機械1の運転制御を行う。また、制御部21は、本実施形態1に係る産業機械制御用ファイルの転送処理を実行する。
【0028】
記憶部22は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部22は、産業機械1の運転制御を行い、また、本実施形態1に係る産業機械制御用ファイルの転送処理を制御部21に実行させるための制御プログラムP2を記憶している。また、記憶部22は、メンテナンス用コンピュータ3から可搬型記録媒体4を介して転送された産業機械制御用ファイルを保存する。
【0029】
制御プログラムP2等は、記録媒体20にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部22は、図示しない読出装置によって記録媒体20から読み出された制御プログラムP2等を記憶する。記録媒体20はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体20はCD-ROM、DVD-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体20は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバから制御プログラムP2等をダウンロードし、記憶部22に記憶させてもよい。
【0030】
操作パネル23は、産業機械1の運転条件などを設定し、産業機械1の動作を操作するためのインタフェースである。操作パネル23は、表示パネル(表示部)23aと、入力装置23bとを備える。表示パネル23aは、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの表示装置であり、制御部21の制御に従って、産業機械1の運転条件の設定を受け付けるための受付画面を表示したり、産業機械1の状態を表示したりする。入力装置23bは、産業機械1の運転条件を入力するための装置であり、操作ボタン、タッチパネルなどを有する。入力装置23bは受け付けた運転条件を示すデータを制御部21に与える。
【0031】
制御信号出力部24は、制御部21の制御に従って産業機械1の動作を制御するための制御信号を産業機械1へ出力する。
【0032】
センサ信号入力部25は、産業機器本体10に設けられた各種センサに接続されており、センサ信号入力部25には、センサ信号が入力する。センサ信号入力部25は、センサ信号のデータを制御部21に与える。
【0033】
ファイル入出力部26は、可搬型記録媒体4が接続されるインタフェースである。制御部21は、可搬型記録媒体4をマウントし、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイル及びハッシュファイルを読み出すことができる。また、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイルをコピーし、記憶部22に保存することができる。
【0034】
<ファイル転送処理手順>
図4は、本実施形態1に係るメンテナンス用コンピュータ3の処理手順を示すフローチャートである。本処理手順についての以下の説明では、図2についても適宜参照する。メンテナンス用コンピュータ3は、記憶部32が記憶する各種ファイルの中から、産業機械1へ転送する産業機械制御用ファイルを選択する(ステップS11)。例えば、メンテナンス用コンピュータ3は、記憶部32が記憶するファイルの一覧を表示ディスプレイ34に表示し、操作部33にて、転送対象である産業機械制御用ファイルの選択を受け付ける。メンテナンス担当者は、操作部33を操作することによって、所要の産業機械制御用ファイルを選択することができる。
【0035】
なお、記憶部32が転送対象である産業機械制御用ファイルのファイル名を記述した一又は複数の転送定義ファイルを記憶している場合、メンテナンス用コンピュータ3は、転送定義ファイルを用いて、産業機械制御用ファイルを選択してもよい。この場合、メンテナンス担当者は、記憶部32が記憶する転送定義ファイルを選択することによって、転送対象の産業機械制御用ファイルを選択することができる。
【0036】
次いで、メンテナンス用コンピュータ3は、選択された産業機械制御用ファイルを可搬型記録媒体4に保存する(ステップS12)。可搬型記録媒体4に保存される産業機械制御用ファイルは平文である。
【0037】
メンテナンス用コンピュータ3の演算部31は、選択された産業機械制御用ファイルのデータに基づいて、ハッシュ値を算出する(ステップS13)。ハッシュ値の生成アルゴリズムは特に限定されるものでは無いが、例えば、MD5、SHA-3、AES等を用いることができる。
【0038】
演算部31は、図2に示すように、産業機械制御用ファイルのファイル名と、ステップS13で算出したハッシュ値とを対応付けて、ハッシュファイルに書き込む(ステップS14)。ファイル名は拡張子を含む。ハッシュファイルは、例えば、CSV(Comma-Separated Values)、SSV(Space-Separated Values)、TSV(Tab-Separated Values)等のファイルである。ハッシュファイルは、産業機械1の制御装置2が当該ハッシュファイルを認識できるよう、所定の規則に従ったファイル名を有するものとする。
【0039】
演算部31は、転送対象の全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を算出したか否かを判定する(ステップS15)。全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を算出していないと判定した場合(ステップS15:NO)、演算部31は、処理をステップS13に戻す。
【0040】
全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を算出したと判定した場合(ステップS15:YES)、演算部31は、ステップS13~ステップS15で作成したハッシュファイルを可搬型記録媒体4に保存し(ステップS16)、処理を終える。
【0041】
図5は、本実施形態1に係る制御装置2の処理手順を示すフローチャートである。本処理手順についての以下の説明では、図3についても適宜参照する。産業機械1の制御装置2のファイル入出力部26に可搬型記録媒体4が接続され、ファイル転送操作が行われた場合、制御部21は以下の処理を実行する。
【0042】
制御部21は、可搬型記録媒体4をマウントし、可搬型記録媒体4が記憶するハッシュファイルを読み出す(ステップS31)。そして、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶するハッシュファイル以外のファイルの中に、ハッシュファイルに記述されていないファイルがあるか否かを判定する(ステップS32)。つまり、制御部21は、ハッシュファイルに記述されているファイル名と異なるファイル名のファイルを可搬型記録媒体4が記憶していないか否かを判定する。
【0043】
ハッシュファイルに記述が無いファイルを可搬型記録媒体4が記憶していると判定した場合(ステップS32:YES)、制御部21は、ファイル転送を中止する(ステップS33)。そして、制御部21は、問題が在ったファイルのファイル名を表示パネル23aに表示し(ステップS34)、処理を終える。この場合、制御部21は、ハッシュファイルに記述が無いファイルのファイル名を表示パネル23aに表示する。つまり、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶しているファイルであって、ハッシュファイルに記述が無いファイルのファイル名を表示パネル23aに表示する。
【0044】
なお、制御部21は、ステップS32において、ハッシュファイルに記述があり、可搬型記録媒体4が記憶していないファイルの有無を判定するように構成してもよい。制御部21は、ハッシュファイルに記述があり、可搬型記録媒体4が記憶していないファイルのファイル名を表示パネル23aに表示してもよい。
【0045】
ハッシュファイルを除き、当該ハッシュファイルに記述が無いファイルを可搬型記録媒体4が記憶していないと判定した場合(ステップS32:NO)、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶している産業機械制御用ファイルのデータに基づいてハッシュ値を算出する(ステップS35)。制御部21によるハッシュ値の生成アルゴリズムは、メンテナンス用コンピュータ3が使用するハッシュ値の生成アルゴリズムと同じアルゴリズムである。ステップS35の処理においては、制御部21は、産業機械制御用ファイルを記憶部32に保存せずにハッシュ値を算出する。産業機械制御用ファイルを記憶部32に保存する処理は、ハッシュ値が検証された際に行われる。なお、キャッシュ処理の関係で、産業機械制御用ファイルのデータが、不揮発性メモリである記憶部22に一時的に記憶されることがあってもよい。
【0046】
制御部21は、ハッシュファイルに記述されている、判定対象の産業機械制御用ファイルのハッシュ値と、ステップS35で算出されたハッシュ値とが一致しているか否かを判定する(ステップS36)。ハッシュ値が一致していないと判定した場合(ステップS36:NO)、制御部21は、ファイル転送を中止する(ステップS33)。そして、制御部21は、問題が合ったファイルのファイル名を表示パネル23aに表示し(ステップS34)、処理を終える。この場合、制御部21は、ハッシュ値が一致しないファイル名を表示パネル23aに表示する。なお、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を検証し、ハッシュ値が一致していないファイルのファイル名を表示パネル23aに一覧表示してもよい。
【0047】
ステップS36においてハッシュ値が一致していると判定した場合(ステップS36:YES)、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を検証したか否かを判定する(ステップS37)。ハッシュ値の検証を終えていない産業機械制御用ファイルがあると判定した場合(ステップS37:NO)、演算部31は処理をステップS35へ戻す。全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を検証したと判定した場合(ステップS37:YES)、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイルを読み出して記憶部22に保存し(ステップS38)、処理を終える。
【0048】
以上の通り、本実施形態1に係る産業機械システム等によれば、転送対象のファイルの選択ミス、改ざん、破損の有無等を検証し、所要の産業機械制御用ファイルを、誤りなく産業機械1の制御装置2に転送して保存することができる。
【0049】
また、問題があったファイルのファイル名を表示パネル23aに表示することができる。例えば、可搬型記録媒体4が記憶しているファイルであって、ハッシュファイルに記述が無いファイルのファイル名を表示パネル23aに表示することができる。また、ハッシュファイルに記述があり、可搬型記録媒体4が記憶していないファイルのファイル名を表示パネル23aに表示することができる。
【0050】
更に、ハッシュファイルを用いた検証機能を有する産業機械1と、当該検証機能を有しない産業機械101が混在している場合であっても、産業機械制御用ファイルを産業機械1、101の制御装置2、102に転送することができる(図6参照)。
【0051】
図6は、ハッシュファイルに対応した産業機械1と、ハッシュファイルに非対応の産業機械101が混在した状態を示す模式図である。工場にハッシュファイルを用いた検証機能を有する産業機械1と、当該検証機能を有しない産業機械101とが混在して設置されており、工場にあるこれらの産業機械1、101に、産業機械制御用ファイルを転送する場合を想定している。
【0052】
図6に示すように、可搬型記録媒体4には、平文の産業機械制御用ファイルと、ハッシュファイルとが保存されている。可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイル自体には、本実施形態1に係る処理によって特段の加工は行われていない。従って、当該可搬型記録媒体4を、ハッシュファイル検証機能を有しない産業機械101の制御装置102に接続して、産業機械制御用ファイルを転送することができる。
【0053】
ただし、この制御装置102は可搬型記録媒体4が記憶するファイルを検証することができない。このため、先に、ハッシュファイルを用いた検証機能を有する産業機械1に産業機械制御用ファイルを転送して問題が無いことを確認した後、当該検証機能を有しない産業機械101へ産業機械制御用ファイルを転送して保存することが望ましい。
【0054】
なお、本実施形態1では、可搬型記録媒体4を用いて産業機械制御用ファイルを転送する例を説明したが、メンテナンス用コンピュータ3から通信網を介して産業機械1の制御部21へファイル転送するように構成してもよい。メンテナンス用コンピュータ3から、制御装置2へのデータ転送の手段は特に限定されるものでは無い。
【0055】
(実施形態2)
実施形態2に係る産業機械システムは、ハッシュファイルに電子署名を付与する点が実施形態1と異なる。産業機械システムのその他の構成は、実施形態1に係る産業機械システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
図7は、本実施形態2に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。本実施形態2に係るメンテナンス用コンピュータ3は、実施形態1と同様にしてハッシュファイルを算出した上、当該ハッシュファイルに電子署名を付与する。具体的には、メンテナンス用コンピュータ3は、ハッシュファイルをハッシュ関数により圧縮したダイジェストデータを算出し、秘密鍵を用いて暗号化することによって電子署名を作成し、ハッシュファイルに当該電子署名を付与する。また、メンテナンス用コンピュータ3は、当該秘密鍵に相当する公開鍵を含む電子証明書をハッシュファイルに添付する。
【0057】
図8は、本実施形態2に係る制御装置2の処理手順を示すフローチャートである。本処理手順についての以下の説明では、図3についても適宜参照する。産業機械1の制御部21は、図5を参照して説明した実施形態1のステップS31~34と同様の処理を実行し、ハッシュファイルに記述が無いファイルの有無を検証する(ステップS51~ステップS54)。
【0058】
次いで、制御部21は、ハッシュファイルに付与された電子署名を用いて署名検証を行い、検証に成功したか否かを判定する(ステップS55)。つまり、制御部21は、電子署名に基づいて、電子署名時のハッシュファイルと、署名検証時のハッシュファイルとが同一であるか否かを判定する。具体的には、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶するハッシュファイルをハッシュ関数により圧縮したダイジェストデータを算出する。一方、制御部21は、認証サーバにアクセスし、電子証明書が正規の認証局から発行されたものであるかを確認し、公開鍵の正当性を確認する。制御部21は、正当性が確認できた電子証明書に含まれる公開鍵を用いて電子署名をダイジェストデータに復号する。制御部21は、ダイジェストデータを比較することによって、ハッシュファイルの真正性を確認することができる。
なお、電子署名及び署名検証の方法は特に限定されるものでは無く、任意の電子署名技術を利用することができる。
【0059】
署名検証に失敗したと判定した場合(ステップS55:NO)、つまり、ハッシュファイルの真正性が否定された場合、制御部21は、ファイル転送を中止する(ステップS53)。そして、制御部21は、問題があったファイルを表示し(ステップS54)、処理を終える。この場合、制御部21は、ハッシュファイルの真正性が否定されたことを表示パネル23aに表示する。
【0060】
署名検証に成功したと判定した場合(ステップS55:YES)、つまり、ハッシュファイルの真正性が確認できた場合、制御部21は、実施形態1におけるステップS35~38と同様の処理を実行することによって、ハッシュ値の同一性を検証の上、産業機械制御用ファイルの保存処理を実行する(ステップS56~ステップS59)。
【0061】
本実施形態2に係る産業機械システムによれば、ハッシュファイルの真正性を確認の上、より確実に転送ファイルの問題の有無を検証することができる。
【0062】
(実施形態3)
実施形態3に係る産業機械システムは、異常定義ファイル22a(図9参照)を用いて、転送対象のファイルが産業機械制御用ファイルであるか否かを検証する点が実施形態1と異なる。産業機械システムのその他の構成は、実施形態1に係る産業機械システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0063】
図9は、実施形態3に係る産業装置の制御装置2の構成例を示すブロック図である。実施形態3に係る制御装置2の記憶部22は異常定義ファイル22aを記憶している。
【0064】
図10は、異常定義ファイル22aの概念図である。異常定義ファイル22aは、産業機械制御用ファイルのファイルサイズの上限値を含む。産業機械1の記憶部22が転送対象のファイルを保存したとしても、当該記憶部22の容量を圧迫することなく、産業機械1が正常に動作できるような産業機械制御用ファイルのサイズが、異常定義ファイル22aに定義されている。産業機械1の正常な動作を妨げるサイズのファイルは、正規の産業機械制御用ファイルで無いと推定できる。
【0065】
異常定義ファイル22aは、ファイル名の文字数上限を含む。産業機械1は記憶部22が記憶するファイルを表示する機能を有する。ただし、表示パネル23aに表示可能なファイル名の文字数には上限が存在し、上限を超えるファイルのファイル名は正常に表示されない。異常定義ファイル22aには、表示パネル23aに表示可能なファイル名の文字数が定義されている。産業機械1の表示パネル23aに正常に表示できないファイルは、正規の産業機械制御用ファイルで無いと推定できる。
【0066】
異常定義ファイル22aは、産業機械制御用ファイルの適否を判定するための拡張子の種類を含む。異常定義ファイル22aには、産業機械制御用ファイルの適正な拡張子又は不適な拡張子の種類が定義されている。なお、産業機械制御用ファイルの適正な拡張子及び不適な拡張子の種類の両方を異常定義ファイル22aに定義してもよい。
【0067】
異常定義ファイル22aに設定される、産業機械制御用ファイルの適否を判定する条件は、ファイルサイズ、ファイル名の文字数、拡張子の種類に限定されるものでは無い。産業機械制御用ファイルの適正な組み合わせ、産業機械制御用ファイルの作成又は保存年月日、ファイル作成者の情報、ファイルの構造等を、異常定義ファイル22aに定義してもよい。
【0068】
図11は、実施形態3に係る産業装置の制御装置2の構成例を示すフローチャートである。本処理手順についての以下の説明では、図3についても適宜参照する。産業機械1の制御部21は、図5を参照して説明した実施形態1のステップS31~ステップS36と同様の処理を実行し、ハッシュファイルに記述が無いファイルの有無、産業機械制御用ファイルのハッシュ値を検証する(ステップS71~ステップS76)。
【0069】
次いで、制御部21は、異常定義ファイル22aを参照し、可搬型記録媒体4が記憶するファイルが異常定義ファイル22aに定義された条件に合致する異常ファイルであるか否かを判定する(ステップS77)。異常ファイルに該当すると判定した場合(ステップS77:YES)、制御部21は、ファイル転送を中止する(ステップS73)。そして、制御部21は、問題があったファイルを表示し(ステップS74)、処理を終える。この場合、制御部21は、異常定義ファイル22aに定義された異常を有するファイルのファイル名及び異常内容を表示パネル23aに表示する。
【0070】
異常ファイルで無いと判定した場合(ステップS77:NO)、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値を検証したか否かを判定する(ステップS78)。ハッシュ値の検証を終えていない産業機械制御用ファイルがあると判定した場合(ステップS78:NO)、演算部31は処理をステップS75へ戻す。全ての産業機械制御用ファイルのハッシュ値等を検証したと判定した場合(ステップS78:YES)、制御部21は、可搬型記録媒体4が記憶する産業機械制御用ファイルを読み出して記憶部22に保存し(ステップS79)、処理を終える。
【0071】
本実施形態3に係る産業機械システムによれば、可搬型記録媒体4が記憶するファイルが、正常な産業機械制御用ファイルであるか否かを異常定義ファイル22aに基づいて判定し、より確実に転送ファイルの問題の有無を検証することができる。
【0072】
(実施形態4)
実施形態4に係る産業機械システムは、産業機械が射出成形機であり、産業機械制御用ファイルの内容が実施形態1~3と異なる。産業機械システムのその他の構成は、実施形態1に係る産業機械システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0073】
図12は、本実施形態4に係る産業機械システムの構成例を示す模式図である。産業機械401は、射出成形機本体410と、制御装置2とを備える。射出成形機本体410は、金型51を型締めする型締装置5と、成形材料を可塑化して射出する射出装置(射出ユニット)6とを備える。
【0074】
型締装置5はベッド50上に固定された固定盤52と、ベッド50上をスライド可能に設けられた型締ハウジング53と、ベッド50上を同様にスライドする可動盤54とを備える。固定盤52と型締ハウジング53は複数本、例えば4本のタイバー55、55、…によって連結されている。可動盤54は、固定盤52と型締ハウジング53の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング53と可動盤54の間には型締機構56が設けられている。
【0075】
型締機構56は、例えばトグル機構から構成されている。なお、型締機構56は、直圧式の型締機構、つまり型締シリンダによって構成してもよい。固定盤52と可動盤54にはそれぞれ固定金型51aと、可動金型51bが設けられ、型締機構56を駆動すると金型51が型開閉されるようになっている。
【0076】
射出装置6は、基台60上に設けられている。射出装置6は、先端部にノズル61aを有する加熱シリンダ61と、当該加熱シリンダ61内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ62とを備える。加熱シリンダ61はヒータ61bを有する。スクリュ62は駆動機構63によって回転方向と軸方向とに駆動する。駆動機構63は、スクリュ62を回転方向に駆動する回転モータと、スクリュ62を軸方向に駆動するモータ等から構成されている。なお、図1に示す駆動機構63は、カバーにより覆われているため内部構成が図示されていない。
【0077】
加熱シリンダ61の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ64が設けられている。ホッパ64から供給される成形材料を受け入れる材料受入部64aには、冷却機構64bが設けられている。材料受入部64aはホッパ64の下部と、加熱シリンダ61とを連通するブロックである。冷却機構64bは、例えば冷却水が通流する流路、冷却水の温度を制御する温度調整回路を有し、成形材料を水冷する。また、射出成形機は、射出装置6を前後方向(図12中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置65を備える。ノズルタッチ装置65を駆動すると、射出装置6が前進して加熱シリンダ61のノズル61aが固定盤52の密着部にタッチするように構成されている。
【0078】
射出成形に際しては、周知の型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、冷却工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程、及びエジェクト工程が順次に行われる。なお、冷却工程及び計量工程は同時的に行われてもよい。型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、冷却工程、計量工程、射出ユニット後退工程、型開工程、及びエジェクト工程における射出成形機の動作を、それぞれ型閉動作、型締動作、前進動作、射出動作、冷却動作、計量動作、後退動作、型開動作、及びエジェクト動作と呼ぶ。
【0079】
実施形態4に係るメンテナンス用コンピュータ3は、産業機械制御用ファイルとして、射出成形機制御用のファイル(以下、制御用ファイルと呼ぶ。)を記憶している。射出成形機の制御に用いられる制御用ファイルは、その実行形態により3つに分類される。以下、制御用ファイルの具体例と、意図しない制御用ファイルが制御装置2へ転送され、記憶部22に書き込まれた場合に生じる影響について説明する。
【0080】
(1)「実行ファイル」
制御用ファイルの第1の例は、制御装置2内で制御部21によって直接実行される実行ファイルである。言い換えると、実行ファイルは、インタプリタを介さずに、制御部21が解釈及び実行することができる命令データを含むファイルである。制御装置2が外部の通信網に接続された通信装置と通信する通信部(通信回路)を有する場合、実行ファイルは、例えば、制御装置2の外部と通信するための命令データを含む通信ソフトである。また、実行ファイルには、画面表示の命令データを含む画面表示ソフトが含まれる。これらのソフトは実行ファイルの一例であり、実行ファイルには、制御部21によって直接実行される命令データを含む任意のソフトが含まれる。
【0081】
実行ファイルを用いることによって、OSで実行可能なあらゆる操作を命令することができる。意図しない実行ファイルが制御装置2の記憶部22に書き込まれると、射出成形機の機械動作が妨害され、射出成形機本体410が破壊される可能性がある。
また、実行ファイルによれば、制御装置2内から外部への通信が可能となる。悪意のある実行ファイルが制御装置2の記憶部22に書き込まれると、制御装置2を踏み台にした外部へのサイバー攻撃が行われる可能性がある。
【0082】
(2)「プログラムファイル」
制御用ファイルの第2の例は、制御装置2に実装されたインタプリタプログラムによって実行されるファイルである。言い換えるとプログラムファイルは、インタプリタによって解釈及び実行される命令データを含むファイルである。プログラムファイルは、例えば、射出成形機の動きを制御するソフト(シーケンスソフト)である。言い換えると、シーケンスソフトは、射出成形工程に係る動作シーケンスを記述したデータを含むファイルである。射出成形機の動きには、上記した型閉動作、型締動作、前進動作、射出動作、冷却動作、計量動作、後退動作、型開動作、及びエジェクト動作等が含まれる。また、プログラムファイルには、ヒータ61bによる加熱シリンダ61の温度を制御するソフト、ホッパ64のから供給される材料を受け入れる材料受入部64aを冷却する冷却機構64bを制御するソフト等がある。
【0083】
プログラムファイルによって、実行可能な操作は、インタプリタプログラムの仕様によって制限されている。しかし、プログラムファイルも、射出成形機本体410の動きを制御するソフトであるため、意図しない実行ファイルが制御装置2の記憶部22に書き込まれると、射出成形機の機械動作が妨害され、射出成形機本体410が破壊される可能性がある。
【0084】
なお、射出成形工程に係る動作シーケンスを記述したプログラムファイルがインタプリタファイルであるものとして説明したが、射出成形工程の動作を命令することができるプログラムであれば、制御用ファイルの実行形式は特に限定されるものでは無い。また、上記したプログラムファイルは一例であり、インタプリタを介して制御部21によって実行されるデータを含む任意のファイルが含まれる。
【0085】
(3)「データファイル」
制御用ファイルの第3の例は、制御装置2が実行した実行ファイルによって読み込まれるデータを含むファイルである。データファイルは、例えば、表示メッセージファイル、通信設定ファイル等である。
【0086】
意図しないデータファイルが制御装置2の記憶部22に書き込まれると、画面表示又は通信に不具合が生じる可能性がある。
【0087】
上記した制御用ファイルのうち、特に影響が深刻なファイルは、実行ファイル及びプログラムファイルである。
本実施形態3に係る産業機械システムによれば、意図しない制御ファイルの転送によって、射出成形機の機械動作が妨害されることを防ぐことができる。また、意図しない制御ファイルの転送によって、射出成形機本体410が破壊されることを防ぐことができる。更に、制御装置2を踏み台にした外部へのサイバー攻撃を防ぐことができる。
【0088】
具体的には、意図しない制御ファイルの転送によって、射出成形機が異常な動作シーケンスで動作して破損することを防ぐことができる。また、意図しない制御ファイルの転送による加熱シリンダ61の異常な温度制御を防ぐことができる。更に、意図しない制御ファイルの転送による冷却機構64bの異常な冷却制御を防ぐことができる。
【0089】
本開示の課題を解決するための手段を付記する。
(付記1)
産業機械の制御装置であって、
前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルと、前記ファイルのファイル名及び前記ファイルのハッシュ値を含むハッシュファイルとを記憶するコンピュータ又は可搬型記録媒体から前記ハッシュファイルを取得する取得部と、
制御部と、
記憶部と
を備え、
前記制御部は、
前記ハッシュファイルに含まれる前記ファイル名及び前記ハッシュ値に基づいて、転送対象の前記ファイルのファイル名及びハッシュ値の同一性を検証し、
前記同一性が確認できた場合、前記コンピュータ又は前記可搬型記録媒体が記憶する前記ファイルを前記記憶部に保存する
制御装置。
(付記2)
前記ハッシュファイルに電子署名が付与されており、
前記制御部は、
前記電子署名に基づいて、電子署名時の前記ハッシュファイルと、署名検証時の前記ハッシュファイルとの同一性を検証し、
前記ハッシュファイルの同一性、並びに前記ファイル名及びハッシュ値の同一性が確認できた場合、前記ファイルを前記記憶部に保存する
付記1に記載の制御装置。
(付記3)
前記制御部は、
転送対象の前記ファイルのファイルサイズ、ファイル名の文字数、又は拡張子の種類に基づいて、前記ファイルが前記産業機械の制御に係るファイルであるか否かを検証し、
転送対象の前記ファイルが前記産業機械の制御に係るファイルであり、前記ファイルの前記ファイル名及びハッシュ値の同一性が確認できた場合、前記ファイルを前記記憶部に保存する
付記1又は付記2に記載の制御装置。
(付記4)
前記制御部は、
検証に失敗した前記ファイルのファイル名を表示する表示部を備える
付記1から付記3のいずれか1つに記載の制御装置。
(付記5)
前記産業機械は射出成形機であり、
前記ファイルは、
前記射出成形機による射出成形工程の動作を記述したデータ、前記制御装置の外部と通信するための命令データ、及び前記射出成形機に係る画面表示の命令データの少なくとも一つを含む
付記1から付記4のいずれか1つに記載の制御装置。
(付記6)
前記ファイルは、
金型の型閉動作、金型の型締動作、射出ユニットの前進動作、射出動作、冷却動作、計量動作、射出ユニットの後退動作、カン型の型開動作、及び成形品のエジェクト動作の少なくとも一つを含む前記射出成形機の動作シーケンスを記述したデータを含む
付記5に記載の制御装置。
(付記7)
前記射出成形機は、ヒータを有する加熱シリンダを含み、
前記ファイルは、
前記ヒータの動作を制御するソフトを含む
付記5又は付記6に記載の制御装置。
(付記8)
前記射出成形機は、加熱シリンダと、該加熱シリンダに成形材料を投入するホッパと、前記加熱シリンダ及び前記ホッパの連結部を冷却する冷却機構とを備え、
前記ファイルは、
前記冷却機構の動作を制御するソフトを含む
付記5から付記7のいずれか1つに記載の制御装置。
(付記9)
付記1から付記8のいずれか1項に記載の前記産業機械の前記制御装置と、
前記産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータと
を備え、
前記コンピュータは、
転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する演算部を備える
産業機械システム。
(付記10)
前記コンピュータは、
転送対象の前記ファイル及び前記ハッシュファイルを前記可搬型記録媒体に保存する
付記9に記載の産業機械システム。
(付記11)
産業機械の制御に係るデータを含むファイルを記憶するコンピュータに、
転送対象のファイルのハッシュ値を算出し、該ファイルのファイル名及び前記ハッシュ値を含むハッシュファイルを作成する処理を実行させるための
コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0090】
1 :産業機械
2 :制御装置
3 :メンテナンス用コンピュータ
4 :可搬型記録媒体
10 :産業機器本体
20 :記録媒体
21 :制御部
22 :記憶部
22a :異常定義ファイル
23 :操作パネル
23a :表示パネル
23b :入力装置
24 :制御信号出力部
25 :センサ信号入力部
26 :ファイル入出力部
30 :記録媒体
31 :演算部
32 :記憶部
33 :操作部
34 :表示ディスプレイ
35 :ファイル入出力部
101 :産業機械
102 :制御装置
P1 :コンピュータプログラム
P2 :制御プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12