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特開2024-62751出力プログラム、出力方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062751
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】出力プログラム、出力方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20240501BHJP
【FI】
G06N99/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170808
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】引間 泰成
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(57)【要約】
【課題】解の選択を支援する。
【解決手段】実施形態の出力プログラムは、取得する処理、フィッティングさせる処理、生成する処理、受け付ける処理及び出力する処理をコンピュータに実行させる。取得する処理は、パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得する。フィッティングさせる処理は、取得したグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせる。生成する処理は、第1、第2のグラフデータそれぞれのベジエ単体上にデータ点を複数生成する。受け付ける処理は、複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付ける。出力する処理は、受け付けた条件に基づいて選択した第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上にデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件に基づいて選択した前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力プログラム。
【請求項2】
前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中の前記条件に対応する領域内のデータ点を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の出力プログラム。
【請求項3】
前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中に前記領域内のデータ点がない場合、前記領域に最も近いデータ点を選択する、
ことを特徴とする請求項2に記載の出力プログラム。
【請求項4】
パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上にデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件をもとに選択された前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする出力方法。
【請求項5】
パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上にデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件をもとに選択された前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、出力プログラム、出力方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機やエンジン等の設計分野では、多目的最適化問題を解いて得られた解(設計候補)をもとに、設計値を選ぶ場合がある。多目的最適化問題は、複数の目的関数を同時に最適化する問題であり、各目的関数について適切なトレードオフ関係を与える最適解は1つに決まらない。このため、多目的最適化問題を解いて得られた解の中から設計値を選ぶ場合には、複数の解を多次元の空間にプロットした場合に得られる最適トレードオフ曲面(パレートフロント)を求めることが目標となる。
【0003】
このように、多目的最適化問題を解いて得られた複数の解からパレートフロントを求める従来技術としては、多次元の空間にプロットした複数の解にベジエ単体モデルをフィッティングするものが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bezier Simplex Fitting: Describing Pareto Fronts of´ Simplicial Problems with Small Samples in Multi-Objective Optimization、インターネット<URL:https://www.aaai.org/ojs/index.php/AAAI/article/view/4069>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術によってベジエ単体モデルをフィッティングすることで、パレートフロント上にある点(評価値)に対応するパレート解を提示することが可能となる。しかしながら、解を提示するにはパレートフロント上の点の全ての評価値をユーザが指定する必要があり、ユーザが望む解の選択は容易なことではないという問題がある。
【0006】
1つの側面では、解の選択を支援できる出力プログラム、出力方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの案では、出力プログラムは、取得する処理と、フィッティングさせる処理と、生成する処理と、受け付ける処理と、出力する処理とをコンピュータに実行させる。取得する処理は、パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得する。フィッティングさせる処理は、取得したグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせる。生成する処理は、第1、第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上にデータ点を複数生成する。受け付ける処理は、複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付ける。出力する処理は、受け付けた条件に基づいて選択した第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する。
【発明の効果】
【0008】
解の選択を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、多目的最適化の結果からの設計候補(解)の選択を説明する説明図である。
図2図2は、パレートフロントの可視化ができていない場合の問題点を説明する説明図である。
図3図3は、パレートフロントの可視化ができている場合を説明する説明図である。
図4図4は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図5図5は、入力情報の一例を説明する説明図である。
図6図6は、パレートフロントが単体的であることを説明する説明図である。
図7図7は、ベジエ単体の一例を説明する説明図である。
図8図8は、パレートフロントへのベジエ単体のフィッティングを説明する説明図である。
図9図9は、フィッティングによるパレートフロントの可視化の一例を説明する説明図である。
図10図10は、ベジエ単体上のデータ点の一例を説明する説明図である。
図11図11は、ユーザによる条件指定の一例を説明する説明図である。
図12図12は、条件指定に対する解の提示の一例を説明する説明図である。
図13図13は、ユーザによる条件指定と解の提示の一例を説明する説明図である。
図14図14は、実施形態にかかる情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図15図15は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる出力プログラム、出力方法および情報処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する出力プログラム、出力方法および情報処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0011】
図1は、多目的最適化の結果からの設計候補(解)の選択を説明する説明図である。図1に示すように、設計分野において、ユーザは、多目的最適化問題を解いて得られたパレートフロント(図中の点線)上の点の中から所望の解を選んで設計値として選択する。図示例では、飛行機設計における設計値の選択を例示しており、ユーザは、図1の右側に示す(揚力の-1倍)と(空気抵抗)の2つの評価値を、最適化計算で得られたパレートフロント上の点から選択する。これにより、ユーザは、図1の左側に示す(翼の厚み)、(翼の長さ)におけるパレート解集合(パレートフロントを与える解全体)の中から特定の設計候補(解)を選ぶことができる。
【0012】
図2は、パレートフロントの可視化ができていない場合の問題点を説明する説明図である。図2に示すように、解を提示するためには、ユーザは、パレートフロント上の点の全ての評価値を指定しなければならない。例えば、目的関数が2つの場合、従来考えられる手法においては、ユーザは、画面表示によって可視化された評価値のパレートフロント上の点を指定するにことにより、指定された点に対応した2つの評価値を指定する。なお、目的関数とは例えば前述した評価値である。ここで、目的関数の数が多数(例えば4つ以上)の場合、ユーザが目視で判断可能な態様でパレートフロントの可視化をすることができず、データ点を直接指定することはできない。また例えば、目的関数の数が3つの場合、3次元表示によるパレートフロントの可視化ができたとしても、画面表示されたパレートフロント上の点をユーザが直接指定する作業は煩雑になるおそれがある。以上のことから、特に目的関数の数が3つ以上の場合において、パレートフロント上の全ての評価値をユーザが直接指定することは困難である。
【0013】
実施形態にかかる情報処理装置は、パレートフロント上の解と、その解に対応する評価値のグラフデータを表現するベジエ単体を構成する。具体的には、実施形態にかかる情報処理装置は、パレートフロント上の解と、その解に対応する評価値のグラフデータにベジエ単体をフィッティングさせる。ここで、ベジエ単体とは、複数の制御点を用いて規定されるベジエ曲線を高次元に一般化したものを意味する。
【0014】
実施形態にかかる情報処理装置は、このようにグラフデータを表現するベジエ単体を構成することによって、指定したパレートフロント上にある点に対応するパレート提示することが可能となる。
【0015】
図3は、パレートフロントの可視化ができている場合を説明する説明図である。図3に示す例では、パレート解集合のグラフデータ(図3の左側)と、評価値のパレートフロントのグラフデータ(図3の右側)にベジエ単体フィッティングが適用済みである。これにより、図3に示すように、実施形態にかかる情報処理装置は、評価値の条件を指定し、その条件を満たす領域に含まれる評価値に対応する解(領域に含まれる評価値がない場合は最も近い評価値に対応する解)を提示できる。なお、「近さ」の指標については、ベクトル間の距離などを表すものであればいずれであってもよい(例えばL2-ノルム等)。
【0016】
図4は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図4に示すように、情報処理装置1は、通信部10、入力部20、表示部30、記憶部40および制御部50を有する。この情報処理装置1としては、例えばPC(Personal Computer)などを適用できる。
【0017】
通信部10は、ネットワークを介して外部装置から各種のデータを受信する。通信部10は、通信装置の一例である。たとえば、通信部10は、後述する入力情報41の一部または全部を、外部装置から受信してもよい。
【0018】
入力部20は、情報処理装置1の制御部50に各種の情報を入力する入力装置である。入力部20は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。たとえば、入力部20は、ユーザからの入力操作により、後述する入力情報41の一部または全部を受け付ける。
【0019】
表示部30は、制御部50から出力される情報を表示する表示装置である。たとえば、表示部30は、情報処理装置1における処理結果などを表示する。
【0020】
記憶部40は、入力情報41および演算情報42を格納する。記憶部40は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0021】
入力情報41は、情報処理装置1への入力に関する情報である。例えば、入力情報41には、多目的最適化問題の計算結果であり、パレートフロント上の複数の解(パレート解集合)と、そのパレート解集合に対応する評価値(パレートフロント)が含まれる。
【0022】
図5は、入力情報41の一例を説明する説明図である。図5に示すように、入力情報41には、x、x、xに関する複数の解41a(パレート解集合)が含まれる。ここで、x、x、xは、例えば飛行機設計における設計値の選択の場合、(翼の厚み)、(翼の長さ)などが該当する。
【0023】
また、入力情報41には、パレート解集合に対応する、f、f、fに関するデータ点42b(パレートフロント)が含まれる。ここで、f、f、fは、例えば飛行機設計における設計値の選択の場合、評価指標となる(揚力の-1倍)、(空気抵抗)などが該当する。
【0024】
演算情報42は、情報処理装置1の演算処理により得られた各種データである。例えば、演算情報42には、入力情報41をもとにフィッティング部52、データ点生成部53等の処理により得られた結果が含まれる。具体的には、演算情報42には、ベジエ単体、ベジエ単体上の複数のデータ点などが含まれる(詳細は後述する)。
【0025】
制御部50は、取得部51と、フィッティング部52と、データ点生成部53と、条件入力部54と、出力部55とを有する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジック等によって実現される。
【0026】
取得部51は、通信部10または入力部20を介して入力される、パレートフロント上の解41aに関する第1のグラフデータと、この解41aに対応する評価値41bに関する第2のグラフデータとを取得する処理部である。
【0027】
具体的には、取得部51は、上述したパレートフロント上の複数の解41a(パレート解集合)と、そのパレート解集合に対応する評価値41b(パレートフロント)とを通信部10また入力部20を介して取得する。ここで、パレートフロント上の複数の解41a(パレート解集合)、そのパレート解集合に対応する評価値41b(パレートフロント)は、例えば遺伝的アルゴリズム等の多目的最適化アルゴリズムを適用することにより求められたものである。取得部51は、取得したデータを入力情報41として記憶部40に格納する。
【0028】
フィッティング部52は、取得部51により取得されたパレートフロント上の複数の解41a、すなわち第1のグラフデータと、解41aそれぞれに対応する評価値41b、すなわち第2のグラフデータとに対して、ベジエ単体をフィッティングさせる処理部である。
【0029】
ここで、現実に現れるパレートフロントは、しばしば単体的である。図6は、パレートフロントが単体的であることを説明する説明図である。
【0030】
図6に示すように、パレートフロントは、曲がった「目的関数の数-1」次元三角形の単体で表現することができる。この場合、一部の目的関数を最適化する問題の解は、三角形の頂点、辺、面、・・・をなす。このような単体的な多目的最適化問題は、飛行機やディーゼルエンジンの設計、施設配置問題、純交換経済、水循環モデルなどの様々な分野で頻出することが知られている。
【0031】
したがって、フィッティング部52は、ベジエ単体を用いることで、上記の三角形の頂点、辺、面、・・・に相当する解の境界を考慮して、パレートフロント上の複数の解41aおよび評価値41bにフィッティングすることが可能である。具体的には、フィッティング部52は、下記(1)式で定義される、次数DのM-1次元ベジエ単体を用いてフィッティングを行う。
【0032】
【数1】
【0033】
(1)式において、b(t)はベジエ単体(写像)に相当する。tはM次元実ベクトルの媒介変数である。(D d)は多項係数である。tはD次の単項式(多重指数)である。pはM次元実ベクトルの制御点である。ΔM-1はM-1次元単体を表す。ベジエ単体の制御点は、次数D及び次元Mによって個数が決定する。
【0034】
図7は、ベジエ単体の一例を説明する説明図である。図7に示すように、網掛け部分のベジエ単体は複数の制御点(p)により規定される。このベジエ単体の制御点(p)は、次数(D)と次元(M)によって個数が決定する。
【0035】
図示例では、D=3、及びM=3のベジエ単体を示している。各制御点p(i,j,k)(図7中の丸印)の添え字は、それぞれ0以上の整数であり、i+j+k=D=3を満たす。特に、p(3,0,0)、p(0,3,0)、p(0,0,3)は、それぞれベジエ単体を示す三角形の頂点に相当する制御点である。図示例におけるベジエ単体のフィッティングでは、それぞれ1番目、2番目、3番目のフィッティング対象(第1、第2のグラフデータ)と一致するように推定する。
【0036】
フィッティング部52は、例えば、帰納的骨格推定法により、各制御点を示す座標(ベクトル値)を推定する。帰納的骨格推定法は、低次元単体(骨格)を規定する制御点から順番に推定する手法であり、一度に調整する制御点の個数がフィッティング対象(第1、第2のグラフデータ)の次元数に依存しない。そのため、帰納的骨格推定法では、高次元単体の近似でも一度に調整する制御点の数を抑制することができる。
【0037】
図8は、パレートフロントへのベジエ単体のフィッティングを説明する説明図である。図8に示すように、フィッティング部52は、まず、頂点を推定する(S1)。具体的には、フィッティング部52は、p(3,0,0)を1番目のフィッティング対象(例えばx、f等)、p(0,3,0)を2番目のフィッティング対象(例えばx、f等)、p(0,0,3)を3番目のフィッティング対象(例えばx、f等)に一致させるように推定する。
【0038】
ついで、フィッティング部52は、辺を推定する(S2)。具体的には、フィッティング部52は、三角形の頂点を示す制御点p(3,0,0)、p(0,3,0)、p(0,0,3)を固定した状態で、三角形の辺の形状を定める制御点(S2の点線部)を推定する。
【0039】
ついで、フィッティング部52は、面を推定する(S3)。具体的には、フィッティング部52は、三角形の頂点及び辺に相当する制御点を固定した状態で、三角形の面の形状を定める制御点(S3の点線部)を推定する。
【0040】
フィッティング部52は、上述した帰納的骨格推定法により、パレート解集合(第1のグラフデータ)と、そのパレート解集合に対応する評価値(第2のグラフデータ)に対してベジエ単体フィッティングを適用する。
【0041】
例えば、
【数2】
を多目的最適化で得られたパレート解の集合とすると、フィッティング部52は、
【数3】
に対するフィッティングを行う。
【0042】
ここで、xは、
【数4】
である。
【0043】
また、fは、
【数5】
である。
【0044】
図9は、フィッティングによるパレートフロントの可視化の一例を説明する説明図である。図9に示すように、フィッティング部52は、パレートフロント上の複数の解41a(第1のグラフデータ)をもとに、各制御点(p)を推定することでベジエ単体42aをフィッティングさせる。同様に、フィッティング部52は、複数の解41aそれぞれに対応する評価値41b(第2のグラフデータ)をもとに、各制御点(p)を推定することでベジエ単体42aをフィッティングさせる。ついで、フィッティング部52は、このようにフィッティングさせたベジエ単体42aを示す情報(複数の制御点の座標値等)を演算情報42に格納する。
【0045】
データ点生成部53は、第1のグラフデータと、第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体42a上にデータ点を複数生成する処理部である。
【0046】
図10は、ベジエ単体42a上のデータ点の一例を説明する説明図である。図10に示すように、データ点生成部53は、複数の制御点(p)で規定されたベジエ単体42a上において、格子状に複数のデータ点42bを生成する。ここで、格子状に生成するデータ点42bの間隔については、ユーザが予め設定してもよい。データ点生成部53は、生成したデータ点42bに関する情報(例えば座標値)を演算情報42に格納する。なお、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体42a上のデータ点42b(図10の左側)は、ベジエ単体42a上の解集合に相当する。
【0047】
条件入力部54は、評価値に対する条件の入力を受け付ける処理部である。具体的には、条件入力部54は、入力部20を介したユーザの入力操作等をもとに、解を提示してほしい評価値の区間(領域)の指定を受け付ける。なお、この条件の指定は、評価値それぞれについての値の範囲を示す指定ということもできる。
【0048】
図11は、ユーザによる条件指定の一例を説明する説明図である。図11に示すように、ユーザは、f、f、fの3つの評価値がある場合、評価値それぞれに関する領域(上限と下限の条件)を指定する(S10)。
【0049】
出力部55は、条件入力部54が受け付けた条件に対応する解を出力する処理部である。具体的には、出力部55は、演算情報42に格納されたデータ点42bに関する情報(例えば座標値)を参照し、第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体42a上のデータ点42bの中から条件入力部54が受け付けた条件に対応する領域に含まれるデータ点を選択する。ここで、出力部55は、条件入力部54が受け付けた条件(領域)に含まれるデータ点42bがない場合、L2-ノルム等のベクトル間の距離を計算し、領域に最も近いデータ点42bを選択する。ついで、出力部55は、選択したデータ点に対応する、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体42a上のデータ点42bで示される解を出力する。
【0050】
より具体的には、出力部55は、2次元または3次元の解および評価値に対応する2次元空間又は3次元空間において、ベジエ単体42aと、演算情報42上のデータ点42bをプロットした可視化画像を生成する。ついで、出力部55は、条件入力部54が受け付けた条件(領域)に対応するデータ点42bで示される解を、他のデータ点42bとは異なる表示態様で表示させる。これにより、情報処理装置1は、ユーザに対してより分かりやすく解を提示できる。
【0051】
図12は、条件指定に対する解の提示の一例を説明する説明図である。図12に示すように、出力部55は、条件入力部54が受け付けた条件(領域)に対応するデータ点42b(解)を点線の領域枠で囲む、または、データ点42b自身の表示態様(太さや濃さ)を他と異なるものとして表示する。これにより、ユーザは、条件指定に対応する解を容易に識別することができる。
【0052】
例えば、評価指標(f、f、f…)、設計変数(x、x、x…)の数が4以上の場合は、2次元または3次元の可視化画像として表示することができなくなる。
【0053】
図13は、条件指定に対する解の提示の一例を説明する説明図である。図13に示すように、評価指標の数がf、f、f、fの4つであり、設計変数の数もx、x、x、xの4つ有るものとする。
【0054】
このような場合、ユーザは、4つの評価指標について上限と下限の条件をそれぞれ設定する。出力部55は、ユーザが指定した条件を満たす評価指標に対応する設計変数(x、x、x…)の値を出力する。
【0055】
なお、出力部55における結果表示パターンには、条件入力部54が受け付けた条件(領域)に含まれるデータ点42b(解)が存在する場合(S11a)と、存在しない場合(S11b)とがある。解が存在する場合(S11a)、出力部55は、対応する解の情報(設計変数の値)を出力する。解が存在しない場合(S11b)、出力部55は、領域に最も近いベジエ単体42a上のデータ点42bの情報(設計変数の値)を出力する。
【0056】
図14は、実施形態にかかる情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。図14に示すように、処理が開始されると、取得部51は、パレート解集合上のデータ点(第1のグラフデータ)と、そのパレート解集合に対応する評価値のグラフデータの入力を受け付ける(S20)。
【0057】
ついで、フィッティング部52は、取得部51により取得されたグラフデータに対してベジエ単体42aをフィッティングさせる(S21)。ついで、データ点生成部53は、ベジエ単体42a上でデータ点42bを格子状に複数生成する(S22)。
【0058】
ついで、条件入力部54は、ユーザが通信部10を介して入力した評価値の条件を受け付ける(S23)。ついで、出力部55は、演算情報42に格納されたデータ点42bに関する情報(例えば座標値)を参照し、受け付けた条件を満たす評価値を持つ解がベジエ単体42a上の解集合上で存在するか否かを判定する(S24)。
【0059】
受け付けた条件を満たす解が存在する場合(S24:Yes)、出力部55は、区間(条件)に含まれる解候補を出力し(S25)、処理を終了する。受け付けた条件を満たす解が存在しない場合(S24:No)、出力部55は、L2-ノルム等のベクトル間の距離を計算し、条件を満たす領域に最も近いベジエ単体42a上の解を出力し(S26)、処理を終了する。
【0060】
以上のように、情報処理装置1は、パレートフロント上の解41aに関する第1のグラフデータと、この解に対応する評価値41bに関する第2のグラフデータとを取得する。情報処理装置1は、取得した第1のグラフデータと、第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体42aをフィッティングさせる。情報処理装置1は、第1のグラフデータと、第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体42a上にデータ点を複数生成する。情報処理装置1は、評価値に対する条件の入力を受け付ける。情報処理装置1は、受け付けた条件に基づいて選択した第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する。
【0061】
これにより、ユーザは、評価値の条件を入力することで、その評価値の条件を満たす解を容易に知ることができる。すなわち、情報処理装置1では、ユーザが望む解の選択が容易となる。このように、情報処理装置1では、ユーザにおける解の選択を支援できる。
【0062】
また、情報処理装置1は、第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体42a上のデータ点の中の条件に対応する領域内のデータ点を選択する。これにより、情報処理装置1では、条件にマッチしたデータ点(評価値)に対応する、第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体42a上のデータ点に示される解を提示できる。このため、ユーザは、入力条件にマッチした評価値に対応する解を容易に確認することができる。
【0063】
また、情報処理装置1は、第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中に条件に対応する領域内のデータ点がない場合、この領域に最も近いデータ点を選択する。これにより、情報処理装置1では、条件により近いデータ点(評価値)に対応する、このため、ユーザは、条件にマッチする評価値に対応する解を容易に確認することができる。このため、ユーザは、入力条件に近い評価値に対応する解を容易に確認することができる。
【0064】
なお、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。また、前述のように、情報処理装置1による解の確認の支援は特に目的関数の数が3つ以上の場合に有効であるが、情報処理装置1による解の確認の支援は目的関数が2つ以下の場合においても適用可能である。
【0065】
また、情報処理装置1の制御部50で行われる取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、条件入力部54および出力部55の各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウエア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。また、情報処理装置1で行われる各種処理機能は、クラウドコンピューティングにより、複数のコンピュータが協働して実行してもよい。
【0066】
ところで、上記の実施形態で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施形態と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータ構成(ハードウエア)の一例を説明する。図15は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【0067】
図15に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203と、スピーカ204とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置205と、各種装置と接続するためのインタフェース装置206と、有線または無線により外部機器と通信接続するための通信装置207とを有する。また、情報処理装置1は、各種情報を一時記憶するRAM208と、ハードディスク装置209とを有する。また、コンピュータ200内の各部(201~209)は、バス210に接続される。
【0068】
ハードディスク装置209には、上記の実施形態で説明した機能構成(例えば取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、条件入力部54および出力部55)における各種の処理を実行するためのプログラム211が記憶される。また、ハードディスク装置209には、プログラム211が参照する各種データ212が記憶される。入力装置202は、例えば、操作者から操作情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、操作者が操作する各種画面を表示する。インタフェース装置206は、例えば印刷装置等が接続される。通信装置207は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークと接続され、通信ネットワークを介した外部機器との間で各種情報をやりとりする。
【0069】
CPU201は、ハードディスク装置209に記憶されたプログラム211を読み出して、RAM208に展開して実行することで、上記の機能構成(例えば取得部51、フィッティング部52、データ点生成部53、条件入力部54および出力部55)に関する各種の処理を行う。なお、プログラム211は、ハードディスク装置209に記憶されていなくてもよい。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD-ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこのプログラム211を記憶させておき、コンピュータ200がこれらからプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。
【0070】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0071】
(付記1)パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上に互いに対応するデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件に基づいて選択した前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする出力プログラム。
【0072】
(付記2)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中の前記条件に対応する領域内のデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記1に記載の出力プログラム。
【0073】
(付記3)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中に前記領域内のデータ点がない場合、前記領域に最も近いデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記2に記載の出力プログラム。
【0074】
(付記4)パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上に互いに対応するデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件をもとに選択された前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする出力方法。
【0075】
(付記5)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中の前記条件に対応する領域内のデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記4に記載の出力方法。
【0076】
(付記6)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中に前記領域内のデータ点がない場合、前記領域に最も近いデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記5に記載の出力方法。
【0077】
(付記7)パレートフロント上の解に関する第1のグラフデータと、当該解に対応する複数の評価値に関する第2のグラフデータとを取得し、
取得した前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれに対してベジエ単体をフィッティングさせ、
前記第1のグラフデータと、前記第2のグラフデータのそれぞれにフィッティングさせたベジエ単体上に互いに対応するデータ点を複数生成し、
前記複数の評価値それぞれの範囲を示す条件の入力を受け付け、
受け付けた前記条件をもとに選択された前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に対応する、前記第1のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点に示される解を出力する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【0078】
(付記8)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中の前記条件に対応する領域内のデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記7に記載の情報処理装置。
【0079】
(付記9)前記出力する処理は、前記第2のグラフデータにフィッティングさせたベジエ単体上のデータ点の中に前記領域内のデータ点がない場合、前記領域に最も近いデータ点を選択する、
ことを特徴とする付記8に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0080】
1…情報処理装置
10…通信部
20…入力部
30…表示部
40…記憶部
41…入力情報
41a…解
41b…評価値
42…演算情報
42a…ベジエ単体
42b…データ点
50…制御部
51…取得部
52…フィッティング部
53…データ点生成部
54…条件入力部
55…出力部
200…コンピュータ
201…CPU
202…入力装置
203…モニタ
204…スピーカ
205…媒体読取装置
206…インタフェース装置
207…通信装置
208…RAM
209…ハードディスク装置
210…バス
211…プログラム
212…各種データ
p…制御点
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