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  • 特開-重機用の足場台 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062757
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】重機用の足場台
(51)【国際特許分類】
   E04G 27/00 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
E04G27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170817
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】512064619
【氏名又は名称】株式会社オトワコーエイ
(71)【出願人】
【識別番号】512256454
【氏名又は名称】KSコンサルタント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】小島 一彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
(57)【要約】
【課題】傾斜面において重機を安定して支持するには、2つのユニットの第1の足場台及び第2の足場台が必要とされていた。傾斜面に沿って重機を更に上方へ走行させてそこで工事を続行するには、第3の足場台が必要になる。使用する足場台の数を抑制する必要がある。
【解決手段】この発明の足場台は、重機の無限軌道や車輪を支持可能な基板部と、該基板部を傾斜面に対して支持する支持部とを備え、該支持部は該基板部から最も離れた支点部と、基板部を水平にしたとき支点部と基板部の前端との間に形成され傾斜面に接地する第1接地部とを備え、基板部は、無限軌道や車輪のホイールベースより長く、重機の重心が支点部より先端側に位置したとき記支点部を中止に揺動して、基板部が水平なるように第1接地部が傾斜面に接地する、足場台。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方上向きの傾斜面で用いられる重機用の足場台であって、
前記重機の無限軌道や車輪を支持可能な基板部と、
該基板部を前記傾斜面に対して支持する支持部と、を備え
該支持部は該基板部から最も離れた支点部と、
前記基板部を水平にしたとき、前記支点部と前記基板部の前端との間に形成され、前記傾斜面に接地する第1接地部とを備え、
前記基板部は、前記無限軌道や前記車輪のホイールベースより長く、前記重機の重心が前記支点部より先端側に位置したとき、前記支点部を中止に傾動して、前記基板部が水平になるように前記第1接地部が前記傾斜面に接地する、足場台。
【請求項2】
前記基板部は、これへの荷重が無負荷のときは前記基板部の後端が前記傾斜面に接して、前記重機の無限軌道や車輪を受入れ可能となり、
前記重機が前記基板部を先端側へ走行し、その重心が前記支点部より前記先端側に位置したとき、前記基板部が傾動して前記基板部が水平となる、請求項1に記載の足場台。
【請求項3】
前記基板部が水平な状態で、前記基板部の先端は前記傾斜面に接している、請求項2に記載の足場台。
【請求項4】
前記支点部と前記基板部の後端との間に第2接地部が備えられ、前記基板部への荷重が無負荷のとき、前記第2接地部は前記傾斜面と平行な面を有する、請求項1に記載の足場台。
【請求項5】
前記支持部に前記基板部の傾きを調整する傾き調整部が備えられる、請求項1に記載の足場台。
【請求項6】
前記支点部に滑り防止部材が備えられる、請求項1に記載の足場台。
【請求項7】
前記基板部が水平になった状態で、前記基板部の後端側を前記傾斜面に対して支持する、補助支持部が更に備えられる、請求項1~6の何れかに記載の足場台。
【請求項8】
前方上向きの傾斜面で用いられる重機の支持方法であって、
前記重機の無限軌道や車輪を支持可能な第1基板部を準備するステップと、この第1基板部は第1支持部により前記傾斜面に支持され、該第1支持部は第1支点部を備え、前記第1基板部は該第1支点部を中心に揺動可能である、
前記第1基板部の後端を前記傾斜面に接した状態でこの後端から前記重機を前方へと走行させる走行ステップと、
前記重機の走行に伴い、前記第1支点部を中心に前記第1基板部を揺動させてその後端を前記傾斜面から離れさせる揺動ステップと、
前記第1基板部が水平になった状態で、前記第1基板部の後端側を補助支持部で支持して前記第1基板部の水平状態を維持する水平維持ステップと、
を含む重機の支持方法。
【請求項9】
第2支点部を備えた第2足場台を準備するステップと、
該第2足場台を吊り上げた前記重機に、該重機の進行方向前方において、該重機に許容される最も遠い位置の前記傾斜面に前記第2支点部を位置させ、前記第2足場台の第2基板部の後端を前記傾斜面に接触させるステップが更に含まれる、請求項8に記載の支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前方上向きの傾斜面で用いられる重機用の足場台に関する。
【背景技術】
【0002】
重機を機能させるためには、重機の無限軌道や車輪の足場が安定していることが前提となる。従って、傾斜面において重機を機能させるには、傾斜面に水平な足場を設置することが求められる。
図1に従来の足場台5a、5bを示す。第1の足場台5aは重機3の無限軌道4を支持する基板部6aと、傾斜面1に接地される接地部7aとを備える。基板部6aと接地部7aとはトラス構造の補強部で補強される。基板部6aと接地部7aとの挟角は傾斜面1の傾斜角度と等しくされ、もって、基板部6aは水平となり、重機3に対して安定した足場となる(基板部の安定支持用途)。
【0003】
第1の足場台5aにおいて基板部6aを水平とするため、その後端(重機の進行方向を前向きとする、この明細書で同じ)は、傾斜面1から離れている。そこで、第2の足場台5bが準備される。この第2の足場台5bを第1の足場台5aへ連結することで、この第2の足場台5bの基板部6bを走行して(基板部の登坂用途)、重機3は第1の足場台5aの基板部6aに乗ることができる。この第2の足場台5bは基板部6b及び接地部7bを備え、足場台5aと合同な構造である。換言すれば、第2の足場台5bを傾斜面1に沿って180度回転させれば、第1の足場台5aと同じものとなる。
【0004】
図1の状態で作業を終えた重機3を傾斜面1に沿って更に上方へ移動させるには次の作業が必要となる。まず、重機3を使って、図示しない第3の足場台(第1の足場台5aと同一構造)を設置して、その基板部を水平で安定した足場台とする。次に、第2の足場台5bを重機3で吊り上げて、既に接地した第3の足場台へ連結する。
この発明に関連する先行文献として、特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6785539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の工事では、図1に示すように、傾斜面において重機を安定して支持するには、2つのユニットの第1の足場台5a及び第2の足場台5bが必要とされていた。傾斜面1に沿って重機3を更に上方へ走行させてそこで工事を続行するには、第3の足場台(第1、第2の足場台と同一構造のもの)が必要になる。換言すれば、3セットの足場台が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、足場台をシーソーのように揺動させれば、1つのユニットで足場台が組めることに気が付いた。
即ち、この発明の第1局面の足場台は次のように規定される。
前方上向きの傾斜で用いられる重機用の足場台であって、
前記重機の無限軌道や車輪を支持可能な基板部と、
該基板部を前記傾斜面に対して支持する支持部と、を備え
該支持部は該基板部から最も離れた支点部と、
前記基板部を水平にしたとき、前記支点部と前記基板部の前端との間に形成され、前記傾斜面に接地する第1接地部とを備え、
前記基板部は、前記無限軌道や前記車輪のホイールベースより長く、前記重機の重心が前記支点部より先端側に位置したとき、前記支点部を中止に揺動して、前記基板部が水平となるように前記第1接地部が前記傾斜面に接地する、足場台。
【0008】
このように規定される足場台によれば、基板部は支点部を中心としてその長さ方向へ揺動可能である。この足場台を傾斜面に接地したとき、基板部は、無負荷状態において、その後端を傾斜面に接地させる。これにより、重機の無限軌道や車輪を基板部へ受け入れることができる。この状態において、基板部の傾斜角度は傾斜面の傾斜角度より大きくなっている。
重機が基板部の前方へ走行し、支点部を通過すると、基板部は揺動して、後端を傾斜面から離れさせかつ前端を傾斜面に近づける。基板部が水平となった状態で基板部の揺動を停止させる。基板部の揺動の停止は第1接地部が傾斜面に接地することによる。基板部の水平状態を安定させるためには、基板部の後端側と傾斜面との間に補助支持部を介在させることが好ましい。
この発明の足場台によれば、基板部が揺動するので、1つの基板部が、重機の登坂用途と重機の安定支持用途の2つの機能を備えるものとなる。よって、1つの基板部を備える1つのセットの足場台のみで、傾斜面において重機に安定した足場を提供できる。
【0009】
上記において、基板部が水平な状態では、基板部の先端は傾斜面に接することが好ましい。重機を更に前方に走行させる際、基板部の先端から傾斜面への円滑な移動が可能になるからである。
【0010】
この発明の足場台において、基板部に重機が乗っていない状態、即ち、基板部が無負荷の状態において、基板部の後端は傾斜面に接地する。この状態の基板部を重機は登坂する。登坂する重機を基板部で支えられるように、支点部と基板部の後端との間に第2接地部を備えることが好ましい。この第2接地部は、基板部が無負荷状態で傾斜面と平行な面を備える。これにより、基板部に対する支持が安定する。この第2接地部は、重機が支点部を通過して基板部が揺動を開始するまで、傾斜面との接地を維持する。
【0011】
揺動可能な基板部を重機が走行する際、急激な揺動は重機に衝撃を与えたり、重機を基板部から脱輪させたりするおそれがある。そこで、支持部に基板部の傾きを調整する調整部を設けることが好ましい。
かかる調整部の構造としてラックアンドピニオンの構造を採用できる。この構造では、支点部側にギア部を設け、この支点部が接する傾斜面側にラック部を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は従来の足場台を示す斜視図である。
図2図2はこの発明の足場台を示す側面図である。
図3図3はこの発明の足場台の動作を説明する図である。
図4図4図2の背面図である。
図5図5はこの発明の足場台の設置工程を示す模式図である。
図6図6は従来の足場台の設置工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2に示すように、この発明の足場台10は支持部11、基板部16及び補助支持部21を備えてなる。
支持部11は基板部16と同じ幅の三角台形の外郭を有し、支点部12、第1接地部17及び第2接地部18を備える。基板部16、第1接地部17及び第2接地部18により側面視で三角形が形成される。この例では、支点部12を頂点とする二等辺三角形であるが、これに限定されるものではなく、支点部12は、基板部16の中央より前端側に位置することもできる。
支点部12は基板部16から最も離れており、基板部16の長さ方向においてその中央若しくは中央より前端側に位置する。これにより、基板部16は無負荷状態において、図3に示すように、その後端を傾斜面1に接触させた状態で安定する。
【0014】
基板部16は重機3が乗り上げたとき変形しない剛性を有する鋼板で構成される。この基板部16は重機3の無限軌道4より長く、これにより、基板部16は重機3に対する登坂用途と安定支持用途を備えることとなる。
第1接地部17及び第2接地部18は、鋼板で形成することができ、基板部16との間にトラス構造の補強材を介在させることができる。
【0015】
第1接地部17において傾斜面1と対向する面と基板部16との挟角は傾斜面1の傾斜角度と等しくする。これにより、第1接地部17を傾斜面1に接地させた状態で、基板部16を水平に安定支持できる。
基板部16の後端側、即ち第2接地部18と傾斜面1との間には補助支持部21を設け、基板部16の水平性をより確実なものとする。
補助支持部21として、この例では柱状部材を採用しているが、その形状や構造は特に限定されるものではない。
【0016】
符号30は下敷き部であり、この下敷き部30には複数の凸部を一列にならべたラック部35が備えられる。足場台10の支点部12には、複数の凸部を仮想円周上にならべたピニオン部33が備えられる。このラック部35とピニオン部33とでラックアンドピニオン部31(傾き調整部)が構成される。
このラックアンドピニオン部31の働きにより、基板部16の揺動が制御される。即ち、ラック部35に対するピニオン部33のかみ合いが維持されるように重機の走行を制限することで、基板部16の急激な揺動を防止できる。
また、ラック部35とピニオン部33とのかみ合いにより、支点部12が傾斜面1の下方側へ滑ることも未然に防止できる。
【0017】
図2の状態で、重機3は安定して足場台10に支持される。
図3は、重機3が足場台10へ乗る直前の状態を示す。
図3の状態で、無負荷状態の基板部16はその後端を傾斜面1に接触させている。この状態で第2接地部18は傾斜面1に接地して、基板部16を支持している。これにより、重機3は安定して基板部16を登坂することができる。なお、この状態において、補助支持部21は使われていない。
基板部16を登坂する重機3の前方への走行が進むにつれ、重機3の重心が支点部12を通過すると、基板部16が揺動し始める。
【0018】
かかる揺動に際し、ラック部35とピニオン部33とがかみ合うので、支点部12が下方に滑ることが防止される。また、ラック部35とピニオン部33とが確実にかみ合うように重機3の走行を調整することで、基板部16の揺動を好適に制御できる。
図2の状態、即ち基板部16が水平となった状態で、補助支持部21を第2接地部18と傾斜面1との間に組付ける。
図4には、図2の状態の背面を示す。
【0019】
図5は、図2の状態を基準として、傾斜面1の更に上側位置で工事を行うため、次の足場台を設置する工程を示す。
図2の状態を示す工程Iにおいて、第2の足場台110が準備されている。この第2の足場台110は重機3の作業半径内に予め置かれているものとする。
図2の状態での工事が終了した重機は、第2の足場台110を吊り上げて、第1の足場台10の前方へ設置する。図5では、第1の足場台10と第2の足場台110との間に間隔があるが、両者を連続させてもよい。工事の効率からいえば、第1の足場台10からより離れた位置に第2の足場台110を設置することが好ましい。重機3の作業半径が第2の足場台110の設置位置を規定する。
図5からわかるように、上側工事の工程を示す図5の工程IIにおいても、1つの足場台(第2の足場台110)のみが用いられる。
【0020】
図6は、従来の足場台を用いた場合の足場台の設置工程を示す。なお、図1と同一の要素には同一の符号が付してある。
図1の状態を示す工程Iにおいて、第3の足場台205が準備されている。この第3の足場台205は重機3の作業半径内に予め置かれているものとする。
図1の状態での工事が終了した重機は、第3の足場台205を吊り上げて、第1の足場台10の前方へ設置する。次に、第2の足場台5bを吊り上げて、第3の足場台205へ連結させる。
重機3の作業半径が第3の足場台205の設置位置を規定する。
図6からわかるように、上側工事の工程を示す図6の工程IIにおいて、2つの足場台(第3の足場台205と第2の足場台5b)が用いられる。よって、図5に示したこの発明の足場台に比べて、足場台の設置に手間がかかることがわかる。
【0021】
この発明は上記の形態の説明や図面に限定されるものではなく、当業者が理解できる範囲で任意の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 傾斜面
3 重機
4 無限軌道
10 足場台
11 支持部
12 支点部
16 基板部
17 第1接地部
18 第2接地部
図1
図2
図3
図4
図5
図6