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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024062761
(43)【公開日】2024-05-10
(54)【発明の名称】波長変換材料回収品の取得方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240501BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240501BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240501BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240501BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20240501BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G02B5/20
G09F9/00 338
H01L33/50
C22B7/00 A
C22B3/22
C22B1/00 601
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170824
(22)【出願日】2022-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 元嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(72)【発明者】
【氏名】今吉 孝二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】山岸 温紗
【テーマコード(参考)】
2H148
4K001
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA07
4K001AA02
4K001AA23
4K001AA32
4K001AA36
4K001AA38
4K001BA22
4K001CA05
4K001DB16
5F142BA32
5F142CB23
5F142CB24
5F142CD02
5F142CE03
5F142CE13
5F142CG03
5F142DA13
5F142DB20
5G435AA17
5G435BB04
5G435FF11
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】波長変換材料の再生利用を可能とする。
【解決手段】波長変換材料回収品の取得方法は、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光後に、前記感光層をスプレー現像することと、前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる前記波長変換材料を回収することとを含む。波長変換材料回収品は、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光及び現像後に、使用済みの現像液から回収された波長変換材料回収品であって、レーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有し、不純物の含有量が2質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光及び現像後に、使用済みの現像液から回収された波長変換材料回収品であって、レーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有し、不純物の含有量が2質量%以下である波長変換材料回収品。
【請求項2】
前記不純物の含有量が0.5質量%以上である請求項1に記載の波長変換材料回収品。
【請求項3】
前記不純物はシロキサン樹脂を含んだ請求項1に記載の波長変換材料回収品。
【請求項4】
前記波長変換材料は、金属元素を含む蛍光体材料である請求項1に記載の波長変換材料回収品。
【請求項5】
波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光後に、前記感光層をスプレー現像することと、
前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる前記波長変換材料を回収することと
を含んだ波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項6】
前記スプレー現像は、0.03乃至0.3MPaの範囲内のスプレー圧で、レーザドップラー法による平均粒径が10乃至100μmの範囲内にある液滴が吐出されるように行う請求項5に記載の波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項7】
前記感光性樹脂はシロキサン樹脂を含んだ請求項5に記載の波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項8】
前記濾過によって回収した前記波長変換材料を、純水及び有機溶剤で順次洗浄することを更に含んだ請求項5に記載の波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項9】
前記波長変換材料回収品として、レーザ回折・散乱法による粒度分布が、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有しているものを得る請求項5に記載の波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項10】
前記波長変換材料回収品として、不純物の含有量が2質量%以下であるものを得る請求項5に記載の波長変換材料回収品の取得方法。
【請求項11】
波長変換材料と感光性樹脂とを含み、露光された感光層をスプレー現像するスプレー現像装置と、
前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる波長変換材料を回収する濾過装置と
を備えた波長変換材料回収システム。
【請求項12】
回収した前記波長変換材料を純水で洗浄し、純水で洗浄した前記波長変換材料を有機溶剤で洗浄する洗浄装置を更に備えた請求項11に記載の波長変換材料回収システム。
【請求項13】
波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層を形成することと、
前記感光層を部分的に露光することと、
露光後の前記感光層をスプレー現像することと、
前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる前記波長変換材料を回収することと
を含んだ表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換材料の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
無機蛍光体などの蛍光体は、励起光の照射によって励起光とは異なる波長で発光することから、例えば、表示装置において波長変換材料として利用される。
特許文献1及び2には、フルカラー発光ダイオード表示パネルの製造において、蛍光体を含んだ感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層へのパターン露光及び現像を順次行うことにより、蛍光発光層を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-28380号公報
【特許文献2】特開2019-140361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、波長変換材料の再生利用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光及び現像後に、使用済みの現像液から回収された波長変換材料回収品であって、レーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有し、不純物の含有量が2質量%以下である波長変換材料回収品が提供される。
【0006】
本発明の第2側面によると、前記不純物の含有量が0.5質量%以上である第1側面に係る波長変換材料回収品が提供される。
【0007】
本発明の第3側面によると、前記不純物はシロキサン樹脂を含んだ上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品が提供される。
【0008】
本発明の第4側面によると、前記波長変換材料は、金属元素を含む蛍光体材料である上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品が提供される。
【0009】
本発明の第5側面によると、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層への露光後に、前記感光層をスプレー現像することと、前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる前記波長変換材料を回収することとを含んだ波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0010】
本発明の第6側面によると、前記スプレー現像は、0.03乃至0.3MPaの範囲内のスプレー圧で、レーザドップラー法による平均粒径が10乃至100μmの範囲内にある液滴が吐出されるように行う上記側面に係る波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0011】
本発明の第7側面によると、前記感光性樹脂はシロキサン樹脂を含んだ上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0012】
本発明の第8側面によると、前記濾過によって回収した前記波長変換材料を、純水及び有機溶剤で順次洗浄することを更に含んだ上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0013】
本発明の第9側面によると、前記波長変換材料回収品として、レーザ回折・散乱法による粒度分布が、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有しているものを得る上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0014】
本発明の第10側面によると、前記波長変換材料回収品として、不純物の含有量が2質量%以下であるものを得る上記側面の何れかに係る波長変換材料回収品の取得方法が提供される。
【0015】
本発明の第11側面によると、波長変換材料と感光性樹脂とを含み、露光された感光層をスプレー現像するスプレー現像装置と、前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる波長変換材料を回収する濾過装置とを備えた波長変換材料回収システムが提供される。
【0016】
本発明の第12側面によると、回収した前記波長変換材料を純水で洗浄し、純水で洗浄した前記波長変換材料を有機溶剤で洗浄する洗浄装置を更に備えた上記側面に係る波長変換材料回収システムが提供される。
【0017】
本発明に第13側面によると、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光層を形成することと、前記感光層を部分的に露光することと、露光後の前記感光層をスプレー現像することと、前記スプレー現像に使用した現像液を濾過へ供して、これに含まれる前記波長変換材料を回収することとを含んだ表示装置の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第14側面によると、前記スプレー現像は、0.03乃至0.3MPaの範囲内のスプレー圧で、レーザドップラー法による平均粒径が10乃至100μmの範囲内にある液滴が吐出されるように行う上記側面に係る表示装置の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第15側面によると、前記感光性樹脂はシロキサン樹脂を含んだ上記側面の何れかに係る表示装置の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の第16側面によると、前記濾過によって回収した前記波長変換材料を、純水及び有機溶剤で順次洗浄することを更に含んだ上記側面の何れかに係る表示装置の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の第17側面によると、前記波長変換材料回収品として、レーザ回折・散乱法による粒度分布が、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有しているものを得る上記側面の何れかに係る表示装置の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の第18側面によると、前記波長変換材料回収品として、不純物の含有量が2質量%以下であるものを得る上記側面の何れかに係る表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、波長変換材料の再生利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、波長変換材料を含んだ物品の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る波長変換材料回収システムを示す概略図である。
図3図3は、図2の波長変換材料回収システムが含み得る洗浄装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄に供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。
図5図5は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。
図6図6は、ディップ現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄に供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。
図7図7は、ディップ現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。
図8図8は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図9図9は、未使用の波長変換材料について得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図10図10は、シロキサン樹脂について得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図11図11は、ディップ現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独で又は複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0026】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、及び構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
なお、同様又は類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、及び、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0028】
<1>波長変換材料の利用例
図1は、波長変換材料を含んだ物品の一例を示す断面図である。
【0029】
図1には、波長変換材料を含んだ物品の一例として、表示装置1を描いている。表示装置1は、アクティブマトリクス駆動方式によるカラー表示が可能であり、各サブ画素が発光ダイオード(LED)を含んだマイクロLEDディスプレイである。
【0030】
なお、図1において、X方向及びY方向は、表示装置1の表示面に対して平行であり且つ互いに交差する方向である。一例によれば、X方向及びY方向は、互いに対して垂直である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。即ち、Z方向は、表示装置1の厚さ方向である。
【0031】
図1に示す表示装置1は、調光装置2と、ブラックマトリクス基板3と、接着層4とを含んでいる。
【0032】
調光装置2は、ブラックマトリクス基板3へ向けて光を射出するとともに、この光の強さ及びこの光を射出する時間の少なくとも一方を、画素毎に又はサブ画素毎に調節可能な装置である。調光装置2は、基板21と、多層配線層22と、発光ダイオード23とを含んでいる。
【0033】
基板21は、例えば、ガラス基板などの絶縁基板を含んでいる。基板21は、絶縁基板のブラックマトリクス基板3と向き合った主面に設けられたアンダーコート層を更に含んでいてもよい。アンダーコート層は、例えば、絶縁基板上に順次積層されたシリコン窒化物層とシリコン酸化物層との積層体である。基板21は、シリコン基板などの半導体基板であってもよい。基板21は、硬質であってもよく、可撓性であってもよい。
【0034】
多層配線層22は、基板21のブラックマトリクス基板3と向き合った主面上に設けられている。多層配線層22は、映像信号線と、第1電源線と、第2電源線と、走査信号線と、画素回路と、層間絶縁膜とを含んでいる。
【0035】
映像信号線は、Y方向へ各々が伸び、X方向へ配列している。走査信号線は、X方向へ各々が伸び、Y方向へ配列している。第1及び第2電源線は、映像信号線に対応して、Y方向へ各々が伸び、X方向へ配列している。第1及び第2電源線は、走査信号線に対応して、X方向へ各々が伸び、Y方向へ配列していてもよい。或いは、第1及び第2電源線の一方は、映像信号線に対応して、Y方向へ各々が伸び、X方向へ配列し、それらの他方は、走査信号線に対応して、X方向へ各々が伸び、Y方向へ配列していてもよい。
【0036】
画素回路は、基板21の上記主面上でX方向及びY方向へ配列している。画素回路の各々は、駆動制御素子とスイッチとキャパシタとを含んでいる。駆動制御素子は、例えば、ソースが第1電源線へ接続されたpチャネル電界効果トランジスタである。スイッチは、例えば、ゲートが走査信号線へ接続され、ソースが映像信号線へ接続され、ドレインが駆動制御素子のゲートへ接続されたnチャネル電界効果トランジスタである。キャパシタは、例えば、一方の電極が駆動制御素子のゲートへ接続され、他方の電極が第1電源線へ接続された薄膜キャパシタである。画素回路は、他の構成を有していてもよい。
【0037】
発光ダイオード23は、多層構造を有している。ここでは、発光ダイオード23が含んでいる層の積層方向はZ方向である。この積層方向は、Z方向に対して垂直であってもよい。
【0038】
発光ダイオード23は、発光スペクトルが互いに等しい。発光ダイオード23は、例えば、青色光及び紫外光などの短波長の光を射出する。ここでは、一例として、発光ダイオード23は、青色光を射出する青色発光ダイオードであるとする。
【0039】
発光ダイオード23は、多層配線層22上で、画素回路に対応して配列している。発光ダイオード23の各々は、陽極が駆動制御素子のドレインへ接続され、陰極が第2電源線へ接続されている。
【0040】
ブラックマトリクス基板3は、調光装置2と向き合っている。具体的には、ブラックマトリクス基板3は、発光ダイオード23等を間に挟んで基板21と向き合っている。
【0041】
ブラックマトリクス基板3は、透明基板31と、ブラックマトリクス32と、隔壁層34と、第1着色層33R及び第2着色層33Gを含んだカラーフィルタと、下地層33Bと、第1波長変換層36Rと、第2波長変換層36Gと、充填層36Bとを含んでいる。
【0042】
透明基板31は、可視光透過性を有している。透明基板31は、例えば、無色の基板である。透明基板31は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。透明基板31は、例えば、ガラス、透明樹脂又はそれらの組み合わせからなる。透明基板31は、硬質であってもよく、可撓性であってもよい。透明基板31は、調光装置2と向き合った第1主面と、その裏面である第2主面とを有している。
【0043】
ブラックマトリクス32は、透明基板31の第1主面上に設けられている。ブラックマトリクス32は、可視光を遮る黒色層である。ブラックマトリクス32は、例えば、バインダ樹脂と着色剤とを含んだ混合物からなる。着色剤は、例えば、黒色顔料であるか、又は、減法混色によって黒色を呈する顔料の混合物、例えば、青色顔料、緑色顔料及び赤色顔料を含んだ混合物である。
【0044】
ブラックマトリクス32は、発光ダイオード23の位置に第1貫通孔を有している。各第1貫通孔の透明基板31側の開口は、発光ダイオード23と比較して、Z方向に垂直な方向の寸法がより大きい。
【0045】
第1着色層33R、第2着色層33G、及び下地層33Bは、ブラックマトリクス32が設けられた透明基板31上で、ストライプ配列を形成している。これらは、第1着色層33R、第2着色層33G、及び下地層33Bから各々がなる複数の画素を形成しており、これら画素はX方向及びY方向へ配列している。
【0046】
上記の通り、ここでは、第1着色層33Rは赤色着色層であり、第2着色層33Gは緑色着色層である。また、下地層33Bは、ここでは、無色の光透過層又は青色着色層である。第1着色層33Rの各々は、第1貫通孔の1つを埋め込んでいる。第2着色層33Gの各々は、第1貫通孔の他の1つを埋め込んでいる。下地層33Bの各々は、第1貫通孔の更に他の1つを埋め込んでいる。
【0047】
隔壁層34は、第1着色層33R、第2着色層33G、及び下地層33Bからなる複合膜上に設けられている。一例によれば、隔壁層34は透明である。この場合、隔壁層34は、着色していてもよく、無色であってもよい。隔壁層34は、光散乱性を有していてもよい。
【0048】
隔壁層34は、第1貫通孔の位置に第2貫通孔をそれぞれ有している。第2貫通孔は、ここでは、透明基板31側の開口の第1主面への正射影の輪郭(以下、第2輪郭という)が、それぞれ、第1貫通孔の第1主面への正射影の輪郭(以下、第1輪郭という)を取り囲むように設けられている。第2輪郭は、第1輪郭を取り囲んでいなくてもよい。第2輪郭が第1輪郭を取り囲んだ構造では、第2輪郭が第1輪郭を取り囲んでいない構造と比較して、迷光が表示へ及ぼす影響が小さい。
【0049】
隔壁層34のうち隣り合った第2貫通孔によって挟まれた部分は、矩形状の断面形状を有している。この部分は、順テーパ状の断面形状を有していてもよく、逆テーパ状の断面形状を有していてもよく、他の断面形状を有していてもよい。
【0050】
隔壁層34は、多層構造を有していてもよい。例えば、隔壁層34は、樹脂層と、その表面を少なくとも部分的に被覆した反射層とを含んでいてもよい。
【0051】
反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。反射層が含む層は、例えば、金属、合金又は透明誘電体である。金属又は合金からなる反射層は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。
【0052】
第1波長変換層36Rは、第1着色層33R上に設けられている。第1波長変換層36Rは、無機蛍光体などの蛍光体と透明樹脂とを含んだ層である。ここでは、第1波長変換層36Rは、発光ダイオード23が射出した青色光を赤色光へと変換する。
【0053】
第2波長変換層36Gは、第2着色層33G上に設けられている。第2波長変換層36Gは、無機蛍光体などの蛍光体と透明樹脂とを含んだ層である。ここでは、第2波長変換層36Gは、発光ダイオード23が射出した青色光を緑色光へと変換する。
【0054】
充填層36Bは、下地層33B上に設けられている。上記の通り、ここでは、充填層36Bは無色透明な層である。この場合、充填層36Bは、例えば、透明樹脂からなる。
【0055】
接着層4は、調光装置2とブラックマトリクス基板3との間に介在しており、それらを互いに対して貼り合わせている。接着層4は、発光ダイオード23が射出した光を透過させる。接着層4は、例えば、無色透明な層である。接着層4は、接着剤又は粘着剤からなる。
【0056】
上記の表示装置1は、波長変換材料として、無機蛍光体などの蛍光体を含んでいる。波長変換材料は、他の表示装置において使用することもできる。例えば、波長変換材料は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置において使用してもよい。或いは、波長変換材料は、液晶表示装置において、例えば、液晶表示装置のバックライトにおいて使用してもよい。
【0057】
波長変換材料は、表示装置以外の装置において使用してもよい。例えば、波長変換材料は、照明装置において使用してもよい。
【0058】
<2>波長変換材料回収システム
図2は、本発明の一実施形態に係る波長変換材料回収システムを示す概略図である。
【0059】
上記の表示装置1の製造では、第1波長変換層36R及び第2波長変換層36Gの各々は、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、この塗膜へのパターン露光及び現像を順次行うことを含んだプロセスによって得ることができる。図2に示す波長変換材料回収システム100は、例えば、これらの現像において使用することができる
図2に示す波長変換材料回収システム100は、スプレー現像装置200と、現像液貯留槽300と、循環ポンプ400と、濾過装置500と、洗浄装置600と、乾燥装置700とを含んでいる。
【0060】
スプレー現像装置200は、現像容器210と、スプレーノズルアセンブリ220と、搬送装置230とを含んでいる。
【0061】
現像容器210は、複数のスプレーノズルアセンブリ220と搬送装置230とを収容している。現像容器210の底部には、使用済みの現像液を排出するための排液口が設けられている。この排液口には、管路L1の一端が接続されている。
【0062】
スプレーノズルアセンブリ220の各々は、ヘッダ221とノズルチップ222とを含んでいる。ヘッダ221は、一方向に伸びた形状を有している中空体である。スプレーノズルアセンブリ220は、ヘッダ221の長さ方向が互いに平行になるように及びヘッダ221がそれらの幅方向へ配列するように配置されている。
【0063】
ヘッダ221の各々は、その壁部に導入口を有している。また、ヘッダ221の各々は、下方の壁部に、その長さ方向に配列した複数の貫通孔を有している。スプレーノズルアセンブリ220の各々において、ノズルチップ222は、これら貫通孔の位置でヘッダ221に取り付けられている。ノズルチップ222としては、例えば、現像液を扇状に又は円錐状にスプレーするものを使用することができる。
【0064】
スプレーノズルアセンブリ220の各々は、導入口を介してヘッダ221内へ供給された現像液を、ノズルチップ222が有するノズルを介して下方へ向けてスプレーする。スプレーノズルアセンブリ220は、現像液を一流体スプレーするものであってもよく、二流体スプレーするものであってもよい。
【0065】
搬送装置230は、スプレーノズルアセンブリ220の下方に配置された複数の搬送ローラ231と、搬送ローラ231を駆動するモータとを含んでいる。搬送装置230は、搬送ローラ231を図中反時計回りに回転させて、被処理体Wを図中左方向へ搬送する。なお、被処理体Wは、例えば、透明基板31等の上に、上記感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、これにパターン露光したものである。
【0066】
現像液貯留槽300は、現像液DL1を収容している。また、現像液貯留槽300には、スプレー現像装置200において使用した現像液が、管路L1を介して供給される。それ故、現像液貯留槽300が収容している現像液DL1は、スプレー現像装置200における現像によって被処理体Wから除去した物質、例えば、波長変換材料及び樹脂を不純物として含んでいる。
【0067】
不純物の少なくとも一部は、現像液貯留槽300の底部へ沈降する。現像液貯留槽300の底部には、現像液DL1中に生じた沈殿物を排出するための排出口を有している。この排出口には、管路L4の一端が接続されている。
【0068】
また、現像液貯留槽300の側壁は、現像液DL1の上澄みを排出するための排出口を有している。この排出口には、管路L2の一端が接続されている。循環ポンプ400は、管路L2に取り付けられている。
【0069】
濾過装置500は、導入口と第1及び第2排出口とを有している。濾過装置500の導入口には、管路L2の他端が接続されている。管路L2を介して供給される現像液DL1は、不純物を含み得る。濾過装置500は、導入口を介して供給された現像液DL1から、濾過によって、不純物の少なくとも一部を除去する。
【0070】
濾過装置500は、第1排出口から濾液を排出する。第1排出口には、管路L3の一端が接続されている。管路L3の他端は、ヘッダ221の導入口に接続されている。
【0071】
また、濾過装置500は、第2排出口から残渣を排出する。第2排出口には、管路L5の一端が接続されている。
【0072】
洗浄装置600は、第1及び第2導入口と排出口とを有している。洗浄装置600の第1及び第2導入口には、それぞれ、管路L4の他端と管路L5の他端とが接続されている。洗浄装置600は、現像液貯留槽300から管路L4を介して供給された沈殿物と、濾過装置500の第2排出口から排出された残渣とを洗浄する。例えば、洗浄装置600は、純水による洗浄と有機溶剤による洗浄とを順次行う。
【0073】
洗浄装置600は、洗浄後の沈殿物及び残渣、即ち回収物を、排出口から排出する。この排出口には、管路L6の一端が接続されている。
【0074】
乾燥装置700は、管路L6の他端が接続されている。乾燥装置700は、洗浄装置600から供給された回収品を乾燥させる。例えば、乾燥装置700は、回収品を加熱乾燥させるか、減圧乾燥させるか、又は加熱しながら減圧乾燥させる。
【0075】
図3は、図2の波長変換材料回収システムが含み得る洗浄装置の一例を示す概略図である。
【0076】
図3に示す洗浄装置600は、濾過装置600Aと、第1洗浄装置600Bと、第2洗浄装置600Cとを含んでいる。
【0077】
上記の波長変換材料回収システム100では、洗浄装置600には、管路L4及びL5を介して、固形分を高濃度に含んだ現像液が供給される。濾過装置600Aは、この液の固形分濃度を更に高める。
【0078】
濾過装置600Aは、容器610Aとフィルタ620Aとを含んでいる。フィルタ620Aは、容器610Aの内部空間を、上部空間と下部空間とに仕切っている。
【0079】
容器610A内の上部空間には、管路L4又はL5を介して、波長変換材料及び樹脂を高濃度に含んだ液DL2が供給される。容器610Aの底部は、第1排出口を有している。第1排出口には、管路L8Aの一端が接続されている。フィルタ620Aを透過することにより不純物が除去された現像液DL3は、第1排出口及び管路L8Aを介して、濾過装置600Aの外部へ排出される。
【0080】
容器610Aの側壁は、フィルタ620Aの上方に第2排出口を有している。第2排出口には、管路L7Aの一端が接続されている。
【0081】
管路L7Aには、バルブ630B及びポンプ640Bが取り付けられている。濾過装置600Aにおける濾過によって固形分濃度が更に高められた液DL2は、バルブ630Bを開き、ポンプ640Bを駆動することにより、第2排出口及び管路L7Aを介して容器610Aの外部へ排出される。
【0082】
第1洗浄装置600Bは、第1洗浄液としての純水の供給と濾過とを含んだサイクルを1回以上行う。これにより、第1洗浄装置600Bは、上記の固形分を含んだ液から水溶性の不純物、例えば無機不純物を除去する。
【0083】
第1洗浄装置600Bは、容器610Bとフィルタ620Bとを含んでいる。フィルタ620Bは、容器610Bの内部空間を、上部空間と下部空間とに仕切っている。
【0084】
容器610B内の上部空間には、固形分濃度が高められた液DL2が管路L7Aを介して供給されるとともに、第1洗浄液としての純水が管路L9Bを介して供給される。容器610Bの底部は、第1排出口を有している。第1排出口には、管路L8Bの一端が接続されている。フィルタ620Bを透過した液WL2Bは、第1排出口及び管路L8Bを介して、第1洗浄装置600Bの外部へ排出される。
【0085】
容器610Bの側壁は、フィルタ620Bの上方に第2排出口を有している。第2排出口には、管路L10の一端が接続されている。
【0086】
管路L10には、バルブ630C及びポンプ640Cが取り付けられている。第1洗浄装置600Bにおける洗浄によって水溶性不純物が除去された液WL1Bは、バルブ630Cを開き、ポンプ640Cを駆動することにより、第2排出口及び管路L10を介して容器610Bの外部へ排出される。
【0087】
第2洗浄装置600Cは、第2洗浄液としての有機溶剤の供給と濾過とを含んだサイクルを1回以上行う。これにより、第2洗浄装置600Cは、水溶性不純物を除去した上記の液から、有機溶剤へ可溶な不純物、例えば有機不純物を除去する。
【0088】
第2洗浄装置600Cは、容器610Cとフィルタ620Cとを含んでいる。フィルタ620Cは、容器610Cの内部空間を、上部空間と下部空間とに仕切っている。
【0089】
容器610C内の上部空間には、水溶性不純物が除去された液WL1Bが管路L10を介して供給されるとともに、第2洗浄液としての有機溶剤が管路L9Cを介して供給される。容器610Cの底部は、第1排出口を有している。第1排出口には、管路L8Cの一端が接続されている。フィルタ620Cを透過した液WL2Cは、第1排出口及び管路L8Cを介して、第2洗浄装置600Cの外部へ排出される。
【0090】
容器610Cの側壁は、フィルタ620Cの上方に第2排出口を有している。第2排出口には、管路L6の一端が接続されている。
【0091】
管路L6には、図示しないバルブ及びポンプが取り付けられている。第2洗浄装置600Cにおける洗浄によって有機溶剤へ可溶な不純物が除去された液WL1Cは、バルブを開き、ポンプを駆動することにより、第2排出口及び管路L6を介して容器610Cの外部へ排出される。
【0092】
第2洗浄液として使用する有機溶剤は、アセトンなどの低沸点溶剤、即ち、沸点が100℃未満の有機溶剤であることが好ましい。第2洗浄液として低沸点溶剤を使用した場合、乾燥装置700による乾燥を、例えば低温で行うことができる。
【0093】
なお、図3に示す洗浄装置600では、波長変換材料は、これを高濃度に含んだスラリーの形態で、容器610Aから容器610Bへ、及び、容器610Bから容器610Cへ移送している。波長変換材料は、濾過ケークの形態で、容器610Aから容器610Bへ、及び、容器610Bから容器610Cへ移送してもよい。
【0094】
また、図3に示す洗浄装置600では、洗浄に3つの容器を使用している。洗浄は、例えば、1つの容器を使用して行ってもよい。例えば、濾過装置600Aにおける濾過の後、第1洗浄装置600Bについて上述した洗浄と、第2洗浄装置600Cについて上述した洗浄とを、この順に濾過装置600Aにおいて行ってもよい。
【0095】
<3>波長変換材料回収品の取得方法/表示装置の製造方法
上記の波長変換材料回収システム100は、例えば、波長変換材料を含んだ表示装置の製造において利用することができる。以下に、一例として、波長変換材料回収システム100を利用した表示装置1の製造方法を説明する。
【0096】
先ず、透明基板31と、ブラックマトリクス32と、第1着色層33Rと、第2着色層33Gと、下地層33Bと、隔壁層34とを含んだ構造体を準備する。次いで、第1波長変換層36Rと、第2波長変換層36Gと、充填層36Bとを形成する。第1波長変換層36R、第2波長変換層36G、及び充填層36Bを形成する順序は任意である。
【0097】
第1波長変換層36R及び第2波長変換層36Gの各々は、例えば、以下の方法により形成する。
【0098】
先ず、波長変換材料と感光性樹脂とを含んだ感光性樹脂組成物を調製する。感光性樹脂は、ネガ型及びポジ型の何れであってもよい。感光性樹脂組成物の組成については、後で詳述する。
【0099】
次に、感光性樹脂組成物を上記の構造体へ塗工して、感光層を形成する。続いて、この感光層を部分的に露光する。感光性樹脂がネガ型である場合、感光層のうち、形成すべき波長変換層に対応した領域を露光する。感光性樹脂がポジ型である場合、感光層のうち、形成すべき波長変換層に対応した領域以外の領域を露光する。
【0100】
次いで、露光後の感光層をスプレー現像する。このスプレー現像には、例えば、図2に示すスプレー現像装置200を使用する。
【0101】
スプレー現像装置200では、被処理体Wとして、露光後の感光層を含む上記構造体を用いる。スプレー現像装置200では、循環ポンプ400を駆動して、現像液貯留槽300、管路L2、循環ポンプ400、濾過装置500、管路L3、及びスプレー現像装置200を含んだ循環経路において、現像液DL1を循環させる。現像液DL1を循環させると、スプレーノズルアセンブリ220は、現像液DL1を下向きにスプレーする。搬送装置230は、この状態で、感光層が上向きになるように搬送ローラ231に載せられた上記構造体を、図中左方向へ搬送する。感光性樹脂がネガ型である場合、これにより、感光層の未露光部を除去する。
【0102】
パターン露光した感光層の現像には、ディップ現像も広く利用されている。ディップ現像法としては、現像液の噴流を利用しない方法と、現像液の噴流を利用する方法とがある。何れのディップ現像法においても、感光層のうち現像によって除去した部分は、寸法が比較的大きな剥離片として現像液中へと移行する。
【0103】
これら剥離片は、感光性樹脂と波長変換材料との混合物である。そのため、ディップ現像に使用した現像液から波長変換材料を回収しようとしても、濾過によって波長変換材料から不純物を除去することは困難である。
【0104】
パターン露光した感光層の現像にスプレー現像を利用すると、感光層のうち現像によって除去すべき部分を微細に破砕することができる。従って、濾過によって波長変換材料から不純物を除去することが可能となる。
【0105】
これらスプレー現像は、0.03乃至0.3MPaの範囲内のスプレー圧で、レーザドップラー法による平均粒径が10乃至100μmの範囲内にある液滴が吐出されるように行うことが好ましい。このような条件でスプレー現像を行った場合、感光層のうち現像によって除去すべき部分において、波長変換材料の粒子に、それらを動かす打撃力を与えることができる。そのような打撃力を波長変換材料の粒子へ与えると、感光層のうち現像によって除去すべき部分の破砕が促進され、更なる微細化が可能になる。
【0106】
上記のスプレー現像の各々の後に、二流体洗浄を行ってもよい。このような洗浄を行うと、樹脂残渣の粉砕及び除去が可能になる。
【0107】
その後、感光層を加熱して、これを硬化させる。このようにして、第1波長変換層36R及び第2波長変換層36Gを形成する。
【0108】
なお、充填層36Bは、例えば、波長変換材料を省略した感光性樹脂組成物を使用し、波長変換材料の回収を行わないこと以外は、第1波長変換層36R及び第2波長変換層36Gと同様の方法により形成することができる。
【0109】
以上のようにして、ブラックマトリクス基板3を得る。このブラックマトリクス基板3と、別途準備した調光装置2とを、接着層4を介して貼り合わせる。これにより、図1に示す表示装置1を得る。
【0110】
また、上記のスプレー現像において現像液DL1を循環させる一方で、現像液貯留槽300の底部に生じた沈殿物を、管路L4を介して洗浄装置600へ送出するとともに、濾過装置500において濾液から分離した残渣を、管路L5を介して洗浄装置600へ送出する。現像液貯留槽300から洗浄装置600への沈殿部の送出、及び、濾過装置500から洗浄装置600への残渣の送出の各々は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
【0111】
洗浄装置600では、上述した洗浄を行う。これにより、回収した固形分から、波長変換材料以外の成分の殆どを除去する。
【0112】
使用済みの現像液では、波長変換材料の一部は、感光性樹脂を介して互いに結合している。それ故、使用済みの現像液が含んでいる波長変換材料は、未使用の波長変換材料と比較して、粒子径の最大値がより大きい。
【0113】
他方、使用済みの現像液が含んでいる不純物、例えば、感光性樹脂、シロキサン樹脂、光重合開始剤、又は重合性化合物のうち、波長変換材料の凝集へ関与していないものは、スプレー現像によって粉砕されているため、粒子径が小さい。一例によれば、使用済みの現像液が含んでいる不純物粒子の多くは、粒子径が1μm未満である。
【0114】
この場合、例えば、粒子径が1μm超の粒子を透過させることなしに、粒子径が1μm以下の粒子を透過させるフィルタを使用すれば、濾過によって不純物の多くを波長変換材料から分離できる。なお、ここでは、フィルタが透過させる粒子の最大粒子径を1μmとしているが、フィルタが透過させる粒子の最大粒子径は、波長変換材料の粒子径の最小値に応じて適宜選択可能である。
【0115】
また、洗浄装置600では、第1洗浄装置600Bにおいて無機不純物を除去するとともに、第2洗浄装置600Cにおいて有機不純物を除去する。シロキサン樹脂には、水系の現像液と接触すると、シロキサン重合やケン化などの反応により、有機溶媒に対して難溶性の化合物を形成するものがある。第1洗浄装置600Bでは、純水を使用して洗浄を行うので、そのような化合物も、現像液に含まれる無機成分とともに除去され得る。そして、第2洗浄装置600Cでは、有機溶媒を使用して洗浄を行うので、他の不純物も除去され得る。
【0116】
このように、波長変換材料の凝集へ関与している不純物も除去される。それ故、第2洗浄装置600Cによる洗浄後の波長変換材料は、粒子径の最大値が、未使用の波長変換材料とほぼ同等である。なお、第2洗浄装置600Cによる洗浄後の波長変換材料は、複数回の濾過を経ていることから、粒子径の最小値が、未使用の波長変換材料とほぼ同等であるか又はこれよりも大きい。
【0117】
その後、洗浄装置600から、波長変換材料と有機溶剤とを含んだスラリーを、管路L6を介して乾燥装置700へ送出する。乾燥装置700は、これから有機溶剤を除去して、波長変換材料回収品を粉体の形態で得る。
【0118】
<4>感光性樹脂組成物
上記の感光性樹脂組成物は、波長変換材料と感光性樹脂とを含んでいる。
【0119】
<4.1>波長変換材料
波長変換材料は、例えば、Sr、Ca、Al、Si、Eu、Ba、及びMgなどの金属元素を含む蛍光体である。波長変換材料は、凝集していない粒子だけでなく、粒子の凝集物を更に含んでいる。
【0120】
波長変換材料のレーザ回折・散乱法による粒度分布は、粒子径の最大値と粒子径の最小値との差Worigが1乃至20μmの範囲内にあり、体積基準のメディアン径D50が4乃至7μmの範囲内にある。隔壁層34の厚さ、即ち、隔壁の高さが10乃至50μmの範囲内にある場合、波長変換材料の粒子径は隔壁の高さの0.7倍以下であることが望ましい。波長換材料が凝集物を含んでいる場合、感光性樹脂組成物の塗工前に超音波や振動攪拌を利用して、凝集を少なくとも部分的に解消することができる。過剰に大きな粒子が、隔壁によって囲まれた空間内で厚さ方向に重なると、波長変換層が隔壁層34から突き出る可能性がある。
【0121】
<4.2>感光性樹脂
感光性樹脂は、例えば、重合性化合物と光重合開始剤とを含んでいる。感光性樹脂は、シロキサン樹脂及び溶媒の少なくとも一方を更に含むことができる。
【0122】
<4.2.1>重合性化合物
光重合性化合物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって重合し、硬化する樹脂である。光重合性化合物としては、例えば、単官能、2官能又は3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。
【0123】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0124】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0125】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0126】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0127】
また、光重合性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0128】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0129】
上述した(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述した(メタ)アクリレート化合物は、感光性樹脂組成物中でモノマーであってもよく、一部が重合したオリゴマーであってもよい。
【0130】
重合性化合物の含有量は、感光性樹脂が含む固形分の総質量に対して、0.01乃至20質量%の範囲内とすることが好ましく、1乃至10質量%の範囲内とすることがより好ましい。重合性化合物の含有量を多くすると、波長変換層の透明性がより高まる。但し、重合性化合物の含有量を過剰に多くすると、感光性樹脂や感光性樹脂組成物の取扱い性が低下する。
【0131】
<4.2.2>光重合開始剤
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルを発生する化合物である。
【0132】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類等)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のアルキルフェニルケトン類;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のシクロアルキルフェニルケトン類等]、アミノアセトフェノン類{2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノアミノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等}、アントラキノン類(アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等)、チオキサントン類(2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン等)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
光重合開始剤の含有量は、上記感光性樹脂が含む固形分の総質量に対して、0.01乃至20質量%の範囲内とすることが好ましく、0.1乃至5質量%の範囲内とすることがより好ましい。光重合開始剤の含有量を多くすると、感光性樹脂組成物からなる塗膜をより確実に硬化させることができる。また、光重合開始剤の含有量が過剰に多くなければ、未反応の光重合開始剤が残留することに起因した波長変換層の透明性の低下を生じ難い。
【0134】
<4.2.3>シロキサン樹脂
上記の感光性樹脂及び感光性樹脂組成物は、シロキサン樹脂を含んでいることが好ましい。シロキサン樹脂は、耐熱性や耐光性が高く、熱又は光劣化に起因した400nm近辺の短波長の透過率変化が少ない。それ故、シロキサン樹脂は、波長変換層の耐熱性及び耐黄変性を高める。
【0135】
シロキサン樹脂のモノマーとしては、例えば、Pentacyclo[9.5.1.13,9.15,15.17,13]octasiloxane,1,3,5,7,9,11,13-heptamethyl-15-phenyl-(CAS No.18616-10-9)及びPentacyclo[9.5.1.13,9.15,15.17,13]octasiloxane,1,3,5,7,9,13-hexamethyl-11,15-diphenyl-(CAS No.18421-62-0)等の完全カゴ型シルセスキオキサンが挙げられる。
【0136】
上記の感光性樹脂又は感光性樹脂組成物において、シロキサン樹脂の含有量Aと重合性化合物の含有量Cとの比A/Cは、1乃至8000の範囲内にあることが好ましく、1乃至1000の範囲内にあることがより好ましく、5乃至500の範囲内にあることが更に好ましく、10乃至100の範囲内にあることが特に好ましい。比A/Cを大きくすると、波長変換層の耐熱性及び耐黄変性が高まる。比A/Cが過剰に大きくなければ、波長変換層の透明性が損なわれることはない。
【0137】
<4.2.4>溶媒
上記の感光性樹脂及び感光性樹脂組成物は、溶媒を含むことができる。溶媒は、例えば有機溶媒である。
【0138】
有機溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、及びセロソルブ類が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びエチルシクロヘキサノンが挙げられる。エステル類としては、例えば、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル及びγ-ブチロラクトンが挙げられる。セロソルブ類としては、例えば、メチルセロソルブ、セロソルブ(エチルセロソルブ)、ブチルセロソルブ及びセロソルブアセテート等が挙げられる。有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
<5>波長変換材料回収品
使用済みの現像液は、現像液が本来含んでいる無機成分に加え、波長変換材料、重合性化合物、光重合開始剤、及びシロキサン樹脂等を更に含んでいる。使用済みの現像液から取得した波長変換材料回収品が、無機成分、重合性化合物、光重合開始剤、及びシロキサン樹脂等の不純物を高い濃度で含んでいる場合、この波長変換材料回収品と感光性樹脂とからなる感光性樹脂組成物から形成した感光層は、未使用の波長変換材料と感光性樹脂とからなる感光性樹脂組成物から形成した感光層と比較して、感光性、現像性及び硬化性に劣る。また、前者の感光性樹脂組成物から形成した波長変換層は、後者の感光性樹脂組成物から形成した波長変換層と比較して、波長変換特性に劣る。
【0140】
上述した方法によって得られる波長変換材料回収品は、波長変換材料から実質的になる。一例によれば、波長変換材料回収品における不純物の含有量は2質量%以下である。他の例によれば、波長変換材料回収品における不純物の含有量は1質量%以下である。
【0141】
ここで、波長変換材料回収品における不純物含有量は、示差熱重量分析(TG-DTA)によって得られる25乃至540℃の温度範囲のデータから求められる値である。波長変換材料回収品を540℃で焼成すると、これに含まれる不純物の実質的に全てが熱分解及び/又は酸化し、これら熱分解生成物及び酸化反応生成物は揮発する。従って、加熱前後での質量から、波長変換材料回収品における不純物含有量を求めることができる。
【0142】
なお、波長変換材料回収品は不純物を全く含んでいなくてもよい。波長変換材料回収品の不純物含有量は、上記の上限値以下であれば、0.5質量%以上であっても構わない。
【0143】
また、この波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料とほぼ同様の粒度分布を有している。好ましくは、波長変換材料回収品のレーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、6.5乃至9.0μmの範囲内に90%径D90を有している。一例によれば、波長変換材料回収品のレーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.5乃至4.5μmの範囲内にメディアン径D50を有し、7.0乃至8.4μmの範囲内に90%径D90を有している。他の例によれば、波長変換材料回収品のレーザ回折・散乱法による粒度分布は、体積基準の積算分布において、3.7乃至4.2μmの範囲内にメディアン径D50を有し、7.3乃至8.2μmの範囲内に90%径D90を有している。なお、典型的には、波長変換材料回収品のレーザ回折・散乱法による粒度分布は、粒子径の最大値と粒子径の最小値との差Wが、上記の差Worig以下である。
【0144】
そして、波長変換材料回収品を取得するための上記方法において、波長変換材料は、過剰に高い温度に加熱されることはなく、また、酸処理やアルカリ処理へ供されることもない。従って、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料と同等の発光特性を有し得る。一例によれば、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料のフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)に対して、85%以上の、好ましくは97%以上のフォトルミネッセンス量子収率を達成し得る。
【0145】
従って、上記の波長変換材料回収品は、第1波長変換層36R又は第2波長変換層36Gの材料として使用することができる。そして、この波長変換材料回収品を第1波長変換層36R又は第2波長変換層36Gの材料として使用した場合、優れた感光性、現像性、硬化性、及び波長変換特性を実現することができる。即ち、上記の技術によれば、波長変換材料の再生利用が可能となる。また、波長変換材料は高価であるので、波長変換材料を再生利用することにより、表示装置等の製造コストを低減することが可能になる。
【実施例0146】
以下に、本発明に関連して行った試験について記載する。
【0147】
(例1)
図1に示す表示装置1のブラックマトリクス基板3を作製した。なお、本例では、第2波長変換層36G及び充填層36Bは省略した。
【0148】
具体的には、透明基板31としては、線膨張係数が3×10-6/℃であり、320mm×400mmの寸法を有している矩形状の低膨張ガラス板を使用した。
【0149】
隔壁層34には、樹脂層と金属層との二層構造を採用した。樹脂層には、第1貫通孔の位置に貫通孔をそれぞれ設けた。樹脂層は、15μmの厚さに形成した。金属層としては、Ndを2質量%の割合で含んだAl-Nd合金からなり、厚さが200nmの層を形成した。金属層は、樹脂層の上面と、樹脂層に設けた貫通孔の側壁とを被覆するように形成した。
【0150】
第1波長変換層36Rは、以下の方法により形成した。先ず、波長変換材料を、アクリル-シロキサン樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含んだ感光性樹脂と混合して、感光性樹脂組成物を調製した。
【0151】
波長変換材料としては、Sr0.01~1.2Ca0.01~1.2Al0.8~1.2Si0.8~1.22.0~4.0:Eu0.001~0.1を使用した。この蛍光体は、波長が450nmの光を636nmの光へ変換するものである。この蛍光体のレーザ回折・散乱法による粒度分布測定を行ったところ、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ1μm及び20μmであった。なお、粒度分布測定には、マイクロトラックベル社製のMT3300EXIIを使用した。
【0152】
感光性樹脂組成物からなる感光層は、14μmの厚さに形成した。感光層のパターン露光には、第1波長変換層36Rに対応した領域及びアライメントマーク等に対応した領域で透光性のフォトマスクを使用し、i-h-g線で露光した。
【0153】
感光層の現像及び波長変換材料回収品の取得は、図2及び図3を参照しながら説明した方法により行った。
【0154】
現像液としては、炭酸水素ナトリウム水溶液を使用した。ノズルチップ222としては、現像液を扇状に噴霧するものを使用した。スプレー現像は、0.2MPaのスプレー圧で、レーザドップラー法による平均粒径が20乃至100μmの範囲内にある液滴がノズルチップ222から吐出されるように行った。
【0155】
使用済みの現像液等の濾過は、加圧濾過により行った。これら濾過において、フィルタとしては、セルロース繊維を原料とする、保持粒子径が1μmの濾紙(品名:No.5C、アドバンテック東洋社製)を使用した。
【0156】
純水による洗浄と濾過とからなるサイクルは、濾液のpHが8以下になるまで繰り返した。これらサイクルを完了した後、濾過ケークの一部を採取し、これをエタノールに分散させて、上記の装置を使用した粒度分布測定を行った。これによって得られた粒度分布を図4に示す。
【0157】
図4は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄に供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。図4に示すように、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ約0.5μm及び約30μmであった。
【0158】
有機溶媒による洗浄では、有機溶媒としてアセトンを使用した。アセトンによる洗浄と濾過とからなるサイクルを複数回繰り返して、アセトンに可溶性の不純物を除去した。各サイクルにおいて、アセトンの質量は、上記濾過ケークの質量の5倍とした。
【0159】
この波長変換材料回収品に対して、上記の装置を使用した粒度分布測定を行った。これによって得られた粒度分布を図5に示す。
【0160】
図5は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。図5に示すように、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ約1μm及び約20μmであった。また、メディアン径D50は4.2μmであり、90%径D90は8.2μmであった。
【0161】
更に、この波長変換材料回収品を金属顕微鏡で観察した。その結果、凝集物の粒子径は20μmであった。
【0162】
また、この波長変換材料回収品に対して、示差熱重量分析による不純物含有量の測定を行った。この測定は、日立ハイテクサイエンス社製の示差熱重量測定装置STA7200RVを使用して、30乃至540℃の温度域で行った。その結果、不純物含有量は2質量%であった。
【0163】
更に、この波長変換材料回収品に対して、成分分析を行った。成分分析には、日本分光社製フーリエ変換赤外分光光度計を使用した。これによって得られた赤外吸収スペクトルを図8に示す。
【0164】
図8は、スプレー現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図9は、未使用の波長変換材料について得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。図10は、シロキサン樹脂について得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【0165】
図8乃至図10の対比から明らかなように、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料とほぼ同様の赤外吸収スペクトルを示し、有機樹脂等の不純物は実質的に残留していなかった。
【0166】
次に、上記の波長変換材料回収品を、アクリル-シロキサン樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含んだ感光性樹脂と混合して、感光性樹脂組成物を調製した。この感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、この塗膜をi-h-g線で露光して、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第1サンプルと呼ぶ。
【0167】
また、波長変換材料回収品の代わりに未使用の波長変換材料を使用したこと以外は、上記と同様の方法により、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第2サンプルと呼ぶ。
【0168】
第1及び第2サンプルの各々について、トプコン社製の輝度計を使用して、発光特性を調べた。励起光としては波長が450nmの光を使用し、この光を波長が636nmの光へと変換させた。その結果、第2サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は1.025であったのに対し、第1サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は1.002であった。即ち、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料の97%以上の発光特性を示した。
【0169】
(例2)
本例では、以下の点を除き、例1と同様の方法により、図1に示す表示装置1のブラックマトリクス基板3を作製するとともに、波長変換材料回収品を取得した。即ち、本例では、第2波長変換層36Gを省略する代わりに、第1波長変換層36Rを省略した。
【0170】
第2波長変換層36Gは、波長変換材料として以下の蛍光体を使用したこと以外は、例1において第1波長変換層36Rについて上述したのと同様の方法により形成した。即ち、本例では、波長変換材料として、(Ba,Sr)Ga:Euを使用した。この蛍光体は、波長が450nmの光を540nmの光へ変換するものである。この蛍光体のレーザ回折・散乱法による粒度分布測定を行ったところ、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ1μm及び18μmであった。なお、粒度分布測定には、マイクロトラックベル社製のMT3300EXIIを使用した。
【0171】
本例においても、波長変換材料回収品に対して、上記の装置を使用した粒度分布測定を行った。その結果、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ約2μm及び約18μmであった。また、メディアン径D50は3.7μmであり、90%径D90は7.3μmであった。
【0172】
更に、この波長変換材料回収品を金属顕微鏡で観察した。その結果、凝集物の粒子径は18μmであった。
【0173】
また、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、不純物含有量の測定を行った。その結果、不純物含有量は1.8質量%であった。
【0174】
更に、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、成分分析を行った。その結果、波長変換材料回収品には、有機樹脂等の不純物は実質的に残留していなかった。
【0175】
次に、上記の波長変換材料回収品を、アクリル-シロキサン樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含んだ感光性樹脂と混合して、感光性樹脂組成物を調製した。この感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、この塗膜をi-h-g線で露光して、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第3サンプルと呼ぶ。
【0176】
また、波長変換材料回収品の代わりに未使用の波長変換材料を使用したこと以外は、上記と同様の方法により、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第4サンプルと呼ぶ。
【0177】
第3及び第4サンプルの各々について、トプコン社製の輝度計を使用して、発光特性を調べた。励起光としては波長が450nmの光を使用し、この光を波長が540nmの光へと変換させた。その結果、第4サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は0.890であったのに対し、第3サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は0.872であった。即ち、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料の98%以上の発光特性を示した。
【0178】
(例3)
本例では、以下の点を除き、例1と同様の方法により、図1に示す表示装置1のブラックマトリクス基板3を作製するとともに、波長変換材料回収品を取得した。
【0179】
即ち、本例では、第2波長変換層36Gを省略する代わりに、第1波長変換層36Rを省略した。第2波長変換層36Gは、波長変換材料として以下の蛍光体を使用したこと以外は、例1において第1波長変換層36Rについて上述したのと同様の方法により形成した。即ち、本例では、波長変換材料として、(Ba,Sr)Ga:Euを使用した。この蛍光体は、波長が450nmの光を540nmの光へ変換するものである。この蛍光体のレーザ回折・散乱法による粒度分布測定を行ったところ、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ1μm及び20μmであった。なお、粒度分布測定には、マイクロトラックベル社製のMT3300EXIIを使用した。
【0180】
また、本例では、フィルタとして、セルロース繊維を原料とする、保持粒子径が1μmの濾紙(品名:No.5C、アドバンテック東洋社製)を使用する代わりに、
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維を原料とする、保持粒子径が1μmの濾布(品名:#100、3M社製)を使用したこと以外は、例1と同様の方法により波長変換材料回収品を取得した。
【0181】
本例においても、波長変換材料回収品に対して、上記の装置を使用した粒度分布測定を行った。その結果、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ約3μm及び約20μmであった。また、メディアン径D50は4.0μmであり、90%径D90は7.9μmであった。
【0182】
更に、この波長変換材料回収品を金属顕微鏡で観察した。その結果、凝集物の粒子径は20μmであった。
【0183】
また、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、不純物含有量の測定を行った。その結果、不純物含有量は1.7質量%であった。
【0184】
更に、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、成分分析を行った。その結果、波長変換材料回収品には、有機樹脂等の不純物は実質的に残留していなかった。
【0185】
次に、上記の波長変換材料回収品を、アクリル-シロキサン樹脂、光重合開始剤、及び重合性化合物を含んだ感光性樹脂と混合して、感光性樹脂組成物を調製した。この感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成し、この塗膜をi-h-g線で露光して、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第5サンプルと呼ぶ。
【0186】
また、波長変換材料回収品の代わりに未使用の波長変換材料を使用したこと以外は、上記と同様の方法により、波長変換層を形成した。以下、この波長変換層を第6サンプルと呼ぶ。
【0187】
第5及び第6サンプルの各々について、トプコン社製の輝度計を使用して、発光特性を調べた。励起光としては波長が450nmの光を使用し、この光を波長が540nmの光へと変換させた。その結果、第6サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は0.890であったのに対し、第5サンプルのフォトルミネッセンス量子収率(PLQY)は0.876であった。即ち、波長変換材料回収品は、未使用の波長変換材料の98%以上の発光特性を示した。
【0188】
(比較例)
本例では、以下の点を除き、例1と同様の方法により、図1に示す表示装置1のブラックマトリクス基板3を作製するとともに、波長変換材料回収品を取得した。即ち、本例では、スプレー現像を行う代わりに、ディップ現像を行った。このディップ現像は、現像液の噴流なしで行った。
【0189】
本例においても、純水による洗浄と濾過とからなるサイクルを完了した後、濾過ケークの一部を採取し、これをエタノールに分散させて、上記の装置を使用した粒度分布測定を行った。これによって得られた粒度分布を図6に示す。
【0190】
図6は、ディップ現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄に供してなるものについて得られた粒度分布を示すグラフである。図6に示すように、粒子径の最小値及び最大値はそれぞれ約4μm及び約2000μmであった。また、粒度分布曲線は、約4μm乃至約400μmの粒子径範囲と、約500μm乃至約2000μmの粒子径範囲との双方にピークを有していた。
【0191】
また、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、不純物含有量の測定を行った。その結果、不純物含有量は約28質量%であった。
【0192】
更に、この波長変換材料回収品に対して、例1において行ったのと同様の方法により、成分分析を行った。これによって得られた赤外吸収スペクトルを図11に示す。
【0193】
図11は、ディップ現像に使用した現像液から回収した回収品を純水洗浄及びアセトン洗浄に順次供してなるものについて得られた赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【0194】
図9乃至図11の対比から明らかなように、波長変換材料回収品には、相当量のアクリル-シロキサン樹脂が残留していた。
【符号の説明】
【0195】
1…表示装置、2…調光装置、3…ブラックマトリクス基板、4…接着層、21…基板、22…多層配線層、23…発光ダイオード、31…透明基板、32…ブラックマトリクス、33B…下地層、33G…第2着色層、33R…第1着色層、34…隔壁層、36B…充填層、36G…第2波長変換層、36R…第1波長変換層、100…波長変換材料回収システム、200…スプレー現像装置、210…現像容器、220…スプレーノズルアセンブリ、221…ヘッダ、222…ノズルチップ、230…搬送装置、231…搬送ローラ、300…現像液貯留槽、400…循環ポンプ、500…濾過装置、600…洗浄装置、600A…濾過装置、600B…第1洗浄装置、600C…第2洗浄装置、610A…容器、610B…容器、610C…容器、620A…フィルタ、620B…フィルタ、620C…フィルタ、630B…バルブ、630C…バルブ、640B…ポンプ、640C…ポンプ、700…乾燥装置、DL1…現像液、DL2…液、DL3…現像液、L1…管路、L2…管路、L3…管路、L4…管路、L5…管路、L6…管路、L7A…管路、L8A…管路、L8B…管路、L8C…管路、L9B…管路、L9C…管路、L10…管路、WL1B…液、WL1C…液、WL2B…液、WL2C…液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11